以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1は、半導体装置200を半導体基板100の表面から見た平面図である。半導体装置200は、半導体基板100を備える。半導体基板100には、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20が設けられる。半導体基板100には、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20をx‐y平面において囲むように耐圧構造部30が設けられる。
本明細書において、x方向はy方向に垂直な方向である。z方向は、x方向およびy方向により規定される平面に垂直な方向である。z方向は、必ずしも重力の方向と平行でなくてよい。半導体基板100のx方向およびy方向の長さは、そのz方向の長さよりも十分に大きい。本明細書においては便宜的に、半導体基板100の+z側の面を表(おもて)面と称し、その反対側の面を裏面と称する。x‐y平面は半導体基板100の表面および裏面に平行な面である。
本例の半導体装置200は、それぞれx方向よりもy方向が長いSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を有する。つまり、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20は、y方向に長いストライプ形状を有する。半導体装置200は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間に境界部12を有する。
半導体装置200は、x方向の端部にSJ‐MOSFET部10を有する。半導体装置200はx方向に沿って、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との繰り返し構造を有する。また半導体装置200は、x方向の反対側の端部に、SJ‐MOSFET部10を有する。つまり、半導体装置200は、x方向におけるSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20の繰り返し構造において、x方向の両端部にはSJ‐MOSFET部10を有する。
半導体装置200は、x方向に沿ってSJ‐MOSFET部10とIGBT部20とを繰り返し有するので、半導体基板100の表面に垂直なx‐z面で半導体装置200を切断した断面において、SJ‐MOSFET部10が挟む領域に、IGBT部20を有する。なお、SJ‐MOSFET部10が挟む領域とは、2つのSJ‐MOSFET部10によりx方向の両側が挟まれたIGBT部20が設けられる領域を意味する。
SJ‐MOSFET部10は、1以上の超接合型トランジスタ領域を有する。また、IGBT部20は、1以上のIGBT領域を有する。ただし、SJ‐MOSFET部10は、超接合型トランジスタ領域のみを有しIGBT領域は有しない。また、IGBT部20は、IGBT領域のみを有し超接合型トランジスタ領域は有しない。
本明細書において、超接合型トランジスタ領域は、超接合型トランジスタを構成する最小単位の領域を意味する。また、IGBT領域は、IGBTを構成する最小単位の領域を意味する。IGBT領域の耐圧は、超接合型トランジスタ領域の耐圧より高い。例えば、IGBT領域の耐圧は約700Vであり、超接合型トランジスタ領域の耐圧は約650Vである。なお、超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域の詳細な構成については次図の説明において述べる。
本明細書において、2以上の超接合型トランジスタ領域を有する超接合型トランジスタ領域の群をSJ‐MOSFET部10とする。同様に、2以上のIGBT領域を有するIGBT領域の群をIGBT部20とする。
本例の半導体装置200は、x方向に沿ってSJ‐MOSFET部10とIGBT部20とを繰り返し有するので、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とはそれぞれ、半導体基板100の異なる場所に設けられる。具体的には、1以上のIGBT領域は、2以上の超接合型トランジスタ領域が挟む領域に設けられる。また、半導体基板100のx方向の両端部には超接合型トランジスタ領域が設けられる。
半導体装置200の電源をオンにして、超接合型トランジスタ領域のドレイン‐ソース間電圧(VDS)およびIGBT領域のコレクタ‐エミッタ間電圧(VCE)を徐々に上昇させると、所定の電圧値を境にして、IGBT領域を流れる電流(ICE)が超接合型トランジスタ領域を流れる電流(IDS)よりも多くなる。超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域への負荷は、電流(ICEまたはIDS)と電圧(VDSまたはVCE)との積で決まる。それゆえ、当該所定の電圧値よりも高い電圧をかける場合、超接合型トランジスタ領域の負荷はIGBT領域の負荷よりも小さくなる。
半導体装置200の電源をオフすると超接合型トランジスタ領域およびIGBT領域は逆バイアス状態となる。逆バイアス時において、オン状態での負荷が小さい方が破壊耐量は高くなる。所定の電圧値よりも高い電圧をかけたオン状態では、超接合型トランジスタ領域の負荷はIGBT領域の負荷よりも小さい。それゆえ、逆バイアス時において、超接合型トランジスタ領域の破壊耐量はIGBT領域の破壊耐量よりも高い。
半導体基板100において、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とは電気的に並列に接続されている。超接合型トランジスタ領域は、逆回復時にダイオードとして機能する。超接合型トランジスタ領域が少な過ぎると、半導体装置200は逆回復時にハードリカバリー特性となる。そこで、ある程度のソフトリカバリー特性を得るべく、一定数の超接合型トランジスタ領域が必要となる。また、超接合型トランジスタ領域の数がIGBT領域の数よりも多すぎると、半導体装置200においてIGBTの特性が失われる。それゆえ、両者のバランスが求められる。
半導体装置200は、超接合型トランジスタ領域が挟む領域に、2以上のIGBT領域を有するIGBT部20を有する。例えば、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20とにおいて、2つの超接合型トランジスタ領域と2つのIGBT領域とをそれぞれ設けてよい。なお、IGBT部20におけるIGBT領域の数とSJ‐MOSFET部10における超接合型トランジスタ領域の数との比は、製品の用途によって異なるが、1:1から3:1となることが好ましい。
本例では、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきではなく、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを複数個おきに設ける。これにより、両者を1つおきに設ける場合と比較して境界部12の割合を減らすことができる。
