JP6814990B2 - 残留塩素測定方法及び残留塩素測定装置 - Google Patents

残留塩素測定方法及び残留塩素測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気化学的な方法を用いた残留塩素濃度の測定方法及び測定装置に関する。
従来、試料溶液中の残留塩素を測定する方法として、DPD法などの比色法、電極を用いたポーラログラフ法などがあり、これらの測定方法については、厚生労働省告示第318号(平成15年9月29日)[水道法施行規則第17条第2項の規定に基づく遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法]に詳細な記述がある。
例えばDPD法は、試料溶液中の残留塩素がジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD)と反応して発色する桃赤色を、測定作業者が標準比色表と比色して残留塩素濃度を測定する方法である。この方法では試薬のコストが大きく、測定結果にも個人差が生じる可能性があり、測定後の廃液処理が必要であり、また測定においてはサンプル採取が必要なため残留塩素濃度を連続的に測定できないという問題がある。
電極を用いたポーラログラフ法は、作用電極に流れる電流値を測定して残留塩素濃度を測定する方法である。この方法では試薬を必要とせず、個人差も生じることはなく、測定後の廃液処理も必要ない。しかしながら従来のポーラログラフ法は、特許文献1に示すように作用電極に白金電極を用いているため、残留塩素の酸化電流ピークが電位窓の限界付近にしか現れず、電位窓にかかってしまい正確な測定が阻害されるという問題がある。
白金電極のかわりにホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極を作用電極として用い、対電極および参照電極と組み合わせ、三電極方式によるボルタンメトリー測定を行う手法が特許文献2に示されている。この手法によれば、試薬を用いることもなく、客観的な測定結果を得ることができ、電位窓の影響を受けずに正確かつ容易に残留塩素濃度測定を行うことができる。しかしながらこの手法は試料溶液のpH条件によっては残留塩素濃度の測定が困難となりうる。具体的には試料溶液のpHが6を下回る(酸性になる)と測定電流値が著しく低下して測定が困難になり得る。
溶液中に含有されたオゾン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、塩素、過酸化水素の濃度を測定する方法が特許文献3に示されている。特許文献3によれば、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンおよび塩素の濃度測定を行うために、まず初めに試料溶液のpH測定を行う。そしてpHが4以下であれば、試料溶液のpHを調整することなく、微小金電極を用いたサイクリックボルタンメトリー法により次亜塩素酸の還元電流値を測定し、次亜塩素酸濃度を算出する。そして測定されたpHおよび次亜塩素酸濃度の数値を、pHに応じた次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、塩素(Cl2)の存在比率のグラフ(例えば本明細書の図1等を参照)に当てはめ、塩素の発生量を計算により求めている。なお本明細書の図1は、技報堂出版株式会社発行、松尾昌樹著、「電解水の基礎と利用技術」、1版1刷(非特許文献1)の73頁に示されている「図-3.1 pHと有効塩素の組成(存在)比率」をもとに、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、塩素(Cl2)の存在比率としてグラフ化したものである。
特許文献3では、測定されたpHが4〜5.5であれば、試料溶液のpHを調整することなく、微小金電極を用いたサイクリックボルタンメトリー法により次亜塩素酸の還元電流値を測定し、次亜塩素酸濃度を算出する。
特許文献3に記載の方法において、測定されたpHが5.5〜8.9の場合は、微小金電極を用いたサイクリックボルタンメトリー法では、正確に次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの還元電流値を求めることができない。したがってHClやNaOH等により試料溶液のpHをより酸性(pH5.5以下)に、またはよりアルカリ性(pH8.9以上)に調整した後に、次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンの還元電流値を測定する。
特許文献3に記載の方法において、測定されたpHが8.9以上であれば、試料溶液のpHを調整することなく、微小金電極を用いたサイクリックボルタンメトリー法により次亜塩素酸イオンの還元電流を測定し、次亜塩素酸イオン濃度を算出する。以上をまとめると、特許文献3に記載の方法は、以下のように示すことができる。
pH<4
次亜塩素酸濃度を測定し、図1より塩素の発生量を推定する。
4<pH<5.5
次亜塩素酸濃度を測定する。
5.5<pH<8.9
試料溶液をpH5.5以下に、またはpH8.9以上に調整し、次亜塩素酸または次亜塩素酸イオン濃度を測定する。
8.9<pH
次亜塩素酸イオン濃度を測定する。
特許文献3に示された手法によれば、試料溶液の、pH測定、電気化学的測定および分光学的測定を組み合わせることにより、オゾン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、塩素、過酸化水素の濃度を測定することができる。しかしながらこの手法においては、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、塩素の濃度測定において、試料溶液のpHを事前に知っておく必要があり、また、測定されたpH値の結果によっては、残留塩素濃度を測定する前に、試料溶液のpHを調整する必要があり、必ずしも簡便な方法とはいえない。
特公昭55−017939号公報 特開2007−139725(特許第4734097号公報) 特開2003−240712号公報
技報堂出版株式会社発行、松尾昌樹著、「電解水の基礎と利用技術」、2000年1月25日 1版1刷発行
本発明は従来の問題点を解決した、有害な試薬を用いることなく、客観的な測定結果を得ることができ、電位窓の影響を受けず、試料溶液のpHを事前に測定する必要のない、遊離残留塩素濃度(以下、特に指定のない限り、遊離残留塩素濃度を残留塩素濃度と記載する。)を測定する手段および装置を提供することを目的とする。また本発明は、残留塩素濃度の測定結果を利用した、試料溶液のpHを算出する手段および装置を提供することを目的とする。また本発明は、試料溶液のpHが既知の場合においては、試料溶液のpHにあわせた三電極方式によるボルタンメトリー測定条件を採用することにより、広範なpH領域の測定に使用可能な、残留塩素濃度を測定する手段および装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の問題を解決するために、導電性ダイヤモンド電極を備えた、残留塩素濃度測定方法および装置を提供する。この方法または装置を用いて電気化学的測定を行うことにより、水溶液中の残留塩素濃度を簡便かつ正確に測定することができる。
すなわち本発明は、以下を包含する。
[1] 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
(i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、
(ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、
(iii)前記(i)の算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、前記(ii)の算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを加算し、
前記加算して得られた合計残留塩素濃度を前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
[2] 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液のpHを測定する方法であって、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
