内燃機関の一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。各図では、車両前方を「Fr」、車両後方を「Rr」、車両前方に向かって車幅方向の右手側を「RH」、車両前方に向かって車幅方向の左手側を「LH」、車両上方を「Upr」としてそれぞれ矢印の向きで示している。
図1に示すように、車両前部には、車両前後方向(図1の上下方向)に延びている一対のサイドメンバ10が設けられている。各サイドメンバ10の前端部には、車幅方向(図1の左右方向)に延びているクロスメンバ11が連結されている。また、各サイドメンバ10の後端部は、車幅方向に延びているダッシュパネル12に連結されている。各サイドメンバ10には、車両前後方向における中央部分に、ホイールハウス13が連結されている。ホイールハウス13は、サイドメンバ10の上面及び側面から車幅方向外側に延びていて内部にタイヤ14を収容している。ホイールハウス13は、タイヤ14の外形状に沿って湾曲した形状に形成されている。ホイールハウス13には、車両前部の意匠面を構成しているアウタパネル15が連結されている。
サイドメンバ10の車両下方には、サスペンションメンバ16が配置されている。サスペンションメンバ16は、四角枠形状に形成されている。サスペンションメンバ16は、その角部がそれぞれサイドメンバ10の下面に対向する位置に配置されている。サスペンションメンバ16は、図示しないマウント部材を介して角部を連結することで、サイドメンバ10に支持されている。図1に示す平面視において、サイドメンバ10及びクロスメンバ11によって囲まれる領域であるエンジンコンパートメント17内であって、サスペンションメンバ16の上方に、内燃機関20が配置されている。
図2に示すように、内燃機関20の機関本体30は、シリンダブロック31と、シリンダブロック31の下面に連結されているクランクケース32と、クランクケース32の下面に連結されているオイルパン33とを有している。また、機関本体30は、シリンダブロック31の上面に連結されているシリンダヘッド34と、シリンダヘッド34の上面に連結されているシリンダヘッドカバー35とを有している。機関本体30は、全体として略直方体形状に形成されていて、車両下方に配置されている下面40、車両後方に配置されている後面41、及び車幅方向に配置されている一対の側面42を有している。また、車両上方に配置されている上面43、及び車両前方に配置されている前面44も有している。
機関本体30の後面41には、排気通路50が連結されている。排気通路50は、機関本体30側の端部が分岐しており、分岐した端部がそれぞれシリンダヘッド34に連結されている。図1及び図2に示すように、排気通路50は、機関本体30から下方に延びていて、サスペンションメンバ16及びダッシュパネル12の下方を通過して車両後方に引き回されている。
また、図1及び図2に示すように、機関本体30の前面44には、補機として、オルタネータ60及びエアコンのコンプレッサー65が取り付けられている。オルタネータ60は、機関本体30の前面44において車幅方向の右手側に固定されている本体部61と、該本体部61から車幅方向の右手側に延びている回転軸62と、該回転軸62の先端に連結されている従動プーリー63とを有している。また、コンプレッサー65は、オルタネータ60と同様に図示しない本体部と回転軸とを有しており、図2に示すように、回転軸の先端には従動プーリー66が連結されている。これら従動プーリー63,66には、タイミングベルト67が巻かれている。機関本体30の一対の側面42のうち、車幅方向の右手側の右側面42Aには、機関本体30のクランクシャフトの一端に連結されているクランクプーリー68が配置されている。タイミングベルト67は、クランクプーリー68にも巻かれており、クランクシャフトと一体にクランクプーリー68が回転すると、これに伴って従動プーリー63,66も回転する。このように、オルタネータ60及びコンプレッサー65は機関本体30に駆動連結されている。
図1及び図2に示すように、機関本体30の一対の側面42のうち、車幅方向の左手側の左側面42Bには、トランスミッションケース70が連結されている。トランスミッションケース70は、車両上下方向に配置されている上壁71及び下壁72と、車幅方向に配置されている右壁73及び左壁74と、車両前後方向に対向している前壁75及び後壁76とからなる。トランスミッションケース70の右壁73の外面は、機関本体30の左側面42Bに連結されている。図2に示すように、この状態では、トランスミッションケース70の右壁73がシリンダブロック31及びクランクケース32に接触していて、これにより、機関本体30の左側面42Bの一部がトランスミッションケース70によって覆われている。
