JP6820577B1 - 自動繰り出し式のシャープペンシル - Google Patents

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Abstract

【課題】無駄になる芯の量を低減する。【解決手段】本発明による自動繰り出し式のシャープペンシル1は、絞り加工によって前端に狭窄部20bを有するように形成され、かつ、ペン軸方向に沿って移動可能に構成された金属製の芯プロテクター20と、芯プロテクター20の内部のうち相対的に前方の位置に挿入され、狭窄部20bの内径R5よりも大きい外径を有する筒状の芯搬送グリップ22と、芯プロテクター20の内部のうち相対的に後方の位置に挿入され、芯プロテクター20に対して固定された筒状のブラケット21と、芯プロテクター20を前方に付勢するコイルスプリングと、ペン軸方向に沿って移動可能に構成され、後退時には芯プロテクター20内に挿入された芯の後部を狭持する一方、前進時には芯を解放する芯固定グリップを有するチャック機構と、を備える。【選択図】図5

Description

本発明は、自動繰り出し式のシャープペンシル、及び、自動繰り出し式シャープペンシル用芯プロテクターの製造方法に関する。
近年、株式会社パイロットコーポレーションのオートマック(登録商標)、ぺんてる株式会社のオレンズネロ(登録商標)、オート株式会社のノノック(登録商標)など、ノック操作の不要な自動繰り出し式のシャープペンシルが注目されている。特許文献1には、この種のシャープペンシルの具体的な構成例が開示されている。同文献にも記載されているように、自動繰り出し式シャープペンシルは、軸方向に摺動可能な状態でペン先に配置される芯プロテクター(特許文献1では「スライダ(4)」と記載されている。以下、本段落において括弧内の記載は、対応する構成の特許文献1における名称を示す。)と、芯プロテクターの後端に固定される芯搬送グリップ(弾性片(6))と、筐体内に配置されるチャック機構(チャック(13))と、芯プロテクターとチャック機構の間に設けられるスプリング(ばね(27))と、チャック機構を径方向に付勢するチャックボール(ボール(15))とを有して構成される。なお、本明細書では、シャープペンシルのペン先側が「前」であり、末端側が「後ろ」であるとして説明を行う。
筆圧をかけて筆記している間、スプリングの弾性力によってチャック機構は後退状態にあり、チャックボールの作用によって芯を強く挟持した状態となっている。したがって、筆圧によって芯が後方に移動することはなく、筆記を行うことができる。ペン先を筆記面から上げ、筆圧がゼロになると、スプリングの付勢力によって芯プロテクターが前方に移動するが、このとき芯搬送グリップが芯を把持していることから、芯も前方に移動する。さらに、前方に移動する芯に引っ張られることによってチャック機構も前方に移動し、チャックボールの把持作用が解放される。結果として、芯は、チャック機構に阻害されることなく前進できる。こうして、ノック操作をせずとも、自動的に芯が繰り出されることになる。
特開昭62−035896号公報
ところで、上述した自動繰り出し式シャープペンシルの構成例によれば、筆記に伴って芯の長さが短くなり、その後端がチャック機構に届かなくなると、原理的に芯を前進させることができなくなるので、筆記を続けることができなくなる。この点、次の芯をチャック機構内に供給すれば、次の芯の先端によって先の芯の後端を支えられるので、筆記を続けることができるとも考えられる。しかしながら、先の芯がさらに短くなり、その長さがペン先と芯搬送グリップの間の距離より短くなると、先の芯は何物にも把持されていない状態になり、ペン先が下を向いたときに芯プロテクター内から落下してしまうことになる。結果として、ほぼ芯プロテクターの全長に等しい長さの芯が無駄になってしまう。
したがって、本発明の目的の一つは、無駄になる芯の量を低減できる自動繰り出し式のシャープペンシルを提供することにある。
また、次の芯をチャック機構内に供給したとしても、必ずしも次の芯の先端によって先の芯の後端を支えられるとは限らない。先の芯の後端と次の芯の先端とが空中で当接することになるため、安定して当接させておくことができないからである。最悪の場合、各芯が粉々に砕けてしまうこともあり得る。
加えて、次の芯の先端によって先の芯の後端を支えることができないとすると、次の芯を利用するためには、芯搬送グリップに把持されている芯を引き抜かねばならないことになる。芯搬送グリップの把持力はそれなりに強いので、引き抜く際にはある程度の力を入れて芯を掴まねばならず、手が汚れてしまう。
したがって、本発明の目的の他の一つは、次の芯の先端によって先の芯の後端を支えられる自動繰り出し式のシャープペンシルを提供することにある。
また、無駄になる芯の量を低減するため、芯搬送グリップに相当する構成を芯プロテクターの内側に設けることが考えられるが、そのためには、芯プロテクターの前端に芯搬送グリップの落下を防止するための狭窄部を設ける必要がある。しかしながら、良好な書き味を実現するために芯プロテクターを極力細い円筒状(典型的には、外径0.74mm程度)に形成したうえで、その先端にさらに小さい狭窄部を形成することは、従来不可能であった。
したがって、本発明の目的のさらに他の一つは、良好な書き味を確保しつつ、芯搬送グリップの落下を防止するための狭窄部を芯プロテクターの先端に形成することのできる自動繰り出し式シャープペンシル用芯プロテクターの製造方法を提供することにある。
本発明の第1の側面による自動繰り出し式のシャープペンシルは、絞り加工によって前端に狭窄部を有するように形成され、かつ、ペン軸方向に沿って移動可能に構成された金属製の芯プロテクターと、前記芯プロテクターの内部のうち相対的に前方の位置に挿入され、前記狭窄部の内径よりも大きい外径を有する筒状の芯搬送グリップと、前記芯プロテクターの内部のうち相対的に後方の位置に挿入され、前記芯プロテクターに対して固定された筒状のブラケットと、前記芯プロテクターを前方に付勢するコイルスプリングと、ペン軸方向に沿って移動可能に構成され、後退時には前記芯プロテクター内に挿入された芯の後部を狭持する一方、前進時には前記芯を解放する芯固定グリップを有するチャック機構と、を備える自動繰り出し式のシャープペンシルである。
本発明の第2の側面による自動繰り出し式のシャープペンシルは、前記コイルスプリングが長方形の断面を有する線材によって構成される、本発明の第1の側面によるシャープペンシルである。
