以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の実施形態によるシャープペンシル1の縦断面図であり、図2は、図1のシャープペンシル1の前半分の拡大断面図であり、図3は、図1のシャープペンシル1の後半分の拡大断面図である。
シャープペンシル1は、前軸2と、前軸2の後端部の外周面に螺合する後軸3と、前軸2の前端部の外周面に螺合する口先部材4と、後軸3の後端部の内周面に嵌合する内筒5とを有している。前軸2及び後軸3は、軸筒6を構成する。なお、口先部材4又は内筒5、さらには後述するダイヤルカム部材50も含めて軸筒6と称してもよい。後述するように、シャープペンシル1は、口先部材4の先端から筆記芯7が突出するように構成されている。筆記芯7の先端近傍は、筆記芯7を案内する先端パイプ8によって覆われている。本明細書では、シャープペンシル1の軸線方向において、筆記芯7側を「前」側と規定し、筆記芯7側とは反対側を「後」側と規定する。
図2を参照すると、軸筒6の前端部の内部には、スライダ9が、軸線方向にスライド可能、且つ、軸線回りに回転可能に配置されている。スライダ9は、前方に向かって外径が段状に細くなる円筒状に形成されている。スライダ9の先端部9aには、先端パイプ8が取り付けられている。また、先端部9aにおいて先端パイプ8の後方には、中央に通孔が形成された保持チャック10が配置されている。保持チャック10の通孔は、筆記芯7の外周面に摺接し、筆記芯7を一時的に保持するように作用する。
スライダ9の先端部9aの後方の中間部9bの外周面の後部、特に中間部9bの根元部分には、軸線方向に突出する当接子9cが、スライダ9と一体に形成されている。先端部9a及び中間部9bの外周面には、円筒状に形成された第1カム部材であるダイヤルカム部材50と、環状に形成された第2カム部材であるレールカム部材60が、軸線方向に整列した状態で配置されている。スライダ9の先端部9aの一部は、ダイヤルカム部材50の前端部の孔より突出している。
スライダ9の内部には、筆記芯7を把持するボールチャック11及び円筒状に形成された中継部材12が配置されている。ボールチャック11は、円筒状に形成された締め具13と、締め具13内に配置されたチャック本体部14と、円筒状に形成されたチャック保持部15と、複数のボール16とを有している。締め具13の内周面には、前方に向かって広がるテーパ面が形成されている。チャック本体部14は、中心軸線に沿って筆記芯7の通孔が形成され、チャック本体部14の前端部は、軸線方向に沿って複数に分割されている。チャック本体部14の後端部は、チャック保持部15によって保持されている。チャック本体部14及びチャック保持部15は、締め具13に対して軸線方向に移動可能である。複数のボール16は、締め具13の内周面とチャック本体部14の外周面との間に配置されている。
筆記芯7に筆記圧が加わった場合には、チャック本体部14がボール16と共に円筒状の締め具13内のテーパ面に当接するため、筆記芯7はチャック本体部14によって把持される。これにより、筆記芯7の後退は阻止される。他方、筆記芯7を前方に引き出す力が働いた場合には、チャック本体部14が締め具13による作用を受けないため、筆記芯7を抵抗なく前方に引き出すことができる。すなわち、ボールチャック11は、筆記芯7の前進を許容し後退を阻止するように作用する。
チャック本体部14を包囲するようにコイルスプリング17が配置されている。コイルスプリング17の後端は、チャック本体部14の外面に嵌合しており、コイルスプリング17の前端は、締め具13の内周面に形成された段部によって支持されている。コイルスプリング17は、チャック本体部14を後方に付勢し、その結果、ボールチャック11は、筆記芯7を把持した状態を維持することができる。
締め具13の後端部の外周面は、中継部材12の前端部の内周面に嵌合している。したがって、ボールチャック11及び中継部材12は、スライダ9内において軸線方向に移動可能である。中継部材12の軸線方向における中央部分には、フランジ部12aが形成されている。フランジ部12aの前方には、中継部材12を包囲するようにコイルスプリングであるカム当接スプリング18が配置されている。カム当接スプリング18の後端は、中継部材12のフランジ部12aに対して取り付けられ(A部)、カム当接スプリング18の前端は、スライダ9の後端部の内壁に取り付けられている(B部)。軸筒6内において、カム当接スプリング18は、スライダ9を前方に付勢している。それによって、カム当接スプリング18は、後述するように、スライダ9に設けられた当接子9cをカム面に当接させるよう作用する。中継部材12の後端部は、後述する回転駆動機構30に連結されている。チャック保持部15の後端部の外周面には、芯ケース19の前端部が嵌合している。芯ケース19は、円筒状に形成され、内部には筆記芯7が収容される。
図3を参照すると、軸筒6の後端部、具体的には内筒5の後端部には、ノック部材としてのノック棒20が軸筒6に対して前後動可能に設けられている。ノック棒20は、コイルスプリング21によって後方に付勢されている。ノック棒20の後端部近傍には、筆記芯7の補給孔を備えた隔壁部20aが形成されている。ノック棒20の後端部の内部には、消しゴム22が着脱可能に装着されている。ノック棒20の後端部の外周面には、ノックカバー23が着脱可能に取り付けられ、消しゴム22を汚れ等から保護している。ノック棒20は、芯ケース19の後端部の外周面に嵌合している。
ノック棒20又はノックカバー23を前方へ押圧するノック操作をすることによって、芯ケース19が前進する。これにより、チャック保持部15を介してチャック本体部14が前方に押し出される。これに伴い、チャック本体部14に把持された筆記芯7も前進し、筆記芯7を先端パイプ8から繰り出させるように作用する。ノック操作による押圧を解除すると、コイルスプリング21の付勢力によって、ノック棒20は、後退して元の位置に復帰する。
