JP6803191B2 - 透明導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、透明導電性フィルムの製造方法に関する。
ディスプレイまたはタッチパネル等の表示デバイスに用いられる透明導電性フィルムでは、電気特性として、表面のシート抵抗を制御することが重要である。一般に、シート抵抗という電気特性と透過率という光学特性とは、トレードオフの関係にあるため、電気特性と光学特性とのバランスを考慮した様々な透明導電性フィルムが提案されている。
例えば、特許文献1には、0.3〜20mm線幅を有する金属細線をストライプ状に並べた金属細線層に、透明導電性酸化物層を被覆させた透明導電性フィルムが記載されている。
国際公開第2013/035283号公報
電極として機能する金属細線は、その金属光沢によって、ギラツキが視認される。特に金属細線が銅製の場合、特有のあかがね色から、比較的強いギラツキが視認される。このギラツキを抑制する手段として、例えば、金属細線表面の黒化処理が挙げられる。黒化処理としては、金属を酸化する方法または試薬による表面処理等が挙げられる。
また、金属の黒化処理は、金属膜を細線化するパターニング前、すなわち均一な金属膜に対する処理が一般的であり、ドライプロセスで金属膜を形成する場合、金属膜製膜後に、それに対して酸化膜等を製膜させたり、試薬によって表面処理したりし、この後に、パターニングが行われる。そのため、このような透明導電性フィルムでは、金属細線の側面は黒化処理されていないため、側面からギラツキが視認される。
その上、このような透明導電性フィルムが、太陽電池、有機発光ダイオード、または発光ダイオード等に用いられた場合、透明導電性フィルム上の積層体と、金属細線の側面とが直接接触することとなり、耐久性に問題が生じる。また、金属細線の側面を、金属細線の上面とは別途に黒化処理する方法もあるが、この場合、透明導電性フィルムの生産効率が下がる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、ギラツキを抑えた耐久性の高い透明導電性フィルムを提供するとともに、そのような透明導電性フィルムを高い生産性で製造する製造方法を提供することにある。
透明基板と、その透明基板の主面の面上側に配置された金属細線の層とを含む透明導電性フィルムの製造方法は、以下の通りである。透明基板の表面と金属細線の表面とに対して、一度の製膜で黒化処理層を製膜する工程が含まれる。そして、この工程にあって、透明基板の表面に対する黒化処理層の製膜速度と、金属細線の表面に対する黒化処理層の製膜速度とが異なる。
透明導電性フィルムの製造方法は、透明基板と、その透明基板の主面の面上側に配置された金属細線の層と、前記主面から前記金属細線の表面に亘って製膜された黒化処理層と、を含む透明導電性フィルムの製造方法であって、前記黒化処理層を、アルゴン、酸素、および水素の中から選ばれる1種類以上のガスを用いた環境で、カーボンをターゲットとしたマグネトロンスパッタリングで製膜する工程を含み、前記透明基板の表面に対する前記黒化処理層の製膜速度と、前記金属細線の表面に対する前記黒化処理層の製膜速度とが異なり、かつ、前記金属細線の表面における黒化処理層の反射率を縦軸、金属細線の無い部分における透明基板および黒化処理層の透過率を横軸にとった直交2次元プロットにおいて、原点と各プロットを結ぶ線と、前記横軸とのなす角の角度をθとした場合、θの値が21°以上31°以下である。
本発明によれば、透明導電性フィルムは、ギラツキを抑えた上に高い耐久性を有する。また、このような透明導電性フィルムは、高い生産性で製造される。
は、透明導電性フィルムの断面図である。 は、透明導電性フィルムの断面図である。 は、透明導電性フィルムの断面図である。 は、透明導電性フィルムの製造工程を示す断面図である。 は、透明導電性フィルムにおける反射率および透過率の測定を説明する説明図である。 は、透明導電性フィルムにおける反射率および透過率を2次元プロットしたグラフである。 は、(A)は銅の模式断面図であり、(B)は銅の上に製膜された炭素膜の黒化処理層を示す模式断面であり、(C)は銅の上に形成された酸化銅の黒化処理層を示す模式断面である。 は、実施例および比較例の反射率および透過率を2次元プロットしたグラフである。
以下、本発明の実施の一形態について説明する。