本発明の第3の側面による自動繰り出し式シャープペンシル用芯プロテクターの製造方法は、絞り加工により、金属製のブランクに円筒状の突出部分を形成するステップと、穴あけ加工により、前記突出部分の底面に、前記突出部分の内径より小さい径の孔を形成するステップと、フランジを残して前記ブランクをトリミングすることによって前記突出部分を前記ブランクから分離することにより、自動繰り出し式シャープペンシルのペン先を構成する芯プロテクターを取得するステップと、を含む自動繰り出し式シャープペンシル用芯プロテクターの製造方法である。
本発明の第1の側面によれば、芯プロテクターの先端付近に芯搬送グリップを設けることができるので、無駄になる芯の量を低減することが可能になる。
本発明の第2の側面によれば、コイルスプリングの内径を芯の直径とほぼ等しくすることによってスプリング部分でも芯の端部が宙に浮いた状態にならないようにすることができるので、次の芯の先端によって先の芯の後端を支えることが可能になる。
本発明の第3の側面によれば、極細(典型的には、外径0.74mm程度)の有底円筒を形成可能な絞り加工によって芯プロテクターを製造するので、良好な書き味を確保しつつ、芯搬送グリップの落下を防止するための狭窄部を芯プロテクターの先端に形成することが可能になる。
操作レバー10をペン先収納位置にセットした場合におけるシャープペンシル1の断面図である。 図1に示したシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図2に示したユニット位置決めレバー11の上面図である。 図2に示した芯固定グリップ12の動作を説明する図であり、(a)(b)はそれぞれ芯固定グリップ12の下面がストッパー15から離れているときの底面図及び断面図であり、(c)(d)はそれぞれ芯固定グリップ12の下面がストッパー15に接触しているときの底面図及び断面図である。 図2に示した先端部材9の拡大図である。 操作レバー10を筆記可能位置にセットした場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図6の状態から操作レバー10を芯補充位置に移動した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図7の状態から操作レバー10を筆記可能位置に戻した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図8の状態において、ペン先を筆記面Sに当接させて筆記を開始した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図9の状態において、ペン先を筆記面Sから離した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 筆記を続けて芯Lが短くなり、後端のわずかな部分のみが芯固定グリップ12に挟持されている状態になった場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図11の状態において、ペン先を筆記面Sから離した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図11の状態においてペン先を筆記面Sから離した時点で、替え芯ストッカー5内に次の芯Lが存在した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図13の状態において、ペン先を筆記面Sに当接させて筆記を続けた場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図14の状態で筆記した後、ペン先を筆記面Sから離した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 図15の状態において、操作レバー10を芯補充位置にセットした場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。 芯プロテクター20の製造工程を示すフロー図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態によるシャープペンシル1の断面図である。また、図2は、図1に示したシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。これらの図に示すように、シャープペンシル1は、筐体2、先端ブラケット3、消しゴム固定ブラケット4、替え芯ストッカー5、チャック機構6、コイルスプリング7、ブラケット8、及び、先端部材9を有して構成される。
筐体2はシャープペンシル1の本体を構成する略筒状の部材であり、典型的には、アルミニウム合金や樹脂成形品などの軽量な材料を用いて形成される。ただし、高級感を演出するために、より重い材料を用いて筐体2を構成してもよい。筐体2の内部は前端から後端まで貫通しており、後端側から順に、第1の中空部2a、第2の中空部2b、第3の中空部2cを構成している。第1の中空部2a、第2の中空部2b、及び第3の中空部2cはいずれもペン軸を円筒軸とする円筒状の空間であり、第2の中空部2bの直径は第1の中空部2a及び第3の中空部2cの直径よりも小さくなっている。筐体2はさらに、後述する操作レバー10を収納するための凹部2dを側面に有している。凹部2dの底面の一部にはペン軸方向を長軸とする長方形状の貫通孔2eが設けられており、凹部2dと第2の中空部2bとは、この貫通孔2eを通じて連通している。
第1の中空部2a内には、円筒状の消しゴムEを把持するための消しゴム固定ブラケット4が固定される。図示していないが、消しゴムEを覆うヘッドキャップをシャープペンシル1の後端に設けることとしてもよい。消しゴム固定ブラケット4の把持力は、消しゴムEの自然な脱落を防止できる一方で、人力で容易に消しゴムEを引き抜くことのできる程度の力に設定される。消しゴムEの下部には、芯詰まり解除バーRの一端が挿入される。芯詰まり解除バーRは、シャープペンシル1で利用する芯Lよりも少し細い程度の径を有する針状の部材である。芯詰まり解除バーRの中ほどには環状部が設けられており、この環状部を消しゴムE内に埋め込むことにより、消しゴムEからの芯詰まり解除バーRの脱落が防止されている。芯詰まり解除バーRは、先端部材9内に芯Lが詰まったときに、筐体2から取り外した先端部材9内に芯詰まり解除バーRの他端を挿入することによって、詰まりを解消するために使用される。
