本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置は、回転電機と、内燃機関の動力が伝達されるディファレンシャル装置と、回転電機とディファレンシャル装置との間で動力を伝達する動力伝達装置とを備え、動力伝達装置が、回転電機側に設けられた第1のスプロケットと、ディファレンシャル装置側に設けられ、第1のスプロケットよりも下方に設けられた第2のスプロケットと、第1のスプロケットと第2のスプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備えた車両用駆動装置であって、車両の前進走行時で、かつ、回転電機の回生時において、チェーンが、第1のスプロケットと第2のスプロケットとの間で第1のスプロケット側から第2のスプロケット側に移動する張り側の第1のチェーン部と、第2のスプロケット側から第1のスプロケット側に移動する緩み側の第2のチェーン部とを構成し、第2のチェーン部側に、第2のチェーン部の移動方向に沿って延び、第2のチェーン部に接触して第2のチェーン部の移動を案内するチェーンガイドが設けられており、チェーンガイドが、付勢部材によって第1のチェーン部に向かって付勢されている。 これにより、チェーンケースを小型化することができ、チェーンと第2のスプロケットとの間で異音が発生することを防止できる。
以下、本発明に係る車両用駆動装置の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図11は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置を示す図である。図1、図3から図11において上下左右方向は、車両に搭乗する運転者から見た方向を示している。
まず、構成を説明する。図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、エンジン2(図2参照)と駆動装置3とを備えている。本実施例のエンジン2は、本発明の内燃機関を構成し、駆動装置3は、本発明の車両用駆動装置を構成する。
図2において、エンジン2は、シリンダブロック4の内部にクランクシャフト5を回転自在に備えており、クランクシャフト5は、図示しないコネクティングロッドを介して図示しない複数のピストン(本実施例では4つ)に連結され、混合気の点火によるピストンの上下運動を回転運動に変換する。エンジン2は、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等から構成されており、気筒数は、特に限定されるものではない。
図1において、駆動装置3は、変速機ケース6を備えている。変速機ケース6は、車両1のダッシュパネル1Aに対して前側に位置してエンジン2の車幅方向一端部である左端部に連結されている(図2参照)。変速機ケース6にはクランクシャフト5の回転を変速する変速機9(図2参照)が収容されている。
ダッシュパネル1Aにはマスターバック51等の車載部品が取付けられており、マスターバック51は、図示しない吸気管の圧力を利用して図示しないブレーキペダルの踏力を増幅する。
図2において、変速機9は、クランクシャフト5の回転中心軸と同軸上に設置され、複数の変速歯車10を有して変速機ケース6に回転自在に支持されるインプットシャフト11と、インプットシャフト11と平行に配置されるとともに、複数の変速歯車12を有して変速機ケース6に回転自在に支持されるカウンタシャフト13とを備えている。
変速機9は、任意の変速歯車10、12の間に図示しないシフトアンドセレクトシャフトやシフトフォーク等の変速装置によって駆動される複数のシフトスリーブ14から16を備えている。
変速機9は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーやシフトケーブル等の操作装置によって変速装置が操作されると、シフトスリーブ14から16のいずれか1つがインプットシャフト11またはカウンタシャフト13の軸線方向に移動して変速歯車10、12のいずれか1つを選択的に噛み合わせる。
これにより、インプットシャフト11の回転、すなわち、クランクシャフト5の回転が変速されてカウンタシャフト13に伝達される。変速装置や操作装置は、変速機ケース6の上面に設けられている。
変速機ケース6にはクラッチ17が収容されており、クラッチ17は、図示しないクラッチペダルの操作に伴ってクランクシャフト5とインプットシャフト11との間で動力を切断することや、伝達可能とすることにより、エンジン2の動力を変速機9に伝達、あるいは動力の伝達を遮断する。
変速機ケース6にはディファレンシャル装置18が収容されている。ディファレンシャル装置18は、外周部にファイナルドリブンギヤ19が取付けられ、ファイナルドリブンギヤ19と共に一体回転するデフケース20と、デフケース20に回転自在に取付けられた一対のピニオンギヤ21(図示1つ)と、ピニオンギヤ21に噛合する左右一対のサイドギヤ22とを備えている。