図1は透明導電性フィルム10の断面図である。透明導電性フィルム10は、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上を有する透明性に優れたフィルムである。この透明導電性フィルム10は、図1に示すように、透明基板14と、その主面(表面14F)の面上側に配置された金属細線15の層(金属細線層16)とを含む。また、金属細線15の表面15F、および透明基板14にて金属細線層16等の積層する側の表面14Fには、黒化処理層11が積層する。
透明基板14は、透明導電性フィルム10の土台となるフィルムであり、少なくとも可視光領域(380nm以上780nm以下の波長領域)で無色透明である。このような透明性を有する透明基板14を用いることから、透明導電性フィルム10も透明性に優れる。
透明基板14の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂が挙げられる。また、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、またはセルロース系樹脂等であってもよい。中でも、安価で透明性に優れることから、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシクロオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。
また、ヤング率等の機械的特性または耐熱性が高い観点から、透明基板14は、二軸延伸により分子を配向させた二軸延伸フィルムであることが好ましい。また、透明基板14は、透明導電性フィルム10の反りを低減する観点から、熱収縮率が約0.2%以下の低熱収縮フィルムであると好ましい。なお、の熱収縮率は、JIS K 7133(1999)に基づいて測定する。
また、透明基板14の厚みは特に限定されないが、10μm以上400μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。透明基板14の厚みが上記範囲内であれば、透明基板14およびそれを用いた透明導電性フィルム10が十分な耐久性と適度な柔軟性とを有する。また、透明基板14の厚みが上記範囲内であれば、透明基板14上に後述する透明導電性酸化物層17をロール・トゥ・ロール方式により製膜することができ、透明導電性フィルム10の生産性が高くなる。
なお、透明基板14の2つの主面のうち少なくとも一方に、光学調整層、反射防止層、ぎらつき防止層、易接着層、応力緩衝層、ハードコート層、易滑層、帯電防止層、結晶化促進層、結晶化速度調整層、または耐久性向上層等の機能性層が設けられていてもよい。
金属細線層16は、金属細線15の集合で形成される層で、透明導電性フィルム10において電極として機能する部分である。この金属細線層16は、透明基板14における2つの主面のうちの一方側の面(表面14F)に配置される。
図1に示される金属細線層16のパターンは、直線状の金属細線15を1列に並べることで、ラインアンドスペースを生じさせたストライプパターンであるが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュパターンまたはハニカムパターン等であっても構わない。
金属細線15の材質は、例えば、金、白金、鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、コバルト、銀、またはニッケル等、さらには、これらの金属を含む合金等が挙げられる。中でも、銀、銀合金、銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金等が好ましい。
また、抵抗率が小さく、安価であり、かつエッチング等によるパターニングが容易といった観点から、銅または銅合金が特に好ましい。また、このような金属細線層16は、例えばアルゴンガスを用いたスパッタリング法により製膜されると好ましい。
なお、銅合金は、銅を50質量%以上含むことが好ましい。このようにすれば、金属細線15で形成される層(金属細線層16)が、50質量%以上の銅を含むことになるためである。
また、金属細線15の長手方向に対する直交断面の断面形状は、特に限定されない。例えば、断面形状は、長方形、正方形、台形、または円形等であってもよいが、断面形状の頂点側と基板側とでは、頂点から基板側に向けて単調で広幅になっていると、金属細線15と透明基板14との密着性の観点から好ましい。なお、本明細書における金属細線15の線幅は、透明基板14と接する部分の幅(長手方向に対する直交断面長)をいう。