このとき、チャック本体部14は、コイルスプリング17の付勢力によって後退する。他方、筆記芯7は、スライダ9内に配置された保持チャック10によって保持されるため、ボールチャック11の作用として、筆記芯7はチャック本体部14から抵抗なく引き出される。その結果、筆記芯7は、先端パイプ8から繰り出されることから、ノック操作を繰り返すごとに、筆記芯7を所定量ずつ繰り出すことができる。ノック操作によってノック棒20を前進させた状態を維持すると、チャック本体部14は締め具13から突出して筆記芯7の把持は解除された状態となる。この状態では、先端パイプ8から繰り出された状態の筆記芯7を指先等で押し戻すことができる。
図4は、回転駆動機構30の拡大断面図である。回転駆動機構30は、後軸3の内部空間に配置されている。回転駆動機構30は、中継部材12の後端部に接続されている。前軸2の後端面と回転駆動機構30の前端面との間に軸スプリング31が配置され、回転駆動機構30が後方に付勢されている。軸スプリング31の付勢力による回転駆動機構30の後方への移動は、回転駆動機構30の後端面が内筒5の前端面に当接することによって規制される。芯ケース19は、中継部材12及び回転駆動機構30の内部を貫通し、回転駆動機構30とは離間している。
回転駆動機構30は、円筒状に形成された回転子40と、円筒状に形成された第1カム形成部材である上カム形成部材41と、円筒状に形成された第2カム形成部材である下カム形成部材42と、円筒状に形成されたシリンダー部材43と、円筒状に形成されたトルクキャンセラー44と、コイル状のクッションスプリング45とを有している。回転駆動機構30は、これら部材が一体となって、ユニット化されている。
回転子40の前端部の内周面には、中継部材12の後端部の外周面が嵌合している。回転子40の前端部近傍は、僅かばかり径の大きいフランジ状に形成された部分を有し、当該部分の後端面には第1カム面40aが形成され、当該部分の前端面には第2カム面40bが形成されている。
上カム形成部材41は、回転子40の第1カム面40aの後方において、回転子40を回動可能に包囲している。下カム形成部材42は、上カム形成部材41の前端部の外周面に嵌合している。回転子40の第1カム面40aに対向する上カム形成部材41の前端面には、第1の固定カム面である固定カム面41aが形成されている。回転子40の第2カム面40bに対向する下カム形成部材42の前端部内面には、第2の固定カム面である固定カム面42aが形成されている。
上カム形成部材41の後端部の外周面には、円筒状に形成されたシリンダー部材43が嵌合している。シリンダー部材43の後端部には、芯ケース19が挿通できる挿通孔43aが形成されている。シリンダー部材43内には、円筒状に形成されて軸線方向に移動可能なトルクキャンセラー44が配置されている。トルクキャンセラー44の前端部内面とシリンダー部材43の後端部内面との間には、クッションスプリング45が配置されている。クッションスプリング45は、トルクキャンセラー44を介して、回転子40を前方に付勢している。
ここで、中継部材12は、筆記動作に基づく筆記芯7の後退及び前進動作(クッション動作)を回転駆動機構30、すなわち回転子40に伝達すると共に、クッション動作によって生ずる回転駆動機構30における回転子40の回転運動を、筆記芯7を把持した状態のボールチャック11に伝達する。したがって、ボールチャック11に保持された筆記芯7も回転する。
シャープペンシル1で筆記しているとき以外、すなわち、筆記芯7に筆記圧が加わっていないとき、回転子40は、トルクキャンセラー44を介したクッションスプリング45の付勢力によって前方に位置している。したがって、回転子40の第2カム面40bは、第2固定カム面42aに当接して噛み合い状態になされる。シャープペンシル1で筆記しているとき、すなわち、筆記芯7に筆記圧が加わっているとき、ボールチャック11は、クッションスプリング45の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子40も後退する。したがって、回転子40の第1カム面40aは、第1固定カム面41aに当接して噛み合い状態になされる。
図5は、図1のシャープペンシル1の回転子40の回転駆動作用を、順を追って説明する模式図であり、図6は、図5に続く回転子40の回転駆動作用を説明する模式図である。図5及び図6において、回転子40の上側の面である後端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1カム面40aが円環状に形成され、回転子40の下側の面である前端面には、同様に周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2カム面40bが円環状に形成されている。
回転子40の第1カム面40aに対峙する上カム形成部材41の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1固定カム面41aが形成され、回転子40の第2カム面40bに対峙する下カム形成部材42の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2固定カム面42aが形成されている。回転子40に形成された第1カム面40a及び第2カム面40bの各カム面と、上カム形成部材41に形成された第1固定カム面41a及び下カム形成部材42に形成された第2固定カム面42aの各カム面とは、ピッチが互いにほぼ同一となるように形成されている。
