JP6809041B2 - 発光性ナノカーボン製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、発光性ナノカーボンを効率よく大量に製造できる発光性ナノカーボン製造方法を提供することを目的としている。
する。
本実施形態の発光性ナノカーボン製造方法は、炭素源化合物および窒素源化合物を含有する原料水溶液から発光性ナノカーボンを製造する方法である。
反応ステップを回分式反応とする場合、原料水溶液が仕込まれた反応容器全体を加熱して反応容器内部の全体を所定温度および圧力として、反応容器内全体で反応ステップを進行させる。例えば、反応容器として管型高圧容器を用い、所定の温度に設定した電気炉内に投入することにより、反応ステップを進行させる。
反応ステップが完了した後、管型高圧容器を室温空気中に取り出して空冷することにより反応生成物を含有する反応溶液を冷却する(冷却ステップ)。
調整ステップは、原料水溶液および製造条件の少なくとも一方を異ならせた複数の発光性ナノカーボンを製造し、当該複数の発光性ナノカーボンの発光特性を評価し、調整する工程である。所望の発光特性を備えた発光性ナノカーボンを製造するために、異なる原料や異なる製造条件を用いて複数の発光性ナノカーボンを製造し、評価する。
(実施例1)
炭素源化合物として、ヒドロキシ酸であるクエン酸(以下、CAという)を用い、窒素源化合物としてエチレンジアミン(以下、EDAという)を用いた。CA0.5M、EDA0.1Mの濃度で含有する原料水溶液を用いた。
反応生成物である発光性ナノカーボンを含有する冷却後の反応溶液を以下の方法により精製した。透析膜(MWCO100−500)を用いて水中にて約24時間透析し、未反応の原料水溶液を含有する低分子量成分を除去し、シリンジフィルター(細孔径0.22mm)により不溶成分を除去した。なお、各実施例のTEM像を観察するために、発光性ナノカーボンを精製した。発光スペクトルは未精製の発光性ナノカーボンを用いて測定した。
合成した発光性ナノカーボンは水中に分散させ、日立ハイテクサイエンス社製分光蛍光光度計F−2700を用いて、フォトルミネッセンス(PL)を測定した。透過型電子顕微鏡(TEM)測定には、日立ハイテクノロジーズ社製H−7650を使用した。
CA0.5M、EDA0.2Mの濃度で含有する原料水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光性ナノカーボンを作製した。
CA0.5M、EDA0.5Mの濃度で含有する原料水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光性ナノカーボンを作製した。
図1は、実施例1(0.1M)、実施例2(0.2M)および実施例3(0.5M)の発光性ナノカーボンに波長405nmの励起光を照射した場合の発光スペクトルのグラフであり、縦軸が発光強度(Intensity)を示し、横軸が発光波長(Wavelength)を示している。図1(a)、図1(b)および図1(c)は、この順に反応時間2時間、反応時間4時間、および反応時間8時間の結果を示すグラフである。図1(a)〜図1(c)に示すように、CAに対するEDAの濃度を変化させること、反応ステップの加熱時間を変化させることにより、発光特性が異なる発光性ナノカーボンが得られた。
炭素源化合物としてCA0.5M、窒素源化合物としてEDA0.8Mを含有する原料水溶液を使用し、反応ステップを200℃、2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。
炭素源化合物としてCA0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例4と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。
図2(a)および図2(b)は、実施例4および実施例5の発光性ナノカーボンのPL(Photo Luminescence、フォトルミネッセンス)強度について発光波長および励起波長依存性を示すグラフである。図2(a)および図2(b)では、縦軸が励起光の波長(Excitation wavelength)を示し、横軸が発光波長(Emission wavelength)を示し、濃淡により発光強度(PL intensity)を示している。
図2(a)および図2(b)から原料水溶液の組成によってナノカーボンの発光特性が制御可能であることが分かった。
図3は実施例4の発光性ナノカーボンのTEM(Transmission Electron Microscopy、透過電子顕微鏡)像を示す図面代用写真である。図4は実施例4の発光性ナノカーボンの粒径分布を示すグラフであり、横軸が粒径(Diameter)を示し、縦軸が発現頻度(数、Frequency)を示している。図3および図4の結果から、平均粒径2.1nmの発光性ナノカーボンが得られたことが分かった。
炭素源化合物としてリンゴ酸(Malic Acid,MA)0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製し、実施例1と同様にして精製した。
炭素源化合物として酒石酸(Tartalic acid,TA)0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例6と同様にして、発光性ナノカーボンを作製し、実施例1と同様にして精製した。
図5(a)は、実施例6の発光性ナノカーボンのPL強度について励起光および発光波長依存性を示すグラフである。縦軸、横軸および濃淡が示す事項は図2(a)および図2(b)と同様である。リンゴ酸を炭素源化合物とする実施例6の発光性ナノカーボンは、320nm付近の励起波長で、400nm付近に極大をもつ発光を示し、CAを原料とした実施例5の発光性ナノカーボンよりも短波長の領域に、実施例5の発光性ナノカーボンよりも弱いPLを示した。
