以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、実施の形態の電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。この電力変換装置100は、電力系統1(交流電源)の無効電力を補償する無効電力補償装置として使用される。図1を参照して、電力変換装置100は、少なくとも1つの主回路給電方式の単位変換器5を直列接続して構成されたアームA1〜A3と、各々が全単位変換器5を制御するように構成された2台の制御装置7,8とを備える。より詳細には、電力変換装置100は、スイッチS1〜S6、変圧器2,3、限流抵抗器R1〜R3、交流ラインUL,VL,WL、変流器C1〜C3、リアクトルL1〜L3、アームA1〜A3、操作部6、および制御装置7,8を備える。
スイッチS1,S2,S3の各々の一方端子はそれぞれ電力系統1の三相の送電線1u,1v,1wに接続され、他方端子はそれぞれ変圧器2の3つの一次巻線に接続される。スイッチS1,S2,S3は、通常は導通状態であり、たとえば電力変換装置100のメンテナンス時に非導通状態にされる。変圧器2は、3つの一次巻線と3つの二次巻線とを含み、三相交流電力を授受する。
限流抵抗器R1〜R3の各々の一方端子はそれぞれ変圧器2の3つの二次巻線に接続され、他方端子はそれぞれ交流ラインUL,VL,WLに接続される。限流抵抗器R1〜R3は、電力変換装置100の起動時に電力系統1からアームA1〜A3にそれぞれ流れる電流を制限する。
スイッチS4,S5,S6は、それぞれ限流抵抗器R1〜R3に並列接続される。スイッチS4,S5,S6は、電力変換装置100の起動時においてアームA1〜A3に流れる電流が安定した後に導通状態にされる。変圧器3は、交流ラインUL,VL,WLの交流電圧に応じた値の三相交流電圧Vu,Vv,Vwを制御装置7,8の各々に出力する。
リアクトルL1およびアームA1は、交流ラインULと交流ラインVLとの間に直列接続される。リアクトルL2およびアームA2は、交流ラインVLと交流ラインWLとの間に直列接続される。リアクトルL3およびアームA3は、交流ラインWLと交流ラインULとの間に直列接続される。すなわち、アームA1〜A3はデルタ接続されている。アームA1〜A3は、制御装置7,8のうちの選択された制御装置によって制御され、三相交流電力を発生する。
アームA1〜A3の各々は、カスケード接続された複数の単位変換器5を含む。複数の単位変換器5の各々は、制御装置7,8のうちの選択された制御装置によって制御され、交流電力を発生する。
アームA1の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL1の一方端子に接続されている。アームA1において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA1の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL2の一方端子に接続されている。
アームA2の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL2の一方端子に接続されている。アームA2において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA2の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL3の一方端子に接続されている。
アームA3の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL3の一方端子に接続されている。アームA3において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA3の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL1の一方端子に接続されている。
リアクトルL1〜L3は、アームA1〜A3に流れる循環電流をそれぞれ抑制する。リアクトルL1〜L3は、アームA1〜A3とは別に設けられていてもよいし、アームA1〜A3のインダクタンス成分であっても構わない。変流器C1〜C3(電流検出器)は、アームA1〜A3に流れる交流電流Iuv,Ivw,Iwuの瞬時値をそれぞれ検出して、制御装置7,8の各々に出力する。
操作部6(選択部)は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示装置などを含み、電力変換装置100の使用者によって操作される。電力変換装置100の使用者は、操作部6を操作することにより、制御装置7,8のうちの所望の制御装置を選択したり、電力変換装置100の運転を開始したり、停止することができる。
操作部6は、制御装置7が選択された場合には選択信号SEをLレベルにし、制御装置8が選択された場合には選択信号SEをHレベルにする。たとえば、通常時には、選択信号SEがLレベルにされ、制御装置7によってアームA1〜A3が制御される。制御装置7のメンテナンス時には、選択信号SEがHレベルにされ、制御装置8によってアームA1〜A3が制御される。制御装置7のメンテナンスが終了した場合には、選択信号SEがLレベルにされ、制御装置7によってアームA1〜A3が制御される。
制御装置7は、選択信号SE、無効電力指令値Qr、三相交流電圧Vu,Vv,Vw、三相交流電流Iuv,Ivw,Iwu、複数の直流電圧Vdcに基づいて、制御信号CNT1A〜CNT3Aおよび選択指令信号SE1A〜SE3Aを生成する。ここで、無効電力指令値Qrは、たとえば電力系統1の中央指令室(図示せず)から与えられる。電力変換装置100は、無効電力指令値Qrに応じた値の無効電力を電力系統1に供給する。複数の直流電圧Vdcは、それぞれ複数の単位変換器5から与えられる。直流電圧Vdcについては後述する。
