JP6800103B2 - 徐放性フェロモン製剤及びこれを用いた害虫の防除方法 - Google Patents
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Description
徐放性フェロモン製剤に使用される高分子としては、その加工性から、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ABS樹脂及びこれらの共重合体等の熱可塑性樹脂が使用されている。
例えば、特許文献1では、フェロモン物質の徐放性を調製するため改質剤を用いることによる脂肪族ポリエステルにおけるフェロモン物質の膜透過性の改善を提案している。
そのため、加工性に優れ、かつフェロモン物質の透過性が非常に小さい高分子素材の開発が望まれていた。
本発明の一つの態様によれば、フェロモン物質及び前記フェロモン物質を内部に封入するための容器を少なくとも備え、前記容器が下記一般式(1)
で表される構成単位を有する脂肪族ポリエステルと、下記一般式(2)
で表される構成単位を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)のブレンドポリマーを少なくとも含む高分子膜を備え、前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3−ヒドロキシブタン酸及び3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体であり、前記フェロモン物質が前記高分子膜を透過する徐放性フェロモン製剤が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、この徐放性フェロモン製剤を圃場に設置し、前記高分子膜を透過した前記フェロモン物質を前記圃場に放出させるステップを少なくとも含む害虫の防除方法が提供される。
脂肪族ポリエステルは、下記一般式(1)で表される構成単位を有する。一般式(1)中、R1は炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜7の2価の炭化水素基を表すが、R1の炭素数はR2の炭素数よりも大きく、m1とm2は同じでも異なってもよい2〜10の正の整数を表し、aは構成単位の組成比を表し、0<a≦1を満たす数である。
ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは3〜10(R1の炭素数1〜8及びR2の炭素数1〜7)、より好ましくは4〜8(R1の炭素数2〜6及びR2の炭素数2〜5)である。
ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の直鎖状の飽和ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸等の直鎖状の不飽和ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸等が挙げられ、フェロモン物質の極性や分子径と高分子膜の結晶性又は高分子膜中の高分子鎖の隙間構造が膜透過の機構上重要である観点から、コハク酸、アジピン酸、フタル酸が好ましい。
R2の炭素数1〜7の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基等の直鎖状の飽和炭化水素基、(E)−エテン−1,2−ジイル基、(Z)−エテン−1,2−ジイル基、エチン−1,2−ジイル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の環状の不飽和炭化水素基等が挙げられる。
アルカンジオールとしては、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の直鎖状の飽和末端ジオール等が挙げられ、フェロモン物質の極性・分子径と高分子膜の結晶性・高分子鎖の隙間構造の観点から、1,4−ブタンジオールが好ましい。
a=1の場合は、1種類のジカルボン酸と1種類のアルカンジオールの縮重合体である脂肪族ポリエステルとなり、a=1の場合における脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンフタレート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンフタレート等が挙げられる。成形物の可塑性の観点から、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンフタレートが好ましく、ポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
0<a<1の場合は、2種類のジカルボン酸と1種類又は2種類のジオールの縮重合体である脂肪族ポリエステルとなり、好ましくは2種類のジカルボン酸と1種類のジオール(m1=m2)の縮重合体である脂肪族ポリエステルである。組成比aの構造単位と組成比1−aの構造単位の配列は特に限定されず、例えば、ランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよいが、好ましくはランダム共重合体である。0<a<1の場合における脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンアジペートサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリプロピレンアジペートサクシネート、ポリブチレンアジペートサクシネート、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリプロピレンテレフタレートサクシネート等が挙げられ、成形物の可塑性の観点から、ポリブチレンアジペートサクシネート、ポリブチレンテレフタレートサクシネートが好ましい。
R3の炭素数1〜4の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
3−ヒドロキシブタン酸と6−ヒドロキシノナン酸の縮重合体、3−ヒドロキシブタン酸と6−ヒドロキシデカン酸の縮重合体等が挙げられる。縮重合体の融点や結晶化の速度に起因する加工性の観点から、好ましくは、3−ヒドロキシブタン酸及び4−ヒドロキシブタン酸の縮重合体と、3−ヒドロキシブタン酸及び3−ヒドロキシペンタン酸の縮重合体と、3−ヒドロキシブタン酸及び3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体からなる群から選ばれるポリ(ヒドロキシアルカノエート)であり、特に好ましくは3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮合体である。
チューブには、10mm以上1000mm未満の短いチューブと、1m以上2000m以下のロープのように長いチューブが含まれる。