半導体基板100に超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを有する半導体装置200では、低電圧領域では超接合型トランジスタ領域の出力特性が得られ、かつ、高電圧ではIGBT領域の出力特性が得られることが好ましい。しかし、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成では、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とが干渉し合うことにより異常な電圧‐電流特性(つまり、特性のとび)が発生し得る。それゆえ、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成は望ましくない。本例では、2以上の超接合型トランジスタ領域を有するSJ‐MOSFET部10と2以上のIGBT領域を有するIGBT部20とを有するので、超接合型トランジスタ領域とIGBT領域とを1つおきに交互に設ける構成と比較して、異常な電圧‐電流特性(特性のとび)を抑えることができる。
図2は、半導体装置200をx‐z面に平行に図1のA1‐A2で切断した断面図である。当該断面図における半導体装置200は、SJ‐MOSFET部10と、IGBT部20と、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間にある境界部12と、耐圧構造部30とを有する。なお本例では、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型として記載する。しかし他の例においては、これを反転させて第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。特に元素および作成手法を明示しない限り、半導体基板100のn型およびp型は、周知の元素および周知の作成手法により形成することができる。
SJ‐MOSFET部10は、2以上の超接合型トランジスタ領域14を有する。本例では、SJ‐MOSFET部10は5つの超接合型トランジスタ領域14を有する。ただし、図の見やすさを考慮して2つの超接合型トランジスタ領域14‐1および14‐2だけに符号を付している。超接合型トランジスタ領域14は、p型ベース層42、コンタクト領域44、ソース領域45、ゲート電極50、ゲート絶縁膜52、および、x方向に隣接するn型カラム54とp型カラム56とを含む。
本例では、p型ベース層42はp−型不純物を有し、コンタクト領域44はp+型不純物を有し、ソース領域45はn+型不純物を有する。また、x方向に隣接するn型カラム54はn−型不純物を有し、p型カラム56はp−型不純物を有する。
2つの隣接する超接合型トランジスタ領域14‐1および14‐2は、1つのn型カラム54または1つのp型カラム56を共有する。本例では、超接合型トランジスタ領域14‐1と14‐2とは、1つのn型カラム54を共有する。また、2つの隣接する超接合型トランジスタ領域14‐1および14‐2は、1つのゲート電極50およびゲート絶縁膜52を共有する。
IGBT部20は、2以上のIGBT領域24を有する。図2に示す部分においては、IGBT部20は6つのIGBT領域24を有する。ただし、図の見やすさを考慮して2つのIGBT領域24‐1および24‐2だけに符号を付している。IGBT領域24は、p型ベース層42、コンタクト領域44、エミッタ領域46、ゲート電極50、ゲート絶縁膜52、および、n型ドリフト層40を含む。なお、エミッタ領域46はn+型不純物を有する。
隣接する2つのIGBT領域24‐1および24‐2はn型ドリフト層40を共有する。また、隣接する2つのIGBT領域24‐1および24‐2は、1つのゲート電極50およびゲート絶縁膜52を共有する。
なお、逆バイアス時において、超接合型トランジスタ領域の耐圧をIGBT領域の耐圧よりも低くするには、必要に応じて隣接するIGBT領域のゲート電極50間の間隔を隣接する超接合型トランジスタ領域のゲート電極50間の間隔より広くすることにより調整できる。また、IGBT領域のn型ドリフト層40の不純物濃度を低くすることでもIGBT領域の耐圧を高くすることができる。
(境界部12)本例の境界部12のn型ドリフト層40は、半導体装置200に順電圧を印加してオンさせる場合、SJ‐MOSFET部10のn型カラム54よりもキャリア量が多く、IGBT部20のn型ドリフト層40よりもキャリア量が少ない領域である。IGBT領域24のキャリアは正孔および電子であり、超接合型トランジスタ領域14のキャリアは電子のみである。それゆえ半導体装置200を順電圧で動作させる場合、IGBT領域24のキャリアの量は、超接合型トランジスタ領域14のキャリア量よりも多い。例えば、IGBT領域24のキャリア量は、超接合型トランジスタ領域14のキャリア量よりも一桁多い。
逆バイアス時において、仮に境界部12が無くSJ‐MOSFET部10とIGBT部20とが接合して連続している場合には、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部分のn型ドリフト層40は、キャリア量が急峻に変化する部分となる。この場合、境界部分のn型ドリフト層40には電界が強くかかるので、半導体装置200はブレークダウンして破壊される可能性がある。
そこで、境界部12のn型ドリフト層40に、順電圧印加時においてn型カラム54のキャリア量とn型ドリフト層40のキャリア量との中間のキャリア量を有する領域を設ける。本例では、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12におけるドリフト領域としてのn型ドリフト層40に、ライフタイムキラーが注入されている欠陥領域58を有する。ライフタイムキラーが注入されているとは、製造段階において半導体基板100の表面側および/または裏面側から電子線、プロトンまたはヘリウムを注入することにより、n型ドリフト層40に格子欠陥を有する欠陥領域58が形成されることを意味してよい。
境界部12は、欠陥領域58を有するので、半導体装置200の逆バイアス時に、n型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、逆バイアス時に境界部12のn型ドリフト層40での電界集中を防ぎ、半導体装置200が破壊されることを防ぐことができる。
(表面構造)半導体基板100の表面側の構造は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20とで同じである。本例のゲート電極50は、トレンチ型のゲート電極である。ゲート電極50は、ゲート絶縁膜52により半導体基板100から電気的に絶縁される。p型ベース層42およびコンタクト領域44は2つのゲート電極50の間に設けられる。
超接合型トランジスタ領域14では、コンタクト領域44とゲート電極50との間にソース領域45が設けられる。IGBT領域24では、コンタクト領域44とゲート電極50との間にエミッタ領域46が設けられる。
絶縁層60はゲート電極50よりも表面側に設けられる。表面電極62は、絶縁層60よりも表面側に設けられる。表面電極62は、コンタクト領域44、ソース領域45およびエミッタ領域46のうち、少なくともコンタクト領域44に接する。
境界部12の表面側の構造は、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20とほぼ同じである。ただし、境界部12とIGBT部20との間には、エミッタ領域46を設けない。これにより、境界部12がIGBT領域24として動作することを防止する。
(裏面構造)FS層70は、フィールドストップ(Field Stop)層である。FS層70は、プロトン(H+)またはセレン(Se)をドーズして熱処理することにより形成されてよい。本例のFS層70は、n+領域である。FS層70は、半導体装置200に逆バイアス時に、空乏層がコレクタ層80に到達するのを防ぐ。なお、FS層70には、欠陥領域58の一部が形成される。
