JP7257309B2 - シロイチモジヨトウの防除方法 - Google Patents
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Description
そして、シロイチモジヨトウにおいては、フェロモントラップの最適設置高さは地上から1.5mの位置であることが知られているため、フェロモン製剤からのフェロモン物質の放出を、土壌表面よりも高いところで行うことは効率的であると考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、植物体の高さやシロイチモジヨトウの生態を考慮する必要のないシロイチモジヨトウの防除方法を提供することを目的とする。
本発明の1つの態様によれば、シロイチモジヨトウのフェロモン物質と、前記フェロモン物質を透過可能に収納する容器とを少なくとも備えるフェロモン製剤を圃場における土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に設置して前記フェロモン物質を前記圃場に放出するステップを少なくとも含むシロイチモジヨトウの防除方法であって、前記フェロモン物質が(Z,E)-9,12-テトラデカジエニル=アセテートと(Z)-9-テトラデセノールの重量比80:20から60:40の混合物であり、前記容器の少なくとも一部がポリブチレンアジペートサクシネート製であるシロイチモジヨトウの防除方法が提供される。
シロイチモジヨトウのフェロモン物質としては、(Z,E)-9,12-テトラデカジエニル=アセテート、(Z)-9-テトラデセノール、(Z,E)-9,12-テトラデカジエノール、(Z)-9-テトラデセニル=アセテート、(Z)-11-ヘキサデセニル=アセテート等の性フェロモン物質等が挙げられる。シロイチモジヨトウのフェロモン物質は、実際に害虫から抽出された化合物に限らず、工業的に合成された同一の化合物を含むが、経済性の観点から、工業的に合成された化合物が好ましい。また、シロイチモジヨトウのフェロモン物質には、製造上不可避な不純物が含まれていても構わない。
希釈剤としては、ドデシルアセテート、テトラデシルアセテート、ヘキサデシルアセテート、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール等が挙げられる。
重合防止剤としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。
抗酸化剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ハイドロキノン、ビタミンE等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,5'-ジ-t-ブチルハイドロキノン等が挙げられる。
それぞれの添加剤の添加量は、使用環境等によっても異なるが、シロイチモジヨトウのフェロモン物質100重量部に対して、好ましくは0.1~8.0重量部である。
高分子としては、シロイチモジヨトウのフェロモン物質を透過可能であれば特に限定されず、ポリオレフィン系プラスチック、生分解性ポリマー、崩壊性ポリマー等が挙げられるが、フェロモン製剤を土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に設置し、その回収の手間を省略する観点から、生分解性ポリマーが好ましい。高分子は、2種類以上を併用して用いてもよい。また、高分子は市販のものを用いてもよいし、合成したものを用いても良い。
エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル由来の繰り返しである酢酸ビニルユニットの含有量は、放出性能及び加工性の観点から、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは0.5~6重量%、更に好ましくは0.5~3重量%である。エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル由来の繰り返しである酢酸ビニルユニットの含有量は、酢酸ビニルユニットの含有量が既知であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を標準品として、赤外分光法(IR)により測定することができる。エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、放出性能及び加工性の観点から、50,000~500,000が好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
生分解性成分としては、ジャガイモ、コメ、タピオカ、トウモロコシ、ライ麦、大麦、小麦等から抽出された澱粉等が挙げられる。
分解促進剤としては、ジチオカルバミン酸塩等の遷移金属化合物、酸化セリウム等の希土類化合物及びベンゾフェノン等の芳香族ケトン等が挙げられる。
シロイチモジヨトウのフェロモン物質の放出の均一性の観点から、チューブ状の容器を備えるフェロモン製剤が好ましく、その内径は、好ましくは0.5~2.5mm、より好ましくは1.0~2.0mm、その表面積は、好ましくは20~350,000mm2、より好ましくは20~3,000mm2、更に好ましくは20~650mm2、その膜厚は、好ましくは0.2~1.0mm、より好ましくは0.2~0.4mmである。チューブ状の容器の長さは、特に制限されないが、好ましくは0.5~100,000cm、より好ましくは0.5~50cmであり、フェロモン製剤を土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に設置することから、その携帯性を考慮すると、更に好ましくは0.5~5.0cmであり、特に好ましくは1.5~2.5cmである。
フェロモン製剤の設置は、圃場におけるフェロモン物質の濃度の均一性の観点から、圃場に均等に設置することが好ましい。フェロモン製剤の設置密度は、単位面積当たりの投与量とフェロモン製剤の放出量の観点から、土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に、好ましくは3~20,000個/ha、より好ましくは100~10,000個/ha、更に好ましくは200~7,000個/ha、特に好ましくは700~3,500個/haである。
従来、フェロモン製剤の土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面への設置については、フェロモン成分の放出への影響が懸念されてきた。例えば、土壌及び/又は土壌表面被覆材へのフェロモン成分の吸着や、フェロモン製剤表面へのカビの発生や土等の吸着、もしくは、生分解性ポリマーや崩壊性ポリマーを用いる場合は土壌細菌等によるフェロモン製剤容器の分解等が懸念されてきた。しかし今回、実施例において詳述するが、フェロモン製剤を土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に設置した場合において、約2か月後においてもフェロモンの残存率は45%を超えていたことから、空中にフェロモン製剤を設置する場合と比較しても問題なく使用することができることが示された。
