JP6820001B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
例えば、下記特許文献1には、環状のタイヤ骨格体の外周部に補強コード層(補強層)を有し、タイヤ骨格体を樹脂材料で形成したタイヤ、更には、補強層にも樹脂材料を使用したタイヤが開示されている。
これに対して、タイヤの高速耐久性の改善のために、タイヤの表面を覆う層表面層に低ロス性に優れるゴム(ゴム表面層)を用いる手段が考えられるが、ゴム表面層を単純に低ロス化すると、ゴム表面層の貯蔵弾性率(E’)が低下して、タイヤのショルダー部、ビード部及びそれらの周辺部材の歪みが大きくなるため、タイヤの高速耐久性を十分には向上させることができなかった。
<1> 樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物からなる環状のタイヤ骨格体と、
前記タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に設けられた補強層と、
該補強層のタイヤ径方向外側に設けられ、少なくともトレッドゴム及びガムチェーファーを含むゴム表面層と、
を備え、
前記補強層は、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物で、補強部材を被覆してなり、
前記ガムチェーファーは、初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδと初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の貯蔵弾性率E’が下記式(1)を満たすタイヤである。
0.0033x+0.02996<y<0.0033x+0.4 (1)
〔式(1)中、xは初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の貯蔵弾性率E’を表し、yは初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδを表す。〕
図1は、本発明のタイヤの一実施形態の断面図である。また、図2に、図1の一部を拡大した拡大図を示す。図2中の符号は、図1中の符号と同じである。以下、図1を中心に説明する。
図1に示すタイヤは、タイヤ骨格体10と、タイヤ骨格体10のタイヤ径方向外側に設けられた補強層20と、補強層20のタイヤ径方向外側に設けられ、一対のビードコア14間にトロイド状に延在するカーカス層40と、カーカス層40のタイヤ径方向外側に設けられるゴム表面層30と、を備える。
ビード部11には、一般のタイヤと同様の円環状のビードコア14が埋設されており、ビードコア14には、スチールコード等を使用できる。
補強部材21は、タイヤ周方向に巻回されていることが好ましい。補強部材21が、タイヤ周方向に巻回されていることで、タイヤの耐パンク性、耐カット性、周方向剛性が向上し、また、周方向剛性が向上することで、タイヤ骨格体のクリープを抑制することもできる。
ゴム表面層30は、トレッド部においては、補強層20のタイヤ径方向外側であって、サイドウォール部及びチェーファー部においてはタイヤ骨格体10のタイヤ径方向外側に設けられている。
図1及び図2において、カーカス層40は、タイヤ赤道(タイヤの回転の軸線に垂直であってタイヤトレッドの中央を通る線)を含む帯域で重なるカーカス層40aとカーカス層40bとで構成されているが、カーカス層40は1つの連続する層で構成されていてもよい。
カーカス層40は、カーカスプライ及び該カーカスプライを被覆するカーカスプライコーティングゴムを含んで構成される。カーカスプライは、通常、有機繊維コード(ポリエステル、レーヨン等)、スチールコード等のコードを用いて形成される。
以下、符号を省略して説明する。
本発明において、ゴム表面層は、少なくともトレッドゴム及びガムチェーファーを含み、更に、サイドゴムを含んでいてもよい。
トレッドゴム、ガムチェーファー及びサイドゴム、並びにカーカスプライコーティングゴムは、いずれも加硫ゴムである。加硫前のガムチェーファーを構成するゴム組成物は、ガムチェーファー用ゴム組成物と称する。つまり、ガムチェーファー用ゴム組成物を加硫して得られるゴムがガムチェーファーである。トレッドゴム、サイドゴム、及びカーカスプライコーティングゴムにおいても同様である。
なお、ゴム組成物及び特記している場合を除き、「ゴム」は加硫済ゴムを意味し、ゴム組成物は未加硫または半加硫状態である。ここで、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度に至っていない状態をいう。
ガムチェーファーは、初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδ(y)と同条件時の貯蔵弾性率E’(x)が式(1)〔0.0033x+0.02996<y<0.0033x+0.4〕を満たす。
以下、単に「tanδ」、「E’」と称するときは、それぞれ「初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδ」及び「初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の貯蔵弾性率E’」を指す。
tanδとE’と式(1)を満たすガムチェーファーを用いることで、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物を補強層及びタイヤ骨格体に用いたタイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性を向上させることができる。
ガムチェーファーにおいて、横軸にE’(x)、縦軸にtanδ(y)をとったときに、ガムチェーファーのtanδ(y)が「0.0033x+0.02996」以下となると、ガムチェーファーは低ロス化するものの、E’も低下して、ガムチェーファーの歪みが大きくなるため、タイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性を向上させることができない。ガムチェーファーのtanδ(y)が「0.0033x+0.4」以上となると、ガムチェーファーの歪みは抑えられるが、ガムチェーファーの発熱を抑えにくく、タイヤ骨格体及び補強層に含まれる樹脂材料の軟化を抑制することができない。
