図1〜図12を参照して、図1に示すジブ引込装置20を備えるクレーン1について説明する。
クレーン1は、建設作業などに用いられる建設機械である。クレーン1は、移動式でもよく、固定式でもよい。例えば、クレーン1は、タワークレーンでもよく、ラッフィングクレーンでもよい。クレーン1は、下部走行体11と、上部旋回体13と、ブーム起伏装置15と、ジブ起伏装置17と、ジブ引込装置20と、保持装置90と、を備える。
下部走行体11は、クレーン1を走行させる部分である。下部走行体11は、クローラ式でもよく、ホイール式でもよい。下部走行体11は、設けられなくてもよい。
上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回可能であり、下部走行体11よりも上側Z1に配置される。上部旋回体13は、キャブ13aと、ウエイト13bと、を備える。上部旋回体13の長手方向かつ水平方向を、前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、ウエイト13bからキャブ13aに向かう側を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。前後方向Xおよび上下方向Z(鉛直方向)に直交する方向を、横方向Y(ブーム30幅方向、ジブ40幅方向)とする。上下方向Zには、上側Z1と、下側Z2と、がある。
ブーム起伏装置15は、上部旋回体13に対してブーム30を起伏させる。ブーム起伏装置15は、ガントリ15aと、ブーム起伏ロープ15bと、ブームガイライン15cと、を備える。ガントリ15aは、上部旋回体13に取り付けられ、ブーム30よりも後側X2に配置される。ブーム起伏ロープ15bおよびブームガイライン15cは、ガントリ15aの先端部とブーム30の先端部とにつながれる。図示しないウインチがブーム起伏ロープ15bを巻き取りおよび繰り出しすることで、ブーム30が、上部旋回体13に対して起伏する。
ジブ起伏装置17は、ブーム30に対してジブ40を起伏させる。ジブ起伏装置17は、ストラット17aと、ジブ起伏ロープ17bと、ジブガイライン17c・17dと、ジブ起伏用ウインチ17eと、を備える。ストラット17aは、ブーム30の先端部に回転自在に取り付けられる。ジブ起伏ロープ17bおよびジブガイライン17cは、ジブ起伏用ウインチ17eとストラット17aとにつながれる。ジブガイライン17dは、ストラット17aとジブ40の先端部とにつながれる。ジブ起伏用ウインチ17eがジブ起伏ロープ17bを巻き取りおよび繰り出しすることで、ジブ40が、ブーム30に対して起伏する。
ジブ引込装置20は、図2に示すように、垂下した姿勢のジブ40をブーム30側に引き込む装置であり、ジブ40を内抱き姿勢にする装置(内抱き機構)である。ジブ引込装置20は、ブーム30と、ジブ40と、図3に示す被引込部50と、固定部60と、引込部70と、回転力付与部80と、受け部89と、を備える。
ブーム30は、図2に示すように、上部旋回体13に起伏自在に取り付けられ、上部旋回体13に対して横方向Yの回転軸を中心に回転する。ブーム30の長手方向に延びるブーム30の中心軸を、ブーム中心軸30aとする。ブーム中心軸30aの方向を、ブーム30軸方向という。ブーム30軸方向におけるブーム30の両端のうち、上部旋回体13に取り付けられる側の端部をブーム基端部30fとし、ブーム基端部30fとは反対側の端部をブーム先端部30tとする。「端部」は、端およびその近傍の部分を意味する(以下同様)。ブーム中心軸30aを水平方向としたときにブーム30の上面(上側Z1の面)となる面をブーム背面30bとし、ブーム30の下面(下側Z2の面)となる面をブーム腹面30vとする。ブーム30の横方向Y外側の面を、ブーム側面30sとする。
このブーム30は、ラチス構造を有するラチスブームである。ブーム30は、複数のパイプにより構成される。ブーム30を構成するパイプには、ブーム主柱30p1と、ブーム縦横材30p3と、ブーム斜材30p5と、がある。ブーム主柱30p1は、ブーム30軸方向に延び、ブーム30軸方向から見たブーム30の角の部分に配置される。ブーム縦横材30p3は、ブーム主柱30p1どうしを連結し、ブーム30軸方向に直交する方向に延びる。ブーム斜材30p5は、ブーム主柱30p1どうしを連結し、ブーム30軸方向に対して傾斜する方向に延びる。なお、図2では、ブーム30を構成するパイプの一部にのみ符号を付した。ブーム30は、複数の部品がブーム30軸方向に連結されたものである。ブーム30を構成する部品には、下部ブーム31と、中間ブーム33と、上部ブーム35と、がある。