また、図1に示すように、トランスミッションケース70の右壁73は、左壁74よりも車両前方に延びている。これにより、前壁75は車幅方向の左手側ほど車両後方に位置するように傾斜して配置されている。そのため、トランスミッションケース70の上壁71及び下壁72は、平面視において台形状に形成されている。また、トランスミッションケース70は、車両後側の部分が機関本体30よりも車両後方に延びている。トランスミッションケース70の内部には、変速機が収容されている。クランクシャフトの他端部は、機関本体30の左側面42Bからトランスミッションケース70の右壁73を貫通してトランスミッションケース70の内部に延びている。変速機には、クランクシャフトの他端が接続されている。トランスミッションケース70において機関本体30よりも車両後側に延びている部分には、ドライブシャフト78が挿通されている。ドライブシャフト78は、トランスミッションケース70を貫通して延びていて、その両端にはホイールハウス13に収容されているタイヤ14が連結されている。クランクシャフトの回転は、トランスミッションケース70に収容されている変速機を介してドライブシャフト78に伝達される。変速機では、クランクシャフトの回転数とドライブシャフト78の回転数の比である変速比を制御する。クランクシャフトの回転力がドライブシャフト78を通じてタイヤ14に伝達されることにより、車両は走行する。
図3に示すように、内燃機関20はカバー80も有している。カバー80は、機関本体30の下面40、後面41、及び右側面42Aを覆っている。
図4に示すように、カバー80は、機関本体30の下方に配置されている底カバー90を有している。底カバー90は、機関本体30の下面40と対向している四角板状の底板部91と、該底板部91の周縁から立設された立設壁部92と、該立設壁部92の上端から内側に所定長さ延びている上壁部93とを有している。底板部91は、機関本体30の下面40よりも大きくその周縁全体が下面40の外側に配置されている。立設壁部92は、底板部91の周縁全周に亘って立設されている。上壁部93は、底板部91と平行に延びている。底カバー90は、上壁部93の周縁によって構成されている開口93Aを有している。開口93Aは、上方に向いていて、その大きさは、機関本体30の下面40よりも大きい。底板部91には、車両上方に延びている複数の連結柱94が設けられている。連結柱94は、円柱状に形成されている。連結柱94は、底板部91の平面視において開口93Aの内域に設けられている。
図5に示すように、連結柱94は、底板部91を貫通して延びている。連結柱94は、円板状の下板95と、該下板95の周縁から立設された筒板96と、筒板96の端縁に連結された上板97とから構成されている。上板97は円環状であり貫通孔97Aを有している。底カバー90は、底板部91、立設壁部92、及び上壁部93が不織布によって構成されており、連結柱94が、例えばゴムなどの弾性を有する素材によって構成されている。
機関本体30の下面40には、係止片部45が設けられている。係止片部45は複数設けられており、それぞれが底カバー90に設けられている連結柱94と対応した位置に配置されている。係止片部45は、機関本体30の下面40から下方に突出している円柱状の軸部45Aと、該軸部45Aの下端に連結されている頭部45Bとからなる。頭部45Bは、半球状に形成されている。頭部45Bの直径は、連結柱94の貫通孔97Aの直径よりも大きい。
図6に示すように、底カバー90は、連結柱94の貫通孔97Aに係止片部45の頭部45Bを挿通することで機関本体30に取り付けられる。すなわち、係止片部45を挿通する際には、連結柱94が弾性変形して貫通孔97Aが拡径されることで係止片部45の頭部45Bが連結柱94の内部まで挿通される。その後、連結柱94の弾性復帰により、貫通孔97Aが縮径して元の大きさに戻ると、頭部45Bが上板97に係止されて連結柱94の内部から抜け出ることが抑えられる。このように、連結柱94は、係止片部45が挿通される係止孔部として機能しており、係止片部45と連結柱94とによって底カバー90を機関本体30に取り付ける係止機構が構成されている。底カバー90を機関本体30から取り外す際には、底カバー90を下方に引っ張って上板97を弾性変形させて、頭部45Bを貫通孔97Aから引き抜くことで、係止片部45と連結柱94との係止状態を解除する。
図4に示すように、底板部91には、上方に突出した突条98も設けられている。突条98は、車幅方向に延びている第1突条98Aと、車両前後方向に延びている第2突条98Bとからなる。第1突条98Aと第2突条98Bとはそれらの中央部分で交差して延びている。突条98の底板部91からの突出高さは、連結柱94の底板部91からの突出高さと同じである。突条98は、例えばゴムなどの弾性を有する素材によって構成されている。係止機構によって底カバー90が機関本体30に取り付けられた状態では、機関本体30の下面40は突条98及び連結柱94の上面に当接し、機関本体30が突条98及び連結柱94によって支持される。これにより、機関本体30と底カバー90との間には、突条98の突出高さの分だけ隙間が設けられる。