サイドギヤ22には左右の駆動輪23L、23Rに連結されるドライブシャフト24L、24Rがスプライン嵌合されている。
ファイナルドリブンギヤ19は、カウンタシャフト13の端部に設けられたファイナルドライブギヤ25に噛合しており、ファイナルドライブギヤ25によりファイナルドリブンギヤ19が回転されると、デフケース20がサイドギヤ22の軸心回りに回転する。
デフケース20の動力は、ピニオンギヤ21を介してサイドギヤ22にトルク配分されて伝達され、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪23L、23Rが回転することにより、車両1の走行が行われる。このようにディファレンシャル装置18にはエンジン2の動力が伝達される。
図1、図3において、変速機ケース6の外周部にはモータジェネレータ26が設けられている。図1において、モータジェネレータ26は、変速機ケース6の前部に位置し、減速機27のチェーンケース28に取付けられている。本実施例のモータジェネレータ26は、本発明の回転電機を構成し、減速機27は、本発明の動力伝達装置を構成する。
図2、図4、図5において、減速機27は、インプットシャフト29を備えており、インプットシャフト29は、チェーンケース28に回転自在に収容されている。インプットシャフト29は、モータジェネレータ26の回転軸26A(図2参照)と同軸になるように回転軸26Aに連結されており、インプットシャフト29の外周部にはスプロケット29Aが形成されている。
減速機27は、中間シャフト30を備えており、中間シャフト30は、チェーンケース28に回転自在に収容されており、外周部にスプロケット29Aよりも大径のスプロケット30Aおよびスプロケット30Aよりも小径のスプロケット30Bが形成されている。
中間シャフト30のスプロケット30Aにはチェーン32が巻き掛けられており、チェーン32は、インプットシャフト29のスプロケット29Aに巻き掛けられている。これにより、スプロケット30Aとスプロケット29Aとはチェーン32によって連結される。
減速機27は、アウトプットシャフト31を備えており、アウトプットシャフト31は、チェーンケース28に回転自在に収容されている。アウトプットシャフト31の外周部にはスプロケット30Bよりも大径のスプロケット31Aが形成されており、スプロケット31Aにはチェーン33が巻き掛けられている。チェーン33は、中間シャフト30のスプロケット30Bに巻き掛けられており、スプロケット31Aとスプロケット30Bとはチェーン33によって連結されている。
図2において、アウトプットシャフト31は、出力ギヤ34に連結されている。出力ギヤ34は、ファイナルドリブンギヤ19に対して前方でかつ、下方に配置されるように変速機ケース6に収容されており、ファイナルドリブンギヤ19に噛合している。
出力ギヤ34の回転中心軸は、アウトプットシャフト31と同一軸上に設置されており、ファイナルドリブンギヤ19の回転中心軸は、ドライブシャフト24Lの回転中心軸と同一軸上に設置されている。
このような構成を有する減速機27において、モータジェネレータ26の力行時に、モータジェネレータ26の動力がインプットシャフト29、チェーン32、中間シャフト30、チェーン33、アウトプットシャフト31を介して出力ギヤ34に減速して伝達された後、ファイナルドリブンギヤ19を介してデフケース20に伝達される。
これにより、エンジン2の動力がモータジェネレータ26によってアシストされて左右の駆動輪23L、23Rに伝達され、車両1の高負荷運転時に車両1の走行性能を向上させることができる。
一方、モータジェネレータ26の回生時(車両1の加速時あるいは減速時)にはデフケース20の回転が、ファイナルドリブンギヤ19、出力ギヤ34、アウトプットシャフト31、チェーン33、中間シャフト30、チェーン32、インプットシャフト29を介してモータジェネレータ26に伝達される。これにより、モータジェネレータ26によって回生が行われる。
さらに、変速機9の変速時において、任意のギヤ段から任意のギヤ段に切換えられる最中において、エンジン2からディファレンシャル装置18に伝達される動力が一時的に遮断される状態にあっても、モータジェネレータ26から減速機27を介してディファレンシャル装置18に動力を伝達することで、エンジン2の駆動力の断絶によって車両1のドライバビリティが悪化することを防止することができる。
ドライブシャフト24Rの外周にはトランスファ装置37が設けられており、トランスファ装置37は、変速機ケース6に連結されている。
トランスファ装置37は、変速機ケース6に取付けられたトランスファケース38と、トランスファケース38に回転自在に支持され、デフケース20の中空軸部にスプライン嵌合された中空状のギヤ軸39とを有する。
