JP3903421B2 - 電圧変動補償装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、負荷に供給される電力系統の電圧が瞬時的に変動した際に、それを検出して電圧変動を補償する電圧変動補償装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
雷などにより電力系統の電圧が瞬時的に低下し、工場などの精密機器などが誤作動や一時停止することにより、生産ラインで多大な被害を被ることがある。このような被害を防ぐために、電力系統の瞬時的電圧低下などの電圧変動を監視して、電圧低下を補償する電圧変動補償装置が用いられている。
従来の電圧変動補償装置の概略構成図を図8に示す。図に示すように、送電線1からの電力は、変圧器2により降圧されて、電圧変動補償装置を介して需要家3(負荷)に接続され、電力が供給される。電圧変動補償装置は、直流電源4、インバータ5、平滑フィルタ6および大容量トランス7で構成される。
このような従来の電圧変動補償装置における、系統電圧の瞬時低下時(以下、瞬低時と称す)の電圧補償動作について以下に示す。
図9は、系統電圧の瞬低時の、系統電圧、電圧変動補償装置の補償電圧(補償回路出力)、および需要家3に供給される電圧(需要家供給電圧)をそれぞれ示したものである。図に示すように、系統電圧に瞬時的に電圧低下が発生すると、電圧変動を監視している検出部(図示せず)にて電圧低下を検出し、それに基づく給電制御により、電圧変動補償装置では、直流電源4とインバータ5とで交流電圧を発生させて、平滑フィルタ6と大容量のトランス7を介して電力系統に直列に接続することにより、電力系統の電圧低下を補償する。これにより、需要家3には、電圧低下した系統電圧に電圧変動補償装置から出力される補償電圧が加算されてほぼ正常な電圧で電力が供給される。
【0003】
上記のような電圧変動補償装置は、トランス7を介して電力系統に接続されるものであるが、近年、直列接続された複数個の電圧補償回路で構成される電圧変動補償装置を直接電力系統に直列に接続するものが開発されており、図10に基づいて以下に説明する。
図10に示すように、送電線1からの電力は、変圧器2により降圧されて、電圧変動補償装置を介して需要家3(負荷)に接続され、電力が供給される。電圧変動補償装置は、図に示すように、複数の電圧補償ユニット15と制御回路16とで構成され、正負いずれかの極性で補償電圧を出力する複数の電圧補償回路PN1、PN2、PN3が電力系統に直列に接続される。各電圧補償ユニット15には、ダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24、9sw31〜9sw34から成るフルブリッジインバータ、およびエネルギ蓄積手段としての充電コンデンサ10pn1〜10pn3で構成される各電圧補償回路PN(PN1、PN2、PN3)と、充電コンデンサ10(10pn1〜10pn3)を充電するための充電ダイオード11と充電用トランス14の2次巻線13とが備えられる。また、充電コンデンサ10の充電電圧V1〜V3は、半導体スイッチング素子9(9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24、9sw31〜9sw34)のオン/オフ制御により正負いずれかの極性で電力系統に接続される。また、各電圧補償回路PNの出力端には、各電圧補償回路PNと並列に高速機械式の定常短絡スイッチ8が設けられる。
充電コンデンサ10は充電ダイオード11と充電用トランス14の2次巻線13によってそれぞれ異なる電圧が充電され、充電用トランス1次巻線12は、電力系統と接続される。各電圧補償サブ回路PN1、PN2、PN3内の充電コンデンサ10に充電される電圧の比は概ね2のべき乗比に設定されている。つまり、以下の関係を満足させる。
V3=2×V2=2×2×V1
【0004】
定常短絡スイッチ8および各半導体スイッチング素子9は制御回路16に接続される。この制御回路16の構成および動作について、図11に基づいて以下に説明する。
図11に示すように、系統電圧は制御回路16に入力され、設定電圧20と比較される。このとき設定電圧20は、正常時の系統電圧とする。両者の差を誤差増幅器21にて増幅し、さらに絶対値変換を施した後、A/Dコンバータ22にて3ビットのデジタル信号(D1〜D3)に変換する。系統電圧と設定電圧20との差が、充電コンデンサ10pn1の充電電圧V1と等しくなったとき、A/Dコンバータ22からの出力信号における最下位ビットD1のみが1、即ち゛001゛となるよう、また、同様に゛010゛・・・゛111゛の場合も、充電コンデンサ10の充電電圧の組み合わせと等しくなるように誤差増幅器21のゲインは予め調整しておく。