制御信号CNT1Aおよび選択指令信号SE1Aは、アームA1の各単位変換器5に与えられる。制御信号CNT2Aおよび選択指令信号SE2Aは、アームA2の各単位変換器5に与えられる。制御信号CNT3Aおよび選択指令信号SE3Aは、アームA3の各単位変換器5に与えられる。
制御装置8は、選択信号SE、無効電力指令値Qr、三相交流電圧Vu,Vv,Vw、三相交流電流Iuv,Ivw,Iwu、後述する複数の直流電圧Vdcに基づいて、制御信号CNT1B〜CNT3Bおよび選択指令信号SE1B〜SE3Bを生成する。制御信号CNT1Bおよび選択指令信号SE1Bは、アームA1の各単位変換器5に与えられる。制御信号CNT2Bおよび選択指令信号SE2Bは、アームA2の各単位変換器5に与えられる。制御信号CNT3Bおよび選択指令信号SE3Bは、アームA3の各単位変換器5に与えられる。
制御装置7が選択された場合には、選択指令信号SE1A〜SE3AがともにHレベルにされるとともに選択指令信号SE1B〜SE3BがともにLレベルにされ、アームA1〜A3は、制御装置7から出力される制御信号CNT1A〜CNT3Aに従って三相交流電力を生成する。
制御装置8が選択された場合には、選択指令信号SE1A〜SE3AがともにLレベルにされるとともに選択指令信号SE1B〜SE3BがともにHレベルにされ、アームA1〜A3は、制御装置8から出力される制御信号CNT1B〜CNT3Bに従って三相交流電力を生成する。
図2は、制御装置7,8の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置7は制御部10および選択指令部11〜13を含み、制御装置8は制御部20および選択指令部21〜23を含む。
制御部10は、無効電力指令値Qr、三相交流電圧Vu,Vv,Vw、三相交流電流Iuv,Ivw,Iwu、および複数の直流電圧Vdcに基づいて、制御信号CNT1A〜CNT3Aを生成する。
具体的には、制御部10は、変流器C1〜C3からの交流電流Iuv,Ivw,Iwuに基づいて、交流ラインUL,VL,WLに流れる交流電流に応じたレベルの三相交流電流Iu,Iv,Iwを求める。ただし、Iu=Iuv−Iwu、Iv=Ivw−Iuv、Iw=Iwu−Ivwである。
制御部10は、変圧器3からの三相交流電圧Vu,Vv,Vwと上記三相交流電流Iu,Iv,Iwとに基づいて無効電力Q0を求める。制御装置7は、無効電力指令値Qrと無効電力Q0との偏差ΔQ=Qr−Q0を求める。
制御部10は、変流器C1〜C3からの交流電流Iuv,Ivw,Iwu、変圧器3からの三相交流電圧Vu,Vv,Vwなどに基づいて、それぞれ複数個の単位変換器5に対応する複数の電圧指令値Vdcrを生成する。
制御部10は、電圧指令値Vdcrと直流電圧Vdcとの偏差ΔVdcを求める。制御部10は、電圧偏差ΔVdcを0とし、かつ無効電力偏差ΔQを0とするための制御演算を実行することにより、三相交流電圧指令値Vuvr,Vvwr,Vwurを生成する。
換言すると、制御部10は、アームA1〜A3に制御信号CNT1A〜CNT3Aを与えることにより、電圧偏差ΔVdcが0になるように各単位変換器5の有効電流制御を行なうとともに、無効電力偏差ΔQが0になるように各単位変換器5の無効電流制御を行なう。
三相交流電圧指令値Vuvr,Vvwr,Vwurを基に、アームA1〜A3の各単位変換器5が運転され、直流電圧Vdcが電圧指令値Vdcrに一致するとともに、無効電力Q0が無効電力指令値Qrに一致する。
制御部20は、制御部10と同様の構成であり、無効電力指令値Qr、三相交流電圧Vu,Vv,Vw、三相交流電流Iuv,Ivw,Iwu、および複数の直流電圧Vdcに基づいて、制御信号CNT1B〜CNT3Bを生成する。
選択指令部11は、選択信号SEがHレベルにされている場合(すなわち、制御装置8が選択されている場合)には、選択指令信号SE1AをLレベルにする。選択指令部11は、選択信号SEがLレベルにされた場合(すなわち、制御装置7が選択された場合)には、アームA1に流れる交流電流Iuvの絶対値が所定のしきい値電流ITH(予め定められた値)よりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Iuvがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE1AをHレベルに立ち上げる。ただし、しきい値電流ITHは、交流電流Iuvのピーク値よりも十分に小さな値であり、略0Aに設定されている。
選択指令部21は、選択信号SEがLレベルにされている場合(すなわち、制御装置7が選択されている場合)には、選択指令信号SE1BをLレベルにする。選択指令部21は、選択信号SEがHレベルにされた場合(すなわち、制御装置8が選択された場合)には、アームA1に流れる交流電流Iuvの絶対値が所定のしきい値電流ITHよりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Iuvがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE1BをHレベルに立ち上げる。図2で点線で示すように、選択指令部11,21間で信号が授受され、選択指令信号SE1Bは選択指令信号SE1Aの反転信号とされる。
選択指令部12は、選択信号SEがHレベルにされている場合(すなわち、制御装置8が選択されている場合)には、選択指令信号SE2AをLレベルにする。選択指令部12は、選択信号SEがLレベルにされた場合(すなわち、制御装置7が選択された場合)には、アームA2に流れる交流電流Ivwの絶対値が所定のしきい値電流ITHよりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Ivwがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE2AをHレベルに立ち上げる。