コレクタ層80は、FS層70よりも裏面側に設けられる。つまり、コレクタ層80は、FS層70よりも裏面側に設けられる。コレクタ層80は、IGBT部20のコレクタ層として機能する。本例のコレクタ層80は、p+型不純物を有する層である。
ドレイン層82は、FS層70よりも裏面側に設けられる。ドレイン層82は、SJ‐MOSFET部10のドレイン層として機能する。本例のドレイン層82は、n+層である。
(SJ‐MOSFET部10の動作)SJ‐MOSFET部10の動作を簡単に説明する。SJ‐MOSFET部10のゲート電極50に所定の電圧が印加されると、ゲート絶縁膜52とp型ベース層42との境界近傍に反転層が形成される。また、半導体装置200に順電圧が印加されている場合、ソース領域45には、ドレイン層82よりも高い所定の電圧が印加される。これにより、コンタクト領域44、ソース領域45、p型ベース層42に形成された反転層、n型カラム54、FS層70およびドレイン層82を順に通って、電子が表面電極62から裏面電極90へ流れる。
(IGBT部20の動作)IGBT部20の動作を簡単に説明する。IGBT部20のゲート電極50に所定の電圧が印加される場合、ゲート絶縁膜52とp型ベース層42との境界近傍に反転層が形成される。また、半導体装置200に順電圧が印加されている場合、エミッタ領域46には、コレクタ層80よりも高い所定の電圧が印加される。これにより、エミッタ領域46からn型ドリフト層40に電子が供給され、コレクタ層80からn型ドリフト層40に正孔が供給される。これにより、裏面電極90から表面電極62へ電流が流れる。
(耐圧構造部30)半導体装置200は、超接合型トランジスタ領域14のうち、最も外側の超接合型トランジスタ領域14の外側に設けた耐圧構造部30を備える。耐圧構造部30は、x‐y平面における内周部に設けられる第1耐圧部32と、x‐y平面における外周部に設けられる第2耐圧部34とを有する。第1耐圧部32は、ガードリング47を有する。本例のガードリング47はp+型不純物を有する。ガードリング47は、n型領域48の表面側に設けられる。第1耐圧部32は、絶縁層60に設けられたスリットまたは穴を通じてガードリング47に接続するフィールドプレート64を有する。フィールドプレート64およびガードリング47は、x‐y平面においてSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を囲んでリング状に設けられる。
第1耐圧部32は、SJ‐MOSFET部10と同様に、n型カラム54およびp型カラム56の繰り返し構造を有する。n型カラム54およびp型カラム56は、n型領域48の裏面側端部からFS層70の表面側端部までに渡って存在する。n型カラム54およびp型カラム56の繰り返し構造により、半導体装置200の逆バイアス時、x‐y平面方向への空乏層の広がりを防ぐことができる。また、フィールドプレート64は、半導体基板100の表面に集まってきた表面電荷を収集するので、表面電荷に起因して半導体装置200の耐圧が変化することを防ぐことができる。
第2耐圧部34は、第1導電型領域としてのn型領域48を有する。また第2耐圧部34は、第2導電型カラムとしてのp型領域49を有する。第2耐圧部34のn型領域48からFS層70までの間には、n型ドリフト層40が存在する。p型領域49は、n型ドリフト層40中に間隔を置いて設けられる。p型領域49の端部の深さは、超接合型トランジスタ領域14のp型カラム56の端部の深さよりも浅く設けられる。
なお、p型カラム56の端部の深さとは、p型カラム56のFS層70近傍の端部におけるz座標を意味する。p型領域49の端部の深さとは、p型領域49の裏面側の端部におけるz座標を意味する。端部の深さが浅いとは、FS層70側に位置する端部のz座標を比較した場合に、より半導体基板100の表面側に位置することを意味する。
第1耐圧部32におけるp型カラム56のピッチ幅P1と第2耐圧部34におけるp型領域49のピッチ幅P1とは、同じピッチ幅である。当該ピッチ幅P1は、SJ‐MOSFET部10におけるp型カラム56のピッチ幅P2よりも小さい。これにより、耐圧構造部30のピッチ幅P1をSJ‐MOSFET部10のピッチ幅P2と同じにする場合よりも、逆バイアス時において半導体基板100の端部へ空乏層を広げることができるので、半導体装置200を高耐圧化することができる。
また、p型領域49の端部の深さをp型カラム56の端部の深さよりも浅くすることにより、第2耐圧部34にはp型の領域に比べてn型の領域が大きくなる。それゆえ、半導体装置200の逆バイアス時の空乏層が第1耐圧部32から第2耐圧部34に広がってきた場合に、当該空乏層にはn型ドリフト層40から電子を主とするキャリアが供給される。これにより、空乏層が半導体基板100のx方向端部に達するのを防ぐことができる。
図3は、図1の領域Bにおいて半導体装置200の端部をx‐z面に平行にC1‐C2で切断した平面図である。図3では耐圧構造部30を特に示す。コンタクト領域44から半導体基板100の+x方向の端部まで、x‐y面に平行に切断する領域をD1‐D2とする。また、p型カラム56からp型領域49を通り半導体基板100の+x方向の端部まで、x‐y面に平行に切断する領域をE1‐E2とする。
図4は、図1の領域Bにおいてx‐y面に平行に図3のD1‐D2で切断した平面図(a)、および、図1の領域Bにおいてx‐y面に平行に図3のE1‐E2で切断した平面図(b)を示す。平面図(a)で示す様に、ガードリング47はx‐y平面においてSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を囲むリング状に設けられる。なお、平面図(a)では平面図(b)との比較のためにp型領域49を点線で示すが、D1‐D2断面においてp型領域49は存在しない。平面図(b)で示す様に、p型領域49は、n型ドリフト層40中において格子状に間隔を置いて設けられる。
(第2実施形態)
図5は、半導体装置300を半導体基板100の表面から見た平面図である。半導体装置300は、SJ‐MOSFET部10がIGBT部20を囲むように設けられる点で第1実施形態と異なる。つまり、IGBT領域24は、超接合型トランジスタ領域14が囲む領域に設けられている。なお、本明細書において、SJ‐MOSFET部10がIGBT部20を囲むとは、SJ‐MOSFET部10がx‐y平面におけるIGBT部20の四方全てまたは全ての周囲を囲むことを意味する。その他の点は、第1実施形態と同じである。
本例の半導体装置300は、x‐y平面において矩形のSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を有する。なお、半導体基板100のx‐y平面の形に応じて、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20は長方形としてよく、正方形としてもよい。
半導体装置300は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間に境界部12を有する。境界部12は、第1実施形態と同じ欠陥領域58であってよい。これにより、逆バイアス時に、n型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12のn型ドリフト層40での電界集中を防ぐことができる。
半導体装置300は、第1実施形態と同様に、SJ‐MOSFET部10に設けられた超接合型トランジスタ領域14のうち、最も外側の超接合型トランジスタ領域14の外側に設けた耐圧構造部30を備える。耐圧構造部30は逆バイアス時における半導体基板100の端部への空乏層の広がりを抑えるので、半導体装置300を高耐圧化することができる。
(第3実施形態)
