図1は、本発明の実施の形態に係る擬似エンジン音発生装置を備えた車両の実施例を示すブロック図である。車両2はガソリンエンジンおよび電動モータを併用して走行するハイブリッドカーとして構成されている。車両2は、車両全体を制御するコンピュータからなる車両制御部4を有し、ブレーキ1、アクセル3、ハンドル5、オートマチックトランスミッションのセレクトレバー7等を有する運転操作部6の操作に応じて、車両機能部8を制御する。この車両制御部4の機能は記憶部10に格納されたソフトウエアによって実行される。記憶部10は、さらに車両2全体の制御に必要な種々のデータを一時的に格納するとともに社内外の諸情報を記憶する。なお、運転操作部6にはウインカー操作部9等の補助操作部も設けられている。
また、車両制御部4は、表示部12を制御し、設定操作部14による設定や選択の操作に必要なGUI表示を行うとともに制御結果や演算結果の表示を行う。この設定操作部14は通常のハイブリッド走行を常時モータ走行に切換え設定する操作部を含んでいる。このモータ走行は、高速走行になってもモータにより走行する完全電気自動車モードであり、特に深夜など静粛走行を求められるときに設定されるものである。後述のように車両2は通常ハイブリッド走行状態では擬似エンジン音が発生するよう構成されるが、常時モータ走行設定が行われると、この擬似エンジン音の発生も禁止される。但し、後述のように車両2が近くに人がいることを検知したとき、または車両2が横断歩道など歩行者存在の可能性が高い地点にさしかかったときは常時モータ走行設定がなされていてもこれに優先して擬似エンジン音が発生させられる。
車両制御部4は時計部16を有し、種々の機能においてこの時計部16の時刻情報が利用される。具体的には、騒音が多いことが予想される昼間においては擬似エンジン音量を実際のエンジン音より大きくして歩行者が気付くようにするとともに静寂環境であることが予想される深夜等においては不必要に大きな擬似エンジン音を発生させないよう実際のエンジン音よりも音量を絞る制御に用いられる。この時計部16の時刻は外部の時刻情報により適宜正しい時刻に自動修正される。
GPS部18は、GPSシステムに基づいて衛星および最寄の放送局より車両2の絶対位置情報である緯度、経度、および高度の情報を得て車両制御部4に送る。カーナビゲーション機能部20は、車両制御部4経由で得られるGPS部18からの絶対位置情報を処理し、車両2の位置を表示部12の地図表示欄22上で表示する。カーナビゲーション機能20の情報は、さらに、車両2が市街地域などの歩行者存在可能性の大きい地域にある場合は擬似エンジン音を発生させるとともに、高速道路など歩行者の存在が想定されない地域では擬似エンジン音を発生させない制御のための情報としても利用される。特に、歩道のない道や中央分離線がない細道などでは、擬似エンジン音の発生が優先される。なお、擬似エンジン音発生地域とそうでない地域は地図22で色分け表示され、運転者は車両2が擬似エンジン音発生状態にあるのかどうかを知ることができる。
車両2は、さらに車両近距離通信部24を備えており、交差点ならびに横断歩道など歩行者が道路を横断する可能性のある地点に設置された信号機や標識など道路設備に設けられた近距離通信装置との通信により、これらの設備設置地点を受信する。そして、歩行者の横断が予想される位置が近づくと擬似エンジン音を発生させるとともに、不要な地域では擬似エンジン音を発生させない制御のための情報として利用される。なお、上記カーナビゲーション機能20の情報は上記の交差点ならびに横断歩道など歩行者が道路を横断する可能性のある地点の情報としても利用できる。
また、ETC(Electronic Toll System)部26は、車両2が高速道路の出入り口を通過する際に高速料金の情報を取得し、車両制御部4を通じて清算用情報を記憶部10に記憶する。これらのカーナビゲーション機能部20による位置情報、近距離通信部24からの歩行者存在可の性情報、およびETC部26からの高速道路出入り情報は走行エリア応じて擬似エンジン音を発生させるための制御に利用される。具体的には、市街地域や高速道路を出た地道等、歩行者が存在する可能性が大きい地域において擬似エンジン音を発生させ、不要な地域では擬似エンジン音を発生させない制御のための情報として利用される。
車両機能部8は、トランスミッションや車輪などからなる走行メカ28および走行メカ28に動力を伝達するエンジン30およびモータ32を有している。そして燃料流量計34は、エンジンに噴射される燃料の流量を測定して車両制御部4に送る。一方、走行距離計36は予めわかっている走行メカ28の車輪の径およびその回転量から走行距離を測定して車両制御部4に送る。このようにして得られる走行距離と燃料流量に基づき車両制御部4は瞬間燃費を算出し、表示部12の燃費欄38に表示する。また車両制御部4は瞬間燃費情報を積算平均した平均燃費を表示部12の燃費欄38に表示する。