下部ブーム31は、上部旋回体13に取り付けられ、ブーム基端部30fを含む。中間ブーム33は、下部ブーム31の先端側(ブーム先端部30t側)に連結される。上部ブーム35は、中間ブーム33の先端側に連結され、ブーム先端部30tを含む。
ジブ40は、ブーム30に起伏自在に取り付けられ、ブーム30に対して横方向Yの回転軸を中心に回転する。ジブ40は、ブーム30とほぼ同様に構成される。ジブ40の長手方向に延びるジブ40の中心軸を、ジブ中心軸40aとする。ジブ中心軸40aの方向を、ジブ40軸方向という。ジブ40の長手方向におけるジブ40の両端のうち、ブーム30に取り付けられる側の端部をジブ基端部40fとし、ジブ基端部40fとは逆側の端部をジブ先端部40tとする。図1に示すようにクレーン1が作業姿勢のときに、ジブ40の上面となる面をジブ背面40bとし、ジブ40の下面となる面をジブ腹面40vとする。ジブ40の横方向Y外側の面を、ジブ側面40sとする。図2に示すように、ジブ40は、ブーム30よりも小さい。ジブ40軸方向におけるジブ40の長さは、ブーム30のブーム30軸方向における長さよりも短い。ジブ40の横方向Yの幅は、ブーム30の横方向Yの幅よりも狭い。
このジブ40は、ラチス構造を有するラチスジブである。ブーム30と同様に、ジブ40を構成するパイプには、ジブ主柱40p1と、ジブ縦横材40p3と、ジブ斜材40p5と、がある。なお、図2では、ジブ40を構成するパイプの一部にのみ符号を付した。ジブ40は、複数の部品がジブ40軸方向に連結されたものである。ジブ40を構成する部品には、下部ジブ41と、先端側ジブ42(中間ジブ43および上部ジブ45)と、を備える。
下部ジブ41は、ブーム先端部30tに取り付けられ、ジブ基端部40fを含む。先端側ジブ42は、下部ジブ41の先端側(ジブ先端部40t側)に連結される部分である。先端側ジブ42は、中間ジブ43と、上部ジブ45と、を備える。中間ジブ43は、下部ジブ41の先端側に連結される。上部ジブ45は、中間ジブ43の先端側に連結され、ジブ先端部40tを含む。
(ブーム傾斜ジブ垂下姿勢)
ブーム30およびジブ40は、ブーム傾斜ジブ垂下姿勢になることが可能である。ブーム傾斜ジブ垂下姿勢は、ブーム30が上下方向Zに対して前側X1に傾斜するとともに、ジブ40が垂下した姿勢である。この姿勢では、水平方向とブーム30軸方向とが成す角度(ブーム30の起伏角度)は、90°未満である。この姿勢では、ジブ40軸方向は、上下方向Zと一致する、またはほぼ一致する。以下では、ブーム30およびジブ40が、ブーム傾斜ジブ垂下姿勢である場合について説明する。
被引込部50は、後述する引込部70により、ブーム30側に引き込まれる部分である。被引込部50は、ジブ40に取り付けられ、例えばジブ40に固定される。被引込部50の位置は、次のように設定される。ジブ40軸方向における被引込部50の位置が、ジブ基端部40fに近いほど、引込部70が被引込部50に届きやすくなり、引込部70を短くできる。そこで、被引込部50は、下部ジブ41に取り付けられる。なお、被引込部50は、中間ジブ43または上部ジブ45に取り付けられてもよい。ジブ40高さ方向(ジブ背面40bとジブ腹面40vとが対向する方向)における被引込部50の位置が、ブーム30に近いほど、引込部70が被引込部50に届きやすくなり、引込部70を短くできる。そこで、図3に示すように、被引込部50は、ジブ腹面40vに取り付けられる。なお、被引込部50は、ジブ40のうち、ジブ腹面40vよりもジブ背面40b側の部分に取り付けられてもよい。被引込部50は、ジブ40のうち、できるだけ強度の高い位置に取り付けられることが好ましい。そこで、被引込部50は、ジブ主柱40p1に取り付けられる。なお、被引込部50は、ジブ縦横材40p3(図2参照)およびジブ斜材40p5の少なくともいずれかに取り付けられてもよい。また、被引込部50は、ジブ40を構成するパイプに固定された部材(例えば図示しない板など)に取り付けられてもよい。被引込部50は、ジブ取付部51と、被引込部突出部53と、被引込部本体55と、鍔状部57と、を備える。
ジブ取付部51は、ジブ40に取り付けられ、ジブ40に固定され、ジブ40と接触する部分である。ジブ取付部51は、例えば板状などである。ジブ取付部51は、例えば締結部材(例えばUボルトなど)により着脱自在にジブ40に取り付けられる。ジブ取付部51は、溶接などにより、ジブ40に着脱不可能に固定されてもよい。
被引込部突出部53は、ジブ取付部51からブーム30側に突出する。被引込部突出部53は、ジブ腹面40vよりもブーム30側に突出する。被引込部突出部53により、引込部70が被引込部本体55に届きやすくなり、引込部70を短くできる。
