JP6009794B2 - ダイヤモンド微小電極を用いた還元型グルタチオンの測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイヤモンド微小電極を用いた還元型グルタチオンの測定方法に関する。より詳細には、本発明は不純物を微量ドープしたダイヤモンド微小電極を用いて還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンが混在している試料中の還元型グルタチオンを選択的に測定する方法及びそのための装置に関する。
グルタチオンはトリペプチドであり、多くの細胞中に高濃度で見出され、還元型及び酸化型として存在する。還元型はL-γ-グルタミル-L-システイニル-グリシンであり、GSHとも表記される。酸化型はGSHのジスルフィド型であり、GSSGとも表記される。グルタチオンは生物学的な抗酸化剤としては最も強力なものの一つであり、そのため酸化的ストレスの下では、GSHはGSSGに酸化され、次いでGSSGはグルタチオンレダクターゼにより直ちにGSHに再度還元される。このように代謝回転が速いことから、通常、生きた細胞中のGSH濃度はGSSGの濃度よりも非常に高い。このことから、GSHとGSSGの比は酸化的ストレスの高感度の指標となり、細胞の酸化還元状態の鍵となるマーカーである(非特許文献1−4)。
癌細胞ではGSH濃度は正常な組織と比較して非常に高いことが報告されている(非特許文献5)。したがって、癌幹細胞の(放射線療法や化学療法などによる)酸化的ストレスに対する耐性が高い主な原因はこの高濃度のGSHであると考えられている(非特許文献21)。
このことから、癌の評価にはGSHの正確なin vivo検出が必須となる。GSH濃度を測定する技術は複数存在するが、その大部分は液体クロマトグラフィーを種々の検出方法、例えば蛍光又はUV分析と組み合わせたものである(非特許文献6−8)。こうした方法の大部分は、カラム誘導体化を行い、続いて蛍光分析検出を行うか又はGSHをフェニル若しくはピリジン誘導体に変換し、次いでUV検出するというものであり、化学反応を伴う工程数が多く、煩雑な作業が必要となる。したがってこうした従来のGSH濃度測定方法は高価な機材を必要とし、時間もかかる。さらに、こうした従来技術はin vivoでのGSH検出に適しておらず、そのため生検により得られた組織サンプルが必要となるが、これは患者にとって痛みを伴うなど侵襲性である。
シロイヌナズナを対象とするin vivoでのグルタチオン濃度測定技術が報告されている(非特許文献9)。この方法では、モノクロロビマンを用いて標識を行い、次いでHPLCを用いてさらなる検出を行う。同文献で報告されているのは、植物(シロイヌナズナ)に対する試験のみであり、また、測定された濃度にはグルタチオンの還元型と酸化型の両方が含まれることが示された。すなわち、同方法は還元型グルタチオンを選択的に測定するものとはいえず、また対象も植物に限定されている。
別のin vivo方法として、二重量子コヒーレンスフィルタリングを用いた、ヒトの脳内のGSH検出方法が報告されている(非特許文献10)。この分析はin vivoでのGSH濃度決定について良好な結果をもたらしたが、この間接的な検出方法には複雑なスペクトル解析と時間を要するキャリブレーション工程が伴う。
近年、電気化学的手法が、簡便、迅速、そして高感度であることから、代替的手法として注目されている。グルタチオン検出のための電気化学的手法はいくつか提唱されているが、これらは白金、金又は金/水銀電極などを用いる(非特許文献11−13)。しかしながら、金電極は通常、再現可能な結果を得るには時間のかかる前処理が必要となる。さらに金/水銀は調製と使用のために実験手法が複雑になり、したがってこれらの手法は実際に応用される分析用途にはさほど適当とはいえない。さらに、こういった種類の電極材料の表面への吸着と被毒は種々の有機化合物の酸化中に進行し、したがってこうした電極材料をin vivoでのGSH検出に用いるのは困難である。また、こうした電極では電気化学的電位窓が十分でなく、水系に対して測定を行う場合、1Vを超えると酸素の泡が発生し測定ができないといった問題があった。
近年、電気化学的分析用の電極として、ホウ素ドープ導電性ダイヤモンド薄膜が用いられるようになっている(特許文献1等)。高濃度でホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極は、広い電位窓と、他の電極材料と比較してバックグランド電流が小さいといった有利な性質を有しており、また、物理的、化学的に安定で耐久性に優れるといった特徴を有している。
また、Terashimaらはホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極を用いた還元型及び酸化型グルタチオンの選択的な電気化学的検出を報告している(非特許文献14)。この電極材料は他の従来型の電極材料と比較して特性が非常に優れており、すなわち電気化学電位窓が広く、バックグラウンド電流が低く、極性分子の吸着が弱いことから選択された(非特許文献15、16)。しかしながら、Terashimaらの報告ではマクロ電極が用いられただけであり、検出はpH2のBRBバッファー中で行われた。Terashimaらの考察によると、pHの増大と共にピーク電圧が正にシフトすることは、アノード酸化されたダイヤモンド表面と酸性媒体中の正に荷電したGSSGの間の静電引力相互作用を示し、これが分析性能を高めた、とされている(Abstract参照)。したがって、同文献ではGSSGが正に荷電するようpH2という低いpHで測定が行われている。このように報告された方法ではマクロ電極をpH2で用いた場合のGSH(又はGSSG)のin vitro電気化学的検出のみが可能である。また、ラット全血中のGSHとGSSGの決定が記載されているが、これは液体クロマトグラフィーによる分離後に行われた測定結果である(Abstract参照)。
特開2001−50924号公報
A. Pompella, A. Visvikis, A. Paolicchi, V. De Tata, A.F. Casini, Biochemical Pharmacology, 66 (2003) 1499. Y. Morel, R. Barouki, Biochem. J., 342 (1999) 481. A. Pastore, F. Piemonte, M. Locatelli, A. Lo Russo, L.M. Gaeta, G. Tozzi, G. Federici, Clin. Chem., 47 (2001) 1467. M. Asensi, J. Sastre, F.V. Pallardo, A. Lloret, M. Lehner, J.G. De la Asuncion, J. Vina, Meth. Enzym., 299 (1999) 267. G.K. Balendiran, R. Dabur, D. Fraser, Cell Biochem. Funct., 22 (2004) 343. R. Gotti, V. Andrisano, V. Cavrini, A. Bongini, Chromatographia, 39 (1994) 23. R.C. Fahey, G.L. Newton, Meth. Enzym., 143 (1987) 85. D. Tsikas, G. Brunner, Fresenius J. Anal. Chem., 343 (1992) 326. A.J. Meyer, M.J. May, M. Fricker, The