炭素源化合物としてキナ酸(Quinic acid,QA)0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。TEM像観測用の発光性ナノカーボンは実施例1と同様にして精製した。
炭素源化合物としてグルコース(Glucose)0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。TEM像観測用の発光性ナノカーボンは実施例1と同様にして精製した。
炭素源化合物としてグルコン酸(Gluconic acid,GcoA)0.5M、窒素源化合物としてEDA0.5Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。
炭素源化合物としてグルコン酸0.5M、窒素源化合物としてEDA1.0Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。
炭素源化合物としてグルコン酸0.5M、窒素源化合物としてEDA2.0Mを含有する原料水溶液を使用した以外は、実施例5と同様にして、発光性ナノカーボンを作製した。
図6は、実施例8の発光性ナノカーボンのPL強度について励起光および発光波長依存性を示す発光スペクトルのグラフである。縦軸および横軸が示す事項は図1と同様である。各発光スペクトルに励起光の波長を示している。炭素源化合物としてキナ酸を含有し、窒素源化合物としてEDAを含有する原料水溶液を用いて製造した発光性ナノカーボンは、黄色のみの発光となった。
図9は実施例9の発光性ナノカーボンのPL強度について励起光および発光波長依存性を示す発光スペクトルのグラフである。縦軸および横軸が示す事項は図1と同様である。各発光スペクトルに励起光の波長を示している。炭素源化合物としてグルコースを含有し、窒素源化合物としてEDAを含有する原料水溶液は、炭素源化合物と窒素源化合物とを塩として含有していないが、他の実施例同様、発光性ナノカーボンが得られた。なお、図9のグラフは反応生成物を1000倍に希釈して測定した結果(×1k dilution)を示している。
図12は、発光性ナノカーボンのPL強度について励起光および発光波長依存性を示す発光スペクトルのグラフであり、(a)実施例10、(b)実施例11、(c)実施例12の結果を示している。縦軸および横軸が示す事項は図1と同様である。各発光スペクトルに励起光の波長を示している。なお、図12(a)〜(c)のグラフは反応生成物を100倍に希釈して測定した結果(×100 dilution)を示している。
図13は実施例13〜実施例15で用いた流通式反応装置の概略を示す模式図である。同図に示すように、反応容器として外径1/8インチ、内径1.8mmのSUS316チューブを使用し、ポンプ(Pump)を用いて1分間あたり所定量となるように、貯蔵容器(Reservoir)から原料水溶液を送液した。反応容器の反応ステップが進行する加熱部(Furnace)の長さ(Reactor tube length)は10mとし、電気炉出口付近の試料温度(反応溶液温度)を反応温度とした。反応後の反応溶液が流れる反応容器の部分は氷浴(Ice bath)にて急冷し(冷却ステップ)、背圧弁(Back Pressure regulator)により減圧して発光性ナノカーボン溶液を回収した。原料水溶液を1分あたり5mlの量で供給した場合、加熱部における滞留時間は約4分である。
(実施例13)
図13の流通式反応装置を用いて、濃度0.5MのCAと濃度0.5MのEDAを含有する原料水溶液として用い、流量10mL/min、反応温度250℃にて発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
冷却ステップ後の反応溶液をエタノール中に展開し、ろ過により上澄み液を回収した後、溶媒を除去してTEM測定用の発光性ナノカーボンを得た。なお、本実施例のように、CA:EDA=1:1の原料水溶液を用いて連続合成した場合、反応生成物に未反応原料が混入しないから、上記の簡便な方法により反応生成物を精製できる。
流量5mL/minとした以外は、実施例13と同じ条件で、発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
反応温度を300℃とした以外は、実施例13と同じ条件で、発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
反応温度を200℃とした以外は、実施例13と同じ条件で、発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
投入原料に対するナノカーボンの収率は、200℃では十分に反応が進行しておらず10%程度であるが、250℃においては75%程度まで向上し、1時間当たり50g程度の発光ナノカーボンの連続合成に成功した。
図17〜図19は、実施例13〜実施例15の発光性ナノカーボンのPL強度について励起光および発光波長依存性を示す発光スペクトルのグラフである。縦軸および横軸が示す事項は図1と同様である。各発光スペクトルに励起光の波長を示している。これらの図に示されているように、得られた発光性ナノカーボンは、照射光の波長により発光特性が異なるものであった。
上述したとおり、図17と図18との比較から、原料水溶液を供給する速度が発光性ナノカーボンの発光特性に影響するといえる。これは、流通式反応器では、流量を変えることにより加熱部での滞留時間(反応時間)が変わるから、反応ステップにおける加熱条件が変化したことによる影響であると推定できる。例えば、流量を1/2倍とすると滞留時間が約2倍となるから、同じ加熱条件で長時間反応させたことになる。