表示部12にはさらに、走行メカ28の情報に基づいて車両制御部4から送られる車速情報を表示するための速度計欄42が設けられている。そして擬似エンジン音発生状態ではこの速度計42の速度表示色が変わるよう構成され、運転者は車内に居ながらにして擬似エンジン音が車外に発生されているかどうかを知り、歩行者と情報を共有できる。また、表示部12にはセレクトレバー7の選択位置を示す「P、R、N、D、L」などのセレクトレバー表示欄40が設けられている。
次に、擬似エンジン音発生に関する構成について説明する。マイク44は車両2の車外の音をピックアップするためのもので二つの機能がある。その第一は、車両2の出荷前に車両2をエンジンによりテスト走行させて種々の走行状況におけるエンジン30によるエンジン音をサンプリングし、車両制御部4に送る機能である。これによって、車両2固有のエンジン音を擬似エンジン音として利用でき、本物のエンジン音からモータ走行時の擬似エンジン音へのシームレスな移行を演出する。なお、このエンジン音はモータ走行時における自然な擬似エンジン音として利用するためのものなので、サンプリングを行うテスト走行にあたっては、通常モータ走行される始動または低速走行を強制的にエンジン30により行わせる。
車両制御部4は、マイク44からのエンジン音情報を、サンプリングの際の運転操作部6のアクセル3の操作や燃料流量計34による流量との相関情報とともに音データ記憶部46に記憶させる。この結果、音データ記憶部46には種々の状態における擬似エンジン音データ48、および音量変化パターン情報50がアクセル3の操作や燃料流量計34による流量との相関テーブルとして記憶される。なお、音データ記憶部46には、さらに深夜のモータ走行において静寂環境化で擬似エンジン音を発生させることなく盲導犬に車両の接近を知らせる場合に用いられる盲導犬用超音波データ52が記憶されている。
車外マイク44の第二の機能は、モータ走行時の車外の騒音をピックアップし、車外の環境音の大きさに応じて擬似エンジン音の音量を変化させることにあり、騒音が大きいときは擬似エンジン音を実際のエンジン音より大きくして歩行者が気付くようにするとともに、静寂環境下では不必要に大きな擬似エンジン音を発生させないよう実際のエンジン音よりも音量を絞る制御に用いるものである。
車外スピーカ54は、全身時の前方歩行者用の前方スピーカ56、バック中の後方歩行者用の後方スピーカ58を有し、セレクトレバー7による走行方向切換えに連動して、走行方向の擬似エンジン音量が大きくなるよう車両前後の音量バランスが変化する。さらに、車外スピーカ54は、右側スピーカ60および左側スピーカ62を有し、ウインカー操作部9の操作に連動して転回方向の擬似エンジン音量が大きくなるよう車両左右の音量バランスが変化する。
人感センサ64は、車両2が歩行者に接近したことを検知して擬似エンジン音を発生させるとともに、車両2近辺に歩行者がいないときには不要な擬似エンジン音を発生させない制御のための情報として利用される。なお、人感センサ64の検知による擬似エンジン音発生の際には突然のエンジン音に歩行者が驚かないように、音量がゼロから次第に増加していくようエンジン音をソフトにスタートさせる。天候センサ66は、車両2への雨粒の検知や気圧の検知によって天候を検知し、特に雨天や荒天等の車外の環境音が大きいと予想される状況では擬似エンジン音量を上げて歩行者が気付きやすいようにする制御に用いるものである。
ドライブレコーダ68はカメラ部70の画像を記録するが併せて運転操作部6の操作状況や設定操作部14の設定状況も記録する。これに伴い、常時モータ走行モードが設定されていての擬似エンジン音の発生が禁止されている状態であるときはその旨も記録され、エンジン音に気付かないことが原因の万一の事故の証拠とされる。これによって、常時走行モード設定時の運転者の注意意識を高めている。
なお、カメラ部70の画像は画像処理され、画像中における傘を差している歩行者の有無を検知する。そして傘を差している歩行者が車両2の近辺に存在すると判断された時は、擬似エンジン音量を上げることにより、自身の差す傘への雨音で擬似エンジン音がかき消されて歩行者が気づかないような事態を防止する。この制御は、上記の天候センサ66による制御と相補的に歩行者が擬似エンジン音に気付きやすいようにするものである。
さらに、歩行者が多い細道などで徐行運転する際に擬似エンジン音に気づきやすいようにするため、ブレーキ1とアクセル3の細かな踏み換えに連動して、擬似エンジン音量が自然に脈動変化するよう制御する。これは、通常エンジンによる徐行時の軽微な空吹かしの断続により歩行者に気付いてもらう操作を模したものである。これによって、クラクションなどの過激で不快な警告なしに細道における人と車の間の譲り合いの調和をとることができる。
図2は、図1の実施例における車両制御部4の機能を示す基本フローチャートである。このフローは車両2が走行可能状態になることによってスタートする。具体的には、運転操作部6におけるハイブリッド車走行準備スイッチのオンによって走行可能状態となり、フローがスタートする。なお、走行可能状態とは実際に走行している状態も含む。フローがスタートすると、まずステップS2で車両機能を初期チェックする。この処理は、チェック結果の表示またはアナウンスによる通知を含む。