Plant Journal, 27 (2001) 67. A.H. Trabesinger, O.M. Weber, C.O. Duc, P. Boesiger, Magnetic Resonance in Medicine, 42 (1999) 283. L.A. Allison, R.E. Shoup, Anal. Chem., 55, (1983) 8. P. Vandeberg, D.C. Johnson, Anal. Chem., 65, (1993) 2713. J.C. Hoekestra, D.C. Johnson, Anal. Chem., 70, (1998) 83. C. Terashima, T.N. Rao, B.V. Sarada, Y. Kubota, A. Fujishima, Anal. Chem., 75, (2003) 1564. T. Yano, D. A. Tryk, K. Hashimoto, A. Fujishima, J. Electrochem. Soc., 145, (1998) 1870. A. Fujishima, Y. Einaga, T. N. Rao, D. A. Tryk, (Eds.), Diamond Electrochemistry, Elsevier-BKC, Tokyo (2005). S.M. Barranco, R.R. Perry, M.E. Durm, A.L. Werner, S.G. Gregorcyk, W.E. Bolton, P. Kolm, C.M. Townsend Jr., Cancer Research, 54 (1994) 5351. T. Yano, D.A. Tryk, K. Hashimoto, A. Fujishima, J. Electrochem. Soc., 145 (1998) 1870. A. Ciszewski, G. Milczarek, Anal. Chem., 71 (1999) 1055. M.J. Ashwood-Smith, Int. J. Rad. Biol., 3 (1961) 125 Ishimoto T, Nagano O, Yae T, et al: CD44 variant regulates redox status in cancer cells by stabilizing the xCT subunit of system xc(-) and thereby promotes tumor growth. Cancer Cell 19: 387-400, 2011
以上のように癌の評価にはGSHの正確なin vivo検出が必須となるが、GSH濃度を測定する従来法の大部分は液体クロマトグラフィーという分離方法を種々の検出方法、例えば蛍光又はUV分析と組み合わせたものであり、カラム誘導体化や化学反応を伴う工程数が多く、煩雑な作業が必要となり、高価な機材を必要とし、時間もかかる。さらに、こうした従来技術はin vivoでのGSH検出に適しておらず、そのため生検により得られた組織サンプルが必要となるが、これは患者にとって痛みを伴うなど侵襲性である。そのため、簡便、迅速、かつ高感度で、低侵襲性とすることもできる還元型グルタチオン(GSH)の検出方法、特にin vitro及びin vivoで実施可能な該検出方法が必要とされている。
本発明者らは上記の問題を解決するために、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)微小電極を使用し、サイクリックボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー測定を行うことにより、還元型グルタチオン(GSH)のin vitro及びin vivo検出を行う装置及び方法の開発について鋭意検討を行った。本発明者らは、導電性ダイヤモンド電極を備えた装置を使用するクロノアンペロメトリー測定において印加する電圧を選択することによりGSHからの酸化電流をGSSGからの酸化電流から分離して、選択的かつ迅速にGSHを測定することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
さらに本発明は、癌をin vivoで評価する方法、特に癌幹細胞のような癌の治療に対する耐性を評価する方法を提供する。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1] 一定の電圧を印加してクロノアンペロメトリー測定を行う装置を備えている電気化学的測定装置であって、
ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、及びケイ素(Si)からなる群より選択される不純物がドープされた導電性ダイヤモンドが蒸着した微小電極を含み、
該微小電極により、還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流は測定できるが、酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流は実質的に測定できない電圧を印加し、
in vitro又はin vivoで還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に検出する、前記装置。
[2] 不純物がホウ素(B)である、[1]に記載の装置。
[3] 同じ濃度のGSHとGSSGを比較に用い、該電圧の印加開始後の同一時点において比較した場合に還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流をシグナルとし酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流をノイズとするとシグナル:ノイズ比が10:1以上である、[1]又は[2]に記載の装置。
[4] Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.0〜1.5Vである、[1]〜[3]のいずれかに記載の装置。
[5] Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.35〜1.45Vである、[4]に記載の装置。
[6] 組織又は細胞のGSH濃度を測定し、癌を評価するための[1]〜[5]のいずれかに記載の装置。
[7] 癌組織又は癌細胞に治療を行う前後で、該組織又は細胞のGSH濃度を測定し、前記癌の治療に対する耐性を評価するための[1]〜[6]のいずれかに記載の装置。
[8] 一定の電圧を印加してクロノアンペロメトリー測定を行う電気化学的測定方法であって、
ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、及びケイ素(Si)からなる群より選択される不純物がドープされた導電性ダイヤモンドが蒸着した微小電極を用い、
該微小電極により、還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流は測定できるが、酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流は実質的に測定できない電圧を印加し、
還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に検出する前記方法。
[9] in vitroで行う、[8]に記載の方法。
[10] 不純物がホウ素(B)である、[8]又は[9]に記載の方法。
