JP2019217871A - タイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂で被覆された樹脂被覆コードを含んで構成されたベルト層を備え、耐久性を向上させることが可能なタイヤを得る。【解決手段】カーカス16のタイヤ径方向(矢印R方向)外側にベルト層26が設けられている。当該ベルト層26は、補強コード30を樹脂32で被覆した樹脂被覆コード34がタイヤ周方向に沿って巻かれ、当該樹脂被覆コード34におけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面34A、34B同士が溶着して形成されている。そして、当該ベルト層26におけるタイヤ軸方向の少なくとも両端部には、樹脂被覆コード34におけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面34A、34Bを跨いで、当該ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層27が溶着されている。【選択図】図2
Description
本発明は、タイヤに関する。
補強コードを樹脂で被覆してなる樹脂被覆コードを、樹脂材料を用いて構成されたタイヤ骨格部材の外周面に螺旋状に巻いて接合したベルト層を有するタイヤが開示されている(特許文献1参照)。
上記の従来技術では、タイヤ骨格部材の外周面(巻付け面)に樹脂被覆コードを接合する際、樹脂被覆コードの接合面側、及びタイヤ骨格部材の外周面に熱風を吹き当て当該熱風が吹き当てられた部分を溶融させ溶着している。そして、樹脂被覆コードを押付ローラによりタイヤ骨格部材の外周面に押し付けて、タイヤ骨格部材の外周面に樹脂被覆コードを接合している。
また、これ以外にも、樹脂被覆コードを、樹脂と接合し難い金属等の巻付け面に巻き付け、互いに隣接する樹脂被覆コードの樹脂同士を溶着させてベルト(以下、「ベルト層」という)を形成し、当該ベルト層を巻付け面から取り外し、タイヤ骨格部材に接合させる方法もある。
一方、互いに隣接する樹脂被覆コード間において、例えば、樹脂同士の溶着面積を十分に確保することができない場合、当該樹脂同士の溶着力は弱くなり、当該ベルト層を用いたタイヤにおいて、耐久性の確保が難しくなる。
本発明は、樹脂で被覆された樹脂被覆コードを含んで構成されたベルト層を備えたタイヤの耐久性を向上させることを目的とする。
請求項1に記載のタイヤは、環状のタイヤ骨格部材と、前記タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、第1補強コードを樹脂で被覆して構成された樹脂被覆コードが前記タイヤ骨格部材の外周面にタイヤ周方向に沿って巻かれ前記樹脂被覆コードにおけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面同士が溶着して形成されたベルト層と、前記ベルト層における前記タイヤ軸方向の少なくとも両端部において、前記隣接面を跨ぎ当該隣接面のタイヤ径方向外側に溶着された樹脂部と、を有している。
請求項1に記載のタイヤでは、環状のタイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側にベルト層が設けられている。当該ベルト層は、第1補強コードを樹脂で被覆して構成された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に沿って巻かれ、当該樹脂被覆コードにおけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面同士が溶着して形成されている。そして、当該ベルト層におけるタイヤ軸方向の少なくとも両端部には、樹脂被覆コードにおけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面を跨いで、当該ベルト層のタイヤ径方向外側に樹脂部が溶着されている。
例えば、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層において、樹脂被覆コードにおけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面の樹脂同士の溶着力が弱いと仮定する。この場合、いわゆる突起乗り越し等により路面と接触するトレッドがバックリング(トレッドの一部が路面から離間する現象)を起こした際に、当該隣接面においてクラック等が発生する可能性がある。
特に、環状のタイヤ骨格部材において軸方向に沿って切断されたときの断面形状が円弧状である場合、タイヤ骨格部材の軸方向の両端部側では、互いに隣接する樹脂被覆コード間において、径差により中央部側よりも段差や隙間が形成される可能性がある。このように、当該樹脂被覆コード間において、段差や隙間が形成された場合、樹脂同士の溶着面積が十分に確保されないことが懸念される。