(i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、
(ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、
(iii)前記(i)の算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、前記(ii)の算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを比較して組成比率を算出し、
(iv)前記算出された組成比率を有効塩素組成比率曲線にあてはめることによりpHを算出し、前記算出されたpHを前記試料溶液のpHとする、pHを測定する方法。
[3] 残留塩素を含有する可能性のあるpHが既知である試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
前記試料溶液のpHが7.5以下の場合、
前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸濃度を算出し、
前記試料溶液のpHと、前記算出された次亜塩素酸濃度とを有効塩素組成比率曲線にあてはめることにより算出された残留塩素濃度を、前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
[4] 試料溶液のpHが4〜7.5である、3に記載の方法。
[5] 残留塩素を含有する可能性のあるpHが既知である試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
前記試料溶液のpHが7.5より大きい場合、
前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位としたときの電流値を測定して次亜塩素酸イオン濃度を算出し、
前記試料溶液のpHと、前記算出された次亜塩素酸イオン濃度とを有効塩素組成比率曲線にあてはめることにより算出された残留塩素濃度を、前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
[6] 試料溶液のpHが7.5より大きく10以下である、5に記載の方法。
[7] フローインジェクション法により測定を連続的に行う、1〜5のいずれかに記載の方法。
[8] 試料溶液中の残留塩素濃度を測定するための残留塩素測定装置であって、
作用電極と、対電極と、参照電極と、前記作用電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、当該印加電圧における前記作用電極に流れる電流値を測定する電流測定部と、前記電流測定部からの電流測定信号に基づいて残留塩素濃度を算出する情報処理装置と、を備え、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
前記情報処理装置が、
(i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位に制御して電流値を測定し、
(ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位に制御して電流値を測定し、
(iii)前記(i)の測定された電流値から次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、前記(ii)の測定された電流値から次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを加算して合計残留塩素濃度を前記試料溶液の残留塩素濃度とするものであり、
ここで(i)の測定と(ii)の測定とは任意の順で逐次的に、または同時に行うことができる、
残留塩素測定装置。
[9] 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液のpHを測定する装置であって、
作用電極と、対電極と、参照電極と、前記作用電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、当該印加電圧における前記作用電極に流れる電流値を測定する電流測定部と、前記電流測定部からの電流測定信号に基づいて、残留塩素濃度を算出する情報処理装置と、を備え、
前記作用電極がホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
前記情報処理装置が、
(i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位に制御して電流値を測定し、
(ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位に制御して電流値を測定し、
(iii)前記(i)の電流値から次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、前記(ii)の電流値から次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、前記(i)から算出された残留塩素濃度と、前記(ii)から算出された残留塩素濃度とを比較して組成比率を算出し、
(iv)前記算出された組成比率を有効塩素組成比率曲線にあてはめることによりpHを算出し、前記算出されたpHを前記試料溶液のpHとするものであり、
ここで(i)の測定と(ii)の測定とは任意の順で逐次的に、または同時に行うことができる、
pHを測定する装置。
[10] バイポテンショスタット及び2つの作用電極を備え、(i)の測定と(ii)の測定とを同時に行うことができる、8または9に記載の装置。
[11] 作用電極を2つ、対電極を2つ及び参照電極を2つ備え、(i)の測定と(ii)の測定とを同時に行うことができる、8または9に記載の装置。
[12] さらにフローセルを備え、該フローセルに前記作用電極、参照電極、及び対電極が内蔵されており、該フローセルは試料溶液が通過するための流通管を有し、該フローセル内の流通管を試料溶液が通過するときに試料溶液が前記作用電極、参照電極、及び対電極に接触するよう前記作用電極、参照電極、及び対電極が該フローセル内に配置されている、フローインジェクション分析用の8〜11のいずれかに記載の装置。
本発明によれば、有害な試薬を用いることなく、客観的な測定結果を得ることができ、電位窓の影響を受けず、試料溶液のpHを事前に測定する必要のない、遊離残留塩素濃度を測定する手段および装置を提供することが可能となる。また、本発明によれば、同時に、還元側残留塩素濃度と酸化側残留塩素濃度を比較することにより、試料溶液のpHが測定できる。
さらに試料溶液のpHが既知の場合においては、試料溶液のpHにあわせた三電極方式によるボルタンメトリー測定条件を採用することにより、測定困難なpHの領域が存在することなく、広範なpH領域において、残留塩素濃度を測定することが可能となる。
有効塩素の組成比率 本発明の第1実施形態に係る残留塩素濃度測定装置の概要を示す構成図 同実施形態において、作用電極の電位を+0.4Vから+2.0Vまで掃引したときの残留塩素の各pHについてのボルタモグラム 同実施形態において、作用電極の電位を+0.4Vから-1.6Vまで掃引したときの残留塩素の各pHについてのボルタモグラム 図3と図4の結果をまとめて示したボルタモグラム 残留塩素濃度の測定結果 酸化側ボルタモグラム 酸化側検量線 還元側ボルタモグラム 還元側検量線 本発明の第2実施形態に係る残留塩素濃度測定装置の概要を示す構成図
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。
<定義>
「有効塩素」および「残留塩素」は一般に次のように定義される。
「有効塩素」:殺菌消毒作用を持つ塩素系化学種をまとめた呼称のこと
「残留塩素」:水中に残留して持続的に殺菌効果を示す塩素のこと
本明細書において残留塩素とは、水溶液中に残留しているすべての有効塩素のことを示すため、残留塩素と有効塩素を相互に置き換え可能な同意語として用いる。
残留塩素は、遊離残留塩素と結合残留塩素の2種類からなり、
遊離残留塩素は、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、溶存塩素(Cl2(aq))(ここでaqは溶液の略記号である)からなり、
結合残留塩素は、モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3)などからなる。