[11] 同じ濃度のGSHとGSSGを比較に用い、該電圧の印加開始後の同一時点において比較した場合に還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流をシグナルとし酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流をノイズとするとシグナル:ノイズ比が10:1以上である、[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.0〜1.5Vである、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13] Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.35〜1.45Vである、[12]に記載の方法。
[14] 組織又は細胞のGSH濃度を測定し、癌を評価するための[8]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 癌組織又は癌細胞に治療を行う前後で、該組織又は細胞のGSH濃度を測定し、前記癌の治療に対する耐性を評価するための[8]〜[14]のいずれかに記載の方法。
本発明の効果として、GSHをin vitro又はin vivoでGSSGと分離して選択的に高感度で測定することができる。本発明の方法を用いると、GSHを迅速に測定することができ、細胞内のGSH濃度をin vivoでリアルタイムで測定することもできる。その結果、癌に治療(放射線療法や化学療法)を施す前後で癌のGSH濃度を測定し、これにより癌の治療耐性を評価することができる。このような評価は従来技術では実現できなかったものである。
種々の濃度のGSH(0〜10mM)を含有する溶液のサイクリックボルタモグラムを、BDD電極を用いて0.1Vs-1で記録した結果を示す図である。 GSH検出のためのキャリブレーション曲線を示す図である。 GSH検出のためのキャリブレーション曲線を示す図である。 回復処理の結果を示す図である。0.1M PBS溶液中で、(a)GSH検出測定前、(b)10mM GSHの存在下で100回のボルタンメトリースキャンを行った後、(c)GSH検出測定の後に20分のカソード処理を-3Vで行った後、の記録をそれぞれ示す。 低濃度(0〜10mM)のGSSGについてのキャリブレーション曲線を示す図である。 高濃度(0〜80mM)のGSSGについてのキャリブレーション曲線を示す図である。 BDD微小電極を用いて0.1Vs-1にて、それぞれ10mM GSH又は10mM GSSGを含有する2つの溶液について記録したサイクリックボルタモグラムを示す図である。比較のためバックグラウンド電流も示す。 種々の濃度(0〜10mM)のGSHを含む0.1M PBS溶液について、BDD微小電極を使用してクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示す図である。 図6Aに示した測定結果から引いたGSH検出のためのキャリブレーション曲線を示す図である。 1.5Vの電圧を印加してBDD微小電極を使用してクロノアンペロメトリー測定を行った結果に基づいて作成したGSH検出のためのキャリブレーション曲線を示す図である。 BDD微小電極を用いて1.3V対Ag/AgClで記録したクロノアンペロメトリー測定を示す図である。 BDD微小電極を用いて1.3V対Ag/AgClにて記録したクロノアンペロメトリー測定結果を、図7の結果と比較して示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はin vitro又はin vivoで還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に高感度で検出する電気化学的分析・測定装置及び該装置である。ここで、GSHについて用いる「検出」とは、GSHが試料中に含まれていることの定性的な検出も、濃度を測定する定量的な検出も含む。またGSSGについて用いる「検出」とは、GSSGが試料中に含まれていることの定性的な検出も、濃度を測定する定量的な検出も含む。本明細書において、混在とは、GSH及びGSSGがいずれも試料中に存在することをいう。生体内ではGSHは酸化ストレス等によりGSSGに変換され、GSSGはグルタチオンレダクターゼにより直ちにGSHに再度還元される。このような代謝回転のため生体内では一般にGSHとGSSGは混在する。
本発明の上記装置は作用電極として微量の不純物がドープされた導電性ダイヤモンド電極を備えている。
すなわち本発明の装置には導電性ダイヤモンド電極を用いる。この導電性ダイヤモンド電極には微量の不純物をドープすることが好ましい。不純物をドープすることにより、電極として望ましい性質が得られる。不純物としては、ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)等が挙げられる。例えば炭化源を含む原料ガスに、ホウ素を得るためにはジボラン、トリメトキシボラン、酸化ホウ素、ホウ素トリメトキシドを、硫黄を得るためには酸化硫黄、硫化水素を、酸素を得るためには酸素若しくは二酸化炭素を、窒素を得るためにはアンモニア若しくは窒素を、ケイ素を得るためにはシラン等を加えることができる。特に高濃度でホウ素をドープした導電性ダイヤモンド電極は広い電位窓と、他の電極材料と比較してバックグランド電流が小さいといった有利な性質を有することから好ましい。そこで本発明では以下にホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極について例示的に記載する。もちろん測定に必要な感度が得られるのであれば、他の不純物をドープした導電性ダイヤモンド電極を用いてもよい。本明細書では電位と電圧は同義であり相互に置き換え可能に用いる。また本明細書ではホウ素ドープ導電性ダイヤモンド電極をBDD電極と記載することがある。
本発明の電極の電極部は、高強度金属針の表面に0.01〜8%w/wホウ素原料混入ダイヤモンドが蒸着してなり、直径0.01〜0.3mm、長さ0.02〜2.0mm、好ましくは0.3〜0.7mmの微小針状である。ここで高強度金属としては、タングステン、モリブデン等が用いられるが、タングステンが強度、安全性、ダイヤモンド成長の基板となる等の点で好ましい。当該高強度金属針の長さは着脱により調節可能で、特に10〜20cm程度に延長可能とすることが電極マニピュレーター操作性の点で好ましい。
本発明の導電性ダイヤモンド電極の電極部の大きさは、測定対象により適宜設計できるが好ましくは微小電極である。微小電極は例えば直径0.01〜0.3mm、長さ0.02〜2.0mm、好ましくは0.3〜0.7mmの微小針とすることができる。微小電極を用いると、組織に対する侵襲性が抑えられ、電極部を組織又は細胞に刺入でき、in vivoでも低侵襲で測定が可能となる。良好な測定感度を得るには、ある程度電極部の長さが必要である反面、電極部が長いとノイズ電流が発生する。当業者であれば、測定対象に応じて電極部の長さを適宜決定することができる(特開2011−152324参照)。なお、金属針の電極部以外の部分は、操作性、測定感度等の観点から、樹脂等により絶縁されているのが好ましい。絶縁に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、カシュー塗料、パリレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の電極を円筒形若しくは円錐形とする場合の先端部の直径は、測定対象の生体、組織又は生検サンプルへの刺入性、測定物質との反応性の点から、例えば10μm〜0.3mm、好ましくは10μm〜50μmとすることができ、特に好ましくは20μmである。上記電極部の大きさは、金属針をシリンダーとすると、in vivo測定に用いる電極部の面積が1.0×10-5cm2〜1.0×10-2cm2、好ましくは1.0×10-4cm2〜1.0×10-3cm2、好ましくは約6.3・10-4cm2となるようにすることができる。