選択指令部22は、選択信号SEがLレベルにされている場合(すなわち、制御装置7が選択されている場合)には、選択指令信号SE2BをLレベルにする。選択指令部22は、選択信号SEがHレベルにされた場合(すなわち、制御装置8が選択された場合)には、アームA2に流れる交流電流Ivwの絶対値が所定のしきい値電流ITHよりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Ivwがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE2BをHレベルに立ち上げる。図2で点線で示すように、選択指令部12,22間で信号が授受され、選択指令信号SE2Bは選択指令信号SE2Aの反転信号とされる。
選択指令部13は、選択信号SEがHレベルにされている場合(すなわち、制御装置8が選択されている場合)には、選択指令信号SE3AをLレベルにする。選択指令部13は、選択信号SEがLレベルにされた場合(すなわち、制御装置7が選択された場合)には、アームA3に流れる交流電流Iwuの絶対値が所定のしきい値電流ITHよりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Iwuがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE3AをHレベルに立ち上げる。
選択指令部23は、選択信号SEがLレベルにされている場合(すなわち、制御装置7が選択されている場合)には、選択指令信号SE3BをLレベルにする。選択指令部23は、選択信号SEがHレベルにされた場合(すなわち、制御装置8が選択された場合)には、アームA3に流れる交流電流Iwuの絶対値が所定のしきい値電流ITHよりも小さくなったとき(すなわち、交流電流Iwuがゼロクロス点を通るとき)、選択指令信号SE3BをHレベルに立ち上げる。図2で点線で示すように、選択指令部13,23間で信号が授受され、選択指令信号SE3Bは選択指令信号SE3Aの反転信号とされる。
図3は、図2に示した選択指令部11,21の構成を示す回路ブロック図である。図3において、選択指令部11は、絶対値検出器31、比較器32、インバータ33、ANDゲート34、およびフリップフロップ35を含む。選択指令部21は、絶対値検出器41、比較器42、ANDゲート43、およびフリップフロップ44を含む。
絶対値検出器31は、対応するアームA1に流れる交流電流Iuvの絶対値|Iuv|を検出する。比較器32の非反転入力端子(+端子)にはしきい値電流ITHが与えられ、その反転入力端子(−端子)には、交流電流Iuvの絶対値|Iuv|が与えられる。比較器32は、しきい値電流ITHと交流電流Iuvの絶対値|Iuv|との大小を比較し、比較結果を示す信号φ32を出力する。
|Iuv|>ITHである場合には、信号φ32はLレベルにされる。|Iuv|<ITHである場合には、信号φ32はHレベルにされる。ITH≒0Aであるので、交流電流Iuvがゼロクロス点を通るときに信号φ32はHレベルにされる。
絶対値検出器41は、対応するアームA1に流れる交流電流Iuvの絶対値|Iuv|を検出する。比較器42の非反転入力端子(+端子)にはしきい値電流ITHが与えられ、その反転入力端子(−端子)には、交流電流Iuvの絶対値|Iuv|が与えられる。比較器42は、しきい値電流ITHと交流電流Iuvの絶対値|Iuv|との大小を比較し、比較結果を示す信号φ42を出力する。
|Iuv|>ITHである場合には、信号φ42はLレベルにされる。|Iuv|<ITHである場合には、信号φ42はHレベルにされる。ITH≒0Aであるので、交流電流Iuvがゼロクロス点を通るときに信号φ42はHレベルにされる。
インバータ33は、選択信号SEの反転信号を出力する。ANDゲート34は、比較器32の出力信号φ32とインバータ33の出力信号との論理積信号φ34を出力する。ANDゲート43は、比較器42の出力信号φ42と選択信号SEとの論理積信号φ43を出力する。
ANDゲート34の出力信号φ34は、フリップフロップ35のセット端子(S)に与えられるとともに、フリップフロップ44のリセット端子(R)に与えられる。ANDゲート43の出力信号φ43は、フリップフロップ44のセット端子(S)に与えられるとともに、フリップフロップ35のリセット端子(R)に与えられる。フリップフロップ35,44の出力端子(Q)に現れる信号は、それぞれ選択指令信号SE1A,SE1Bとなる。
選択信号SEがLレベルにされている場合(すなわち、制御装置7が選択されている場合)には、ANDゲート43の出力信号φ43がLレベルに固定されるとともに、インバータ33の出力信号がHレベルにされ、比較器32の出力信号φ32がANDゲート34を通過してフリップフロップ35のセット端子およびフリップフロップ44のリセット端子に与えられる。交流電流Iuvがゼロクロス点を通るとき、比較器32の出力信号φ32がHレベルにされ、フリップフロップ35がセットされるとともにフリップフロップ44がリセットされ、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされる。
選択信号SEがHレベルにされている場合(すなわち、制御装置8が選択されている場合)には、ANDゲート34の出力信号φ34がLレベルに固定されるとともに、比較器42の出力信号φ42がANDゲート43を通過してフリップフロップ35のリセット端子およびフリップフロップ44のセット端子に与えられる。交流電流Iuvがゼロクロス点を通るとき、比較器42の出力信号φ42がHレベルにされ、フリップフロップ35がリセットされるとともにフリップフロップ44がセットされ、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされる。
すなわち、選択指令部11,21間で信号φ34,φ43が授受され、選択指令信号SE1Bは選択指令信号SE1Aの反転信号とされる。選択指令部12,22および選択指令部13,23の各々は、選択指令部11,21と同様の構成であるので、その説明は繰り返さない。