ガムチェーファーのE’は、1〜20MPaであることが好ましい。ガムチェーファーのE’が1MPa以上であることで、ガムチェーファーの歪みを小さくし、リムに対する耐摩耗性により優れ、10MPa以下であることで、ガムチェーファーが硬くなりすぎて、タイヤ骨格体に負荷を与えたり、ガムチェーファーに隣接するサイドゴム等の表面ゴム層に負荷を与えることを抑制することができ、タイヤの耐久性を損ねにくい。
タイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性をより向上する観点から、ガムチェーファーのtanδは0.050〜0.260であることがより好ましく、E’は7〜17MPaであることがより好ましい。
ガムチェーファーは、式(1)を満たすように、ゴム成分の種類又はブレンド比、配合剤の種類又は配合量を調整したゴム組成物(ガムチェーファー用ゴム組成物)を使用することができる。また、トレッドゴム、サイドゴム、及びカーカスプライコーティングゴムも同様に、各々の機能に応じた特性を有するように、ゴム成分の種類又はブレンド比、配合剤の種類又は配合量を調整したゴム組成物を使用することができる。
ここで、ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、高純度天然ゴム(HPNR:Highly Purified Natural Rubber)、合成イソプレンゴム(IR)、液状イソプレンゴム(L−IR)等のイソプレン系ゴムの他、ポリブタジエンゴム(BR)、ハイシスポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIR)等の合成ジエン系ゴムを使用でき、また、他の合成ゴムを使用することもできる。これらゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上のブレンドとして用いてもよい。
特に、ガムチェーファー用ゴム組成物においては、式(1)を満たすガムチェーファーを得る観点から、天然ゴム(NR)と合成ゴムとを混合して用いるのが好ましい。合成ゴムの中でも、ポリブタジエンゴム(BR)が好適である。
この場合、ポリブタジエンゴムのゴム成分中の含有量は、15質量%以上であることが好ましく、50質量以上がより好ましい。15質量%以上であることで、リムに対する耐摩耗性を向上し易い。ポリブタジエンゴムのゴム成分中の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量以下がより好ましい。80質量%以上であることで、タイヤの高速耐久性を低下しにくい。
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量以上がより好ましい。15質量%以上であることで、ガムチェーファーの破断延びを向上し、タイヤの高速耐久性を向上し易い。また、イソプレン系ゴムの含有量は、85質量%以下であることが好ましく、50質量以下がより好ましい。85質量%を超えると、リムに対する耐摩耗性を損ねにくい。
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。
ガムチェーファー組成物において、充填剤は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以上110質量部以下含まれることが好ましく、40質量部以上95質量部以下含まれることがより好ましく、65質量部超95質量部以下含まれることが更に好ましく、65質量部以上90質量部以下含まれることがより更に好ましい。かかる範囲であることで、ガムチェーファーが式(1)を満たし易い。
ガムチェーファー用ゴム組成物に用いられるカーボンブラックとしては、例えば、HAF(窒素吸着比表面積:75〜80m2/g)、HS−HAF(窒素吸着比表面積:78〜83m2/g)、LS−HAF(窒素吸着比表面積:80〜85m2/g)、FEF(窒素吸着比表面積:40〜42m2/g)、GPF(窒素吸着比表面積:26〜28m2/g)、N339(窒素吸着比表面積:88〜96m2/g)、LI−HAF(窒素吸着比表面積:73〜75m2/g)、IISAF(窒素吸着比表面積:97〜98m2/g)、HS−IISAF(窒素吸着比表面積:98〜99m2/g)等が挙げられる。
これらのカーボンブラックは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ガムチェーファーが式(1)を満たし易く、タイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性を両立する観点から、以上のカーボンブラックの中でも、ガムチェーファー用ゴム組成物は、HAF及びGPFを用いるのが好ましい。
ガムチェーファー用ゴム組成物に、カーボンブラックに加えて、所望によりシリカを配合してもよく、ガムチェーファー用ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して、シリカを10質量部以下含むことができる。
シリカとしては湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式シリカを用いるのが特に好ましい。シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に準拠して測定する)は40〜350m2/gであるのが好ましい。BET表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性とゴム成分中への分散性とを両立できるという利点がある。この観点から、BET表面積が80〜350m2/gの範囲にあるシリカが更に好ましく、BET表面積が120〜350m2/gの範囲にあるシリカが特に好ましい。このようなシリカとしては東ソーシリカ社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積 =220m2/g)、「ニプシルKQ」、デグッサ社製商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m2/g)等の市販品を用いることができる。
加硫剤としては、硫黄が挙げられる。
ガムチェーファーは、ゴム表面層を構成するゴムの中でも、特に耐屈曲性が求められ、屈曲に対しての強度が求められながらも、ガムチェーファー用ゴム組成物においては、屈曲に対しての強度を有し、リムに対する耐摩耗性と高速耐久性を向上する観点から、加硫剤は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましい。加硫剤の含有量が0.1質量部以上であれば十分に加硫でき、10質量部以下であれば過加硫状態を防止でき、ゴム組成物が硬く、脆弱になることを防止できる。上記観点から、加硫剤は、1.3〜7.0質量部がより好ましく、2.8〜5.0質量部が更に好ましい。
