JP6800461B2 - シリコンオキシカーバイドの製造方法 - Google Patents
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従来、シリコンオキシカーバイドの製造方法として、特許文献1には、一分子中にR1R2 2SiO1/2単位を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)、一分子中にR1SiO3/2単位を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(B)及び一分子中にR1R2 2SiO1/2単位とR1SiO3/2単位をそれぞれ少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン(C)から選ばれる少なくとも1種と、1分子中にSiH基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(D)とを白金系触媒の存在下、300℃以下の温度で硬化させた硬化物を不活性雰囲気下、600〜1500℃で熱処理する製造方法(但し、R1は炭素原子数2〜10のアルケニル基、R2はそれぞれ独立にアルケニル基でない一価の有機基)が開示されている。非特許文献1には、(PhSiO3/2)0.40(MeSiO1/2)0.35(Me2ViSiO1/2)0.25又は(PhSiO3/2)0.65(MeSiO1/2)0.10(Me2ViSiO1/2)0.25をアルゴン雰囲気下、1200〜1500℃で熱分解する製造方法が開示されている。また、非特許文献2には、ポリフェニルメチルシルセスキオキサンを800〜1200℃で熱分解する製造方法が開示されている。
1.ヒドロシリル基と、ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基とを有するポリシロキサンを熱分解して、シリコンオキシカーバイドを製造する方法。
2.上記ポリシロキサンが、下記一般式(1)で表される構造を有する上記1に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
3.上記ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基がビニル基である上記1又は2に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
4.上記ポリシロキサンの熱分解を、不活性ガス雰囲気下で行う上記1乃至3のいずれか一項に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
本発明は、ヒドロシリル基と、ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基(以下、「不飽和基(a)」という)とを有するポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン原料」という)を熱分解して、シリコンオキシカーバイドを製造する方法である。
上記ポリシロキサン原料に、2個以上の不飽和基(a)を有する場合、これらの不飽和基(a)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。また、2個以上の不飽和基(a)は、同一のケイ素原子に結合していてよいし、複数のケイ素原子に結合していてもよい。
vは、正の数であり、好ましくは1〜100、より好ましくは3〜80、更に好ましくは5〜60である。
wは、正の数であり、好ましくは1〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは3〜20である。
xは、0又は正の数であり、好ましくは0〜40、より好ましくは0〜30、更に好ましくは0〜20である。
yは、0又は正の数であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、更に好ましくは0〜20である。
zは、0又は正の数であり、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜8である。
v、w及びyの間の関係は、好ましくは0≦y/(v+w)≦5であり、より好ましくは0≦y/(v+w)≦2、更に好ましくは0≦y/(v+w)≦1である。
また、v、w、x、y及びzの間の関係は、好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦1であり、より好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦0.5、更に好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦0.1である。
Siに対するCのモル比は3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.0以下であってもよい。
また、上記ポリシロキサン原料中の酸素(O)は、シリコンオキシカーバイドにおける酸素の供給源となるとともに炭化ケイ素結晶の生成を抑制する観点からも効果を示す。
また、上記ポリシロキサン原料中の酸素(O)は、シリコンオキシカーバイド中の酸素の供給源ともなるとともに炭化ケイ素結晶の生成を抑制する観点からも効果を示す。ポリシロキサン原料は、酸素(O)を、Si1モルに対し、0モルを超えて2.5モル以下の範囲で有することが好ましい。Siに対するOのモル比は2.0以下であってもよく、1.8以下であってもよく、1.5以下であってもよい。また、Siに対するOのモル比は0.1以上であってもよく、0.5以上であってもよい。
同様の観点から、ポリシロキサン原料におけるCの元素比率は、2.0質量%以上45質量%以下の範囲であることが好ましい。Cの元素比率は5.0質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。また、Cの元素比率は40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
更に、ポリシロキサン原料におけるOの元素比率は、10質量%以上45質量%以下の範囲であることが好ましい。Oの元素比率は15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、Oの元素比率は40質量%以下であってもよい。
本発明によって、1500℃を超える高温領域下(例えば、1600℃)においても化学的に安定なシリコンオキシカーバイドを、高収率で製造することができる。本発明において用いるポリシロキサン原料は、その分子中にヒドロシリル基及び不飽和基(a)を有するので、これを所定の熱分解温度にまで昇温させる場合には、まず、低温域においてヒドロシリル化反応が進行し、架橋構造を形成する。そして、昇温過程において、有機物の揮散が抑制され、目的とするシリコンオキシカーバイドを効率よく得ることができる。本発明におけるシリコンオキシカーバイドのポリシロキサン原料に対する収率は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。
