以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる「上」または「上方」並びに「下」または「下方」はそれぞれ、基板の主面に対して直角に遠ざかる向き並びに基板の主面に近づく向きを示し、半導体装置の実装状態における上下方向ではない点にも留意する必要がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
まず、本発明の実施形態について説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、上述した課題を解決すべく本発明者が行った実験および鋭意検討について説明する。図1は、AlInAs層に対する酸化実験を行う半導体積層体を示す断面図である。
本発明者は、まず、次のようにしてハイメサ導波路構造体400を形成した。すなわち、図1に示すように、InP基板401上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、AlInAs酸化層402となるAlInAs層、下部クラッド層403となるInP層、光導波層404となるGaInAsP層、および上部クラッド層405となるInP層を順次形成する。次に、上部クラッド層405となるInP層の上面にたとえば窒化シリコン(SiNx)膜を形成して、ハイメサ導波路構造の形状にパターニングする。続いて、このSiNx膜をエッチングマスクとして、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法による異方性エッチングを行う。これにより、AlInAs酸化層402となるAlInAs層の一端部が露出される。
その後、側面が露出したAlInAs層を含む半導体積層体に対して、水蒸気雰囲気下において450℃以上520℃以下の温度でアニールを行う。これによって、InP基板401上のAlInAs層において、露出した端部からAlInAs層の面方向に沿って酸化が進行し、AlInAs酸化層402が均質に形成される。その後、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて、InP基板401、AlInAs酸化層402およびInP層からなる下部クラッド層403の領域を断面観察により評価した。その結果、本発明者は、AlInAs酸化層402とInP基板401および下部クラッド層403との界面に、ボイド407が生じることを知見した。ボイド407の存在によって、AlInAs酸化層402とInP基板401および下部クラッド層403との界面の接合強度が低下する可能性がある。これにより、下部クラッド層403、光導波層404、および上部クラッド層405における機械的強度が低下し、剥離する可能性が生じる。
また、光導波層404を加熱するために、上部クラッド層405の上層にマイクロヒータ406を形成する必要がある。この場合、半導体積層体としてのハイメサ導波路構造体400には、マイクロヒータ406を形成する際に発生する応力や金属層自体により生じる応力が作用し、ボイド407の部分で下部クラッド層403より上層が剥離しやすくなる。
本発明者の知見によれば、上述のボイドの発生は、AlInAs酸化層のみならず、Al1-x-yGaxInyAs1-zPz層(0<x+y<1、0≦x<1、0<y<1、0≦z<1)を酸化したAl1-x-yGaxInyAs1-zPz酸化層においても同様に発生する。
本発明者は、上述した実験により得た知見に基づき、上述の問題点を解決するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、AlInAs酸化層402の上部のハイメサ導波路構造体400の接合強度の低下を抑制して機械的強度を向上させるために、支持体となる下地と連結した連結領域を設けることを想起した。この支持体となる下地との連結領域は、酸化されていないAlInAs層と上層の半導体層とから構成するのが望ましい。さらに、連結領域は、ハイメサ導波路構造体の側面方向に沿った少なくとも一方の側に設けたり、光導波層の導波路方向に沿った一部に設けたりするのが好ましいことを想起した。なお、連結領域を酸化されていないAlInAs層から構成する場合、低熱伝導領域の寸法は、面方向に沿ってマイクロヒータの配置領域を覆うような領域とするために、寸法もより大きくするのが望ましい。これにより、マイクロヒータが発する熱が半導体基板側に流出することを抑制でき、所望の領域を効率良く加熱できる。以下に説明する実施形態は、以上の検討に基づいて案出されたものである。
(第1の実施形態)
次に、上述した本発明者による鋭意検討に基づいた第1の実施形態による波長可変レーザ素子について説明する。図2は、第1の実施形態による波長可変レーザ素子の模式的な斜視図である。
図2に示すように、波長可変レーザ素子1は、1.55μm帯でレーザ発振し、レーザ光L1を出力するように構成されている。波長可変レーザ素子1は、共通の基部B上に形成された、第1の導波路部10と第2の導波路部20とを備える。基部Bはたとえばn型InP基板からなる。なお、基部Bの裏面にはn側電極30が形成されている。n側電極30は、たとえばAuGeNiを含んで構成され、基部Bとオーミック接触する。
第1の導波路部10は、導波路部11、半導体積層部12、p側電極13、およびTiからなるマイクロヒータ14,15を備える。第1の導波路部10は、いわゆるアクティブ素子であってアクティブ領域を構成する。導波路部11は、半導体積層部12内にz方向に延伸するように形成されている。第1の導波路部10内には、回折格子装荷型利得部11aおよび位相調整部11bが配置されている。半導体積層部12は、半導体層が積層して構成されており、導波路部11に対してクラッド部の機能等を備える。
p側電極13は、半導体積層部12上において、回折格子装荷型利得部11aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部12にはSiNx保護膜が形成されており、p側電極13はSiNx保護膜に形成された開口部を介して半導体積層部12に接触している。加熱部としてのマイクロヒータ14は、半導体積層部12のSiNx保護膜上において、位相調整部11bに沿うように配置されている。加熱部としてのマイクロヒータ15は、半導体積層部12のSiNx保護膜上において、p側電極13に沿うように配置されている。
第2の導波路部20は、2分岐部21、2つのアーム部22,23、リング状導波路24、およびTiからなるマイクロヒータ25を備える。第2の導波路部20は、いわゆるパッシブ素子であってパッシブ領域を構成する。2分岐部21は、1×2型の多モード干渉型(MMI)導波路21aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部22,23のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が第1の導波路部10側に接続されている。2分岐部21により、2つのアーム部22,23は、その一端が統合され、導波路部11と光学的に結合される。
アーム部22,23は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路24を挟むように配置されている。アーム部22,23はリング状導波路24と近接し、いずれも同一の結合係数κでリング状導波路24と光学的に結合している。κの値はたとえば0.2である。アーム部22,23とリング状導波路24とは、リング共振型フィルタRF1を構成している。また、リング共振型フィルタRF1と2分岐部21とは、反射ミラーM1を構成している。光導波路の加熱を行う加熱部としてのマイクロヒータ25はリング状であり、リング状導波路24を覆うように形成されたSiNx保護膜上に配置されている。
第1の導波路部10と第2の導波路部20は、互いに光学的に接続され、回折格子装荷型利得部11aの回折格子層11abと反射ミラーM1とによって、レーザ共振器C1を構成している。回折格子装荷型利得部11aの利得部としての活性コア層11aaと位相調整部11bとはレーザ共振器C1内に配置される。
