<全体構成>
以下、本実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る作業車輌としてのトラクタ1は、走行機体2と、回転するロータリ3bを有して走行機体2の後部に昇降可能に連結される作業機としてのロータリ耕耘機3と、を有する。走行機体2は、各電気信号の入出力を制御する図7に示す制御手段としての制御部52と、走行装置としての前輪5及び後輪6を有している。前輪5及び後輪6は、それぞれ左右に配置されて一対ずつ設けられており、前輪5が左右に操舵されることにより走行機体2が操向操作される。また、走行機体2は、前輪5及び後輪6に支持される機体フレーム7と、オペレータが乗車する運転座席23を有する運転部10と、を有している。なお、本実施の形態では、特に記載が無い限りは水平面に載置されたトラクタ1の運転座席23に着座したオペレータが向く正面方向を走行機体2の向きである前方とし、これを基準に前後左右方向を定義する。制御部52の出力側には、放音によりオペレータに各種の情報を報知可能な報知手段としての報知ブザー53が設けられており、制御部52からの出力信号により作動する。
<動力伝達構造>
機体フレーム7は、前輪5及び後輪6を駆動するための動力を発生する図示しないエンジンと、エンジンが収納されるエンジンルーム9と、左右の後輪6の間に配置されている図示しないミッションケースと、を備えている。
ミッションケースの内部には、エンジンの動力を変速する図示しない走行トランスミッションが収納されており、走行トランスミッションには、エンジンの動力を多段状に変速する図示しない主変速機構と、主変速機構で変速された動力を更に多段状に変速する図示しない副変速機構と、図示しないPTO軸への動力を変速するPTO変速機構と、が組み込まれている。PTO軸の回転がロータリ耕耘機3に伝達され、ロータリ3bがロータリ軸3aを中心として回転することにより圃場が耕耘される。
ミッションケースの内部は潤滑油で満たされており、この潤滑油はエンジンの動力によって駆動する図示しない油圧ポンプへ供給され、油圧ポンプによって発生した油圧は図7に示すリフトアームバルブ20の操作によりロータリ耕耘機3を昇降する図示しないリフトアームシリンダに伝達される。
主変速機構及び副変速機構を経由した動力は、図示しない後輪駆動軸によって図示しない後輪差動機構を介して左右の後輪6に分配され、図示しない前輪変速機構及び図示しない前輪駆動軸によって図示しない前輪差動機構を介して左右の前輪5に分配されて、走行機体2が前輪5の転舵により左右へ旋回する際に内輪と外輪の回転数に差を許容することにより、円滑な走行が可能となるように構成されている。
後輪差動機構は、左右の後輪6を独立して制動可能な左右一対の図示しないブレーキ機構を介して、後輪駆動軸からの動力を左右の後輪6に伝達する。後輪駆動軸及び左右いずれか一方の後輪6の単位時間当たりの回転数は、それぞれ独立して車速センサ11により検出され、後輪駆動軸及び左右いずれか一方の後輪6の単位時間当たりの回転数に基づいて走行機体2の車速が算出される。ここで、車速とは、図19に示すように、後輪6の回転軸上における左右の後輪6の中心点である機体基準点2aの単位時間当たりの移動距離である。算出された時点における車速の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。また、制御部52が、車速を時間で積分することにより、機体基準点2aの移動距離、即ち走行機体2の走行距離が得られる。
前輪変速機構は図示しない摩擦多板式の油圧クラッチを備え、油圧クラッチが断接されることにより、走行機体2は左右の前輪5の平均周速度を左右の後輪6の平均周速度に対して増速駆動する前輪倍速制御が実行される前輪倍速オン4駆モードと、左右の前輪5の平均周速度を左右の後輪6の平均周速度に対して略等速駆動する前輪倍速オフ4駆モードと、動力が前輪5に伝達されない2駆モードと、が切替え可能に設けられている。
<ステアリング装置>
機体フレーム7には、ステアリング装置12が配置されている。ステアリング装置12は、前輪5を操舵するためにオペレータが回動操作するステアリングホイール13と、ステアリングホイール13と一体に回動する図6に示すステアリングコラム14と、左右に延設されてステアリングコラム14の回動を左右方向の略直線運動に変換する図示しない操舵機構と、操舵機構の両端と左右の前輪5とを接続する図示しないタイロッドと、を有する。オペレータがステアリングホイール13を回動させるとステアリングコラム14が回動し、ステアリングコラム14の回動角及び回動方向に基づいてタイロッドが左右に移動して左右の前輪5が操舵される。
ステアリング装置12には、ステアリングホイール13を一方向への所定以上の回動が規制される図示しないストッパ部が左右の回動方向のそれぞれに設けられている。走行機体2が略直進するステアリングホイール13の中立位置から一方向への最大回動角度α1は、他方向への最大回動角度と略同角度となるように構成されている。ステアリングホイール13が中立位置から最大回動角度α1よりわずかに小さい所定角度α2以上回動されると、図7に示すステアリングセンサ15がオン状態となり、ステアリングホイール13がα2以上回動されていること及びステアリングホイール13の回動方向が検知される。また、ステアリングホイール13の回動角度が中立位置からα2未満であるとき、ステアリングセンサ15はオフ状態となり、ステアリングホイール13の回動角度がα2未満であることが検知される。ステアリングセンサ15のオン状態若しくはオフ状態及びステアリングホイール13の回動方向の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
<昇降リンク機構>
走行機体2の後部には、機体フレーム7とロータリ耕耘機3とを連結すると共に、ロータリ耕耘機3を昇降する昇降装置としての昇降リンク機構16が設けられている。昇降リンク機構16は、走行機体2の後部に突設された図示しないリンクブラケットと、リンクブラケットに対し上下へ揺動可能に軸支されて後方へ延出する一本のトップリンク17と、トップリンクの下方に設けられてリンクブラケットに対し上下へ揺動可能に軸支されて後方へ延出する左右一対のロワリンク18と、を有し、トップリンク17及び左右のロワリンク18の後端部は、ロータリ耕耘機3に対し上下へ揺動可能に軸支されて3点リンク機構を形成している。左右のロワリンク18は、それぞれ左右に設けられた図示しないリフトロッドを介して図示しないリフトアームにより吊持されている。リフトアームは、前端がリンクブラケットに上下へ揺動可能に軸支されており、リフトアームシリンダの伸縮に伴うリフトアームの上下の揺動に伴ってロワリンク18が上下に揺動し、ロータリ耕耘機3が昇降する。リフトアームの揺動角は、リフトアームに設けられた図7に示すリフトアームセンサ21により検出されて、電気信号により制御部52へ送信される。
<運転部>
次いで、運転部10について図2に沿って説明する。運転座席23の左側方には、揺動自在に支持されて副変速機構を変速操作する副変速レバー27が、運転座席23の下方には、回動可能に支持されてロータリ耕耘機3の下降速度を調節する図示しない下降速度調節バルブを操作可能な作業機下降速度調節ノブ29が、設けられている。副変速レバー27は高速段、中速段、低速段の3段階の変速位置に操作可能に設けられており、副変速レバー27の変速位置が高速段に位置するとき、エンジンの回転数を後輪駆動軸の回転数で除算した減速比が3段階のうちで最も小さく、低速段は減速比が最も大きく、中速段は減速比が高速段と低速段との間となるように構成されている。また、作業機下降速度調節ノブ29は、オペレータにより時計回りに回動されると下降速度調節バルブが操作されることによりロータリ耕耘機3の下降速度が低下し、反時計回りに回動されると下降速度が上昇する。副変速レバー27の変速位置の情報及び作業機下降速度調節ノブ29の回動位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
<サイドパネル>
図2、図3及び図4に示すように、運転座席23の右側方には、各種の操作具やランプが配置されているサイドパネル26が設けられている。サイドパネル26には、揺動自在に支持されて主変速機構を変速操作する主変速レバー30、ロータリ耕耘機3を昇降操作するポジションレバー31、ロータリ耕耘機3の最大上昇高さを設定する上げ高さボリューム32及びオートダウンタイミングボリューム33が配置されている。
主変速レバー30による主変速機構の変速操作は、副変速レバー27による副変速機構の変速操作とは独立して行うことが可能であり、8段から1段まで8段階の変速位置、動力を前輪5並びに後輪6へ伝達しない中立位置及び図示しないアクセルペダルの操作により8段から4段までを自動で変速するアクセル変速位置に操作可能に設けられている。8段は主変速機構による減速比が最も小さく、段数が小さくなるにつれて減速比が大きくなるように構成されている。主変速レバー30の変速位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