各種クロラミンは、水中にアンモニアなどの=NH基をもつ物質が存在した場合に塩素と反応して生成する。塩素イオン(Cl-)は殺菌作用がないため、定義上、残留塩素(有効塩素)には含まれない。
以上をまとめると、以下のように示すことができる。
[残留塩素(有効塩素)]=[遊離残留塩素(HClO+ClO-+Cl2(aq))]
+[結合残留塩素(クロラミンなど)]
<本発明に係る残留塩素測定方法>
ある実施形態において本発明は、測定対象である残留塩素を含有する可能性のある試料溶液に、参照電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記残留塩素濃度を算出する残留塩素測定方法を提供する。ある実施形態において、前記作用電極はホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、前記参照電極は銀/塩化銀電極である。この方法では前記参照電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位としたときの電流測定値から得られる残留塩素濃度(本明細書において、酸化側残留塩素濃度、または次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度ということがある。)と、前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位としたときの電流測定値から得られる残留塩素濃度(本明細書において、還元側残留塩素濃度、または次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度ということがある。)を加算した数値により、合計残留塩素濃度を測定する。
ここで、酸化側残留塩素濃度を測定するために、参照電極に対する導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vとしたのは、次亜塩素酸イオンの酸化反応により生じる電流(以下、酸化電流という。)のピークが0V〜+1.6Vの間に生じ、0V未満において次亜塩素酸イオンの酸化反応は生じないことによるものである。酸化側残留塩素濃度を測定するための電位は、0V〜+1.6Vの範囲内の所定の電位とすることができ、例えば0V以上、+0.1V以上、+0.2V以上、+0.3V以上、+0.4V以上、+0.5V以上、+0.6V以上、+0.7V以上、+0.8V以上、+0.9V以上、+1.0V以上、+1.1V以上、+1.6V以下、+1.5V以下、+1.45V以下、+1.4V以下とすることができ、これらを任意に組み合わせた範囲の電位とすることができる。
また、還元側残留塩素濃度を測定するために、参照電極に対する導電性ダイヤモンド電極の電位を0.4V〜-1.0Vとしたのは、次亜塩素酸の還元反応および溶存塩素の還元反応により生じる電流(以下、還元電流という。)のピークが+0.4V〜-1.0Vの間に生じ、0.4V以上において次亜塩素酸および溶存塩素の還元反応は殆ど生じないことによるものである。還元側残留塩素濃度を測定するための電位は、+0.4V〜-1.0Vの範囲内の所定の電位とすることができ、例えば-1.0V以上、-0.9V以上、-0.8V以上、+0.4V以下、+0.3V以下、+0.2V以下、+0.1V以下、0V以下、-0.1V以下、-0.2V以下、-0.3V以下、-0.4V以下とすることができ、これらを任意に組み合わせた範囲の電位とすることができる。
上記の実施形態において、残留塩素を測定するために試料溶液のpHを事前に測定する必要はないが、その理由を以下に示す。
試料溶液のpHが5以下である場合、図1の有効塩素の組成比率曲線より次亜塩素酸イオンは存在しないと考えられる。したがって酸化電流が生じることはなく、還元電流が残留塩素濃度を示す。なお、試料溶液のpHが4〜5である場合、図1の有効塩素の組成比率曲線より溶存塩素の存在比率は小さく、専ら次亜塩素酸が存在する。そのため溶存塩素に起因する測定誤差はさほど生じないと考えられ、還元反応による応答電流に基づき残留塩素濃度を測定することができる。
試料溶液のpHが5〜10である場合、図1の有効塩素の組成比率曲線より溶存塩素は存在せず、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンが存在する。したがって還元電流から得られた還元側残留塩素濃度と、酸化電流から得られた酸化側残留塩素濃度を加算することにより、合計残留塩素濃度を測定することができる。
試料溶液のpHが10以上である場合、図1の有効塩素の組成比率曲線より溶存塩素および次亜塩素酸は存在しないと考えられる。したがって還元電流が生じることはなく、酸化電流が残留塩素濃度を示す。
以上より、試料溶液のpHが5以下(例えばpH4〜5等)であれ、5〜10であれ、10以上であれ、残留塩素の測定は可能であり、残留塩素を測定するために試料溶液のpHを事前に測定する必要はない。
<本発明に係るpH測定方法>
むしろ、本発明に係る残留塩素測定方法を利用して、以下のように試料溶液のpHを測定することが可能である。すなわち、ある実施形態において、本発明は、試料溶液のpHを測定する方法を提供する。
1.還元電流のみが測定された場合:
図1の有効塩素の組成比率曲線より試料溶液のpHは5以下であると特定できる。
2.還元電流と酸化電流が測定された場合:
還元電流と酸化電流が測定された場合には、pHは、5<pH<10であると特定でき、還元側残留塩素濃度(次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度)と酸化側残留塩素濃度(次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度)との組成比率により、図1の有効塩素の組成比率曲線から試料溶液のpHを算出することができる。例えば、還元側残留塩素濃度=酸化側残留塩素濃度であった場合、pH=7.5であることがわかる。
3.酸化電流のみが測定された場合:
図1の有効塩素の組成比率曲線より、試料溶液のpHは10以上であると特定できる。
<pH既知の試料溶液についての本発明に係る残留塩素測定方法>
ある実施形態では、pHが既知の試料溶液について、本発明に係る残留塩素測定方法を行うことができる。pHが既知の試料溶液の場合においては、試料溶液のpHにあわせて次亜塩素酸イオン濃度または次亜塩素酸濃度のどちらかを測定することにより、測定困難であったpH6以下の領域も含めて残留塩素濃度を測定することができる。
この実施形態では、既知となったpHに応じて、以下の測定を行う。
1.試料溶液のpHが4未満と測定された場合、または既知の試料溶液のpHが4未満であることがわかっている場合:
次亜塩素酸が化学的に変化することによる溶存塩素の影響で還元電流に誤差を与えるため、pHが4〜10の場合とは異なる測定が必要となりうる。異なる残留塩素濃度測定法としては、例えば吸光度分析法が挙げられる。この場合は、実際の試料溶液を使って当該pHの場合における還元電流測定による検量線を作成し、残留塩素濃度測定を行う。
2−1.試料溶液のpHが4〜7.5の場合:
組成比率の高い次亜塩素酸濃度を測定し、測定結果とpH情報を用いて、図1の有効塩素の組成比率曲線より残留塩素濃度に換算することができる。次亜塩素酸イオン濃度測定値から換算するよりも誤差が少ない。例えば試料溶液のpHが7であり、還元電流測定により次亜塩素酸濃度が50ppmとなった場合、次亜塩素酸の組成比率77%であることより、残留塩素濃度=50ppm/0.77=64.9ppm、となる。
試料溶液のpHが4〜7.5の場合、ある実施形態では、次亜塩素酸イオン濃度は測定しない。これにより測定時間を短縮しうる。
試料溶液のpHが4〜7.5の場合、ある実施形態では、場合により次亜塩素酸イオン濃度も測定してよい。これにより測定精度を高めうる。
ある実施形態において、本発明の残留塩素測定方法は、pHが7.5以下、例えば7.4以下、7.3以下、7.2以下、7.1以下、例えば7.0以下、6.9以下、6.8以下、6.7以下、6.6以下、6.5以下の試料溶液について行うことができる。ある実施形態において、本発明の残留塩素測定方法は、pHが4以上、例えば4.1以上、4.2以上、4.3以上、4.4以上、4.5以上、4.6以上、4.7以上、4.8以上、4.9以上、例えば5.0以上の試料溶液について行うことができる。