被引込部本体55は、引込部70が接触する部分である。被引込部本体55は、被引込部突出部53のブーム30側の端部に固定される。被引込部本体55は、横方向Y(ジブ40の幅方向)に延びる。図4に示すように、被引込部本体55は、例えば棒状(バー)などである。被引込部本体55の長手方向は、横方向Yである。被引込部本体55は、中実でもよく、中空(例えばパイプなど)でもよい。被引込部本体55は、ジブ側面40sよりも横方向Y外側に突出する。なお、被引込部本体55は、ジブ側面40sよりも横方向Y外側に突出しなくてもよく、ジブ側面40sよりも横方向Y内側のみに配置されてもよい。
鍔状部57は、図4に示すように、被引込部本体55の横方向Y外側の両端部に設けられる。鍔状部57は、被引込部本体55に対して、被引込部本体55の長手方向に直交する方向に突出する。
固定部60は、図3に示すように、ブーム30に取り付けられ、ブーム30に固定される。固定部60は、ブーム30に対する引込部70の回転軸70aを有する。固定部60の配置は、次のように設定される。図2に示すブーム背面30bとブーム腹面30vとが対向する方向を、ブーム30高さ方向とする。図3に示すように、ブーム30高さ方向における回転軸70aの位置が、ジブ40に近いほど、引込部70が被引込部50に届きやすくなり、引込部70を短くできる。そこで、固定部60は、ブーム腹面30vに取り付けられる。なお、固定部60は、ブーム30のうち、ブーム腹面30vよりもブーム背面30b(図2参照)側に取り付けられてもよい。固定部60は、ブーム30のうち、できるだけ強度の高い位置に取り付けられることが好ましい。そこで、固定部60は、ブーム主柱30p1に取り付けられる。なお、固定部60は、ブーム縦横材30p3(図2参照)、またはブーム斜材30p5に取り付けられてもよい。また、固定部60は、ブーム30を構成するパイプに固定された部材(例えば図示しない板など)に取り付けられてもよい。固定部60は、ブーム取付部61と、回転支持部63と、締結部材65と、を備える。
ブーム取付部61は、ブーム30に取り付けられ、ブーム30に固定され、ブーム30と接触する部分である。ブーム取付部61は、例えば板状などである。
回転支持部63は、ブーム30に対して引込部70を回転自在に支持する。回転支持部63は、ブーム腹面30vよりもジブ40側に突出する。この回転支持部63の配置により、引込部70が被引込部50に届きやすくなり、引込部70を短くできる。そこで、回転支持部63は、ブーム取付部61からジブ40側に突出する。なお、回転支持部63は、ブーム取付部61からジブ40側に突出しなくてもよい。
締結部材65は、ブーム取付部61をブーム30に着脱自在に締結する。締結部材65は、例えばUボルトなどである。なお、ブーム取付部61は、溶接などにより、ブーム30に着脱不可能に固定されてもよい。
引込部70は、被引込部50をブーム30側に引き込む部分である。引込部70は、固定部60を介してブーム30に取り付けられる。引込部70は、横方向Y(ブーム30幅方向)の回転軸70aを中心に、ブーム30に対して回転自在である。引込部70は、ブーム30に対して振り子のように回転自在である。引込部70は、ブーム30に対して開いた状態、および閉じた状態に可変である。
この引込部70が被引込部50に接触した状態で、回転軸70aを中心に引込部70をブーム30側に回転させたときに、被引込部50がブーム30側に引き込まれるように、引込部70は構成される。引込部70は(下記の引込部本体71は)、被引込部50に前側X1から接触可能に構成される。引込部70は、被引込部50の前側X1の真正面から、被引込部50に接触可能である必要はない。引込部70のうち被引込部50に接触する面の法線ベクトルであって、引込部70から被引込部50に向かう向きの法線ベクトルは、後側X2(ブーム30)の向きの成分を有する。引込部70は、前側X1と、上下方向Zの少なくとも一方側(例えば下側Z2)と、から被引込部50に接触可能に構成される。回転軸70aは、被引込部50に対して上側Z1または下側Z2に配置される。例えば、回転軸70aは、被引込部50に対して下側Z2に配置される。引込部70は、引込部本体71と、連結部73と、引込部突出部75と、保持用ブラケット77と、を備える。
引込部本体71は、被引込部50に接触する部分である。引込部本体71は、回転軸70aに直交する方向(横方向Yに直交する方向)に延びる。横方向Yから見たとき、引込部本体71は、例えば略直線状に延び、例えば略棒状であり、例えばアームである。
この引込部本体71は、ジブ側面40sよりも横方向Y外側に配置される。そのため、引込部本体71は、ジブ40と干渉しない。なお、引込部本体71がジブ40と干渉しないのであれば、引込部本体71は、ジブ側面40sよりも横方向Y内側に配置されてもよい。引込部本体71は、1つ(1本)のみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