このため、本発明では、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層におけるタイヤ軸方向の少なくとも両端部において、樹脂被覆コードの互いに隣接する隣接面を跨いで、当該ベルト層のタイヤ径方向外側に樹脂部が溶着されている。つまり、ベルト層におけるタイヤ軸方向の少なくとも両端部では、樹脂被覆コードの互いに隣接する隣接面(溶着面)以外に、当該ベルト層と樹脂部との間で溶着面を形成することができる。これにより、ベルト層の溶着面積を増やし、溶着力を増大させることが可能となる。
また、ベルト層に樹脂部が溶着されることにより、ベルト層自体の剛性を向上させることができ、当該ベルト層を備えたタイヤの耐久性を向上させることが可能となる。さらに、ベルト層において、クラック等は、樹脂被覆コードにおいて互いに隣接する隣接面で発生するため、少なくとも隣接面を跨いで当該隣接面のタイヤ径方向外側に樹脂部が溶着されることにより、クラックの発生を効果的に抑制することが可能となる。
なお、ここでの「樹脂被覆コードがタイヤ周方向に沿って巻かれ」について、樹脂被覆コードがタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に連続して巻回された場合以外に、複数の樹脂被覆コードがタイヤ軸方向に隣接した状態でタイヤ周方向に沿って巻かれた場合も含まれる。
請求項2に記載のタイヤは、請求項1に記載のタイヤにおいて、前記樹脂部は、前記ベルト層に積層されて樹脂層を形成している。
ここで、樹脂被覆コードにおいて互いに隣接する隣接面を跨いで当該隣接面のタイヤ径方向外側に樹脂部を溶着させる場合、例えば、当該隣接面を跨ぐ位置に、溶融樹脂を供給して樹脂部を形成することも考えられる。
しかし、請求項2に記載のタイヤでは、樹脂被覆コードを含んで構成されたベルト層のタイヤ径方向外側に樹脂部を積層して樹脂層を形成している。溶融樹脂を供給する場合、ベルト層を形成する装置と異なる装置が用いられるが、ベルト層に樹脂部を積層させる場合、ベルト層と同じ装置を用いることが可能となり、溶融樹脂を供給する場合と比較して生産性が上がる。
請求項3に記載のタイヤは、請求項1又は請求項2に記載のタイヤにおいて、前記樹脂部は、前記タイヤ軸方向に沿って切断されたときのタイヤ軸方向断面において断続的に形成されている。
請求項3に記載のタイヤでは、樹脂部は、タイヤ軸方向に沿って切断されたときのタイヤ軸方向断面において断続的に形成されている。この場合、樹脂部が、当該タイヤ軸方向断面において連続的に形成された場合と比較して、樹脂部が形成されている領域が減り、その分、軽量化を図ることができる。
請求項4に記載のタイヤは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のタイヤにおいて、前記樹脂部には、第2補強コードが設けられている。
請求項4に記載のタイヤでは、樹脂部には、第2補強コードが設けられており、樹脂部自体の剛性を向上させることができる。
請求項5に記載のタイヤは、請求項4に記載のタイヤにおいて、前記第1補強コードと前記第2補強コードは、タイヤ径方向に重ならない位置に配置されている。
例えば、樹脂被覆コードは、第1補強コードを樹脂で被覆して形成されたものであるが、第1補強コードは、樹脂被覆コード自体の剛性を向上させるものであり、樹脂は、互いに隣接する樹脂同士の表面が溶融することで互いを溶着させるというものである。
このため、請求項5に記載のタイヤでは、第1補強コードと第2補強コードを、タイヤ径方向に重ならない位置に配置することによって、樹脂被覆コード自体、樹脂部自体の剛性をそれぞれ向上させると共に、樹脂層が薄くても、第1補強コード、第2補強コードによって樹脂の溶融が阻害されないようにして、樹脂被覆コードの表面と樹脂との間の溶着力を担保することが可能となる。
以上説明したように本発明のタイヤは、耐久性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図面において、矢印R方向はタイヤ径方向を示し、矢印W方向はタイヤ幅方向を示す。タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸(図示せず)と直交する方向を意味する。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向をタイヤ軸方向と言い換えることもできる。さらに、図面において、CLはタイヤ赤道面を示す。