図5(A)は、筆記芯7に筆記圧が加わっていないときの状態における回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42の関係を示している。この状態においては、回転子40に形成された第2カム面40bは、クッションスプリング45の付勢力によって、下カム形成部材42の第2固定カム面42aに対して当接している。このとき、回転子40の第1カム面40aと上カム形成部材41の第1固定カム面41aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
図5(B)は、シャープペンシル1による筆記のために、筆記芯7に筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転子40は、ボールチャック11の後退に伴ってクッションスプリング45を収縮させて後退する。それによって、回転子40は、上カム形成部材41の第1固定カム面41a側に移動する。
次いで、図5(C)は、筆記芯7にさらに筆記圧が加わり、回転子40が上カム形成部材41の第1固定カム面41aに当接して後退した状態を示している。この状態においては、回転子40の第1カム面40aは、上カム形成部材41の第1固定カム面41aに噛み合っている。それによって、回転子40は、第1カム面40aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
なお、図5及び図6における回転子40の中央部に描いた○印は、回転子40の回転移動量を示している。そして図5(C)に示す状態においては、回転子40の第2カム面40bと下カム形成部材42の第2固定カム面42aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
次いで、図6(D)は、シャープペンシル1による筆記が終わり、筆記芯7に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この場合においては、回転子40は、クッションスプリング45の付勢力によって前進する。これにより、回転子40は下カム形成部材42側に移動する。
次いで、図6(E)は、回転子40がクッションスプリング45の付勢力によって下カム形成部材42の第2固定カム面42aに当接して前進した状態を示している。この場合においては、回転子40の第2カム面40bは、下カム形成部材42の第2固定カム面42aに噛み合っている。それによって、回転子40は、第2カム面40bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を再び受ける。
したがって、回転子40の中央部に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転子40の軸線方向への往復運動、すなわち前後動に伴って、回転子40は、第1カム面40a及び第2カム面40bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、ボールチャック11を介して、これに把持された筆記芯7も同様に回転駆動される。したがって、筆記による回転子40の軸線方向への1回の前後動によって回転子40はカムの一歯に対応する回転運動を受け、これを繰り返すことによって、筆記芯7は順次回転駆動される。それ故、書き進むにしたがって筆記芯7が偏って摩耗するのを防止することができ、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。
なお、クッションスプリング45の付勢力を受けて回転子40を前方に押し出すトルクキャンセラー44は、その前端面と回転子40の後端面との間で滑りを発生させて、回転子40の回転運動がクッションスプリング45に伝達するのを防止している。すなわち、トルクキャンセラー44によって、回転子40の回転運動がクッションスプリング45に伝達されるのを防止し、それによって、回転子40の回転動作を阻害するクッションスプリング45のねじれ戻り(トルク)が発生することを防止している。
以上より、シャープペンシル1は、ボールチャック11と回転子40とを有し、ボールチャック11の前後動により筆記芯7の解除及び把持を行うことで、筆記芯7を前方に繰り出すことができるように構成され、ボールチャック11が、筆記芯7を把持した状態で中心軸線回りに回転可能となるように軸筒6内に保持されると共に、筆記芯7の筆記圧によるボールチャック11を介した回転子40の前後動により回転子40を回転させ、回転子40の回転運動を、ボールチャック11を介して筆記芯7に伝達するように構成されている。
図7乃至図9を参照しながら、芯繰り出し機構及び繰り出し量調整機構について説明する。芯繰り出し機構は、回転駆動機構30の回転子40の回転駆動力を受けて、筆記芯7を前方に繰り出すように作用する。
図7は、ダイヤルカム部材50の斜視図である。ダイヤルカム部材50は、図7において、上方がシャープペンシル1の後側となるように配置される。ダイヤルカム部材50は、円筒状に形成された部材であり、軸線方向において中央に位置する把持部50aと、把持部50aの後方において把持部50aよりも小径に形成された小径部50bと、小径部50bの前方に形成されたフランジ部50cと、フランジ部50cの後端面に形成された2つの嵌合突起50dと、小径部50bの後端面に形成されたダイヤルカム51とを有している。2つの嵌合突起50dは、中心軸線回りに対称的に配置されている。把持部50aの前方は小径に形成されており、把持部50aから前方に延びる2つの係止突起50eが、中心軸線回りに対称的に形成されている。
ダイヤルカム51は、円環状の端面に周方向に沿ってせり上るように設けられた、スロープ状又は螺旋状のような、第1斜面51aと、第1斜面51aの出発点(低位置)と最終点(高位置)との間において軸線方向に設けられた第1段差51bとを有している。すなわち、第1段差51bが第1斜面51aの出発点と最終点とを繋いだ構成にされている。