第2の中空部2bには、複数の芯Lを収納可能に構成された略筒状の部材である替え芯ストッカー5とチャック機構6の一部とが、それぞれペン軸方向に移動可能な状態で挿入される。替え芯ストッカー5は、典型的には、アルミニウム合金などの軽量な金属材料を用いて構成される略円筒状の部材である。替え芯ストッカー5の外径は第2の中空部2bの内径よりわずかに小さく設定されており、これにより替え芯ストッカー5は、第2の中空部2b内をペン軸方向に、揺れることなく移動可能に構成されている。替え芯ストッカー5の内部は前端から後端まで貫通しており、後端側から順に、第1の中空部5a、第2の中空部5b、第3の中空部5cを構成している。第1の中空部5a、第2の中空部5b、及び第3の中空部5cはいずれも、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間であり、第2の中空部5bの直径は第1の中空部5a及び第3の中空部5cの直径よりも小さくなっている。
第1の中空部5aの直径は、複数の芯Lを径方向に並べて収納できる値に設定される。第1の中空部5aの後端は第1の中空部2aと連通しており、消しゴムEを外すと、第1の中空部2aを通じて複数の芯Lを挿入することが可能とされている。第1の中空部5aは、芯詰まり解除バーRの他端を収納する役割も果たす。第2の中空部5bの直径は、1本の芯Lが抵抗なく通過できる一方で、複数の芯Lは通過できない値に設定される。第2の中空部5bの後端は第1の中空部5aと連通しており、第1の中空部5aから同時に1本の芯Lのみを受け入れるように構成される。第3の中空部5cは、第2の中空部5bの前端と連通している。第3の中空部5cには、後述する芯固定グリップ12の後端に設けられる凸部12aが螺合により固定される。
筐体2に再び着目し、第3の中空部2cには、先端ブラケット3の後端に設けられる凸部3aが取り外し可能に嵌め込まれ、固定される。先端ブラケット3は、シャープペンシル1のペン先の周囲を構成する部材である。先端ブラケット3の内部は前端から後端まで貫通しており、図2に示すように、後端側から順に、第1の中空部3b、第2の中空部3c、第3の中空部3dを構成している。第1の中空部3b、第2の中空部3c、第3の中空部3dはいずれも、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間であり、第1の中空部3bの直径は第2の中空部3cの直径より大きく、第2の中空部3cの直径は第3の中空部3dの直径より大きくなっている。
第1の中空部3bは、第2の中空部2bとほぼ等しい直径を有している。ただし、第1の中空部3bの最前端部分は、その他の部分に比べて若干小さな直径で形成される。これは、後述するストッパー15が後述する操作レバー10の操作の結果として第1の中空部3bの最前端に位置しているときに、第1の中空部3bとストッパー15のはめ合いにより、コイルスプリング7の弾性力によってストッパー15が移動しないようにするためである。したがって、このはめ合いによる把持力はコイルスプリング7の弾性力よりも大きい値に設定される。なお、このはめ合いによる把持力はまた、ストッパー15とカムブラケット14の間の接着力より弱い必要があるが、この点については後述する。
第1の中空部3bの後端は第2の中空部2bと連通しており、チャック機構6の一部及びコイルスプリング7の一部がそれぞれペン軸方向に移動可能な状態で挿入される。第2の中空部3cの後端は、第1の中空部3bと連通している。第2の中空部3cには、コイルスプリング7の一部又は全部、ブラケット8、及び、先端部材9の一部がそれぞれペン軸方向に移動可能な状態で挿入される。第3の中空部3dの後端は、第2の中空部3cと連通している。第3の中空部3dには、先端部材9の一部がペン軸方向に移動可能な状態で挿入される。第3の中空部3dの直径は先端部材9に含まれる後述のフランジ20aより小さく、したがって、第3の中空部3dと第2の中空部3cの境界に形成される段差は、先端部材9の脱落を防止する役割を果たす。
次に、チャック機構6は、図1及び図2に示すように、操作レバー10、ユニット位置決めレバー11、芯固定グリップ12、コイルスプリング13、カムブラケット14、ストッパー15を有して構成される。
操作レバー10は、例えばアルミニウム合金などの軽量な金属材料を用いて形成される部材であり、ペン軸方向に移動可能な状態で筐体2の凹部2d内に嵌め込まれる。操作レバー10の表面は筐体2の外側に露出しており、ユーザによる操作レバー10の操作が可能とされている。
操作レバー10の底面(筐体2の内側に位置する表面)には、2つの凹部10a,10bが設けられる。このうち凹部10aの中には、奥側から順に、コイルスプリング10c、板状体10d、及びユニット位置決めRボール10eが配置される。一方、凹部10bの中には、後述するユニット位置決めレバー11の突起11bがペン軸方向に一定量の遊びを有する状態で挿入される。
ユニット位置決めRボール10e及び板状体10dは、例えばアルミニウム合金などの軽量な金属材料を用いて形成される部材であり、凹部10aの奥行き方向に移動可能に構成される。コイルスプリング10cは、例えば丸線コイルによって構成されるスプリングであり、板状体10dを介してユニット位置決めRボール10eを外向きに付勢する役割を果たす。この付勢力が操作レバー10の位置をロックする役割を担うので、コイルスプリング10cとしては、やや強力な弾性力を有するスプリングを用いることが好ましい。
ユニット位置決めレバー11は、操作レバー10の動きを芯固定グリップ12に伝える役割を果たす部材であり、典型的には、アルミニウム合金などの軽量な金属材料を用いて形成される。
図3は、ユニット位置決めレバー11の上面図である。同図に示すように、ユニット位置決めレバー11は、中央に開口部11aを有する円形の部分に突起11bが設けられた構造を有している。開口部11aには芯固定グリップ12の凸部12aが嵌め込まれる。上述したように、凸部12aの先端は第3の中空部5cと螺合しているので、ユニット位置決めレバー11は、芯固定グリップ12と替え芯ストッカー5の間に挟み込まれた状態で固定されることになる。
また、突起11bは、図2に示した貫通孔2eを通じて、操作レバー10の底面に設けられた凹部10bに挿入される。上述したように、貫通孔2eはペン軸方向を長軸とする長方形状の孔であり、短軸方向の内壁によって突起11bの円周方向の移動(すなわち、ユニット位置決めレバー11の回転)を禁止するとともに、長軸方向の内壁によってユニット位置決めレバー11のペン軸方向の移動を一定範囲内に規制する役割を果たす。これに伴い、ユニット位置決めレバー11に固定されている替え芯ストッカー5の移動も規制されるので、シャープペンシル1からの替え芯ストッカー5の脱落が防止される。