この引込部本体71は、図4に示すように、例えば2つ設けられる。引込部本体71は、第1引込部本体71Aと、第2引込部本体71Bと、を備える。第2引込部本体71Bは、第1引込部本体71Aに対して、横方向Yに間隔をあけて配置される。引込部本体71は(第1引込部本体71Aおよび第2引込部本体71Bのそれぞれは)、フレーム部71cと、スライド部71dと、を備える。
フレーム部71cは、引込部本体71の大部分を構成する。フレーム部71cは、例えば板状である。フレーム部71cの厚さ方向は、横方向Yである。フレーム部71cの長手方向の長さは、例えば数mであり、例えば約1.5mなどである。
スライド部71dは、被引込部本体55が接触する部分である。スライド部71dに対して被引込部本体55がスライドする。スライド部71dは、フレーム部71cの先端部(回転軸70aから遠い側の端部)に固定される。スライド部71dは、例えば板状である。スライド部71dは、回転軸70aに直交する方向、および横方向Yに延びる。スライド部71dは、締結部材取付部71d1を備える。締結部材取付部71d1は、締結部材65(図3参照)を取り付け可能な部分であり、例えば孔である。なお、締結部材取付部71d1は、締結部材65とは異なる締結部材を取り付け可能に構成されてもよい。
連結部73は、第1引込部本体71Aと第2引込部本体71Bとを連結する。連結部73は、横方向Yに延びる。連結部73は、1つ(1本)のみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。連結部73は、例えば2つ設けられる。連結部73は、第1連結部73aと、第2連結部73bと、を備える。
第1連結部73aは、第1引込部本体71Aおよび第2引込部本体71Bの基端部(回転軸70aに近い側の端部)どうしを連結する。第1連結部73aは、例えば棒状などである。
第2連結部73bは、第1連結部73aよりも、引込部本体71における先端側に配置される。第2連結部73bは、第1引込部本体71Aおよび第2引込部本体71Bそれぞれの長手方向中央よりも先端側の部分どうしを連結する。図3に示すように、横方向Yから見た第2連結部73bの断面形状は、例えばC字状などである。第2連結部73bは、回転力付与部取付部73b1を備える。回転力付与部取付部73b1は、回転力付与部80が取り付けられる部分である。回転力付与部取付部73b1は、例えば、ロープ85、または、ロープ85に取り付けられた金具(図示なし)などが取り付けられる部分である。図4に示すように、回転力付与部取付部73b1は、第2連結部73bの横方向Y中央部に配置される。回転力付与部取付部73b1は、例えば横方向Yに延びるピンなどを備える。
引込部突出部75は、図3に示すブーム30に対して引込部70が閉じた状態のとき(図10参照)に、ブーム30に接触する部分である。引込部突出部75は、ブーム30および引込部70の損傷などを抑制する。引込部突出部75は、クッションとして機能し、例えば樹脂などのパッドなどを備える。引込部突出部75は、ブーム腹面30vに接触可能であり、例えばブーム主柱30p1に接触可能である。引込部突出部75は、引込部本体71から、ブーム30側に突出する。
保持用ブラケット77は、ブーム30に対して引込部70を閉じた状態で保持するための部分である。保持用ブラケット77は、引込部本体71から、ブーム30側に突出する。保持用ブラケット77は、例えばピンなどを用いて、ブーム30に対して引込部70を保持させるものである。この場合、保持用ブラケット77にピン孔が設けられ、ブーム30にもピン孔が設けられる。
回転力付与部80は、ジブ40を(被引込部50を)ブーム30側に引き込むための回転力を引込部70に与える。回転力付与部80は、ブーム30に対して引込部70を回転(開閉)させる。回転力付与部80は、回転軸70aを中心に引込部70を回転させる。例えば、回転力付与部80は、ロープ85を用いたものなどである(その他の例は後述)。回転力付与部80は、シーブ支持フレーム81と、シーブ83と、ロープ85と、引込用ウインチ87(図2参照)と、を備える。