トランスファ装置37は、トランスファケース38に回転自在に支持され、ギヤ軸39の外周部に形成されたギヤ39aに噛合するギヤ40aを有するベベルギヤ軸40と、ベベルギヤ軸40の外周部に取付けられ、プロペラシャフト41の出力ギヤ41aに噛合するベベルギヤ40bとを備えている。
トランスファケース38は、ディファレンシャル装置18の動力をギヤ39a、ギヤ40aおよびベベルギヤ40bを介して出力ギヤ41aに伝達した後に、プロペラシャフト41を介して従動側の図示しないドライブシャフトに伝達し、従動側のドライブシャフトを介して後輪を駆動する。これにより、四輪駆動が実現される。すなわち、本実施例の車両1は、フルタイム四輪駆動車として構成される。
なお、アクチュエータによってギヤ軸39をドライブシャフト24Rの軸線方向に移動自在に構成し、二輪駆動時にギヤ軸39のギヤ39aをベベルギヤ軸40のギヤ40aに噛合させず、四輪駆動時にギヤ軸39のギヤ39aをベベルギヤ軸40のギヤ40aに噛合させるようにして、所謂、パートタイム四輪駆動を実現するようにしてもよい。
図4、図5、図7において、チェーンケース28は、スプロケット29Aを備えたインプットシャフト29と、スプロケット30A、30Bを備えた中間シャフト30と、スプロケット31Aを備えたアウトプットシャフト31と、チェーン32、33とを収容する第1のケース61を備えている。
図7において、チェーンケース28は、第1のケース61の接合面61Aに接合された接合面62Aを有し、第1のケース61と共にチェーン収容室63を形成する第2のケース62を備えている。
モータジェネレータ26の回転軸26Aに連結されるインプットシャフト29は、図5、図6に示すように、中間シャフト30よりも上方に設置されており、スプロケット29Aは、スプロケット30Aよりも上方に設置されている。
図1、図4から図6において、チェーンケース28は、車両1の上部方向に延び、チェーン32が収容される垂直ケース部64と、垂直ケース部64から後方に屈曲して水平方向に延び、チェーン33が収容される水平ケース部65とを含んだL字形状に形成されている。なお、垂直ケース部64および水平ケース部65は、第1のケース61および第2のケース62が接合された状態で構成される。
これにより、チェーン32は、車両1の上下方向に延び、チェーン33は、チェーン32と直交するように水平方向に延びて設置される。
図4において、スプロケット29Aの回転中心軸29aとスプロケット30Aの回転中心軸30aとを結んだ第1の仮想線L1は、水平軸Lに対して所定の角度θだけ傾斜しており、チェーン32は、水平軸Lに対して傾いて設置されている。本実施例のスプロケット29Aは、本発明の第1のスプロケットを構成し、スプロケット30Aは、本発明の第2のスプロケットを構成する。
図4、図6において、水平ケース部65にはオイルOが貯留されており、チェーン33の下半分、スプロケット30A、30B、31Aは、オイルOに浸かっている。図4、図5に示すように、インプットシャフト29、中間シャフト30およびアウトプットシャフト31が時計回転方向(図6では反時計回転方向)に回転する車両1の前進走行時において、チェーン32は、第1のチェーン部32Aおよび第2のチェーン部32Bを構成している。
第1のチェーン部32Aは、チェーン32のうち、スプロケット29Aとスプロケット30Aとの間でスプロケット29A側からスプロケット30A側に移動する部位から構成されている。
第2のチェーン部32Bは、チェーン32のうち、スプロケット29Aとスプロケット30Aとの間でスプロケット30A側からスプロケット29A側に移動する部位から構成されている。
チェーンケース28にはチェーンガイド66が設けられており、チェーンガイド66は、第1の仮想線L1に対して下側(地面側)の第2のチェーン部32B側に設置されている。チェーンガイド66は、第2のチェーン部32Bの移動方向に沿って延びており、チェーンガイド66は、第2のチェーン部32Bに接触して第2のチェーン部32Bの移動を案内する。
これにより、第2のチェーン部32Bは、チェーンガイド66によって支持されて緩みが吸収される。
図4において、チェーンガイド66の下端部は、スプロケット29Aに対向するスプロケット30Aの外周端30mを通り第1の仮想線L1と直交する第2の仮想線L2に対して、スプロケット30Aの回転中心軸30a側に延びている。
図8において、チェーンガイド66は、チェーンガイド本体部66Aを備えている。図4から図6において、チェーンガイド本体部66Aは、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32aに接触しており、第2のチェーン部32Bの移動方向に沿って車両1の上下方向に延びている。
図8において、チェーンガイド66は、チェーンガイドカバー部66Bを備えている。図4から図7において、チェーンガイドカバー部66Bは、チェーンガイド本体部66Aから第2のチェーン部32Bの円周方向内周面32b側に延び、L字形状に形成されている。