図2に戻り、凹部10bのペン軸方向の幅は突起11bのペン軸方向の幅よりも若干大きく設定されており、これにより突起11bと凹部10bの間にはペン軸方向に一定量の遊びが生じている。詳しくは後述するが、この遊びは、芯Lに引っ張られた芯固定グリップ12が操作レバー10を移動させることなくペン軸方向に移動できるようにするために設けられているものである。
凹部2dは、操作レバー10の円周方向の移動を禁止するとともに、ペン軸方向の移動を一定範囲内に規制する役割を果たす。凹部2dの底面には、それぞれユニット位置決めRボール10eに嵌合する形状を有する2つの凹部2da,2dbが設けられる。凹部2da,2dbは、シャープペンシル1の後端側から順に、ペン軸方向に沿って並置される。
操作レバー10が規制された移動範囲内の一番後端側にある場合、ユニット位置決めRボール10eが凹部2daに嵌合し、操作レバー10のペン軸方向への移動が緩やかに規制された状態(すなわち、特に力が加わらない限り移動しない状態)となる。図1及び図2には、シャープペンシル1がこの状態にある場合を示している。これらの図に示すように、この状態では先端部材9が先端ブラケット3内に収納され、シャープペンシル1による筆記ができなくなる。したがって以下では、このときの操作レバー10の位置を「ペン先収納位置」と称する。
操作レバー10がペン先収納位置からペン先に向かって移動し、ユニット位置決めRボール10eが凹部2dbに嵌合した状態になると、操作レバー10は再度、ペン軸方向への移動が緩やかに規制された状態となる。詳しくは後述するが、この状態では先端部材9が先端ブラケット3から突出し、筆圧がかかっている間、チャック機構6は芯Lを狭持し続ける。その結果としてシャープペンシル1による筆記が可能になるので、以下では、このときの操作レバー10の位置を「筆記可能位置」(第1の位置)と称する。
操作レバー10が筆記可能位置からペン先に向かってさらに移動し、ユニット位置決めRボール10eが凹部2dbから外れかけた状態になると、操作レバー10は、規制された移動範囲内の一番前端側に到達する。詳しくは後述するが、この状態ではチャック機構6が芯Lを解放した状態となる。したがって、新たな芯Lを先端部材9に送り込むことが可能になるので、以下では、このときの操作レバー10の位置を「芯補充位置」(第2の位置)と称する。
芯固定グリップ12は略円筒状の部材であり、例えば真鍮や銅などの非鉄金属によって構成される。芯固定グリップ12は、後端に凸部12aを、前端に円錐台部12bを有して構成される。このうち円錐台部12bは、ペン軸を円錐軸とし、前端ほど直径が広がるように構成された円錐台の形状を有している。芯固定グリップ12の後端に位置する凸部12aは、上述したように、替え芯ストッカー5及びユニット位置決めレバー11に対して固定される。これにより、芯固定グリップ12は、替え芯ストッカー5及びユニット位置決めレバー11と連動して、第2の中空部2b内をペン軸方向に移動可能に構成される。芯固定グリップ12の内部は前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部12cを構成している。
コイルスプリング13は、ユニット位置決めレバー11とカムブラケット14の間に配置されたスプリングであり、例えば丸線コイルによって構成される。コイルスプリング13は、カムブラケット14をペン先に向かって付勢する役割を担う。コイルスプリング13の弾性力は、後述するコイルスプリング7の弾性力よりも小さな値に設定される。これは、筆記中にペン先に加わっていた筆圧が0になってコイルスプリング7が伸張し、先端部材9が前進するときに、芯固定グリップ12を前進させるための設定である。詳しくは、図10を参照して後述する。
カムブラケット14は、例えば真鍮や銅などの非鉄金属によって構成される略円筒状の部材である。カムブラケット14の外径は第1の中空部3bの内径よりわずかに小さく設定されており、これによりカムブラケット14は、第1の中空部3b内をペン軸方向に、揺れることなく移動可能に構成されている。カムブラケット14の内部は前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部14aを構成している。中空部14aのペン先側の半分程度の内周面は、前端ほど直径が広がるように構成されたテーパー面14aaとなっている。中空部14aには芯固定グリップ12の円錐台部12bが挿入される。カムブラケット14の後端側表面は、例えば接着材によってコイルスプリング13の前端に固定されてもよいし、固定されなくてもよい。
ストッパー15は、例えば樹脂成形部品によって構成される円筒状の部材であり、チャック機構6が第1の中空部3bの前端よりもペン先側に移動することを規制する役割を果たす。ストッパー15の外径は、第1の中空部3bの最前端部分との間ではめ合いの関係が成立する値に設定される。これにより、ストッパー15は、第1の中空部3bの最前端部分に位置しているときには、第1の中空部3bによって一定の把持力で把持された状態となる。一方、ストッパー15は、第1の中空部3bのその他の部分に位置しているときには、上記把持力が働かない状態で、第1の中空部3b内をペン軸方向に、揺れることなく移動可能に構成される。
ストッパー15の内部も前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部15aを構成している。中空部15aの直径は、1本の芯Lが抵抗なく通過できる一方で、複数の芯Lは通過できない値に設定される。
ストッパー15は、例えば接着材により、はめ合いによる第1の中空部3bの把持力よりも強い力で、カムブラケット14の前端側表面に固定される。この固定は、操作レバー10がペン先収納位置にあるときに先端部材9を先端ブラケット3内に収納できるようにするために必要な構成である。詳しく説明すると、操作レバー10を筆記可能位置からペン先収納位置に移動すると、芯固定グリップ12が後退し、それに伴ってカムブラケット14も後退する。このとき、もしストッパー15とカムブラケット14とが接着されていないとするとと、カムブラケット14が後退してもストッパー15は第1の中空部3bの最前端に位置したままとなるので、先端部材9を先端ブラケット3内に収納することはできなくなる。これに対し、ストッパー15とカムブラケット14とがはめ合いによる第1の中空部3bの把持力よりも強い力で接着されていれば、カムブラケット14の後退に伴ってストッパー15も後退することになるので、先端部材9を先端ブラケット3内に収納することが可能になる。なお、もしストッパー15、コイルスプリング7、ブラケット8、及び先端部材9がそれぞれの境界で接着されていれば、先端部材9は、ストッパー15の後退に伴って自動的に先端ブラケット3内に収納されることになる。一方、ストッパー15、コイルスプリング7、ブラケット8、及び先端部材9のいずれかの境界で接着がされていなければ、ペン先を筆記面Sに押しつけたり指で押し込むことによって、先端部材9の先端ブラケット3内への収納が実現される。