圃場における土壌表面と土壌表面被覆材面土壌表面の面積比は、特に制限されず、好ましくは100:0~0:100、より好ましくは90:10~50:50である。
また、フェロモン製剤が備える容器がチューブ状である場合は、例えば、土壌表面又は土壌表面被覆材面に対して縦に立てて設置する場合と、横に倒して設置する場合のどちらでも良い。
フェロモン製剤一個あたりの25℃、風速0.3m/秒の環境下における放出速度は、フェロモン製剤の設置本数の観点から、好ましくは0.01~4mg/日/本、より好ましくは0.01~1.5mg/日/本、より好ましくは0.03~0.20mg/日/本、更に好ましくは0.05~0.10mg/日/本である。
シロイチモジヨトウのフェロモン製剤からのフェロモン物質の放出速度は、例えば、フェロモン物質への希釈剤の添加や容器の材質、形状(チューブ状の容器の場合においては内径、表面積、膜厚及び長さ等)等により調整できる。
<フェロモン製剤Aの調製>
(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテートと(Z)-9-テトラデセノールとの70:30(重量比)の混合物18.8mgに対し、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(HBMCBT)と、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、95:2:3(重量比)で混合し、内径1.40mm、膜厚0.30mm、長さ2.0cmの生分解性ポリマーであるポリブチレンアジペートサクシネート(ビオノ-レ#3010、昭和電工社製)製のチューブ状の容器に19.8mg封入することによりフェロモン製剤Aを製造した。
(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテートと(Z)-9-テトラデセノールとの70:30(重量比)の混合物256.0mgに対し、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(HBMCBT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、95:2:3(重量比)で混合し、内径1.40mm、膜厚0.35mm、長さ20.0cmのポリエチレン製のチューブ状の容器に269mg封入することによりフェロモン製剤Bを製造した。なお、フェロモン製剤Bは、25℃、風速0.3m/秒の環境下における放出速度が、フェロモン製剤A5,000本/haとフェロモン製剤B500本/haとで同等となるように設計した。
フェロモン製剤Aを土壌表面とマルチシートで覆われた土壌表面(マルチシート表面)に30本ずつ横に倒して均等に設置し、各経過日数におけるフェロモン物質の残存量を確認した。フェロモン物質の残存率を表1に示す。表1中、「Z9E12-14:Ac」は(Z,E)-9,12-テトラデカジエニルアセテートを、「Z9-14:OH」は(Z)-9-テトラデセノールを表す。
フェロモン物質の残存率は、25日後、60日後及び92日後において、任意に土壌表面とマルチシートで覆われた土壌表面に設置されたフェロモン製剤をそれぞれ10本ずつ回収して、フェロモン製剤の内容物をアセトンを用いて抽出し、内部標準法/ガスクロマトグラム分析により測定した値の平均値を求めることにより算出した。
実施例1、2、3及び4並びに比較例1
フェロモン製剤Aを土壌表面及びマルチシート表面に設置した圃場(実施例1~4)、及びフェロモン製剤Bを支柱に縛り付けることにより土壌表面から約1mの位置に設置した圃場(比較例1)におけるシロイチモジヨトウの交信撹乱試験を行った。なお、実施例1~4並びに比較例1においてフェロモン製剤を設置した土壌表面とマルチシート表面の面積比は75:25であった。また、フェロモン製剤は全て横に倒して均等に設置した。
いずれも圃場面積は約1.5aであり、試験期間は一晩(18:30頃~6:00頃)とした。また、圃場では、ナス、トマト、ピーマン、シシトウガラシ、オクラ、モロヘイヤ、キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、キャベツ、大豆、ネギ、アスパラガスが栽培されていた。そして、ナス、トマト、ピーマン、シシトウガラシ、オクラ、キュウリは、畝がマルチシートに覆われており、フェロモン製剤の一部はマルチシート表面にも設置された。
交信撹乱試験の効果は、交尾率を測定することにより評価した。交尾率は、圃場の中央部に翅を約30cmの細い糸で土壌表面から約70cmの位置に支柱につないで逃げないようにした16頭のシロイチモジヨトウの処女雌の交尾の有無を数えることにより測定した。
フェロモン製造A及びBの25℃、風速0.3m/秒の環境下における放出速度、圃場試験における設置密度、フェロモン物質の放出量並びに交尾率を表2に示す。
また、実施例2、3及び4が比較例1と同等の交尾率を示したことから、土壌表面及びマルチシート表面にフェロモン製剤を設置し、かつ放出量を少なくした場合であっても十分な交信撹乱を行えることが確認された。
交信撹乱効果を確認する手段として、フェロモントラップを圃場に設置し誘引数を確認する方法(誘引阻害効果の確認)と、飼育未交尾雌を夜間に圃場に設置し翌朝回収し、交尾の有無を確認するつなぎ雌法(交尾阻害効果の確認)が挙げられる。特につなぎ雌法は、雌そのものを使用するため自然界で行われる交尾行動への影響が直接評価できる有効な手段であり、本試験では交信撹乱効果の確認にこの手法を採用した。
Claims (3)
- シロイチモジヨトウのフェロモン物質と、前記フェロモン物質を透過可能に収納する容器とを少なくとも備えるフェロモン製剤を圃場における土壌表面及び/又は土壌表面被覆材面に設置して前記フェロモン物質を前記圃場に放出するステップを少なくとも含むシロイチモジヨトウの防除方法であって、
前記フェロモン物質が(Z,E)-9,12-テトラデカジエニル=アセテートと(Z)-9-テトラデセノールの重量比80:20から60:40の混合物であり、前記容器の少なくとも一部がポリブチレンアジペートサクシネート製であるシロイチモジヨトウの防除方法。 - 前記シロイチモジヨトウのフェロモン物質の放出量が、0.03~2g/ha/日である請求項1に記載のシロイチモジヨトウの防除方法。
- 前記容器が、長さ0.5~100,000cmのチューブ状の容器である請求項1又は請求項2に記載のシロイチモジヨトウの防除方法。
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