2−2.試料溶液のpHが7.5〜10の場合:
組成比率の高い次亜塩素酸イオン濃度を測定し、測定結果とpH情報を用いて、図1の有効塩素の組成比率曲線より残留塩素濃度に換算することができる。次亜塩素酸濃度測定値から換算するよりも誤差が少ない。例えば試料溶液のpHが8であり、酸化電流測定により次亜塩素酸イオン濃度が50ppmとなった場合、次亜塩素酸イオンの組成比率75%であることより、残留塩素濃度=50ppm/0.75=66.7ppm、となる。
試料溶液のpHが7.5〜10の場合、ある実施形態では、次亜塩素酸濃度は測定しない。これにより測定時間を短縮しうる。
試料溶液のpHが7.5〜10の場合、ある実施形態では、場合により次亜塩素酸濃度も測定してよい。これにより測定精度を高めうる。
ある実施形態において、本発明の残留塩素測定方法は、pHが7.5以上の試料溶液について行うことができる。また、ある実施形態において、本発明の残留塩素測定方法は、7.5より大きいpHを有する試料溶液について行うことができる。ある実施形態において、本発明の残留塩素測定方法は、pHが10以下、例えば9.5以下、9以下、8.5以下、8以下の試料溶液について行うことができる。
3.試料溶液のpHが10よりも高いと測定された場合、または既知の試料溶液のpHが10よりも高いことがわかっている場合:
OH-が酸化電流に誤差を与えるため、pHが4〜10の場合とは異なる測定が必要となりうる。異なる残留塩素濃度測定法としては、例えば吸光度分析法が挙げられる。この場合は、実際の試料溶液を使って当該pHの場合における酸化電流測定による検量線を作成し、残留塩素濃度測定を行う。
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態において、本発明は残留塩素測定装置100を提供する。この残留塩素測定装置100は、試料溶液101に電解質を溶解して電解質溶液とした後に電圧を印加することにより、試料溶液の分析を行う三電極方式によるボルタンメトリー測定を行うバッチ式の電気化学測定装置である。
この残留塩素測定装置100は、基本構成として、図2に示すように、作用電極102と、参照電極103と、対電極104と、前記作用電極102、参照電極103および対電極104の電位を制御するポテンショスタット105と、ポテンショスタット105により得られた電流及び電位に基づいて試料溶液中の残留塩素濃度や試料溶液のpHなどを算出する情報処理装置106とを備える。
試料溶液101は測定対象である残留塩素を含有している可能性があるものであればどのようなものでもよく、本実施形態では次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いている。また電解質として0.1M過塩素酸ナトリウム(NaClO4)を用いている。試料溶液のpHに応じて次亜塩素酸は、次亜塩素酸イオンとしておよび/または次亜塩素酸として、あるいは塩素として存在しうる。なお試料溶液101は説明の都合上、符号を割り当てたが、これは装置100の構成であることを意味するものではない。本発明の装置100は任意の試料について使用可能である。試料溶液は例えば、リン酸緩衝液(PBS)、水道水、飲料水、河川の水、工業廃水、産業廃液、検査試薬等でありうるがこれに限定されない。
作用電極102は、試料溶液に電圧を印加するためのものであり、ある実施形態において、ホウ素をドープすることにより導電性を有するホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極である。
そして情報処理装置106により、参照電極に対する作用電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲、例えば+0.1V〜+1.6Vの範囲、+0.2V〜+1.6Vの範囲、+0.3V〜+1.6Vの範囲、+0.4V〜+1.6Vの範囲、+0.5V〜+1.6Vの範囲、+0.6V〜+1.6Vの範囲、+0.7V〜+1.6Vの範囲、+0.8V〜+1.6Vの範囲、+0.9V〜+1.6Vの範囲、+1.0V〜+1.6Vの範囲、+1.1V〜+1.6Vの範囲、0V〜+1.5Vの範囲、0V〜+1.45Vの範囲、0V〜+1.4Vの範囲、例えば0.4V〜+1.6Vの範囲で掃引することができ、このとき、掃引は0V側の低電位から出発して+1.6V側の高電位の方向に行う。また、情報処理装置106により、参照電極に対する作用電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲、例えば+0.4V〜-0.9Vの範囲、+0.4V〜-0.8Vの範囲、+0.3V〜-1.0Vの範囲、+0.2V〜-1.0Vの範囲、+0.1V〜-1.0Vの範囲、0V〜-1.0Vの範囲、-0.1V〜-1.0Vの範囲、-0.2V〜-1.0Vの範囲、-0.3V〜-1.0Vの範囲、-0.4V〜-1.0Vの範囲で掃引することができ、このとき、掃引は+0.4V側の高電位から出発して-1.0V側の低電位の方向に行う。
本発明の作用電極102には導電性ダイヤモンド電極を用いる。この導電性ダイヤモンド電極には微量の不純物をドープすることが好ましい。不純物をドープすることにより、電極として望ましい性質が得られる。不純物としては、ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)等が挙げられる。例えば炭素源を含む原料ガスに、ホウ素を得るためにはジボラン、トリメトキシボラン、酸化ホウ素を、硫黄を得るためには酸化硫黄、硫化水素を、酸素を得るためには酸素若しくは二酸化炭素を、窒素を得るためにはアンモニア若しくは窒素を、ケイ素を得るためにはシラン等を加えることができる。特に高濃度でホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極は広い電位窓と、他の電極材料と比較してバックグランド電流が小さいといった有利な性質を有することから好ましい。そこで本発明では以下にホウ素ドープダイヤモンド電極について例示的に記載する。他の不純物をドープした導電性ダイヤモンド電極を用いてもよい。本明細書では、特に断らない限り、電位と電圧は同義に用い相互に置き換え可能とする。また本明細書では導電性ダイヤモンド電極を単にダイヤモンド電極と記載することがあり、ホウ素ドープダイヤモンド電極をBDD電極と記載することがある。
本発明の作用電極102の電極部は、基板表面に0.01〜8%w/wホウ素原料混入ダイヤモンドを蒸着したダイヤモンド層を有する。基板の大きさは特に限定されないが、mL単位若しくはμL単位の試料溶液を測定できる面積を有するものが好ましい。基板は例えば直径1〜10cm、厚み0.1mm〜5mmのものとすることができる。基板はSi基板、SiO2等のガラス基板や石英基板、Al2O3等のセラミックス基板、タングステン、モリブデン等の金属でありうる。基板の表面の全部又は一部をダイヤモンド層とすることができる。
本発明の導電性ダイヤモンド電極の電極部の大きさは、測定対象により適宜設計できる。例えば電極部は例えば0.1cm2〜10cm2、0.2cm2〜5cm2、又は0.5cm2〜4cm2の面積を有する表面とすることができる。ダイヤモンド層の全部又は一部を電気化学的測定に用いることができる。当業者であれば、測定対象に応じて電極部の面積や形状を適宜決定することができる。
本発明の作用電極102の電極部は、Si基板表面が高ホウ素原料混入(原料仕込みとして0.01〜8%w/wホウ素原料)ダイヤモンドで蒸着されたダイヤモンド層を有する。好ましいホウ素原料混入率は0.05〜5%w/wであり、特に好ましくは1.0%w/w程度である。
基板へのホウ素原料混入ダイヤモンドの蒸着処理は、700〜900℃で2〜12時間行えばよい。導電性ダイヤモンド薄膜は通常のマイクロ波プラズマ化学気相成長法(MPCVD)で作製される。すなわち、シリコン単結晶(100)等の基板を成膜装置内にセットし、高純度水素ガスを担体ガスとした成膜用ガスを流す。成膜用ガスには、炭素、ホウ素が含まれている。炭素、ホウ素を含む高純度水素ガスを流している成膜装置内にマイクロ波を与えてプラズマ放電を起こさせると、成膜用ガス中の炭素源から炭素ラジカルが生成し、Si単結晶上にsp3構造を保ったまま、かつホウ素を混入しながら堆積してダイヤモンドの薄膜が形成される。
ダイヤモンド薄膜の膜厚は成膜時間の調整により制御することができる。ダイヤモンド薄膜の厚さは、例えば100nm〜1mm、1μm〜0.1mm、1μm〜100μm、2μm〜20μm等とすることができる。