図4は、図2および図3に示した選択指令部11〜13,21〜23の動作を例示するタイムチャートである。図4において、(A)は三相交流電流Iuv,Ivw,Iwuの波形を示し、(B)は選択信号SEの波形を示し、(C)〜(E)はそれぞれ選択指令信号SE1A〜SE3Aの波形を示し、(F)〜(H)はそれぞれ選択指令信号SE1B〜SE3Bの波形を示している。
ある時刻t0において、選択信号SEがLレベルにされているものとする。選択信号SEがLレベルにされている場合には、交流電流Iuv,Ivw,Iwuがゼロクロス点を通るときに、選択指令部11〜13,21〜23の各々のフリップフロップ35がセットされるとともにフリップフロップ44がリセットされ、選択指令信号SE1A〜SE3AがHレベルにされるとともに選択指令信号SE1B〜SE3BがLレベルにされる。
ある時刻t1において、選択信号SEがLレベルからHレベルに立ち上げられると、選択指令部11〜13,21〜23の各々において、ANDゲート34の出力信号φ34がLレベルに固定され、比較器42の出力信号φ42がANDゲート43を通過してフリップフロップ35のリセット端子(R)およびフリップフロップ44のセット端子(S)に与えられる。
時刻t2において交流電流Iuvがゼロクロス点を通るとき、選択指令部21において、比較器42の出力信号φ42がHレベルになり、フリップフロップ35がリセットされるとともにフリップフロップ44がセットされ、選択指令信号SE1AがLレベルにされるとともに選択指令信号SE1BがHレベルにされる。
次に、時刻t3において交流電流Iwuがゼロクロス点を通るとき、選択指令部23において、比較器42の出力信号φ42がHレベルになり、フリップフロップ35がリセットされるとともにフリップフロップ44がセットされ、選択指令信号SE3AがLレベルにされるとともに選択指令信号SE3BがHレベルにされる。
次いで、時刻t4において交流電流Ivwがゼロクロス点を通るとき、選択指令部22において、比較器42の出力信号φ42がHレベルになり、フリップフロップ35がリセットされるとともにフリップフロップ44がセットされ、選択指令信号SE2AがLレベルにされるとともに選択指令信号SE2BがHレベルにされる。
図5は、図1に示した単位変換器5の構成を示す回路ブロック図である。図5を参照して、単位変換器5は、主回路50と、制御回路60と、限流抵抗回路64と、電源65とを含む。図5では、アームA1に含まれる単位変換器5が示されており、この単位変換器5は制御装置7,8から制御信号CNT1A,CNT1Bおよび選択指令信号SE1A,SE1Bを受ける。
主回路50は、コンデンサを備えたフルブリッジ回路により構成される。具体的には、主回路50は、第1端子5aおよび第2端子5bを有する。主回路50は、スイッチング素子51〜54と、ダイオードD1〜D4と、コンデンサ55とを含む。主回路50は、スイッチング素子51〜54の導通/非導通を制御することによりコンデンサ55の電圧に応じた振幅の電圧パルスを第1端子5aおよび第2端子5b間に出力することで、電力変換を行なう。
スイッチング素子51〜54は、自己消弧型電力用半導体素子であり、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されている。スイッチング素子51,53は第1の直流ラインPLおよび第2の直流ラインNLの間に直列に接続されている。スイッチング素子52,54は第1の直流ラインPLおよび第2の直流ラインNLの間に直列に接続されている。スイッチング素子51,52のコレクタはともに第1の直流ラインPLに接続され、スイッチング素子53,54のエミッタはともに第2の直流ラインNLに接続されている。スイッチング素子51のエミッタとスイッチング素子53のコレクタとの接続点は第1端子5aに接続されている。スイッチング素子52のエミッタとスイッチング素子54のコレクタとの接続点は第2端子5bに接続されている。
ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子51〜54にそれぞれ逆並列に接続されている。コンデンサ55は、第1の直流ラインPLと第2の直流ラインNLとの間に電気的に接続され、直流電力を蓄える。
単位変換器5において、スイッチング素子51〜54の各々の導通/非導通は制御回路60によって制御される。スイッチング素子51,53はそれぞれ相補的に導通状態とされる。スイッチング素子52,54はそれぞれ相補的に導通状態とされる。図5に示されるように、第2端子5bを基準とした第1端子5aまでの電圧をセル電圧Vcellと定義すると、セル電圧Vcellは、スイッチング素子51〜54の導通/非導通によって制御される。
具体的には、スイッチング素子51,54が共に導通状態であり、スイッチング素子52,53が共に非導通状態である場合、セル電圧Vcellはコンデンサ55の直流電圧Vdcと略等しい。スイッチング素子51,52が共に導通状態であり、スイッチング素子53,54が共に非導通状態である場合、セル電圧Vcellは略零である。スイッチング素子51,52が共に非導通状態であり、スイッチング素子53,54が共に導通状態である場合、セル電圧Vcellは略零である。スイッチング素子51,54が共に非導通状態であり、スイッチング素子52,53が共に導通状態である場合、セル電圧Vcellはコンデンサ55の直流電圧Vdcの極性を反転させた電圧に略等しい。
アームA1〜A3各々の全体の電圧は、対応するアームA1〜A3に含まれる各単位変換器5のセル電圧Vcellの和で表される。したがって、アームA1〜A3各々の全体の電圧は、各単位変換器5を構成するスイッチング素子51〜54の導通/非導通によって制御することができる。