また、各部の寸法測定方法は、JATMA(日本自動車タイヤ協会)が発行する2018年度版YEAR BOOKに記載の方法による。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は、各々の規格に従う。
<タイヤの構成>
(タイヤ)
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係るタイヤ10の構成について説明する。
(タイヤ)
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係るタイヤ10の構成について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るタイヤ10は、例えば、乗用車に用いられる所謂ラジアルタイヤであり、ビードコア12が埋設された一対のビード部20を備え、一方のビード部20と他方のビード部(図示省略)との間に、後述する1枚のカーカスプライ14からなるカーカス(タイヤ骨格部材)16が跨っている。なお、図1は、タイヤ10の空気充填前の自然状態の形状を示している。
カーカスプライ14は、タイヤ10のラジアル方向に延びる複数本のコード(図示せず)をコーティングゴム(図示せず)で被覆して形成されている。即ち、本実施形態のタイヤ10は、所謂ラジアルタイヤである。カーカスプライ14のコードの材料は、例えば、PETであるが、従来公知の他の材料であっても良い。
カーカスプライ14は、タイヤ幅方向(矢印W方向)の端部分がビードコア12をタイヤ径方向(矢印R方向)外側に折り返されている。また、カーカスプライ14は、一方のビード部20から他方のビード部(図示省略)に跨る部分が本体部14Aと呼ばれ、ビードコア12から折り返されている部分が折り返し部14Bと呼ばれる。
そして、カーカスプライ14の本体部14Aと折返し部14Bとの間には、ビードコア12からタイヤ径方向外側に向けて厚さが漸減するビードフィラー18が配置されている。このビードフィラー18の形成によりビード部20の剛性が向上している。
ここで、カーカス16のタイヤ内側には、ゴムからなるインナーライナー22が配置されている。カーカス16のタイヤ幅方向両外側には、ゴム材料からなるサイドゴム層24がそれぞれ設けられており、当該サイドゴム層24とサイドゴム層24の間に、クラウン部23が設けられている。このクラウン部23は、ビード部20からクラウン部23に向かってタイヤ軸方向外側に凸となるように緩やかに湾曲しており、クラウン部23は、そのタイヤ径方向外側に配設されるトレッド36の支持部となっている。
なお、本実施形態では、ビードコア12、カーカス16、ビードフィラー18、インナーライナー22、及びサイドゴム層24によってタイヤケース25が構成されている。すなわち、タイヤケース25は、タイヤ10の骨格を成すタイヤ骨格部材のことである。
(ベルト)
次に、図2を用いて、本発明の一実施形態に係るベルト28について説明する。
次に、図2を用いて、本発明の一実施形態に係るベルト28について説明する。
図2に示されるように、ベルト28は、カーカス16のクラウン部23の外側、つまり、カーカス16のタイヤ径方向(矢印R方向)外側において、当該クラウン部23のタイヤ軸方向の略全域に亘って設けられている。本実施形態では、ベルト28は、ベルト層26及び樹脂層27を含んで構成されており、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層27が溶着されている。
ここで、ベルト層26は、複数本(本実施形態では2本)の補強コード(第1補強コード)30を樹脂32で被覆した樹脂被覆コード34が巻回されて形成されている。なお、樹脂被覆コード34は、タイヤ軸方向に沿って切断されたときのタイヤ軸方向断面の形状が、横長の略平行四辺形となっている。
ベルト層26の補強コード30は、カーカスプライ14のコードよりも太く、かつ、引張強度が高いものを用いることが好ましく、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成することができる。
一方、補強コード30を被覆する樹脂32には、サイドゴム層24を構成するゴム材料、及びトレッド36を構成するゴム材料よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられている。補強コード30を被覆する樹脂32としては、弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、及び熱硬化性樹脂等を用いることができ、走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率(JIS K7113:1995に規定される)は、100MPa以上が好ましい。また、補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率の上限は、1000MPa以下とすることが好ましい。なお、補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率は、200〜700MPaの範囲内が特に好ましい。