図3及び図4に示すように、カバー80は、機関本体30の車両後方に配置されている後カバー100も有している。後カバー100は、機関本体30の後面41と対向している四角板状の後板部101と、該後板部101の下端から車両前方に延びている後屈曲部102とを有している。後板部101は、機関本体30の後面41よりも大きく、車幅方向における両端縁が後面41よりも外側に位置している。また、車両上下方向において、後板部101の上端縁は、後面41の上端縁と同じ位置にある。後板部101には、車幅方向の左端から右端に向かって切り欠かれた形状の切欠き孔101Aが形成されている。切欠き孔101Aは、車幅方向を長手方向とする長方形状に形成されている。後板部101と後屈曲部102は、不織布によって構成されている。また、後板部101には、複数の連結柱103が設けられている。連結柱103は、後板部101の四隅にそれぞれ配置されているとともに、切欠き孔101Aの開口を挟むように1つ配置されている。
後カバー100に設けられている連結柱103の構成は、底カバー90に設けられている連結柱94の構成と同じである。後カバー100に設けられている連結柱103は、貫通孔97Aが機関本体30の後面41を向いている。また、機関本体30の後面41には、図示しない係止片部45が設けられている。係止片部45は複数設けられており、それぞれが後カバー100に設けられている連結柱103と対応した位置に配置されている。機関本体30の後面41に設けられている係止片部45の構成は、下面40に設けられている係止片部45の構成と同じである。後面41に設けられている係止片部45の軸部45Aは車両後方に突出している。後カバー100は、連結柱103の貫通孔97Aに係止片部45の頭部45Bを挿通することで、機関本体30に取り付けられる。
図3に示すように、こうして後カバー100が機関本体30に取り付けられた状態では、後板部101の切欠き孔101Aに排気通路50が配置される。また、後屈曲部102は、底カバー90の上壁部93に重ねられて接触している。係止機構によって後カバー100が機関本体30に取り付けられた状態では、連結柱103及び係止片部45の軸部45Aの分だけ、後カバー100と機関本体30との間に隙間が設けられる。後カバー100を機関本体30から取り外す際には、後カバー100を車両後方に引っ張って係止片部45の頭部45Bを連結柱103の貫通孔97Aから引き抜くことで、係止片部45と連結柱103との係止状態を解除する。
図3及び図4に示すように、カバー80は、機関本体30の車幅方向の右手側に配置されている右カバー110も有している。右カバー110は、機関本体30の右側面42Aと対向している四角板状の右板部111と、右板部111の下端から車幅方向の左手側に延びている右下屈曲部112と、右板部111の後端から車幅方向の左手側に延びている右後屈曲部113とを有している。右板部111は、機関本体30の右側面42Aよりも大きく、車両前後方向における両端縁が右側面42Aよりも外側に位置している。また、車両上下方向において、右板部111の上端縁は、右側面42Aの上端縁と同じ位置にある。また、右板部111の車両前後方向における長さは、底カバー90の車両前後方向における長さよりも長い。右板部111、右下屈曲部112、及び右後屈曲部113は、不織布によって構成されている。また、右板部111には、複数の連結柱114が設けられている。
右カバー110に設けられている連結柱114の構成は、底カバー90に設けられている連結柱94の構成と同じである。右カバー110に設けられている連結柱114は、貫通孔97Aが機関本体30の右側面42Aを向いている。また、機関本体30の右側面42Aには、図示しない係止片部45が設けられている。係止片部45は複数設けられており、それぞれが右カバー110に設けられている連結柱114と対応した位置に配置されている。機関本体30の右側面42Aに設けられている係止片部45の構成は、下面40に設けられている係止片部45の構成と同じである。右側面42Aに設けられている係止片部45の軸部45Aは、車幅方向の右手側に突出している。右カバー110は、連結柱114の貫通孔97Aに係止片部45の頭部45Bを挿通することで機関本体30に取り付けられる。
図3に示すように、こうして右カバー110が機関本体30に取り付けられた状態では、右下屈曲部112は、底カバー90の上壁部93に重ねられて接触しているとともに、右後屈曲部113は、後カバー100の後板部101の前側に重ねられて接触している。また、右板部111の車両前後方向における長さは、底カバー90における車両前後方向における長さよりも長いため、右カバー110は底カバー90よりも車両前方まで延びている。これにより、機関本体30の右側面42Aが右カバー110に覆われているとともに、機関本体30に連結されているオルタネータ60及びコンプレッサー65の各従動プーリー63,66の車幅方向の右手側にも右カバー110が配置されている。係止機構によって右カバー110が機関本体30に取り付けられた状態では、連結柱114及び係止片部45の軸部45Aの分だけ、右カバー110と機関本体30との間に隙間が設けられる。右カバー110を機関本体30から取り外す際には、右カバー110を車両後方に引っ張って係止片部45の頭部45Bを連結柱114の貫通孔97Aから引き抜くことで、係止片部45と連結柱114との係止状態を解除する。