本発明の電極は、高強度金属針の先端部長さ0.02〜2.0mm部分が高ホウ素原料混入(原料仕込みとして0.01〜8%w/wホウ素原料)ダイヤモンドで蒸着されている。好ましいホウ素原料混入率は0.05〜5%w/wであり、特に好ましくは0.1% w/w程度である。
高強度金属針の先端部へのホウ素原料混入ダイヤモンドの蒸着処理は、700〜900℃で2〜12時間行えばよい。
導電性ダイヤモンド薄膜は通常のマイクロ波プラズマ化学気相成長法(MPCVD)で作製される。すなわち、シリコン単結晶(100)等の基板を成膜装置内にセットし、高純度水素ガスを担体ガスとした成膜用ガスを流す。成膜用ガスには、炭素、ホウ素が含まれている。炭素、ホウ素を含む高純度水素ガスを流している成膜装置内にマイクロ波を与えてプラズマ放電を起こさせると、成膜用ガス中の炭素源から炭素ラジカルが生成し、基板にSi単結晶上にsp3構造を保ったまま、かつホウ素を混入しながら堆積してダイヤモンドの薄膜が形成される。
ダイヤモンド薄膜の膜厚は成膜時間の調整により制御することができる。ダイヤモンド薄膜を電気化学的試験・分析用の電極として使用する際には、膜厚は10μm以上であればよい。
金属針へのホウ素ドープダイヤモンドの蒸着処理の条件は基材を構成する材料に応じて決定すればよい。一例としてプラズマ出力は500〜5000W、例えば1kW〜3kWとすることができ、好ましくは2.5kWとしうる。プラズマ出力がこの範囲であれば、合成が効率よく進行し、副生成物の少ない、品質の高い導電性ダイヤモンド薄膜が形成される。
上記の電極は、特開2006−98281、又は特開2011−152324号公報等に開示されており、これらの公報の記載に従って作製することができる。
本発明の装置においては、上記に例示したような方法で製造した導電性ダイヤモンド電極、例えばホウ素ドープ型導電性ダイヤモンド電極を、電気化学的分析・測定装置の作用電極として用いる。
本発明の電気化学的分析・測定装置は、上記の電極部、電圧印加部、ポテンシオスタット(電圧を一定に制御する手段)、及び電流測定部を備えている。電極部は、本発明の導電性ダイヤモンド電極からなる作用電極の他、対電極及び参照電極を備える。該装置は任意にレコーダーを有しうる。ポテンシオスタットは作用電極と参照電極の間に印加される電圧を一定に制御する。電流は作用電極と対電極の間に流れる。参照電極側のポテンシオスタットの抵抗は高く設定されており(一般的なポテンシオスタットでは例えば100GΩ以上)、電流は流れないようなっている。これにより、参照電極は安定な電位を保持する。微小電極を用いる場合、任意に電極マニピュレーターを用いて微小電極を操作してもよい。これらの部分を含む装置は、一定の電圧を印加してクロノアンペロメトリー測定を行う装置である。対電極は特に限定されないが、例えば白金線を使用しうる。参照電極は特に限定されないが、例えば標準水素電極、可逆水素電極、銀−塩化銀電極(Ag/AgCl)、パラジウム・水素電極、飽和カロメル電極等が挙げられ、安定性や再現性の観点から、Ag/AgClを用いることが好ましい。本明細書では特に断らない限り、測定された電圧は、銀−塩化銀電極を基準にして測定されたものとする(0.2V 対 標準水素電極 (SHE))。作用電極、対電極及び参照電極の位置関係は、適宜設計することができる。
本発明の装置においては、上記の電極部分をカテーテル状とすることができ、又はカテーテルの一部とするか、あるいはカテーテルに取り付けることができる。カテーテルには、医療用カテーテル、医療用内視鏡等が含まれる。医療用カテーテルには心臓カテーテル、血管カテーテル、腎臓カテーテル、神経用カテーテル等が含まれる。これらのカテーテルにはバルーン、レーザーや種々の治療用装置が含まれていても良い。また、必要に応じて、参照電極、対電極等も適宜配置される。例えば血管等の管腔に挿入するカテーテル等の細管の先端部に本発明の微小電極を取り付け、動物の体内に挿入し、癌若しくはその疑いのある組織に該カテーテルの電極を接触させ、GSH濃度を測定することができる。さらに、このGSH濃度測定を治療の前後に行うことにより癌の治療耐性を評価することができる。すなわち、測定は診断又は評価を目的とすることができる。
本発明の測定では、一般に、作用電極と対電極及び参照電極を被検試料に浸漬又は接触させ、前記作用電極(導電性ダイヤモンド電極)と対電極との間に電圧を印加する。導電性ダイヤモンド電極に正の電圧を印加すると、測定対象物質(GSH又はGSSG)が電極表面で電気化学的に酸化され、対電極との間に電流が流れる。流れる電流の変化を測定することにより、測定対象物質(GSH又はGSSG)の存在を検出することができる。さらに、電流変化のピーク値は含まれる測定対象物質の濃度に比例するため、電気化学的酸化反応を起こさせる電圧値を一定にして、その電圧値での電流値と測定対象物質の濃度との関係を予め求めておけば、その関係から、得られた電流値に対応する被検溶液中の測定対象物質の濃度を知ることができる。
一例として、還元型グルタチオン(GSH)の濃度は、ボルタンメトリーを用い、次の手順で決定する。予め各種異なった含有量のGSH含有溶液を調製しておき、各溶液に一定電圧を印加してボルタンメトリー測定を行う。検出された電流値を各溶液のGSH濃度に対してプロットすることにより検量線を作成する。次に測定試料溶液から得られた電流値を当該検量線と対比することにより、被試料溶液中のGSH濃度を知ることができる。本発明の導電性ダイヤモンド電極はバックグラウンド電流が小さく、かつ電流値のノイズが小さいため、GSHを精度良く測定することができる。GSSG濃度についても同様である。
ボルタンメトリー(voltammetry)とは、印加する電圧を変化させ、それに応じて変化する電流を計測する手法である。サイクリックボルタンメトリー測定は電極電位を直線的に掃引し、応答電流を測定する方法である。掃引速度は例えば10mV s-1〜1V s-1、好ましくは100mV s-1とすることができる。本発明の方法において掃引する電極電位は例えば0〜3V、0〜2.5V等とすることができる。ボルタンメトリーを行う場合は、適宜装置にポテンシャルスイーパーを使用する。ポテンシャルスイーパーは電極にかかる電圧を任意の速度、電圧幅で制御する。
別の方法として、還元型グルタチオン(GSH)の濃度は、クロノアンペロメトリーを用い、次の手順で決定しうる。予め各種異なった含有量のGSH含有溶液を調製しておき、各溶液について一定印加電圧でクロノアンペロメトリー測定を行う。電圧印加後の一定時間における電流値を記録し、前記各種異なったGSH濃度を電流値に対してプロットすることにより検量線を作成する。次に測定試料溶液について当該電圧印加後の当該一定時間における電流値を測定し、これを前記検量線と対比することにより、被試料溶液中のGSH濃度を知ることができる。GSSG濃度についても同様である。