図9において、チェーンガイド66は、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bによって一端が開口するU字形状の覆い部71が形成されており、覆い部71によって第2のチェーン部32Bの周囲が覆われている。
図4から図6において、チェーンケース28の上部にはブリーザ室67が形成されており、ブリーザ室67は、チェーン収容室63の上方においてチェーン収容室63と分離して形成されている。
具体的には、図4、図5において、第1のケース61の上部には湾曲した第1の仕切壁61Bが形成されている。図6に示すように第2ケース62の上部には湾曲した第2の仕切壁62Bが形成されている。
第1の仕切壁61Bの端部は第2の仕切壁62Bの端部に接合されており、チェーンケース28の内部は、第1の仕切壁61Bおよび第2の仕切壁62Bによってチェーン収容室63とブリーザ室67とに分離される。
図5から図7のいずれかにおいて、ブリーザ室67の上面を構成する第1のケース61の上部および第2のケース62の上部は、円弧状に形成されており、ブリーザ室67の底面を構成する第1の仕切壁61Bおよび第2の仕切壁62Bは、円弧状に形成されている。
これにより、ブリーザ室67は、スプロケット29Aの外周面に沿うように、第2のチェーン部32Bからスプロケット29Aの上方を経由して第1のチェーン部32Aに延びる円弧形状に形成される。
図6、図7において、ブリーザ室67にはチェーン収容室63に連通する空気導入口67Aが設けられており、空気導入口67Aは、第2のケース62に形成されている。
ブリーザ室67にはブリーザ室67とチェーンケース28の外部(外気)とを連通する空気排出口67Bが設けられており、空気排出口67Bは、第2のケース62に形成されている。
図6において、空気導入口67Aは、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32a側であって、車両1の高さ方向においてチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bと重なる位置に形成されている。
ブリーザ室67には空気導入口67Cが形成されており、空気導入口67Cは、第1のケース61の接合面61Aおよび第2のケースの接合面62Aに形成されている。空気導入口67Cは、スプロケット29Aに対して反対側の第1のチェーン部32A側に設置されており、空気導入口67Cは、空気導入口67Aよりも上方に形成されている。本実施例の空気導入口67Aは、本発明の第1の空気導入口を構成し、空気導入口67Cは、本発明の第2の空気導入口を構成する。
図8において、チェーンガイド66のチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面には遮蔽壁66C、66Dが形成されており、遮蔽壁66C、66Dは、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの上下方向に離隔して設けられている。図5において、遮蔽壁66C、66Dは、第2のチェーン部32Bの延びる方向に対して直交する方向に延びている。
図7、図9において、遮蔽壁66C、66Dは、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66bから第2のケース62の内壁面62aに向かって延びており、空気導入口67Aの下方を覆っている。図7、図9に示すように、遮蔽壁66C、66Dの延びる方向の先端66c、66dは、第2のケース62の内壁面62aに接触している。
図7、図10において、第1のケース61の内壁面61aには複数の突出部61Cが形成されている。遮蔽壁66C、66Dが設けられたチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66bと反対側のチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66a(図7から図9参照)は、第1のケース61に形成された突出部61C(図7、図10参照)に接触している。
すなわち、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66aは、第1のケース61の突出部61Cに接触し、外周面66bは、第2のケース62の内壁面62aに接触している。これにより、チェーンガイド66は、第1のケース61の突出部61Cおよび第2のケース62の内壁面62aによって支持される。
本実施例のケース61の突出部61Cは、本発明の一方の内壁面を構成し、ケース62の内壁面62aは、本発明の他方の内壁面を構成する。外周面66aは、本発明のチェーンガイド本体部およびチェーンガイドカバー部の一方の外周面を構成し、外周面66bは、本発明のチェーンガイド本体部およびチェーンガイドカバー部の他方の外周面を構成する。遮蔽壁66C、66Dは、本発明の突起を構成する。