このように、カバー80は、底カバー90によって機関本体30の下面40を覆い、後カバー100によって機関本体30の後面41を覆い、右カバー110によって機関本体30の右側面42Aを覆っている。一方で、カバー80は、機関本体30の上面43及び前面44を覆っていない。そのため、機関本体30の前面44に連結されているオルタネータ60及びコンプレッサー65は、カバー80によって覆われていない。すなわち、オルタネータ60及びコンプレッサー65における機関本体30と反対側の前面は、カバー80における機関本体30側の内面と対向しておらず、車両前方から視たときに露出している。
本実施形態の作用効果について説明する。
(1)発明者は、内燃機関20の機関本体30の上面43及び前面44にカバーを設けた場合と、同カバーを設けない場合とで、車両走行中において機関本体30から車外に伝達される騒音の低減効果にそれほど変化がないことを見出した。つまり、車両では、機関本体30の上方及び前方はエンジンフードやアウタパネル15によって覆われていることから、騒音が漏れにくい。一方で、機関本体30の下方は、四角枠状のサスペンションメンバ16が配置されているだけであって、車外と連通している。また、機関本体30の車幅方向の外側にはホイールハウス13が配置されているが、ホイールハウス13はサイドメンバ10の上面及び側面に連結されているため、機関本体30の側方に配置されているホイールハウス13の下方を通じて、エンジンコンパートメント17と車外とは連通している。また、ダッシュパネル12の下方には排気通路50が引き回されており、機関本体30の後方も車外に連通している。
本実施形態では、カバー80によって機関本体30の下面40、後面41、及び右側面42Aを覆い、トランスミッションケース70によって機関本体30の左側面42Bを覆っている。すなわち、カバー80やトランスミッションケース70によって機関本体30の下面40、後面41、及び一対の側面42を覆っている。これにより、機関本体30から車外に音が伝達される際の主な経路上の全てにカバー80やトランスミッションケース70を配置することができ、機関本体30全体を覆う構成と同等の騒音低減効果を得ることができる。
また、オルタネータ60やコンプレッサー65は、カバー80には取り付けられておらず、機関本体30に取り付けられていることから、機関本体30のメンテナンスによりカバー80を取り外す際には、補機の機関本体30に対する取付け状態を維持したままとすることも可能になる。そのため、メンテナンスの度に補機を取り外す必要はない。したがって、上記構成によれば、メンテナンス性を向上させつつ、騒音抑制効果も担保することができる。
(2)オルタネータ60及びコンプレッサー65における機関本体30と反対側の前面は、カバー80における機関本体30側の内面と対向しておらず、車両前方から視たときに露出している。そのため、車両の走行に伴い、車両前方からエンジンコンパートメント17内に導入される走行風がカバー80によって遮られずにオルタネータ60やコンプレッサー65に吹き付けられる。したがって、オルタネータ60やコンプレッサー65の温度上昇の抑制にも貢献できる。
(3)底カバー90、後カバー100、及び右カバー110と機関本体30との間には、それぞれ隙間を設けている。そのため、底カバー90、後カバー100、及び右カバー110と機関本体30との間に空気層が形成され、この空気層の減衰作用によって機関本体30から放射された音のエネルギーが吸収される。したがって、騒音の一層の低減効果が得られる。
(4)機関本体30に設けられた係止片部45を、カバー80に設けられている連結柱94,103,114に係止することによってカバー80を機関本体30に取り付けている。そのため、例えばボルト及びナットによる締結機構を介してカバー80を機関本体30に取り付ける場合に比して、カバー80の取付け、及び取外しが容易になる。したがって、メンテナンス性の一層の向上を図る上で、その構成の最適化に貢献できる。
(5)後カバー100に切欠き孔101Aを設けている。そのため、後カバー100によって機関本体30の後面41を覆いつつ、後カバー100を車幅方向へスライドさせることで機関本体30の後面41への取付け、及び取外しが可能にもなる。すなわち、後カバー100を機関本体30に対して車幅方向の左手側にスライドさせることで、切欠き孔101Aの開口を通じて切欠き孔101A内に排気通路50を配置しつつ、後カバー100を機関本体30の後面に対向して配置することが可能になる。
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。以下の変更例は、互いに適宜組み合わせて実施することも可能である。