次いでステップS4で擬似エンジン音のサンプリングが完了しているかどうかのチェックが行われる。サンプリングが行われていない場合はステップS6に進み、車両2を強制エンジン走行モードにし、モータを使用せず、停止時および低速時においてもエンジン走行が行われる状態とする。次に、ステップS8の擬似エンジン音サンプリング処理では、車両2の記憶部10に格納された所定のプログラムによる指示に従って、エンジンの始動および種々の走行状態を順次実行し、各状態および状態変化に対応したエンジン音をサンプルする。これによって、音データ記憶部46には種々の状態における擬似エンジン音データ48、および音量変化パターン情報50がアクセル3の操作や燃料流量計34による流量との相関テーブルとして記憶される。ステップS8が完了するとステップS4に戻り、所定の擬似エンジン音サンプリングが全て完了しているかどうかの確認が行われ、未完の部分がある限りステップS4からステップS8が繰り返されて、ハイブリッド走行が禁止される。
一方、ステップS4で、サンプリング処理が完全に行われたこと、または車両2が既に擬似エンジン音のサンプリングが完了している通常の走行状態にあることが確認されると、ステップS10に移行する。サンプリングは通常車両2の出荷前に行われるので、一般ユーザが車両走行準備スイッチをオンして図2のフローをスターとさせた場合はステップS4から直ちにステップS10に移行する。
ステップS10では、ユーザによって、常時モータ走行モードの設定が行われたかどうかをチェックする。この操作がないことが確認されるとフローはステップS12に進み、通常ハイブリッド走行モードを自動的に設定する。そしてステップS14に進み、人感センサ64によって車両2の近辺に人がいないかどうかがチェックされる。ステップS14で人が検知されるとステップS16の擬似エンジン音表示処理に進む。この処理によって擬似エンジン音が発生していることが表示され、車内に居ながらにして擬似エンジン音の発生がわかる。擬似エンジン音表示処理の詳細は後述する。さらにステップS18の擬似エンジン音発生処理に進み、擬似エンジン音の発生を実行してステップS20に移行する。ステップS18の擬似エンジン音発生処理についても後述する。このようにして、車両の停止中においても、人感センサ64が人を検知した時は、通常のガソリンエンジン車のようにエンジンの始動音またはアイドリング音が擬似的に発生させられる。
ステップ20では、運転操作部6によって走行開始操作が行われたかどうかのチェックが行われ、これが検知されるとステップS22の走行中擬似エンジン音制御処理に入る。その詳細については後述する。走行中擬似エンジン音制御処理が終完了するとステップS24に移行し、走行が停止されたかどうかをチェックする。そして、車両の停止が確認されない場合はステップS22に戻り、以下、走行停止が検知されない限り、ステップS22およびステップS22が繰り返され、走行中擬似エンジン音制御処理が継続される。
これに対し、ステップ24で車両の停止が検知されるとステップS26に進み、車両走行準備スイッチがオフされたかどうかをチェックし、スイッチオフが検知されるとフローを終了する。一方、ステップS14で人感センサ64による人の検知がないことが確認されるとステップS28に進み、擬似エンジン音の発生が禁止されるとともに、ステップS30により擬似エンジン音の発生がない旨を車内のユーザに表示してステップS20に移行する。このように、車両停止中において近辺に人がいないときは車両走行準備スイッチがオンになっても擬似エンジン音が発生せず、停止中または低速でエンジン音がないハイブリッド車の静粛性の利点が生かされる。
さらに、ステップS10で、ユーザが静粛走行を意図して常時モータ走行モードを設定したことが検知された場合は、ステップS32に進み、擬似エンジン音の発生が禁止されるとともに、ステップS34により擬似エンジン音の発生がない旨を車内のユーザに表示してステップS36に移行する。ステップS36では、車両2の走行開始操作および走行停止操作を含む常時モータ走行処理が行われるが、その詳細は後述する。ステップS36の常時モータ走行処理が終了するとフローはステップS26に移行する。このように常時モータ走行モードの設定が行われたときは安全上必要性がある場合を除き基本的には擬似エンジン音の発生が禁止される。