ポジションレバー31は、前後へ揺動可能に支持されており、オペレータが操作の手を離した時の揺動位置が保持されるように構成されている。ポジションレバー31が前後に揺動操作されると、ポジションレバー31が保持されている位置に対応する高さまでロータリ耕耘機3が昇降する。ポジションレバー31が保持されている位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
上げ高さボリューム32は回動可能に支持されており、回動位置により、所定の回動範囲に設けられている上げ高さ調節位置と、油圧取り出し位置と、を選択可能に設けられている。上げ高さボリューム32の回動位置が上げ高さ調節位置に位置しているときは、オペレータが上げ高さボリューム32を時計回りに回動するとロータリ耕耘機3が昇降する際の上限高さが拡大し、反時計回りに回動すると上限高さが縮小する。上げ高さボリューム32の回動位置が油圧取り出し位置に位置しているときは、走行機体2は、図示しない油圧取り出し口より油圧が伝達されて、例えばフロントローダー等を作動させることができる状態となると共に、リフトシリンダへの油圧が遮断されてロータリ耕耘機3が昇降しない状態となる。上げ高さボリューム32の回動位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
オートダウンタイミングボリューム33は回動可能に支持されており、所定の回動範囲に設けられているオン位置とオフ位置とに変更可能に設けられている。オートダウンタイミングボリューム33の回動位置がオン位置に位置しているときは、後述するオートダウン制御において、回動位置に対応してロータリ耕耘機3の下降開始タイミングを調節することができる。オートダウンタイミングボリューム33の回動位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。また、サイドパネル26には、自動入ランプ48が設けられており、自動入ランプ48は、オートダウンタイミングボリューム33がオフ位置に位置しているときは消灯し、オン位置に位置しているときは、後述するオートダウン許可条件の成立又は不成立により点灯又は点滅する。
<ステアリングホイール周り>
図5に示すように、運転座席23の前方にはステアリングホイール13が配置されており、ステアリングホイール13の下方には左右のブレーキ機構を操作するブレーキペダル25及びアクセルペダルが配置されており、ステアリングホイール13の周囲には、走行機体2のメインスイッチであるスタータスイッチ34、オペレータが走行機体2の前進と後進とを切替え操作するシャトルレバー35及び予め設定された上限高さと下限高さの間でロータリ耕耘機3を昇降操作する作業機操作具としてのクイックアップレバー36が配置されている。
シャトルレバー35は前進位置、中立位置及び後進位置に操作可能に設けられており、シャトルレバー35が前進位置に位置するときは走行機体2が前進し、中立位置に位置するときは走行機体2の走行は停止し、後進位置に位置するときは走行機体2が後進する。シャトルレバー35の操作位置の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
クイックアップレバー36は上げ位置、中央位置及び下げ位置の間で揺動可能に支持されており、オペレータがクイックアップレバー36を上昇位置へ上げ操作又は下げ位置へ下げ操作をした後で操作の手を離すと中央位置に復帰するように、図示しない付勢部材が設けられている。ロータリ耕耘機3の昇降が停止している状態において、クイックアップレバー36の短上げ操作をするとロータリ耕耘機3は上限高さまで上昇し、短下げ操作をするとロータリ耕耘機3は下限高さであるポジションレバー31の揺動位置に対応する高さまで下降する。クイックアップレバー36の操作方向及び操作時間は、電気信号により制御部52へ送信される。
<フロントパネル>
図6に示すように、ステアリングホイール13の前方には各種の操作具、表示装置及びランプを備えるフロントパネル24が配置されている。フロントパネル24は、走行機体2の、バックアップモードのオン状態とオフ状態とを切り替えるバックアップ切替スイッチ37と、旋回アップモードのオン状態とオフ状態とを切り替える旋回アップ切替スイッチ39と、を備える。走行機体2が、バックアップモードのオン状態であるとき、バックアップランプ40が点灯し、ロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態でシャトルレバー35が中立位置から後進位置へ切り替わる後進操作が行われるとロータリ耕耘機3が上限高さまで上昇する。旋回アップモードのオン状態であるとき、旋回アップランプ41が点灯し、ロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態でステアリングセンサ15がオフ状態からオン状態へ切り替わるとロータリ耕耘機3が上限高さまで上昇する。バックアップ切替スイッチ37及び旋回アップ切替スイッチ39の切り替え情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
また、フロントパネル24は、油圧クラッチの断接操作をする4駆切替スイッチ42と、油圧クラッチの断接操作及びブレーキ機構による制動操作をする旋回倍速切替スイッチ43と、を備える。オペレータが4駆切替スイッチ42を操作する毎に、走行機体2は、前輪5に動力を伝達する各モードと前輪5に動力を伝達しない2駆モードとが切り替わり、前輪5に動力を伝達する各モードである際には、4駆切替ランプ45が点灯する。4駆切替スイッチ42及び旋回倍速切替スイッチ43による切り替え操作の情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
4駆切替ランプ45が点灯している状態において、旋回倍速切替スイッチ43を操作する毎に、走行機体2は、前輪倍速オフ4駆モード、前輪倍速オン4駆モード及びオートブレーキモードが切り替わる。前輪倍速オン4駆モードにおいては旋回倍速ランプ46が点灯し、オートブレーキモードにおいては、前輪倍速制御が実行されると共に、制御部52により旋回内側の後輪6が自動で制動されるオートブレーキ制御が実行され、オートブレーキ旋回ランプ47が点灯する。
フロントパネル24は、走行機体2が圃場で耕耘作業を行うための作業モードと圃場外で路上等を走行するための走行モードとを切替可能なおまかせ切替スイッチ49、及び走行機体2が作業モードと走行モードとのいずれであるかを表示するおまかせ切替ランプ50を備える。オペレータがおまかせ切替スイッチ49を操作する毎に、走行機体2の作業モードと走行モードとが交互に切り替わるよう構成されている。走行機体2が作業モードから走行モードに切り替わると、バックアップモード及び旋回アップモードが共にオフ状態となり、前輪倍速オン4駆モード又はオートブレーキモードであった際には前輪倍速オフ4駆モードとなり、2駆モードであった際には2駆モードを維持し、クイックアップレバー36によるロータリ耕耘機3の昇降が規制されると共に、主変速レバー30がアクセル変速位置である際には、アクセルペダルの操作により主変速機構の変速操作が可能な状態となる。走行機体2が走行モードから作業モードに切り替わると、作業モードから走行モードに切り替える前の、バックアップモード、旋回アップモード、前輪倍速オン4駆モード、オートブレーキモード及び2駆モードのいずれかの状態になり、クイックアップレバー36によるロータリ耕耘機3の昇降が可能な状態になると共に、アクセルペダルの操作による主変速機構の変速操作が規制される。おまかせ切替スイッチ49による作業モード及び走行モードの切り替え情報は、電気信号により制御部52へ送信される。
<液晶表示装置>
また、フロントパネル24は、走行機体2の状態や耕耘作業に関する各種の情報を表示する液晶表示装置51を備え、液晶表示装置51は、図18に示すようにオートダウン状態表示部51a及び報知表示部51eを有する。オートダウン状態表示部51aには、エンジンの温度表示並びに燃料の残量表示からなる温度・燃料表示又は後述するオートダウン制御に関する情報等が表示され、報知表示部51eには、エンジンの回転数表示並びに総使用時間表示からなるエンジン回転数・使用時間表示又はオートダウン制御に関する報知文等が表示される。
<ブロック図>