・後カバー100の構成は上述したものに限らない。例えば、切欠き孔101Aに代えて、排気通路が通過する貫通孔を設けてもよい。この場合、後カバー100に貫通孔の周縁と後カバー100の周縁とを接続する切り込みを設けて、該切り込みを通じて排気通路50を貫通孔の内部に配置する構成とすることが望ましい。また、例えば、後カバー100を切欠き孔101Aよりも上方部分と下方部分とで分割して構成することも可能である。この場合、上方部分は省略も可能である。さらに、上記切欠き孔101Aは、後カバー100の後板部101の左端部から切り欠いた形状としたが、後板部101の右端部から切り欠いた形状や、上端部から切り欠いた形状とすることも可能である。後板部101の右端部から切り欠いた形状とした場合には、上記実施形態と同様に、後カバー100を車幅方向へスライドさせることで機関本体30の後面41への取付け、及び取外しが可能になる。また、後板部101の上端部から切り欠いた形状とした場合には、後カバー100を車両上下方向へスライドさせることで機関本体30の後面41への取付け、及び取外しが可能になる。
・機関本体30に係止片部45を設け、カバー80に係止孔部としての連結柱94,103,114を設けたが、機関本体30に連結柱を設け、カバー80に係止片部を設けてもよい。
・上記実施形態では、機関本体30にカバー80を取り付けるための係止機構を設けた構成を示したが、こうした係止機構に代えて、または加えて、機関本体30にカバー80を取り付けるための取付け機構を設けるようにしてもよい。取付け機構としては、例えばボルト及びナットによる締結機構を採用することが可能である。なお、こうした締結機構を採用する場合には、例えば、機関本体30にナットを溶接し、カバー80に挿通したボルトを該ナットに締結することで、カバー80を機関本体30に取り付ければよい。
・底カバー90の上壁部93に、後カバー100の後屈曲部102や右カバー110の右下屈曲部112を重ねて接触させた構成とした。こうした構成において、さらに、上壁部93と、後屈曲部102及び右下屈曲部112とを接触させつつ互いに係止するようにしてもよい。また、上壁部93と、後屈曲部102及び右下屈曲部112とを接触させずに、底カバー90と、後カバー100及び右カバー110とを離間して配置する構成としてもよい。この場合には、カバー80において、上壁部93、後屈曲部102、及び右下屈曲部112を省略することも可能である。こうした構成であっても、カバー80を設けない構成に比して、機関本体30の騒音を抑えることができ、騒音抑制効果を担保できる。
・後カバー100の後板部101に、右カバー110の右後屈曲部113を重ねて接触させた構成とした。こうした構成において、さらに、後板部101と右後屈曲部113とを接触させつつ互いに係止するようにしてもよい。また、後板部101と右後屈曲部113とを接触させずに、後カバー100と右カバー110とを離間して配置する構成としてもよい。この場合には、右カバー110において右後屈曲部113を省略することも可能である。こうした構成であっても、カバー80を設けない構成に比して、機関本体30の騒音を抑えることができ、騒音抑制効果を担保できる。
・カバー80において連結柱94,103,114を設ける位置や数は適宜変更が可能である。
・カバー80において、底カバー90、後カバー100、及び右カバー110のそれぞれを機関本体30に取り付ける必要はない。例えば、底カバー90を機関本体30に取り付けて、後カバー100及び右カバー110を底カバー90に連結して支持する構成としてもよい。
・カバー80と機関本体30との間に隙間を設けなくてもよい。例えば、底カバー90を底板部91のみによって構成し、該底板部91を機関本体30の下面40に接着してもよい。この場合、底カバー90を耐熱性を有する不織布によって構成すればよい。また、後カバー100や右カバー110であっても同様の構成とすることは可能である。
・上記実施形態において機関本体30の左側面42Bにカバーを配設することも可能である。すなわち、トランスミッションケース70の上壁71に連結されていて上方に延びている上側左カバーと、トランスミッションケース70の下壁72に連結されていて下方に延びている下側左カバーとを設けるようにしてもよい。なお、下側左カバーを底カバー90や後カバー100に連結してもよい。こうした構成によれば、上側左カバー及び下側左カバーによって機関本体30のシリンダヘッド34及びシリンダヘッドカバー35の左側方や、オイルパン33の左側方も覆うことができ、機関本体30の左側面42Bから車外に伝達される騒音の低減効果を高めることができる。
・上記構成において、機関本体30の前面44や上面43にカバー80を配置することも可能である。機関本体30の前面44にカバー80を配置する場合には、このカバー80によってオルタネータ60やコンプレッサー65を覆わないようにする。例えば、前面44に設けられるカバー80に開口部を設けて、該開口部の内域にオルタネータ60及びコンプレッサー65を配置することで、オルタネータ60及びコンプレッサー65の前面44をカバー80における機関本体30側の内面と対向しないようにする。こうした構成であっても、走行風がカバー80によって遮られずにオルタネータ60やコンプレッサー65に吹き付けられるため、上記(2)と同様の作用効果が得られる。