金属細線15の厚みも、特に限定されないが、透明性または導電性等の観点から、200nm以上2000nm以下であると好ましく、より好ましくは220nm以上1800nm以下であり、さらに好ましくは250nm以上1600nm以下である。
このような厚みの範囲であると、金属細線15の抵抗率は、1×10−5Ω・cm以下になりやすく好ましい。なお、本明細書における金属細線15の厚みは、金属細線15の長手方向に対する直交断面において、透明基板14の表面に対し垂直方向に沿った最長の長さである。
また、金属細線15の表面15Fとは、透明基板14の表面14Fから最も乖離した面である上面15Tと、この上面15Tから透明基板14に向けて垂れ下がる側面15Sとをいう。なお、図1等では、金属細線15の断面が長方形の例を示しているが、上記したように、これに限定されるものではないため、上面15Tおよび側面15Sが曲面の場合もあり得る。
金属細線層16の開口率は、導電性または透明性を両立する観点から、70%以上95%以下であることが好ましく、75%以上95%以下であることがより好ましく、80%以上95%以下であることがさらに好ましい。なお、金属細線15の開口率は、下記式により算出される。
開口率(%)=((透明基板の表面の面積−透明基板の表面に面する金属細線層の面積)/透明基板の表面の面積)×100
透明基板14の表面14Fの面積および金属細線層16の面積は、顕微鏡観察により、表示基準面における透明基板14の表面14Fの面積および金属細線層16の面積を算出すればよい。理論的には、下記のように算出してもよい。下記式において、aは金属細線15の線幅であり、bは隣接する金属細線15の間隔である。
理論的開口率(%)=(b/(a+b))×100
黒化処理層11は、金属細線15および金属細線15同士の間から露出する透明基板14の表面14Fに形成される層で、金属細線15の金属光沢によるギラツキを防止する。
黒化処理層11の材質は、ギラツキ防止または導電性の観点から、例えば炭素が挙げられる。炭素の形態または同素体については、特に限定されないが、ギラツキ防止の観点から、グラファイト的な構造が好ましい。また、黒化処理層11は、スパッタリング法で製膜されると好ましく、特に、アルゴン、酸素、および水素の中から、少なくとも1種類のガスを用いた環境で、カーボンをターゲットとしたマグネトロンスパッタリングで製膜されると好ましい。
また、黒化処理層11の厚みは、特に限定されないが、ギラツキ防止の観点から、10nm以上50nm以下が好ましく、20nm以上40nm以下がさらに好ましい。
なお、本明細書における黒化処理層11の厚み、および、後述の透明導電性酸化物層17の厚みは、金属細線15の長手方向に対する直交断面において、金属細線15の上面15Tに積層する場合、透明基板14の表面14Fに対し垂直方向に沿った長さであり、金属細線15の側面15Sに積層する場合、透明基板14の表面14Fの面内方向と同方向に沿った長さである。
また、金属細線15の表面15Fにおける上面15Tの黒化処理層11の膜厚が、金属細線15の表面15Fにおける側面15Sの黒化処理層11の膜厚に比べて厚いと、ギラツキを確実に抑えられる。
ところで、以上の透明導電性フィルム10に対して、図1に示すような黒化処理層11の表面11Fに、透明導電性酸化物層17が形成されてもよい(図2参照)。透明導電性酸化物層17は、金属細線層16同様に、透明導電性フィルム10において電極として機能する部分である。
透明導電性酸化物層17の材質は、例えば、酸化インジウム系複合酸化物、酸化錫、または酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。酸化インジウム系複合酸化物としては、例えば、酸化インジウムを主成分とし、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、または酸化セリウム等のドープ不純物を含む複合酸化物が挙げられる。この中でも、酸化インジウムを主成分とし、酸化錫をドープ不純物とする酸化インジウムスズ(ITO)が好適である。
なお、酸化インジウムを主成分とするとは、酸化インジウムを50質量%以上含むことを意味する。そして、透明性または導電性の観点から、透明導電性酸化物層17は、酸化インジウムを87.5質量%以上99質量%以下含むことが好ましく、90質量%以上97質量%以下含むことがより好ましく、90質量%以上95質量%以下含むことがさらに好ましい。