図6は、半導体装置400を半導体基板100の表面から見た平面図である。半導体装置400は、SJ‐MOSFET部10が複数のIGBT部20を囲むように設けられる点で第1および第2実施形態と異なる。その他の点は、第1および第2実施形態と同じである。
本例にいて複数の格子状に設けられたIGBT部20は、SJ‐MOSFET部10に囲まれる。つまり、IGBT部20のx方向およびy方向の両側に、2以上の超接合型トランジスタ領域を含むSJ‐MOSFET部10がそれぞれ設けられる。なお、図では4つのみのIGBT部20を示すが、IGBT部20の数は4よりも多い数であってよい。つまり、2以上のSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20の組がx方向およびy方向に交互に設けられてよい。
本例の半導体装置400は、x‐y平面において矩形のSJ‐MOSFET部10およびIGBT部20を有する。なお、半導体基板100のx‐y平面の形に応じて、SJ‐MOSFET部10およびIGBT部20は長方形としてよく、正方形としてもよい。
半導体装置400は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間に境界部12を有する。境界部12は、第1実施形態と同じ欠陥領域58であってよい。これにより、逆バイアス時に、n型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12のn型ドリフト層40での電界集中を防ぐことができる。
半導体装置400は、第1実施形態と同様に、SJ‐MOSFET部10に設けられた超接合型トランジスタ領域14のうち、最も外側の超接合型トランジスタ領域14の外側に設けた耐圧構造部30を備える。耐圧構造部30は逆バイアス時における半導体基板100の端部への空乏層の広がりを抑えるので、半導体装置400を高耐圧化することができる。
(第1変形例)
図7は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部12の第1変形例である。本例の境界部12の構成は、第1から第3実施形態に適用することができる。本例において、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12には、ドリフト領域としてのn型ドリフト層40の表面側から裏面側まで第2導電型カラムが設けられる。当該第2導電型カラムは、SJ‐MOSFET部10のp型カラム56と同じであってよい。また、コレクタ層80は、境界部12のp型カラム56の裏面側にも設けられる。
本例では、順電圧印加時に境界部12のp型カラム56は、超接合型トランジスタ領域14としてもIGBT領域24としても機能しない。それゆえ、電子はp型カラム56に入らない。しかし、コレクタ層80は境界部12のp型カラム56の裏面側にも設けられるので、正孔はp型カラム56に入る可能性がある。これにより、IGBT領域24のn型ドリフト層40のキャリア量、境界部12のp型カラム56のキャリア量、および、超接合型トランジスタ領域14のn型カラム54のキャリア量の順に、キャリア量を少なくすることができる。したがって、n型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12での電界集中を防ぐことができる。
(第2変形例)
図8は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部12の第2変形例である。本例の境界部12の構成も、第1から第3実施形態に適用することができる。本例において、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12におけるドリフト領域としてのn型ドリフト層40の半導体基板100の表面側に、ダミーのゲート電極51が設けられる。また、コレクタ層80とドレイン層82との境界が、境界部12におけるダミーのゲート電極51の裏面側に設けられる。
ダミーのゲート電極51とは、超接合型トランジスタ領域14およびIGBT領域24のゲート電極50と同じ構造であるが、トランジスタとして機能しないダミーのゲート電極51である。本例では、境界部12におけるダミーのゲート電極51のx方向近傍には、コンタクト領域44、ソース領域45またはエミッタ領域46は設けられない。これにより、順電圧印加時に電子は境界部12のゲート近傍からドレイン層82に入らない。
境界部12に最も近いIGBT領域24では、順電圧印加時に正孔がコレクタ層80からエミッタ領域46に入る。特に、順電圧印加時には、コレクタ層80とドレイン層82との境界付近のコレクタ層80から、境界部12に最も近いIGBT領域24のエミッタ領域46に正孔が入る。これにより、IGBT領域24のn型ドリフト層40のキャリア量、境界部12のn型ドリフト層40のキャリア量、および、超接合型トランジスタ領域14のn型カラム54のキャリア量の順に、キャリア量を少なくすることができる。これにより、n型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12での電界集中を防ぐことができる。
(第3変形例)
図9は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部12の第3変形例である。本例の境界部12の構成は、第1から第3実施形態に適用することができる。本例において、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12には、半導体基板100の表面と平行な方向に拡張された第2導電型ウエルとしての拡張p型ウエル104が設けられる。
本例では、コレクタ層80とドレイン層82との境界が、境界部12とSJ‐MOSFET部10との境界の裏面側に設けられる。また、境界部12とIGBT部20との境界における境界部12の側には、エミッタ領域46を設けない。
順方向電圧印加時において、境界部12の裏面側におけるコレクタ層80から拡張p型ウエル104の方向にむかって、正孔がn型ドリフト層40に入る。これにより当該構成によっても、第2変形例と同様にn型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12での電界集中を防ぐことができる。
(第4変形例)
図10は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部12の第4変形例である。本例の境界部12の構成は、第1から第3実施形態に適用することができる。本例において、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12には、超接合型トランジスタ領域14の第2導電型カラムの端部の深さよりも浅い端部深さの第2導電型カラムを有する。なお、本例の境界部12は、図2および図3の例で記載したn型領域48およびp型領域49を有する。本例では、コレクタ層80とドレイン層82との境界が、境界部12とIGBT部20との境界の裏面側に設けられる。
順方向電圧印加時において、境界部12におけるn型領域48からドレイン層82の方向にむかって、電子がn型ドリフト層40に入る。これにより当該構成によっても、第2変形例と同様にn型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12での電界集中を防ぐことができる。
(第5変形例)