・上記実施形態では、車両前部に配置された内燃機関20によって前輪を駆動するFF式の車両に搭載される内燃機関20を例に説明した。図7及び図8に示すように、車両前部に配置された内燃機関20によって後輪を駆動するFR式の車両に搭載される内燃機関であっても、上記実施形態と同様の構成を適用することは可能である。なお、図7及び図8に示す構成において、上記実施形態と同様の構成については共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
図7に示すように、内燃機関120の機関本体130の右側面142Aには、排気通路50が連結されている。排気通路50は、機関本体130側の端部が分岐している。排気通路50は、機関本体130から車両後方に延びている。排気通路50は、サスペンションメンバ16の上方を通過してダッシュパネル12の下方に引き回されており、車両後部まで延びている。
また、機関本体130の上面143には、オルタネータ60及びエアコンのコンプレッサー65が取り付けられている。オルタネータ60は、機関本体130の上面143において車幅方向の左手側に固定されている本体部61と、該本体部61から車両前方に延びている回転軸62と、該回転軸62の先端に連結されている従動プーリー63とを有している。また、コンプレッサー65は、オルタネータ60の車幅方向の右手側に配置されており、機関本体130の上面143に固定されている本体部161と、該本体部161から車両前方に延びている回転軸162と、該回転軸162の先端に連結されている従動プーリー66とを有している。また、機関本体130の前面144には、クランクシャフトの一端に連結されているクランクプーリー68が配置されている。各従動プーリー63,66とクランクプーリー68とには図示しないタイミングベルトが巻かれている。そのため、クランクシャフトと一体にクランクプーリー68が回転すると、これに伴って従動プーリー63,66も回転する。このように、オルタネータ60及びコンプレッサー65は機関本体30に駆動連結されている。
図7及び図8に示すように、機関本体130の後面141には、トランスミッションケース170が連結されている。トランスミッションケース170は、車両上下方向に配置されている上壁171及び下壁172と、車幅方向に配置されている右壁173及び左壁174と、車両後方に配置されている後壁175とからなる。トランスミッションケース170の上壁171、下壁172、右壁173、及び左壁174の前端部はそれぞれ、機関本体130の後面141の周縁に連結されている。すなわち、トランスミッションケース170の前端部の大きさと、機関本体130の後面141の大きさとは同じである。そのため、機関本体130の後面141は、トランスミッションケース170によって覆われている。また、トランスミッションケース170の右壁173及び左壁174は、車両後方ほど互いに近接している。そのため、トランスミッションケース170の上壁171及び下壁172は、図7に示す平面視において台形状に形成されている。トランスミッションケース170の内部には、変速機が収容されている。クランクシャフトの他端部は、機関本体130の後面141を貫通してトランスミッションケース170の内部に延びていて、変速機に接続されている。また、トランスミッションケース170には、車両前後方向に延びているプロペラシャフト178の前端部が挿通されている。プロペラシャフト178は、ダッシュパネル12の下方を通じて車両後部まで延びていて、図示しない車両の後輪を駆動する。クランクシャフトの回転は、変速機を介してプロペラシャフト178に伝達され、プロペラシャフト178が後輪を駆動することにより、車両は走行する。
図8に示すように、内燃機関20のカバー180は、機関本体130の下面140を覆う底カバー210と、機関本体130の右側面142Aを覆う右カバー190と、機関本体130の左側面142Bを覆う左カバー200とからなる。
底カバー210は、機関本体130の下面140と対向している四角板状の底板部211と、該底板部211の周縁から立設された立設壁部212と、該立設壁部212の上端から内側に所定長さ延びている上壁部213とを有している。底板部211は、機関本体130の下面140よりも大きくその周縁全体が下面140の外側に配置されている。立設壁部212は、底板部211の周縁全周に亘って立設されている。上壁部213は、底板部211と平行に延びている。底カバー210は、上壁部213の周縁によって構成されている開口213Aを有している。開口213Aは、上方に向いていて、その大きさは、機関本体130の下面140よりも大きい。底板部211には、車両上方に延びている複数の連結柱214が設けられている。連結柱214は、底板部211の平面視において開口213Aの内域に設けられている。連結柱214の構成は、上記実施形態において説明した連結柱94の構成と同じである。