D1〜D3の信号のいずれかが1となると、NOR回路23を通して、信号z(=0)により定常短絡スイッチ8をオフする。
一方、電圧瞬低制御回路16に入力された系統電圧は、極性判定回路24にも入力され、極性が判定される。25は、各電圧補償回路PNのインバータの駆動信号を発生する駆動信号発生器で、系統電圧の極性が正・負の場合に応じて、デジタル信号D1〜D3にてアクテイブとなる信号g11〜g14、g21〜g24、g31〜g34を選択する。
【0005】
例えば、図10で示す電圧補償回路PN1においては、最下位ビットD1=1のときに、系統電圧の極性が正の場合、スイッチング素子9sw11、9sw14をオンし、スイッチング素子9sw12、9sw13をオフすることにより、充電電圧V1を正極性で出力する。また系統電圧の極性が負の場合、スイッチング素子9sw12、9sw13をオンし、スイッチング素子9sw11、9sw14をオフすることにより、充電電圧V1を負極性で出力する。またD1=0のとき、スイッチング素子9sw11〜9sw14、のうち上アーム側9sw12、9sw14あるいは下アーム側9sw11、9sw13のどちらか一方をオン状態とし他方をオフ状態として出力端を短絡し、電圧補償回路PN1からの出力をほぼゼロとする。
【0006】
次に、補償動作について図12に基づいて説明する。
通常時、即ちデジタル信号D1〜D3が全て0の時は、信号zは1となり、定常短絡スイッチ8はオン状態で、電流は定常短絡スイッチ8を流れる。
時刻taにおいて、系統電圧に瞬時的に電圧低下が発生したとする。誤差電圧に応じてデジタル信号D1〜D3が発生し、それと同時に信号zが0となり、定常短絡スイッチ8はオフする。時刻ta〜tbは系統電圧の極性が正であるから、発生したデジタル信号D1〜D3によって選択された各電圧補償回路PN1、PN2、PN3において、電圧V1、V2、V3が正極性で出力される。また、時刻tb〜tcまでは、系統電圧の極性が負であるから、デジタル信号D1〜D3によって、電圧V1、V2、V3が負極性で出力される。なお、Vi-p、Vi-n(i=1,2,3)は、それぞれ正極性、負極性における電圧V1、V2、V3の出力信号である。これらの出力は、系統にて組み合わされ、゛000゛〜゛111゛の8階調の電圧出力を発生することができ、最大の補償電圧は、7×V1となる。
【0007】
このような従来の電圧変動補償装置は、複数の電圧補償回路PN1〜PN3を備えて補償電圧を階調制御により出力するため、系統電圧の瞬低時における高精度な電圧補償が可能であり、またトランス7を介することなく直接電力系統に接続するため装置全体が安価で小型に構成できるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電圧変動補償装置は、以上のように構成されているため、補償電圧を出力する際、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3において、それぞれ出力される電圧V1、V2、V3の総和で補償電圧が出力される。例えば、時刻t1〜t14において、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3からV1、V2、V3の電圧が、図13(a)に示すように出力されたとき、これらの総和により階段状の補償電圧が出力されるが、図13(b)に示すように、時刻t2、t4、t6、t9、t11、t13における補償電圧の切り替えの際、スパイク状の高電圧パルス26が発生することがあった。このように、複数の電圧補償回路の出力を同時に切り替えて補償電圧を切り替える際、補償出力電圧に高電圧パルス26を発生するという問題点があり、そのため、電圧変動補償装置の負荷側に高調波除去用フィルタを設けるなどの対策が必要であった。
【0009】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、補償電圧切り替え時に、高電圧パルスが補償出力電圧に発生するのを防止して、系統電圧の瞬低時の電圧補償を信頼性良く行える電圧変動補償装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る請求項1記載の電圧変動補償装置は、それぞれ異なる電圧が蓄積されるエネルギ蓄積手段を備え該エネルギ蓄積手段に蓄積された直流電圧を交流に変換して出力する複数の電圧補償回路を電力系統に直列に接続し、該電力系統の電圧低下時に、上記複数の電圧補償回路の中から所望の組み合わせを選択し、その出力電圧の総和で上記電力系統の電圧低下を補償し、負荷に供給される電圧変動を抑える装置構成であって、上記複数の電圧補償回路内の、出力をオンからオフに切り替える第1の電圧補償回路と、オフからオンに切り替える第2の電圧補償回路との双方が動作して上記出力電圧の総和による補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて上記第2の電圧補償回路の出力切り替えを行うものである。