図8は、レールカム部材60の斜視図であり、図9は、レールカム部材60の別の斜視図である。レールカム部材60は、図8において、上方がシャープペンシル1の後側となるように配置される。レールカム部材60は、環状に形成された部材である。レールカム部材60の前端面には、中心軸線回りに対称的に2つの調整凹部60aが形成されている。調整凹部60aの各々は、周方向に沿って等間隔に並列する同一深さの凹みである6つの第1嵌合凹部60bと、第1嵌合凹部60bよりも浅い凹みである1つの第2嵌合凹部60cとからなる。
レールカム部材60の後端面には、レールカム61が形成されている。レールカム61は、円環状の端面に周方向に沿ってせり上るように設けられた、スロープ状又は螺旋状のような、環状カム面である第2斜面61aと、第2斜面61aの出発点(低位置)と最終点(高位置)との間において軸線方向に設けられた第2段差61bとを有している。すなわち、第2段差61bが第2斜面61aの出発点と最終点とを繋いだ構成にされている。レールカム61の第2斜面61aは、ダイヤルカム51の第1斜面51aよりも急勾配である。レールカム61の第2段差61bの高さは、ダイヤルカム51の第1段差51bの高さよりも高い。
図10は、組み合わされたダイヤルカム部材50及びレールカム部材60の斜視図であり、図11は、組み合わされたダイヤルカム部材50及びレールカム部材60の別の斜視図である。ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60は、図10及び図11において、上方がシャープペンシル1の後側となるように配置される。環状のレールカム部材60は、ダイヤルカム部材50の小径部50bの後端部に挿入され、フランジ部50cによって係止されることで、組み合わされる。すなわち、ダイヤルカム部材50のフランジ部50cの後端面に、レールカム部材60の前端面が当接する。より詳細には、ダイヤルカム部材50のフランジ部50cに設けられた嵌合突起50dの各々が、レールカム部材60の調整凹部60aのいずれかの第1嵌合凹部60b又は第2嵌合凹部60cに嵌合する。よって、レールカム部材60はダイヤルカム部材50の径方向外側に配置されている。図10において、嵌合突起50dは、第2嵌合凹部60cに隣接する第1嵌合凹部60bに嵌合している。また、図11において、嵌合突起50dは、第2嵌合凹部60cに嵌合している。
ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60が組み合わされた状態では、ダイヤルカム部材50のダイヤルカム51は、レールカム部材60のレールカム61の近傍に配置される。それによって、ダイヤルカム51及びレールカム61は、協働して、周方向において一連の、すなわち環状の繰り出しカム面70を構成する。
図2に示されるように、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60は、組み合わされた状態で、スライダ9の先端部9a及び中間部9bの外側に配置される。ダイヤルカム部材50の一部及びレールカム部材60は、口先部材4によって外周面が覆われている。口先部材4の前端部内面とダイヤルカム部材50のフランジ部50cとの間には、コイルスプリング72が配置されている。また、カム当接スプリング18は、スライダ9を前方に付勢していることから、スライダ9の当接子9cは、繰り出しカム面70に対して当接した状態を維持する。ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60は、レールカム部材60の後端面が、前軸2の前端面と当接することによって後方への移動が規制されている。また、レールカム部材60の外周面は、口先部材4の内周面と係合し、レールカム部材60の口先部材4、ひいては軸筒6に対する回転が規制される。
繰り出しカム面70の形状は、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60を中心軸線回りに相対的に回転させることによって、変更させることができる。すなわち、使用者は、一方の手で軸筒6を把持し且つ他方の手で軸筒6の先端から突出するダイヤルカム部材50の把持部50aを把持しながら、軸筒6に対してダイヤルカム部材50を中心軸線回りに回転させる。レールカム部材60は、軸筒6に対して係合していることから、レールカム部材60に対してダイヤルカム部材50が、中心軸線回りに回転する。
レールカム部材60に対するダイヤルカム部材50の回転は、ダイヤルカム部材50の嵌合突起50dが、対応するレールカム部材60の隣接する第1嵌合凹部60b又は第2嵌合凹部60c間で移動して嵌合するように、段階的に行われる。したがって、レールカム部材60に対するダイヤルカム部材50の中心軸線回りの回転は、ダイヤルカム部材50の嵌合突起50dが移動可能なレールカム部材60の調整凹部60aの範囲内において段階的に行われる。ダイヤルカム部材50の嵌合突起50dが嵌合するレールカム部材60の第1嵌合凹部60b又は第2嵌合凹部60cの位置に応じて、レールカム部材60のレールカム61とダイヤルカム部材50のダイヤルカム51との相対位置が変化し、その結果、繰り出しカム面70の形状を変更させることができる。コイルスプリング72によってダイヤルカム部材50がレールカム部材60に対して付勢され、レールカム部材60に対するダイヤルカム部材50の段階的な回転時に、クリック感が得られる。繰り出しカム面70の形状の変更に関し、図12及び図13を参照しながら、さらに説明する。