図11は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との境界部12の第5変形例である。本例の境界部12の構成は、第1から第3実施形態に適用することができる。本例において、IGBT領域24と超接合型トランジスタ領域14との境界部12には、超接合型トランジスタ領域14の第2導電型カラムであるp型カラム56の端部の深さよりも1/2程度浅い端部深さを有する第2導電型領域としてのp型領域59を設ける。なお、境界部12の隣り合うゲート電極50の間には、表面側にコンタクト領域44を設けて、裏面側に第1導電型領域としてのn型領域48を設ける。p型領域59は、n型領域48の裏面側においてn型領域48に接して設けられてよい。コンタクト領域44と隣り合う2つのゲート電極50との間の表面側には、ソース領域45を設ける。ただし、境界部12とIGBT部20との境界、および、境界部12とSJ‐MOSFET部10との境界には、ソース領域45またはエミッタ領域46は設けない。また、コレクタ層80とドレイン層82との境界が、境界部12とIGBT部20との境界に設けられても、境界部12とSJ‐MOSFET部10との境界に設けられてもよい。
順方向電圧印加時において、境界部12におけるn型領域48からドレイン層82の方向にむかって、電子がn型ドリフト層40に入る。これにより当該構成によっても、第2変形例と同様にn型カラム54とn型ドリフト層40との間におけるキャリア量の変化をなだらかにすることができる。よって、境界部12での電界集中を防ぐことができる。
図12は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間にFWD部13を設けた第1の例を示す図である。本例の半導体装置は、IGBT部20とSJ‐MOSFET部10との境界部に、FWD部13を有する。n+型のドレイン層82は、SJ‐MOSFET部10からFWD部13とIGBT部20との間まで設けられている。p型ベース層42と、n型ドリフト層40、FS層70およびコレクタ層80とが、pn接合を構成する。本例の半導体装置は、低電流時にはSJ‐MOSFET部10を利用した低Von特性を得ることができる。また、高電流時にはIGBT部20を利用した大電流特性を得ることができる。さらに、SJ‐MOSFET部10、IGBT部20およびFWD部13を1つの半導体チップに集積することで、半導体モジュールを小型化することができる。
図13は、FWD部13とIGBT部20とを設けた比較例1である。比較例1の半導体装置は、SJ‐MOSFET部10を有さない例である。図14は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20とを設けた比較例2である。比較例2の半導体装置は、IGBT部20を有さない例である。
図15は、図12〜図14におけるゲートオフ時の電圧‐電流特性を示すグラフである。横軸は、時間(sec)である。縦軸の左側は、表面電極62と裏面電極90との間に流れる電流(A)である。縦軸の右側は、表面電極62と裏面電極90との間の電圧(V)である。
図15において、第1の例は図12の例を示し、比較例1は図13の例を示し、比較例2は図14の例を示す。図15から明らかなように、2.0E−07(sec)頃にゲートオフされ、それぞれの半導体装置を流れる電流が減少し始める。なお、Eは10の冪を表す。E−07は10のマイナス7乗を意味する。図15における電流(A)の値から明らかなように、第1の例は、比較例1よりも逆回復電流(Irp)が少なくなった。つまり、第1の例は、比較例1よりも良好なソフトリカバリー特性を得ることができた。また、図15における電圧(V)の値から明らかなように、第1の例は、比較例1および比較例2よりもサージ電圧を小さくすることができた。このように、図12の第1の例では、ソフトリカバリー特性および低サージ電圧特性を得ることができる。
図16は、SJ‐MOSFET部10とIGBT部20との間にFWD部13を設けた第2の例を示す図である。本例の半導体装置は、IGBT部20が、SJ構造を有する。係る点において図12の例と異なる。他の点は、図12の例と同じである。本例の半導体装置も、図12の例と同様の効果を有する。
図12および図16の例は、半導体装置200または半導体装置300に適用することができる。この場合に、p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層82とのピッチは、200μm以上であってよい。また、p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層82とのピッチは、SJ‐MOSFET部10におけるn型カラム54とp型カラム56とのピッチの5〜1,000倍であってよい。
図17〜図35は、IGBT部20を省略して、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の構成例を示す。なお、IGBT部20とSJ‐MOSFET部10およびFWD部13とを組み合わせた例は、図36〜図39に示す。
図17〜図35の例は、SJ‐MOSFET部10と、FWD部13と、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界とのうち、少なくとも1以上にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110を形成した例である。
図17は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第1の例を示す図である。本例のSJ‐MOSFET部10におけるFS層70には、ライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。これにより、ライフタイムキラーを注入しない場合と比較して、SJ‐MOSFET部10のソフトリカバリー特性を向上させることができる。
なお、本例では、FWD部13のFS層70にもライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。これにより、ライフタイムキラーを注入しない場合と比較して、FWD部13のソフトリカバリー特性を向上させることができる。なお、欠陥領域58と同様に、欠陥領域110が形成されている位置を複数の×により示す。本例では、FS層70の裏面側における所定の深さ位置において、FS層70の層内全体に欠陥領域が設けられている。他の図面においても、層または領域において紙面垂直方向に一様に欠陥領域110が形成されていることを複数の×により示す。
図18は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第2の例を示す図である。本例では、FWD部13のFS層70に欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図17の例と異なる。
図19は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第3の例を示す図である。本例のSJ‐MOSFET部10において、n型カラム54およびp型カラム56の表面側と、FS層70との両方に、ライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。これにより、図17の例と比較して、SJ‐MOSFET部10のソフトリカバリー特性をさらに向上させることができる。
また、本例では、FWD部13のドリフト領域におけるアノード側とFS層70との両方に、ライフタイムキラーを注入ることにより欠陥領域110が形成されている。なお、FWD部13のドリフト領域におけるアノード側とは、FWD部13のn型ドリフト層40において、n型ドリフト層40とp型ベース層42との境界近傍を指す。本例では、図17の例と比較して、FWD部13のソフトリカバリー特性をさらに向上させることができる。