一方で、透明導電性酸化物層17は、ドープ不純物を1質量%以上12.5質量%以下含むことが好ましく、3質量%以上10質量%以下含むことがより好ましく、5質量%以上10質量%以下含むことがさらに好ましい。そして、このような透明導電性酸化物層17は、例えば酸素とアルゴンの混合ガスを用いたスパッタリング法により製膜されると好ましい。
また、ITO等の酸化インジウム系複合酸化物で形成された透明導電性酸化物層17は、結晶質膜であると好ましい。結晶化度は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
透明導電性酸化物層17が結晶化度の高い結晶質膜であれば、光吸収が小さく透明性が高められる上に、環境変化等による抵抗変化が抑制される。また、結晶化度が上記範囲であれば、環境変化に伴う膜質変化が小さいため、透明導電性酸化物層17と黒化処理層11との密着性が向上する。なお、結晶化度は、顕微鏡観察における観察視野内で結晶粒が占める面積の割合から求められる。
なお、結晶質にするための一方法としては、非晶質膜である製膜後の透明導電性酸化物層17に対して、加熱(アニール)が挙げられる、例えば、主成分として非晶質の酸化インジウムを含む透明導電性酸化物層17の場合、80℃以上150℃以下程度の温度で加熱することにより結晶化が起きる。
また、透明導電性酸化物層17の厚みは、特に限定されるものではないが、抵抗を低くし、透過率を高める観点から、20nm以上100nm以下であることが好ましく、25nm以上70nm以下であることがより好ましい。
ところで、以上の透明導電性フィルム10に対して、図3に示すように、透明基板14の主面(表面14F)の面上側に金属細線15が配置されていれば、透明基板14と金属細線15との間に下地層18が介在してもよい。下地層18は、透明基板14と金属細線15との密着性を高める機能を果たす他、金属細線15の金属光沢によるギラツキも抑制する。
下地層18の材質は、例えば、鉄、銅、アルミニウム、若しくはニッケル等の酸化物、窒化物、若しくは酸窒化物等が挙げられる。中でも、透明基板14と金属細線15との密着性を高める観点から銅若しくはニッケルの酸化物若しくは酸窒化物が好ましい。また、下地層18の膜厚は、特に限定されないが、密着性とギラツキ抑制との観点から5nm以上50nm以下が好ましく、20nm以上40nm以下がより好ましい。
なお、下地層18の形成は、蒸着法またはスパッタリング法等のドライプロセスが一般的である。しかし、これに限定されることはなく、めっき法またはナノ粒子コーティング等のウェットプロセスで下地層18が形成されても構わない。
また、図3の透明導電性フィルム10において、必要に応じて、透明導電性酸化物層17を省略しても構わない。
ここで、透明導電性フィルム10の製造方法について説明する。ここでは、下地層18および透明導電性酸化物層17を含む透明導電性フィルム10の製造方法について、図4(図4A〜図4F)を用いて説明する。
まず、図4Aに示すように、透明基板14が準備される。次に、透明基板14の表面14Fに、図4Bに示すように、スパッタリング法で、下地層18が形成される。
そして、図4Cに示すように、この下地層18上に、金属細線層16の基となる金属膜16Bがスパッタリング法で形成される。この後、フォトリソグラフィー法により、図4Dに示すように、金属膜16Bおよび下地層18がパターニングされる。
次に、図4Eに示すように、金属細線15の表面15F、下地層18の側面18S、および透明基板14の表面14Fに対して、黒化処理層11(例えば、炭素膜)がスパッタリング法で形成される。
パッタリング法で黒化処理層11は製膜される。
Figure 0006803191
ただし、

L:スパッタリング装置における1製膜室あたりに設置されるポンプ1台の排気速度(単位:l/s)
n:1製膜室あたりに設置されるポンプの数(単位:個)
P:1製膜室のプロセス圧力(単位:Pa)
V:1製膜室あたりに供給されるガス総流量(単位:sls)
である。
化処理層11が金属細線15、下地層18、および透明基板14に形成された場合、透明基板14の表面14Fにおける黒化処理層11の膜厚をd1、金属細線15の表面15Fにおける上面15Tの膜厚をd2とした場合、d1/d2の値が0.2以下となるようにすることが好ましい。すなわち、金属細線15の表面15F、特に上面15Tには黒化処理層11が厚く積層するものの、透明基板14の表面14Fには薄くしか黒化処理層11が積層しないことが好ましい