【0011】
またこの発明に係る請求項2記載の電圧変動補償装置は、請求項1において、各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を備え、該半導体スイッチング素子のスイッチング時間の3倍以内に遅延時間を設定するものである。
【0012】
またこの発明に係る請求項3記載の電圧変動補償装置は、請求項1または2において、補償電圧を切り替える際に設ける遅延時間は、出力をオフからオンする第2の電圧補償回路の出力電圧が大きいほど長く設定するものである。
【0013】
またこの発明に係る請求項4記載の電圧変動補償装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子から成るフルブリッジインバータを備え、出力のオン/オフ切り替え時には、上記4個の半導体スイッチの内、所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作を伴い、エネルギ蓄積手段に蓄積された電圧を、電力系統の電圧低下時における極性に応じて正負いずれかの極性で出力するもので、上記所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作には、上記インバータのアーム短絡防止のための短絡防止遅延時間を設け、第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて第2の電圧補償回路の出力切り替えをして補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間後に動作する2個目の半導体スイッチの切り替え後、所定の遅延時間を経て上記第2の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間前に動作する1個目の半導体スイッチを切り替えるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電圧変動補償装置の構成図である。
図1に示すように、送電線1からの電力は、変圧器2により降圧されて、電圧変動補償装置を介して需要家3(負荷)に接続され、電力が供給される。電圧変動補償装置は、図に示すように、複数の電圧補償ユニット15と制御回路16とで構成され、正負いずれかの極性で補償電圧を出力する複数の電圧補償回路PN1、PN2、PN3が電力系統に直列に接続される。各電圧補償ユニット15には、ダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24、9sw31〜9sw34から成るフルブリッジインバータ、およびエネルギ蓄積手段としての充電コンデンサ10pn1〜10pn3で構成される各電圧補償回路PN(PN1、PN2、PN3)と、充電コンデンサ10(10pn1〜10pn3)を充電するための充電ダイオード11と充電用トランス14の2次巻線13とが備えられる。なお、半導体スイッチング素子9はIGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子が用いられる。
【0015】
また、充電コンデンサ10の充電電圧V1〜V3は、半導体スイッチング素子9(9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24、9sw31〜9sw34)のオン/オフ制御により正負いずれかの極性で電力系統に接続される。また、各電圧補償回路PNの出力端には、各電圧補償回路PNと並列に高速機械式の定常短絡スイッチ8が設けられる。
充電コンデンサ10は充電ダイオード11と充電用トランス14の2次巻線13によってそれぞれ異なる電圧が充電され、充電用トランス1次巻線12は、電力系統と接続される。各電圧補償サブ回路PN1、PN2、PN3内の充電コンデンサ10に充電される電圧の比は概ね2のべき乗比に設定されている。つまり、以下の関係を満足させる。
V3=2×V2=2×2×V1
【0016】
定常短絡スイッチ8および各半導体スイッチング素子9は電圧瞬低制御回路30に接続される。この電圧瞬低制御回路30の構成および動作について、図2に基づいて以下に説明する。
図2に示すように、系統電圧は電圧瞬低制御回路30に入力され、設定電圧20と比較される。このとき設定電圧20は、正常時の系統電圧とする。両者の差を誤差増幅器21にて増幅し、さらに絶対値変換を施した後、A/Dコンバータ22にて3ビットのデジタル信号(D1〜D3)に変換する。系統電圧と設定電圧20との差が、充電コンデンサ10pn1の充電電圧V1と等しくなったとき、A/Dコンバータ22からの出力信号における最下位ビットD1のみが1、即ち゛001゛となるよう、また、同様に゛010゛・・・゛111゛の場合も、充電コンデンサ10の充電電圧の組み合わせと等しくなるように誤差増幅器21のゲインは予め調整しておく。