図11において、チェーンガイド本体部66Aには板ばね69が設けられており、板ばね69は、複数のボルト70Aから70Cによってチェーンガイド本体部66Aに固定されている。
図4、図6において、板ばね69は、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32aに対向する第1のケース61の内壁面61bとチェーンガイド66との間に設けられており、チェーンガイド66を第1のチェーン部32Aに向かって付勢されている。
これにより、第2のチェーン部32Bは、板ばね69に付勢されるチェーンガイド66を介して第1のチェーン部32Aに向かって付勢される。本実施例の板ばね69は、本発明の付勢部材を構成する。
次に、作用を説明する。
車両1の前進走行時において、モータジェネレータ26の力行時には、図6に示すようにスプロケット31A、30A、29Aが反時計回転方向(図4、図5では時計回転方向)に回転し、モータジェネレータ26に連結されるスプロケット29Aが駆動側となる。
これにより、第2のチェーン部32Bがスプロケット30A側からスプロケット29Aに引っ張られて、第2のチェーン部32Bが張り側となり、第1のチェーン部32Aが緩み側となる。
第1のチェーン部32Aは、スプロケット29A側からスプロケット30Aに押されるため、第1のチェーン部32Aは、スプロケット30Aに噛み合い、第1のチェーン部32Aが自重によってスプロケット30Aから離れることを防止できる。
第2のチェーン部32Bは、スプロケット30A側からスプロケット29A側に引っ張られるので、スプロケット30Aに強く押し付けられてスプロケット30Aに噛み合い、第2のチェーン部32Bが自重によってスプロケット30Aから離れることを防止できる。
一方、車両1の前進走行時において、モータジェネレータ26の回生を行う場合には、エンジン2の動力が変速機9からディファレンシャル装置18に伝達された後、ディファレンシャル装置18によって左右の駆動輪23L、23Rに伝達される。
このとき、ディファレンシャル装置18の動力は、ファイナルドリブンギヤ19、出力ギヤ34、アウトプットシャフト31、チェーン33、中間シャフト30、チェーン32、インプットシャフト29を介してモータジェネレータ26に伝達される。これにより、モータジェネレータ26によって回生が行われる。
車両1の前進走行時において、モータジェネレータ26の回生時には、図6に示すようにスプロケット31A、30A、29Aが反時計回転方向(図4、図5では時計回転方向)に回転し、ディファレンシャル装置18に連結されるスプロケット31A側のスプロケット30Aが駆動側となる。
これにより、第1のチェーン部32Aがスプロケット29A側からスプロケット30Aに引っ張られて張り側となり、第2のチェーン部32Bが緩み側となる。このため、第1のチェーン部32Aがスプロケット30Aに押し付けられてスプロケット30Aに噛み合い、第1のチェーン部32Aが自重によってスプロケット30Aから離れることを防止できる。以上により、第1のチェーン部32Aにチェーンガイドを設ける必要がない。
ところが、車両1の前進走行時、かつモータジェネレータ26の回生時には、緩み側となる第2のチェーン部32Bは、チェーン32の自重によってスプロケット30Aから離れ易くなり、離れた状態からスプロケット30Aに接触することを繰り返して異音が発生するおそれがある。
特に、車両1の前進走行時における減速時、かつモータジェネレータ26の回生時には、エンジン2の動力が加速時と比べてより顕著に低下するので、緩み側となる第2のチェーン部32Bは、チェーン32の自重によってスプロケット30Aからより一層離れ易くなる。
本実施例の駆動装置3によれば、車両1の前進走行時で、かつ、モータジェネレータ26の回生時において、緩み側となる第2のチェーン部32B側に、第2のチェーン部32Bに接触して第2のチェーン部32Bの移動を案内するチェーンガイド66が設けられている。
これにより、車両1の前進走行時、かつモータジェネレータ26の回生時にチェーンガイド66によって第2のチェーン部32Bの移動を案内しつつ、第2のチェーン部32Bを第1のチェーン部32A側に押し付けることができる。
このため、第2のチェーン部32Bの緩みを吸収することができ、チェーン32の自重によって第2のチェーン部32Bがスプロケット30Aから離れてしまうことを防止して、第2のチェーン部32Bとスプロケット30Aとの間で異音が発生することを防止できる。この結果、運転者に異音による不快感を与えてしまうことを防止できる。
また、モータジェネレータ26の回生時において、張り側となる第1のチェーン部32Aとスプロケット30Aとの間では、上述したように異音が発生することを防止できるので、第1のチェーン部32Aにチェーンガイドを設けることを不要にできる。