また、底板部211には、上方に突出した突条215も設けられている。突条215は、車幅方向に延びている第1突条215Aと、車両前後方向に延びている第2突条215Bとからなる。第1突条215Aと第2突条215Bとはそれらの中央部分で交差して延びている。突条215の底板部211からの突出高さは、連結柱214の底板部211からの突出高さ、及び上壁部213の上面の高さと同じである。突条215は、例えばゴムなどの弾性を有する素材によって構成されている。
機関本体130の下面140には、図示しない係止片部が設けられている。係止片部は複数設けられており、それぞれが底カバー210に設けられている連結柱214と対応した位置に配置されている。機関本体130の下面140に設けられている係止片部の構成は、上記実施形態において説明した係止片部45の構成と同じである。下面140に設けられている係止片部の軸部は下方に突出している。底カバー210は、連結柱214の貫通孔97Aに係止片部の頭部を挿通することで、機関本体130に取り付けられる。
係止機構によって底カバー210が機関本体130に取り付けられた状態では、機関本体130の下面140は突条215及び連結柱214の上面に当接し、機関本体130が突条215及び連結柱214によって支持される。また、トランスミッションケース170の下壁172は、上壁部213に接触する。機関本体130と底カバー210との間には、突条215の突出高さの分だけ隙間が設けられる。なお、底カバー210を機関本体130から取り外す際には、底カバー210を下方に引っ張って係止片部の頭部を連結柱214から引き抜くことで、係止片部と連結柱214との係止状態を解除する。
右カバー190は、機関本体130の右側面142Aと対向している四角板状の右板部191と、該右板部191の下端から車幅方向の左手側に延びている右屈曲部192とを有している。右板部191は、機関本体130の右側面142Aよりも大きく、車両前後方向における両端縁が右側面142Aよりも外側に位置している。また、車両上下方向において、右板部191の上端縁は、右側面142Aの上端縁と同じ位置にある。右板部191には、車両後端から前方に向かって切り欠かれた形状の切欠き孔191Aが形成されている。切欠き孔191Aは、車両前後方向を長手方向とする長方形状に形成されている。右板部191と右屈曲部192は、不織布によって構成されている。また、右板部191には、複数の連結柱193が設けられている。右カバー190に設けられている連結柱193の構成は、上記実施形態において説明した連結柱114の構成と同じである。また、機関本体130の右側面142Aには、図示しない係止片部が設けられている。係止片部は複数設けられており、それぞれが右カバー190に設けられている連結柱193と対応した位置に配置されている。機関本体130の右側面142Aに設けられている係止片部の構成は、上記実施形態において説明した係止片部45の構成と同じである。右側面142Aに設けられている係止片部の軸部は車幅方向の右手側に突出している。右カバー190は、連結柱193の貫通孔97Aに係止片部の頭部を挿通することで、機関本体130に取り付けられる。
図7に示すように、右カバー190が機関本体130に取り付けられた状態では、右板部191の切欠き孔191Aに排気通路50が配置される。また、右屈曲部192は、底カバー90の上壁部93に重ねられて接触している。連結柱193と係止片部とからなる係止機構によって右カバー190が機関本体130に取り付けられた状態では、連結柱193及び係止片部の軸部の分だけ、右カバー190と機関本体130との間に隙間が設けられている。右カバー190を機関本体130から取り外す際には、右カバー190を車幅方向の右手側に引っ張って係止片部の頭部を連結柱193の貫通孔97Aから引き抜くことで、係止片部と連結柱193との係止状態を解除する。
また、図8に示すように、左カバー200は、機関本体130の左側面142Bと対向している四角板状の左板部201と、該左板部201の下端から車幅方向の右手側に延びている左屈曲部202とを有している。左板部201は、機関本体130の左側面142Bよりも大きく、車両前後方向における両端縁が左側面142Bよりも外側に位置している。また、車両上下方向において、左板部201の上端縁は、左側面142Bの上端縁と同じ位置にある。左板部201と左屈曲部202は、不織布によって構成されている。また、左板部201には、複数の連結柱203が設けられている。左カバー200に設けられている連結柱203の構成は、上記実施形態において説明した連結柱94の構成と同じである。左カバー200に設けられている連結柱203は、貫通孔97Aが機関本体130の左側面142Bを向いている。また、機関本体130の左側面142Bには、図示しない係止片部が設けられている。係止片部は複数設けられており、それぞれが左カバー200に設けられている連結柱203と対応した位置に配置されている。機関本体130の左側面142Bに設けられている係止片部の構成は、上記実施形態において説明した係止片部45の構成と同じである。左側面142Bに設けられている係止片部の軸部は車幅方向の左手側に突出している。左カバー200は、連結柱203の貫通孔97Aに係止片部の頭部を挿通することで、機関本体130に取り付けられる。