D1〜D3の信号のいずれかが1となると、NOR回路23を通して、信号z(=0)により定常短絡スイッチ8をオフする。
【0017】
一方、電圧瞬低制御回路30に入力された系統電圧は、極性判定回路24にも入力され、極性が判定される。25は、各電圧補償回路PNのインバータの駆動信号を発生する駆動信号発生器で、系統電圧の極性が正・負の場合に応じて、デジタル信号D1〜D3にてアクテイブとなる駆動信号g11〜g14、g21〜g24、g31〜g34を選択する。この駆動信号g11〜g14、g21〜g24、g31〜g34により各半導体スイッチング素子9がオン/オフ制御されて、各電圧補償回路PNの出力が制御される。駆動信号発生器25の出力側には、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3への駆動信号毎に動作遅延時間を設ける遅延回路31を備え、遅延時間設定部32にて設定された所定の遅延時間により、各電圧補償回路PNの出力の切り替えタイミングが調整される。
【0018】
次に、補償動作について説明する。
通常時、即ちデジタル信号D1〜D3が全て0の時は、信号zは1となり、定常短絡スイッチ8はオン状態で、電流は定常短絡スイッチ8を流れる。
系統電圧に瞬時的に電圧低下が発生すると、誤差電圧に応じてデジタル信号D1〜D3が発生し、それと同時に信号zが0となり、定常短絡スイッチ8はオフする。発生したデジタル信号D1〜D3によって選択された各電圧補償回路PN1、PN2、PN3において、電圧V1、V2、V3が系統電圧の極性に応じて出力される。これらの出力は、系統にて組み合わされ、゛000゛〜゛111゛の8階調の電圧出力を発生することができ、最大の補償電圧は、7×V1となる。
【0019】
系統電圧に瞬低が発生し、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3からの電圧出力V1、V2、V3のオン/オフ切り替えタイミングを図3に示す。図に示すように、時刻t1〜t14において、V1、V2、V3の電圧の総和で補償電圧を出力するが、時刻t2、t4、t6、t9、t11、t13における補償電圧の切り替えの際、即ち、出力をオンからオフに切り替える電圧補償回路PNと、オフからオンに切り替える電圧補償回路PNとの双方が動作して補償電圧を切り替える際、オフにする電圧補償回路PNの切り替えをした後、所定の遅延時間Δt1〜Δt6を設けてオンにする電圧補償回路PNの切り替えを行う。なお、この遅延時間は、駆動信号発生器25の出力側に備えられた遅延回路31により設けられる。各電圧補償回路PNの出力のオン/オフ切り替えは、実際には有限の時間を要するため、このように遅延時間を設けることにより、オンからオフへの切り替えが完了するまでに、もう一方の電圧補償回路PNがオフからオンに切り替わるのを防ぎ、両者の出力加算によるスパイク状の高電圧が発生するのを防止する。
【0020】
例えば、時刻t2において、電圧補償回路PN1からの出力電圧V1をオン状態からオフにし、電圧補償回路PN2からの出力電圧V2をオフ状態からオンにすることで、補償電圧を切り替えるが、出力電圧V1をオフにした後、Δt1時間遅延させて出力電圧V2をオンにする。同様に、時刻t4においては、電圧補償回路PN1、PN2からの出力電圧V1、V2をオン状態からオフにし、電圧補償回路PN3からの出力電圧V3をオフ状態からオンにするが、出力電圧V1、V2をオフにした後、Δt2時間遅延させて出力電圧V3をオンにする。
これにより、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3からの電圧V1、V2、V3の総和により出力される階段状の補償電圧は、遅延時間Δt1〜Δt6を設けなかった従来の状態(図4(a))から、図4(b)に示すように、高電圧パルスが発生することなく、良好な階段状の波形となる。このため、系統電圧の瞬低時に、補償電圧を信頼性良く出力できる。また、出力電圧中に高調波成分が含まれるのが防止できるため、高調波除去用のフィルタを小型化または不要化することができ、装置構成を小型化できる。
【0021】
なお、上記実施の形態では、電圧瞬低制御回路30の駆動信号発生器25の出力側に遅延回路31を設けて、各電圧補償回路PN1、PN2、PN3の出力の切り替えタイミングを調整したが、遅延回路31の部分は、遅延機能を有する論理ICを用いてハード的に構成しても良いし、また、プログラマブルデバイスを用いてソフト的に構成しても良い。
【0022】
実施の形態2.