図3は、第2の導波路部20のうちのリング状導波路24を、図2のyz平面に平行な面に沿って切断したIII−III線の断面図である。図3に示すように、リング状導波路24は、基部Bを構成するn型InP基板41上に、低熱伝導層42a、下部クラッド層43、導波路層としての光導波層44、および上部クラッド層45が順次積層されたハイメサ導波路構造を有する。
低熱伝導層42aは、被酸化層としてのAl1-x-yGaxInyAs1-zPz層(0<x+y<1、0≦x<1、0<y<1、0≦z<1)が側端部から酸化されて形成された、Al1-x-yGaxInyAs1-zPz酸化層からなる。低熱伝導層42aは、パッシブ素子の全体または少なくとも一部の下層に設けられる。具体的に低熱伝導領域としての低熱伝導層42aは、たとえば、x=z=0としたn型AlInAs層42が側端部から酸化されたAlInAs酸化層からなる。これにより、n型AlInAs層42と低熱伝導層42aとは、n型InP基板41の同一面上に同一層として設けられることになる。n型AlInAs層42の組成は、n型InP基板41と略格子整合する組成であって、第1の実施形態においてたとえば、n型InP基板41と格子整合するAl0.48In0.52As層(x=1,y=0.52,z=0)である。n型AlInAs層42の膜厚は、側面から酸化された場合の酸化速度が極大になる膜厚である最適膜厚の0.5倍以上1.5倍未満であり、好適には1.3倍以下である。この第1の実施形態において具体的に、n型AlInAs層42の最適膜厚はたとえば100nmであり、n型AlInAs層42の膜厚としては50nm以上150nm未満、好適には130nm以下、ここでは100nmとする。
下部クラッド層43はn型InP層からなり、下部クラッド層43の下部は、酸化されていないn型AlInAs層42上にまで延伸した延伸部分43aを有する。これにより、少なくとも酸化されていないn型AlInAs層42上の延伸部分43aにおいて、n型AlInAs層42と上層の下部クラッド層43とが連結されている。すなわち、酸化されていないn型AlInAs層42と下部クラッド層43とによって、連結領域が構成される。
光導波層44は、バンドギャップ波長が1300nmのGaInAsP層からなる。上部クラッド層45は、p型InP層からなる。
ハイメサ導波路構造体を構成する低熱伝導層42a、下部クラッド層43、光導波層44、および上部クラッド層45と、下部クラッド層43の下部のn型AlInAs層42上に延伸した延伸部分43aとは、保護膜としての誘電体層46に覆われている。誘電体層46は、たとえばSiNx膜や酸化シリコン(SiO2)膜、またはSiO2膜とSiNx膜との積層膜からなる。
第2の導波路部20のその他の構成要素である2分岐部21およびアーム部22,23も上述と同様のハイメサ導波路構造を有し、誘電体層で覆われている。すなわち、第2の導波路部20は、第1の導波路部10の第1の導波路構造とは異なる第2の導波路構造を有する。
リング状導波路24を構成するハイメサ導波路構造体の上方の誘電体層46上には、マイクロヒータ25が設けられている。ハイメサ導波路構造体の側面側には、この側面をカバーする樹脂層48が設けられている。樹脂層48の上面とマイクロヒータ25の上面には、マイクロヒータ25の上面において電気的に接続された引き出し配線49が設けられている。引き出し配線49は、外部からマイクロヒータ25に通電を行うための配線であり、マイクロヒータ25に通電を行うことにより、マイクロヒータ25の設置領域の下方を低熱伝導層42aの上層まで加熱できる。低熱伝導層42aは、少なくとも上部クラッド層45、光導波層44、および下部クラッド層43の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する。これにより、低熱伝導層42aは、マイクロヒータ25による加熱をさらに下層に伝達させないための断熱層として機能する。引き出し配線49は、たとえばTi/Au層、Ti/Pt/Au層、Cr/Au層、またはMo/Au層などからなる。なお、樹脂層48の部分を空間にした状態で引き出し配線49を設ける、いわゆるエアブリッジの構造としても良い。
(ハイメサ導波路構造体の製造方法)
次に、上述したハイメサ導波路構造体の製造方法について説明する。まず、上層にたとえば500nm程度のn型InPバッファ層(図示せず)が形成された基部Bを構成するn型InP基板41上に、たとえばMOCVD法によって、n型AlInAs層42、下部クラッド層43となるn型InP層、光導波層44となるGaInAsP層、および上部クラッド層45となるp型InP層を順次形成する。
次に、上部クラッド層45となるp型InP層の上面にたとえばSiNx膜を形成して、たとえばリング状または直線状のアームなどのハイメサ導波路構造の形状にパターニングする。続いて、このSiNx膜をエッチングマスクとして、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法による異方性エッチングを行う。ここで、下部クラッド層43は、光導波層44より下方に1500nm程度エッチングする。下部クラッド層43の下部が残る状態でエッチングを行った後、エッチングマスクを除去する。続いて、ハイメサ導波路構造の積層部分と下部クラッド層43の下部の延伸部分43aを含めた領域にエッチングマスクを形成した後、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。これにより、酸化層を形成したい所望の領域の下部クラッド層43の下部の残部、およびn型AlInAs層42がエッチングされ、第1半導体層としてのn型AlInAs層42の一端部がハイメサ導波路構造体の下部の側面に面一状態で露出される。なお、下部クラッド層43の下部の残部、およびn型AlInAs層42のエッチングは、ウェットエッチング法により行っても良い。
その後、側面が露出したn型AlInAs層42を含むハイメサ導波路構造の積層体に対して、水蒸気雰囲気下において450℃以上520℃以下の温度でアニールを行う。これによって、n型AlInAs層42において、露出した端部からn型AlInAs層42の面方向に沿って酸化が進行する。この酸化は、ハイメサ導波路構造の下部の領域におけるn型AlInAs層42が酸化されるまで実行する。なお、酸化処理における酸化時間は、上述した最適膜厚を導出するために行う酸化実験から得られた酸化速度のデータと、ハイメサ導波路構造の幅の設計値などとに基づいて決定される。たとえばAlInAs酸化層の幅が約2.2μmの場合、酸化時間はたとえば120分程度である。これにより、ハイメサ導波路構造の下部に、n型AlInAs層42が均一に酸化されて、幅方向に沿って均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層42aが形成されるとともに、n型AlInAs層42において、ハイメサ導波路構造の下部以外の部分において、酸化されていない領域が残される。酸化されていない領域は、n型AlInAs層42と下部クラッド層43とが強固に連結した連結領域を構成する。
次に、全面にたとえばSiNx膜を形成することにより誘電体層46を形成する。その後、ハイメサ導波路構造の上方で誘電体層46上に、たとえばリフトオフマスクを用いたリフトオフ法によって、Ti層などの金属層をマイクロヒータ25の形状に形成する。また、ハイメサ導波路構造の側部に樹脂を埋め込んで樹脂層48を形成した後、マイクロヒータ25上の少なくとも一部および樹脂層48上にたとえばTi/Au層、Ti/Pt/Au層、Cr/Au層、またはMo/Au層を形成することにより、引き出し配線49を形成する。以上により、下部に低熱伝導層42aが設けられているとともに上部にマイクロヒータ25が設けられたハイメサ導波路構造が製造される。