また、本実施形態のベルト26の厚さ寸法は、補強コード30の直径寸法よりも大きくすることが好ましい、言い換えれば、補強コード30が完全に樹脂32に埋設されていることが好ましい。ベルト26の厚さ寸法は、空気入りタイヤ10が乗用車用の場合、具体的には、0.70mm以上とすることが好ましい。
ところで、本実施形態では、ベルト層26のタイヤ径方向外側にさらに樹脂層27が設けられている。ベルト層26は、カーカス16のタイヤ径方向(矢印R方向)外側に樹脂被覆コード34が巻回された状態で設けられている。そして、樹脂層27は、当該樹脂層27を構成する樹脂部37が、ベルト層26を構成する樹脂被覆コード34に対して、位相をずらした状態で当該ベルト層26のタイヤ径方向外側に巻回され、タイヤ軸方向断面において樹脂部37は連続的に配置されている。なお、樹脂部37は、タイヤ軸方向断面の形状が、横長の略平行四辺形となっている。
より具体的に説明すると、前述のように、ベルト層26は、樹脂32で被覆した樹脂被覆コード34が巻回して形成されており、樹脂被覆コード34におけるタイヤ軸方向(矢印W方向)に隣接する隣接面34A、34B同士が溶着されている(溶着部35)。一方、樹脂層(樹脂部)27は、ベルト層26のタイヤ径方向外側を巻回して形成(積層)されており、樹脂層27においてタイヤ軸方向に隣接する樹脂部37の隣接面37A、37B同士が溶着されている(溶着部39)。
樹脂層27を構成する樹脂部37は、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨いで溶着されている(溶着部41)。つまり、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの位置(溶着部35)と樹脂部37の隣接面37A、37Bの位置(溶着部39)は、タイヤ径方向に重ならないように配置され、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層27が積層(溶着)される(溶着部41)。
このようにしてベルト28は形成される。そして、当該ベルト28のタイヤ径方向外側には、トレッド36が配置され、トレッド36に用いるゴム材料は、従来一般公知のものが用いられる。また、トレッド36には、排水用の溝36Aが形成されており、トレッド36のパターンも従来一般公知のものが用いられる。
(タイヤの製造方法)
ここで、本実施形態のタイヤ10の製造方法の一例を説明する。
ここで、本実施形態のタイヤ10の製造方法の一例を説明する。
まず、公知のタイヤ成形ドラム(不図示)の外周面に、図1で示すゴム材料からなるインナーライナー22、ビードコア12、ゴム材料からなるビードフィラー18、コードをゴム材料で被覆したカーカスプライ14、及びサイドゴム層24からなる未加硫のタイヤケース25を形成する。ここまでの製造方法は、従来通りである。また、ベルト層26は、2本の補強コード30を被覆用の樹脂32(図3参照)で被覆した樹脂被覆コード34(図3参照)を螺旋状に巻回して形成する。
以下に、図3を用いて、ベルト層26の製造工程の一例を説明する。
まず、ベルト成形ドラム40の近傍にコード供給装置42、加熱装置50、押付ローラ60、及び冷却ローラ70を移動可能に配置する。
まず、ベルト成形ドラム40の近傍にコード供給装置42、加熱装置50、押付ローラ60、及び冷却ローラ70を移動可能に配置する。
コード供給装置42は、補強コード30を被覆用の樹脂32で被覆した樹脂被覆コード34を巻き付けたリール43と、このリール43から巻き出された樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に案内するためのガイド部材44とを含んで構成されている。このガイド部材44は、筒状とされ、内部を樹脂被覆コード34が通過するようになっている。また、ガイド部材44の口部46からは、ベルト成形ドラム40の外周面に向かって樹脂被覆コード34が送り出される。
加熱装置50は、熱風を樹脂被覆コード34に吹き当てて、吹き当てた部分を加熱し溶融させるものである。なお、本実施形態では、電熱線(不図示)で加熱した空気をファン(不図示)で発生させた気流で吹出し口52から吹き出し、この吹き出した熱風を樹脂被覆コード34に吹き当てるようになっている。なお、加熱装置50の構成は、上記構成に限定されず、熱可塑性樹脂を加熱溶融できれば、どのような構成であってもよい。例えば、樹脂被覆コード34の側面に熱鏝を接触させて側面を加熱溶融させてもよく、輻射熱で加熱溶融させてもよく、赤外線を照射して加熱溶融させてもよい。