図4は、芯固定グリップ12の動作を説明する図である。図4(a)(b)はそれぞれ、カムブラケット14の位置を基準として芯固定グリップ12が相対的に上側にあるときの底面図及び断面図である。また、図4(c)(d)はそれぞれ、カムブラケット14の位置を基準として芯固定グリップ12が相対的に下側にあるときの底面図及び断面図である。以下、これらの図を参照しながら、芯固定グリップ12のより詳細な構成及び動作について説明する。なお、以下の説明では、図4(a)(b)に対応する芯固定グリップ12の位置を単に「上側位置」と称し、図4(c)(d)に対応する芯固定グリップ12の位置を単に「下側位置」と称する。
初めに図4(a)(c)を参照すると、芯固定グリップ12は、円周方向に沿って等間隔に6つの部分12da〜12dfに分割されている。これらの部分12da〜12dfは芯固定グリップ12の後端部で相互に接続されており、この接続を通じて外向きに付勢されている。なお、ここでは6つの部分に分割する例を説明するが、6つである必要はなく、2つ以上であればよい。また、図4(b)に示す円錐台部12bの頂角θ1は、ペン軸を含む断面内でテーパー面14aaがペン軸となす角θ2と同じ値に設定される。
図示した距離Gは、ストッパー15の上面と芯固定グリップ12の下面との間の距離である。芯固定グリップ12が上側位置にある図4(b)ではG>0、芯固定グリップ12が下側位置にある図4(d)ではG=0となっている。
図4(b)のようにG>0となるのは、芯固定グリップ12が前端に向かって付勢されていない場合である。詳しくは後述するが、このような場合は、操作レバー10がペン先収納位置にあるとき(例えば、図1及び図2を参照)と、操作レバー10が筆記可能位置にあるとき(筆圧をかけて筆記中のときを含む。例えば、後述する図6、図8、図9、図11を参照)とに発生し得る。このとき、図4(b)に示すように、テーパー面14aaから円錐台部12bに対し矢印Aで示す径方向の力が加わるので、図4(a)に示すように、芯固定グリップ12の部分12da〜12dfが密着し、芯固定グリップ12により芯Lが挟持された状態となる。以下では、このときの中空部12cの直径をR1、芯固定グリップ12のうち凸部12a及び円錐台部12b以外の部分の直径をR2とする。
一方、図4(d)のようにG=0となるのは、芯固定グリップ12が前端に向かって付勢されている場合である。詳しくは後述するが、このような場合は、ユーザが意図的に操作レバー10を芯補充位置にしたとき(例えば、後述する図7を参照)と、芯搬送グリップ22によって芯Lが前端向きに引っ張られているとき(例えば、後述する図10を参照)とに発生し得る。このとき、図4(b)に示した矢印Aで示す方向の力が消失(又は減少)し、図4(c)に示すように、芯固定グリップ12の部分12da〜12dfが広がった状態となる。その結果、中空部12cも広がるので、芯固定グリップ12は芯Lを解放した状態となる。したがって、芯Lは、重力に従い、図4(d)に矢印Bで示す向きに落下することになる。
ここで、広がった中空部12cの直径をR1+δとすると、芯固定グリップ12のうち凸部12a及び円錐台部12b以外の部分の直径もR2+δとなる。中空部14aの最狭部の直径R3は、この直径R2+δと同じか、それよりも若干大きな値に設定される。こうすることで、G=0となるときに、芯固定グリップ12の部分12da〜12dfを広げ、芯Lを解放することが可能になる。
図2に戻る。コイルスプリング7は、長方形の断面を有する線材によって構成されたスプリングであり、芯プロテクター20を前方に付勢している。コイルスプリング7とストッパー15との間は、接着してもよいし、接着しなくてもよい。コイルスプリング7の内径は、芯Lが抵抗なく通過できる範囲で、芯Lの直径とほぼ等しい値に設定される。この設定は、コイルスプリング7の部分でも芯Lの端部が宙に浮いた状態にならないようにするためのものであり、こうすることにより、芯Lを補充する際、次の芯Lの先端によって先の芯Lの後端を支えることが可能になる。この点についての詳細は後述する。また、コイルスプリング7の外径は第2の中空部3cの内径よりわずかに小さく設定されており、これによりコイルスプリング7は、第2の中空部3c内をペン軸方向に、揺れることなく移動可能に構成されている。
ブラケット8は、コイルスプリング7と先端部材9の間に配置される円筒状の部材であり、例えば引き抜き加工によって形成された金属部品又は樹脂の成形品によって構成される。ブラケット8とコイルスプリング7及び先端部材9それぞれとの間は、接着してもよいし、接着しなくてもよい。ブラケット8の外径も第2の中空部3cの内径よりわずかに小さく設定されており、これによりブラケット8は、第2の中空部3c内をペン軸方向に、揺れることなく移動可能に構成されている。ブラケット8の内部は前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部8aを構成している。中空部8aの内径は、芯Lが抵抗なく通過できる範囲で、芯Lの直径とほぼ等しい値に設定される。また、中空部8aの後端は、コイルスプリング7内の空間に連通している。ブラケット8は、先端部材9をコイルスプリング7に接続するとともに、先端部材9に加わる筆圧をコイルスプリング7に伝達する役割を果たす。
先端部材9はシャープペンシル1のペン先を構成する部材であり、芯プロテクター20、ブラケット21、及び芯搬送グリップ22によって構成される。
図5は、先端部材9の拡大図である。芯プロテクター20は、絞り加工によって略円筒状に形成される金属製(より好適には、ステンレス製)の部品であり、同図に示すように、後端にフランジ20aを、前端に狭窄部20bをそれぞれ有して構成される。芯プロテクター20の詳細な製造方法については、後ほど図17を参照して詳しく説明する。フランジ20aは、芯プロテクター20の他の部分に比べて広い直径を有する部分であり、狭窄部20bは、芯プロテクター20の他の部分に比べて小さい直径を有する部分である。絞り加工によって芯プロテクター20を製作していることから、狭窄部20bは、絞り加工ならではの滑らかな表面を有している。これにより、シャープペンシル1では、筆記時のユーザの疲労感が低減されている。