図20は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第4の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10において、n型カラム54およびp型カラム56の表面側と、FWD部13のFS層70とに欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図19の例と異なる。
図21は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第5の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13のFS層70に欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図17の例と異なる。ただし、ライフタイムキラーを注入しない場合と比較して、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13のソフトリカバリー特性を向上させることができる。
図22は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第6の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10におけるn型カラム54およびp型カラム56の表面側に、ライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。これにより、ライフタイムキラーを注入しない場合と比較して、SJ‐MOSFET部10のソフトリカバリー特性を向上させることができる。
図23は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第7の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図21の例と異なる。SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界に欠陥領域110を有するので、逆回復時の破壊を抑制できる。
図24は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第8の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図22の例と異なる。
図25は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第9の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図17の例と異なる。
図26は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第10の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図18の例と異なる。
図27は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第11の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図18の例と異なる。
図28は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第12の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図19の例と異なる。
図29は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第13の例を示す図である。本例では、FWD部13のFS層70に欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図19の例と異なる。
図30は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第14の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10とFWD部13との境界にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図29の例と異なる。
図31は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第15の例を示す図である。本例では、n型カラム54およびp型カラム56の表面側に設けられた欠陥領域110は、図19の例と比較して裏面側まで設けられている。さらに本例では、SJ‐MOSFET部10のFS層70に設けられた欠陥領域110は、図19の例と比較して表面側まで設けられている。これにより、SJ‐MOSFET部10のソフトリカバリー特性を図19の例と比較してさらに向上させることができる。
図32は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第16の例を示す図である。本例では、SJ‐MOSFET部10におけるn型カラム54およびp型カラム56の表面側から、SJ‐MOSFET部10におけるFS層70までの全体に渡って、ライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において図31の例と異なる。これにより、SJ‐MOSFET部10のソフトリカバリー特性を図31の例と比較してさらに向上させることができる。
図33は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第17の例を示す図である。本例では、FWD部13のドリフト領域におけるアノード側に欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図32の例と異なる。
図34は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第18の例を示す図である。本例では、FWD部13のFS層70に欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図32の例と異なる。
図35は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の第19の例を示す図である。本例では、FWD部13のドリフト領域におけるアノード側にも、FWD部13のFS層70にも欠陥領域110が形成されていない。係る点で、図32の例と異なる。
図36は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の繰り返し構造部120を有する第1の例を示す図である。繰り返し構造部120には、図17〜図35におけるFWD部13とSJ‐MOSFET部10とが周期的に設けられる。繰り返し構造部120は、IGBT部20を挟んで設けられてよい。また、繰り返し構造部120は、IGBT部20を囲んで設けられてもよい。本例においても、SJ‐MOSFET部10を利用した低Von特性、および、IGBT部20を利用した大電流特性を売ることができる。また、SJ‐MOSFET部10、IGBT部20およびFWD部13を1つの半導体チップに集積することで、半導体モジュールを小型化することができる。