上記実施の形態1において、スパイク状の高電圧パルスは、各電圧補償回路PNの出力のオン/オフ切り替えに要する時間に起因して発生するため、半導体スイッチング素子9のスイッチング時間と密接に関係があることが判っている。このため、この実施の形態では、図3における時刻t2、t4、t6、t9、t11、t13にて設ける遅延時間Δt1〜Δt6を、半導体スイッチング素子9のスイッチング時間の3倍以内に設定する。
例えば、V1=50V、V2=100V、V3=200Vとしたときの、図3における時刻t4、即ち補償電圧150Vから200Vへの切り替え時における遅延時間Δt2と発生するスパイク状の高電圧(スパイク電圧)との関係を図5に示す。また、このとき半導体スイッチング素子9のスイッチング時間は0.7μsとする。図に示すように、遅延時間を設けることによりスパイク電圧は減少していき、遅延時間を上記スイッチング時間の3倍程度である2μsにてスパイク電圧をほぼ無くすことができる。なお、それ以上遅延時間を長くすると、出力される補償電圧の落ち込みが発生する。図3における時刻t2、t4、t6、t9、t11、t13にて、それぞれ遅延時間を長く設けた場合、図6に示すように、高電圧パルスの代わりに補償電圧に落ち込みが発生し、良好な階段状の波形とはならない。
このように、遅延時間を、半導体スイッチング素子9のスイッチング時間の3倍以内に設定することで、補償電圧の切り替え時に電圧の落ち込みを発生させることなく、信頼性良く高電圧パルスを抑制することができる。
【0023】
実施の形態3.
上記実施の形態1において、図3の時刻t2、t4、t6、t9、t11、t13における補償電圧の切り替えの際、所定の遅延時間Δt1〜Δt6を設けたが、この実施の形態では、各時刻での遅延時間Δt1〜Δt6を異なるように設定する。上記時刻での補償電圧の切り替えでは、出力をオンからオフに切り替える電圧補償回路PNと、オフからオンに切り替える電圧補償回路PNとの双方が動作して補償電圧を切り替えるが、このとき、オフからオンにする出力電圧が大きいほど、発生する可能性のある高電圧パルスは大きいものとなり、このため、オフからオンにする出力電圧が大きいほど遅延時間を長く設定する。
これにより、発生する可能性のある高電圧パルスに応じて、適切に遅延時間を設けることができ、各切り替え時刻において、遅延時間が長すぎて電圧の落ち込みを発生させることなく、高電圧パルスを効果的に十分抑制することが可能になる。
【0024】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では、電圧補償回路PNの出力のオン/オフ切り替えタイミングを遅延時間で調整することについて説明したが、各電圧補償回路PNのオン/オフ切り替えのタイミングを決定しているのは、インバータの4つの半導体スイッチ9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24、9sw31〜9sw34の動作タイミングである。
例えば、図1で示す電圧補償回路PN1においては、最下位ビットD1=1のときに、系統電圧の極性が正の場合、スイッチング素子9sw11、9sw14をオンし、スイッチング素子9sw12、9sw13をオフすることにより、充電電圧V1を正極性で出力する。また系統電圧の極性が負の場合、スイッチング素子9sw12、9sw13をオンし、スイッチング素子9sw11、9sw14をオフすることにより、充電電圧V1を負極性で出力する。またD1=0のとき、スイッチング素子9sw11〜9sw14、のうち上アーム側9sw12、9sw14あるいは下アーム側9sw11、9sw13のどちらか一方(この場合、上アーム側)をオン状態とし他方をオフ状態として出力端を短絡し、電圧補償回路PN1からの出力をほぼゼロとする。
【0025】
上記実施の形態1の図1に示すように、遅延回路31は、各電圧補償回路PNの半導体スイッチ9を動作させる駆動信号g11〜g14、g21〜g24、g31〜g34に対して設けられており、この駆動信号gによる半導体スイッチ9の動作タイミングについて以下に詳述する。
各電圧補償回路PN1、PN2、PN3からV1、V2、V3の電圧を図3に示すタイミングで正極性にて出力する場合、図3の時刻t1およびt2における駆動信号の波形を図7に示す。なお、ここでは、切り替え動作を有する電圧補償回路PN1、PN2に対応する半導体スイッチング素子9sw11〜9sw14、9sw21〜9sw24のみについて示す。
時刻t1までの期間、出力される補償電圧は0であるため、電圧補償回路PN1、PN2の出力はオフ状態で、9sw12、9sw14および9sw22、9sw24がオン状態、他の半導体スイッチング素子はオフ状態である。
時刻t1にて、電圧補償回路PN1の出力をオンして電圧V1を出力するために、9sw12をオフにして、9sw11をオンにする。このとき、9sw11と9sw12とが同時にオン状態になるとインバータのアーム短絡が発生する問題が生じるため、9sw12のオフと9sw11のオンとのタイミングに短絡防止遅延時間Δtを設ける。