シーブ支持フレーム81は、ブーム30に対してシーブ83を回転自在に支持する。シーブ支持フレーム81は、ブーム30に取り付けられ、ブーム30に固定される。例えば、シーブ支持フレーム81は、ブーム腹面30vに取り付けられ、ブーム斜材30p5に取り付けられる。なお、図3では、ブーム腹面30vを構成するブーム斜材30p5の図示を省略している。シーブ支持フレーム81は、ブーム腹面30vからブーム背面30b側に突出する。シーブ支持フレーム81に対するシーブ83の回転軸は、ブーム腹面30vよりもブーム背面30b側に配置される。シーブ支持フレーム81は、2つの(左右の)ブーム側面30sの間に配置される。なお、シーブ支持フレーム81は、ブーム側面30sおよびブーム背面30bの少なくともいずれかに取り付けられてもよい。シーブ支持フレーム81は、ブーム主柱30p1およびブーム縦横材30p3(図2参照)の少なくともいずれかに取り付けられてもよい。シーブ支持フレーム81は、ブーム30を構成するパイプに固定された部材など(板など)に取り付けられてもよい。
シーブ83は、ロープ85の延びる方向を変える滑車である。シーブ83は、横方向Yの回転軸を中心に、ブーム30に対して(シーブ支持フレーム81に対して)回転自在である。シーブ83は、ブーム腹面30vに配置される。
ロープ85の一端は、引込部70に取り付けられ、回転力付与部取付部73b1に取り付けられる。ロープ85の他端は、引込用ウインチ87(図2参照)に取り付けられる。ロープ85は、1本のみ設けられてもよく、複数本設けられてもよい。シーブ83および回転力付与部取付部73b1の数は、ロープ85の本数に応じた数とされる。
引込用ウインチ87は、図2に示すように、ロープ85の巻き取りおよび繰り出しをする。引込用ウインチ87は、ブーム30に取り付けられ、例えば下部ブーム31に取り付けられる。引込用ウインチ87は、上部旋回体13に取り付けられてもよい。引込用ウインチ87が上部旋回体13に取り付けられる場合、ブーム30が起伏すると、ブーム30内のロープ85がブーム30軸方向に移動し、引込部70が回転する。そのため、ブーム30の起伏と同時に、ロープ85の調整(引込用ウインチ87によるロープ85の巻き取りまたは繰り出しなど)を行う必要がある。一方、引込用ウインチ87がブーム30に取り付けられる場合は、このようなロープ85の調整は不要である。
受け部89は、図12に示すように、ジブ40に引込部70を格納する場合に用いられる(後述)。受け部89は、第1連結部73aをジブ40側から受ける(支持する)ための部分である。受け部89は、ジブ腹面40vに固定され、例えばジブ主柱40p1などに固定される。
保持装置90は、図2に示すブーム30に対してジブ40を内抱き姿勢(図10参照)で保持する装置である。内抱き姿勢は、ブーム中心軸30aとジブ中心軸40aとが平行または略平行となるようにジブ40がブーム30側に近づけられた姿勢である。保持装置90は、ジブ40に取り付けられるジブ側部材90aと、ブーム30に取り付けられるブーム側部材90bと、を備える。保持装置90は、ジブ側部材90aとブーム側部材90bとが互いに引っ掛かり合うことで、ブーム30に対してジブ40を内抱き姿勢で保持する装置(ラッチ装置)である。例えば、保持装置90から離れた位置での操作により、ジブ側部材90aとブーム側部材90bとの引っ掛けが解除可能となるように、保持装置90が構成される。例えば、引っ掛けを解除するための部材(例えば図示しないロープやリンク部材など)が操作されると、引っ掛けが解除されるように、保持装置90が構成される。
(ジブ40の張出)
クレーン1の状態を、ブーム30にジブ40が取り付けられていない状態(図5参照)から、作業姿勢(図1参照)に変える作業は、次のように行われる。以下では、作業の手順に沿って説明する。なお、作業の手順は、ジブ40の張出が成立する範囲内で変更されてもよい。
図5に示す状態では、ブーム30が上部旋回体13に取り付けられた状態である。ブーム中心軸30aは、水平方向または略水平方向である。ブーム先端部30tは、接地している。ストラット17aは、ブーム先端部30tに取り付けられている。引込部70は、ブーム30に対して閉じた状態であり、ブーム30に格納されている。例えば、引込部70は、保持用ブラケット77(図3参照)により、ブーム30に保持されている。
ロープ85が、引込用ウインチ87から繰り出され、引込部70に取り付けられる。このとき、ロープ85が、シーブ83に掛けられる。ロープ85が、回転力付与部取付部73b1(図3参照)に取り付けられる。
次に、図6に示すように、ブーム30が、ブーム30の下側Z2(真下)にジブ40を置ける程度に起こされる。このときのブーム30の起伏角度は、例えば約20°などである。次に、ジブ40が組み立てられ、ジブ40がブーム30の下側Z2(真下)に置かれる。引込部70が、ブーム30に対して開いた状態とされる。なお、保持装置90のブーム側部材90bは、ジブ側部材90aに取り付けられた(格納された)状態である。
次に、図7に示すように、ブーム30が伏せられる(地面に降ろされる)。すると、ストラット17aが接地する。