図7は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、後述するオートダウン制御を実行可能な制御部52は、CPU52b、ROM52c、RAM52d、インターフェース52e等を有するマイクロコンピュータ52aを備えている。制御部52は、ステアリングセンサ15、リフトアームセンサ21、車速センサ11、クイックアップレバー36、主変速レバー30、副変速レバー27、ポジションレバー31、おまかせ切替スイッチ49、オートダウンタイミングボリューム33、上げ高さボリューム32、シャトルレバー35、旋回倍速切替スイッチ43、4駆切替スイッチ42、バックアップ切替スイッチ37、旋回アップ切替スイッチ39、作業機下降速度調節ノブ29及びスタータスイッチ34から入力された信号に基づくマイクロコンピュータ52aの演算により信号が出力され、リフトアームバルブ20及び報知ブザー53を作動すると共に、リフトアップランプ22、おまかせ切替ランプ50、旋回倍速ランプ46、4駆切替ランプ45、旋回アップランプ41、バックアップランプ40、オートブレーキ旋回ランプ47及び自動入ランプ48の点灯及び消灯を制御し、液晶表示装置51に各種の情報を表示させる。
<オートダウン制御>
次に、制御部52が実行する旋回制御としてのオートダウン制御について図8から図17のフローチャート、図18の液晶表示装置51による報知内容及び圃場Hの耕耘作業におけるトラクタ1の走行経路の一例である図19の概略図に沿って説明する。オートダウン制御は、走行機体2が直進走行及び圃場端Jでの旋回を繰り返して往復走行をしながら行う圃場Hの耕耘作業において、圃場端Jに達したトラクタ1がロータリ耕耘機3を上昇させて旋回を行った後で、作業機下降開始領域の境界としての下降開始線に達すると、自動的にロータリ耕耘機3の下降を開始する制御である。
<メインルーチン>
図8は、オートダウン制御のメインルーチンを示すフローチャートである。オペレータがスタータスイッチ34をオン状態にするとメインルーチンが開始されて、液晶表示装置51には図18(a)に示すように、オートダウン状態表示部51aの温度・燃料表示と、報知表示部51eのエンジン回転数・使用時間表示と、からなる、オートダウン解除状態表示が表示される。メインルーチンの実行中は、スタータスイッチ34がオフ状態になるまで、データ取得処理(ステップS1)から自動終了処理(ステップS9)までを順次繰り返す。まず、オペレータは、図19に示す経路L1及び経路L2の方向に圃場Hを往復走行しながら耕耘作業を行う場合の適切な枕地幅Mの測定を行う。具体的には、例えば畦際Eにロータリ耕耘機3の右端又は左端を近接させて畦際Eに沿って走行し、ロータリ耕耘機3による耕耘の幅が分かるような目印を付ける作業等である。
次いで、オペレータは、耕耘作業を行う事前の準備として、各種の設定を行う。まず、おまかせ切替スイッチ49を操作して走行機体2を作業モードに設定し、上げ高さボリューム32の回動位置を上げ高さ調節位置に合わせた後で、オートダウンタイミングボリューム33の回動位置をオフ位置からオン位置にすることで、制御部52は、終了状態としてのオートダウンオフ状態からオートダウンオン状態となり、自動入ランプ48が点滅を開始する。また、オペレータは、旋回倍速切替スイッチ43及び4駆切替スイッチ42を操作して走行機体2を前輪倍速オン4駆モード又はオートブレーキモードに設定し、かつ主変速レバー30及び副変速レバー27を変速操作して主変速機構による変速段と副変速機構による変速段の組み合わせにより決定される総減速比を所定のオートダウン減速比より大きい状態とすることで、オートダウン許可条件が成立して、自動入ランプ48が点灯する。その他、オペレータは、必要に応じて旋回アップ切替スイッチ39及びバックアップ切替スイッチ37の操作により、走行機体2を旋回アップモード又はバックアップモードのオン状態としておく。
メインルーチンが開始されると、制御部52は、所定の旋回開始動作の有無等を検知するデータ取得処理を行う(ステップS1)。ここで、旋回開始動作とは、バックアップモードのオン状態でかつロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態におけるシャトルレバー35の中立位置から後進位置への切り替え、旋回アップモードのオン状態でかつロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態におけるステアリングセンサ15のオフ状態からオン状態への切り替え及びロータリ耕耘機3の昇降停止状態におけるクイックアップレバー36の所定時間t1以上の短上げ操作である。
オペレータは、図19に示す経路L1に走行機体2の向きを合わせ、経路L1に沿って圃場端Jに向かって走行機体2を直進させながら耕耘作業を行う。走行機体2が圃場端Jに近づくと、オペレータはロータリ軸3aの位置を目視で確認しながら耕耘作業を続け、ロータリ軸3aが枕地幅Mの目印が付けられた作業境界Cに達した時、旋回開始動作のいずれか一つを行うと、オートダウン開始フラグが立つ。
なお、本実施の形態においては図19に示すL1、T、L2の経路で説明を行うが、圃場端Jにおける旋回時の走行経路はこれに限られず、例えば走行機体2が畦際Eまで達してからオペレータがステアリングホイール13を時計回りにα2以上回動させ、バックアップモードのオン状態で走行機体2を後進させながら旋回させ走行機体2の向きを経路L2に合わせてもよい。また、圃場端Jでロータリ軸3aが作業境界Cに達した時、オペレータがステアリングホイール13を反時計回りにα2以上回動させて走行機体2を前進させながら左へ略90°旋回させた後、ステアリングホイール13の回動角度を中立位置まで戻した状態で適当な位置まで走行機体2を直進後進させ、次いでステアリングホイール13を反時計回りにα2以上回動させた状態で前進させながら左へ90°旋回させて走行機体2の向きを経路L2に合わせてもよい。
<制御状態処理>
次いで、制御部52は、現在の走行機体2の位置や下降開始線を算出する処理の実行を許可するか否かを判断する制御状態処理(ステップS2)を行う。図9は制御状態処理(ステップS2)のサブルーチンを示す。制御状態処理(ステップS2)が開始されると、制御部52は、まず、制御部52がオートダウンオン状態か否かを判断する(ステップS201)。
制御部52がオートダウンオン状態であるとき(ステップS201のYES)、制御部52は、オートダウン実行フラグが立っているか否かを判断する(ステップS202)。ここで、オートダウン実行フラグとは、制御部52が、旋回中の走行機体2の位置や下降開始線の算出等を行う実行状態としてのオートダウン実行状態のときに立っているフラグであり、オートダウンオン状態でかつオートダウン実行フラグが落ちている状態を便宜的に、オートダウン解除状態と呼ぶこととする。オートダウン実行フラグが落ちているとき(ステップS202のNO)、制御部52は、オートダウン開始フラグが立っているか否かを判断する(ステップS203)。
ステップS203にて、オートダウン開始フラグが落ちているとき(ステップS203のNO)、制御部52は、処理をメインルーチンに戻し、オートダウン開始フラグが立っているとき(ステップS203のYES)、制御部52は、オートダウン開始フラグを落とし(ステップS204)、オートダウン許可条件が成立しているか否かを判断する(ステップS205)。
オートダウン許可条件が成立していないとき(ステップS205のNO)、制御部52は、処理をメインルーチンに戻し、オートダウン許可条件が成立しているとき(ステップS205のYES)、制御部52は、オートダウン実行フラグを立ててオートダウン実行状態になると共に、オートダウン状態表示部51aに前後方向表示部51b、左右方向表示部51c及び警告表示部51dを形成し、警告表示部51dには図18(b)に示す内容を、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cには図18(h)に示す図柄を表示し、報知ブザー53が所定時間t5の間隔で繰り返される短音による報知を開始し(ステップS206)、処理をメインルーチンに戻す。ここで、オートダウン実行フラグが落ちている状態からオートダウン実行フラグが立っている状態に変化した時を旋回開始時と呼ぶこととする。また、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cには、後述する機体情報取得処理(ステップS3)から位置フラグ処理(ステップS10)までの結果に基づいて、図18(h)から(p)に示すいずれかの図柄が表示される。
ステップS202にて、オートダウン実行フラグが立っているとき(ステップS202のYES)、制御部52は、オートダウン許可条件が成立しているか否かを判断し(ステップS207)、オートダウン許可条件が成立していないとき(ステップS207のNO)、つまり、走行機体2が一度オートダウン実行状態で旋回又は耕耘作業を行っていたが、何らかの理由によりオートダウン許可条件が成立しないこととなる操作を行ったとき、制御部52は、自動入ランプ48を点滅させてオートダウン許可条件が成立していないことをオペレータに報知し(ステップS208)、オートダウンリセット処理としてオートダウン実行フラグ及びオートダウン開始フラグを共に落とし(ステップS210)、オートダウン解除状態となる。これは、例えば、耕耘作業が終了したことにより、オペレータがおまかせ切替スイッチ49を操作して走行機体2を作業モードから走行モードへ切り替えた場合等が挙げられる。