以上説明した第1の実施形態によれば、酸化されていないn型AlInAs層42と下部クラッド層43とによって、連結領域が形成されることにより、連結領域が、支持体となるn型InP基板41と連結することになる。そのため、n型AlInAs層42と下部クラッド層43とを補強する構造をなすことによって、低熱伝導層42aと、n型InP基板41の上部の層(n型InPバッファ層:図示せず)および下部クラッド層43との間にボイドが発生しても、下部クラッド層43より上層のハイメサ導波路構造体の接合強度の低下を抑制でき、機械的強度を向上できる。従って、ハイメサ導波路構造体の下方に、低熱伝導層が設けられている場合であっても、ハイメサ導波路構造体の機械的強度を向上できて剥離が抑制され、ハイメサ導波路構造体を安定して製造できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。なお、第2の実施形態以降の説明および図面においては、発明の理解を容易にするために、ハイメサ導波路構造体における樹脂層、誘電体層および引き出し配線等の記載を省略した積層構造について説明する。
図4は、第2の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図4に示すように、第2の実施形態によるハイメサ導波路構造体60においては、第1の実施形態と同様に、n型InP基板41上に、n型AlInAs層61およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層61a、下部クラッド層62、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。また、下部クラッド層62の下部には、ハイメサ導波路構造体60の幅方向に沿った両側に、n型InP基板41の面方向に沿って延伸した、延伸部分62aが設けられている。低熱伝導層61aは、下部クラッド層62の下部の延伸部分62aの下層において、ハイメサ導波路構造体60の一方の側面側における露出側の一端部から、ハイメサ導波路構造体60の他方の側面下部までの領域に設けられている。ハイメサ導波路構造体60の他方の側面下部から低熱伝導層61aのさらに外側に、n型AlInAs層61が設けられている。n型AlInAs層61と下部クラッド層62の延伸部分62aとによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体60が保持されている。
次に、第2の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、まず、第1の実施形態と同様にして、n型InPバッファ層が上層に設けられた基部Bを構成するn型InP基板41上に、たとえばMOCVD法によって、n型AlInAs層61、下部クラッド層62となるn型InP層、光導波層44となるGaInAsP層、および上部クラッド層45となるp型InP層を順次形成する。
次に、上部クラッド層45となるp型InP層の上面にたとえばSiNx膜を形成して、リング状や直線状のアームなどのハイメサ導波路構造の形状にパターニングする。続いて、このSiNx膜をエッチングマスクとして、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法による異方性エッチングを行う。下部クラッド層62の下部が残る状態でエッチングを行った後、エッチングマスクを除去する。続いて、ハイメサ導波路構造の積層部分と下部クラッド層62の下部の延伸部分62aを含めた領域にエッチングマスクを形成した後、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。これにより、酸化層を形成したい所望の領域の下部クラッド層62の下部の残部、およびn型AlInAs層61がエッチングされて、n型AlInAs層61の一端部がハイメサ導波路構造体60の側面に面一状態で露出される。なお、下部クラッド層62の下部の残部、およびn型AlInAs層61のエッチングは、ウェットエッチング法により行っても良い。
その後、側面が露出したn型AlInAs層61を含むハイメサ導波路構造体60に対して、水蒸気雰囲気下において450℃以上520℃以下の温度でアニールを行う。これによって、n型AlInAs層61において、露出した端部からn型AlInAs層61の面方向に沿って酸化が進行する。n型AlInAs層61の酸化は、n型AlInAs層61の露出端部とは反対側のハイメサ導波路構造体60の他方の側面の下方の位置まで酸化が進行するまで実行する。これにより、ハイメサ導波路構造の下部において、n型AlInAs層61が均一に酸化されて、幅方向に沿って均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層61aが形成される。
この第2の実施形態によれば、酸化が進行していないn型AlInAs層61と下部クラッド層62の延伸部分62aとによって、連結領域が構成されていることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図5は、第3の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図5に示すように、第3の実施形態によるハイメサ導波路構造体70においては、第1の実施形態と同様に、n型InP基板41上に、n型AlInAs層71およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層71a、下部に延伸部分72aを有する下部クラッド層72、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。低熱伝導層71aは、下部クラッド層72の下部の延伸部分72aの下層において、ハイメサ導波路構造体70の一方の側面側における露出側の一端部から、ハイメサ導波路構造体70の他方の側面下部よりさらに外側まで拡大した領域に設けられている。ハイメサ導波路構造体70の他方の側面下部よりさらに外側に拡大した低熱伝導層71aの形成領域のさらに外側に、n型AlInAs層71が設けられている。n型AlInAs層71と下部クラッド層72の延伸部分72aとによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体70が保持されている。その他の構成は第2の実施形態と同様である。
次に、第3の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、第2の実施形態と異なり、側面の一端部が露出したn型AlInAs層71に対して、露出した端部から酸化を行う。n型AlInAs層71の酸化は、n型AlInAs層71の露出端部とは反対側のハイメサ導波路構造体70の他方の側面の下方よりさらに外側に拡大した位置にまで酸化が進行するまで実行する。これにより、ハイメサ導波路構造体70の下部において、n型AlInAs層71が均一に酸化されて、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体70よりも広い領域に、均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層71aが形成される。その他の製造方法については、第2の実施形態と同様である。
この第3の実施形態によれば、n型AlInAs層71と下部クラッド層72の延伸部分72aとによって、連結領域が構成されて、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体70が保持されていることにより、第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図6は、第4の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図6に示すように、第4の実施形態によるハイメサ導波路構造体80においては、第1の実施形態と同様に、n型InP基板41上に、n型AlInAs層81およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層81a、下部に延伸部分82aを有する下部クラッド層82、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。また、第2の実施形態と同様に、低熱伝導層81aは、下部に延伸部分82aを有する下部クラッド層82の下層で、ハイメサ導波路構造体80の直下に設けられている。すなわち、低熱伝導層81aは、ハイメサ導波路構造体80の一方の側面側における露出側端部から、ハイメサ導波路構造体80の他方の側面下部までの領域に設けられている。また、第1,第2および第3の実施形態と異なり、n型InP基板41の主面に、低熱伝導層81aの少なくとも1箇所の露出端部と面一状態の凹部41aが形成されている。n型AlInAs層81と下部クラッド層82の延伸部分82aとによって、連結領域が構成され、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体80が保持されている。その他の構成は、第1,第2および第3の実施形態と同様である。