基板表面へのホウ素ドープダイヤモンドの蒸着処理の条件は基板材料に応じて決定すればよい。一例としてプラズマ出力は500〜7000W、例えば3kW〜5kWとすることができ、好ましくは5kWとしうる。プラズマ出力がこの範囲であれば、合成が効率よく進行し、副生成物の少ない、品質の高い導電性ダイヤモンド薄膜が形成される。
ある実施形態において、上記のホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極は、水素終端化または陰極還元されていることが好ましい。これは、酸素終端化または陽極酸化されたホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極を用いて酸化電流および/または還元電流を測定する場合に比べて、それぞれのピーク電流が検出される電圧値が電位窓のより内側で観測されるようになり、感度および精度が向上するからである。ここで電位窓のより内側とは、電圧値の絶対値がより小さい側をいう。例えばある条件下で酸化電流を測定する場合に、酸素終端のときはピーク電流が+2Vで観測されるのに対して水素終端のときはピーク電流が+1Vで観測される。またある条件で還元電流を測定する場合、酸素終端のときはピーク電流が-2Vで観測されるのに対し水素終端のときはピーク電流が-1Vで観測される。このような場合を、それぞれのピーク電流が検出される電圧値が電位窓のより内側で観測される、という。
水素終端化の具体的な方法としては、前記導電性ダイヤモンド電極を水素雰囲気下でアニーリング(加熱)又は水素プラズマ処理することが挙げられる。陰極還元の具体的な方法としては、例えば、0.1M過塩素酸ナトリウム溶液中で-3Vの電位を5〜10分間印加して水素を連続発生させること、などが挙げられる。
酸素終端化の具体的な方法としては、前記導電性ダイヤモンド電極を酸素雰囲気下(空気中)でアニーリング(加熱)又は酸素プラズマ処理することが挙げられる。陽極酸化の具体的な方法としては、例えば、0.1M過塩素酸ナトリウム溶液中で+3Vの電位を5〜10分間印加して酸素を連続発生させること、などが挙げられる。
上記の電極は、特開2006−98281号公報、特開2007−139725号広報、特開2011−152324号公報、又は特開2015−172401号公報等に開示されており、これらの公報の記載に従って作製することができる。
本発明の導電性ダイヤモンド電極は、熱伝導率が高く、硬度が高く、化学的に不活性であり、電位窓が広く、バックグラウンド電流が低く、電気化学的安定性に優れている。
第1実施形態において、本発明の装置100は三極電極を備えている。参照電極103側の抵抗は高く設定されており、作用電極102と参照電極103との間では電流は流れない。対電極104は特に限定されないが、例えば銀線や白金線、炭素、ステンレス鋼、金、ダイヤモンド、SnO2等を使用しうる。参照電極103としては、銀−塩化銀電極(Ag/AgCl)、標準水素電極、水銀塩化水銀電極、水素パラジウム電極等があげられるがこれに限定されない。ある実施形態において、参照電極103は安定性や再現性等の観点から銀−塩化銀電極(Ag/AgCl)とすることができる。本明細書では特に断らない限り、測定された電圧は、銀−塩化銀電極を基準にして測定されたものとする(+0.199V vs 標準水素電極(SHE))。作用電極102、参照電極103及び対電極104の形状、大きさ及び位置関係は、適宜設計することができるが、作用電極102、参照電極103及び対電極104はいずれも測定試料と同時に接触可能であるように設計、配置される。
参照電極103として使用される銀−塩化銀電極は、塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液中にAgClコーティングされた銀線(Ag/AgCl)を浸した構成を有する。対電極104は、作用電極102より表面積が大きければ、特に限定されない。
ポテンショスタット105は、作用電極102、参照電極103及び対電極104に電圧を印加する電圧印加部、及び当該印加電圧における電流値を測定する電流測定部を有する。ポテンショスタット105は作用電極102、参照電極103及び対電極104から電圧信号及び電流信号を受信し、これとともに、作用電極102、参照電極103及び対電極104を制御する。具体的にはポテンショスタット105は、作用電極102と対電極104との間に加える電圧を常に調整し、作用電極102の参照電極103に対する電圧を制御する。ポテンショスタット105は情報処理装置106により制御される。
ある実施形態において、ポテンショスタット105は、参照電極103に対して作用電極102の電位を0Vから+1.6Vまで、例えば100mV/sで走査して、その電圧下における酸化反応に伴う電流値を検出する。
また、ある実施形態において、ポテンショスタット105は、参照電極103に対して作用電極102の電位を+0.4Vから-1.0Vまで、例えば100mV/sで走査して、その電圧下における還元反応に伴う電流値を検出する。
本発明の装置100の有する情報処理装置106は、ポテンショスタット105を制御するとともに、ポテンショスタット105からの電圧信号及び電流信号に基づいて電流−電圧曲線を決定し、この電流−電圧曲線に基づいて試料溶液中の残留塩素濃度を算出する。
ある実施形態において、本発明の装置の有する情報処理装置106は、参照電極103に対して作用電極102の電位を0Vから+1.6Vまで、例えば100mV/sで変化させるようポテンショスタット105を制御する。ある実施形態において、本発明の装置100の有する情報処理装置106は、参照電極103に対して作用電極102の電位を+0.4Vから-1.0Vまで、例えば100mV/sで変化させるようポテンショスタット105を制御する。
本発明の装置100の有する情報処理装置106は、CPU、内部メモリ、HDD等の外部記憶媒体若しくは装置、モデムや無線LAN等の通信インタフェース、ディスプレイ、マウスやキーボードといった入力手段等を有し得る。前記メモリや外部記憶装置等の所定領域に設定したプログラムにしたがって電気信号を解析し、残留塩素の検出や濃度の算出を行うことができる。情報処理装置106は、汎用コンピュータであってもよく、専用コンピュータであってもよい。
本実施形態に係る残留塩素測定装置100を用いて試料溶液のボルタンメトリー測定を行った結果を図3、図4及び図5に示す。図5は図3と図4とを連結したものである。
試料溶液101は、HClO4とNaOHを用いてそれぞれpH2〜9に調整した8種類の100ppm NaClO溶液である。
図3は、参照電極103に対する作用電極102の電位を+0.4Vから+2.0Vまで(20mV/secにて)掃引して測定した、pHの異なる8種類の試料溶液のボルタモグラムである。同じ残留塩素濃度(100ppm NaClO)であるにもかかわらず、pHにより異なる酸化電流値(次亜塩素酸イオン濃度)が得られた。つまりpH9では、図1より、残留塩素の約97%が次亜塩素酸イオンとして存在しているため酸化電流が大きく測定され、pH5では残留塩素のほぼ100%が次亜塩素酸であり、次亜塩素酸イオンが存在していないため酸化電流が殆ど測定されない。試料溶液のpHが9から5に向かって減少していった場合、図1より次亜塩素酸イオンの組成比率が小さくなっていくため、pHの減少に伴って酸化電流も減少していく。
図4は、参照電極103に対する作用電極102の電位を+0.4Vから-1.6Vまで(20mV/secにて)掃引して測定した、pHの異なる8種類の試料溶液のボルタモグラムである。同じ残留塩素濃度(100ppm NaClO)であるにもかかわらず、pHにより異なる還元電流値(次亜塩素酸濃度)が得られた。つまりpH9では、図1より残留塩素の約3%が次亜塩素酸として存在しているに過ぎないため還元電流が殆ど測定されず、pH5では残留塩素のほぼ100%が次亜塩素酸として存在しているため還元電流が大きく測定されることになる。試料溶液のpHが9から5に向かって減少していった場合、図1より次亜塩素酸の組成比率が大きくなっていくため、pHの減少に伴って還元電流は増加していく。
図5は、図3と図4に示される結果を連結して作成したボルタモグラムである。
pH5以上の任意のpHを持つ試料溶液において、酸化電流から次亜塩素酸イオン濃度を求めるための検量線(以後、酸化側検量線という。作成方法は後述する。)を用いて求めた次亜塩素酸イオン濃度と、還元電流から次亜塩素酸濃度を求めるための検量線(以後、還元側検量線という。作成方法は後述する。)を用いて求めた次亜塩素酸濃度を加算することにより、任意のpHを持つ試料溶液の残留塩素濃度を求めることができる。