芯プロテクター20の内部は前端から後端まで貫通しており、後端側から順に、第1の中空部20c、第2の中空部20dを構成している。第1の中空部20c及び第2の中空部20dはいずれも、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である。詳しくは図17を参照して説明するが、第2の中空部20dは、例えばプレスによる穴あけ加工を用いて狭窄部20bに設けられる。第1の中空部20cの直径R4は、第2の中空部20dの直径R5(=狭窄部20bの内径)よりも大きな値に設定される。
芯プロテクター20の外径は、例えば直径3mmの芯Lを用いる場合であれば、約0.74mmである。第3の中空部3dの直径は、上述したようにはめ合いによって芯プロテクター20を把持する一方で、ペン軸方向に一定量の力を加えれば芯プロテクター20を移動させることのできる程度の値に構成される。操作レバー10が上述したペン先収納位置にある場合には、この第3の中空部3dによる把持力によって、先端部材9の先端ブラケット3内からの自重による飛び出しが防止される。
また、第2の中空部20dの直径R5は、芯Lが抵抗なく通過できる範囲で、芯Lの直径とほぼ等しい値に設定される。例えば直径0.3mmの芯Lを用いる場合であれば、直径0.3mmのパンチを用いて穴あけ加工を行うことによって第2の中空部20dを設ければよい。こうすることで、第2の中空部20dの直径を芯Lの直径とほぼ等しくすることができるので、芯Lが第2の中空部20dの近傍で折れてしまうことを防止できる。
ブラケット21は、第1の中空部20cのうち相対的に後方の位置に挿入される円筒状の部材であり、ブラケット8と同様に、例えば引き抜き加工によって形成された金属部品又は樹脂の成形品によって構成される。ブラケット21の外周面は、例えば接着材により芯プロテクター20の内周面に固定される。ブラケット21の内部は前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部21aを構成している。
芯搬送グリップ22は、第1の中空部20cのうち相対的に前方の位置に挿入される円筒状の部材であり、樹脂、シリコン、皮革、コルク、布など、一定の弾性力を有する弾性材料によって構成される。芯搬送グリップ22の外周面も、例えば接着材により芯プロテクター20の内周面に固定される。この固定は、比較的柔らかい材料により構成される芯搬送グリップ22の形が崩れてしまうことを防止するためのものであり、型崩れのおそれがない場合には固定しなくてもよい。芯搬送グリップ22の内部も前端から後端まで貫通しており、ペン軸を円筒軸とする円筒状の空間である中空部22aを構成している。
ブラケット21及び芯搬送グリップ22の外径は、第2の中空部20dの直径R5よりも大きな値に設定される。これにより、ブラケット21及び芯搬送グリップ22が第2の中空部20dを通じて脱落することが防止されている。
中空部21aの直径は、第2の中空部20dの直径R5と同じ値に設定される。したがって、芯Lは中空部21aを抵抗なく通過することができる。一方、中空部22aの直径は、直径R5よりもわずかに小さな値に設定される。したがって、中空部22aの直径だけを見ると芯Lは中空部22aを通過できないことになるが、芯搬送グリップ22が一定の弾性力を有する材料によって構成されていることから、ペン軸方向に力を加えれば、中空部22aに芯Lを通すことができる。中空部22a内に芯Lが位置している状態でペン軸方向の力が消失すると、芯Lは芯搬送グリップ22によって把持され、移動できない状態となる。
以上、シャープペンシル1の構造について説明した。次に、図6〜図10を参照しながら、シャープペンシル1の動作について、詳しく説明する。
図6は、操作レバー10を筆記可能位置にセットした場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。同図に示すように、この場合にはストッパー15が可動範囲の最前端(第1の中空部3bと第2の中空部3cの境界)まで移動するとともに、コイルスプリング13の弾性力により芯固定グリップ12が後端向きに付勢され、ストッパー15の上面と芯固定グリップ12の下面との間の距離Gが0より大きい値となる。また、ストッパー15が最前端まで移動していることに伴い、先端部材9は先端ブラケット3から突出した状態となる。
図6には、操作レバー10を筆記可能位置にセットした時点で、芯Lがまだ替え芯ストッカー5内にあった場合を示している。この場合、芯固定グリップ12には前端に向かう付勢力が加わっていないので、図4(a)(b)を参照して説明したように、芯固定グリップ12は芯Lを挟持する状態となる。したがって、替え芯ストッカー5内の芯Lは、重力に従ってペン先への移動を開始しても、芯固定グリップ12を通過することができず、図6に示すように、芯固定グリップ12の中ほどで止まった状態となる。
図7は、図6の状態から操作レバー10を芯補充位置に移動した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。この場合、ユニット位置決めレバー11によって前端に向かう付勢力が芯固定グリップ12に加えられるので、図4(c)(d)を参照して説明したように、ストッパー15の上面と芯固定グリップ12の下面との間の距離Gが0となり、芯固定グリップ12は芯Lを解放する状態となる。その結果として、芯固定グリップ12の中ほどで止まっていた芯Lは、重力に従ってペン先まで移動することになる。ただし、自由落下しているにすぎないので、芯Lの移動は、芯Lの先端が芯搬送グリップ22内に達したところで停止する。
図8は、図7の状態から操作レバー10を筆記可能位置に戻した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。この場合、ユニット位置決めレバー11から芯固定グリップ12に対して加えられていた付勢力が消失し、芯Lは再び、芯固定グリップ12によって挟持された状態となる。
図9は、図8の状態において、ペン先を筆記面Sに当接させて筆記を開始した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。なお、同図及び図10では、紙面スペースの関係でシャープペンシル1を垂直に、筆記面Sを斜めに描いているが、実際には、多くの場合、筆記面Sが水平であり、シャープペンシル1が斜めである。