図12は、図10の繰り出しカム面70を示す模式図であり、図13は、図11の繰り出しカム面70を示す模式図である。図12及び図13は、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60の位置関係を示すため、繰り出しカム面70を含む中心軸線回りの円筒面を周方向に展開したものである。図12及び図13において、上方がシャープペンシル1の後側である。
図12を参照すると、ダイヤルカム51の第1斜面51aとレールカム61の第2斜面61aとが径方向において重畳的に配置されるように、ダイヤルカム部材50がレールカム部材60に対して位置合わせされている。図12において、ダイヤルカム51の第1斜面51a及びレールカム61の第2斜面61aのうちでより後方、すなわち図中より上方に位置する一連の面が、繰り出しカム面70を構成する。なお、繰り出しカム面70において、ダイヤルカム51の第1斜面51aとレールカム61の第2段差61bとによって形成される軸線方向の段差71(落差)の高さ(高低差)を、段差高さHとする。
図13を参照すると、図12に示された繰り出しカム面70と比較して、レールカム61の第2斜面61aがダイヤルカム51の第1斜面51aに対してより後方に位置するように、ダイヤルカム部材50がレールカム部材60に対して位置合わせされている。すなわち、図13では、上述したように、嵌合突起50dは、第1嵌合凹部60bと比べて浅い凹みである第2嵌合凹部60cに嵌合している。したがって、レールカム61は、ダイヤルカム51に対してより後方に配置される。他方、嵌合突起50dが、同一深さの凹みである6つの第1嵌合凹部60b間を移動する場合には、レールカム61は、ダイヤルカム51に対して軸線方向において同一位置にある。
段差高さHに着目すると、嵌合突起50dが、調整凹部60aにおいて第2嵌合凹部60cから最も遠い第1嵌合凹部60bに嵌合しているとき、段差高さHは最も小さい。嵌合突起50dが、第2嵌合凹部60cにより近い第1嵌合凹部60bに嵌合すると、ダイヤルカム51の第1斜面51aの傾斜に応じて比例的に段差高さHが大きくなる。すなわち、嵌合突起50dが隣接する第1嵌合凹部60b間を移動するとき、段差高さHの変化量は一定である。嵌合突起50dが、第2嵌合凹部60cに隣接する第1嵌合凹部60bに嵌合している図10に示された状態から、第2嵌合凹部60cに嵌合している図11に示された状態に移動するとき、段差高さHの変化量が最大となる。
回転駆動機構30の回転子40は、筆記芯7のクッション動作に基づいてスライダ9を徐々に回転駆動する。すなわち、スライダ9の先端部9aを先にして見たとき、スライダ9は中心軸線回りに右回転する。この回転運動によって、スライダ9の当接子9cは、繰り出しカム面70と協働しながら周方向に移動する。すなわち、スライダ9の当接子9cは、繰り出しカム面70を構成するダイヤルカム51の第1斜面51a又はレールカム61の第2斜面61aに沿ってせり上がるように移動する。このとき、スライダ9は徐々に後退する。
当接子9cが段差71に達すると、カム当接スプリング18の付勢力によって押圧され、段差71に落ち込む。すなわち、スライダ9は、段差71の段差高さH分だけ、レールカム61の第2斜面61aからより前方へ移動する。このとき、スライダ9の内部に配置された保持チャック10も同様に前方へ移動するので、保持チャック10に保持された筆記芯7は、ボールチャック11から引き出され、相対的に先端パイプ8から段差高さH分だけ繰り出される。したがって、繰り出される筆記芯7の量、すなわち繰り出し量は、段差高さHと等しい。
以上の動作により、繰り出しカム面70に沿って当接子9cが一周する毎に筆記芯7を先端パイプ8から繰り出すことができる。この動作の繰り返しによって、筆記動作に伴い筆記芯7が摩耗しつつ、筆記芯7が順次繰り出される。
要するに、芯繰り出し機構では、当接子9cが回転子40の回転に応じて繰り出しカム面70に沿って移動し、当接子9cが繰り出しカム面70の段差71に落ち込む際のスライダ9の前進動作によって、保持チャック10に保持された筆記芯7がボールチャック11より引き出されるように構成されている。芯繰り出し機構が繰り出しカム面70の段差71を利用することによって、回転駆動機構30における回転子40の回転駆動力を筆記芯7の繰り出し動作に変換することができる。繰り出しカム面70に高低差を形成する構成を総称して、「落差」という。
また、シャープペンシル1は、回転駆動機構30における回転子40の回転駆動力を受けて、ボールチャック11に保持された筆記芯7も回転駆動されるように構成されている。したがって、書き進むにしたがって筆記芯7が偏摩耗するのを防止することができ、その結果、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。要するに、回転駆動機構30は、回転子40を有し、ボールチャック11に把持された筆記芯7が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、回転子40を一方向に回転駆動させる。
また、繰り出し量調整機構では、上述したように、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60を単に中心軸線回りに相対的に回転させることによって、繰り出しカム面70における段差71の段差高さHを変更することができる。よって、芯繰り出し機構による筆記芯7の繰り出し量の調整をより簡便且つ正確に行うことができる。
使用者によって異なる筆記圧や利用される筆記芯7の硬度などの違いによる筆記芯7の摩耗の程度と、筆記芯7の繰り出し量とがほぼ一致するように調整すれば、筆記動作にもかかわらず先端パイプ8からの筆記芯7の突出量を常に一定に保つことができる。その結果、シャープペンシル1では、一度のノック操作で、長く書き続けることができる。通常想定される筆記芯7の摩耗の程度を超えた長さに相当する段差高さHを有する段差71が形成されるように、ダイヤルカム51を構成することが好ましい。それによって、すべての使用者の好みに応じた筆記芯7の繰り出し量に設定可能となる。