そのため、黒化処理層11の製膜に際して、透明導電性フィルム10としての透明性の担保のために、金属細線15同士の間に、黒化処理層11を付着させないためのマスキングが不要であったり、ターゲットと金属細線層16を配置させた透明基板14との間に防着のためのマスクが不要になったりする。そのため、製造工程が簡素化し、透明導電性フィルム10の生産効率が高まる。
また、d1/d2の値から、透明基板14の表面14Fと金属細線15の表面15Fとに対して、一度の製膜で黒化処理層11を形成する工程にあって、透明基板14の表面14Fに対する黒化処理層11の製膜速度と、金属細線15の表面15Fに対する黒化処理層11の製膜速度とが異なることがわかる。つまり、一度の製膜工程にあって、製膜対象物(透明基板14または金属細線15等)に応じて、黒化処理層11の厚み(製膜量)が選択的に変わることを意味する。
また、図5に示すように、透明基板14の表面14Fから測定光を当てることで、金属細線15の表面15F(例えば上面15T)における反射光から反射率Xtを測定するとともに、透明基板14の表面14Fの裏側から測定光を入射させることで、金属細線15の無い部分における透明基板14および黒化処理層11の透過光から透過率Yrを測定した場合、以下のようなことがいえる。すなわち、図6に示すように、反射率を縦軸、透過率を横軸にとった直交2次元プロットを作成すると、原点と各プロットを結ぶ線と、横軸とのなす角の角度をθとしたとき、θの値が21°以上31°以下となる。
θが上記範囲内にあると、金属細線15は、スパッタリング法による黒化処理層11の製膜工程に起因するダメージを受けず腐食しないため、透明基板14から剥離しない。その上、金属細線15の表面15Fには、適量の黒化処理層11が製膜されるため、金属細線15に起因するギラツキは防止される。一方で、透明基板14の表面14Fにおいて、金属細線15の無い部分、すなわち、金属細線15同士の間の透明基板14の表面14Fには、微量の黒化処理層11しか製膜されないため、透明導電性フィルム10としての透明性は担保される。
特に、金属細線15の上面15Tだけでなく側面15Sにも黒化処理層11が製膜されている。そのため、金属膜上に黒化処理層を形成して、その膜および層の両方にパターニングを施すことで金属細線の上面のみを黒化処理層で覆った透明導電性フィルムに比べて、側面15Sに起因する不具合(ギラツキまたは腐食)が抑えられる。
また、一度の製膜工程で、黒化処理層11が金属細線15の上面15Tおよび側面15Sに形成されることから、上面とは別途に側面を有機酸類または無機酸類の試薬で黒化処理層を形成する場合にくらべて、透明導電性フィルム10の製造工程が簡易になる。
その上、側面15Sに対する黒化処理層11が、試薬で形成されないため、金属細線15が腐食し難く、透明基板14から剥離もし難い。また、試薬が絶縁体の場合、側面に厚膜な黒化処理層が製膜されると、透明導電性フィルムとしての抵抗が上昇する虞があるが、θが上記範囲内にある透明導電性フィルム10では、そのような虞はない。
なお、炭素をターゲットとして用いたスパッタリング法で黒化処理層11が形成される場合、金属膜16B(例えば、銅膜)の表面粗さが滑らかにもなる。図7Aに示すような上面16Tを有する銅膜16Bに対し、アルゴンガス雰囲気下において、炭素製のターゲットを用い、スパッタリング方法により炭素膜11Bを製膜すると、図7Bに示すように、銅膜16Bの上面16Tの表面粗さが、製膜前よりも滑らかになる。
一方で、図7Aに示すような上面16Tを有する銅膜16Bに対して、酸素雰囲気下において、銅製のターゲットを用い、スパッタリング方法により酸化銅111を製膜すると、図7Cに示すように、銅膜16Bの上面16Tの表面粗さが、製膜前よりも粗くなる。
このような現象は、アルゴンプラズマか酸素プラズマかの違いによるものである。酸素プラズマの場合、銅膜16Bの上面16Tにおける窪みに対して、酸素プラズマが過度にダメージを与えてしまうため表面粗さが粗くなる。一方、アルゴンプラズマの場合、銅膜16Bの上面16Tにおける突端に対して、製膜が生じるよりもエッチングが優先して生じ、突端が鈍った状態、すなわち表面粗さが滑らかな状態で、炭素膜11Bが製膜される。