次に、第4の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、第2の実施形態と同様にして、上部にn型InPバッファ層(図示せず)が形成されたn型InP基板41上に、n型AlInAs層81、下部クラッド層82となるn型InP層、光導波層44となるGaInAsP層、および上部クラッド層45となるp型InP層を順次形成する。その後、p型InP層の上面にハイメサ導波路構造の形状にパターニングされたSiNx膜からなるエッチングマスクを形成して、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法による異方性エッチングを行う。下部クラッド層82の下部が残る状態にエッチングを行った後、エッチングマスクを除去する。続いて、第2の実施形態と異なり、ハイメサ導波路構造体80の積層部分と下部クラッド層82の下部の延伸部分82aとを含めた領域を覆うエッチングマスクを用いて、n型InP基板41の上部、具体的にはn型InPバッファ層(図示せず)に凹部41aが形成されるまでドライエッチングを行う。これにより、n型AlInAs層81の一端部が、凹部41aの内側面と面一状態で露出される。その後、側面が露出したn型AlInAs層81の露出端部からn型AlInAs層81の面方向に沿って酸化処理を行い、幅方向に沿って均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層81aを形成する。その他の製造方法は、第2の実施形態と同様である。
この第4の実施形態によれば、n型AlInAs層81と下部クラッド層82の延伸部分82aとによって連結領域が構成されて、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体80が保持されるので、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図7は、第5の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図7に示すように、第5の実施形態によるハイメサ導波路構造体90においては、n型InP基板41上に、n型AlInAs層91およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層91a、下部に延伸部分92a,92bを有する下部クラッド層92、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。
下部クラッド層92の延伸部分の少なくとも一方の側である延伸部分92bには、n型InP基板41の表面が露出したエッチング溝93が形成されている。低熱伝導層91aは、下部クラッド層92の延伸部分92bの下層において、エッチング溝93の内壁面である露出端部から、ハイメサ導波路構造体90の下方において、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体90の幅よりも広い領域に設けられている。すなわち、低熱伝導層91aは、幅方向に沿って、延伸部分92aの下層で、ハイメサ導波路構造体90においてエッチング溝93が形成された側とは反対側の側面下部よりさらに外側に拡大した領域に設けられている。低熱伝導層91aの形成領域のさらに外側に、n型AlInAs層91が設けられている。n型AlInAs層91と下部クラッド層92の延伸部分92aとによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体90が保持されている。その他の構成は第3の実施形態と同様である。
次に、第5の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、第3の実施形態と異なり、たとえばドライエッチング法によって、下部クラッド層92の下部における少なくとも一方の延伸部分92bにおいて、n型InP基板41の表面が露出するまで、下部クラッド層92およびn型AlInAs層91をエッチング除去することにより、エッチング溝93を形成する。その後、n型AlInAs層91に対して、エッチング溝93の内壁面において露出した端部から酸化を行う。n型AlInAs層91の酸化は、ハイメサ導波路構造体90のエッチング溝93とは反対側の側面の下方よりさらに外側に拡大した位置にまで酸化が進行するまで実行する。これにより、ハイメサ導波路構造体90の下部において、n型AlInAs層91が均一に酸化されて、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体90よりも広い領域に、均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層91aが形成される。その他の製造方法については、第3の実施形態と同様である。
この第5の実施形態によれば、n型AlInAs層91と下部クラッド層92の延伸部分92aとによって、連結領域が構成されて、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体90が保持されていることにより、第1〜第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図8は、第6の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図8に示すように、第6の実施形態によるハイメサ導波路構造体100においては、n型InP基板41上に、n型AlInAs層101およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層101a、下部に延伸部分102a,102bを有する下部クラッド層102、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。
下部クラッド層102の少なくとも一方の側である延伸部分102bには、低熱伝導層101aが露出したエッチング溝103が形成されている。低熱伝導層101aは、下部クラッド層102の延伸部分102aの下層において、エッチング溝103における露出部分から、ハイメサ導波路構造体100の下方において、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体100の幅よりも広い領域に設けられている。すなわち、低熱伝導層101aは、幅方向に沿って、延伸部分102aの下層で、ハイメサ導波路構造体100においてエッチング溝103が形成された側とは反対側の側面下部よりさらに外側に拡大した領域に設けられている。低熱伝導層101aの形成領域のさらに外側に、酸化されていないn型AlInAs層101が設けられている。n型AlInAs層101と下部クラッド層102の延伸部分102aとによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体100が保持されている。その他の構成は第5の実施形態と同様である。
次に、第6の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、第5の実施形態と異なり、下部クラッド層102の下部の延伸部分102bにおいて、たとえばチャネル形状としたエッチングマスクを用いてドライエッチングを行う。これにより、下部クラッド層102およびn型AlInAs層101の一部がエッチング除去されて、エッチング溝103が形成される。その後、エッチング溝103の内壁面において露出したn型AlInAs層101に対して、露出した端部から酸化を行う。n型AlInAs層101の酸化は、ハイメサ導波路構造体100のエッチング溝103とは反対側の側面の下方よりさらに外側に拡大した位置にまで酸化が進行するまで実行する。これにより、ハイメサ導波路構造体100の下部において、n型AlInAs層101が均一に酸化されて、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体100よりも広い領域に、均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層101aが形成される。その他の製造方法については、第5の実施形態と同様である。