なお、ステップS20で走行開始操作が検知されないときはステップS10に戻る。従って、車両停止中における常時モータ走行モードへの設定変更に随時対応できる。そして常時モータ走行モードへの設定変更がない限り、車両の停止中はステップS10からステップS20およびステップS28とステップS30が繰り返され、人の検知の有無の状況変化に対応して擬似エンジン音を発生させるか禁止するかが変更される。これによって擬似エンジン音が発生している状態で検知されていた人が立ち去った時は擬似エンジン音が止まり、自動的に静粛状態となる。一方、途中で人が近づいた場合は、その時点で注意喚起のためエンジン音が発生させられる。なお、この場合も後述のように人を驚かせないよう、擬似エンジン音の発生は滑らかかつ自然なものとされる。また、ステップS26で車両走行準備スイッチのオフが検知されないときはフローはステップS10に戻り、以下スイッチオフが検知されるまでステップS10からステップS36が繰り返されて車両2の種々の状態変化に対応する。
図3は、図2のステップS22における走行中擬似エンジン音制御処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS42で常時モータ走行
モードの設定が行われ、設定が検知されるとステップS32に移行する。このように、常時モータ走行モードへの変更は車両走行中でも可能である。一方、ステップS42で常時モータ走行モードの設定が検知されない場合はステップS44に進み、エンジン走行が行われているかどうかチェックする。エンジン走行でなければステップS48に進み、人感センサ64が人を検知しているかどうかチェックする。検知がなければステップS50に進み、時計16のデータに基づき静粛を要する深夜時間帯かどうかチェックする。そして深夜時間帯であったときはステップS52で車外マイク44による環境音が所定以下の静寂状態にあるかどうかチェックする。
上記において、ステップS50で深夜時間帯でなかった時はステップS54に移行する。また、ステップS50で深夜時間帯であってもステップS52で環境音が所定以下でなかったときもステップS54に移行する。ステップS54以下は、歩行者がいる可能性が高く擬似エンジン音を発生させるべき条件にあるかどうかの判断を行うためのもので、まずステップS54ではカーナビゲーション機能部20の情報に基づき、車両2が道幅の狭い道路を走行中かどうかチェックする。該当しなければ次にステップS56に進み、同様にカーナビゲーション機能部20の情報に基づいて車両2が歩道なしの道路を走行中かどうかチェックする。これにも該当しなければステップS58に進み、カーナビゲーション機能部20の情報または近距離通信部24からの情報またはこれら両者の組合せの情報に基づき、車両2が横断歩道に接近しているかどうかチェックする。そして該当すればステップS60に進み、擬似エンジン音の発生を車内に表示するための図2のステップS16と同様の表示処理に入る。
一方、ステップS48において人感センサが人を検知したと判断されたとき、ステップS54で車両2が道幅の狭い道路を走行中であると判断されたとき、またはステップS56で車両2が歩道なしの道路を走行中であると判断されたときは、いずれも直ちにステップS60に移行する。さらにステップS62では、図2のステップS18と同様の擬似エンジン音発生処理を行い、処理が終了するとステップS64に移行する。
これに対し、ステップS44でエンジン走行が検知されたときはステップS66に移行し、盲導犬に車両の接近を知らせる場合に用いられる盲導犬用超音波の発生を禁止するとともにステップS68で擬似エンジン音の発生を禁止し、ステップS70で擬似エンジン音の発生がない旨を車内のユーザに表示してステップS64に移行する。エンジン走行の際は通常のガソリンエンジン車と同様のエンジン音が発生するので、当然のこととして擬似エンジン音および超音波の発生は無用だからである。
さらに、ステップS46で高速道路走行中であることが検知されたときもステップS66以下に進み、盲導犬用超音波および擬似エンジン音の発生を禁止するとともにその旨の表示を行ってステップS64に至る。高速道路においては通常歩行者が存在しないし、渋滞等でモータのより低速走行するときも無用の擬似エンジン音を発生させて高速道路の騒音を増加させるのは不合理だからである。
また、ステップS50において深夜時間帯であることが確認され、ステップS52で環境音が所定以下の静寂状態にあるときも、ステップS72を経由して、ステップS68の擬似エンジン音禁止フローに入る。歩行者がいる可能性が低いにもかかわらずことさらに擬似エンジン音を発生させて静寂を破るのはせっかくのハイブリッド車の利点を殺すことになって不合理であるとともに、仮に歩行者がいるとしても車両2のタイヤ音等により車両2の接近を知ることが可能であるからである。なお、ステップS68に入る前に、ステップS72ではカーナビゲーション機能部20の情報に基づき、住宅地域かどうかのチェックを行う。そして住宅地域であることが確認されればステップS66に進み、盲導犬用超音波の発生を禁止してステップS68の擬似エンジン音禁止に移行する。住宅地域であれば、かなりの家庭において犬が飼われている可能性が高く、盲導犬を連れた歩行者がいる可能性が低い深夜、超音波により家庭で買われている犬が興奮して吠える原因を作るのは好ましくないからである。