押付ローラ60は、後述する樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40外周面に押し付けるものであり、押付力Fを調整できるようになっている。また、押付ローラ60のローラ表面には、溶融状態の樹脂材料の付着を防ぐための加工が施されている。そして、押付ローラ60は、回転自在となっており、樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に押し付けている状態では、ベルト成形ドラム40の回転方向(矢印A方向)に対して従動回転するようになっている。
冷却ローラ70は、押付ローラ60よりもベルト成形ドラム40の回転方向下流側に配置され、樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に押し付けつつ、樹脂被覆コード34を冷却するものである。この冷却ローラ70は、押付ローラ60と同様に、押付力を調整でき、かつ、ローラ表面に溶融状態の樹脂材料の付着を防ぐための加工が施されている。
また、冷却ローラ70は、押付ローラ60と同様に、回転自在となっており、樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に押し付けている状態では、ベルト成形ドラム40の回転方向(矢印A方向)に対して従動回転するようになっている。さらに、冷却ローラ70は、ローラ内部を液体(例えば、水など)が流通するようになっており、この液体の熱交換によりローラ表面に接触した部材(本実施形態では、樹脂被覆コード34)などを冷却することができる。なお、溶融状態の樹脂材料を自然冷却させる場合には、冷却ローラ70を省略してもよい。
次に、ベルト成形ドラム40を矢印A方向に回転させると共にコード供給装置42の口部46から樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に向けて送り出す。
そして、加熱装置50の吹出し口52から樹脂被覆コード34に向かって熱風を吹き出して加熱し樹脂32の表面を溶融させながら、樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40に付着させつつ、樹脂被覆コード34を押付ローラ60でベルト成形ドラム40の外周面に押し付ける。
この押付ローラ60によって樹脂被覆コード34は、側部がタイヤ軸方向に膨出するように変形(押し潰しによる変形)して、樹脂32のタイヤ軸方向に隣接する隣接面34A、34B同士が接触して溶着される(溶着部35)。その後、樹脂32の溶融部分は、冷却ローラ70に接触して固化され、隣接する樹脂被覆コード34同士(隣接面34A、34B同士)の溶着が完了する。
このようにして、樹脂被覆コード34をベルト成形ドラム40の外周面に螺旋状に巻き付けると共に当該外周面に押し付けていくことで、ベルト成形ドラム40の外周面にベルト層26が形成される。なお、樹脂被覆コード34を螺旋状に巻き付けるには、コード供給装置42の口部46の位置を、タイヤケース25の回転に伴ってタイヤ軸方向に移動させたり、タイヤケース25をタイヤ軸方向に移動させたりすればよい。
以上のようにして形成されたベルト層26と同様の形成方法により、図示はしないが、ベルト成形ドラム40の外周面に設けられたベルト層26の外周面に樹脂層27(図2参照)が形成される。すなわち、図2に示される樹脂層27を構成する樹脂部37のタイヤ軸方向(矢印W方向)に隣接する隣接面37A、37B同士が接触して溶着される(溶着部39)と共に、ベルト層26と樹脂部37との間で重なるベルト層26のタイヤ径方向(矢印R方向)外側の外面26Aと樹脂部37のタイヤ径方向内側の内面27A同士が接触して溶着される(溶着部41)。その後、樹脂部37の溶融部分は、図3に示される冷却ローラ70に接触して固化され、隣接する樹脂部37同士の溶着が完了すると共に、樹脂層27がベルト層26のタイヤ径方向外側に積層され、ベルト28が形成されることとなる。
そして、当該樹脂層27が固化するとベルト28をベルト成形ドラムから取り外し、タイヤ成形ドラムのタイヤケースの径方向外側に配置し、タイヤケースを拡張してタイヤケースの外周面、言い換えればカーカス16の外周面をベルト28の内周面に圧着する。最後に、ベルト28の外周面に、一般のタイヤと同様に未加硫のトレッド36を貼り付け、生タイヤが完成する。このようにして製造された生タイヤは、一般のタイヤと同様に加硫成形モールドで加硫成形され、タイヤ10が完成する。
<タイヤの作用、効果>
次に、本実施の形態に係るタイヤ10の作用、効果について説明する。