この第6の実施形態によれば、n型AlInAs層101と下部クラッド層102の延伸部分102aとによって、連結領域が構成されて、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体100が保持されていることにより、第1〜第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態による半導体光素子について説明する。図9に示すように、第7の実施形態によるハイメサ導波路構造体110においては、上部にn型InPバッファ層(図示せず)が設けられたn型InP基板41上に、n型AlInAs層111および第1低熱伝導層111aと、n型InP層112と、n型AlInAs層113および第2低熱伝導層113aが順次形成されている。第1低熱伝導層111aは、AlInAs酸化層からなり、n型InP基板41、n型InP層112に挟まれた構成を有する。第2低熱伝導層113a上には、第1の実施形態と同様に、下部クラッド層43、光導波層44、上部クラッド層45およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。
第2低熱伝導層113aは、AlInAs酸化層からなり、第2半導体層としてのn型InP層112およびn型InP層からなる下部クラッド層43に挟まれた構成を有する。第1低熱伝導層111a、n型InP層112、および第2低熱伝導層113aにより、実質的に、第1低熱伝導層111aおよび第2低熱伝導層113aの合計の膜厚分の低熱伝導層が構成される。また、酸化されていないn型AlInAs層111,113、n型InP層112、および下部クラッド層43の延伸部分43aによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体110が保持されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
次に、図9に示すハイメサ導波路構造体110の製造方法について説明する。すなわち、上層にn型InPバッファ層(図示せず)が設けられたn型InP基板41上に、たとえばMOCVD法により、n型AlInAs層111、n型InP層112およびn型AlInAs層113を順次形成する。その後、同様にMOCVD法により、n型AlInAs層113上に、下部クラッド層43となるn型InP層、光導波層44となるGaInAsP層、および上部クラッド層45となるp型InP層を順次形成する。
次に、上部クラッド層45となるp型InP層の上面に、たとえばSiNx膜を形成してハイメサ導波路構造体110の形状にパターニングする。続いて、SiNx膜をマスクとして、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法により、下部クラッド層43の下部が残る状態まで異方性エッチングを行った後、エッチングマスクを除去する。続いて、ハイメサ導波路構造体110の積層部分と下部クラッド層43の下部の延伸部分43aとを含めた領域にエッチングマスクを形成する。その後、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法により、n型InP基板41の上面が露出するまで、n型AlInAs層113、n型InP層112およびn型AlInAs層111を順次エッチングする。これにより、n型AlInAs層111,113の側部の面を露出させる。
その後、第1の実施形態と同様にして、n型AlInAs層111,113の露出した端部の面から酸化を行うことにより、均質なAlInAs酸化層が形成される。n型AlInAs層111,113の酸化は、ハイメサ導波路構造体110におけるn型AlInAs層111,113の露出面とは反対側の側面の下方よりさらに外側に拡大した位置にまで酸化が進行するまで実行する。ハイメサ導波路構造体110の下部における、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体110よりも広い領域に、n型AlInAs層111,113が均一に酸化される。これにより、均質なAlInAs酸化層からなる第1低熱伝導層111aおよび第2低熱伝導層113aが形成される。n型AlInAs層111,113に対する酸化条件や、下部クラッド層43、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25の製造方法については、第1の実施形態と同様である。
この第7の実施形態においては、被酸化層としてのAlInAs層を、InP層によって挟んだ状態に複数層、具体的には2層設けている。これにより、n型InP層112、第1低熱伝導層111aおよび第2低熱伝導層113aを低熱伝導層として機能させることができる。すなわち、低熱伝導層は、Al1-x-yGaxInyAs1-zPz層を少なくとも1層有して構成すれば良い。そのため、AlInAs層のように、酸化する際に許容される膜厚に制限がある場合であっても、膜厚が大きい低熱伝導層と同様の機能が得られる。さらに、低熱伝導層として所望される断熱効率を確保するために、3層以上の所定層数のAlInAs酸化層をそれぞれ、InP層などの他の半導体層を介して設けて低熱伝導層を構成することも可能である。
なお、第7の実施形態においては、n型AlInAs層111,113を挟む他の半導体層をn型InP基板41、n型InP層112、およびn型InP層からなる下部クラッド層43としているが、他の半導体層としてn型InP層以外の半導体層を用いることも可能である。他の半導体層としては、n型InP基板41に略格子整合するとともに、AlInAs層の酸化速度に対して酸化速度の選択比が可能な限り大きく、かつ光導波層44を透過する光の波長に対して透明なバンドギャップを有する材料から構成するのが望ましい。具体的に、他の半導体層は、たとえば、GaInAsP層、GaInAs層、AlGaInAs層、またはAlGaInAsP層、または、これらの多層膜を用いることが可能である。
この第7の実施形態によれば、n型AlInAs層111,113、n型InP層112および下部クラッド層43の延伸部分43aによって、連結領域が構成されて、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体110が保持されていることにより、第1〜第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。ここで、本発明者が鋭意検討を行った問題点について説明する。すなわち、ハイメサ導波路構造体を形成する場合、一般的には、波長1.55μm帯の光導波路のコア層の膜厚は数100nm(たとえば300nm)、光導波路を挟む上部クラッド層および下部クラッド層の膜厚はそれぞれ1500nm程度に設計される。この場合、ハイメサ導波路構造体の合計の高さは、3.0μm以上になる可能性がある。すなわち、ハイメサ導波路構造体の形成においては、3.0μm以上のエッチング深さが必要になるため、エッチング深さを精密に制御する必要がある。エッチング深さが精密に制御できない場合、半導体基板内のメサ構造体の高さ、すなわちエッチング深さに面内分布が発生したり半導体基板間でばらつきが生じたりするため、半導体光素子の製造歩留りの低下が問題となる。以下に説明する第8の実施形態は、上述した問題を解決するためのものである。
図10は、第8の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図10に示すように、第8の実施形態によるハイメサ導波路構造体120においては、n型InP基板41上に、n型AlInAs層121およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層121a、GaInAsP層からなるエッチングストップ層122が積層されている。エッチングストップ層122上には、下部クラッド層123、光導波層44、上部クラッド層45、およびマイクロヒータ25が順次形成されて設けられている。