図37は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の繰り返し構造部120を有する第2の例を示す図である。本例では、IGBT部20のFS層70にライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図36の例と異なる。本例では、IGBT部20のFS層70に欠陥領域110を有するので、裏面からのキャリア注入を抑制できるので、スイッチングの高速化ができる。
図38は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の繰り返し構造部120を有する第3の例を示す図である。本例では、IGBT部20と繰り返し構造部120との間にはライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図36の例と異なる。本例では、IGBT部20と繰り返し構造部120との間に欠陥領域110を有するので、ターンオフ時のアバランシェ破壊を抑制できる。
図39は、SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の繰り返し構造部120を有する第4の例を示す図である。本例では、IGBT部20と繰り返し構造部120との間と、IGBT部20におけるFS層70との両方に、ライフタイムキラーを注入することにより欠陥領域110が形成されている。係る点において、図36の例と異なる。本例では、IGBT部20と繰り返し構造部120との間に欠陥領域110を有するので、スイッチング速度の高速化とアバランシェ破壊を抑制できる。
図36〜図39の例は、半導体装置200または半導体装置300に適用することができる。この場合において、p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層82とのピッチは、200μm以上であってよい。また、p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層82とのピッチは、SJ‐MOSFET部10におけるn型カラム54とp型カラム56とのピッチの5〜1,000倍であってよい。
図40は、図12のIGBT部20に代えて、SJ‐IGBT部22を設けた例を示す図である。他の構成は図12の例と同様であってよい。SJ‐MOSFET部10およびFWD部13の少なくとも一方にライフタイムキラーを注入した構成(図17〜図35の例)、ならびに、繰り返し構造部120の構成(図36〜図39の例)を本例に適用してもよい。
SJ‐IGBT部22は、超接合型トランジスタである超接合型トランジスタ領域25で構成されたIGBT領域を有する。SJ‐IGBT部22は、第1導電型カラムとしてのn型カラム54および第2導電型カラムとしてのp型カラム56を有する。
本例のn型カラム54はn−型不純物を有し、p型カラム56はp−型不純物を有する。本例では、図面の見やすさを優先して、SJ‐IGBT部22において2つの超接合型トランジスタ領域25‐1および25‐2のみに符号を付す。SJ‐IGBT部22において、2つの隣接する超接合型トランジスタ領域25は、1つのn型カラム54または1つのp型カラム56を共有する。本例では、超接合型トランジスタ領域25‐1と25‐2とは、1つのn型カラム54を共有する。また、2つの隣接する超接合型トランジスタ領域25‐1および25‐2は、1つのゲート電極50およびゲート絶縁膜52を共有する。
本例において、n型カラム54およびp型カラム56の不純物濃度は、1E15(cm−3)以上1E16(cm−3)以下としてよい。n型カラム54のn型不純物濃度とp型カラム56のp型不純物濃度とは等しいとしてよい。ただし、各カラムの不純物濃度は、後述する耐圧(BV)、オン電圧(Von)およびオフ損失(Eoff)について所望の値を得るべく、n型およびp型の不純物濃度を共に1E14(cm−3)以上1E16(cm−3)以下の範囲で適宜変更してよい。本例では、n型カラム54のn型不純物濃度を5E15(cm−3)とし、p型カラム56のp型不純物濃度を5E15(cm−3)とする。なお、Eは10の冪を意味する。例えば、1E14は、1×1014を意味する。
上述の様に、半導体基板100は、+z側の面である表(おもて)面102とその反対側の面である裏面103とを有する。SJ‐IGBT部22の裏面103側には、第2導電型の半導体層としてのコレクタ層80が設けられる。本例のコレクタ層80はp+型不純物を有する。また、FWD部13およびSJ‐MOSFET部10の裏面103側には、第1導電型の半導体層としてのドレイン層82が共通して設けられる。ドレイン層82はn+型不純物を有する。なお、FWD部13において、ドレイン層82はpn接合を構成するn型層として機能する。
p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層とのピッチは、SJ‐IGBT部22における、n型カラム54とp型カラム56とのピッチの5倍から1000倍であってよい。本例において、p+型のコレクタ層80とn+型のドレイン層とのピッチは200μm以上であり、n型カラム54とp型カラム56とのピッチは3μmである。
図41は、シミュレーションにおける、電荷不均衡の割合(%)と耐圧(V)との関係を示す図である。横軸の電荷不均衡の割合(%)は、n型カラム54とp型カラム56との電荷不均衡の割合を示す。電荷不均衡がゼロ(%)である場合、n型カラム54の電荷量とp型カラム56の電荷量とが釣り合っている。この場合、n型カラム54のn型不純物濃度とp型カラム56のp型不純物濃度とが等しい。電荷不均衡が負(%)である場合、n型カラム54の電荷量がp型カラム56の電荷量よりも多い。また、電荷不均衡が正(%)である場合、n型カラム54の電荷量がp型カラム56の電荷量よりも少ない。
縦軸の耐圧(V)は、半導体装置200、300または400の耐圧である。本例において非SJ‐IGBT部の結果は一点のみであり、電荷不均衡の割合がゼロ(%)において耐圧が1160(V)である。なお、非SJ‐IGBT部とは、IGBT領域24が超接合型トランジスタではない図12の場合のIGBT部20に相当する。n型カラム54におけるn型不純物のドープ濃度(Nd)をパラメータとして、電荷不均衡の割合を正負に数点プロットしたSJ‐IGBT部22の耐圧の曲線を複数示す。なお、以降の各例において、n型カラム54のn型不純物濃度とp型カラム56のp型不純物濃度とは等しいとした。
図41から明らかなように、SJ‐IGBT部22の耐圧の曲線は、電荷不均衡の割合がゼロ(%)において最大である。これは、電荷不均衡の割合がゼロ(%)の場合にn型カラム54とp型カラム56との間の空乏層が最も広がりやすいためである。また、ドープ濃度(Nd)が低いほど、耐圧は大きくなる。これは、ドープ濃度(Nd)が低いほど、空乏層は広がりやすいためである。なお、非SJ‐IGBT部は、n型不純物がドープされたn型ドリフト層40を有するがp型カラム56を有しない。それゆえ、電荷不均衡の割合がゼロ(%)の位置に非SJ‐IGBT部をプロットした。
本例において、非SJ‐IGBT部の耐圧は1160(V)である。また、電荷不均衡の割合がゼロ(%)におけるNd=8E15(cm−3)の耐圧は1260(V)である。このように、非SJ‐IGBT部を有する場合と、SJ‐IGBT部22を有する場合とでは、100(V)の耐圧の差が存在する。
図42は、シミュレーションにおける、ドーピング濃度(cm−3)と耐圧(V)との関係を示す図である。横軸のNd(cm−3)は、ドーピング濃度(cm−3)を示す。縦軸の耐圧(V)は、半導体装置200、300または400の耐圧である。