ステップS207にて、オートダウン許可条件が成立しているとき(ステップS207のYES)、制御部52は、オートダウン解除フラグが立っているか否かを判断する(ステップS209)。オートダウン解除フラグは、オートダウン実行状態において、自動終了処理(ステップS9)等にて後述するオートダウン解除条件が成立すると立つフラグである。オートダウン解除フラグが落ちているとき(ステップS209のNO)、制御部52は、処理をメインルーチンに戻す。ステップS201にてオートダウンオフ状態であるとき(ステップS201のNO)及びステップS209にてオートダウン解除フラグが立っているとき(ステップS209のYES)のいずれかのとき、制御部52は、オートダウン実行フラグ及びオートダウン開始フラグを共に落とし、オートダウンリセット処理としてオートダウン実行状態を解除してオートダウン解除状態となり(ステップS210)、処理をメインルーチンに戻す。
<機体情報取得処理>
図10は、トラクタの種類や設定等の情報を読み込み、下降開始線を決定する基準となる下降基準線Fを旋回開始時の走行機体2の位置に基づいて算出する機体情報取得処理(ステップS3)のサブルーチンを示す。機体情報取得処理が開始されると、制御部52は、馬力設定の取得として制御部52に予め記憶されているエンジンの最大出力の読み込み(ステップS301)及びタイヤ設定の取得として前輪5や後輪6等からなる走行装置の種類や寸法の読み込みを行う(ステップS302)。走行装置の種類には、一対の前輪5並びに一対の後輪6、一対の前輪5並びに一対のクローラ及び一対のクローラのみ等があり、走行装置の寸法には、クローラの長さ又は前輪5と後輪6との軸間距離、左右の前輪5及び後輪6間の距離等がある。このため、走行装置は本実施の形態に限られず、前輪5とクローラとの組み合わせでもよいしクローラのみでもよい。次いで、制御部52は、走行機体2が前輪倍速オフ4駆モード、前輪倍速オン4駆モード及びオートブレーキモードのいずれであるかを読み込む(ステップS303)。
制御部52には、ステップS301、ステップS302及びステップS303の結果の様々な組み合わせに対応する旋回内周及び旋回外周が予め記憶されており、制御部52は、上記結果の組み合わせに対応する旋回内周及び旋回外周を読み込む(ステップS304)。ここで、旋回内周及び旋回外周とは、ステアリングホイール13が左右いずれかの最大回動角度まで回動された状態で走行機体2が360°旋回した場合における旋回内側及び旋回外側の後輪6の移動距離である。
次いで、制御部52は、ステップS304により読み込んだ旋回内周及び旋回外周に基づいて、旋回内周及び旋回外周の平均値である旋回円周を算出し(ステップS305)、この旋回円周に基づいて旋回半径rを算出する(ステップS306)。旋回半径rは、ステアリングホイール13が左右いずれかの最大回動角度まで回動された状態で走行機体2が旋回する場合に、機体基準点2aが描く円弧軌跡の半径であり、旋回円周を円周率の2倍で除算して算出される。
次いで、制御部52は、制御部52に予め記憶されている、後輪6の回転軸とロータリ3bの着地時におけるロータリ軸3aとの平面視における距離であるヒッチ長さAを読み込む(ステップS307)と共に、車速センサ11により測定された車速を読み込み(ステップS308)、ダッシング高さ、上げ高さボリューム32の回動位置及び作業機下降速度調節ノブ29の回動位置を読み込み、車速に基づいてロータリ耕耘機3が下降を開始してから着地するまでに機体基準点2aが移動する下降走行距離Dを算出する(ステップS309)。ここで、ダッシング高さとは、ロータリ3bが回転した状態で接地した際にロータリ3bの回転力により走行機体2が急加速しないよう、ロータリ耕耘機3が所定の高さまで下降した後は下降速度を減少させてゆっくりと接地させる際に、予め設定される下降速度の変化点となる高さである。
制御部52は、図19に示すように、平面視において、旋回開始時の機体基準点2aの位置、即ち旋回開始位置を原点Oとして、この時の後輪6の回転軸である横軸X及び横軸Xに直交すると共に原点Oを通過して、旋回開始時の走行機体2の後方をプラス方向とする縦軸Yによる2次元の直交座標系を設定し、機体情報取得処理(ステップS3)により行われるステップS307からステップS309の結果に基づいて、座標系上に、Y座標のみで定義されて下降開始線を算出する基準となる下降基準線Fを設定する(ステップS310)。また、座標系上における走行機体2の位置は、機体基準点2aの横軸X方向のX座標及び縦軸Y方向のY座標により特定される。
旋回後に着地したロータリ耕耘機3のロータリ軸3aの位置が、旋回開始時の着地した状態におけるロータリ耕耘機3のロータリ軸3aの位置である作業境界Cと一致する位置、即ち旋回開始時の走行機体2の向きと旋回後の走行機体2の向きが逆方向である状態で、機体基準点2aのY座標がヒッチ長さAの2倍と等しくなる作業再開位置Gでロータリ耕耘機3が着地して耕耘作業が再開されると、畦際Eからの枕地幅Mを揃えて耕耘作業をすることができる。経路L2に沿って走行機体2が走行中に、作業再開位置Gより下降走行距離D手前で下降が開始されると、走行機体2が圃場端Jで旋回をする際に走行機体2の走行を止めることなく、作業再開位置Gから耕耘作業を再開することができる。この場合における、作業再開位置GのY座標から下降走行距離Dを減算したY座標が下降基準線FのY座標となる。制御部52は、下降基準線Fを算出すると、処理をメインルーチンに戻す。また、オペレータは、オートダウンタイミングボリューム33の操作により、下降基準線Fに対してロータリ耕耘機3の下降を開始する位置のY座標を、所定長さであるSを用いて、最小−Sから最大+Sの範囲で調節した下降設定線を設定することができる。
<機体角度処理>
図11は、オートダウン実行状態における走行機体2の向きの変化を算出し、算出結果に基づいて旋回の完了を判断する機体角度処理(ステップS4)のサブルーチンを示す。制御部52は、オートダウン実行フラグが立っている、走行機体2の車速が0以外である及びステアリングセンサ15がオン状態である、を全て満たすか否かを判断し(ステップS401)、全て満たすとき(ステップS401のYES)、車速及び旋回半径rに基づいて微小時間dtにおける走行機体2の向きの変化、即ち角度変化量を算出し(ステップS403)、角度変化量を累積して、旋回開始時における走行機体2の向きと演算時点における走行機体2の向きとが成す角度である機体角度を算出する(ステップS404)。ステップS401にて、上記いずれかの条件を満たさないとき(ステップS401のNO)、角度変化量を0として(ステップS402)、機体角度を算出する(ステップS404)。
オペレータによるいずれかの旋回開始動作が行われると、PTO軸からロータリ耕耘機3への動力伝達が遮断されてロータリ耕耘機3は上限高さまで上昇し、オートダウンオン状態でありかつオートダウン開始条件及びオートダウン許可条件が全て成立している場合には、オートダウン実行状態となり、圃場Hにおける走行機体2の位置や向きの演算が開始される。このとき報知ブザー53からは所定時間t5の間隔で繰返される短音による報知が開始され、警告表示部51dには図18(b)に示すオートダウン注意表示「AUTODOWN/下降注意」が表示され、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cには、図18(h)の図柄が表示される。オペレータは、ステアリングホイール13を時計回りに最大回動角度まで回動して半径が旋回半径rとなる円弧状の経路Tに沿って走行機体2を走行させる。
次いで、制御部52は、機体角度が90°以上であるか否かを判断し(ステップS405)、機体角度が90°未満であるとき(ステップS405のNO)、制御部52は、旋回未達状態と判断し、機体角度が20°未満であれば、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(h)に示す図柄を表示させ、20°以上であれば、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(i)に示す図柄を表示させて(ステップS406)、処理をメインルーチンに戻す。左右方向表示部51cは、それぞれ外形線のみが表示される非表示状態と外形線の内部が外形線と同一色で表示される表示状態とが切り替え可能な矩形の表示部51iが、前後方向表示部51bの左右両側に3個ずつ左右方向へ並べられており、表示状態の表示部51iが右のみに表示されているときは、オペレータがステアリングホイール13を時計回りに回動した状態で走行機体2を走行させると、下降開始線に近づくことが出来ることを意味している。また、前後方向表示部51bに表示される図柄が図18(h)に示す向きとなっているときは、走行機体2の後方に下降開始線があることを意味しており、前後方向表示部51bに表示される図柄が図18(j)に示す向きとなっているときは、走行機体2の前方に下降開始線があることを意味している。オペレータは、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cを見ながらステアリングホイール13を時計回りに最大回動角度まで回動した状態を維持しつつ、経路Tに沿って走行機体2の旋回を継続する。