特に、調整凹部60aが、第1嵌合凹部60bよりも浅い凹みである第2嵌合凹部60cを有することによって、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60の相対的な所定の回転位置において、その他回転位置と比べて、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60を軸線方向において離間させることができる。言い換えると、ダイヤルカム部材50が嵌合突起を有し、レールカム部材60が嵌合突起と嵌合可能な複数の嵌合凹部を有し、複数の嵌合凹部の1つが、上記所定の回転位置において、ダイヤルカム部材50及びレールカム部材60を軸線方向において離間させるように構成されている。その結果、段差71の段差高さHを、比例的ではなく極端に調整することができ、繰り出し量を極端に増加させることができる。例えば、より強い筆記圧で筆記する場合は、通常の筆記圧よりも筆記芯7の摩耗量が大きく、こうした場合に、繰り出し量を極端に増加させることによって、一度のノック操作で、長く書き続けることができるようになる。
上述した実施形態では、ダイヤルカム部材50が第1カム部材として円筒状の部材であったが、環状の部材であってもよい。また、レールカム部材60が第2カム部材として環状の部材であったが、円筒状の部材であってもよい。第1カム部材にレールカム61を設け、第2カム部材にダイヤルカム51を設けてもよい。すなわち、環状又は筒状の第1カム部材と第1カム部材の径方向外側に配置された環状又は筒状の第2カム部材とが協働して、繰り出しカム面が構成されるようにしてもよい。また、第1カム部材及び第2カム部材を相対的に前後させることによって、すなわち軸線方向において離間させることによって、段差の段差高さが調整されるようにしてもよい。
ところで、一般に、筆記動作は、シャープペンシルを筆記面に対して垂直の状態から傾斜させた状態で行われる。回転駆動機構を備えたシャープペンシルにおいて、筆記圧による軸線方向の後退動作は、傾斜した状態のシャープペンシルによって筆記面に対して垂直に加えられる筆記圧による力の軸線方向の分力によって行われる。筆記圧による力の軸線方向に対して垂直方向の分力は、軸筒に対して相対的に回転する回転部材の回転時の抵抗を増加させる。すなわち、回転部材の外面が、軸筒の一部を構成する、例えば口先部材と摺接することによって、回転駆動機構による回転部材の回転が支持されるが、上述した垂直方向の分力は、摺動抵抗、すなわち摩擦抵抗を増加させる。摩擦抵抗が大きいと、特に筆記圧の小さい使用者は、回転駆動機構を回転させることができない虞がある。特に、回転部材の外径が大きいと、摩擦抵抗による力のモーメントも大きくなる。
本発明の実施形態によるシャープペンシル1によれば、回転駆動機構による回転部材の回転時の摩擦抵抗を低減させることができる。これについて、図14を参照しながら説明する。
図14は、図1のシャープペンシル1の前端部の拡大断面図である。シャープペンシル1では、図2を参照しながら上述したように、カム当接スプリング18の後端が、中継部材12のフランジ部12aに対して取り付けられ、カム当接スプリング18の前端が、スライダ9の後端部の内壁に取り付けられている。また、回転子40に連結された中継部材12は、回転駆動機構30における回転子40の回転駆動力を、筆記芯7を把持した状態のボールチャック11に対して伝達するが、スライダ9に対して直接的に伝達しない。すなわち、スライダ9は、中継部材12の前端部の外側に配置はされているが、中継部材12に対して直接的に連結はされていない。その代わりに、回転駆動機構30における回転子40からスライダ9への回転駆動力の伝達は、カム当接スプリング18を介して行われる。詳細には、カム当接スプリング18は、スライダ9を前方に付勢することによって、当接子9cをカム面に当接させるよう機能すると共に、ねじりばね(トーションスプリング)としても機能する。
したがって、シャープペンシル1では、スライダ9、筆記芯7及びボールチャック11、さらには、スライダ9に取り付けられた先端パイプ8は、回転駆動機構30における回転子40の回転駆動力を受けて回転する。そのため、先端パイプ8を含むこれら部材は、軸筒6に対して回転する回転部材を構成する。回転部材の回転は、図14のC部において、先端パイプ8が、軸筒6、具体的にはダイヤルカム部材50と摺接することによって支持される。先端パイプ8の外径は、筆記芯7の外径よりも僅かばかり大きい程度であるため、回転部材の他の部材に比べて非常に細い。そのため、摩擦抵抗による力のモーメントがより小さくなる。また、先端パイプ8の外面とダイヤルカム部材50の内面との接触面積を小さくすることができ、回転駆動機構30による回転部材の回転時の摩擦抵抗をより低減させることができる。その結果、筆記圧の小さい使用者であっても、シャープペンシル1において回転駆動機構30を回転させることができる。
先端パイプ8は、金属製の円筒部材であることが好ましい。他方、軸筒6側の部材、すなわちダイヤルカム部材50は、ABS、ポリカーボネート等の硬質プラスチック製の部材である。したがって、硬質プラスチック製の軸筒及び硬質プラスチック製の回転部材が摺接する場合に比べて、硬質プラスチック製の軸筒及び金属製の円筒部材が摺接する場合の方が、より摩擦抵抗が少ない。その結果、シャープペンシル1によれば、回転駆動機構30による回転部材の回転時の摩擦抵抗をより低減させることができる。