図6は、前述した方法により測定した残留塩素濃度である。試料溶液101は前述したものと同じように、HClO4とNaOHを用いてそれぞれpH2〜9に調整した8種類の100ppm NaClO溶液を使用し、酸化側検量線と還元側検量線から求めた次亜塩素酸イオン濃度と次亜塩素酸濃度を加算した濃度を示している。次亜塩素酸イオン濃度測定と次亜塩素酸濃度測定とを同じ試料溶液101を用いて連続的に行う場合には、試料溶液101を撹拌しながら測定を行う必要がある。撹拌は、外部手段により行ってもよい。または、装置100に撹拌手段を取り付けてもよい。次亜塩素酸イオン濃度測定と次亜塩素酸濃度測定とを別々の試料溶液101を用いて行うこともできる。
図6によれば、pH4〜9の範囲において、次亜塩素酸イオン濃度と次亜塩素酸濃度を加算することにより試料溶液101の残留塩素濃度100ppmを測定できることが示された。pH4では溶存塩素の組成比率(以下、存在比率ともいう)が小さいため、これが還元電流に誤差として現れておらず正確に残留塩素濃度を測定できていると考えられる。
検量線の作成
検量線は次のようにして作成することができる。
1.酸化側検量線
(1)例えばpH9の試料溶液101を、残留塩素の濃度ごと(例えば、0ppm、20ppm、40ppm、60ppm、80ppm、100ppm等)に調製する。pH9の場合の次亜塩素酸イオン濃度は、残留塩素濃度の97%であるから、試料溶液101の次亜塩素酸イオン濃度は、例えば、0ppm、19.4ppm、38.8ppm、58.2ppm、77.6ppm、97ppm等、となる。次いで試料溶液101の酸化電流を測定する。図7に測定結果の例を示す。図7より、残留塩素濃度が増大するにつれ、大きな応答電流(酸化電流)が見られた。この結果に基づき、次亜塩素酸イオン濃度vs酸化電流のグラフを作成し、酸化側検量線とする。図8に、図7の測定結果に基づいた酸化側検量線の作成例を示す。
(2)例えば残留塩素濃度100ppmで、pH4以上、例えばpH5以上の種々の異なるpHの試料溶液101を調製する。調製した種々の試料溶液101のうち、1番目の試料溶液101の酸化電流を測定する。例えば1番目の試料溶液101のpHが7であった場合、図1より次亜塩素酸イオン組成比率は23%である。したがって、測定された酸化電流は次亜塩素酸イオン濃度が23ppmの場合であると判断し、次亜塩素酸イオン濃度vs酸化電流のグラフにプロットする。次に2番目の試料溶液101の酸化電流を測定する。2番目の試料溶液101のpHが例えば8であった場合、図1より次亜塩素酸イオン組成比率は75%である。したがって、測定された酸化電流は次亜塩素酸イオン濃度が75ppmの場合であると判断し、次亜塩素酸イオン濃度vs酸化電流のグラフにプロットする。この手順を繰り返し調製した種々のpHの試料溶液101について測定を行い、酸化側検量線とする。
(3)上記(1)と(2)を組み合わせて、酸化側検量線を作成することもできる。
2.還元側検量線
(1)例えばpH6の試料溶液101を、残留塩素の濃度ごと(例えば、0ppm、20ppm、40ppm、60ppm、80ppm、100ppm等)に調製する。pH6の場合の次亜塩素酸濃度は、残留塩素濃度の97%であるから、試料溶液101の次亜塩素酸濃度は、例えば、0ppm、19.4ppm、38.8ppm、58.2ppm、77.6ppm、97ppm等、となる。次いで試料溶液101の還元電流を測定する。図9に測定結果の例を示す。図9より残留塩素濃度が増大するにつれ、大きな応答電流(還元電流)が見られた。この結果に基づいて次亜塩素酸濃度vs還元電流のグラフを作成し、還元側検量線とする。図10に、図9の測定結果に基づいた還元側検量線の作成例を示す。
(2)例えば残留塩素濃度100ppmで、pH4以上、例えばpH5以上の種々のpHの試料溶液101を調製する。調製した種々の試料溶液101のうち、1番目の試料溶液101の還元電流を測定する。例えば1番目の試料溶液のpHが7であった場合、図1より次亜塩素酸組成比率は77%である。したがって、測定された還元電流は次亜塩素酸濃度が77ppmの場合であると判断し、次亜塩素酸濃度vs還元電流のグラフにプロットする。次に2番目の試料溶液101の還元電流を測定する。例えば2番目の試料溶液101のpHが8であった場合、図1より次亜塩素酸組成比率は25%である。したがって、測定された還元電流は次亜塩素酸濃度が25ppmの場合であると判断し、次亜塩素酸濃度vs酸化電流のグラフにプロットする。この手順を繰り返し調製した種々のpHの試料溶液101について測定を行い、還元側検量線とする。
(3)上記(1)と(2)を組み合わせて、還元側検量線を作成することもできる。
予め作成した検量線を用いて、残留塩素濃度が未知の試料溶液について応答電流を測定し、当該測定された応答電流から残留塩素濃度を決定することができる。
<第2実施形態>
以下、本発明に係る残留塩素濃度測定装置の第2実施形態について説明する。第1実施形態に対応するものには同一の符号を付す。
本発明の第2実施形態に係る残留塩素測定装置200は、第1実施形態と同様の作用電極102、参照電極103、対電極104、ポテンショスタット105及び情報処理装置106を有するが、ただしこれらは図11に示すような形状又は配置を有する。
本発明の第2実施形態に係る残留塩素測定装置200は、フローインジェクション分析(FIA)を行うためのものである。フローインジェクション分析(FIA)とは、流動する溶液中に試料を注入し、流動溶液が通過するフローセル中で溶液中の成分を分析する方法である。フローインジェクション分析システムは一般に、定量ポンプ等の流動を作り出す手段を備え、フローセルを有する検出器を備える。定量ポンプ等により制御された連続流れを作りだす。この流れの中で種々の反応、分離や試料注入等を行うことができる。またフローセルを有する検出器により溶液中の成分を分析することができる。
フローインジェクション分析システムの例を図11に示す。図11に示すように、装置200は、試料溶液101が通過する流通管211、試料溶液101を流通管211に通過させるためのポンプ209、及び、流通管211が内部を通過するフローセル207を備えている。フローセル207には作用電極102、参照電極103、対電極104が内蔵されている。前記作用電極102、参照電極103および対電極104は配線110によりポテンショスタット105に接続されている。またポテンショスタット105は情報処理装置106に接続されている。流通管211には、フローセル207への流入口213及びフローセル207からの流出口214がある。流通管211の内部を流路212とする。
試料溶液101は測定対象である残留塩素を含有している可能性のあるものであり、本実施形態では次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いている。また電解質として0.1M過塩素酸ナトリウム(NaClO4)を用いている。
試料溶液101が通過する流通経路は、流通管211とフローセル207とから構成される。流通管211は、溶液タンク208とフローセル207の流入口213とを連結している。図には示していないが、フローセル207の流出口214は廃液タンクへと接続されうる。ポンプ209は好ましくはフローセル207の流出口214側ではなく、流入口213側(上流側)に配置される。ポンプ209は、一定の速度で試料溶液101をフローセル207に送ることができるものである。ポンプの例としては、液体クロマトグラフィー用ポンプ等が挙げられる。
フローセル207に内蔵されている作用電極102、参照電極103及び対電極104は、試料溶液101に接触することができるよう、流路212内に露出している。特に作用電極102のダイヤモンド薄膜は流路212内に露出されており、試料溶液101が通過した場合にこれと接触することができる。試料溶液101は流入口213からフローセル207内に入り、図中の矢印方向に流れ、流出口214へと送られる。試料溶液101が電極に接触していると、作用電極102と参照電極103との間に電圧が印加されたときに試料溶液101中で電気化学的反応が生じる。
次に残留塩素測定装置200の動作について説明する。