上記ケイ素化合物(s1)としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリクロロシラン等が挙げられる。
上記ケイ素化合物(s31)としては、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、プロポキシジメチルシラン、クロロジメチルシラン等が挙げられる。また、上記ケイ素化合物(s32)としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
上記ケイ素化合物(s6)としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリクロロ(4−ビニルフェニル)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
加水分解縮合反応の条件は、特に限定されないが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気において、0℃〜80℃で行うことが好ましい。
メカニカルスターラー、温度計、滴下漏斗及び三方コックを取り付けた、容積2リットルの4つ口フラスコ内を窒素ガスでパージした。そして、このフラスコに、345グラム(210mmol)のトリエトキシシラン、103.8グラム(70mmol)のトリメトキシビニルシラン及び94グラム(70mmol)の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを入れ、更に、590ミリリットルのキシレン及び430ミリリットルの2−プロパノールを添加して、混合物の温度を20℃とした。この反応系を撹拌下、窒素ガスを流しながら、153ミリリットルの1.59%塩酸水溶液及び215ミリリットルの2−プロパノールの混合液を1時間かけて滴下した。この混合液の滴下完了後、25℃で更に12時間攪拌を続けた。そして、得られた反応液から、減圧条件下、水、2−プロパノール、キシレン等の媒体を留去することで、無色液状物質を得た。この無色液状物質は、下記式(2)で表されるポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン(P)」という)である。
実施例1
1.2グラムのポリシロキサン(P)をアルミナ製角灰皿に入れ、これを石英管(内径42mm、長さ1000mm)の中に載置した。そして、この石英管を管状炉の中に載置して、毎分200ミリリットルの窒素気流下、25℃から2時間かけて800℃まで昇温し、その後、1時間に渡って800℃を保持した。この熱処理により、1.0グラムの濃褐色固体を得た。
次に、上記濃褐色固体を乳鉢で粉砕し、得られた粉末415ミリグラムを黒鉛製坩堝に入れ、これを更に黒鉛製の容器に収容した。そして、この黒鉛製容器を富士電波工業社製高温焼成炉「ハイマルチ」(商品名)内に設置し、熱分解を行った。はじめに、25℃から500℃までは真空状態で加熱した。そして、アルゴン雰囲気として、500℃から毎分10℃の速度で1600℃まで昇温し、その後、1時間に渡って1600℃を保持した。この熱分解により、311ミリグラムの黒色粉末を得た。ポリシロキサン(P)に対する収率は63%であった。
また、フィリップス社製X線回折装置「X’pert Pro α1」(型式名)を用いて得られた回折像(図1)により、黒色粉末は非晶質であることが分かった。更に、日本分光社製ラマン分光分析装置「NRS−3300」(型式名)を用いて得られたラマンスペクトル(図2)により、炭化ケイ素に由来するピーク(750〜800cm−1)が見られないため、結晶性物質が含まれていないことが分かった。
東亞合成社製ポリ[(3−メタクリロイルオキシプロピルシルセスキオキサン)]誘導体「MAC−SQ TM−100」(商品名)のTG/DTA分析を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分として行った。この製品は、炭素−炭素不飽和結合を含む基を有するがヒドロシリル基を有さない化合物である。図3は、得られたTG/DTA曲線であり、1,000℃における収率は約40%であることが分かる。これより実施例1と同等の収率は見込めず、シリコンオキシカーバイドを効率良く製造することはできないことが確認された。
東亞合成社製ポリ({3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピル}シルセスキオキサン)誘導体「OX−SQ TX−100」(商品名)のTG/DTA分析を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分として行った。この製品は、官能基としてオキセタニル基を有するが、ヒドロシリル基及び炭素−炭素不飽和結合を含む基のいずれも有さない化合物である。図3は、得られたTG/DTA曲線であり、1,000℃における収率は約30%であることが分かる。これより実施例1と同等の収率は見込めず、シリコンオキシカーバイドを効率良く製造することはできないことが確認された。
Claims (5)
- ヒドロシリル基と、ビニル基とを有するポリシロキサンを無触媒で熱分解して、シリコンオキシカーバイドを製造する方法であって、
前記ポリシロキサンが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、
前ポリシロキサンの熱分解を、不活性ガス雰囲気下にて、最終温度が1500℃を超え1600℃以下、該温度における処理時間が30分以上300分以下の条件でおこなう、1500℃を超える高温領域下において安定なシリコンオキシカーバイドの製造方法。 - 前記ポリシロキサンの熱分解を、不活性ガス雰囲気下にて、常温より300℃以上800℃以下まで昇温し、昇温時間を含め1時間以上3時間以下熱処理した後、次いで、最終温度が1500℃を超え1600℃以下まで昇温し、該温度における処理時間が30分以上300分以下の条件でおこなう、請求項1又は2に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
- 前記ポリシロキサンの熱分解を、不活性ガス雰囲気下にて、常温より800℃まで昇温し、800℃にて1時間保持した後、次いで、500℃より1600℃まで昇温し、1600℃にて1時間保持する条件でおこなう、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
- 前記ポリシロキサンの熱分解を、窒素及び/又はアルゴンの雰囲気下でおこなう、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシリコンオキシカーバイドの製造方法。
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