そして、表面が比較的滑らか、すなわち表面粗さの低下した上面15Tを有する金属細線15に黒化処理層11が形成されていると、2つの利点が考えられる。1つは、このような黒化処理層11および金属細線層16を含む透明導電性フィルム10上に、他の積層体を配置させたデバイス、例えば、太陽電池、OLED、調光フィルムにおいて、デバイスとしての短絡が防止される点である。これは、黒化処理層11を載せた金属細線15が、積層体を貫通し難いためである。
もう1つは、黒化処理層11の表面11Fに、透明導電性酸化物層17が被覆し易い点である。透明導電性酸化物層17がスパッタリング法で製膜される場合、スパッタ粒子は、黒化処理層11に対して垂直に入射・着膜・膜成長していくため、黒化処理層11の下層の金属細線15の表面15Fが粗い場合、その凹凸に起因して、透明導電性酸化物層17の膜厚が実施的に薄くなってしまったり、凸の頂点への製膜不良が発生したりする虞がある。しかしながら、表面粗さの低下した金属細線15の表面15F上の黒化処理層11に透明導電性酸化物層17が形成される場合、このような虞が低減され、透明導電性酸化物層17が均一に製膜される。
以上のような黒化処理層11が形成された後、図4Fに示すように、透明導電性酸化物層17が製膜され、さらに加熱されて、結晶質の透明導電性酸化物層17が黒化処理層11の表面11Fに形成される。
このような透明導電性酸化物層17の製膜では、黒化処理層11の形成と同じ方法であるスパッタリング法による製膜であると好ましい。このようになっていると、同じドライプロセスを使用することから、製造工程が簡素化され、生産効率が高まる。
また、金属細線層16のパターンに因らず、ターゲットと金属細線層16を配置させた透明基板14との間に防着のためのマスクが不要になるため、巻取式のスパッタリング装置を用いたロール・トゥ・ロール法により、透明導電性酸化物層17等を製膜することもできる。
なお、以上のスパッタリング法において、基板温度は、透明基板14の耐熱温度の範囲であればよく、例えば、60℃以下が好ましく、−20℃以上40℃以下がより好ましい。このような基板温度であれば、透明基板14からの水分および有機物質(例えばオリゴマー成分)の少なくとも一方の揮発が生じ難くなり、それらに起因する透明導電性酸化物層17の不具合が抑えられる。例えば、大部分が非晶質な透明導電性酸化物層17が製膜された後、その層17に水分等が含まれないことで、加熱によって、その層17の結晶化が進みやすくなる。
また、黒化処理層11の表面側に、透明導電性酸化物層17が形成されていれば、必要に応じて、黒化処理層11と透明導電性酸化物層17との間に別の層が介在してもよい。また、透明導電性酸化物層17は、比較的高い透明性を有するので、黒化処理層11の表面11Fの側に形成されていても、上記のθの範囲に変化はない。
なお、以上のような透明導電性フィルム10は、ディスプレイまたはタッチパネル等の表示デバイスの透明電極基板として用いられる。特に、太陽電池、有機発光ダイオード(OLED)、発光ダイオード(LED)、液晶表示素子、または、エレクトロクロミック調光素子等の面で電荷を注入することが求められる受光・発光デバイスの透明電極基板として好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例および比較例において、各種特性は下記のように評価または測定した。
<反射率>
黒化処理層の上面の直交面に対して5°の角度から測定光を入射させ、その反射光における正反射成分を含む値から反射率を求めた。測定には、日本電色社製、「SD7000」を用いた。
<透過率>
透明基板の表面の裏側(裏面)から垂直に測定光(入射光)を入射させることで、金属細線の無い部分における透明基板および黒化処理層を透過してきた光(透過光)の比率(透過光/入射光)から透過率を求めた。測定には、日本電色社製、「NDH7000」を用いた。
<θの求め方>
図6に示すように、反射率を縦軸、透過率を横軸とする直交次元プロットにおいて、測定した反射率および透過率から点(P(X,Y))をプロットし、原点Oとの線分OPと横軸(透過率軸)とのなす角∠POXをθとすると、下記の式(2)から求めた。
θ=arctan(Y/X) … 式(2)
<シート抵抗および耐腐食性>
透明導電性フィルムのシート抵抗は、抵抗率計(ロレスタGP MCP−T710、三菱アナリテック社製)を用いた。そして、透明導電性フィルムを、85℃/85%RH環境下に500時間放置し、その前後のシート抵抗を比較した。シート抵抗が2倍以上上昇したものは「×」、そうでないものは「○」と評価した。
<表面粗さ>