金属製の先端パイプ8は、引き抜き加工によって製造されることから、寸法精度も良好である。例えば、樹脂製の成形部品の場合、寸法公差が±0.02mmであるのに対し、金属製の部品の場合、寸法公差を±0.01mとすることができる。そのため、先端パイプ8とダイヤルカム部材50との間のクリアランスをより小さくすることができ、回転部材の回転時のがたつきを低減させることができる。
なお、軸筒と回転部材との摺接が金属製の円筒部材で行われる限りにおいて、円筒部材を任意に構成することができる。例えば、金属製の円筒部材を、先端パイプ8ではなく、先端パイプ近傍のスライダ9の外面、例えば先端部9aの外面に配置してもよい。また、金属製の円筒部材を、回転部材側ではなく、軸筒側の回転部材と摺接する部分、例えばダイヤルカム部材50の内面に配置してもよい。
すなわち、本発明の実施形態によるシャープペンシル1は、軸筒及び回転部材の一方に設けられた金属製の円筒部材を具備し、回転部材が、回転子の回転駆動力を受けて回転することによって、ボールチャックに把持された筆記芯が回転するように構成され、軸筒及び回転部材の他方が、円筒部材の表面で摺接することによって、回転駆動機構による回転部材の回転が支持される。
ところで、一般に、ノックカバーは、消しゴムの使用時に取り外される。また、筆記芯の補充の際に、ノックカバー及び消しゴムがノック部材から取り外される。ノックカバーは、非常に小さな部品であり、ノック部材から取り外す際に手から滑り落ち、ノックカバーを紛失する可能性がある。また、ノックカバーは、机上等に置かれたとしても、一般に円筒状の外形を有することから机上等から転がり落ち、ノックカバー紛失する可能性がある。
本発明の実施形態によるシャープペンシル1によれば、ノックカバーの紛失を防止することができる。これについて、図15乃至図17を参照しながら説明する。
図15は、ノックカバー23の斜視図であり、図16は、ノックカバー23をシャープペンシル1の後端部に取り付けた状態の斜視図であり、図17は、ノックカバー23をシャープペンシル1の前端部に取り付けた状態の斜視図である。
ノックカバー23には、開口端23aが形成されている。開口端23a内にノック棒20の後端部が挿入されることによって、ノックカバー23は、ノック棒20の外周面に対して嵌合可能である。ノックカバー23の開口端23a、すなわち開口端面には、2つの切り欠き部23bが、中心軸線回りに対称的に形成されている。ノックカバー23において、開口端23aとは反対側の閉鎖された端部には、貫通孔23c(図3)が形成されている。貫通孔23cが形成されていることによって、ノックカバー23を幼児等が誤飲したとしても、気道を閉塞することなく安全性を確保することが可能となる。
図7及び図16に示されるように、軸筒6の前端部であるダイヤルカム部材50には2つの係止突起50eが設けられている。ノックカバー23は、軸筒6の前端部に嵌合可能である。すなわち、ノックカバー23の切り欠き部23bが、軸筒6の係止突起50eに嵌合することによって、ノックカバー23は、軸筒6の前端部に着脱可能に嵌合する。
要するに、ノックカバー23は、軸筒6の前端部及び後端部のいずれにも嵌合可能である。したがって、筆記時には、ノックカバー23を軸筒6の後端部に嵌合させることによって、ノックカバー23の紛失が防止される。他方、保管時若しくは収容時等の非筆記時又は筆記芯の補充時等には、ノックカバー23を軸筒6の前端部に嵌合させることによって、ノックカバー23の紛失が防止される。
特に、繰り出し量調整機構を有するシャープペンシル1では、ダイヤルカム部材50に嵌合したノックカバー23を把持することによって、軸筒6に対してダイヤルカム部材50をより容易に回転させることができる。すなわち、ノックカバー23を嵌合させることによって、ダイヤルカム部材50の把持部50aの軸線方向の長さが実質的に長くなり、より把持し易くなることから、より回転力を加えやすくなる。
なお、ノックカバー23は、シャープペンシルがダイヤルカム部材を有さない場合において、軸筒の前端部に嵌合可能である限りにおいて、任意の部材、例えば口先部材に嵌合可能であってもよい。すなわち、ノックカバー23は、軸筒の後端部に嵌合可能であり、且つ、軸筒の前端部に嵌合可能である限りにおいて、任意の部材に嵌合可能であってもよい。また、上述した実施形態では、2つの切り欠き部に対して2つの係止突起が嵌合したが、その他の数又は形状で以て嵌合するように構成してもよい。
ところで、保持チャックの材料は、一般に、ニトリルゴム等のゴム材料である。したがって、保持チャックは、経年によってクリープ変形し、保持力が低下する場合がある。また、筆記芯は、例えば0.5mmの表示直径の製品の場合、0.55mm乃至0.58mmの範囲で寸法のばらつきがある。したがって、ゴム成形時の寸法のばらつきによって、筆記芯の寸法とのばらつきとの関係で、保持力が強くなったり弱くなったりする場合もある。
本発明の実施形態によるシャープペンシル1によれば、経年による保持力の低下を少なくし且つ寸法精度を高くすることができる。これについて、図18乃至図22を参照しながら説明する。
図18は、第1保持チャック80の斜視図であり、図19は、第2保持チャック90の斜視図であり、図20は、保持チャック10の斜視図である。保持チャック10は、第1保持チャック80と第2保持チャック90とを有している。
第1保持チャック80は、金属製の板状部材であり、プレス加工によって成形される。第1保持チャック80は、略矩形の矩形板部81と、第1保持部82とを有している。第1保持部82は、矩形板部81の各々の長辺の中央部から延びる2つの板状部材である板状部83からなる。板状部83の各々は、矩形板部81の長辺から互いに近接するように屈曲して延び、屈曲部84において互いに離間するように逆方向に屈曲して延びている。矩形板部81の中心には、円形の貫通孔である第1挿入孔85が形成されている。矩形板部81の短辺は、円弧状に形成されている。後述するように、筆記芯7は、第1保持部82によって保持可能である。