短いチューブの形態としては、フェロモン物質の充填のし易さや放出速度又は成形性や生産性の観点から、好ましくは内径0.20〜3.00mm、膜厚0.20〜2.50mm、長さ10mm以上1000mm未満、より好ましくは内径0.20〜3.00mm、膜厚0.20〜2.50mm、長さ10〜500mm、更に好ましくは、内径0.30〜1.90mm、膜厚0.30〜0.90mm、長さ10〜400mmである。
ロープのように長いチューブの形態としては、フェロモン物質の充填のし易さや放出速度又は成形性や生産性の観点から、好ましくは内径0.10〜2.00mm、肉厚0.20〜0.80mm、長さ1m以上2000m以下、より好ましくは内径0.10〜2.00mm、肉厚0.20〜0.80mm、長さ10〜1500m、更に好ましくは内径0.12〜1.00mm、膜厚0.25〜0.60mm、長さ100〜1200mである。
アンプルの形態としては、成形加工性及び寸法安定性の観点から、膜厚0.20〜2.50mm、内容量が0.05〜3.00gの球形、楕円球、半球、ボトル形状、円柱、直方体及び瓢箪形等の形の中空容器であることが好ましい。中空容器は取り付け用の治具となるハート型、円形、半円形、S型及びクエスチョンマーク型等懸吊形状を有していても良い。
例えば、オオタバコガ(アメリカンボールワーム)の性フェロモンは、Z11−ヘキサデセナールとZ−9−ヘキサデセナールの混合物であり、Z11−ヘキサデセナールとZ−9−ヘキサデセナールの好ましい混合比(重量比)は98:2〜90:10である。
また、ダイアモンドバックモス(コナガ)の性フェロモンは、Z11−ヘキサデセナールとZ11−ヘキサデセニルアセテートの混合物であり、Z11−ヘキサデセナールとZ11−ヘキサデセニルアセテート好ましい混合比(重量比)は40:60〜60:40である。
糖類誘導体としては、ラウリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、マルガリン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、アラキン酸デキストリン、リグノセリン酸デキストリン、セロチン酸デキストリン、2− エチルヘキサン酸パルミチン酸デキストリン及びパルミチン酸ステアリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、酢酸/ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖ステアリン酸エステル、フラクトオリゴ糖2−エチルヘキサン酸エステル等のフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール及びジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。
重合防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ハイドロキノン、ビタミンE等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5'−ジ−t−ブチルハイドロキノン等が挙げられる。
果樹を加害する害虫としては、ナシヒメシンクイ(Grapholitha molesta)、コドリングモス(Cydia pomonella)、ピーチトゥィグボーラー(Anarsia lineatella)、ピーチフルーツモス(Carposina niponensis)等の果樹を食害する害虫、トビハマキ(Pandemis heparana)、コカクモンハマキ(Adoxophyes sp.)、ミダレカクモンハマキ(Archips fuscocupreanus)等の葉を食害する害虫、ピーチツリーボーラー(Synanthedon exitiosa)、レッサーピーチツリーボーラー(Synanthedon pictipes)等幹を食害する害虫が挙げられる。
例えば、防除する害虫がヨーロピアングレープバインモスである場合は、フェロモン物質としてE7Z9−ドデカジエニルアセテートを選択し、防除する害虫がコドリングモスである場合は、E8Z10−ドデカジエノールを選択し、対象害虫がナシヒメシンクイである場合は、Z8−ドデセニルアセテートを選択することが好ましい。
実施例1
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)90:10のブレンドポリマーを内径1.40mm、膜厚0.35mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ヨーロピアングレープバインモスの性フェロモン物質であるE7Z9−ドデカジエニルアセテートを充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を30℃、風速0.7m/秒の条件下に放置し、経過日数ごとの重量減少を測定することにより算出した。その結果を図1に示す。図1に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、80日間にわたってE7Z9−ドデカジエニルアセテートを放出できることが確認された。
実施例1と同様な方法で製造した内径1.40mm、膜厚0.35mm、長さ200mmの短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤100本をイタリア国シシリー島のブドウ畑に、2016年4月3日に設置した。5月6日(33日後)、6月5日(63日後)、7月2日(90日後)、8月4日(123日後)、8月25日(144日後)、9月11日(161日後)、9月25日(175日後)及び10月8日(188日後)にそれぞれ10本ずつをブドウ畑か-ら回収した。
回収した短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤からE7Z9−ドデカジエニルアセテートをノルマルヘキサンを用いて溶媒抽出し、内部標準法/ガスクロマトグラム分析による定量でフェロモン物質の残存率を算出した。その結果を図2に示す。図2に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、ヨーロピアングレープバインモスの発生期間に相当する150日間にわたりE7Z9−ドデカジエニルアセテートを放出できることが確認された。