有機酸としては、ステアリン酸等のカルボン酸が挙げられる。
軟化剤としては、鉱物由来のミネラルオイル、石油由来のアロマチックオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル、天然物由来のパームオイル等が挙げられる。
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等のチアゾール系加硫促進剤、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。
ガムチェーファーは、ガムチェーファー用ゴム組成物からなり、該ガムチェーファー用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部の有機酸を含むことが好ましい。
ゴム組成物の加硫を促進する観点から、ガムチェーファー用ゴム組成物には、通常、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上の有機酸が含まれ、ガムチェーファー中に有機酸が残存する傾向にある。有機酸は、通常、ステアリン酸に代表される低分子カルボン酸であることから、ガムチェーファー中の有機酸量が多いと、ガムチェーファーから有機酸が染み出ることがある。ガムチェーファー用ゴム組成物中の有機酸量が、ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以下であることで、ガムチェーファーからの有機酸の染み出しを抑制することができ、ガムチェーファーから染み出した有機酸による樹脂材料の劣化を抑制し、タイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性をより向上することができる。
なお、ゴム組成物中の有機酸は、上述した配合剤としてのステアリン酸等の他、例えば、ゴム成分として使用できる天然ゴム等にも含まれている。
ガムチェーファーは、ガムチェーファー用ゴム組成物からなり、該ガムチェーファー用ゴム組成物がゴム成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部の加硫促進剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物の加硫を促進する観点から、ガムチェーファー用ゴム組成物には、通常、100質量部に対して0.1質量部以上の加硫促進剤が含まれ、ガムチェーファー中には、通常、加硫促進剤が残存する。加硫促進剤は、既に例示したように、通常、1,3−ジフェニルグアニジンに代表される低分子化合物が用いられることから、ガムチェーファー中の加硫促進剤量が多いと、ガムチェーファーから加硫促進剤が染み出ることがある。ガムチェーファー用ゴム組成物中の加硫促進剤量が、ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以下であることで、ガムチェーファーからの加硫促進剤の染み出しを抑制することができ、ガムチェーファーから染み出した加硫促進剤による樹脂材料の劣化を抑制し、タイヤの高速耐久性とリムに対する耐摩耗性をより向上することができる。
補強層は、補強部材と、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物で被覆する被覆層とからなる。補強層は、他の補強部材、例えば2層交錯ベルト部材等と組み合わせて使用しても構わないが、軽量化の観点からは、単独で用いる事が好ましい。
なお、補強層は、例えば、補強部材を樹脂組成物で被覆し、樹脂組成物で被覆された補強部材を、タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に配置することで、作製できる。
補強層の被覆層には、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物が用いられる。補強層に用いる樹脂組成物において、樹脂材料の含有割合が50質量%以上であれば、タイヤを軽量化する効果が大きくなり、また、タイヤをリサイクルし易くなる。補強部材をゴムで被覆した場合、加熱だけでは、補強部材とゴムとを分離させるのが難しいが、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物を用いた被覆層であれば、加熱のみで補強部材と被覆層とを分離することができ、タイヤをリサイクルする上で有利である。ここで、リサイクルのし易さの観点から、補強層の被覆層に用いる樹脂組成物は、樹脂材料を60〜100質量%含むことが好ましく、70〜100質量%含むことがより好ましい。また、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物を用いた被覆層であれば、補強部材を硬くすることができ、タイヤの高速耐久性をより改善することができる。
なお、本発明のタイヤの補強層は、補強部材を、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物で被覆してなり、補強部材をゴムで被覆してなるカーカス層とは異なる。
ここで、樹脂材料には、ゴムは含まれず、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
ここで、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物であり、本明細書では、このうち、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり且つゴム状弾性を有する高分子化合物を熱可塑性エラストマーとし、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり且つゴム状弾性を有しない高分子化合物を熱可塑性樹脂として、区別する。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
補強層をリサイクルし易くする観点から、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂及び前記熱可塑性エラストマーの少なくとも一方は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系又はポリウレタン系であることが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂においては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、又はポリウレタン系熱可塑性樹脂が好ましい。