主回路50は、スイッチS7をさらに含む。スイッチS7は、第1端子5aと第2端子5bとの間に接続されている。スイッチS7は、制御回路60からの導通指令信号Sonに応じて閉成することにより、第1端子5aおよび第2端子5bを短絡することが可能に構成されている。
制御回路60は、I/F(インターフェイス)回路61と、駆動回路62と、スイッチ操作回路63とを含む。制御回路60は、制御装置7,8から受信した制御信号CNT1A,CNT1Bおよび選択指令信号SE1A,SE1Bに従ってスイッチング素子51〜54の導通/非導通を制御するように構成される。
I/F回路61は、図示しない有線または無線で制御装置7,8と通信する。I/F回路61は、制御装置7,8から制御信号CNT1A,CNT1Bを受ける。制御信号CNT1Aは、主回路50のフルブリッジ回路を制御するためのゲート信号GC1a〜GC4aと、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子51〜54を全て非導通に固定するためのゲートブロック信号GBaと、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子51〜54の非導通固定を解除するためのゲートデブロック信号DEBaと、対応する単位変換器5が故障した場合にスイッチS7を導通状態にするための導通指令信号SONaとを含む。制御信号CNT1Bは、制御信号CNT1Aと同様に、ゲート信号GC1b〜GC4bと、ゲートブロック信号GBbと、ゲートデブロック信号DEBbと、導通指令信号SONbとを含む。
より具体的には、スイッチング素子51〜54を全て非導通に固定するときには、ゲートブロック信号GBa,GBbは、Hレベルに活性化される。ゲートブロック信号GBa,GBbのHレベルの活性化に応じて、ゲートデブロック信号DEBa,DEBbは、Lレベルに非活性化される。
スイッチング素子51〜54の非導通固定を解除するときには、ゲートデブロック信号DEBa,DEBbは、Hレベルに活性化される。ゲートデブロック信号DEBa,DEBbのHレベルの活性化に応じて、ゲートブロック信号GBa,GBbは、Lレベルに非活性化される。
対応する単位変換器5が故障したときには、導通指令信号SONa,SONbは、Hレベルに活性化される。対応する単位変換器5が正常であるときには、導通指令信号SONa,SONbは、Lレベルに非活性化される。
また、IF回路61は、制御装置7,8から、制御信号CNT1A,CNT1Bのうちのいずれかの制御信号を選択するための選択指令信号SE1A,SE1Bを受ける。制御信号CNT1Aが選択された場合には、選択指令信号SE1A,SE1BはそれぞれHレベルおよびLレベルにされる。制御信号CNT1Bが選択された場合には、選択指令信号SE1A,SE1BはそれぞれLレベルおよびHレベルにされる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされた場合には、I/F回路61は、制御装置7から受信した信号GC1a〜GC4a、信号GBa、および信号DEBaを、それぞれゲート信号GC1〜GC4、ゲートブロック信号GB、およびゲートデブロック信号DEBとして駆動回路62に与えるとともに、制御装置7から受信した信号SONaを導通指令信号SONとしてスイッチ操作回路63に与える。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされた場合には、I/F回路61は、制御装置8から受信した信号GC1b〜GC4b、信号GBb、および信号DEBbを、それぞれゲート信号GC1〜GC4、ゲートブロック信号GB、およびゲートデブロック信号DEBとして駆動回路62に与えるとともに、制御装置8から受信した信号SONbを導通指令信号SONとしてスイッチ操作回路63に与える。
駆動回路62は、ゲート信号GC1〜GC4に応答してスイッチング素子51〜54の導通/非導通を制御する。駆動回路62は、ゲートブロック信号GBに応答して、スイッチング素子51〜54を非導通状態に固定された状態(停止状態、またはゲートブロック状態)とする。駆動回路62は、ゲートデブロック信号DEBに応答して、スイッチング素子51〜54の非導通固定状態が解除された状態(ゲートブロック状態ではない状態、またはゲートデブロック状態)とする。
言い換えると、ゲートブロック信号GBがHレベル、およびゲートデブロック信号DEBがLレベルのときに、スイッチング素子51〜54は、ゲートブロック状態となる。ゲートブロック信号GBがLレベル、およびゲートデブロック信号DEBがHレベルのときに、スイッチング素子51〜54は、ゲートブロック状態ではない状態となる。
制御装置7,8は、アームA1内のすべての単位変換器5へのゲートブロック信号GBa,GBbのレベルおよびゲートデブロック信号DEBa,DEBbのレベルを同時に制御する。これによって、アームA1内のすべての単位変換器5のスイッチング素子51〜54は、同時に非導通となるとともに、同時に非導通固定が解除される。アームA2、およびアームA3についても同様である。
スイッチ操作回路63は、スイッチS7を操作するための回路である。スイッチ操作回路63は、励磁コイル56への通電を導通指令信号SONに応じて制御する。通常動作時、励磁コイル56への電流供給が停止されているため、スイッチS7は非導通状態とされる。一方、制御装置7,8は、複数の単位変換器5のうちのいずれかの単位変換器5において、スイッチング素子の短絡故障等の異常を検知した場合には、この故障した単位変換器5に対応する導通指令信号SONa,SONbをHレベルにする。
故障した単位変換器5では、I/F回路61が信号SONaまたはSONbを導通指令信号SONとしてスイッチ操作回路63へ出力する。導通指令信号SONがHレベルにされたことに応じてスイッチ操作回路63が励磁コイル56に電流を供給することにより、スイッチS7が導通状態にされる。これにより、故障した単位変換器5の出力が短絡される。