これに対し、ステップS72で住宅地域でないことが確認された場合は、犬が飼われている可能性よりも盲導犬を連れた歩行者がいる可能性の方が高いので、ステップS74に進み、盲導犬用超音波を発生させてステップS68に移行する。このように、深夜の静寂環境への配慮から擬似エンジン音を禁止する場合でも、弊害のない条件下では、人間には聞こえないが盲導犬には聞こえる超音波を発生させることにより、車両2の接近時に気付かず横断歩道を渡る等の事故を未然に防止する可能性を高める。
図4は、図2のステップS36における常時モータ走行処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS82で走行中または走行開始操作がなされた状態のいずれかに該当するかどうかチェックする。そしてこれらのいずれにも該当しない場合には直ちにフローを終了して図2のステップS26に移行する。
一方、ステップS82で走行中または走行開始操作がなされたことが確認されるとステップS84に進み、人感センサ64が人を検知しているかどうかチェックする。検知がなければステップS86に進み、カーナビゲーション機能部20の情報または近距離通信部24からの情報またはこれら両者の組合せの情報に基づき、車両2が横断歩道に接近しているかどうかチェックする。これにも該当しなければ、ステップS88に進み、ブレーキ1とアクセル3の細かな踏み換えに該当する交互反復操作が行われたかどうかチェックする。この操作は、狭い道において車両の前に歩行者が多数いる場合に典型的な操作である。ステップS88にも該当しない場合は、ステップS90に移行する。
上記ステップS84からステップS88は、静粛走行を意図して設定された常時モータ走行モードにおいても強制的に擬似エンジン音を発生させるべき状況にないかどうかをチェックするものであり、これらのいずれにも該当しない場合はステップS90で擬似エンジン音を禁止する。さらに、ステップS92で擬似エンジン音の発生がない旨を車内のユーザに表示してステップS64に移行する。
次いで、ステップS94では、カーナビゲーション機能部20の情報に基づき、住宅地域かどうかのチェックを行う。そして住宅地域でないことが確認された場合は、ステップS96に進み、盲導犬用超音波を発生させてステップS98に移行する。一方、ステップS94で住宅地域であることが確認されればステップS100に進み、盲導犬用超音波の発生を禁止してステップS98に移行する。これらの趣旨は、図3のステップS72、ステップS74およびステップS66と同様であり、常時モータ走行モードを設定した意図に沿って擬似エンジン音を禁止する場合において、弊害のない条件下で人間には聞こえないが盲導犬には聞こえる超音波を発生させることにより、車両2の接近時に気付かず横断歩道を渡る等の事故を未然に防止する可能性を高めるものである。
ステップS98では、擬似エンジン音発生状態をドライブレコーダ記録する。これは特に意図的な設定により常時モータ走行を擬似エンジン音の発生なしで行ったことを記録するもので、エンジン音に気付かないことが原因の万一の事故の証拠とされる。これによって、既にのべたとおり常時走行モード設定時の運転者の注意意識を高めている。
一方、ステップS84で人感センサ64による人検知が確認されたとき、またはステップS86で車両2が横断歩道に接近していることが検知されたとき、またはステップS88でブレーキ1とアクセル3の交互反復操作が検知された時は、いずれもステップS102に移行する。ステップS102では、擬似エンジン音の発生を車内に表示するための表示処理を行うとともに、次のステップS104で擬似エンジン音発生処理を行い、ステップS98に移行する。ステップS98では、ステップS104経由の擬似エンジン音は発生の場合も、これを擬似エンジン音発生状態としてドライブレコーダに記録する。
ステップS98の擬似エンジン音発生状態ドライブレコーダ記録が完了するとフローはステップS106に進み、走行停止操作が行われたかどうかチェックする。そして操作が検知できないときはステップS84に戻り、以下走行停止操作が検知されない限りステップS84からステップS106を繰り返し、常時モータ走行における種々の状態変化に対応する。また、ステップS106で走行停止操作が検知されたときは、フローを終了して図2のステップS26に移行する。
ここで注意すべきは、本発明の実施例では、図4のステップS84からステップS88の存在により、本来エンジン音なしの静粛走行を意図している常時モータ走行にあっても人の検知、横断歩道への接近等歩行者保護の必要があるときはユーザの意思で勝手に擬似エンジン音を切ることはできない構成となっていることである。また図4のステップS88のように、ブレーキ1とアクセル3の細かな踏み換えを行ったときに自動的に擬似エンジン音の禁止状態から発生状態に移行する構成は、歩行者が多数いる狭い道に車両2が進入した場合、速やかに歩行者が気付いて避けてくれるので、歩行者の安全確保とともにスムーズな運行を望む運転者自身のメリットにもなる。なお、図4の常時モータ走行のフローにおける種々の特徴は、実施例におけるハイブリッド車での実施だけでなく、ガソリンエンジンのない純然たる電気自動車の場合においても実施できるものである。