ステップS405にて、機体角度が90°以上であるとき(ステップS405のYES)、制御部52は、旋回済状態と判断し(ステップS407)、旋回角度条件を達成しているか否かを判断する(ステップS408)。旋回角度条件の達成とは、機体角度が旋回を完了したと判断される所定の旋回完了角度範囲内であることをいう。旋回完了角度範囲は、α3<α4、である所定角度α3及びα4を用いて、機体角度が180°±α3の範囲外から180°±α3の範囲内に変化後は、旋回完了角度範囲は180°±α4となり、機体角度が180°±α4の範囲内から180°±α4の範囲外に変化後は、旋回完了角度範囲は180°±α3となる。このように、機体角度が旋回完了角度範囲内にあるか否かにより旋回完了角度範囲を変化させることにより、機体角度が旋回完了角度範囲の上限又は下限付近であるときに頻繁に処理が切り替わることを防いでいる。
ステップS408にて、旋回角度条件を達成していないとき(ステップS408のNO)、制御部52は、旋回角度が旋回完了角度範囲より小さい場合は、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(j)に示す図柄を表示させ、旋回角度が旋回完了角度範囲より大きくかつ270°以下である場合は、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(m)に示す図柄を表示させ、旋回角度が270°を超え300°未満である場合は、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(n)に示す図柄を表示させ旋回角度条件フラグを落として(ステップS409)、処理をメインルーチンに戻す。
ステップS408にて、旋回角度条件を達成しているとき(ステップS408のYES)、制御部52は、座標系上の演算時点における機体基準点2aの座標、即ち現在位置のY座標が下降開始線からマイナス方向に所定距離以内である場合は、前後方向表示部51b及び前後方向表示部51bの左右に隣接する表示部51iが共に表示状態である図18(p)に示す図柄を表示させてかつ報知ブザー53による短音の間隔をt5より短い所定時間t6に変化させて下降開始線への到達が近いことをオペレータに予告報知し、上記以外の場合は、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(k)に示す図柄を表示させ、旋回角度条件フラグを立てて(ステップS410)、処理をメインルーチンに戻す。
オペレータは左右方向表示部51cに図18(k)に示す図柄が表示されたことを確認して、ステアリングホイール13を中立位置に戻し、左右方向表示部51cに図18(p)に示す図柄が表示されるまで、経路L2に沿って走行機体2を経路L1と平行に直進走行させる。
<角度演算>
図12は、機体角度に基づいて、現在位置を演算する角度演算(ステップS5)のサブルーチンを示す。まず、制御部52は、角度変化量、機体角度及び車速を読み込み(ステップS501)、角度変化量、機体角度及び車速に基づいて微小時間dtにおける座標系上の走行機体2の位置の変化、即ち座標変化量を算出する(ステップS502)。次いで、制御部52は、走行機体2の車速が0以外であるか否かを判断し(ステップS503)、車速が0であるとき(ステップS503のYES)は、現在位置を維持して(ステップS504)処理をメインルーチンに戻し、車速が0以外であるとき(ステップS503のNO)は、現在位置に座標変化量を累積して新たな現在位置を算出し(ステップS505)、処理をメインルーチンに戻す。
<位置演算>
図13は、下降基準線F、現在位置及び下降設定線に基づいて、下降開始線を演算する位置演算(ステップS6)のサブルーチンを示す。まず、制御部52は、オートダウン実行状態であるか否かを判断し(ステップS601)、オートダウン実行状態でないとき(ステップS601のNO)、下降開始線として下降設定線を採用し(ステップS602)、処理をメインルーチンに戻す。ここで、下降開始線とは、Y座標のみによって定義される変数であり、位置演算(ステップS6)及び詳細を後述する位置判定処理(ステップS7)により、下降基準線F、下降設定線、現在位置、機体角度及び走行機体2の経路に基づく演算の結果により変化し、現在位置が達することでロータリ耕耘機3の下降を開始する直線である。オートダウン実行状態である場合(ステップS601のYES)において、制御部52は、下降設定線のY座標が下降基準線FのY座標以上であるとき(ステップS603のYES)、及び下降設定線のY座標が現在位置のY座標以上かつ下降基準線FのY座標未満であるとき(ステップS605のYES)、下降開始線のY座標として下降設定線のY座標を採用し(ステップS606)、処理をメインルーチンに戻す。
オートダウン実行状態である場合において、制御部52は、下降基準線FのY座標が下降設定線のY座標を超えてかつ現在位置のY座標以下であるとき(ステップS607のYES)、下降開始線のY座標として下降基準線FのY座標を採用し(ステップS608)、処理をメインルーチンに戻す。オートダウン実行状態である場合において、制御部52は、現在位置のY座標が下降設定線のY座標を超えてかつ下降基準線FのY座標未満であるとき(ステップS607のNO)、ステアリングセンサ15がオン状態である又はシャトルレバー35が後進位置に位置しているか否かを判断する(ステップS609)。ステアリングセンサ15がオン状態である又はシャトルレバー35が後進位置に位置しているとき(ステップS609のYES)、制御部52は、下降開始線のY座標として現在位置のY座標に所定のヒステリシス値γを加えた値を採用し(ステップS610)、処理をメインルーチンに戻す。ステップS609にて、ステアリングセンサ15がオン状態又はシャトルレバー35が後進位置に位置している状態のいずれでもないとき(ステップS609のNO)は、処理をメインルーチンに戻す。このように、オートダウン実行状態においては、現在位置と下降設定線のY座標の変化に伴って下降開始線のY座標が変化しながら下降開始線が設定されている状態が維持される。
オペレータは、経路L2に沿って走行機体2を直進させながら前進走行させ、現在位置のY座標が下降開始線から所定距離β以内に達し、前後方向表示部51b及び左右方向表示部51cに図18(p)に示す図柄が表示されて、報知ブザー53の短音の間隔が小さくなったことを確認し、ロータリ耕耘機3の下降の開始が近いことを知る。
<位置フラグ処理>
現在位置が下降開始線に達した場合でも、機体角度が経路L2から大きく乖離しているとき、ステアリングセンサ15がオン状態であるとき及び走行機体2が後進しているときは、走行機体2が適正に下降開始線に達したとは判断されず、ロータリ耕耘機3の下降は開始されない。図14は、走行機体2が適正に下降開始線に達したと判断されるための位置条件が成立しているか否かを判定する位置フラグ処理(ステップS10)のサブルーチンを示す。現在位置のY座標が下降開始線のY座標にヒステリシス値γを加算した値を超えているとき(ステップS11のYES)、制御部52は、位置条件フラグを落とし、位置通過条件フラグを立て(ステップS14)、処理をメインルーチンに戻す。ここで位置条件フラグとは、詳細を後述する位置判定処理において、制御部52がロータリ耕耘機3の下降を開始する下降フラグを立てるための条件の一つであり、現在位置が下降開始線に達したことを示すフラグである。また、位置通過条件フラグは、現在位置が下降開始線に達したがロータリ耕耘機3を下降する条件が整わずに下降開始線を通過したことを示すフラグである。
ステップS11にて、現在位置のY座標が下降開始線のY座標にヒステリシス値γを加算した値以下であるとき(ステップS11のNO)、制御部52は、現在位置のY座標が下降開始線のY座標からヒステリシス値γを減算した値未満であるか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12にて、現在位置のY座標が下降開始線のY座標からヒステリシス値γを減算した値未満であるとき(ステップS12のYES)、制御部52は、位置条件フラグと位置通過条件フラグを共に落とし(ステップS13)、処理をメインルーチンに戻す。ステップS12にて、現在位置のY座標が下降開始線のY座標からヒステリシス値γを減算した値以上であるとき(ステップS12のNO)、制御部52は、位置通過条件フラグが立っているか否かを判断する(ステップS15)。