限流抵抗回路64は、主回路50と電源65との間の第1の直流ラインPLに介挿される。限流抵抗回路64は、コンデンサ55の直流電圧Vdcを降圧する。電源65は、入力端子65a,65bを含む。入力端子65aは第1の直流ラインPLに接続される。入力端子65bは第2の直流ラインNLに接続される。電源65は、コンデンサ55に電気的に並列に接続される。電源65は、コンデンサ55の電圧を降圧して電源電圧を生成し、電源電圧を制御回路60へ供給する。これにより、単位変換器5は、主回路50から制御回路60に電力を供給することができる自給式のセルを形成する。
図6は、図5に示したI/F回路61の要部を示す回路ブロック図である。図6において、I/F回路61は、ゲート回路71〜74、およびORゲート75〜77を含む。選択指令信号SE1A,SE1Bは、ゲート回路71〜74の各々に与えられる。ゲート信号GC1a〜GC4aは、それぞれゲート回路71〜74に与えられる。ゲート信号GC1b〜GC4bは、それぞれゲート回路71〜74に与えられる。ゲート回路71〜74は、それぞれゲート信号GC1〜GC4を駆動回路62に出力する。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされている場合には、ゲート信号GC1a〜GC4aがそれぞれゲート回路71〜74を通過してゲート信号GC1〜GC4となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされている場合には、ゲート信号GC1b〜GC4bがそれぞれゲート回路71〜74を通過してゲート信号GC1〜GC4となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされている場合に、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされたときには、所定時間Tcだけゲート信号GC1a〜GC4a,GC1b〜GC4bがゲート回路71〜74によって一旦遮断された後に、ゲート信号GC1b〜GC4bがそれぞれゲート回路71〜74を通過してゲート信号GC1〜GC4となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされている場合に、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされたときには、所定時間Tcだけゲート信号GC1a〜GC4a,GC1b〜GC4bがゲート回路71〜74によって一旦遮断された後に、ゲート信号GC1a〜GC4aがそれぞれゲート回路71〜74を通過してゲート信号GC1〜GC4となる。
図7は、ゲート回路71の構成を示す回路ブロック図である。図7において、ゲート回路71は、ワンショットパルス発生回路81,82、ゲート回路83,84、およびORゲート85を含む。
ワンショットパルス発生回路81は、選択指令信号SE1Aに応答して信号φ81を出力する。選択指令信号SE1AがLレベルにされている場合には、信号φ81はLレベルにされている。選択指令信号SE1AがLレベルからHレベルに立ち上げられた場合には、信号φ81は所定時間TcだけHレベルにされた後にLレベルにされる。選択指令信号SE1AがHレベルからLレベルに立ち下げられた場合には、信号φ81は直ぐにLレベルにされる。
ワンショットパルス発生回路82は、選択指令信号SE1Bに応答して信号φ82を出力する。選択指令信号SE1BがLレベルにされている場合には、信号φ82はLレベルにされている。選択指令信号SE1BがLレベルからHレベルに立ち上げられた場合には、信号φ82は所定時間TcだけHレベルにされた後にLレベルにされる。選択指令信号SE1BがHレベルからLレベルに立ち下げられた場合には、信号φ82は直ぐにLレベルにされる。
ゲート回路83は、ゲート信号GC1a、選択指令信号SE1A、および信号φ81を受けて信号φ83を出力する。選択指令信号SE1AがHレベルにされ、かつ信号φ81がLレベルである場合には、ゲート信号GC1aがゲート回路83を通過して信号φ83となる。選択指令信号SE1AがLレベルにされている場合には、ゲート信号GC1aはゲート回路83によって遮断され、信号φ83はLレベルに固定される。また、信号φ81がHレベルである場合には、ゲート信号GC1aはゲート回路83によって遮断され、信号φ83はLレベルに固定される。
ゲート回路84は、ゲート信号GC1b、選択指令信号SE1B、および信号φ82を受けて信号φ84を出力する。選択指令信号SE1BがHレベルにされ、かつ信号φ82がLレベルである場合には、ゲート信号GC1bがゲート回路84を通過して信号φ84となる。選択指令信号SE1BがLレベルにされている場合には、ゲート信号GC1bはゲート回路84によって遮断され、信号φ84はLレベルに固定される。また、信号φ82がHレベルである場合には、ゲート信号GC1bはゲート回路84によって遮断され、信号φ84はLレベルに固定される。ORゲート85は、信号φ83,φ84の論理和信号をゲート信号GC1として出力する。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされている場合には、ゲート信号GC1bがゲート回路84によって遮断され、ゲート信号GC1aがゲート回路83およびORゲート85を通過してゲート信号GC1となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされている場合には、ゲート信号GC1aがゲート回路83によって遮断され、ゲート信号GC1bがゲート回路84およびORゲート85を通過してゲート信号GC1となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされている場合に、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされたときには、ゲート信号GC1aがゲート回路83によって遮断される。