図5は、図2のステップS18、図3のステップS62および図4のステップS104における擬似エンジン音発生処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS112で、擬似エンジン音が既に発生中かどうかチェックする。そして発生中でなければ新たに発生を開始することになるのでステップS114に進み、盲導犬用超音波の発生を禁止する。これは、図3のステップS73または図4のステップS96を経由して図5のフローに至った場合の処置であり、元々盲導犬用超音波が発生させられていなければステップS114では何もしない。
次いでステップS116では、擬似エンジン音量をゼロから通常エンジン音レベルまでソフトに増加させる。これは、本物のエンジン音の発生を模したもので唐突な擬似エンジン音の発生により車両2の周囲の人を驚かせないための処置である。ステップS116における滑らかな音量の立ち上がりは、具体的には図1の音データ記憶部46における音量変化パターンデータ50を利用するが、所定のパターンでボリュームを変化させることによってもよい。そして擬似エンジン音が立ち上がるとステップS118に以降する。一方、ステップS112で既に擬似エンジン音が発生中であれば、直接ステップS118に移行する。
ステップS118では、運転中における種々の運転操作変化の有無をチェックし、変化があればステップS120で音量音質を運転操作に連動して自然に変化させる処理を行う。この処理は、音データ記憶部46の擬似エンジン音データ48および音量変化パターンデータ50における運転操作部6の操作との相関テーブルを参照して行われる。そしてこの処理が終わるとステップS122に移行する。一方、ステップS118で運転操作の変化が検知されない場合は直接ステップS122に移行する。
ステップS122では、車外マイク44によってピックアップされる環境音が所定レベル以上であるかどうかがチェックされる。この所定レベルは擬似エンジン音量を増加させないと歩行者が車両2の存在に気付かない程度大きいかどうかの判定レベルとなる。ステップS122で環境音が所定以上でないと判断されるとステップS124に進み、天応センサ66によって雨天や荒
天等の車外の環境音が大きいと予想される状況かどうかをチェックする。ステップS124で荒天等が検知されないとステップS126に進み、カメラ部70の画像の画像処理に基づく傘を差している歩行者の有無を検知する。そして検知がなければステップS130に移行する。
ステップS128では、時計16のデータに基づき静粛を要する深夜時間帯かどうかチェックする。そして深夜時間帯であったときはステップS130で車外マイク44による環境音が所定以下の静寂状態にあるかどうかチェックする。ステップS130で環境音が所定以下でなかったときはステップS132に進む。以上のチェックを経てステップS132に至ったときは、擬似エンジン音が本物のエンジン音程度の中程度の音量でよいことを意味する。そこで、ステップS132では現時点の擬似エンジン音量が中程度であるかどうかチェックし、大音量または小音量であったときはステップS134に進んでこれをソフトに中音量に変化させステップS136に移行する。一方、ステップS132で元々中音量であった場合は、直接ステップS136に移行する。
これに対し、ステップS122で環境音が所定レベル以上であることが検知されたとき、またはステップS124で荒天等が検知されたとき、またはステップS126で傘を差している歩行者が検知されたときはステップS140に進み、現時点の擬似エンジン音が大音量であるかどうかチェックする。そして中音量または小音量であったときはステップS142に進んでこれをソフトに大音量に変化させステップS136に移行する。一方、ステップS140で元々大音量であった場合は、直接ステップS136に移行する。
また、ステップS130で深夜時間帯において環境音が所定以下であることが検知されたときはステップS144に進み、現時点の擬似エンジン音が小音量であるかどうかチェックする。そして中音量または大音量であったときはステップS146に進んでこれをソフトに小音量に変化させステップS136に移行する。一方、ステップS144で元々小音量であった場合は、直接ステップS136に移行する。なお、ステップS130の所定音の判断レベルステップS52よりも高く設定しておき、小音量で擬似エンジン音を発生させても環境を害さない程度の環境音があるレベルとする。逆に言うと、タイヤ音だけでは車両2の接近が聞き取れないレベルの環境音はあるレベルを意味する。