これらの中でも、歪入力に対する耐久性の観点から、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)等が挙げられる。
既述のように、補強層をリサイクルし易くする観点から、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂及び前記熱可塑性エラストマーの少なくとも一方は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系又はポリウレタン系であることが好ましい。すなわち、熱可塑性エラストマーにおいては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、又はポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が好ましい。
これらの中でも、歪入力に対する耐久性の観点から、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)が好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)は、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーには、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤が用いられていてもよい。
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等が挙げられる。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィンないし他のポリオレフィン)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよい。また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、市販品を利用することができ、例えば、三井化学社製の「タフマー」シリーズ、三井・デュポンポリケミカル(株)「ニュクレル」シリーズ、「エルバロイAC」シリーズ、住友化学(株)「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ、東ソー(株)「ウルトラセン」シリーズ、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ等を用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)としては、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成してハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)は、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーとしてポリエステル樹脂を含むものである。
ハードセグメントを形成する好適な芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられ、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、或いは、これらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等のジオール成分と、から誘導されるポリエステル、或いは、これらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られる共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
タイヤ骨格体(タイヤケース)は、図1を用いて説明したように、環状で、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物からなる。
タイヤ骨格体に用いる樹脂組成物は、補強層の被覆層に用いる樹脂組成物と同一でも異なってもよいが、被覆層とタイヤ骨格体の接着性や物性値の差を考慮すると、同一であることが好ましい。
タイヤ骨格体の無荷重時のタイヤ最大幅部での厚さは、通常0.5〜2.5mm、好ましくは1〜2mmであり、タイヤ骨格体は、主としてゴムからなるタイヤケースのタイヤ内面に設けられることがある、厚さが通常100μm以下の樹脂製のインナーライナーとは異なる。
また、同じく、タイヤ骨格体をリサイクルし易くする観点から、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂及び前記熱可塑性エラストマーの少なくとも一方は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系又はポリウレタン系であることが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂においては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、又はポリウレタン系熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマーにおいては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、又はポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が好ましい。
更に、歪入力に対する耐久性の観点から、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、及びポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
また、樹脂材料以外に添加できる添加剤についても、補強層の被覆層に用いる樹脂組成物と、同様である。
特開2012−046030号公報(特許文献1)の第2実施形態に従い、樹脂材料としてポリアミド系熱可塑性エラストマー(ポリアミド系熱可塑性エラストマー、宇部興産社製、商品名「UBESTA XPA9055X1」)を用いて、射出成形によりタイヤ骨格体の半体を作製し、該半体同士を互いに向かい合わせ、使用したポリアミド系熱可塑性エラストマーの融点以上の温度で押圧して接合し、タイヤ骨格体(タイヤケース)を作製した。