ポリブチレンサクシネート(ビオノ−レ#1001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)70:30のブレンドポリマーを内径0.62mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ヨーロピアングレープバインモスの性フェロモン物質であるE7Z9−ドデカジエニルアセテートと油性ゲル化剤であるステアリン酸の混合比(重量比)85:15の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図3に示す。図3に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、70日間にわたってE7Z9−ドデカジエニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)70:30のブレンドポリマーを内径0.63mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、コドリングモスの性フェロモン物質であるE8E10−ドデカジエノールと油性ゲル化剤であるステアリン酸の混合比(重量比)70:30の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図4に示す。図4に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、90日間にわたってE8E10−ドデカジエノールを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)60:40のブレンドポリマーを内径0.44mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ナシヒメシンクイの性フェロモン物質であるZ8−ドデセニルアセテートと油性ゲル化剤であるステアリン酸の質量比85:15の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図5に示す。図5に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、100日間にわたってZ8−ドデセニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)60:40のブレンドポリマーを内径0.63mm、膜厚0.45mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ナシヒメシンクイの性フェロモン物質であるZ8−ドデセニルアセテートと油性ゲル化剤であるステアリン酸の混合比(重量比)85:15の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図5に示す。図5に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、100日間にわたってZ8−ドデセニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノーレ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.85:0.15である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX151X、カネカ社製)のブレンド比(重量比)75:25のブレンドポリマーを内径1.15mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ピーチトゥィグボーラーの性フェロモン物質であるE5−デセニルアセテートを充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図6に示す。図6に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、80日間にわたってE5−デセニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノーレ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)95:5のブレンドポリマーを内径1.20mm、膜厚0.35mmの細管状に押し出して成形すると同時に、トマトピンワームの性フェロモン物質であるE4−トリデセニルアセテートを充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図7に示す。図7に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、100日間にわたって、E4−トリデセニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンテレフタレート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.05:0.95であるポリブチレンテレフタレートサクシネート(ECOFLEX、BASF社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)95:5のブレンドポリマーを内径1.21mm、膜厚0.55mmの細管状に押し出して成形すると同時に、オキナワカンシャクシコメツキの性フェロモン物質であるドデシルアセテートを充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図8に示す。図8に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、60日間にわたって、ドデシルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)70:30のブレンドポリマーを内径0.52mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、オオタバコガ(アメリカンボールワーム)の性フェロモン物質であるZ11−ヘキサデセナールとZ−9−ヘキサデセナールと油性ゲル化剤であるステアリン酸の混合比(重量比)80:5:15の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を30℃、風速0.7m/秒の条件下に放置し、実施例2と同様に分析することにより算出した。その結果を図9に示す。図9に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、90日間にわたってZ11−ヘキサデセナールとZ9−ヘキサデセナールを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)並びに構成単位の組成比が0.93:0.07である3−ヒドロキシブタン酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体(アオニレックスX131A、カネカ社製)のブレンド比(重量比)70:30のブレンドポリマーを内径0.52mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ダイアモンドバックモス(コナガ)の性フェロモン物質であるZ11−ヘキサデセナールとZ11−ヘキサデセニルアセテートと油性ゲル化剤であるステアリン酸の混合比(重量比)40:40:20の混合溶液を充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例10と同様に算出した。その結果を図10に示す。図10に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、90日間にわたってZ11−ヘキサデセナールとZ11−ヘキデセニルアセテートを放出できることが確認された。