ペン先に筆圧が加わると、コイルスプリング7が縮み、先端部材9が後退する。筆圧は、コイルスプリング7を介してストッパー15にも伝わるが、第1の中空部3bの最前端部分の把持力によってストッパー15の移動が規制されていることから、ストッパー15及びカムブラケット14が後退することはない。したがって、芯固定グリップ12は一定の位置で芯Lを挟持し続けるので、芯Lは筆圧によって後退することなく先端部材9から突出し、筆記可能な状態となる。
図10は、図9の状態において、ペン先を筆記面Sから離した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。ペン先に加わっていた筆圧が0になると、コイルスプリング7が伸張し、先端部材9が前進する。このとき、芯搬送グリップ22によって把持されている芯Lを通じて、芯固定グリップ12が前端向きに付勢される。芯固定グリップ12は、コイルスプリング13の弾性力によって後端向きに付勢されているが、コイルスプリング7の弾性力及び芯搬送グリップ22による芯Lの把持力はこの付勢力に打ち勝ち、凹部10bの遊びの範囲内で芯固定グリップ12を前進させる。その結果、ストッパー15の上面と芯固定グリップ12の下面との間の距離Gが0となって芯固定グリップ12が芯Lを解放するので、先端部材9の前進に伴って芯Lも前進する。したがって、ノック操作をすることなく、自動的に芯Lが繰り出されていくことになる。
図11は、筆記を続けて芯Lが短くなり、後端のわずかな部分のみが芯固定グリップ12に挟持されている状態になった場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。また、図12は、図11の状態において、ペン先を筆記面Sから離した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。図12に示すように、この場合、先端部材9の前進に伴って芯Lの後端が芯固定グリップ12から離れてしまう。そうすると、この後、筆記を再開しようとしても、芯固定グリップ12に挟持されていない芯Lが筆圧によって後退してしまうので、うまく書くことができなくなる。このような場合であっても、次の芯Lがあれば、筆記を続けることができる。以下、図13及び図14を参照して詳しく説明する。
図13は、図11の状態においてペン先を筆記面Sから離した時点で、替え芯ストッカー5内に次の芯Lが存在した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。また、図14は、図13の状態において、ペン先を筆記面Sに当接させて筆記を続けた場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。なお、以下の説明では、先の芯Lを芯L1と称し、次の芯Lを芯L2と称して、これらを区別する。
図13には、筆圧の消失に伴って芯固定グリップ12が解放状態となった間隙を縫って次の芯L2が芯固定グリップ12の前端を超えて落下し、芯L1の後端に接触した場合を示している。なお、芯固定グリップ12は、芯L1の後端が芯固定グリップ12から離れた時点で、コイルスプリング13の弾性力によって後端側に戻るので、タイミングによっては、芯L1の後端に接触する前に芯L2の落下が止まってしまう可能性もある。そのような場合については、後ほど図15及び図16を参照して説明する。
芯L2の前端が芯L1の後端に接した状態で筆記が開始されるとき、図14に示すように、芯固定グリップ12は芯L2を挟持している状態となっている。加えて、シャープペンシル1では、長方形の断面を有する線材によってコイルスプリング7を構成し、その内径を芯Lの直径とほぼ等しくしていることから、コイルスプリング7の部分でも芯L1,L2の端部が宙に浮いた状態にならないので、芯L2の先端によって芯L1の後端を支えることができる。したがって、筆圧による芯L1の後退が防止されるので、通常どおり筆記を続けることが可能になる。
図15は、図13と同様、図11の状態においてペン先を筆記面Sから離した時点で、替え芯ストッカー5内に次の芯Lが存在した場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。同図には、筆圧の消失に伴って次の芯L2が落下してきたが、芯L1の後端に接触する前にその落下が止まってしまった場合を示している。また、図16は、図15の状態において、操作レバー10を芯補充位置にセットした場合におけるシャープペンシル1の先端部分の拡大図である。
図15のような状態になると、最早芯L2の先端によって芯L1の後端を支えることができなくなるので、芯L1が筆圧によって後退してしまい、うまく書くことができなくなる。このとき、図16に示すように、操作レバー10を一度芯補充位置にセットすることで、芯L2が落下し、再び芯L1,L2が当接した状態を得ることができる。したがって、筆圧による芯L1の後退が防止され、図14の場合と同様に、通常どおり筆記を続けることが可能になる。
ところで、図14に示す例のように、芯L1が短くなり、芯搬送グリップ22によって把持されている芯L1と、芯固定グリップ12によって挟持されている芯L2とが異なることとなった場合、筆圧の消失に伴ってコイルスプリング7が伸張することによって芯L1が前進しても、芯固定グリップ12を前進させることができない。したがって、自動繰り出しは機能しなくなる。しかし、図16のように操作レバー10を一度芯補充位置にセットすることで芯L2を落下させれば、再び芯L1,L2が当接した状態を得ることができる。したがって、筆圧による芯L1の後退が防止され、通常どおり筆記を続けることが可能になる。そして、この状態は、芯L1が芯搬送グリップ22によって保持されている限り維持することができるので、シャープペンシル1によれば、残りの長さが芯プロテクター20の厚み以下になるまで、芯L1を使い続けることが可能になる。
図17は、芯プロテクター20の製造工程を示すフロー図である。以下、この図17を参照しながら、図5に示した芯プロテクター20の製造方法について詳しく説明する。
芯プロテクター20の製造は、順送型の金型を用い、ブランクを送りながら実施される。具体的に説明すると、まず絞り加工により、板状のブランクに円筒状の突出部分を形成する(ステップS1)。具体的には、パンチとダイを用いてブランクのプレスを行う。ステップS1において、複数回にわたるプレスを実施することとしてもよい。こうして形成した突出部分の先端が上述した狭窄部20bとなるが、絞り加工によって形成しているので、狭窄部20bの表面は、絞り加工ならではの滑らかな表面となる。したがって、筆記時のユーザの疲労感を低減することが可能になる。