次に、図8に示すように、ジブ基端部40fが上側Z1に移動するように、ジブ40が、補助クレーンにより引き上げられる。補助クレーンは、クレーン1を組み立てるための(または分解するための)クレーンである。そして、ジブ基端部40fが、ブーム先端部30tに取り付けられる。
次に、図9に示すように、ジブ先端部40tが上側Z1に移動するように、ジブ40が、補助クレーンにより引き上げられる。すると、ジブ40が、内抱き姿勢になる。また、引込部70が、ブーム30に対して閉じた状態とされ、被引込部50を下側Z2から支持する。保持装置90のブーム側部材90bが、ブーム30に取り付けられる。このとき、ジブ側部材90aとブーム側部材90bとが互いに引っ掛けられた状態である。保持装置90の引っ掛けを解除するための部材(例えば図示しないロープやリンク部材など)が、ブーム側部材90bに取り付けられる。
次に、図10に示すように、ブーム30が、上下方向Zに対して前側X1に傾斜するように(傾斜姿勢となるように)起こされる。ブーム30の起伏角度が90°未満とされる。図10に示す例では、ブーム30の起伏角度は80°である。
次に、ブーム30に対するジブ40の保持が、次のように解除される。保持装置90による引っ掛けが解除される。また、引込部70が、ブーム30に対して開いた状態とされる。この際、ジブ40が前側X1に急激に振り出されることを抑制することが好ましい。そのために、保持装置90による引っ掛けが解除された後、引込部70がジブ40を保持しながら、引込部70がブーム30に対して徐々に開かれる。これにより、ジブ40が前側X1に徐々に振り出される。
すると、図2に示すように、ジブ40が、垂下姿勢になる。その結果、ブーム30およびジブ40が、ブーム傾斜ジブ垂下姿勢になる。図11に示すように、引込部70が、被引込部50から十分離れた位置に配置される。後の工程でジブ40が起こされるとき(図1参照)に、被引込部50と引込部70とが干渉しないように、引込部70がブーム30に対して開かれる。
次に、図1に示すように、ジブ40が引き起こされる。そして、クレーン1が、クレーン作業(ジブ40で吊荷を吊り上げる作業など)を行える状態(作業姿勢)となる。クレーン作業時には、ブーム30の起伏角度は、90°でもよく、90°未満でもよい。
クレーン作業時には、引込部70は、ブーム30に対して閉じた状態(格納された状態)とされる。このとき、引込部70は、ブーム30に沿うように配置される。引込部70は、横方向Yから見たときにブーム30軸方向に延びるように配置される。この引込部70の配置により、引込部70がクレーン作業の邪魔になることを抑制できる。
(ジブ40の格納)
ジブ40の格納は、基本的には、ジブ40の張出の逆の手順により行われる。以下では、ジブ40の格納のうち、主にジブ40の引き込み(ジブ引込方法)について説明する。
図1に示すように、ジブ40が引き起こされた状態のときに、引込部70が、ブーム30に対して開いた状態にされる(引込部70開き工程)。なお、図1において、ブーム30に対して開いた状態の引込部70を、二点鎖線で示す。このとき、引込部70が、被引込部50から十分離れた位置に配置される。後の工程でジブ40が伏せられるときに(図11参照)に、引込部70と被引込部50とが干渉しないように、引込部70がブーム30に対して開かれる。
次に(引込部70開き工程の後)、図11に示すように、ジブ40が伏せられ、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢にされる(ジブ40垂下工程)。
次に(ジブ40垂下工程の後)、引込部70が、ブーム30に対して閉じた状態とされる。さらに詳しくは、図3に示すように、引込部70が被引込部50に前側X1から接触した状態で、回転力付与部80により回転軸70aを中心にブーム30側に引込部70が回転させられる(引込工程)。すると、被引込部50がブーム30側に引き込まれる。その結果、ジブ40が、ブーム30側に引き込まれる。その結果、図10に示すように、ジブ40が内抱き姿勢になる。このとき、保持装置90のジブ側部材90aとブーム側部材90bとは、自動的に互いに引っ掛けられる。その後、ジブ40およびブーム30が地面に伏せられる(図9参照)。
(輸送など)
例えば図12に示すように、引込部70は、ジブ40に格納され、ジブ40と一体的に輸送される。引込部70のジブ40への格納は、例えば次のように行われる。図3に示すロープ85が、引込部70から外され、引込用ウインチ87(図5参照)により巻き取られる。固定部60が、ブーム30から取り外される。このとき、締結部材65が、ブーム30および固定部60から取り外される。その結果、引込部70が、ブーム30から取り外される。