クロノアンペロメトリー(chronoamperometry)は、作用電極の電位をステップさせ、その際の電流の時間の変化を測定する方法である。本発明では、クロノアンペロメトリー測定は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.5V以上の電位で行うことができ、また、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.5、3.0V以下の電位で行うことができる。本発明の装置では、クロノアンペロメトリー測定は、例えば0.1〜3.0V、0.5〜2.5V、好ましくは1.0〜2.3V、1.25V〜2.0V、より好ましくは1.35〜1.5V、1.35〜1.45V、1.3〜1.4Vの範囲に含まれる一定電位のステップ電位を印加して行うことができる。
本発明の導電性ダイヤモンド電極を備えた装置を使用するとき、電圧を設定してクロノアンペロメトリーを行うと、GSHからの酸化電流は測定できるが、GSSGからの酸化電流は実質的に測定できない。すなわち、このような電圧でクロノアンペロメトリーを行うとGSHを選択的に測定することができる。したがって本発明の装置は、好ましくは微小電極により、還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流は測定できるが、酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流は実質的に測定できない電圧を印加して用いる。本発明のグルタチオン検出のためのクロノアンペロメトリー測定では、例えば参照電極である銀塩化銀に対し導電性ダイヤモンド電極の電位を1.0〜1.5Vに保つことにより還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に高感度で検出することができる。
本発明の装置を用いてクロノアンペロメトリー測定を行う場合に「GSHからの酸化電流は測定できるが、GSSGからの酸化電流は実質的に測定できない」とは、同じ濃度のGSHとGSSGを比較に用い、所定の電圧の印加開始後の同一時点において比較した場合にGSHからの酸化電流をシグナルとしGSSGからの酸化電流をノイズとすると、シグナル:ノイズ比が10:1以上となることをいう。好ましくは、該シグナル:ノイズ比は20:1以上である。より好ましくは、該シグナル:ノイズ比は50:1以上であり、さらに好ましくは100:1以上である。
生体内のGSHが酸化ストレス等によりGSSGに酸化されても、通常、直ちにグルタチオンレダクターゼの作用によりGSHに再度還元される。したがって、生きた細胞中のGSH濃度は通常、GSSGの濃度よりも非常に高い。そうすると生体内のGSH濃度を測定する場合、系に存在するGSSGの濃度は微量であると考えられるので、上記シグナルノイズ比が10:1であっても癌の評価や検出、診断目的での測定精度としては十分であると考えられる。シグナルノイズ比が20:1以上であれば好ましいことは言うまでもない。
また、本発明の装置を用いてクロノアンペロメトリーを行う場合に「GSHからの酸化電流は測定できるが、GSSGからの酸化電流は実質的に測定できない」とは、1.3Vの電圧の印加開始から30秒後において、10mMのGSHからの酸化電流が1.0E-08以上であり、かつ10mMのGSSGからの酸化電流が5.0E-09未満であることをもいう。
また、本発明の装置を用いてクロノアンペロメトリーを行う場合に「GSHからの酸化電流は測定できるが、GSSGからの酸化電流は実質的に測定できない」とは、1.5Vの電圧の印加開始から30秒後において、10mMのGSHからの酸化電流が8.0E-08以上であり、かつ10mMのGSSGからの酸化電流が2.0E-08未満であることをもいう。
生体内のGSHが酸化ストレス等によりGSSGに酸化されても、通常、直ちにグルタチオンレダクターゼの作用によりGSHに再度還元される。したがって、生きた細胞中のGSH濃度は通常、GSSGの濃度よりも非常に高い。そうすると生体内のGSH濃度を測定する場合、系に存在するGSSGの濃度は微量であると考えられるので、クロノアンペロメトリーを行う場合に1.5Vの電圧の印加開始から30秒後において、10mMのGSHからの酸化電流が8.0E-08以上であり、かつ10mMのGSSGからの酸化電流が2.0E-08未満であれば癌の評価や検出、診断目的での測定精度としては十分であると考えられる。
本発明の装置を用いたin vivoでのGSH又はGSSG濃度の測定は、例えば、本発明電極を癌又はその疑いのある組織に刺入し、参照電極及び対電極を用いたクロノアンペロメトリー測定により行うことができる。GSHからの酸化電流をGSSGからの酸化電流から分離して選択的かつ迅速に測定することができる電圧を設定し、その電圧で印加すればよい。当業者であれば、目的に応じてパルスボルタンメトリー、サイクリックボルタンメトリーといった電圧を変動させる手法を用いて分子を選別して測定することもできる。
本発明の電極は、連続的又は反復的な測定により電極部に高分子や有機分子等の付着物が膜を形成しうる。そうすると電極の性能が低下しうるが、このような場合には、負の電圧を印加することによりカソードについて回復処理を行うことができる。回復処理は例えば-0.1〜-10V、例えば-3Vの電圧を3〜60分、例えば20分に渡り印加することにより行う。回復処理は、100回の測定毎、10回の測定毎、さらには1回の測定毎に行うことができる。in vivoで測定を行う場合は、再現性や測定値の信頼性の観点から、回復処理は1回の測定毎に行うことが好ましい。
本発明の方法の測定対象である被検試料は、GSH及び/又はGSSGを含むか、又は含む疑いのあるものであれば特に限定されないが、例示すればあらゆる生物学的試料、例えば組織、正常組織、癌組織、癌幹細胞由来組織、癌の疑いのある組織、治療(化学療法、放射線療法、免疫学的療法等を含む)を施した組織、生検サンプル、組織試料、細胞培養物(幹細胞、癌幹細胞等)、細胞破砕試料、体液、全血、血漿、血清、リンパ液、関節液、髄液、骨髄液、胸水、腹水、涙液、眼房水、硝子体液等を挙げることができる。測定対象又は試料の由来は特に限定されないが細胞、動物、哺乳動物、マウス、ラット、ヒト等が挙げられる。
本発明の装置を用いてクロノアンペロメトリー測定を行うと、in vitro又はin vivoで、GSHの電流をGSSGの電流と分離して選択的に高感度で測定することができる。また、本発明の装置を用いると、GSHを迅速に測定することができ、細胞内のGSH濃度をin vivoでリアルタイムで測定することもできる。in vivoで測定を行う場合には、測定対象である対象組織に電極部を刺入するだけでよく、したがって本発明の方法は侵襲性が低い。また、従来法のように生検サンプルを取得して破砕後、分離カラムにかけたり蛍光分析を行ったりといった煩雑な工程を要しない。in vitroで測定を行う場合、測定に用いる溶媒は、測定対象が溶解するものであれば、特に限定されない。本発明では溶媒は主として水系を用いる。本発明の測定に用いる溶質は通常、0.1〜100 mmol/L前後とする。測定を行う溶液には、測定する物質の100倍程度の量の支持電解質を加える。支持電解質はイオン性物質であり、特に限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、硝酸カリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。好ましくは支持電解質はPBSである。