ステップS136では、バック操作、ウインカ操作、またはブレーキとアクセルの交互反復操作などの特定操作の有無を検知する。そしてこれらの操作が検知されるとステップS138に進み、検知された操作に特有のエンジン音を模して擬似エンジン音の音量を修飾する処理を行ってフローを終了する。一方、ステップS136で特定操作が検知されないときは直ちにフローを終了する。ステップS138の音量修飾処理の詳細は後述する。なお、図5では擬似エンジン音を大中小の三段階で変化させる構成を示したが、よりきめ細かく変化させるか、さらには無段階で変化させるよう構成してもよい。
図6は、図5のステップS138における音量修飾処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS152で、セレクトレバー7によるバック操作が行われたかどうかチェックする。そしてバック操作があればステップS154に進み、後方スピーカ58の音量が増加するよう、前方スピーカ56と後方スピーカ58の音量バランスをソフトに変化させてステップS156に移行する。これは後方歩行者の注意を喚起するためである。なお、通常の前進運行の場合は、前方スピーカ56の音量が大きくなるよう設定が行われており、後方スピーカ58については音量が絞られるかまたはゼロに設定されている。一方、ステップS152でバック操作が検出されない場合は直接ステップS156に移行する。
ステップS152では、ウインカ操作部9による右ウインカの操作が行われたかどうかチェックする。そして右ウインカ操作があればステップS158に進み、右側スピーカ60の音量が増加するよう、右側スピーカ60と左側スピーカ62の音量バランスをソフトに変化させてステップS160に移行する。これは右側の歩行者の注意を喚起するためである。なお、通常の直進運行の場合は、右側スピーカ60の音量と左側スピーカ62の音量は均等に設定されている。これに代えて、通常の直進運行の場合に右側スピーカ60および左側スピーカ62をオフにしておいてもよい。一方、ステップS156で右ウインカ操作が検出されない場合は直接ステップS160に移行する。
ステップS160では、ウインカ操作部9による左ウインカの操作が行われたかどうかチェックする。そして左ウインカ操作があればステップS162に進み、左側スピーカ62の音量が増加するよう、右側スピーカ60と左側スピーカ62の音量バランスをソフトに変化させてステップS164に移行する。これは左側の歩行者の注意を喚起するためである。一方、ステップS156で右ウインカ操作が検出されない場合は直接ステップS160に移行する。以上のステップS156からステップS162の構成は、実際に右折又は左折する場合に限らず、車両2前方の左側または右側にいる特定の歩行者に注意を喚起する目的だけのためにも使用することが可能である。
ステップS164では、ブレーキ1とアクセル3の細かな踏み換えに該当する交互反復操作が行われたかどうかチェックする。このチェックは、具体的には交互反復操作が短時間に行われ且つその後所定時間が経過していないかどうかのチェックとなる。そしてこのような検知により交互反復操作があったと判断されときは、ステップS166に進み、その後アクセル操作が行われたかどうかチェックする。アクセル操作がなければステップS168でブレーキ操作が行われたかどうかチェックする。そして両操作がなければステップS164に戻る。以下、交互反復操作が検知されてから所定時間が経過せず、かつアクセル操作もブレーキ操作も検知されない限りステップS164からステップS168を繰り返し、所定時間内のアクセル操作またはブレーキ操作を待つ。
ステップ166でアクセル操作が検知されたとき、またはステップS168でブレーキ操作が検知されたときはステップS170に進み、一回の操作検知について一回(ワンショット)の割合で音量を脈状に増加減少させてステップS172に移行する。なおこのステップS170の機能は、ワンショットでなく一回の操作検知について所定回数音量が脈動変化するように構成してもよい。一方、ステップS164で交互反復操作が短時間に行われたことが検知されないか、または検知後所定時間が経過した場合は直ちにステップS172に移行する。
ステップS172では、特定操作が終了したかどうかのチェックが行われる。具体的には、バック操作、ウインカ操作についてはその操作の終了検知であり、ブレーキ/アクセルの交互反復操作では、その検知後所定時間が経過した場合に該当する。ステップ172で特定操作の終了が検知されない場合はステップS152に戻り、以下、終了操作が検知されない限り、ステップS152からステップS170が繰り返される。この繰り返しの結果、ブレーキ/アクセルの交互反復操作の場合は、アクセル操作またはブレーキ操作に連動して音量が脈動変化することになる。一方、ステップS172で特定操作の終了が検知されたときはステップS174に進み、修飾していた擬似エンジン音量やバランスをソフトに標準状態に復帰させてフローを終了する。