図13に示す流通式反応装置を用いることにより、0.5Mの原料水溶液を1分あたり10mL供給して反応させることにより、1時間あたり50g程度の発光性ナノカーボンを製造することができた。
図20の流通式反応装置を用いて、濃度0.1Mのリンゴ酸と濃度0.1MのEDAを含有する水溶液を原料水溶液として用い、流量1mL/min、所定の反応温度(200℃、250℃、300℃、340℃および380℃)にて発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
図20の流通式反応装置を用いて、濃度0.1Mのガラクタル酸と濃度0.2MのEDAを含有する水溶液を原料水溶液として用い、流量1mL/min、所定の反応温度(200℃、250℃、300℃、340℃および380℃)にて発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
図20の流通式反応装置を用いて、濃度0.1Mの酒石酸と濃度0.1MのEDAを含有する水溶液を原料水溶液として用い、流量5mL/min、所定の反応温度(200℃、250℃、275℃、300℃、340℃および380℃)にて発光性ナノカーボンの連続合成を行った。
図13の流通式反応装置を用いて、濃度0.5Mのグルコースと濃度1.0MのEDAを含有する水溶液を原料水溶液として用い、流量5mL/min、反応温度150℃にて連続合成を行い、発光性ナノカーボンが合成されたことを確認した。
Claims (10)
- 炭素源化合物としての有機酸または糖、および窒素源化合物としての脂肪族アミンを、前記炭素源化合物:前記窒素源化合物のモル比5:1以上5:20以下で含有する原料水溶液から発光性ナノカーボンを製造する方法であって、
前記原料水溶液を反応容器中で加熱して反応させる反応ステップと、
前記反応ステップにおいて前記原料水溶液から生成された反応生成物を含有する反応溶液を冷却する冷却ステップと、を備えており、
前記反応ステップは、反応温度が150℃〜300℃であり、気液平衡状態よりも高い密度となる量の前記原料水溶液を前記反応容器内に仕込むバッチ式の反応である、
発光性ナノカーボン製造方法。 - 前記反応ステップは、反応温度が200℃〜250℃であり、前記反応容器の容積の90%以上となる量の原料水溶液を前記反応容器内に仕込むバッチ式の反応である、請求項1に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
- 炭素源化合物としての有機酸または糖、および窒素源化合物としての脂肪族アミンを、前記炭素源化合物:前記窒素源化合物のモル比5:1以上5:20以下で含有する原料水溶液から発光性ナノカーボンを製造する方法であって、
前記原料水溶液を反応容器中で加熱して反応させる前記反応ステップと、前記反応ステップにおいて前記原料水溶液から生成された反応生成物を含有する反応溶液を冷却する冷却ステップとは前記反応容器の異なる部分において進行し、前記反応ステップが進行する部分と、前記冷却ステップが進行する部分とは連通されており、
前記原料水溶液および前記反応溶液が前記反応容器内を移動することにより、前記反応ステップと前記冷却ステップとが連続的かつ同時に進行する流通式反応装置を用いた発光性ナノカーボンの製造方法であって、
前記反応ステップは、反応温度が150℃〜380℃であり、加熱部における前記原料水溶液の滞留時間を0.8分以上5分以下として、前記反応容器内の圧力を原料水溶液が気液平衡状態よりも高い密度となる飽和蒸気圧よりも高くする連続式反応である、
発光性ナノカーボン製造方法。 - 前記流通式反応装置を用いた発光性ナノカーボンの製造方法であって、
原料水溶液および製造条件の少なくとも一方を異ならせた複数の発光性ナノカーボンを製造して前記複数の発光性ナノカーボンの発光スペクトルを測定して発光特性を評価し、前記発光スペクトルに基づいて、所望の発光特性を備えた発光性ナノカーボンの発光特性を調整する調整ステップを備えている、請求項3に記載の発光性ナノカーボン製造方法。 - 前記複数の発光性ナノカーボンは、前記炭素源化合物と前記窒素源化合物との比率が異なる前記原料水溶液から製造されたものである請求項4に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
- 前記炭素源化合物がグルコン酸であり、前記窒素源化合物がエチレンジアミンである、
請求項5に記載の発光性ナノカーボン製造方法。 - 前記複数の発光性ナノカーボンは、前記炭素源化合物と前記窒素源化合物との組み合わせが異なる複数の原料水溶液から製造されたものである請求項4に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
- 前記複数の発光性ナノカーボンは、前記反応ステップにおける温度を異ならせて製造されたものである請求項4に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
- 前記炭素源化合物がキナ酸であり、前記窒素源化合物がエチレンジアミンである請求項1または請求項3に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
- 前記炭素源化合物がグルコースであり、前記窒素源化合物がエチレンジアミンである請求項1または請求項3に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
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