低熱伝導層121aおよびエッチングストップ層122の部分には、n型InP基板41の表面が露出したエッチング溝122aが形成されている。低熱伝導層121aは、エッチングストップ層122の下層において、エッチング溝122aの内壁面である露出端部から、ハイメサ導波路構造体120の他方の側面下部までの領域に設けられている。すなわち、低熱伝導層121aは、ハイメサ導波路構造体120においてエッチング溝122aが形成された一方の側における露出側端部から、反対側の他方の側面下部までの領域に設けられている。低熱伝導層121aの形成領域のさらに外側に、n型AlInAs層121が設けられている。n型AlInAs層121とエッチングストップ層122とによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板41にハイメサ導波路構造体120が保持されている。その他の構成は、第3および第5の実施形態と同様である。
次に、第8の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法について説明する。第8の実施形態においては、第2の実施形態と同様にして、上層にn型InPバッファ層(図示せず)が形成されたn型InP基板41上に、n型AlInAs層121、エッチングストップ層122、下部クラッド層123となるn型InP層、光導波層44となるGaInAsP層、および上部クラッド層45となるp型InP層を順次形成する。エッチングストップ層122は、その上層に形成される半導体層の材料に対してエッチング選択性がある材料から構成することが望ましいことから、この第8の実施形態においては、たとえばGaInAsP層である。その後、p型InP層の上面に所定形状にパターニングされたSiNx膜からなるエッチングマスクを形成して、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチング法によって異方性エッチングを行う。この場合、プラズマモニタによってGaの信号をモニタリングすることによって、上層に設けられるn型InP層とのポジション(エッチング深さ)を確認できる。これにより、エッチングの停止の精度を向上させることができ、ハイメサ導波路構造体120の製造を制御性良く行うことができる。
なお、ハイメサ導波路構造体120のエッチングを、ウェットエッチング法によって行う場合、InP層に対してエッチング選択性を有するエッチング材料を用いることによって、エッチングを選択的に停止できる。具体的に、上層の下部クラッド層123を構成するInP層と、エッチングストップ層122を構成するGaInAsP層とのウェットエッチング法においては、塩酸系のエッチング液を用いるのが望ましい。
その後、第5の実施形態と同様にして、たとえばドライエッチング法によって、n型InP基板41の表面が露出するまで、エッチングストップ層122およびn型AlInAs層121の部分をエッチング除去することにより、エッチング溝122aを形成する。その後、n型AlInAs層121に対して、エッチング溝122aの内壁面において露出した端部から酸化を行う。n型AlInAs層121の酸化は、ハイメサ導波路構造体120のエッチング溝122aとは反対側の側面の下方の位置まで酸化が進行するまで実行する。これにより、ハイメサ導波路構造体120の下部において、n型AlInAs層121が均一に酸化されて、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体120の他方の側面下部までの領域に、均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層121aが形成される。その他の製造方法については、第2および第5の実施形態と同様である。
この第8の実施形態によれば、第1〜第7の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、ハイメサ導波路構造体120をエッチングにより形成する際に、エッチングを高精度に実行でき、半導体基板上にハイメサ導波路構造体120を形成する場合においても、半導体基板内におけるメサ構造体の高さ面内分布、および半導体基板間のばらつきを改善できるので、半導体光素子の製造歩留りを向上させることができる。
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図11は、第9の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す断面図である。図11に示すように、第9の実施形態によるハイメサ導波路構造体130においては、第1の実施形態とは異なり、低熱伝導領域が、低熱伝導層の代わりに、n型AlInAs層131に隣接した同一面上の領域が空気によって満たされた空洞構造の低熱伝導空洞132により構成されている。この場合、n型AlInAs層131および下部クラッド層133の延伸部分133aによって連結領域が構成され、この連結領域によってn型InP基板41上にハイメサ導波路構造体130が保持される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
この第9の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法においては、まず、第1の実施形態と同様にして、n型InP基板41上に、n型AlInAs層131、下部クラッド層133、光導波層44、および上部クラッド層45を順次積層させる。その後、上部クラッド層45となるp型InP層の上面に、所定形状にパターニングされたSiNx膜からなるエッチングマスクを形成する。続いて、このエッチングマスクを用いたドライエッチング法によって、下部クラッド層133の途中まで異方性エッチングを行った後、さらにドライエッチング法によって、n型AlInAs層131の一端部を露出させる。続いて、フッ酸系のエッチング液を用いたウェットエッチング法により、n型AlInAs層131におけるハイメサ導波路構造体130の下方のn型AlInAs層131を選択的にエッチングする。この低熱伝導化処理としての空洞形成処理によって、低熱伝導空洞132が形成される。なお、n型AlInAs層131の一端部を露出させて、第1の実施形態と同様にして酸化処理を行ってAlInAs酸化層を形成した後、フッ酸系のエッチング液を用いてAlInAs酸化層を選択的にエッチング除去して低熱伝導空洞132を形成することも可能である。また、低熱伝導空洞132の形成は、上層および下層のInP層に対する選択エッチングを行うことから、n型AlInAs層131の代わりに、GaInAs層、GaInAsP層、AlGaInAs層などの、InP層に対してエッチング選択比が大きく、かつn型InP基板41上に形成可能な材料が使用可能である。その他の製造方法については、第1の実施形態と同様である。
第9の実施形態によれば、n型AlInAs層131および下部クラッド層133の延伸部分133aによって連結領域が構成され、この連結領域によってn型InP基板41上にハイメサ導波路構造体130が保持されることにより、第1〜第8の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、マイクロヒータ25および低熱伝導空洞132を設けていることにより、低熱伝導領域を設けることによる第1の実施形態と同様の効果を奏する。
以上説明した第1〜第9の実施形態における連結領域は、ストライプ状やリング状の導波路の下部に低熱伝導領域が設けられたハイメサ導波路構造体における、全領域または部分的な領域に設けられていれば良い。
(第10の実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図12は、第10の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す平面図および断面図であり、図12(a)がハイメサ導波路構造体の上面図、図12(b)が図12(a)のB−B線に沿った断面図、および図12(c)が図12(a)のC−C線に沿った断面図である。