次に、本実施の形態に係るタイヤ10の作用、効果について説明する。
比較例として、例えば、図2に示すカーカス16の外周面(タイヤ径方向外側)に設けられたベルト層26において、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bにおける樹脂32同士の溶着力が弱いと仮定する。この場合、いわゆる突起乗り越し等によるトレッド36のバックリング(トレッド36の一部が路面から離間する現象)により、ベルト層26の隣接面34A、34Bにおいてクラック等が発生する可能性がある。
特に、カーカス16に設けられたクラウン部23のタイヤ軸方向(矢印W方向)に沿って切断されたときの断面(タイヤ軸方向断面)の形状が円弧状(曲率半径R)である場合、図示はしないが、カーカス16のタイヤ軸方向の両端部では、互いに隣接する樹脂被覆コード34間において、径差により中央部側よりも段差や隙間が形成される可能性がある。このように、当該樹脂被覆コード34間において、段差や隙間が形成された場合、樹脂32同士の溶着面積が十分に確保されないことが懸念される。
このため、本実施形態では、図2に示されるように、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層27が溶着されている。この樹脂層27を構成する樹脂部37は、ベルト層26の一部を構成する樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨いでベルト層26に溶着されている。さらに、当該樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの位置(溶着部35)と樹脂部37の隣接面37A、37Bの位置(溶着部39)が、タイヤ径方向に重ならないように配置されている。
これにより、ベルト層26において、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34B同士の溶着部35以外に、当該ベルト層26の外面26Aと樹脂部37の内面27Aとの間で溶着部41を形成すると共に、樹脂層27における樹脂部37の隣接面37A、37B同士の溶着部39を形成することができる。すなわち、本実施形態では、ベルト層26の溶着面積を増やし、溶着力を増大させることが可能となる。
その結果、ベルト層26自体の剛性を向上させることができ、ベルト層26を含むベルト28のタイヤ幅方向の面内剪断剛性を確保することができる。そして、ベルト28のタイヤ幅方向の面内剪断剛性が確保されることにより、タイヤ10にスリップ角を付与した場合の横力を十分に発生させることができる。したがって、当該タイヤ10を備えた車両では、操縦安定性を確保することができ、また、応答性も向上させることができる。
さらに、ベルト層26自体の剛性が向上することで、ベルト28の面外曲げ剛性が向上し、いわゆる突起乗り越し等によるトレッド36のバックリング(トレッド36の一部が路面から離間する現象)によるベルト28の割れを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、当該ベルト層26を備えたタイヤ10の耐久性を向上させることが可能となる。なお、カーカス16に設けられたクラウン部23は、必ずしもタイヤ軸方向断面の形状が円弧状である場合に限らず、直線状であってもよく、クラウン部23のタイヤ軸方向断面の形状が直線状であったとしても、円弧状であった場合と略同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、ベルト層26の一部を構成する樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨いで当該樹脂被覆コード34のタイヤ径方向外側に樹脂部37を設けるに当たって、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層27を積層させている。図2、図3に示されるように、ベルト層26は、コード供給装置42によりベルト成形ドラム40の外周面に向かって樹脂被覆コード34を送り出すことによって形成されているが、樹脂層27を形成する際、当該コード供給装置42を利用して樹脂部37を形成することができる。
つまり、本実施形態では、樹脂層27を形成するに当たって、ベルト層26を形成する際に用いた装置(コード供給装置42)を利用することで、当該コード供給装置42とは異なる別の装置を用いて樹脂部37を形成する場合と比較して、生産性を向上させることができる。