また、ワンショットパルス発生回路82によって信号φ82が所定時間TcだけHレベルに立ち上げられ、所定時間Tcだけゲート信号GC1bがゲート回路84によって一旦遮断された後に、ゲート信号GC1bがゲート回路84およびORゲート85を通過してゲート信号GC1となる。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされている場合に、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされたときには、ゲート信号GC1bがゲート回路84によって遮断される。また、ワンショットパルス発生回路81によって信号φ81が所定時間TcだけHレベルに立ち上げられ、所定時間Tcだけゲート信号GC1aがゲート回路83によって一旦遮断された後に、ゲート信号GC1aがゲート回路83およびORゲート85を通過してゲート信号GC1となる。
図8は、図6に示したゲート回路71,73の効果および問題点を説明するためのタイムチャートである。図8において、(A)〜(D)はそれぞれゲート信号GC1a,GC3a,GC1b,GC3bの波形を示し、(E),(F)はそれぞれ選択指令信号SE1A,SE1Bの波形を示し、(G),(H)はそれぞれワンショットパルス信号φ81,φ82の波形を示している。ゲート信号GC1a,GC3a,GC1b,GC3bの各々は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
ゲート信号GC1aとゲート信号GC3aは、互いに相補な信号である。ゲート信号GC1a,GC3aがゲート信号GC1,GC3として駆動回路62(図5)に与えられている場合、ゲート信号GC1a,GC3aがそれぞれHレベルおよびLレベルであるときには、スイッチング素子51(図5)が導通状態にされるとともにスイッチング素子53(図5)が非導通状態にされる。また、ゲート信号GC1a,GC3aがそれぞれLレベルおよびHレベルであるときには、スイッチング素子51が非導通状態にされるとともにスイッチング素子53が導通状態にされる。
同様に、ゲート信号GC1bとゲート信号GC3bは、互いに相補な信号である。ゲート信号GC1b,GC3bがゲート信号GC1,GC3として駆動回路62に与えられている場合、ゲート信号GC1b,GC3bがそれぞれHレベルおよびLレベルであるときには、スイッチング素子51が導通状態にされるとともにスイッチング素子53が非導通状態にされる。また、ゲート信号GC1b,GC3bがそれぞれLレベルおよびHレベルであるときには、スイッチング素子51が非導通状態にされるとともにスイッチング素子53が導通状態にされる。
制御装置7によって生成されるゲート信号GC1a,GC3aの位相と、制御装置8によって生成されるゲート信号GC1b,GC3bの位相とは、理想的には一致しているが、実際には若干ずれる。図8では、ゲート信号GC1a,GC3aの位相がゲート信号GC1b,GC3bの位相よりも若干遅れている場合が示されている。このため、ゲート信号GC1aとゲート信号GC3bの両方がHレベルになる期間(時刻t1〜t3)が存在する。
初期状態(時刻t0)では、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされており、ゲート信号GC1a,GC3aがゲート信号GC1,GC3として駆動回路62(図5)に与えられているものとする。また、時刻t1と時刻t3の間の時刻t2において、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルに切り換えられたものとする。
このような場合において、選択指令信号SE1A,SE1Bの切換に応答して、直ぐにゲート信号GC1,GC2をゲート信号GC1a,GC3aからゲート信号GC1b,GC3bに切り換えると、スイッチング素子51がまだ導通状態であるのにスイッチング素子53が導通状態になる恐れがある。スイッチング素子51,53が同時に導通状態になると、コンデンサ55の端子間がスイッチング素子51,53によって短絡され、過電流が流れてスイッチング素子51,53などが破損する恐れがある。
これに対してゲート回路71では、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルに切り換えられると、ワンショットパルス発生回路82の出力信号φ82が所定時間TcだけHレベルになり、所定時間Tcだけゲート信号GC1,GC3がともにLレベルにされ、スイッチング素子51,53が非導通状態にされる。したがって、スイッチング素子51,53が同時に導通状態になることが防止される。ゲート回路72,73,74の各々は、ゲート回路71と同様の構成であるので、その説明は繰り返さない。
なお、本実施の形態では、ゲート回路71〜74により、選択指令信号SE1A,SE1Bのレベルを切り換える時に所定時間Tcだけ全てのゲート信号GC1〜GC4をLレベルに固定する。したがって、スイッチング素子51,53(またはスイッチング素子52,54)が同時に導通状態になることを防止することができる反面、所定時間Tcだけスイッチング素子51〜54のPWM制御が停止されることとなる。
このため、選択指令信号SE1A,SE1Bのレベルの切換を任意のタイミングで行なうと、所定時間Tcだけスイッチング素子51〜54のPWM制御が停止され、交流電流Iuvの波形が歪む恐れがある。しかし、本実施の形態では、交流電流Iuvがゼロクロス点を通るときに選択指令信号SE1A,SE1Bのレベルを切り換えるので、交流電流Iuvの波形歪を十分に小さく抑制することができる。
図6に戻って、ORゲート75は、制御装置7,8からのゲートブロック信号GBa,GBbの論理和信号をゲートブロック信号GBとして駆動回路62に出力する。ORゲート76は、制御装置7,8からのゲートデブロック信号DEBa,DEBbの論理和信号をゲートデブロック信号DEBとして駆動回路62に出力する。ORゲート77は、導通指令信号SONa,SONbの論理和信号を導通指令信号SONとして駆動回路62に出力する。