これにより、チェーンケース28に1つのチェーンガイド66を設置するスペースを確保すればよく、チェーンケース28に複数のチェーンガイド66を設ける場合よりも、チェーンケース28の小型化を図ることができる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンガイド66が、板ばね69によって第1のチェーン部32Bに向かって付勢されているので、第2のチェーン部32Bを第1のチェーン部32Aに向かって付勢することができる。
これにより、車両1の前進走行時で、かつモータジェネレータ26の力行時に第2のチェーン部32Bが張り側となる場合と、車両1の前進走行時で、かつモータジェネレータ26の回生時に第2のチェーン部32Bが緩み側となる場合とにおいて、板ばね69によって第2のチェーン部32Bの振動を抑制することができる。
これに加えて、チェーンガイド66の寸法公差や熱膨張等に由来するチェーンケース28に対するチェーンガイド66のガタツキを板ばね69によって吸収することができ、チェーンガイド66の振動を抑制することができる。この結果、第2のチェーン部32Bが振動することをより効果的に抑制できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、スプロケット29Aの回転中心軸29aとスプロケット30Aの回転中心軸30aとを結んだ第1の仮想線L1が水平軸Lに対して傾斜して設置されており、第2のチェーン部32Bが第2の仮想線L2に対して下側に設置されている。
これにより、エンジン2の動力が加速時と比べてより顕著に低下する車両1の前進走行時における減速時、かつモータジェネレータ26の回生時において、緩み側となる第2のチェーン部32Bがチェーン32の自重によってスプロケット30Aから離れることをより効果的に抑制できる。この結果、チェーンガイド66を第2のチェーン部32Bのみに設けることができ、チェーンケース28をより効果的に小型化できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンガイド66の下端部は、スプロケット29Aに対向するスプロケット30Aの外周端30mを通り第1の仮想線L1と直交する第2の仮想線L2に対して、スプロケット30Aの回転中心軸30a側に延びている。
これにより、チェーンガイド66によって第2のチェーン部32Bをスプロケット30A側に押し付けながら、第2のチェーン部32Bを移動させることができ、第2のチェーン部32Bがスプロケット30Aから外れてしまうことをより効果的に防止できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンガイド66が、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32aに対向し、第2のチェーン部32Bの移動方向に沿って車両1の上下方向に延びるチェーンガイド本体部66Aを有する。
さらに、チェーンガイド66が、チェーンガイド本体部66Aから第2のチェーン部32Bの円周方向内周面32b側に延びるチェーンガイドカバー部66Bを有し、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bによって第2のチェーン部32Bの周囲を覆っている。
これにより、第2のチェーン部32Bが振動した場合に、第2のチェーン部32Bから発生する騒音をチェーンガイド66によって遮ることができ、騒音がチェーンケース28から外部に漏れることを抑制できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンガイド66は、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66aが第1のケース61の突出部61Cに接触している。
さらに、チェーンガイド66は、第1のケース61の突出部61Cに対向するチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66bから第2のケース62の内壁面62aに向かって延び、延びる方向の先端66c、66dが内壁面62aに接触する遮蔽壁66C、66Dを有する。
これにより、チェーンガイド66を第1のケース61の突出部61Cおよび第2のケース62の内壁面62aによって支持することができ、チェーンガイド66のガタツキをより効果的に防止できる。このため、第2のチェーン部32Bが振動することをより効果的に抑制できる。
一方、本実施例のチェーンケース28において、水平ケース部65にはオイルOが貯留されており、チェーン33の下半分、スプロケット30A、30B、31Aは、オイルOに浸かっている。
これにより、スプロケット31A、30A、30Bの回転に伴ってチェーン33とスプロケット31Aの噛み合い部が潤滑されるとともに、チェーン33とスプロケット30Bの噛み合い部が潤滑される。さらに、チェーン33とスプロケット30Aの噛み合い部が潤滑される。