本例の非SJ‐IGBT部のn型ドリフト層40は、1.0E14のn型の不純物濃度を有する。SJ‐IGBT部22のn型カラム54およびp型カラム56は、1.0E14〜1.0E16までの間に14点プロットした。図41および図42から明らかなように、SJ‐IGBT部22を採用することにより、IGBT部20を非SJ‐IGBT部とする場合と比較して、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
図43は、シミュレーションにおける、ゲートオン時の表面102からの距離(μm)と電界の強さ(V/cm)との関係を示す図である。横軸の表面102からの距離(μm)は、半導体基板100の表面102をゼロ(μm)とし、裏面103を100(μm)として示す。つまり、本例の半導体基板100の厚みは100(μm)である。縦軸は、電愛の強さ(V/cm)を示す。
なお、SJ‐IGBT部22の超接合型トランジスタ領域25において、Xはn型カラム54またはp型カラム56のピッチを示す。X=1.5(μm)の場合、超接合型トランジスタ領域25のピッチは1.5×2=3.0(μm)であり、X=3.0(μm)の場合、超接合型トランジスタ領域25のピッチは3.0×2=6.0(μm)である。非SJ‐IGBT部においてカラムのピッチは存在しない。そこで、n型ドリフト層40のx方向の幅を、X=3.0(μm)またはX=6.0(μm)とした。なお、ゲート電極50のトレンチ深さは、SJ‐IGBT部22および非SJ‐IGBT部において共に3.5(μm)とした。
非SJ‐IGBT部の例では、ゲート電極50の底部(3.5(μm)付近)が最も電界が強く、ゲート電極50の底部から裏面103へ電界の強さが線形に減少する。つまり、非SJ‐IGBT部においては、ゲート電極50の底部が電界集中により破壊される可能性が有る。これに対して、SJ‐IGBT部22の例では、ゲート電極50の底部から裏面103にかけて電界の強さがほぼ一定である。この結果からも、SJ‐IGBT部22を採用することにより、IGBT部20を非SJ‐IGBT部とする場合と比較して、半導体装置の耐圧を向上させることができる。なお、n型カラム54およびp型カラム56のピッチが小さいほどpn接合が密に形成されるので、空乏層が広がりやすい。それゆえ、SJ‐IGBT部22において、X=1.5(μm)の方がX=3.0(μm)よりも電界を強くすることができる。
図44は、シミュレーションにおける、ドーピング濃度(cm−3)とオン電圧(V)との関係を示す図である。横軸のドープ濃度(Nd)は、図41および図42の例と同じである。縦軸のオン電圧(Von)は、半導体装置の裏面電極90から表面電極62に100(A/cm−2)の電流を流す場合に必要な、ゲート電極50への印加電圧(V)である。
本例において、非SJ‐IGBT部は一点のみであり、Ndが1.0E14(cm−3)であり、Vonが約1.2(V)である。SJ‐IGBT部22において、Ndが1.0E14(cm−3)以上1.0E15(cm−3)以下の範囲では、Vonは上昇する傾向を示す。また、Ndが1.0E15(cm−3)以上1.0E16(cm−3)以下の範囲では、Vonは減少する傾向を示す。
SJ‐IGBT部22において、Ndが1.0E15(cm−3)から1.0E14(cm−3)にかけて減少するのは、隣接するカラムが低濃度化するにつれて電子注入促進(Injection Enhanced:IE)効果が顕著になるためである。また、Ndが1.0E15(cm−3)から1.0E16(cm−3)にかけて減少するのは、n型カラム54におけるドリフト抵抗低減効果が顕著となるためである。一般に高耐圧であるほどVonは高くなるが、図44から明らかなように、SJ‐IGBT部22を採用しても、非SJ‐IGBT部を有する半導体装置と同程度にVonを維持することができる。本例において、SJ‐IGBT部22の最大のVon(Nd=1.0E15)でも約2.1(V)であり、非SJ‐IGBT部のVonの2倍以下である。
図45は、シミュレーションにおける、オン電圧(V)と電流密度(A/cm2)との関係を示す図である。横軸のオン電圧(Von)は、図45の例と同じである。縦軸の電流密度(A/cm2)は、図44の例と同じである。本例では、非SJ‐IGBT部のn型ドリフト層40の濃度Ndは、6.6E13(cm−3)とした。
図45から明らかなように、SJ‐IGBT部22と非SJ‐IGBT部とは、0.6(V)付近で電流が流れ始めている。つまり、SJ‐IGBT部22と非SJ‐IGBT部とは、ほぼ同程度のVonを得ることができる。なお、J=20(A/cm2)におけるNd=1E16と非SJ‐IGBT部とを比較するとVonを0.2V改善できている。なお、図44の例と同様のIE効果およびドリフト抵抗低減効果も確認される。
図46は、シミュレーションにおける、時間(μs)とコレクタ‐エミッタ間電圧(V)およびコレクタ電流(A)との関係を示す図である。横軸は時間(μs)であり、縦軸左はコレクタ‐エミッタ間電圧:Vce(V)であり、縦軸右はコレクタ電流:Ic(A)である。本例は、Nd=1E16(cm−3)であるSJ‐IGBT部22を有する半導体装置と、Nd=6.6E13(cm−3)である非SJ‐IGBT部を有する半導体装置とを0(μs)で同時にターンオフした場合を比較した結果である。
図46から明らかなように、同時にオフしたにも関わらず、SJ‐IGBT部22のIcの方が非SJ‐IGBT部のIcよりも早く減少する。これにより、SJ‐IGBT部22の方が非SJ‐IGBT部よりもオフ損失(Eoff)が小さくなる。本例では、SJ‐IGBT部22のオフ損失が8.1(mJ)となり、非SJ‐IGBT部のオフ損失が29.2(mJ)となった。つまり、SJ‐IGBT部22のオフ損失は、非SJ‐IGBT部のオフ損失の約1/4となった。このように、SJ‐IGBT部22は、非SJ‐IGBT部よりもオフ損失を低くすることができる。なお、dV/dtについは、SJ‐IGBT部22が8.7(kV/μs)となり、非SJ‐IGBT部が1.9(kV/μs)となった。つまり、SJ‐IGBT部22のdV/dtを非SJ‐IGBT部の約4倍とすることができた。dV/dtが高くなることで、キャリアの掃出しを速くすることができる。これにより、ターンオフ損失を小さくすることができるという効果を有する。
図47は、図46の時間0(μs)以上1.0(μs)以下の部分を拡大した図である。なお、図47においては、1E15(cm−3)以上9E15(cm−3)以下の9つについて、Vce曲線およびIc曲線を合わせて示す。横軸および縦軸は、図46と同じである。
Icについて、減少し始めるタイミングが遅いものから早いものの順に、SJ‐IGBT部22のn型カラム54のn型不純物濃度Nd(cm−3)が、1E16、9E15、8E15‥5E15である。しかしながら、4E15から1E15は、この順で遅いものから早いものの順とはならなかった。ただし、1E16から1E15のいずれも、非SJ‐IGBT部よりは、Icが減少し始めるタイミングが遅かった。それゆえ、1E16から1E15のいずれの例も、非SJ‐IGBT部よりはオフ損失を小さくすることができると言える。
なお、Vceについて、立ち上がるタイミングが早いものから遅いものの順に、非SJ‐IGBT部、SJ‐IGBT部22の1E15、2E15‥9E15および1E16となった。特に、1E15から5E15においては、dV/dtの急峻な変化が見られた。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。