原子間力顕微鏡(NanoNaviII、SII製)により、シリコン製のカンチレバー(SI−DF40、ばね定数:40〜45N/m、共振周波数:250〜390kHz)を用い、0.5μm角の観察範囲で測定した。
<d1/d2>
各層の厚み(膜厚)は、透明導電性フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から測定した。
実施例および比較例は、以下のように製造した。
<透明基板>
透明基板は、MD(流れ方向)の熱収縮率がほぼ0%、TD(垂直方向)の熱収縮率が0.2%の低熱収縮性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅100cm、長さ10,000m、厚み100μm)を用いた。
<金属細線層>
ターゲットとして銅を用いた。アルゴンガスをスパッタ装置内に導入しながら、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、およびパワー密度122kW/cmの条件にて、透明基板の表面に膜厚500nmの銅の薄膜層をスパッタ製膜した。この銅の薄膜層を形成後、エッチング液として酸化鉄水溶液を用い、フォトリソグラフィー法によりパターニングし、幅6μmの金属細線でハニカム(六角形)パターンを作製した。
<黒化処理層>
ターゲットとして炭素を用いた。アルゴンガスをスパッタ装置内に導入しながら、製膜室内圧力0.6Paまたは1.0Pa、基板温度25℃、およびパワー密度4W/cmの条件にて、金属細線の表面および金属細線同士の間の透明基板の表面に、膜厚20nmの炭素の薄膜層をスパッタ製膜した。なお、黒化処理層の製膜に関する各種条件、および、透明導電性フィルムの評価結果については、表1および図8に記す。
Figure 0006803191
表1の結果から、実施例の場合には、黒化処理層の選択性を示すθおよびd1/d2ともに良好な値となった。一方、θの値が21より小さい比較例1では、耐腐食性が悪かった。この一因は、圧力を高めたことによって銅細線にダメージが入ったものと考えられる。
なお、ガスの供給量と特性とについては1対1の関係は見られず、Mの値に強く依存する結果となった。このことから、スパッタリング装置の製膜室(チャンバー)の容量または製膜室からの排気方法に関わらず、製膜室全体のコンディションを制御することで、良好な黒化処理を施すことが可能であることがわかった。
10 透明導電性フィルム
11 黒化処理層
11F 黒化処理層の表面
14 透明基板
14F 透明基板の表面
15 金属細線
15F 金属細線の表面
15T 金属細線の上面
15S 金属細線の側面
16 金属細線層
17 透明導電性酸化物層
18 下地層

Claims (4)

  1. 透明基板と、
    その透明基板の主面の面上側に配置された金属細線の層と
    前記主面から前記金属細線の表面に亘って製膜された黒化処理層と、
    を含む透明導電性フィルムの製造方法であって
    前記黒化処理層を、アルゴン、酸素、および水素の中から選ばれる1種類以上のガスを用いた環境で、カーボンをターゲットとしたマグネトロンスパッタリングで製膜する工程を含み
    前記透明基板の表面に対する前記黒化処理層の製膜速度と、前記金属細線の表面に対する前記黒化処理層の製膜速度とが異なり、かつ、
    前記金属細線の表面における前記黒化処理層の反射率を縦軸、前記金属細線の無い部分における前記透明基板および前記黒化処理層の透過率を横軸にとった直交2次元プロットにおいて、原点と各プロットを結ぶ線と、前記横軸とのなす角の角度をθとした場合、
    θの値が21°以上31°以下である、
    透明導電性フィルムの製造方法。
  2. 前記透明基板の表面における前記黒化処理層の膜厚をd1、前記金属細線の表面における上面の膜厚をd2とした場合、
    d1/d2の値が0.2以下である請求項に記載の透明導電性フィルムの製造方法
  3. 前記金属細線の表面における上面の前記黒化処理層の膜厚は、前記金属細線の表面における側面の前記黒化処理層の膜厚に比べて厚い請求項またはに記載の透明導電性フィルムの製造方法
  4. 前記黒化処理層の表面側に、さらに、透明導電性酸化物層が形成されてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法
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