図6において、上下方向に延びるチェーン32は、チェーン32の移動(周回移動)に伴って水平ケース部65に貯留されたオイルOを、オイルO1で示すように上方に掻き上げる。これにより、チェーン32とスプロケット29Aの噛み合い部が潤滑される。
本実施例の駆動装置3によれば、チェーンガイド66は、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32aに対向し、第2のチェーン部32Bの移動方向に沿って車両1の上下方向に延びるチェーンガイド本体部66Aと、チェーンガイド本体部66Aから第2のチェーン部32Bの円周方向内周面32b側に延びるチェーンガイドカバー部66Bとを含んで構成されている。
これにより、第2のチェーン部32Bによって上方に掻き上げられるオイルO1を、第1のケース61、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bによって囲まれた空間68(図9参照)を通過させることができる。
これにより、第2のチェーン部32Bによって上方に掻き上げられるオイルO1を、第1のケース61、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bによって囲まれた空間68から周囲に拡散されることを防止できる。
したがって、第2のチェーン部32Bによって上方に掻き上げられるオイルO1をスプロケット29Aに効率よく導くことができ、スプロケット29Aとチェーン32との潤滑を効果的に行うことができ、スプロケット29Aとチェーン32との潤滑性を向上できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンケース28は、スプロケット29A、スプロケット30Aおよびチェーン32、33を収容するチェーン収容室63と、チェーン収容室63の上方においてチェーン収容室63と分離して形成されたブリーザ室67とを有する。
ブリーザ室67は、チェーン収容室63に連通する空気導入口67Aと、ブリーザ室67とチェーンケース28の外部とを連通する空気排出口67Bとを有し、空気導入口67Aは、第2のチェーン部32Bの円周方向外周面32a側であって、車両1の高さ方向においてチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bと重なる位置に形成される。
これにより、チェーン収容室63の圧力が上昇したときに、図6に示すように、チェーン収容室63から空気導入口67Aを通して空気aiをブリーザ室67に導入した後に、ブリーザ室67から空気排出口67Bを通してチェーンケース28の外部に排出することができる。これによって、チェーンケース28の圧力が上昇することを防止できる。
特に、本実施例のチェーン収容室63の上方にブリーザ室67を形成し、ブリーザ室67とチェーン収容室63とを空気導入口67Aを介して連通している。これにより、車両1の前進走行時にチェーン32によって掻き上げられたオイルO1がブリーザ室67に侵入することを防止できる。
このため、ブリーザ室67から空気排出口67Bを通してオイルが外部に吹き出してしまうことを防止でき、駆動装置3の周囲がオイルによって汚れてしまうことや、水平ケース部65に貯留されるオイル量が低減することを防止できる。
また、チェーン収容室63の上方にブリーザ室67を形成することで、チェーン収容室63の容積を小さくした場合であっても、チェーン収容室63からブリーザ室67にオイルが侵入し難くできるので、ブリーザ室67の容積を小さくできる。これにより、チェーンケース28の小型化を図ることができる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、チェーンケース28は、スプロケット29A、スプロケット30Aおよびチェーン32、33を収容する第1のケース61と、第1のケース61に接合され、第1のケース61と共にチェーン収容室63を形成する第2のケース62とを含んで構成される。
これに加えて、チェーンガイド66は、第2のチェーン部32Bの延びる方向に対して直交する方向に延びる遮蔽壁66C、66Dを有し、遮蔽壁66C、66Dは、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面から空気導入口67Aの下方を覆うように第2のケース62の内壁面62aに向かって延びる。
これにより、第2のチェーン部32Bによって上方に掻き上げられるオイルO1がチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bによって囲まれた空間から漏れた場合であっても、漏れたオイルを複数の遮蔽壁66C、66Dに衝突させて(図4にオイルO2で示す)、空気導入口67Aに到達することを防止できる。