図12(a)〜(c)に示すように、第10の実施形態によるハイメサ導波路構造体200は、ストライプ状に形成されている。ハイメサ導波路構造体200は、第1の実施形態と同様に、上層にn型InPバッファ層(図示せず)が形成されたn型InP基板201上に、n型AlInAs層202およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層202a、下部クラッド層203、光導波層204、上部クラッド層205、およびマイクロヒータ206が順次形成されて設けられている。ハイメサ導波路構造体200のストライプ形状の長手方向(光の導波方向)に平行で、かつストライプの幅方向に沿ったハイメサ導波路構造体200の両側の、下部クラッド層203および低熱伝導層202aの部分に、エッチング溝203a,203bが設けられている。ハイメサ導波路構造体200の上部に設けられたマイクロヒータ206は、n型InP基板201の面方向に沿って、低熱伝導層202aの配置領域と少なくとも一部重なるように、好適には内側になるように配置されている。これにより、マイクロヒータ206により発生した熱を効率良く光導波層204に閉じ込めて、n型InP基板201側への熱の流出を抑制できる。
また、図12(b)に示すように、下部クラッド層203の下部には、ハイメサ導波路構造体200の幅方向に沿った両側に、n型InP基板201の面方向に沿って延伸した、延伸部分203cが設けられている。さらに、図12(c)に示すように、ハイメサ導波路構造体200のストライプ形状の長手方向(光の導波方向)に沿って、酸化されていないn型AlInAs層202が低熱伝導層202aの両側に設けられている。これにより、n型AlInAs層202と下部クラッド層203とによって、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板201にハイメサ導波路構造体200が保持されている。連結領域が設けられていることにより、低熱伝導層202aの上層におけるハイメサ導波路構造体200の接合強度の低下が抑制される。その他の構成は、第1および第5の実施形態と同様である。
この第10の実施形態によるハイメサ導波路構造体の製造方法については、まず、第5の実施形態と同様にして、下部に延伸部分203cを残すように下部クラッド層203の途中までをエッチングする。下部クラッド層203の下部の延伸部分203cにおいて、ストライプ状の開口を有するエッチングマスクを用いたドライエッチング法により、n型InP基板201の表面が露出するまで、下部クラッド層203の下部およびn型AlInAs層202をエッチングする。これにより、エッチング溝203a,203bが形成される。ここで、エッチング溝203a,203bの長手方向に沿った長さは、マイクロヒータ206の長手方向に沿った長さ以上にするのが好ましい。その後、n型AlInAs層202に対して、エッチング溝203a,203bの内壁面において露出した部分から酸化を行う。n型AlInAs層202の酸化は、エッチング溝203a,203bから面方向に進行し、図12(a)中打点部分の領域が酸化される。これにより、ハイメサ導波路構造体200の下部において、n型AlInAs層202が均一に酸化されて、幅方向に沿ってハイメサ導波路構造体200よりも広い幅の領域に、均質なAlInAs酸化層からなる低熱伝導層202aが形成される。
なお、酸化を進行させて酸化処理工程の時間を短縮するためには、2本のエッチング溝203a,203bをハイメサ導波路構造体200の幅方向に沿った両側に形成するのが好ましいが、エッチング溝203a,203bのいずれか一方のみを形成することも可能である。この場合、後の酸化工程においてアニール時間を長時間化させて調整することにより、所望の領域に低熱伝導層202aを形成できる。また、2本のエッチング溝203a,203bをハイメサ導波路構造体200の幅方向に沿った両側に形成した場合、導波路の長手方向全体に亘り、または部分的に、酸化の進行を遅らせて、非酸化領域、すなわちn型AlInAs層202の形成領域を、AlInAs酸化層からなる低熱伝導層202a内に形成することも可能である。これにより、さらに機械的強度を向上させることができる。なお、この場合は熱閉じ込め効果が低減する可能性があるため、低熱伝導層202a内の非酸化領域の大きさについては留意する必要がある。その他の製造方法については、第1および第5の実施形態と同様である。
この第10の実施形態によれば、下部に低熱伝導領域が形成されたハイメサ導波路構造体200におけるストライプ形状の長手方向(光の導波方向)の両端部が、n型AlInAs層202と下部クラッド層203とにより構成される連結領域となっている。これにより、n型InP基板201にハイメサ導波路構造体200を保持させることができるので、第1〜第9の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、ハイメサ導波路構造体200の幅方向に沿った両側に、n型AlInAs層202が露出したエッチング溝203a,203bを形成している。これによって、光導波層204の下部のn型AlInAs層202の酸化が、ハイメサ導波路構造体200の幅方向に沿った両側から進行するため、エッチング溝を一方の側のみに設けた場合に比して、酸化処理の時間を約半分の時間に短縮できる。
(第11の実施形態)
次に、本発明の第11の実施形態による半導体光素子におけるハイメサ導波路構造体について説明する。図13は、第11の実施形態によるハイメサ導波路構造体を示す平面図および断面図であり、図13(a)がハイメサ導波路構造体の上面図、図13(b)が図13(a)のB−B線に沿った断面図である。
図13(a)に示すように、第11の実施形態によるハイメサ導波路構造体250は、リング状に形成されている。ハイメサ導波路構造体250のリング形状に沿った方向(光の導波方向)で、かつリング形状の導波路の幅方向に沿ったハイメサ導波路構造体250の外周側に、部分リング状にエッチング溝253aが設けられている。エッチング溝253aの周囲には、エッチング溝253aの形状に沿って低熱伝導層252aの領域が設けられている。なお、エッチング溝253aをリング状のハイメサ導波路構造体250の外周側にのみ形成しているが、内周側のみに形成しても内外周両側に形成しても良い。
図13(b)に示すように、ハイメサ導波路構造体250は、第1の実施形態と同様に、上層にn型InPバッファ層(図示せず)が形成されたn型InP基板251上に、n型AlInAs層252およびAlInAs酸化層からなる低熱伝導層252a、下部クラッド層253、光導波層254、上部クラッド層255、およびマイクロヒータ256が順次形成されて設けられている。下部クラッド層253の下部には、ハイメサ導波路構造体250の幅方向に沿った両側に、n型InP基板251の面方向に沿って延伸した延伸部分253cが設けられている。エッチング溝253aは、下部クラッド層253の下部の延伸部分253cおよび低熱伝導層252aの部分に形成されている。低熱伝導層252aが形成されていない領域は、n型AlInAs層252が設けられている。
図13(a),(b)に示すように、ハイメサ導波路構造体250の上部に設けられたマイクロヒータ256は、n型InP基板251の面方向に沿って、低熱伝導層252aの配置領域の少なくとも一部が重なるように、好適には、低熱伝導層252aの形成領域の内側になるように、部分リング状に配置されている。これにより、マイクロヒータ256により発生した熱を効率良く光導波層254に閉じ込めることができる。さらに、ハイメサ導波路構造体250の形成領域における低熱伝導層252aの形成領域(図13(a)中、打点部)以外の部分は、ハイメサ導波路構造体250の下部であって、酸化されていないn型AlInAs層252が設けられた非酸化領域である。この非酸化領域を含んだ、n型AlInAs層252と下部クラッド層253とにより、連結領域が構成されている。この連結領域において、下地となるn型InP基板251にハイメサ導波路構造体250が保持されている。ここで、ハイメサ導波路構造体250の下部における非酸化領域は、ハイメサ導波路構造体250の形成において生じる応力などを考慮すると、ハイメサ導波路構造体250のリング状の中心に対してn回回転対称(nは2以上の整数)の位置に設けるのが好ましい。この第11の実施形態においては、非酸化領域は、2回回転対称となる配置位置に設けられている。この非酸化領域を含む連結領域によって、低熱伝導層252aの上層におけるハイメサ導波路構造体250の接合強度の低下が抑制される。その他の構成および製造方法は、第1、第5、および第10の実施形態と同様である。