なお、樹脂層27を形成するに当たり、コード供給装置42以外の装置を利用してもよいのは勿論のことである。例えば、図5(A)、(B)に示されるように、3Dプリンタ72を用いて、隣接する樹脂被覆コード34の溶着部35の延長線上に溶融樹脂74を吐出させ、当該樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨ぐように、ベルト層26の外面26Aに樹脂部76を形成してもよい。また、3Dプリンタ72以外に他の製法によって樹脂層27が形成されてもよい。
(本実施形態の変形例)
以上の実施形態では、樹脂部37は、ベルト層26のタイヤ径方向外側に巻回された状態で、タイヤ軸方向断面において連続的に配置されている。しかし、当該樹脂部37は、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨いで形成されていればよいため、これに限るものではない。例えば、図4(A)に示されるように、樹脂部37が、タイヤ軸方向断面において断続的に設けられてもよい。
以上の実施形態では、樹脂部37は、ベルト層26のタイヤ径方向外側に巻回された状態で、タイヤ軸方向断面において連続的に配置されている。しかし、当該樹脂部37は、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bを跨いで形成されていればよいため、これに限るものではない。例えば、図4(A)に示されるように、樹脂部37が、タイヤ軸方向断面において断続的に設けられてもよい。
このように、樹脂部37が、タイヤ軸方向断面において断続的に設けられた場合、図2に示されるように、樹脂部37が、タイヤ軸方向断面において連続的に設けられた場合と比較して、樹脂層27自体の剛性は低くなるものの、樹脂部37自体の量を減らしタイヤ10の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
また、図4(A)に示されるように、タイヤ軸方向断面において樹脂部37を断続的に設ける場合、樹脂部37のピッチは必ずしも同じである必要はない。例えば、ベルト層26におけるタイヤ軸方向の両端部において樹脂部37のピッチを小さくし、タイヤ軸方向の中央部における樹脂部37のピッチは大きくなるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、樹脂部37は、ベルト層26と同様に、カーカス16のクラウン部23のタイヤ軸方向の略全域に亘って設けられているが、これに限るものではなく、本発明では、ベルト層26におけるタイヤ軸方向の少なくとも両端部に樹脂部37が設けられていればよい。
また、本実施形態では、図4(A)に示されるように、樹脂層27は、樹脂のみで構成された樹脂部37で形成されているが、ベルト層26の溶着面積を増やすことができればよいため、これに限るものではない。例えば、図4(B)に示されるように、樹脂層78が、1本の補強コード(第2補強コード)80を樹脂82で被覆した樹脂被覆コード84によって形成されてもよい。
このように、樹脂層78が樹脂被覆コード84によって形成されることにより、樹脂部37(図2参照)のみで形成された樹脂層27(図2参照)と比較して、樹脂層78自体の剛性を上げることができ、ベルト28自体の剛性を向上させることができる。なお、ここでは、当該樹脂被覆コード84は、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの位置(溶着部35)と樹脂被覆コード84の隣接面85A、85Bの位置(溶着部85)が、タイヤ径方向に重ならないように配置され、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層78が積層(溶着)される(溶着部79)。そして、補強コード80は、ベルト層26を構成する樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの延長線上に配置されている。なお、この補強コード80の配置は、樹脂層78の層厚や樹脂被覆コード84の幅寸法等によって適宜変更可能である。
さらに、図4(B)に示されるように、1本の補強コード80が樹脂82で被覆された樹脂被覆コード84によって樹脂層78が形成される場合に限らず、図4(C)に示されるように、2本の補強コード(第2補強コード)80が樹脂82で被覆された樹脂被覆コード88によって樹脂層86が形成されてもよい。これにより、樹脂層86自体の剛性をさらに上げることができる。
なお、この場合、当該樹脂被覆コード88は、樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの位置(溶着部35)と樹脂被覆コード88の隣接面88A、88Bの位置(溶着部89)が、タイヤ径方向に重ならないように配置され、ベルト層26のタイヤ径方向外側に樹脂層86が積層(溶着)される(溶着部87)。さらに、当該樹脂被覆コード88の補強コード80は、ベルト層26を構成する樹脂被覆コード34の補強コード30に対して、タイヤ径方向に重ならない位置に配置される。