測定対象の残留塩素を含む可能性のある試料溶液101がポンプ207によって溶液タンク208から流通管211を通ってフローセル207に送られる。フローセル207内において、内蔵された作用電極102、参照電極103および対電極104が試料溶液101に接触した状態で、作用電極102と参照電極103との間に電圧が印加されることにより電気化学的反応が生じる。当該電気化学的反応によって生じた電流値(電気信号)はポテンショスタット105に伝達され各電極における信号の制御・検出が行われる。ポテンショスタット105で検出された信号は情報処理装置106により解析され、残留塩素の検出、及び残留塩素濃度の測定が行われる。測定が終了した試料溶液101は流出口214を経てフローセル207外に排出される。
本実施形態においては、残留塩素濃度を以下のように測定することができる。
(1)電位連続掃引方式
(i) 作用電極102に印加する電位を、-1.6V〜+2.0Vの間で反復的に掃引する。例えば、+0.4Vから+2.0Vまで掃引し、次いで+0.4Vから-1.6Vまで掃引し、再度+0.4Vから+2.0Vまで掃引し、次いで+0.4Vから-1.6Vまで掃引する。以下、これを任意の回数だけ反復する。
(ii) 作用電極に印加される電位が+1.4Vとなったときの酸化電流を測定し、予め作成された検量線を用いて酸化側残留塩素濃度を算出する。
(iii) また作用電極に印加される電位が-0.5Vとなったときの還元電流を測定し、予め作成された検量線を用いて還元側残留塩素濃度を算出する。
(iv) 酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度とを加算し、試料溶液の残留塩素濃度とする。
(v)場合により、(iv)で得られた酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度の比率から、試料溶液のpHを算出することもできる。
(2)電位切替方式
(i) 作用電極102に印加する電位を、-0.5Vと+1.4Vとで交互に切り替える。例えば、-0.5Vで一定時間保持する。次いで+1.4Vで一定時間保持する。次いで再び-0.5Vで一定時間保持する。次いで再び+1.4Vで一定時間保持する。以下、これを任意の回数だけ反復する。
(ii) 作用電極に印加される電位を+1.4Vで保持しているときの酸化電流を測定し、作成済みの検量線を用いて酸化側残留塩素濃度を算出する。
(iii) 作用電極に印加される電位を-0.5Vで保持しているときの還元電流を測定し、作成済みの検量線を用いて還元側残留塩素濃度を算出する。
(iv) 酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度とを加算し、試料溶液の残留塩素濃度とする。
(v)場合により、(iv)で得られた酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度の比率から、試料溶液のpHを算出することもできる。
(3)6電極方式
作用電極、対電極、参照電極の三電極を一組として、6電極二組の電極をフローセル内に組み込む。
(i) 一組の作用電極に印加する電位を、+1.4Vで固定する。また、他方の一組の作用電極に印加する電位を、-0.5Vで固定する。
(ii) 作用電極に印加される電位を+1.4Vで保持している側で酸化電流を測定し、予め作成された検量線を用いて酸化側残留塩素濃度を算出する。
(iii) 作用電極に印加される電位を-0.5Vで保持している側で還元電流を測定し、予め作成された検量線を用いて還元側残留塩素濃度を算出する。
(iv) 酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度とを加算し、試料溶液の残留塩素濃度とする。
(v)場合により、(iv)で得られた酸化側残留塩素濃度と還元側残留塩素濃度の比率から、試料溶液のpHを算出することもできる。
(4)4電極方式
2つの作用電極、及び1つの対電極、及び1つの参照電極をフローセル内に組み込む。ポテンショスタットとして、バイポテンショスタットを用いる。
バイポテンショスタット(デュアルポテンショスタットともいう)は、2つの作用電極を制御することのできるポテンショスタットのことをいい、1つの溶液系に挿入された2つの作用電極を独立に制御してそれぞれの応答電流を測定することができる。バイポテンショスタットを用いるには、一般に、対極と参照電極がそれぞれ1つずつあれば足りる。バイポテンショスタットでは、通常のポテンショスタットにもう一つの作用電極を電位制御するための回路が付加されている。本発明のバイポテンショスタットには、任意の公知のものを用いることができる。例えばBardらL.R. Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications. New York: John Wiley & Sons, 2nd Edition, 2000;Handbook of Electrochemistry. Elsevier, 2007;Kissingerら、Laboratory Techniques in Electroanalytical Chemistry. CRC Press, 1996等を参照のこと。
4電極方式で測定を行う場合、動作は基本的に上記の(3)6電極方式の場合と同様に行う。
本発明は前記の第1実施形態及び第2実施形態に限られない。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、測定手順を変更したり、装置を改変することができ、種々の変法及び変形が可能である。
100 残留塩素測定装置
101 試料溶液
102 作用電極
103 参照電極
104 対電極
105 ポテンショスタット
106 情報処理装置
107 セル
110 配線
200 FIA用残留塩素測定装置
207 フローセル
208 溶液タンク
209 ポンプ
211 流通管
212 流路
213 流入口
214 流出口

Claims (18)

  1. 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    (i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、
    (ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、
    (iii)前記(i)の算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、前記(ii)の算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを加算し、
    前記加算して得られた合計残留塩素濃度を前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
  2. 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液のpHを測定する方法であって、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    (i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、
    (ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、
    (iii)前記(i)の算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、前記(ii)の算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを比較して組成比率を算出し、
    (iv)前記算出された組成比率を有効塩素組成比率曲線にあてはめることによりpHを算出し、前記算出されたpHを前記試料溶液のpHとする、pHを測定する方法。
  3. 残留塩素を含有する可能性のあるpHが既知である試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    前記試料溶液のpHが7.5以下の場合、
    前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸濃度を算出し、
    前記試料溶液のpHと、前記算出された次亜塩素酸濃度とを有効塩素組成比率曲線にあてはめることにより算出された残留塩素濃度を、前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