図7は、図2のステップS16、図3のステップS60および図4のステップS102における擬似エンジン音表示処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートするとステップS182で車両2が停止中かどうかチェックされ、停止中であればステップS184に進む。そしてステップS184では、セレクトレバー7の選択位置を示す「P、R、N、D、L」などのセレクトレバー表示欄40の点滅を指示してステップS186に移行する。セレクトレバー7の選択位置表示は、走行前に運転者が注目する部分であり、そこが点滅していることによって車内に居ながらにして擬似エンジン音が発生していることを知ることができる。一方、走行中であればステップS185で点滅停止を指示してステップS186に移行する。走行中の点滅は煩わしいからである。なお、ステップS185は走行開始時に機能するもので、既に走行中でセレクトレバー選択位置表示の点滅が停止しているときはステップS185では何も行われない。
ステップS186では、速度計の数字または針などの表示における表示色を変更する指示を行う。具体的には速度計表示色は、エンジン走行中とモータ走行中で変化させるよう構成するが、モータ走行中において擬似エンジン音が発生しているときはエンジン走行中と同じ表示色とする。これによって、車外にエンジン音が発生している時は本物のエンジン音であるか擬似エンジン音であるかにかかわらず同じ色(たとえばオレンジ)での表示が行われる。これに対し、擬似エンジン音なしでモータにより静粛走行しているときは速度計の表示色が異なった色(例えばグリーン)となる。従ってこの例の場合、ステップS186では速度計表示色をグリーンからオレンジに変更する指示が行われる。
次いで、ステップS190では、人感センサ64が人を検知しているかどうかがチェックされる。ステップS190で人検知が確認された場合は、ステップS192に進み速度計表示の点滅を指示してステップS194に移行する。車両2近辺に歩行者がいる場合は、特に擬似エンジン音を共有した歩行者と運転者のコミュニケーションが大切なので、運転者側に誤解がないよう、表示色が擬似エンジン音発生状態に変更されていることについての注意を喚起するためである。一方、ステップS190で人検知が確認されない場合は直接ステップS194に移行する。
ステップS194では、車両2が道幅の狭い道路を走行中かどうかチェックする。該当しなければステップS196に進み、車両2が歩道なしの道路を走行中かどうかチェックする。これにも該当しなければステップS198に進み、車両2が横断歩道に接近しているかどうかチェックする。そして該当すればステップS200に進み、該当部分のカーナビゲーション地図上での表示色を変更する指示を出してステップS202に移行する。この場合は地図上の横断歩道部分の表示色を変更する指示を行う。同様に、ステップS194で道幅の狭い道路を走行中である旨が検知されたとき、ステップS196で歩道なしの道路を走行中である旨が検知されたときもステップS200に進み、検知該当部分である地図上の道路部分の表示色を変更する指示を行う。このようにして、擬似エンジン音発生が走行地域に関連しているときはカーナビゲーション地図上で擬似エンジン音発生の旨の表示を行う。なお、ステップS194からステップS198のいずれにも該当がないときは直接ステップS202に移行する。
ステップS202では、バック操作の有無がチェックされ、操作がなければステップS204でウインカ操作の有無がチェックされる。これも操作がなければステップS206に進みブレーキ/アクセルの交互反復操作の有無が検知される。そして該当すればステップS208に進み、該当操作表示部の表示色を変更する指示を出してステップS210に移行する。この場合はブレーキ表示の表示色を変更する指示を行う。同様に、ステップS202でバック操作が検知されたとき、またはステップS204でウインカ操作が検知されたときもステップS208に進み、検知該当部分であるセレクトレバー7の「R」表示部またはウインカ表示部の表示色を変更する指示を行う。このようにして、擬似エンジン音を必要とする操作が行われたときは、関連する操作の表示を利用して擬似エンジン音発生の旨の表示を行う。なお、ステップS202からステップS206のいずれ
にも該当がないときは直接ステップS210に移行する。
ステップS210では、擬似エンジン音発生無しの旨を表示する指示が行われたときに表示を通常状態に復元すべき旨の予定指示を行った上でフローを終了する。これは、図2のステップS30およびステップS34、図3のステップS70、並びに図4のステップS92の指示があった際にこれに応答可能とするための処理である。これらの指示があったときには図7のフローにおいて指示された種々の擬似エンジン音表示がキャンセルされ、各表示が通常状態に復帰することになる。
以上説明した本発明の種々の特徴の実施は上記の実施例に限るものではなく、静粛走行が可能な利点のあるハイブリッド車または電気自動車の利点を可能な限り生かしつつ、歩行者および環境との調和のとれた車両走行を行う趣旨において、種々の実施が可能なものである。