なお、制御装置7,8からのゲート信号GC1a,GC1bの論理和信号をゲート信号GC1とすることはできない。図8で示したように、ゲート信号GC1aの位相とゲート信号GC1bの位相とがずれている場合には、ゲート信号GC1のパルス幅が拡がってしまい、正確にPWM制御をすることができないからである。
次に、図1〜図8に示した電力変換装置100の動作について説明する。ここでは、説明の簡単化を図るために、アームA1に関連する動作のみについて説明する。今、操作部6(図1)を用いて制御装置7が選択され、選択信号SEがLレベルにされているものとする。選択信号SEがLレベルにされているので、選択指令部11,21(図2)によって選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされる。
制御部10(図2)は、選択信号SEのレベルに関係なく、アームA1を制御するための制御信号CNT1Aを生成する。制御部20(図2)は、選択信号SEのレベルに関係なく、アームA1を制御するための制御信号CNT1Bを生成する。制御信号CNT1A,CNT1Bおよび選択指令信号SE1A,SE1Bは、アームA1の各単位変換器5に含まれるI/F回路61(図5)に与えられる。
I/F回路61は、選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれHレベルおよびLレベルにされているので、制御信号CNT1Aを通過させる。制御信号CNT1Aに含まれるゲート信号GC1a〜GC4aがI/F回路61を通過してゲート信号GC1〜GC4となる。駆動回路62は、ゲート信号GC1〜GC4に従ってスイッチング素子51〜54を駆動させる。
次に、操作部6(図1)を用いて制御装置8が選択され、選択信号SEがLレベルからHレベルに立ち上げられたものとする。選択信号SEがLレベルからHレベルに立ち上げられると、選択指令部11,21により、アームA1に流れる交流電流Iuvがゼロクロス点を通るときに、選択指令信号SE1AがHレベルからLレベルに立ち下げられるとともに、選択指令信号SE1BがLレベルからHレベルに立ち上げられる(図4の時刻t2)。
選択指令信号SE1A,SE1BがそれぞれLレベルおよびHレベルにされると、ゲート回路71〜74(図6)は、所定時間Tc(図8)だけゲート信号GC1a〜GC4a,GC1b〜GC4bの通過を遮断した後に、ゲート信号GC1b〜GC4bを通過させる。ゲート回路71〜74を通過したゲート信号GC1b〜GC4bは、駆動回路62に与えられる。駆動回路62は、ゲート信号GC1〜GC4に従ってスイッチング素子51〜54を駆動させる。
以上のように、本実施の形態では、選択信号SEのレベルが切換えられた場合には、交流電流Iuvの絶対値がしきい値電流ITHよりも小さくなったときに、選択指令信号SE1A,SE1Bのレベルを切り換えてゲート信号GC1〜GC4を切り換える。したがって、ゲート信号GC1〜GC4の切換時における交流電流Iuvの波形歪を小さく抑制することができる。
図9は、実施の形態の比較例の要部を示す回路ブロック図であって、図2と対比される図である。図9を参照して、この比較例は、電力変換装置100の制御装置7,8を制御装置7A,8Aで置換したものである。制御装置7Aは、制御装置7の選択指令部11〜13をインバータ91〜93で置換したものである。制御装置8Aは、制御装置8の選択指令部21〜23をバッファ94〜96で置換したものである。
選択信号SEは、インバータ91〜93およびバッファ94〜96の各々に与えられる。インバータ91〜93の出力信号は選択指令信号SE1A〜SE3Aとなり、バッファ94〜96の出力信号は選択指令信号SE1B〜SE3Bとなる。
図10は、図9で示した比較例の問題点を説明するためのタイムチャートであって、図4と対比される図である。図10において、(A)は三相交流電流Iuv,Ivw,Iwuの波形を示し、(B)は選択信号SEの波形を示し、(C)〜(E)はそれぞれ選択指令信号SE1A〜SE3Aの波形を示し、(F)〜(H)はそれぞれ選択指令信号SE1B〜SE3Bの波形を示している。
ある時刻t0において、選択信号SEがLレベルにされているものとする。選択信号SEがLレベルにされている場合には、インバータ91〜93によって選択指令信号SE1A〜SE3AがHレベルにされるとともに、バッファ94〜96によって選択指令信号SE1B〜SE3BがLレベルにされる。この場合、制御装置7からのゲート信号GC1a〜GC4aがゲート回路71〜74(図6)を通過して駆動回路62に与えられ、駆動回路62によってスイッチング素子51〜54が駆動される。
ある時刻t1において、選択信号SEがLレベルからHレベルに立ち上げられると、インバータ91〜93によって選択指令信号SE1A〜SE3AがLレベルにされるとともに、バッファ94〜96によって選択指令信号SE1B〜SE3BがHレベルにされる。選択指令信号SE1A〜SE3A,SE1B〜SE3Bのレベルが切換えられると、ゲート回路71〜74(図6)によって所定時間Tcだけゲート信号GC1a〜GC4a,GC1b〜GC4bが一旦遮断された後、ゲート信号GC1b〜GC4bがゲート回路71〜74を通過して駆動回路62に与えられ、駆動回路62によってスイッチング素子51〜54が駆動される。
この比較例では、選択信号SEのレベルが切換えられた場合には、直ぐに選択指令信号SE1A,SE1B,…のレベルを切り換えてゲート信号GC1〜GC4を切り換える。したがって、交流電流Iuv,Ivw,Iwuがゼロクロス点を通るときにゲート信号GC1〜GC4を切り換える実施の形態に比べ、図10(A)に示すように、交流電流Iuv,Ivw,Iwuの波形歪が大きくなる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。