このため、オイルが空気導入口67Aを通してブリーザ室67に侵入することをより効果的に防止できる。特に、複数の遮蔽壁66C、66Dによって空気導入口67Aの下方を覆うことで、オイルが空気導入口67Aに到達することをより効果的に防止できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、遮蔽壁66C、66Dが、チェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの上下方向に離隔して複数設けられる。これに加えて、遮蔽壁66C、66Dの延びる方向の先端66c、66dは、第2のケース62の内壁面62aに接触し、遮蔽壁66C、66Dが設けられたチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面と反対側のチェーンガイド本体部66Aおよびチェーンガイドカバー部66Bの外周面66aは、第1のケース61の突出部61Cに接触される。
これにより、第1のケース61および第2のケース62に対するチェーンガイド66の接触面積を増加しつつ、チェーンガイド66を第1のケース61および第2のケース62に挟み込んでチェーンケース28に取付けることができる。
このため、チェーンケース28の内部にチェーンガイド66を安定して取付けることができ、チェーンガイド66によって第2のチェーン部32Bを安定して移動させることができる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、ブリーザ室67は、スプロケット29Aの外周面に沿うように、第2のチェーン部32Bからスプロケット29Aの上方を経由して第1のチェーン部32Aに延びる円弧形状に形成される。
さらに、ブリーザ室67は、スプロケット29Aに対して反対側の第1のチェーン部32A側に設置された空気導入口67Cを有し、空気導入口67Cが、空気導入口67Aよりも上方に形成される。
車両1の前進走行時には第1のチェーン部32Aは、スプロケット29Aからスプロケット30A側に移動するので、図6に示すように、第1のチェーン部32Aに付着するオイルO3は、上方から下方に流れる。
これにより、空気導入口67C付近において、第1のチェーン部32Aに付着するオイルが空気導入口67Cに導入されることを防止する部材を設けなくても、第1のチェーン部32Aに付着するオイルが空気導入口67Cに導入されることを防止できる。
一方、車両1の後進走行時には車両1の前進走行時に比べてエンジン2の回転数が低いので、チェーン32の移動速度は、前進走行時の移動速度に比べて小さい。このため、車両1の後進走行時にチェーン32によって掻き上げられるオイルの量は、車両1の前進走行時にチェーン32によって掻き上げられるオイルの量よりも遥かに少ない。
したがって、空気導入口67Cを空気導入口67Aよりも上方に形成することで、車両1の後進走行時に空気導入口67Cを通してブリーザ室67にオイルが侵入することを防止して、ブリーザ室67から空気排出口67Bを通してオイルが外部に吹き出してしまうことを防止できる。
この結果、車両1の前進走行時および後進走行時にブリーザ室67にオイルが侵入することを防止して、チェーン収容室63の空気を、空気導入口67A、67Cからブリーザ室67を通してより多く外部に排出できる。
また、本実施例の駆動装置3によれば、減速機27が、モータジェネレータ26の回転軸26Aと同軸になるようにモータジェネレータ26の回転軸26Aに連結されるインプットシャフト29と、チェーン32を介してインプットシャフト29に連結される中間シャフト30と、チェーン33を介して中間シャフト30に連結されるアウトプットシャフト31とを含んで構成される。
これに加えて、チェーンケース28は、車両1の上部方向に延び、第1のチェーン部32Aが収容される垂直ケース部64と、垂直ケース部64から屈曲して水平方向に延び、第2のチェーン部32Bが収容される水平ケース部65とを含んだL字形状に形成される。
これにより、水平方向に長い水平ケース部65にオイルOを貯留すれば、チェーンケース28の底部である水平ケース部65の底部に十分な量のオイルOを貯留することができる。このため、チェーン33とスプロケット31Aの噛み合い部、チェーン33とスプロケット30Bの噛み合い部およびチェーン33とスプロケット30Aの噛み合い部の潤滑性をより効果的に向上できる。
さらに、チェーンケース28を垂直ケース部64およびオイルOが貯留される水平ケース部65を含んだL字形状に形成することで、水平ケース部65に多量のオイルOを充填しつつ、オイルOの液面から空気導入口67A、67Cまでの距離を長くできる。
このため、車両1の前進走行時および後進走行時のいずれにおいても、空気導入口67A、67Cからブリーザ室67にオイルが侵入することを防止できる。
なお、本実施例の駆動装置3では、付勢部材を板ばねから構成しているが、これに限らず、コイルスプリングや皿ばねであってもよく、これらに限定されるものでもない。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。