【0026】
時刻t2にて、電圧補償回路PN1からの出力電圧V1をオン状態からオフにし、電圧補償回路PN2からの出力電圧V2をオフ状態からオンにすることで、補償電圧を切り替えるが、上記実施の形態1の図3で示したように、スパイク状の高電圧パルスを防止するために、出力電圧V1をオフにした後、Δt1時間、遅延させて出力電圧V2をオンにする。また、出力電圧V1をオフにするには、9sw11をオフにして、9sw12をオンにするが、上述したようにインバータのアーム短絡の発生を防止するために、9sw11のオフと9sw12のオンとのタイミングに短絡防止遅延時間Δtを設ける。さらに、Δt1時間後に出力電圧V2をオンにするには、9sw22をオフにして、9sw21をオンにするが、同様に、9sw22のオフと9sw21のオンとのタイミングに短絡防止遅延時間Δtを設ける。
【0027】
このように、電圧補償回路PNの出力のオン/オフ切り替えには、2個の半導体スイッチング素子9のオン/オフ切り替えが必要で、第1の半導体スイッチング素子をオンからオフにした後、アーム短絡防止のための短絡防止遅延時間Δtを設けて第2の半導体スイッチング素子をオフからオンにする。このため、出力をオンからオフに切り替える電圧補償回路PNと、オフからオンに切り替える電圧補償回路PNとの双方が動作して補償電圧を切り替える際、オンからオフに切り替える電圧補償回路内で第1の半導体スイッチング素子の切り替え、続いて短絡防止遅延時間Δt後に動作する第2の半導体スイッチング素子の切り替え、その後、高電圧パルス防止のための所定の遅延時間を経て、上記オフからオンに切り替える電圧補償回路内で第1の半導体スイッチング素子の切り替え、続いて短絡防止遅延時間Δt後に動作する第2の半導体スイッチング素子の切り替え、による一連の半導体スイッチング素子9の動作により補償電圧が切り替えられる。
これにより、補償電圧切り替え時に、インバータのアーム短絡が発生することなく、高電圧パルスの発生も防止でき、信頼性良く電圧補償が行える。
【0028】
【発明の効果】
この発明に係る請求項1記載の電圧変動補償装置は、それぞれ異なる電圧が蓄積されるエネルギ蓄積手段を備え該エネルギ蓄積手段に蓄積された直流電圧を交流に変換して出力する複数の電圧補償回路を電力系統に直列に接続し、該電力系統の電圧低下時に、上記複数の電圧補償回路の中から所望の組み合わせを選択し、その出力電圧の総和で上記電力系統の電圧低下を補償し、負荷に供給される電圧変動を抑える装置構成であって、上記複数の電圧補償回路内の、出力をオンからオフに切り替える第1の電圧補償回路と、オフからオンに切り替える第2の電圧補償回路との双方が動作して上記出力電圧の総和による補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて上記第2の電圧補償回路の出力切り替えを行うため、補償電圧の切り替え時にスパイク状の高電圧パルスが発生するのを防止し、系統電圧の瞬低時に信頼性良く電圧補償できる。また、高調波除去用フィルタを小型化あるいは不要化することができて、装置構成を小型で安価なものにできる。
【0029】
またこの発明に係る請求項2記載の電圧変動補償装置は、請求項1において、各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を備え、該半導体スイッチング素子のスイッチング時間の3倍以内に遅延時間を設定するため、補償電圧の切り替え時に電圧の落ち込みを発生させることなく、信頼性良く高電圧パルスを抑制することができる。
【0030】
またこの発明に係る請求項3記載の電圧変動補償装置は、請求項1または2において、補償電圧を切り替える際に設ける遅延時間は、出力をオフからオンする第2の電圧補償回路の出力電圧が大きいほど長く設定するため、発生する可能性のある高電圧パルスに応じて、適切に遅延時間を設けることができ、高電圧パルスを効果的に十分抑制することが可能になる。
【0031】
またこの発明に係る請求項4記載の電圧変動補償装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子から成るフルブリッジインバータを備え、出力のオン/オフ切り替え時には、上記4個の半導体スイッチの内、所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作を伴い、エネルギ蓄積手段に蓄積された電圧を、電力系統の電圧低下時における極性に応じて正負いずれかの極性で出力するもので、上記所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作には、上記インバータのアーム短絡防止のための短絡防止遅延時間を設け、第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて第2の電圧補償回路の出力切り替えをして補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