ステップS15にて、位置通過条件フラグが立っており(ステップS15のYES)かつ現在位置のY座標が下降開始線のY座標未満であるとき(ステップS16のYES)及び位置通過条件フラグが落ちており(ステップS15のNO)かつ現在位置のY座標が下降開始線のY座標を超えているとき(ステップS17のYES)、制御部52は、位置条件フラグを立てる(ステップS18)。ステップS16にて、現在位置のY座標が下降開始線のY座標以上であるとき(ステップS16のNO)及びステップS17にて、現在位置のY座標が下降開始線のY座標以下であるとき(ステップS17のNO)、制御部52は処理をメインルーチンに戻す。
<位置判定処理>
図15は、位置フラグ処理(ステップS10)の結果に基づいてロータリ耕耘機3の下降要求を発する位置判定処理(ステップS7)のサブルーチンを示す。まず、制御部52は、車速が0以外か否かを判断し(ステップS701)、車速が0であるとき(ステップS701のNO)は処理をメインルーチンに戻し、車速が0でないとき(ステップS701のYES)は、ステアリングセンサ15がオフ状態かつシャトルレバー35が前進位置に位置しているか否かを判断する(ステップS702)。ステップS702にて、ステアリングセンサ15がオン状態であるか又はシャトルレバー35が前進位置に位置していないとき(ステップS702のNO)、制御部52は処理をメインルーチンに戻す。ステップS702にて、ステアリングセンサ15がオフ状態かつシャトルレバー35が前進位置に位置しているとき(ステップS702のYES)、制御部52は、位置条件フラグ及び旋回角度条件フラグが立っているか否かを判断する(ステップS703)。
ステップS703にて、位置条件フラグ及び旋回角度条件フラグの少なくともいずれか一方が落ちているとき(ステップS703のNO)、制御部52は処理をメインルーチンに戻し、位置条件フラグ及び旋回角度条件フラグが共に立っているとき(ステップS703のYES)、制御部52は、下降遅延操作がタイムアウトしているか否かを判断する(ステップS704)。ここで、下降遅延操作とは、オートダウン実行状態において、オペレータがクイックアップレバー36を上げ操作した状態でt1より長い所定時間t2以上保持する長上げ操作のことで、下降遅延操作がされている状態においては、図18(d)に示すように警告表示部51dに一時休止シンボル51gが表示され、ロータリ耕耘機3の下降を規制する一時的な休止状態となり、ロータリ耕耘機3の下降を開始する他の条件が成立してもロータリ耕耘機3は上限高さの位置が維持される。下降遅延操作において、オペレータがクイックアップレバー36を長上げ操作して保持した状態で、t2より長い所定時間t3を超えると、下降遅延操作がタイムアウトされる。ステップS704にて、下降遅延操作がタイムアウトされているとき(ステップS704のYES)、制御部52は、タイムアウト処理としてオートダウン解除フラグを立てて、図18(c)に示すように警告表示部51dに所定時間t4が経過するまで停止シンボル51fを表示させ(ステップS707)、処理をメインルーチンに戻す。ステップS704にて、下降遅延操作がタイムアウトされていないとき(ステップS704のNO)、制御部52は、ロータリ耕耘機3の下降を開始する作業機下降フラグを立てて下降要求を発し(ステップ706)、処理をメインルーチンに戻す。また、下降遅延操作後、所定時間t3以内にオペレータがクイックアップレバー36から操作の手を離すと下降遅延操作は解除され、再びロータリ耕耘機3の下降が開始可能な状態となり、警告表示部51dは図18(b)の表示となる。
<下降開始処理>
図16は、下降要求に基づいてリフトアームバルブ20が作動することによりロータリ耕耘機3の下降が開始される下降開始処理(ステップS8)のサブルーチンを示す。まず、制御部52は、作業機下降フラグが立っているか否かを判断し(ステップS801)、作業機下降フラグが落ちているとき(ステップS801のNO)、処理をメインルーチンに戻し、作業機下降フラグが立っているとき(ステップS801のYES)、オペレータによって下降遅延操作がされていないかどうかを判断する(ステップS802)。ステップS802にて、オペレータによって下降遅延操作がされているとき(ステップS802のNO)、制御部52は処理をメインルーチンに戻し、下降遅延操作がされていないとき(ステップS802のYES)、制御部52は、作業機下降フラグを落として(ステップS803)、ロータリ耕耘機3の下降を開始する(ステップS804)と共に、図18(e)に示すように警告表示部51dに下降中シンボル51hを表示させ、報知ブザー53による放音によりオペレータにロータリ耕耘機3が下降中であることを報知して(ステップS805)、処理をメインルーチンに戻す。
オペレータは、ロータリ耕耘機3の下降が開始された状態で走行機体2の前進走行を継続し、PTO軸からロータリ耕耘機3への動力伝達が再開されてロータリ3bが回転し、ロータリ3bが着地すると耕耘作業が再開される。
<自動終了処理>
図17は、オートダウン実行状態における走行機体2の走行経路に基づいてオートダウン実行状態を解除する自動終了処理のサブルーチンを示す。オートダウン実行状態を解除する条件として、制御部52が、オートダウンオフ状態となるオートダウン終了条件や、オートダウン解除状態となるオートダウン解除条件が設けられている。
まず、制御部52は、第1のオートダウン終了条件であるオートダウン終了位置条件についての処理を行う。制御部52は、オートダウン実行状態において、所定の終了距離ε1に基づいて、X座標<−ε1、若しくは、ε1<X座標、かつ、Y座標<−ε1、若しくは、ε1<Y座標、で定義される正方形の外側である終了位置範囲に、現在位置があるか否かを判断する(ステップS901)。ステップS901にて、現在位置が終了位置範囲にあるとき(ステップS901のYES)、制御部52は、報知表示部51eに、図18(g)に示すオートダウン制御位置解除表示「位置制限で自動を切ります」を所定時間t4の間表示し、制御部52をオートダウンオフ状態とする自動終了処理を実行し(ステップS902)、処理をメインルーチンに戻す。所定時間t4が経過後、制御部52は、報知表示部51eに図18(a)に示すエンジン回転数・使用時間表示を表示し、オートダウン状態表示部51aに図18(a)に示す温度・燃料表示を表示する。このように、オートダウン終了条件によりオートダウンオフ状態となった場合、再びオートダウンオン状態とするためには一度オートダウンタイミングボリューム33をオフ位置に回動した後に、制御部52が作業モードであること及び上げ高さボリューム32の回動位置が上げ高さ調節位置に位置していることを共に満たす状態において再びオートダウンタイミングボリューム33の回動位置をオフ位置からオン位置に変更しなくてはならない。
ステップS901にて、現在位置が終了位置範囲に無いとき(ステップS901のNO)、制御部52は、終了距離ε1及び終了距離ε1より小さい所定の報知距離ε2に基づいて、−ε1≦X座標<−ε2、若しくは、ε2<X座標≦ε1、かつ、−ε1≦Y座標<−ε2、若しくは、ε2<Y座標≦ε1、で定義される報知位置範囲に、現在位置があるか否かを判断する(ステップS903)。ステップS903にて、現在位置が報知位置範囲にあるとき(ステップS903のYES)、位置報知処理として報知表示部51eに図18(f)に示すオートダウン制御位置報知表示「位置制限を越えます」を表示し、オペレータにオートダウン実行状態の解除の予告報知を行う(ステップS904)。
ステップS903にて、現在位置が報知位置範囲に無いとき(ステップS903のNO)、制御部52は、報知距離ε2及び報知距離ε2より小さい所定のリセット距離ε3に基づいて、−ε3<X<ε3、かつ、−ε3<Y<ε3、で定義される正方形の内側である終了位置リセット範囲に、現在位置があるか否かを判断する(ステップS905)。ステップS905にて、現在位置が終了位置リセット範囲にあるとき(ステップS905のYES)、制御部52は、終了位置リセット処理として図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を表示する(ステップS906)。
次いで、制御部52は、第2のオートダウン終了条件であるオートダウン終了角度条件についての処理を行う。制御部52は、オートダウン実行状態における機体角度が、所定の終了角度λ1を超えているか否かを判断し(ステップS907)、機体角度が終了角度λ1を超えているとき(ステップS907のYES)、制御部52は、報知表示部51eに、オートダウン角度解除表示「角度制限で自動を切ります」を所定時間t4の間表示し、制御部52をオートダウンオフ状態とする自動終了処理を実行し(ステップS902)、処理をメインルーチンに戻す。所定時間が経過後、制御部52は、図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を、オートダウン状態表示部51aに温度・燃料表示を表示する。