癌の評価とは、癌の検出や癌の酸化的ストレス耐性の評価や癌の治療効果の評価を含み、本発明の装置により、癌の評価を行うための検査を行うことができる。癌の検出とは、組織又は細胞のGSH濃度を測定することにより、癌の存在を特定することをいう。これは癌細胞ではGSH濃度が正常な組織と比較して非常に高いことに基づく(G.K. Balendiran, R. Dabur, D. Fraser, Cell Biochem. Funct., 22 (2004) 343.)。すなわち、組織又は細胞のGSH濃度を測定し、正常組織と比較してGSH濃度が高い場合、当該組織又は細胞が癌であることが分かる。癌の有無を検出することにより癌の診断を行うことができる。癌の酸化的ストレス耐性の評価とは、ある組織又は細胞が癌であること又は癌であったことを特定した上で、当該癌の酸化的ストレスに対する耐性を評価することをいい、癌の治療効果の評価とは、治療に対して癌が耐性を有するか否かを検査することを含む。癌の酸化的ストレス耐性の評価は、例えば癌細胞又は癌細胞内のGSH濃度により決定することができ、ある癌細胞又は癌細胞内のGSH濃度が正常細胞内のGSH濃度又は他の癌細胞若しくは癌細胞内のGSH濃度よりも高い場合、前記正常細胞又は他の癌細胞と比較して当該癌の酸化的ストレス耐性は高い、と評価、判定することができる。例えば、後記の実施例5に示されるように、本発明の装置を用いて組織中のGSHを測定した場合、癌を有しない被検体では電圧を印加しても電流はほとんど測定されないが、癌を保持している被検体では電流が測定される(図7参照)。このことは、癌組織において多量のGSHが存在していることを示している。また、癌を保持する被検体を放射線照射により治療した後に本発明の装置を用いて組織中のGSHを測定した場合、放射線照射量に応じて、測定される電流が小さくなり、このことは癌治療によりGSH量が少なくなることを示している(図8参照)。また裏を返せば、GSHが多量に含まれることが知られている癌を保持している被検体に電圧を印加すると電流が測定され、癌を有しない被検体では電流がほとんど測定されないこと、及び放射線照射により癌細胞が減少した被検体に電圧を印加すると測定された電流が未照射の被検体について測定された電流と比較して減少したことから、本発明の装置を用いてin vivoで測定している電流はGSHに起因するものであることが分かる。
治療に対する耐性とは、化学療法、放射線療法、免疫学的療法等の処置に対して癌細胞又は癌組織の感受性が低下若しくは喪失すること、又は感受性の低下の程度をいう。すなわち、癌組織又は細胞に対して治療を行い、治療の前後でGSH濃度を測定することにより、治療の効果を調べ、治療に対して耐性であったか、又は耐性でなかったかを検査することができる。この場合、治療前に癌組織又は細胞のGSH濃度が高いが、治療後にはGSH濃度が有意に低下していれば該治療は有効であったと評価され、治療後にもGSH濃度が有意に低下していなければ、該治療に対して癌は耐性であると評価される。
本発明の装置を用いることにより、癌の評価を行うに当たり、リアルタイムでGSH濃度を測定できることができる。本発明の方法が迅速に、特にリアルタイムで、生体内GSH濃度を測定しうることから、癌に治療(放射線療法、化学療法、免疫学的療法等)を施す前後で前記癌のGSH濃度を測定し、これにより前記癌の治療耐性を評価することができ、
治療レジメに役立てることができる。このような評価は従来技術では実現できなかったものである。
本発明は、上記の装置を用いて、癌を評価する方法も包含する。
以下の実施例は、例示のみを意図したものであり、何ら本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製する。グルタチオン(GSH)、グルタチオンジスルフィド(GSSG)、リン酸水素二ナトリウム・12水和物及びリン酸水素二ナトリウム・2水和物は和光から購入した。これらの化合物はさらに精製することなく使用した。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、記載する手順を改変することが可能である。
[実施例1] ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)微小電極の作製
BDD微小電極は、マイクロ波プラズマ化学気相成長(MPCVD)装置(ASTeX社)を用いて作製した。炭素源としてアセトンを使用し、ホウ素源としてB(OCH3)3を使用した。ドープするB(OCH3)3の原料に占める濃度は0.1%w/wであった。表面形態と結晶構造は走査型電子顕微鏡を用いて特徴付けした(図1参照)。MPCVDチャンバー内で2.5kWにて、高純度水素を担体ガスとして使用し、ホウ素ドープダイヤモンドを、タングステン針(直径20μm)に堆積させた。ガラス毛管を用いて針の一部を分離し処理表面領域を規定した。これにより約1mmが毛管で被われない状態のままとなった。薄膜の品質はラマン分光法により確認した。BDD微小電極は、2-プロパノール中で約10分間超音波で予備処理し、次いで高純度の水で洗浄することにより、MPCVDチャンバー内での堆積後にBDD薄膜内に残存した可能性のある有機不純物を除去した。このようにして作製したBDD微小電極を以下の実験に用いた。
[実施例2] 電気化学的測定方法
in vitro電気化学的測定は、AUTOLAB PGSTATポテンシオスタットを用いて単一コンパートメントセルで室温(23℃)で行った。参照電極はAg/AgClであり、対電極は白金線であり、作用電極はBDD微小電極であった。タングステン針をシリンダーとすると、作業する幾何学的領域(面積)は約6.3・10-4cm2であった。グルタチオンの電気化学的検出は、0.1M リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で行った。このPBSはリン酸水素二ナトリウム・12水和物及びリン酸水素二ナトリウム・2水和物をpHが7.4となるまで混合することで調整した。本明細書に記載する電圧はすべて、特に断らない限りAg/AgCl参照電極に対する電圧である(0.2V 対 SHE)。
BDD微小電極を使用し、0.1M PBS中の種々の濃度のGSH(濃度範囲0〜10mM)について、100mV s-1で記録したサイクリックボルタンメトリー測定の結果を図1Aに示す。図1Aにおいて、電位窓0V〜2.3V対Ag/AgClである。図1Aを見ると、GSHのGSSHへの酸化の開始電位は約1.25Vに位置することが示されている。また、1Vでもわずかな電位が図1Aから確認できる。GSHのGSSHへの酸化を式で表すと、
2GSH→GSSG+2H++2e
となる。この式によれば所定の電圧で記録される酸化電流はGSH濃度の増大により大きくなる。この特性を利用して、GSH決定のためのキャリブレーション曲線を引くことができる。2.3Vの電位についてのそのようなキャリブレーション曲線を図1Bに示す(GSHの不在下で0.1M PBS中で測定したバックグラウンド電流を各点から除算した。原点を通るように直線回帰をフィッティングした)。図1Bのグラフは、図1Aの2.3Vでの電流をGSH濃度に対してプロットした。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。図1Bからは、この濃度範囲でGSHについて正確なキャリブレーション曲線(傾斜:3.03×10-4±0.09×10-4、r2:0.988)を取得できることが示された。図1Bのデータから、この手法による検出の下限は、標準偏差の3倍をとり、0.3mMと推算された。