図12に示すように、引込部70は、ジブ40を構成する部品(図2に示す下部ジブ41、中間ジブ43など)のうち、図12に示す被引込部50が固定される部品に取り付けられる。引込部70は、例えば下部ジブ41に取り付けられる。引込部70は、輸送姿勢(輸送されるときの姿勢)のジブ40の上面に載せられ、例えばジブ腹面40vに載せられる。引込部本体71は、被引込部50に取り付けられる。さらに詳しくは、スライド部71dは、被引込部50に固定される。スライド部71dと被引込部50との固定には、例えば締結部材が用いられる。この締結部材として、図3に示すブーム取付部61をブーム30に固定するための締結部材65を用いることが好ましい。
図12に示す連結部73は、ジブ40に下側Z2から支持される。例えば、第1連結部73aは、受け部89に受けられ、受け部89を介してジブ40に支持される。第2連結部73bが、ジブ40に下側Z2から支持されてもよい。なお、固定部60は、引込部70に取り付けられた状態で輸送されてもよく、引込部70から取り外された状態で輸送されてもよい。また、図12では、輸送姿勢のジブ40の例として、ジブ40軸方向を前後方向Xとし、ジブ腹面40vを上面とし、ジブ背面40bを下面とした場合を図示した。例えば、輸送姿勢のジブ40のジブ中心軸40aは、前後方向Xに対して傾いてもよい。引込部70は、ジブ40と一体的に輸送されなくてもよい。
(第1の発明の効果)
図3に示すジブ引込装置20による効果は次の通りである。ジブ引込装置20は、ブーム30と、ジブ40と、被引込部50と、引込部70と、回転力付与部80と、を備える。ジブ40は、ブーム30に起伏自在に取り付けられる。
[構成1]被引込部50は、ジブ40に取り付けられる。引込部70は、ブーム30に取り付けられ、横方向Y(ブーム30幅方向)の回転軸70aを中心にブーム30に対して回転自在である。回転力付与部80は、ブーム30に対して引込部70を回転させる。図2に示すように、上下方向Zに対して前側X1にブーム30が傾斜するとともにジブ40が垂下した姿勢を、ブーム傾斜ジブ垂下姿勢とする。図3に示すように、引込部70は、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢のときに、被引込部50に前側X1から接触可能に構成される。回転軸70aは、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢のときに、被引込部50に対して上側Z1または下側Z2に配置される。
ジブ引込装置20は、上記[構成1]を備える。この構成において、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢(図2参照)のときに、引込部70を被引込部50に前側X1から接触させる。そして、回転力付与部80により、回転軸70aを中心にブーム30側に引込部70を回転させる。すると、被引込部50をブーム30側に近づけることができる。よって、上下方向Zに対して前側X1にブーム30が傾斜するとともにジブ40が垂下した姿勢(図2参照)で、ジブ40をブーム30側に引き込むことができる。また、ブーム30に対する引込部70の回転を利用しない場合に比べ、被引込部50および引込部70を簡易に構成できる。「ブーム30に対する引込部70の回転を利用しない場合」には、例えば、引込部70の代わりに、ジブ40とブーム30とを連結する伸縮可能な部材(シリンダなど)を用いる場合などがある。
(第2の発明の効果)
[構成2]図4に示すように、被引込部50は、横方向Y(ジブ40幅方向)に延びる被引込部本体55を備える。図3に示すように、引込部70は、回転軸70aに直交する方向に延びる引込部本体71を備える。引込部本体71は、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢のとき(図2参照)に、被引込部本体55に前側X1から接触可能に構成される。
上記[構成2]により、被引込部50の主要な部分、および、引込部70の主要な部分を、例えば略棒状部材などの簡易な構成で実現できる。その結果、ジブ引込装置20を簡易な構成にできる。
(第3の発明の効果)
[構成3]図4に示すように、引込部本体71は、第1引込部本体71Aと、第1引込部本体71Aに対して横方向Y(ブーム30幅方向)に間隔をあけて配置される第2引込部本体71Bと、を備える。引込部70は、第1引込部本体71Aと第2引込部本体71Bとを連結する連結部73を備える。
上記[構成3]により、例えば引込部本体71が1本の部材で構成される場合などに比べ、引込部本体71の強度を高くできる。その結果、ジブ40をブーム30側に、より確実に引き込める。
(第4の発明の効果)