これにより、樹脂被覆コード88自体、樹脂層86自体の剛性を向上させると共に、仮に樹脂層86が薄い場合であっても、2本の補強コード80によって樹脂82の溶融が阻害されないようにして、ベルト層26の外面26Aと樹脂82との間の溶着力を担保することが可能となる。
また、以上の実施形態では、樹脂被覆コード34等がタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に連続して巻回された例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、複数の樹脂被覆コードがタイヤ軸方向に隣接した状態でタイヤ周方向に沿って巻かれてもよい。
また、本実施形態では、図2に示されるように、樹脂被覆コード34のタイヤ軸方向断面の形状は平行四辺形である。このため、図示はしないが、樹脂被覆コード34のタイヤ軸方向断面の形状が長方形の場合と比較して、隣接する樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bの接着面積は大きくなり、溶着力が向上する。
また、隣接する樹脂被覆コード34の隣接面34A、34Bが押付ローラ60(図3参照)の押付力F(図3参照)が作用する方向に対して傾斜することで、隣接面34A、34Bの法線方向にも力が作用することとなる。このため、樹脂被覆コード34のタイヤ軸方向断面の形状が長方形の場合と比較して、隣接面34A、34Bの密着度が向上する。なお、樹脂被覆コード34のタイヤ軸方向断面の形状が長方形であってもよいのは勿論のことである。
また、本実施形態では、樹脂層78を構成する樹脂82の材料として、ベルト層26の樹脂32と同じ樹脂材料を用いることができるが、樹脂層78はベルト層26の樹脂32と溶着できればよく、場合によっては樹脂32とは同種の樹脂材料で硬さの異なるものを用いたり、樹脂32とは異なる種類の樹脂材料を用いたりしてもよい。
また、上記実施形態では、ベルト層26を製造する際に用いた樹脂被覆コード34が、2本の補強コード30を樹脂32で被覆したものであるが、樹脂被覆コード34は1本の補強コード30を樹脂32で被覆したものであってもよく、3本以上の補強コード30を樹脂32で被覆したものであってもよい。
上記実施形態のベルト層26は、一般的なタイヤに限らず、サイド部を補強ゴムで補強したランフラットタイヤに用いることもできる。また、上記実施形態の樹脂層27とベルト層26とが溶着により接合されていたが、接着剤を用いて接合されていてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
10…タイヤ、16…カーカス(タイヤ骨格部材)、25…タイヤケース(タイヤ骨格部材)、26…ベルト層、26A…外面(ベルト層のタイヤ径方向外側)、27…樹脂層(樹脂部)、30…補強コード(第1補強コード)、32…樹脂、34…樹脂被覆コード、34A…隣接面、34B…隣接面、37…樹脂部、76…樹脂部、78…樹脂層、80…補強コード(第2補強コード)、82…樹脂、84…樹脂被覆コード、86…樹脂層、88…樹脂被覆コード
Claims (5)
- 環状のタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、第1補強コードを樹脂で被覆して構成された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に沿って巻かれ前記樹脂被覆コードにおけるタイヤ軸方向に隣接する隣接面同士が溶着して形成されたベルト層と、
前記ベルト層における前記タイヤ軸方向の少なくとも両端部において、前記隣接面を跨ぎ当該ベルト層のタイヤ径方向外側に溶着された樹脂部と、
を有するタイヤ。 - 前記樹脂部は、前記ベルト層に積層された樹脂層である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記樹脂部は、前記タイヤ軸方向に沿って切断されたときのタイヤ軸方向断面において断続的に形成されている請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
- 前記樹脂部には、第2補強コードが設けられている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のタイヤ。
- 前記第1補強コードと前記第2補強コードは、タイヤ径方向に重ならない位置に配置されている請求項4に記載のタイヤ。
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