Barrancoらの報告によると腫瘍組織において測定されるGSH濃度は約60mMにもなる。したがって、図1の測定をより高いGSH濃度で行った。0〜80mMの濃度範囲でのGSH検出のためのキャリブレーション曲線を図2に示す。すなわち、BDD微小電極を使用し、種々の濃度のGSH(0〜80mM)を含有する溶液を用いてサイクリックボルタンメトリー測定において2.3V対Ag/AgClにて記録した電流を、GSH濃度に対してプロットした結果を示す。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。このように図2の結果からは、高いGSH濃度についてもサイクリックボルタンメトリー測定により得られた曲線の精度が許容可能なものであることがわかる(傾斜:3.36×10-4±0.06×10-4、r2:0.998)。
[実施例3] 回復処理
GSH溶液についてBDD微小電極で連続的にボルタンメトリースキャンを行ったところ、電極材料の活性は連続的な測定と共に低下した。これはおそらく電極材料表面に高分子膜が形成されることに起因し、ドーパミンのような他の化合物について観察されているのと同じ現象であろう(T. Yano, D.A. Tryk, K. Hashimoto, A. Fujishima, J. Electrochem. Soc., 145 (1998) 1870; A. Ciszewski, G. Milczarek, Anal. Chem., 71 (1999) 1055.)。低濃度のGSH(2mM)についてさえも、2.3Vでの酸化電流の記録は、5回の連続的なボルタンメトリースキャンの後に約8%低下した。しかしながら、BDD電極の活性は、カソード処理により回復可能である。回復処理の結果を図3に示す。0.1M PBS溶液中で、(a)GSH検出測定前、(b)10mM GSHの存在下で100回のボルタンメトリースキャンを行った後、(c)GSH検出測定の後に20分のカソード処理を-3Vで行った後、の記録をそれぞれ示す。図3の(b)からは、PBS中で記録される電流がGSH検出測定により約80%低下したことが示されている。しかしながら図3の(c)では、カソード処理によってBDD電極の活性が回復可能であることも示されている。図3において電位窓は0V〜2.3V対Ag/AgClであり、スキャン速度は0.1Vs-1であった。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。
[実施例4] GSSGの検出
GSSGの存在下で行ったサイクリックボルタンメトリー測定の結果からは、キャリブレーションプロットのための電位値を2.3Vとすると、GSSGを正確に検出することができることが示された(図4)。図4Aは低濃度(0〜10mM)のGSSGについてのキャリブレーション曲線を示しており、傾斜は1.8×10-4±0.07×10-4でありr2は0.988である。図4Bは高濃度(0〜80mM)のGSSGについてのキャリブレーション曲線であり傾斜は1.12×10-4±0.03×10-4であり、r2は0.996である。図4ではBDD微小電極を使用し、種々の濃度のGSSG(0〜10mM又は0〜80mM)を含有する溶液を用いて、サイクリックボルタンメトリー測定において2.3V対Ag/AgClにて記録した電流をGSSG濃度に対してプロットした結果を示す。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。これらの結果からは、GSHについて用いたのと同じ手法によってGSSGも検出可能であることが分かる。
癌の正確な評価を行うには、健常な細胞及び癌細胞における還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の濃度を区別できることが有利である。図4を見るとGSSGについてキャリブレーションプロットのための電圧値を2.3Vとすると電流が観察されている。この結果をGSHについての測定結果と重ね合わせると図5のようになり、2.3VではGSHについてもGSSGについても電流が測定される。図5に示すのは-2.5V〜2.3V対Ag/AgClの電位窓である。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。この事例ではキャリブレーションプロットのための電圧値を2.3VとするとGSHとGSSGを分離することはできないと考えられる。
しかしながら図5に示されるように、GSHとGSSGとでは電流が流れ始める電圧が若干異なる。したがって電圧を適当に選択(この事例では1.0V〜1.5V)し、クロノアンペロメトリー測定を行うと、GSHからの酸化電流のみが検出され、GSSGからの酸化電流と分離することが可能となる。
図6Aは、0〜10mM GSHを含む0.1M PBS溶液について、1.3Vでクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示す。すなわち図6Aは10秒間にわたり0Vを印加し、その後1.3V対Ag/AgClの電位ステップを行った結果である。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。結果は、GSH濃度の増大と共に、アノード電流記録が増大することを明確に示している。次に図6Aに示した測定結果から引いたGSH検出のためのキャリブレーション曲線を図6Bに示す。図6Bでは印加から30秒後の電流強度をGSH濃度の関数としてプロットした(白抜のダイヤ記号)。同じ条件下でGSSGについて作成したキャリブレーション曲線を比較のために示す(白抜の四角記号)。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。図6Bに示されるように、この手法を用いると高度に正確なキャリブレーションプロットをGSHについて作成することができる(傾斜:3.69×10-6±0.09×10-6, r2: 0.997)。また図6Bによると、0.1M PBS中の、10mMのGSSGの存在下及び不在下での電流強度は、GSHに関するプロットと比較してほぼ無視できる。したがってこの手法を用いると、還元型グルタチオンの検出を酸化型グルタチオンの検出と分離することができ、すなわち、選択的にGSHを測定することができる。
図6Cは、0〜10mM GSH又はGSSGを含む0.1M PBS溶液について、10秒間にわたり0Vを印加し、その後1.5V対Ag/AgClの電位ステップを印加したクロノアンペロメトリー測定結果に基づき作成したGSH及びGSSGについてのキャリブレーション曲線を示す図である。支持電解質は0.1M PBSであり、測定温度は23℃であった。図6Cでは印加から30秒後の電流強度をGSH濃度の関数としてプロットした(I印のダイヤ記号)。同じ条件下でGSSGについて作成したキャリブレーション曲線を比較のために示す(白抜の四角記号)。図6Cによると、0.1M PBS中の、10mMのGSHからの酸化電流は8.0E-08以上であるのに対して10mMのGSSGからの酸化電流は2.0E-08未満でありほぼ無視できる。したがってこの条件でも、還元型グルタチオンの検出を酸化型グルタチオンの検出と分離することができ、すなわち、選択的にGSHを測定することができる。
[実施例5] in vivo電気化学的測定方法及び結果
用いた参照電極はAg/AgClであり、対電極は銀線であり、作用電極はBDD微小電極であった。その他は実施例2と同様であった。