次に、パンチとダイを用いて穴あけ加工を行うことにより、突出部分の先端(狭窄部20b)の底面に、突出部分の内径により小さい径の孔を形成する(ステップS2)。この孔は、図5に示した第2の中空部20dとなる。
最後に、図5に示したフランジ20aを残してブランクをトリミングすることにより、突出部分をブランクから分離する(ステップS3)。こうして分離された部分により、図5に示した芯プロテクター20が構成される。最後に、必要に応じてバリ取りを行い、芯プロテクター20が完成する。
以上説明したように、本実施の形態によるシャープペンシル1によれば、芯プロテクター20の先端付近に芯搬送グリップ22を設けることができるので、無駄になる芯Lの量を低減することが可能になる。また、替え芯ストッカー5内に芯Lがある限り、筆記を続けることが可能になる。
また、本実施の形態によるシャープペンシル1によれば、長方形の断面を有する線材によってコイルスプリング7を構成し、その内径を芯Lの直径とほぼ等しくしていることから、コイルスプリング7の部分でも芯Lの端部が宙に浮いた状態にならないようにすることができるので、次の芯L2の先端によって先の芯L1の後端を支えることが可能になる。
さらに、図17を参照して説明した製造方法によれば、極細(典型的には、外径0.74mm程度)の有底円筒を形成可能な絞り加工によって芯プロテクター20を製造するので、良好な書き味を確保しつつ、芯搬送グリップ22の落下を防止するための狭窄部20bを芯プロテクター20の先端に形成することが可能になる。また、狭窄部20bの表面が絞り加工ならではの滑らかな表面となるので、筆記時のユーザの疲労感を低減することが可能になる。
また、芯搬送グリップ22をシリコンなどの弾性材料によって構成しているので、本実施の形態によるシャープペンシル1によれば、例えば図14のように芯L1が芯固定グリップ12によって挟持されていない状態になっても、芯L1の回転が発生しにくく、その結果として、芯L1の先端が竹を日本刀で斜めに切った切り口のような形になりにくいため、紙面に刺さったり、紙面を切ってしまったりというような、紙面に傷をつけてしまう事態の発生が防止されるという効果も得られる。
また、本実施の形態によるシャープペンシル1によれば、構造がシンプルであるため、部品点数及び製造コストを抑えることも可能になる。加えて、3分割のボディー(筐体2、先端ブラケット3、及び、図示しないヘッドキャップ)であるためデザインの自由度が高いことから、低価格であるにもかかわらず、高級感を持たせることも可能になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、図17では、芯プロテクター20の製造が順送プレス工程の中で完結する例を説明したが、単発プレス工程を複数回にわたって実行することで芯プロテクター20を製造してもよいし、ステップS2の実行に代え、ステップS3の後に旋盤を用いて穴開け加工を行うことにより第2の中空部20dを形成することとしてもよい。また、プレスに代え、電気鋳造又は3Dプリンターを用いて芯プロテクター20を製造することとしてもよい。
1 シャープペンシル
2 筐体
2a 筐体2の第1の中空部
2b 筐体2の第2の中空部
2c 筐体2の第3の中空部
2d,2da,2db 筐体2の凹部
2e 筐体2の貫通孔
3 先端ブラケット
3a 先端ブラケット3の凸部
3b 先端ブラケット3の第1の中空部
3c 先端ブラケット3の第2の中空部
3d 先端ブラケット3の第3の中空部
4 消しゴム固定ブラケット
5 替え芯ストッカー
5a 替え芯ストッカー5の第1の中空部
5b 替え芯ストッカー5の第2の中空部
5c 替え芯ストッカー5の第3の中空部
6 チャック機構
7 コイルスプリング
8 ブラケット
8a ブラケット8の中空部
9 先端部材
10 操作レバー
10a,10b 操作レバー10の凹部
10c コイルスプリング
10d 板状体
10e ユニット位置決めRボール
11 位置決めレバー
11a 開口部
11b 突起
12 芯固定グリップ
12a 芯固定グリップ12の凸部
12b 芯固定グリップ12の円錐台部
12c 芯固定グリップ12の中空部
12da〜12df 芯固定グリップ12の部分
13 コイルスプリング
14 カムブラケット
14a カムブラケット14の中空部
14aa カムブラケット14の中空部14aのテーパー面
15 ストッパー
15a ストッパー15の中空部
20 芯プロテクター
20a 芯プロテクター20のフランジ
20b 芯プロテクター20の狭窄部
20c,20d 芯プロテクター20の中空部
21 ブラケット
21a ブラケット21の中空部
22 芯搬送グリップ
22a 芯搬送グリップ22の中空部
R 芯詰まり解除バー
E 消しゴム
L,L1,L2 芯
S 筆記面

Claims (3)

  1. 絞り加工によって前端に狭窄部を有するように形成され、かつ、ペン軸方向に沿って移動可能に構成された金属製の芯プロテクターと、
    前記芯プロテクターの内部のうち相対的に前方の位置に挿入され、前記狭窄部の内径よりも大きい外径を有する筒状の芯搬送グリップと、
    前記芯プロテクターの内部のうち相対的に後方の位置に挿入され、前記芯プロテクターに対して固定された筒状のブラケットと、
    前記芯プロテクターを前方に付勢するコイルスプリングと、
    ペン軸方向に沿って移動可能に構成され、後退時には前記芯プロテクター内に挿入された芯の後部を狭持する一方、前進時には前記芯を解放する芯固定グリップを有するチャック機構と、
    を備え、
    前記チャック機構は、前記芯固定グリップに固定された操作レバーを有し、
    前記チャック機構は、前記操作レバーが第1の位置にある場合に前記芯固定グリップが前記芯の後部を狭持し、前記操作レバーが第2の位置にある場合に前記芯固定グリップが前記芯を解放するよう構成される、
    自動繰り出し式のシャープペンシル。
  2. 前記コイルスプリングは、長方形の断面を有する線材によって構成される、
    請求項1に記載のシャープペンシル。
  3. 前記操作レバーは、前記シャープペンシルの筐体の側面に配置される、
    請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
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