  4. 試料溶液のpHが4〜7.5である、請求項3に記載の方法。
  5. 残留塩素を含有する可能性のあるpHが既知である試料溶液に、作用電極、対電極および参照電極を接触させ、前記作用電極と、前記参照電極との間に電圧を印加して、当該電圧下における前記作用電極に流れる電流値を測定することにより、前記試料溶液に含まれる残留塩素濃度を測定する方法であって、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    前記試料溶液のpHが7.5より大きい場合、
    前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内で掃引して電流値を測定して次亜塩素酸イオン濃度を算出し、
    前記試料溶液のpHと、前記算出された次亜塩素酸イオン濃度とを有効塩素組成比率曲線にあてはめることにより算出された残留塩素濃度を、前記試料溶液の残留塩素濃度とする、残留塩素濃度測定方法。
  6. 試料溶液のpHが7.5より大きく10以下である、請求項5に記載の方法。
  7. フローインジェクション法により測定を連続的に行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 酸化電流から次亜塩素酸イオン濃度を求めるための検量線を作成し、当該検量線を使用して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、および/または
    還元電流から次亜塩素酸濃度を求めるための検量線を作成し、当該検量線を使用して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出するための掃引を0V側の低電位から出発して+1.6V側の高電位の方向に行う、および/または
    次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出するための掃引を+0.4V側の高電位から出発して-1.0V側の低電位の方向に行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 導電性ダイヤモンド電極が0.05〜5%w/wのホウ素をドープしたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 試料溶液中の残留塩素濃度を測定するための残留塩素測定装置であって、
    作用電極と、対電極と、参照電極と、前記作用電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、当該印加電圧における前記作用電極に流れる電流値を測定する電流測定部と、前記電流測定部からの電流測定信号に基づいて残留塩素濃度を算出する情報処理装置と、を備え、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    前記情報処理装置が、
    (i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内で掃引するように制御して電流値を測定し、
    (ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内で掃引するように制御して電流値を測定し、
    (iii)前記(i)の測定された電流値から次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、前記(ii)の測定された電流値から次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、算出した次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度と、算出した次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度とを加算して合計残留塩素濃度を前記試料溶液の残留塩素濃度とするものであり、
    ここで(i)の測定と(ii)の測定とは任意の順で逐次的に、または同時に行うことができる、
    残留塩素測定装置。
  12. 残留塩素を含有する可能性のある試料溶液のpHを測定する装置であって、
    作用電極と、対電極と、参照電極と、前記作用電極と前記参照電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、当該印加電圧における前記作用電極に流れる電流値を測定する電流測定部と、前記電流測定部からの電流測定信号に基づいて、残留塩素濃度を算出する情報処理装置と、を備え、
    前記作用電極がsp 3 構造を保った、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記参照電極が銀/塩化銀電極であり、
    前記情報処理装置が、
    (i)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を0V〜+1.6Vの範囲内で掃引するように制御して電流値を測定し、
    (ii)前記銀/塩化銀電極に対する前記導電性ダイヤモンド電極の電位を+0.4V〜-1.0Vの範囲内で掃引するように制御して電流値を測定し、
    (iii)前記(i)の電流値から次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、前記(ii)の電流値から次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出し、前記(i)から算出された残留塩素濃度と、前記(ii)から算出された残留塩素濃度とを比較して組成比率を算出し、
    (iv)前記算出された組成比率を有効塩素組成比率曲線にあてはめることによりpHを算出し、前記算出されたpHを前記試料溶液のpHとするものであり、
    ここで(i)の測定と(ii)の測定とは任意の順で逐次的に、または同時に行うことができる、
    pHを測定する装置。
  13. バイポテンショスタット及び2つの作用電極を備え、(i)の測定と(ii)の測定とを同時に行うことができる、請求項11または12に記載の装置。
  14. 作用電極を2つ、対電極を2つ及び参照電極を2つ備え、(i)の測定と(ii)の測定とを同時に行うことができる、請求項11または12に記載の装置。
  15. さらにフローセルを備え、該フローセルに前記作用電極、参照電極、及び対電極が内蔵されており、該フローセルは試料溶液が通過するための流通管を有し、該フローセル内の流通管を試料溶液が通過するときに試料溶液が前記作用電極、参照電極、及び対電極に接触するよう前記作用電極、参照電極、及び対電極が該フローセル内に配置されている、フローインジェクション分析用の請求項11〜14のいずれか1項に記載の装置。
  16. 前記情報処理装置が、
    酸化電流から次亜塩素酸イオン濃度を求めるための検量線を作成し、当該検量線を前記(i)で測定された電流値に使用して次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出し、
    還元電流から次亜塩素酸濃度を求めるための検量線を作成し、当該検量線を前記(ii) で測定された電流値に使用して次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出する、請求項11〜15のいずれか1項に記載の装置。
  17. 前記情報処理装置が、
    次亜塩素酸イオンに基づく残留塩素濃度を算出するための掃引を0V側の低電位から出発して+1.6V側の高電位の方向に行われるように制御する、および/または
    次亜塩素酸に基づく残留塩素濃度を算出するための掃引を+0.4V側の高電位から出発して-1.0V側の低電位の方向に行われるように制御する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の装置。
  18. 導電性ダイヤモンド電極が0.05〜5%w/wのホウ素をドープしたものである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の装置。
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