左カバー200が機関本体130に取り付けられた状態では、左屈曲部202は、底カバー90の上壁部93に重ねられて接触している。連結柱203と係止片部とからなる係止機構によって左カバー200が機関本体130に取り付けられた状態では、連結柱203及び係止片部の軸部の分だけ、図7に示すように左カバー200と機関本体130との間に隙間が設けられている。左カバー200を機関本体130から取り外す際には、左カバー200を車幅方向の左手側に引っ張って係止片部の頭部を連結柱203の貫通孔97Aから引き抜くことで、係止片部と連結柱203との係止状態を解除する。
図7及び図8に示す構成では、カバー180は、機関本体130の下面140、右側面142A、及び左側面142Bを覆っている。また、トランスミッションケース170は、機関本体130の後面141を覆っている。一方で、機関本体130の上面143及び前面144は、カバー180やトランスミッションケース170によって覆われていない。そのため、機関本体130の上面143に取り付けられているオルタネータ60及びコンプレッサー65は、カバー180によって覆われていない。すなわち、オルタネータ60及びコンプレッサー65における機関本体130と反対側の上面は、カバー180における機関本体130側の内面と対向しておらず、車両上方から視たときに露出している。
こうした構成によっても、カバー180及びトランスミッションケース170によって機関本体130の下面140、後面141、及び一対の側面142を覆うことができる。また、オルタネータ60やコンプレッサー65は、カバー180には取り付けられておらず、機関本体130に取り付けられていることから、機関本体130のメンテナンスによりカバー180を取り外す際には、補機の機関本体30に対する取付け状態を維持したままとすることも可能になる。また、車両の走行に伴い、車両前方からエンジンコンパートメント17内に導入される走行風がカバー180によって遮られずにオルタネータ60やコンプレッサー65に吹き付けられることにもなる。したがって、上記(1)及び(2)の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
なお、こうした構成においても、機関本体130の前面144や上面143にカバー180を配置することも可能であることはいうまでもない。機関本体130の上面143にカバー180を配置する場合には、このカバー180によってオルタネータ60やコンプレッサー65の上面を覆わないようにすればよい。
・補機としてオルタネータ60やエアコンのコンプレッサーを例示したが、補機として他の構成を採用することも可能である。例えば、クランクシャフトを回転させて機関本体30,130を始動させるスタータなどを補機として採用してもよい。
・補機が取り付けられる面は、機関本体30,130における上面43,143、及び前面44,144の少なくとも一方であればよい。例えば、上記実施形態において、オルタネータ60を上面43に取り付け、コンプレッサー65を前面44に取り付けてもよいし、オルタネータ60及びコンプレッサー65の双方を前面44に取り付けてもよい。こうした場合であっても、オルタネータ60及びコンプレッサー65を機関本体30に駆動連結させればよい。
・トランスミッションケース70,170が機関本体30,130の上面43,143及び前面44,144の一方に連結されることもある。この場合には、カバー80,180によって、少なくとも機関本体30,130の下面40,140、後面41,141、及び一対の側面42,142の全てを覆うようにすればよい。
・カバー80,180において連結柱94,103,114,193,203や突条98,215以外の部分を不織布によって構成したが、不織布以外の素材によって構成することも可能である。不織布以外の素材としては、例えばウレタン樹脂などの発泡性の樹脂を採用することが可能である。
・カバー80,180を複数のカバーに分割して構成したが、機関本体への取付け、取り外しが可能であれば、カバー80,180を分割せずに一体物として構成してもよい。また、カバー80,180を分割して構成する際には、製造及び設計の観点などからその分割数を適宜変更することも可能である。
・カバー80,180において、機関本体30,130における対向する面と垂直な方向から見たときに当該面と重なっている領域が、該面の面積の50%以上あれば、カバー80,180は当該面を覆っているといえる。なお、好ましくは、当該面の70%以上を覆うことであり、より好ましくは当該面の90%以上を覆うことである。上記実施形態では、底カバー90は、機関本体30の下面40を100%覆っているといえる。