ステップS907にて、機体角度が終了角度λ1を超えていないとき(ステップS907のNO)、制御部52は、機体角度が、終了角度λ1及び終了角度λ1より小さい所定の報知角度λ2に基づいて、λ2<機体角度≦λ1、により定義される報知角度範囲にあるか否かを判断する(ステップS908)。ステップS908にて、機体角度が報知角度範囲にあるとき(ステップS908のYES)、角度報知処理として報知表示部51eに、オートダウン角度報知表示「角度制限を越えます」を表示し、オペレータにオートダウン実行状態の解除の予告報知を行う(ステップS909)。
ステップS908にて、機体角度が報知角度範囲にないとき(ステップS908のNO)、制御部52は、機体角度が、報知角度λ2より小さい所定のリセット角度λ3未満であるか否かを判断する(ステップS910)。ステップS910にて、機体角度がリセット角度λ3未満であるとき(ステップS910のYES)、制御部52は、終了角度リセット処理として図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を表示する(ステップS911)。
次いで、制御部52は、第3のオートダウン終了条件である自動終了積算距離条件についての処理を行う。制御部52は、オートダウン実行状態となってからオートダウン実行状態でなくなるまでの積算走行距離が所定の終了積算距離ξ1を超えているか否かを判断する(ステップS912)。ここで、積算走行距離とは、前進、後進及び一時的な走行停止の有無に寄らない、オートダウン実行状態となってからオートダウン実行状態でなくなるまでの機体基準点2aの移動距離の全てを加算した距離である。ステップS912にて、積算走行距離が終了積算距離ξ1を超えているとき(ステップS912のYES)、制御部52は、報知表示部51eに、オートダウン積算距離解除表示「走行制限で自動を切ります」を所定時間t4の間表示し、制御部52をオートダウンオフ状態とする自動終了処理を実行し(ステップS902)、処理をメインルーチンに戻す。所定時間t4が経過後、制御部52は、図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を、オートダウン状態表示部51aに温度・燃料表示を表示する。
ステップS912にて、積算走行距離が終了積算距離ξ1を超えていないとき(ステップS912のNO)、制御部52は、積算走行距離が、終了積算距離ξ1より小さい所定の報知積算距離ξ2に基づいて、ξ2<積算走行距離≦ξ1、により定義される報知積算距離範囲にあるか否かを判断する(ステップS913)。ステップS913にて、積算走行距離が報知積算距離範囲にあるとき(ステップS913のYES)、制御部52は、積算距離報知処理として報知表示部51eに、オートダウン積算距離報知表示「走行制限を越えます」を表示し、オペレータにオートダウン実行状態の解除の予告報知を行う(ステップS914)。
次いで、制御部52は、オートダウン解除条件である解除前後進条件が成立しているか否かを判断する(ステップS915)。ここで、解除前後進条件の成立とは、制御部52がオートダウン実行状態になってからオートダウン実行状態でなくなるまでの間に、ステアリングセンサ15が一度もオン状態とならない状態で、走行機体2が前後進のみで連続して行った後方への移動距離である直進後方移動距離が、リセット距離ε3より小さい所定の解除前後進距離ρ1を超えたとき、又は制御部52がオートダウン実行状態になった時からステアリングセンサ15が一度もオン状態とならないうちに前後進のみで連続して行った前方への移動距離である直進前方移動距離が、解除前後進距離ρ1を超えたときをいう。ステップS915にて、解除前後進条件が成立しているとき(ステップS915のYES)、制御部52は、自動解除処理を実行し、報知表示部51eに、オートダウン積算距離解除表示「走行制限で制御解除します」を所定時間t4の間表示し、オートダウン解除フラグを立てて(ステップS916)、オートダウン解除状態となり、処理をメインルーチンに戻す。所定時間t4が経過後、制御部52は、図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を、オートダウン状態表示部51aに温度・燃料表示を表示する。
ステップS915にて、解除前後進条件が成立していないとき(ステップS915のNO)、制御部52は、直進後方移動距離又は直進前方移動距離が、解除前後進距離ρ1及び解除前後進距離ρ1より小さい所定の報知前後進距離ρ2に基づいて、ρ2<直進後方移動距離又は直進前方移動距離≦ρ1、により定義される報知前後進範囲にあるか否かを判断する(ステップS917)。ステップS917にて、直進後方移動距離及び直進前方移動距離のいずれか一方が報知前後進範囲にあるとき(ステップS917のYES)、制御部52は、前後進報知処理として報知表示部51eに、オートダウン積算距離報知表示「走行制限を越えます」を表示し、オペレータにオートダウン実行状態の解除の予告報知を行い(ステップS918)、処理をメインルーチンに戻す。
ステップS917にて、直進後方移動距離及び直進前方移動距離が共に報知前後進範囲にないとき(ステップS917のNO)、制御部52は、直進後方移動距離又は直進前方移動距離が、報知前後進距離ρ2及び報知前後進距離ρ2より小さい所定のリセット前後進距離ρ3未満であるか否かを判断する(ステップS919)。ステップ919にて、直進後方移動距離及び直進前方移動距離が共にリセット前後進距離ρ3未満であるとき(ステップS919のYES)、解除前後進距離リセット処理として図18(a)に示すように報知表示部51eにエンジン回転数・使用時間表示を表示し(ステップS920)、処理をメインルーチンに戻す。
また、ステップS1にて、制御部52は、オートダウン解除条件であるクイックアップ解除条件についての処理を行う。オートダウン実行状態においてクイックアップレバー36の所定時間t7以上の下げ操作があったとき、制御部52はロータリ耕耘機3の下降を開始し、オートダウン解除フラグを立てて、オートダウン解除状態となる。また、オートダウン実行状態においてクイックアップレバー36の所定時間t2未満の上げ操作があったとき、制御部52は、警告表示部51dに図18(c)に示す停止シンボル51fを所定時間t4が経過するまで表示させ、オートダウン解除フラグを立てて、オートダウン解除状態となる。
<本実施の形態の効果>
以上より、制御部52は、走行機体2の旋回開始位置を原点Oとして下降開始線を座標系上に設定し、走行機体2の現在位置が下降開始線に達するとロータリ耕耘機3を下降するので、トラクタ1が往復走行して圃場Hの耕耘作業をする場合において、オペレータは、任意の経路を選択して走行機体2を旋回させることができると共に、ロータリ耕耘機3の下降を開始するタイミングを自ら判断する必要がなく、容易に畦際Eからの枕地幅Mを揃えることができる。また、オペレータがロータリ耕耘機3の下降を開始するタイミングを誤る等の誤操作、圃場Hの未耕耘部の形成及び重複耕耘作業等を防ぎ、効率的な耕耘作業を行うことができる。
また、オートダウン実行状態におけるクイックアップレバー36の所定時間t2以上の長上げ操作により、ロータリ耕耘機3の下降を一時的に休止状態にできるので、オペレータは、前輪5又は後輪6のスリップやオペレータが操向操作を誤る等により、オートダウン制御によるロータリ耕耘機3の下降が開始されるタイミングがオペレータの希望する下降が開始されるタイミングより早いことが予想された際に、ロータリ耕耘機3の下降の開始を一時的に休止することができる。また、オペレータは、報知ブザー53による短音の間隔がt5からt6になる予告報知により、ロータリ耕耘機3が下降を開始するタイミングを事前に知ることができると共に、予告報知に基づいてロータリ耕耘機3が下降を開始するタイミングが早すぎると判断した際にはロータリ耕耘機3を一時的に休止状態とし、目視で作業の再開位置を確認しながらロータリ耕耘機3の下降を開始することができる。また、オートダウン実行状態において、クイックアップレバー36の所定時間t2未満の短上げ操作により、オートダウン実行状態が解除され、その状態で行われる所定時間t1以上の短上げ操作により再度オートダウン実行状態となる。これにより、ロータリ耕耘機3の下降を容易に中断できると共に、容易に再びオートダウン実行状態とすることができるので、オペレータは容易に旋回のやり直しを行うことができ、利便性を向上できる。