図2に示すように、ジブ40は、下部ジブ41と、先端側ジブ42と、を備える。下部ジブ41は、ブーム先端部30t(ブーム30の先端部)に取り付けられる。先端側ジブ42は、下部ジブ41のジブ先端部40t側(先端側)に取り付けられる。
[構成4]被引込部50は、下部ジブ41に取り付けられる。
ジブ引込装置20は、上記[構成4]を備える。よって、被引込部50が先端側ジブ42に取り付けられる場合に比べ、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下姿勢のときのブーム30から被引込部50までの距離(前後方向Xの距離)を短くできる。よって、引込部70を小さくできる。
(第5の発明の効果)
ジブ引込装置20を用いたジブ引込方法による効果は次の通りである。
[構成5]ジブ引込方法は、引込部70開き工程(図1参照)と、ジブ40垂下工程(図11参照)と、引込工程(図3、図10参照)と、を備える。図1に示すように、引込部70開き工程は、ブーム30に対して引込部70を開いた状態にする工程である。図11に示すように、ジブ40垂下工程は、引込部70開き工程の後、ジブ40を伏せ、ブーム30およびジブ40をブーム傾斜ジブ垂下姿勢にする工程である。図3に示すように、引込工程は、ジブ40垂下工程の後、引込部70が被引込部50に前側X1から接触した状態で、回転力付与部80により、回転軸70aを中心にブーム30側に引込部70を回転させる工程である。
上記[構成5]により、上記「(第1の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。上記実施形態の構成要素の配置や形状などは変更されてもよい。上記実施形態の構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。固定は、直接的な固定でも間接的な固定でもよい。
例えば、図3に示すように、ブーム30およびジブ40がブーム傾斜ジブ垂下状態のときに、回転軸70aは、上記実施形態では被引込部50よりも下側Z2に配置されたが、被引込部50よりも上側Z1に配置されてもよい。また、引込部本体71は、上記実施形態では前側X1および下側Z2から被引込部50に接触したが、前側X1および上側Z1から被引込部50に接触してもよい。
例えば、上記実施形態では、回転力付与部80は、引込用ウインチ87(図2参照)の動力を、ロープ85により引込部70に伝えるものであったが、様々に変形されてもよい。[例1]回転力付与部80は、引込部70の近傍に設けられるアクチュエータを用いたものでもよい。[例1−1]例えば、上記アクチュエータは、伸縮シリンダでもよい。例えば、この伸縮シリンダの一端部はブーム30に接続され、他端部は引込部70に接続される。[例1−2]例えば、上記アクチュエータは、モータでもよい。このモータは、例えば固定部60などに取り付けられる。
[例2]アクチュエータの動力を引込部70に伝える物として、ロープ85以外の物が含まれてもよい。[例2−1]例えば、アクチュエータの動力を引込部70に伝える物は、リンク部材でもよい。このリンク部材は、例えば、ブーム30軸方向に延びる部材を備えてもよい。ブーム30軸方向に延びる部材がブーム30軸方向に移動したときに、回転軸70aを中心に引込部70が回転するように、リンク部材が構成される。この例では、アクチュエータは、例えばリンク部材を移動させる伸縮シリンダなどである。[例2−2]例えば、アクチュエータの動力を引込部70に伝える物は、リンク部材とロープ85とが連結されたものでもよい。この例では、アクチュエータは、例えば引込用ウインチ87でもよく、リンク部材を移動させる伸縮シリンダでもよい。[例2−3]例えば、アクチュエータの動力を引込部70に伝える物には、チェーンが含まれてもよい。この例では、アクチュエータは、チェーンを巻き取りおよび繰り出しする引込用ウインチ87でもよい。
上記[例1]および[例2]のアクチュエータは、例えば電気式でもよく、例えば流体圧式(例えば空圧式、油圧式など)でもよい。引込部70の近傍にアクチュエータが配置される場合([例1])、アクチュエータは、流体圧式よりも電気式が好ましい。例えば上部旋回体13(図2参照)から、引込部70の近傍のアクチュエータまで流体圧配管(例えば油圧配管など)を配策するよりも、上部旋回体13から引込部70の近傍のアクチュエータまで電線を配策する方が、容易に配策できる。また、高所のアクチュエータに圧力流体(例えば圧油など)を供給するよりも小さいエネルギーで、高所のアクチュエータに電力を供給できる。
例えば、図10に示す保持装置90は、設けられなくてもよい。例えば、保持装置90を用いることなく、引込部70の引き込みの力(引張力)で、図9に示すような姿勢にすることができる場合などには、保持装置90は設けられなくてもよい。