第2保持チャック90は、非金属製、例えばゴム製又は樹脂製の円板状部材である。第2保持チャック90は、円板部91と、円板部91の一方の面の外周縁に沿って設けられた周壁92と、円板部91の中心において第2挿入孔93を画成し且つ円板部91から突出する第2保持部94とを有している。第2保持部94は、円錐台形の外形を有している。したがって、第2保持部94は、テーパ状の外周面を有しており、細くなった先端の開口において筆記芯7を保持可能である。
なお、第2保持チャック90の第2保持部94による筆記芯7の保持力は、第1保持チャック80の第1保持部82による筆記芯7の保持力よりも小さく設定されている。
図20を参照すると、第1保持チャック80は、第2保持チャック90に対して取り付けられる。具体的には、金属製の第1保持チャック80の矩形板部81の短辺の各々が、第2保持チャック90の周壁92に対して係合する。このとき、第2保持チャック90の第2保持部94は、第1保持チャック80の第1挿入孔85内に挿入される。
図21は、保持チャック10の動作を説明する図である。図21(A)は、芯ケース19に筆記芯7を入れた直後の状態を示している。このとき、ボールチャック11は、筆記芯7を未だ把持していない。この状態でノック操作を行うと、筆記芯7は、重力によって前進し、ボールチャック11が筆記芯7を把持する(図21(B))。さらにノック操作を行うと、筆記芯7は、前進して第2保持チャック90の第2挿入孔93内に挿入され、第2保持部94によって保持される。したがって、ノック操作による押圧を解除しても、筆記芯7は、後退することなく第2保持チャック90によって保持される(図21(C))。
さらにノック操作を行うと、ボールチャック11が筆記芯7を把持しながら前進し、筆記芯7は、第1保持チャック80の第1保持部82によって保持される(図21(D))。具体的には、筆記芯7が前進することによって第1保持部82の2つの板状部83間に挿入される。このとき筆記芯7は、第1保持部82の弾性変形、具体的には2つの板状部83を弾性変形によって挟持される。同時に、筆記芯7は、第2保持チャック90の第2保持部94によっても保持されている。次いで、ノック操作による押圧を解除すると、筆記芯7が第1保持チャック80及び第2保持チャック90によって保持されたまま、ボールチャック11のみ後退する。次いで、ノック操作を繰り返すことによって、上述したボールチャック11の前後動と連動して筆記芯7を所定量ずつ順次繰り出すことができる。
要するに、シャープペンシル1は、保持チャック10として、金属製の第1保持部82を有する第1保持チャック80であって、第1保持部82の弾性変形によって筆記芯7を保持することによって、筆記芯7を保持可能である。第1保持チャック80を金属製とすることによって、従来の保持チャックと比較して、経年による保持力の低下が少なく且つ寸法精度の高い保持チャックを実現することができる。
上述した実施形態では、軸筒6内において、第1保持チャック80と第2保持チャック90とが一体的に配置されているが、第1保持チャック80と第2保持チャック90とを離間させて配置してもよい。また、上述した実施形態では、軸筒6内において、第2保持チャック90を第1保持チャック80の後方に配置しているが、第2保持チャック90を第1保持チャック80の前方に、一体的に又は離間させて配置してもよい。
上述したように、第2保持チャック90の第2保持部94による筆記芯7の保持力は、第1保持チャック80の第1保持部82による筆記芯7の保持力よりも小さく設定されている。したがって、第2保持チャック90は、第1保持チャック80を補助する補助保持チャックの役割を果たす。軸筒6内において、第1保持チャック80に加えて第2保持チャック90を配置することによって、より確実に筆記芯7を保持することが可能となる。第2保持チャック90の筆記芯7の保持力は、従来の保持チャックの保持力よりも低くてもよい。
なお、上述した実施形態において、保持チャック10は、第1保持チャック80と第2保持チャック90とを有していたが、保持チャック10が、第1保持チャック80のみ有するようにしてもよい。保持チャック10が、第1保持チャック80のみ有する場合について、図22を参照しながら説明する。
図22は、第1保持チャック80の動作を説明する図である。図22(A)は、芯ケース19に筆記芯7を入れてノック操作を行った状態を示している。筆記芯7は、第1挿入孔85を通り、第1保持部82の手前に配置されている。この状態でさらにノック操作を行うと、筆記芯7は、前進して第1保持部82によって保持される(図22(B))。次いで、ノック操作を繰り返すことによって、上述したボールチャック11の前後動と連動して筆記芯7を所定量ずつ順次繰り出すことができる。
本発明の実施形態によるシャープペンシル1において、保持チャック10が金属製の第1保持部82を備えた第1保持チャック80を有することによって、従来のゴム材料製の保持チャックと比べて経年による保持力の低下が少なく且つ寸法精度の高い保持チャックを得ることができる。さらに、筆記芯7と当接する第1保持部82の部分、すなわち屈曲部84が湾曲形状に形成されていることによって、筆記芯7を傷つけることがない。
なお、金属製の第1保持部を有する第1保持チャックが、第1保持部の弾性変形によって筆記芯を保持することによって、筆記芯を保持可能である限りにおいて、第1保持チャックを任意に構成することができる。例えば、上述した実施形態において、第1保持部は2つの板状部材からなるが、3つ以上の板状部材からなるようにしてもよい。また、第1保持部を、板状部材ではなく、筆記芯7を挟持可能な棒状部材で構成してもよい。