図7は免疫不全マウス内で1.3Vで記録したクロノアンペロメトリー測定を示す。測定は健康な組織内(健康組織マウス1)及び3匹の異なるマウスに同種類のヒト扁平上皮癌細胞株HSC-2が接種され2週間経過したもの(マウス1腫瘍、マウス2腫瘍、マウス3腫瘍)について行った。図7はBDD微小電極を用いて1.3V対Ag/AgClで記録したクロノアンペロメトリー測定結果を示している。具体的には、マウス1健康組織(側部)(図7中の(1))、マウス1のHSC-2移植腫瘍内部(図7中の(2))、マウス2のHSC-2移植腫瘍内部(図7中の(3))、及びマウス3のHSC-2移植腫瘍内部(図7中の(4))についての結果を示す。全ての腫瘍は測定の2週間前に接種されたものである。測定温度は37℃であった。このように図7の結果は、測定を腫瘍内で行った場合に、健康な組織と比較してアノード電流が増大することを示す。また、3匹の異なる個体について類似の条件下で行った測定が類似する結果をもたらしたことから、本発明の方法は再現性がよいことが証明された。記録された種々の電流の間の差異が、ほぼ組織内のGSH濃度の違いにのみ起因するのであれば、本発明の方法を用いて腫瘍のin vivo評価を行うことができることを、この測定結果は証明している。
BDD電極のバイオ被毒は1回の測定後にすら生じ、これは健康な組織及び腫瘍組織について実施される測定の間の電流の差を減少させる。したがって、各測定の間に、0.1M PBS中でカソード処理(20分に渡る-3Vの処理)を行うことが好ましい。さらに、本発明の方法を用いて信頼できる結果を得たい場合には、in vivo電流測定を継続するのは5秒未満とすることが好ましい。
Ashwood-Smith らの報告によると、X線照射は生きた組織中のGSHの量を著しく低減させる(M.J. Ashwood-Smith, Int. J. Rad. Biol., 3 (1961) 125)。そこで本発明の方法を用いて腫瘍内部でのGSH濃度の減少を検出できるかどうか評価するために、実験に用いた3匹のマウスのうちの2匹について異なるレベルで(2Gy及び6Gy)X線照射を行った。3時間後に3匹のマウス(うち2匹のみをX線照射)のHSC-2移植腫瘍内部でGSH検出測定を行った。結果を図8に示す。すなわち、図8は、BDD微小電極を用いて1.3V対Ag/AgClにて記録したクロノアンペロメトリー測定結果を、図7の結果と比較して示す図である。記録はマウス1のHSC-2移植腫瘍内部(未処置、測定は図7に示す結果の3時間後に行った、図8の(5))、マウス2のHSC-2移植腫瘍内部(腫瘍に2分間2GyにてX線照射を行ってから3時間後の測定、図8の(6))、及びマウス3のHSC-2移植腫瘍内部(腫瘍に2分間6GyにてX線照射を行ってから3時間後の測定、図8の(7))について行った。測定温度は37℃であった。図8によると、X線照射しなかったマウスの電流強度は変わらなかったが、X線照射したマウスの電流強度は照射後に著しく減少した。また、電流強度は、X線放射の強度を強くするに従い、大きく減少した。この結果は、本発明の方法を用いて、具体的な治療の前後の癌におけるGSH濃度の変化を検出することができることを示している。

Claims (13)

  1. 組織又は細胞のGSH濃度を測定し、癌を評価するためのものであり、一定の電圧を印加してクロノアンペロメトリー測定を行う装置を備えている電気化学的測定装置であって、
    ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、及びケイ素(Si)からなる群より選択される不純物がドープされた導電性ダイヤモンドが蒸着した微小電極を含み、
    該微小電極により、還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流は測定できるが、酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流は実質的に測定できない電圧を印加し、
    in vitro又はin vivoで還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に検出する、前記装置。
  2. 不純物がホウ素(B)である、請求項1に記載の装置。
  3. 同じ濃度のGSHとGSSGを比較に用い、該電圧の印加開始後の同一時点において比較した場合に還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流をシグナルとし酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流をノイズとするとシグナル:ノイズ比が10:1以上である、請求項1又は2に記載の装置。
  4. Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.0〜1.5Vである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
  5. Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.35〜1.45Vである、請求項4に記載の装置。
  6. 癌組織又は癌細胞に治療を行う前後で、該組織又は細胞のGSH濃度を測定し、前記癌の治療に対する耐性を評価するための請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
  7. 組織又は細胞のGSH濃度を測定し、癌を評価するためのものであり、一定の電圧を印加してクロノアンペロメトリー測定を行う電気化学的測定方法であって、
    ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、及びケイ素(Si)からなる群より選択される不純物がドープされた導電性ダイヤモンドが蒸着した微小電極を用い、
    該微小電極により、還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流は測定できるが、酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流は実質的に測定できない電圧を印加し、
    還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)が混在する試料中の還元型グルタチオン(GSH)を選択的に検出する前記方法。
  8. in vitroで行う、請求項に記載の方法。
  9. 不純物がホウ素(B)である、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 同じ濃度のGSHとGSSGを比較に用い、該電圧の印加開始後の同一時点において比較した場合に還元型グルタチオン(GSH)からの酸化電流をシグナルとし酸化型グルタチオン(GSSG)からの酸化電流をノイズとするとシグナル:ノイズ比が10:1以上である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.0〜1.5Vである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. Ag/AgClを参照電極として電圧を表すときに、装置が印加する電圧が1.35〜1.45Vである、請求項11に記載の方法。
  13. 癌組織又は癌細胞に治療を行う前後で、該組織又は細胞のGSH濃度を測定し、前記癌の治療に対する耐性を評価するための請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
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