次に、該タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで被覆されたスチールコードを、タイヤの周方向に螺旋巻回して、補強層を配設した。また、ポリエステルの有機繊維コードを常法にて用意したカーカスプライコーティングゴム用ゴム組成物にて被覆してなるカーカス層を、有機繊維コードがタイヤ径方向に配列するように配設した。
更に、表1〜表2に示す配合処方のガムチェーファー用ゴム組成物と、それぞれ常法にて用意したトレッドゴム用ゴム組成物、及びサイドゴム用ゴム組成物からなるゴム表面層を補強層のタイヤ径方向外側に配設した後、加硫して、タイヤ(空気入りタイヤ)を作製した。
また、作製したタイヤのタイヤ骨格体及びスチールコードの被覆層は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーからなり、樹脂材料の割合が100質量%である。
更に、得られたタイヤに対して、下記の方法で、高速耐久性(高速ドラム耐久性)を評価した。
JIS K6237:2012に準拠して、ガムチェーファー用ゴム組成物中の有機酸量を求めた。結果を表1〜表2の「配合」欄の「有機酸」欄に示す。
ガムチェーファーに用いたゴム組成物を用いて、作製したタイヤと同じ加硫条件で得たゴムから、長さ50mm、幅5mm、厚み2mmのゴムシートを切り出し、株式会社上島製作所製の動的粘弾性測定装置を用いて、初期荷重160mg、周波数52Hzの条件下で、25℃における動歪1%時の損失正接tanδと同条件時の貯蔵弾性率E’を測定した。結果を表1〜表2の「tanδ」欄及び「E’」欄に示す。
各供試タイヤを、25℃±2℃の室内で内圧300kPaに調整した後、24時間放置し、その後、空気圧の再調整を行い、400kgの荷重をタイヤに負荷して、直径約3mのドラムの上で、速度100km/hにて、10分ごとに10kmずつ速度を上昇させて、走行させた。タイヤが故障したときの距離を耐久距離として、実施例1の値を100として指数化し、指数値の大小から、下記評価基準にてタイヤの高速耐久性を評価した。
(評価基準)
◎:指数が100以上
○:指数が95以上100未満
△:指数が90以上95未満
×:指数が90未満
JIS規格の最大荷重(最大内圧条件)の200%荷重、空気圧300kpaの条件下で、各供試タイヤを速度60km/hで500時間ドラム走行させた後、リムフランジ接触部の摩耗深さを測定した。そして、以下の計算式により、各配合の耐リムチェーフィング性能を指数表示した。実施例1の摩耗深さを100として指数化し、指数値の大小から、下記評価基準にてリムに対する耐摩耗性を評価した。
(評価基準)
◎:指数が100以下
○:指数が100超110未満
△:指数が110以上120未満
×:指数が120以上
〔ゴム成分〕
NR:天然ゴム、インドネシア製、商品名「SIR20」
BR:ブタジエンゴム、株式会社JSR製、商品名「BR01」
Liq BR:液体ブチルゴム、株式会社クラレ製、商品名「CT−100」
CB HAF:旭カーボン株式会社製、商品名「#70(HAF)」
CB GPF:旭カーボン株式会社製、商品名「#55(GPF)」
樹脂:フェノールホルムアルデヒド樹脂 WN53、住友ベークライト株式会社製、PR−50235
有機酸:ステアリン酸
加硫促進剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
なお、有機酸は、配合成分としてステアリン酸を用い、表中の「有機酸」欄の量は、天然ゴム等に含まれる有機酸量も包含するガムチェーファー用ゴム組成物中の全有機酸量を表す。
11 ビード部
12 サイド部
13 クラウン部
14 ビードコア
20 補強層
21 補強部材
22 被覆層
30 ゴム表面層
32 トレッドゴム
34 サイドゴム
36 ガムチェーファー
40 カーカス層
Claims (5)
- 樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物からなる環状のタイヤ骨格体と、
前記タイヤ骨格体のタイヤ径方向外側に設けられた補強層と、
該補強層のタイヤ径方向外側に設けられ、少なくともトレッドゴム及びガムチェーファーを含むゴム表面層と、
を備え、
前記補強層は、樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物で、補強部材を被覆してなり、
前記樹脂材料を50〜100質量%含む樹脂組成物が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、
前記ガムチェーファーは、初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδと初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の貯蔵弾性率E’が下記式(1)を満たすタイヤ。
0.0033x+0.02996<y<0.0033x+0.4 (1)
〔式(1)中、xは初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の貯蔵弾性率E’を表し、yは初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδを表す。〕 - 前記ガムチェーファーの初期荷重160mg、周波数52Hz、25℃における動歪1%時の損失正接tanδが0.280未満である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記ガムチェーファーが、ガムチェーファー用ゴム組成物からなり、該ガムチェーファー用ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部の有機酸を含む請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
- 前記ガムチェーファーが、ガムチェーファー用ゴム組成物からなり、該ガムチェーファー用ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部の加硫促進剤を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記補強部材が、タイヤ周方向に巻回されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
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