また、オートダウン解除状態において、バックアップモードのオン状態でかつロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態でのシャトルレバー35の中立位置から後進位置への切り替え、旋回アップモードのオン状態でかつロータリ耕耘機3が上限高さに位置していない状態でのステアリングセンサ15のオフ状態からオン状態への切り替え及びクイックアップレバー36の所定時間t1以上の上げ操作のうち少なくともいずれか1つを検知したことを契機としてオートダウン実行状態となり、旋回開始位置を原点Oとする座標系上に下降開始線を設定するので、オペレータの好み等により異なる多様な旋回操作手順に対応でき、オペレータが行う操作の自由度を向上すると共に、不要な操作手順を減らしてオペレータの操作負担を軽減することができる。
また、機体角度が旋回角度条件を達成していない状態においては、制御部52は、走行機体2が下降開始線に達してもロータリ耕耘機3の下降を行わないので、オペレータが意図しないロータリ耕耘機3の下降を防ぐことができる。また、下降開始線は、旋回開始時における機体基準点2aの前後方向の座標のみによって定義されるので、作業再開時における走行機体2の左右方向の位置についてはオペレータが自由に選択することができ、例えば1列分おきに耕耘作業をすることができるので、操作の自由度を向上すると共に制御部52の処理負担を軽減することができる。
また、制御部52は、前輪倍速オン4駆モード、前輪倍速オフ4駆モード及びオートブレーキモードのそれぞれにおける旋回内周及び旋回外周を予め記憶して、選択されているモードに対応する旋回内周及び旋回外周に基づいて現在位置を算出するので、これらのモードの違いによる下降開始線の計算結果とオペレータがロータリ耕耘機3の下降開始を期待する位置との誤差を低減し、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。
また、制御部52は、圃場Hでの耕耘作業に不適な2駆モード又は所定の減速比以下の高速段が選択されている際にはオートダウン実行状態とはしないこととしたので、オペレータが意図しないロータリ耕耘機3の下降を防ぐことができる。また、制御部52は、ロータリ耕耘機3の上限高さ及びオートダウン実行状態における車速に基づいて下降開始線を設定するので、ロータリ耕耘機3が下降を開始してから接地するまでに要する時間の違いによる接地位置のばらつきを防ぎ、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。
また、制御部52は、上げ高さボリューム32の操作により調節されたロータリ耕耘機3の上限高さに基づいて下降開始線を設定するので、ロータリ耕耘機3が下降を開始してから接地するまでに要する時間の違いによる接地位置のばらつきを防ぎ、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。また、作業機下降速度調節ノブ29の操作により、オートダウン制御によるロータリ耕耘機3の下降速度を調節可能とし、制御部52は、ロータリ耕耘機3の下降速度に基づいて下降開始線を設定するので、利便性を向上すると共に、ロータリ耕耘機3が下降を開始してから接地するまでに要する時間の違いによる接地位置のばらつきを防ぎ、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。また、オートダウンタイミングボリューム33により、下降開始線のY座標を調節可能としたので、前輪5及び後輪6等の走行装置のスリップにより下降開始線に誤差が発生する場合や、矩形でない圃場、例えば台形等の圃場で耕耘作業を行う場合にも容易に対応ができ、利便性を向上すると共に、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。
また、制御部52は、オートダウン実行状態になると報知ブザー53の短音によりオペレータに対する報知を開始し、機体角度が旋回完了角度範囲内でかつ機体基準点2aのY座標が下降開始線から手前に所定距離β以下となった際に報知ブザー53の短音の間隔を短縮するので、オペレータはオートダウン実行状態であることを知ることができると共に、下降開始線が近いことを事前に知ることができ、オートダウン制御のロータリ耕耘機3の自動下降による耕耘再開位置とオペレータが希望する耕耘再開位置との差をオペレータが予測することができる。また、制御部52は、オートダウン実行状態になると液晶表示装置51の表示によりオペレータに対する報知を開始し、走行機体2の現在位置を基準とする下降開始線の方向を表示させ、また下降開始線までの距離に応じて表示を変化させるので、オペレータは走行機体2の操向すべき方向を知ることができると共に下降開始線が近いことを事前に知ることができる。これにより、オペレータの操作負担を軽減すると共に、ロータリ耕耘機3が下降を開始する前にオートダウン制御のロータリ耕耘機3の自動下降による耕耘再開位置とオペレータが希望する耕耘再開位置との差をオペレータが予測することができる。
また、制御部52は、オートダウン実行状態における走行機体2の現在位置及び機体角度を算出し、走行機体2が旋回開始位置から所定距離ε1を超えて離れたとき、旋回角度が180°から所定角度以上開いたとき又は走行機体2の積算走行距離が所定距離ξ1を超えたときに、オートダウンオフ状態となるので、圃場Hを往復しながら行う耕耘作業を終えて枕地を走行する際や圃場外へ出た後等において、オペレータが意図しないロータリ耕耘機3の下降を防ぐことができる。
また、直進後方移動距離が所定の前後進解除距離ρを超えたとき又は直進前方移動距離が前後進解除距離ρを超えたとき、制御部52は、オートダウンオン状態を維持したままオートダウン実行状態を解除するので、オペレータが意図しないロータリ耕耘機3の下降を防ぐことができると共に、少ない操作で再びオートダウン実行状態とすることができる。
また、オートダウン実行状態における走行機体2の位置は、高価なジャイロセンサやGPS等を使用せず、安価な接点スイッチや光学センサ等を使用可能なステアリングセンサ15及び車速センサ11によって算出しているので、コストを抑制できる。オートダウン制御において、エンジンの最大出力、前輪5及び後輪6等の走行装置の種類や寸法により異なる旋回半径rの値に基づいて走行機体2の現在位置及び機体角度を算出するので、旋回半径rが異なる走行機体2間で制御部52を共通化できる。また、前輪倍速制御やオートブレーキ制御が実行されているか否かに基づいて走行機体2の旋回半径rを算出し、この旋回半径rにより走行機体2の現在位置及び機体角度を算出するので、走行機体2の現在位置の算出精度が向上し、畦際からの枕地幅Mを所定の幅に高い精度で揃えることができる。
なお、車速は一方の後輪6の回転及び後輪駆動軸の回転を検出することとしたが、代わりに他の部分の回転を検出してもよく、例えば後輪駆動軸の回転の代わりにドライブシャフトの回転を検出しても良いし、左右両方の後輪6の回転を検出してもよい。なお、主変速機構及び副変速機構は多段状の変速機構であることとしたが、エンジンの回転数と後輪6の回転数の比である総減速比が検知できるようになっていれば、主変速機構及び副変速機構は無段状の変速機構でもよいし、いずれか一方のみを備える構成としてもよい。なお、旋回開始動作としてポジションレバー31の操作によるロータリ耕耘機3の上昇操作を加えてもよい。
なお、オペレータに対する視覚的な報知は液晶表示装置51の図柄や報知文の変化によることとしたが、代わりに液晶以外の有機ELディスプレイや、LEDランプのドットマトリクス表示装置による表示でもよいし、発光する表示装置の色や位置の変化で報知を行ってもよい。なお、制御部52に対する入力を行う各種の操作具は、代わりに液晶表示装置51に設けられたタッチパネルであってもよいし、無線通信が可能な走行機体2の外部に設けられた入力装置であってもよい。なお、オペレータが乗車せずに離れたところからトラクタ1を操縦する遠隔操作装置を備える構成とし、モーターや油圧制御等によりステアリング装置が駆動されて前輪5が操舵される構造としてもても良い。なお、ステアリングホイール13は、揺動又は水平動可能なレバーやボタン等でもよいし、ステアリングホイール13の操作はオン状態とオフ状態とのいずれかの検知に限られず、操作角度を数値で検出可能として操作角度に応じて算出した旋回半径rに基づいて制御部52が演算を可能な構成としてもよい。なお、ステアリングホイール13の操作はステアリングホイール13の回動を直接検知してもよいし、タイロッドの移動量や前輪5の傾き量で検知する構成としてもよい。なお、制御部52はディスクリート回路により形成されていてもよいし、半導体集積回路素子として一体に形成されていてもよい。
なお、上記実施の形態はロータリ耕耘機3を備えるトラクタ1について説明したが、これに限られず、作業機は代掻き作業機やプラウ等でもよいし、田植機等、走行機体2に昇降可能な作業機が設けられている他の作業車輌にも同様に適用可能である。