間後に動作する2個目の半導体スイッチの切り替え後、所定の遅延時間を経て上記第2の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間前に動作する1個目の半導体スイッチを切り替えるため、補償電圧切り替え時に、インバータのアーム短絡が発生することなく、高電圧パルスの発生も防止でき、信頼性良く電圧補償が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電圧変動補償回路の構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による電圧瞬低制御回路の回路図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による各電圧補償回路出力のオン/オフ切り替えタイミングを示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による効果を説明するための補償電圧の波形図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による遅延時間とスパイク電圧との関係を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態2の比較例による補償電圧の波形図である。
【図7】 この発明の実施の形態4による半導体スイッチの駆動信号を示す図である。
【図8】 従来の電圧変動補償装置の概略構成図である。
【図9】 従来の電圧変動補償装置の動作を説明する図である。
【図10】 第2の従来例による電圧変動補償装置の構成図である。
【図11】 第2の従来例による電圧変動補償装置の制御回路の構成図である。
【図12】 第2の従来例による電圧変動補償装置の動作を説明する図である。
【図13】 第2の従来例による電圧変動補償装置の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
3 負荷、
9sw11〜9sw14,9sw21〜9sw24,9sw31〜9sw34 半導体スイッチング素子、
10pn1〜10pn3 エネルギ蓄積手段としてのコンデンサ、
31 遅延回路、Δt1〜Δt6 遅延時間、Δt 短絡防止遅延時間、
PN1,PN2,PN3 電圧補償回路。

Claims (4)

  1. それぞれ異なる電圧が蓄積されるエネルギ蓄積手段を備え該エネルギ蓄積手段に蓄積された直流電圧を交流に変換して出力する複数の電圧補償回路を電力系統に直列に接続し、該電力系統の電圧低下時に、上記複数の電圧補償回路の中から所望の組み合わせを選択し、その出力電圧の総和で上記電力系統の電圧低下を補償し、負荷に供給される電圧変動を抑える電圧変動補償装置において、上記複数の電圧補償回路内の、出力をオンからオフに切り替える第1の電圧補償回路と、オフからオンに切り替える第2の電圧補償回路との双方が動作して上記出力電圧の総和による補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて上記第2の電圧補償回路の出力切り替えを行うことを特徴とする電圧変動補償装置。
  2. 各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子を備え、該半導体スイッチング素子のスイッチング時間の3倍以内に遅延時間を設定することを特徴とする請求項1記載の電圧変動補償装置。
  3. 補償電圧を切り替える際に設ける遅延時間は、出力をオフからオンする第2の電圧補償回路の出力電圧が大きいほど長く設定することを特徴とする請求項1または2記載の電圧変動補償装置。
  4. 各電圧補償回路は、それぞれダイオードが逆並列に接続された4個の半導体スイッチング素子から成るフルブリッジインバータを備え、出力のオン/オフ切り替え時には、上記4個の半導体スイッチの内、所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作を伴い、エネルギ蓄積手段に蓄積された電圧を、電力系統の電圧低下時における極性に応じて正負いずれかの極性で出力するもので、上記所定の2個の半導体スイッチの切り替え動作には、上記インバータのアーム短絡防止のための短絡防止遅延時間を設け、第1の電圧補償回路の出力切り替え後、所定の遅延時間を設けて第2の電圧補償回路の出力切り替えをして補償電圧を切り替える際、上記第1の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間後に動作する2個目の半導体スイッチの切り替え後、所定の遅延時間を経て上記第2の電圧補償回路内で上記短絡防止遅延時間前に動作する1個目の半導体スイッチを切り替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電圧変動補償装置。
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