ブチレンアジペート単位とブチレンサクシネート単位の組成比が0.20:0.80であるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ−レ#3001、昭和電工社製)を内径1.40mm、膜厚0.35mmの細管状に押し出して成形すると同時に、ヨーロピアングレープバインモスの性フェロモン物質であるE7Z9−ドデカジエニルアセテートを充填することによりロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図1に示す。図1に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は、放出初期におけるE7Z9−ドデカジエニルアセテートの放出量が過大であり、放出期間が40日と短かった。
構成単位の組成比が0.96:0.04であるポリエチレンと酢酸ビニルの共重合体(ノバテックLV113、日本ポリエチレン株式会社製)を内径0.63mm、膜厚0.40mmの細管状に押し出して成形すると同時に、コドリングモスの性フェロモン物質であるE8Z10−ドデカジエノールと油性ゲル化剤であるステアリン酸の重量比70:30の混合溶液を充填することにより、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を200mm間隔で超音波溶着し、溶着部分を切断することにより短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤を製造した。
得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤のフェロモン物質の残存率を実施例1と同様に算出した。その結果を図4に示す。図4に示すように、得られた短いチューブ状の徐放性フェロモン製剤は放出が過大であり、約1ヶ月でフェロモン物質を全て放出してしまった。
実施例3と同様な方法で製造した内径0.62mm、膜厚0.40mmのロープ状の徐放性フェロモン製剤を紙製リールに600m巻いたものを5巻用意した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を2016年2月にイタリア国トスカーナ地方の5ヘクタールのブドウ畑において、先ずブドウ畑の端からブドウの樹の畝に沿ってロープ状の徐放性フェロモン製剤を枝に掛けながら向かい側の端まで直線状に設置した。ブドウ畑の向かい側の端まで来た所で、紙製リールに巻かれたロープ状の徐放性フェロモン製剤を切断し、次にロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したブドウの樹の畝から20m離れたブドウの樹の畝に沿って、設置済みの直線状のロープに平行となるように同様に、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置した。同様の操作を繰り返すことでブドウ畑全体にロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置し、最終的に5へクタールのブドウ畑に設置されたロープ状の徐放性フェロモン製剤の長さの合計は、3000mであった。ロープ状の徐放性フェロモン製剤には、フェロモン物質とステアリン酸の混合溶液が充填されているため、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を切断してもフェロモン物質が流逸することは無かった。
また、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したブドウ畑内に性フェロモントラップを4台設置し、1週間間隔でトラップに誘殺されるヨーロピアングレープバインモスの数をカウントした。更に、ヨーロピアングレープバインモスの発生を確認するために、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したブドウ畑から200m離れたブドウ畑にも同様の性フェロモントラップを4台設置して、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるヨーロピアングレープバインモスの数をカウントした。
ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されていないブドウ畑では、2月から9月の間に総数1206頭のグレープバインモスが誘殺されたのに対し、ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されたブドウ畑では、2月から9月の間に総数21頭のグレープバインモスが誘殺されたのみであったことから、高い交信撹乱効果が確認された。
実施例4と同様な方法で製造した内径0.63mm、膜厚0.40mmのロープ状の徐放性フェロモン製剤を紙製リールに400m巻いたものを15巻用意した。この徐放性フェロモン製剤を2016年3月にフランス国アヴィニョンの5ヘクタールのリンゴ畑において、徐放性フェロモン製剤を設置する間隔を10mとする以外は実施例10と同様な方法でリンゴ畑全体に設置した。最終的に5ヘクタールのリンゴ畑に設置したロープ状の徐放性フェロモン製剤の長さの合計は、6000mであった。ロープ状の徐放性フェロモン製剤には、フェロモン物質とステアリン酸の混合溶液が充填されているため、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を切断してもフェロモン物質が流逸することは無かった。
また、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したリンゴ畑内に性フェロモントラップを4台設置し、1週間間隔でトラップに誘殺されるコドリングモスの数をカウントした。更に、コドリングモスの発生を確認するために、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したリンゴ畑から200m離れたリンゴ畑にも同様の性フェロモントラップを4台設置して、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるコドリングモスの数をカウントした。
ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されていないリンゴ畑では、3月から9月の間に総数1858頭のコドリングモスが誘殺されたのに対し、ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されたリンゴ畑では3月から9月の間に総数38頭のコドリングモスが誘殺されたのみであったことから、高い交信撹乱効果が確認された。
実施例5と同様な方法で製造した内径0.44mm、膜厚0.40mmのロープ状の徐放性フェロモン製剤を紙製リールに400m巻いたものを12巻用意した。この徐放性フェロモン製剤を2016年2月にアメリカ国カルフォルニア州の4ヘクタールのモモ畑において、徐放性フェロモン製剤を設置する間隔を10mとする以外は実施例10と同様な方法でモモ畑全体に設置した。最終的に4ヘクタールのモモ畑に設置したロープ状の徐放性フェロモン製剤の長さの合計は、4800mであった。ロープ状の徐放性フェロモン製剤には、フェロモン物質とステアリン酸の混合溶液が充填されているため、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を切断してもフェロモン物質が流逸することは無かった。
また、徐放性フェロモン製剤を設置したモモ畑内に性フェロモントラップを4台設置し、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるナシヒメシンクイの数をカウントした。更に、ナシヒメシンクイの発生を確認するために、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したモモ畑から200m離れたモモ畑にも同様の性フェロモントラップを4台設置して、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるナシヒメシンクイの数をカウントした。
ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されていないモモ畑では、2月から9月の間に総数1794頭のナシヒメシンクイが誘殺されたのに対し、ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されたモモ畑では2月から9月の間に総数1頭のナシヒメシンクイが誘殺されたのみであったことから、高い交信撹乱効果が確認された。
実施例5と同様な方法で製造した内径0.63mm、膜厚0.45mmのロープ状の徐放性フェロモン製剤を紙製リールに300m巻いたものを8巻用意した。このロープ状の徐放性フェロモン製剤を2016年2月にアメリカ国カルフォルニア州の4ヘクタールのモモ畑において、実施例10と同様な方法でモモ畑全体に設置した。最終的に4ヘクタールのモモ畑に設置したロープ状の徐放性フェロモン製剤の長さの合計は、2400mであった。ロープ状の徐放性フェロモン製剤には、フェロモン物質とステアリン酸の混合溶液が充填されているため、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を切断してもフェロモン物質が流逸することは無かった。
また、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したモモ畑内に性フェロモントラップを4台設置し、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるナシヒメシンクイの数をカウントした。更に、ナシヒメシンクイの発生を確認するために、ロープ状の徐放性フェロモン製剤を設置したモモ畑から200m離れたモモ畑にも同様の性フェロモントラップを4台設置して、1週間間隔で性フェロモントラップに誘殺されるナシヒメシンクイの数をカウントした。
ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されていないモモ畑では、2月から9月の間に総数1794頭のナシヒメシンクイが誘殺されたのに対し、ロープ状の徐放性フェロモン製剤が設置されたモモ畑では2月から9月の間に総数39頭のナシヒメシンクイが誘殺されたのみであったことから、高い交信撹乱効果が確認された。
Claims (8)
- フェロモン物質及び前記フェロモン物質を内部に封入するための容器を少なくとも備え、前記容器が下記一般式(1)
で表される構成単位を有する脂肪族ポリエステルと、下記一般式(2)
で表される構成単位を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)のブレンドポリマーを少なくとも含む高分子膜を備え、前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3−ヒドロキシブタン酸及び3−ヒドロキシヘキサン酸の縮重合体であり、前記フェロモン物質が前記高分子膜を透過する徐放性フェロモン製剤。 - 前記脂肪族ポリエステルと前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のブレンド比(重量比)が、50:50〜98:2である請求項1に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 前記脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンフタレート、ポリブチレンアジペートサクシネート及びポリブチレンテレフタレートサクシネートからなる群から選ばれる請求項1又は請求項2に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 前記容器が、チューブ又はアンプルの形態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 前記チューブが、内径0.10〜2.00mm、肉厚0.20〜0.80mm及び長さ1〜2000mである請求項4に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 前記フェロモン物質が、炭素数10〜18の脂肪族アルコールと、炭素数10〜18の脂肪族アルコールの酢酸エステルと、炭素数10〜18の脂肪族アルデヒドとからなる群から選ばれる1種類以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 前記フェロモン物質とともに、更に油性ゲル化剤を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の徐放性フェロモン製剤。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の徐放性フェロモン製剤を圃場に設置し、前記高分子膜を透過した前記フェロモン物質を前記圃場に放出させるステップを少なくとも含む害虫の防除方法。
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