この第11の実施形態によれば、下部に低熱伝導領域が形成されたリング状のハイメサ導波路構造体250が、光の導波方向に部分的に形成されている。n型AlInAs層252と下部クラッド層253とから構成された連結領域において、下地となるn型InP基板251にハイメサ導波路構造体250が保持されることにより、第1〜第10の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第10および第11の実施形態のように、直線導波路および曲線やリング状の導波路においても対応することができるので、様々な機能を有する単体の素子や集積素子などへの応用も可能になる。
(第12の実施形態)
次に、本発明を適用可能な第12の実施形態による集積型半導体光素子について説明する。図14は、第12の実施形態による集積型半導体光素子である波長可変レーザ素子を示す断面図である。
図14に示すように、第12の実施形態による波長可変レーザ素子である集積型半導体レーザ素子300においては、バックミラーとしてのDBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーである第1サンプルドグレーティング導波路部301、位相調整導波路部302、利得導波路部303、フロントミラーとしてのDBRミラーである第2サンプルドグレーティング導波路部304、および半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)305から構成されている。
集積型半導体レーザ素子300において、パッシブ素子としての、第1サンプルドグレーティング導波路部301、位相調整導波路部302、および第2サンプルドグレーティング導波路部304により、パッシブ領域が構成される。第1サンプルドグレーティング導波路部301、位相調整導波路部302、および第2サンプルドグレーティング導波路部304は、ハイメサ構造を有する。また、アクティブ素子としての利得導波路部303およびSOA305により、アクティブ領域が構成される。利得導波路部303およびSOA305は、埋込構造を有する。
集積型半導体レーザ素子300は、n型InP基板310の主面上に、n型AlInAs層320、下部クラッド層330、コア層340、上部クラッド層350が順次形成されている。上部クラッド層350の上面には、アクティブ領域に選択的に、InGaAsコンタクト層(図示せず)を介してp側電極361が設けられているとともに、パッシブ領域に選択的にマイクロヒータ362が設けられている。n型InP基板310の裏面には、n側電極370が設けられている。n型InP基板310、n型AlInAs層320、下部クラッド層330、コア層340、および上部クラッド層350の積層体におけるレーザ光の出射端面には、無反射膜380が設けられている。ここで、n型AlInAs層320の膜厚は、第1の実施形態と同様にして決定され、あらかじめ酸化実験により得られた最適膜厚に対して、0.5倍以上1.5倍未満、好適には1.3倍以下の膜厚に設定される。この第12の実施形態においてn型AlInAs層320の膜厚はたとえば100nmである。
パッシブ領域における位相調整導波路部302は、n型InP基板310の主面上に、低熱伝導層321、下部クラッド層330、導波路コア層343、上部クラッド層350、およびマイクロヒータ362が順次形成されている。n型InP基板310は、裏面にn側電極370が設けられている。低熱伝導層321は、酸化されたn型AlInAs層からなる。低熱伝導層321は、位相調整導波路部302における少なくとも一部または全体の下層に設けられている。下部クラッド層330はn型半導体層としてのn型InP層からなり、上部クラッド層350はp型半導体層としてのp型InP層からなる。導波路コア層343は、バンドギャップ波長がたとえば1.3μmに調整されたGaInAsP層からなる。
パッシブ領域の第1サンプルドグレーティング導波路部301および第2サンプルドグレーティング導波路部304は、n型InP基板310の主面上に、低熱伝導層321、下部クラッド層330、グレーティング層342、上部クラッド層350、およびマイクロヒータ362が順次形成されている。裏面にn側電極370が設けられたn型InP基板310は、位相調整導波路部302と共有されている。低熱伝導層321は、酸化されたn型AlInAs層320からなる。低熱伝導層321は、第1サンプルドグレーティング導波路部301および第2サンプルドグレーティング導波路部304における少なくとも一部または全体の下層に設けられている。下部クラッド層330は、n型半導体層としてのn型InP層からなる。上部クラッド層350は、p型半導体層としてのp型InP層からなる。グレーティング層342は、短周期のグレーティングが形成されたグレーティング領域が所定の周期で配置されたGaInAsP層からなる。
アクティブ領域における利得導波路部303およびSOA305は、n型InP基板310の主面上に、n型AlInAs層320、下部クラッド層330、活性層341、上部クラッド層350、およびInGaAsコンタクト層(図示せず)を介したp側電極361が、順次形成されて構成されている。n型InP基板310、下部クラッド層330、および上部クラッド層350は、第1サンプルドグレーティング導波路部301、位相調整導波路部302、および第2サンプルドグレーティング導波路部304と共有されている。n型AlInAs層320は低熱伝導層321の酸化されていない非酸化領域である。活性層341は、多重量子井戸(MQW)構造を有するGaInAsP層からなる。
また、酸化されていないn型AlInAs層320が、集積型半導体レーザ素子300における光の導波方向の長手方向に沿って、低熱伝導層321の間に設けられている。これにより、n型AlInAs層320と下部クラッド層330とによって、連結領域が構成される。この連結領域において、下地となるn型InP基板310にn型AlInAs層320より上層に設けられたハイメサ導波路構造体が保持される。これにより、低熱伝導層321の上層におけるハイメサ導波路構造体の接合強度の低下が抑制される。
この第12の実施形態によれば、n型AlInAs層320と下部クラッド層330とによって構成された連結領域によって、n型InP基板310にn型AlInAs層320より上層に設けられたハイメサ導波路構造体が保持されていることにより、第1〜第11の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、集積型半導体レーザ素子300においては、導波路方向に沿ったマイクロヒータ362とn型InP基板310との間に、n型AlInAs層320が酸化された低熱伝導層321が設けられていることにより、マイクロヒータ362によって発する熱を効率良く閉じ込めることができる。さらに、第12の実施形態による集積型半導体レーザ素子300におけるパッシブ領域において、第7の実施形態による複数層の低熱伝導層の構成を適用することも可能である。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。たとえば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。
また、上述した実施形態においては、n型AlInAs層42を単一の組成のAlInAsから構成しているが、必ずしも単一の組成でなくても良い。具体的には、Al1-x-yGaxInyAs1-zPz層とAl1-p-qGapInqAs1-rPr層(0<x+y<1、0<p+q<1、x≠p、y≠q、z≠r)とを交互に積層させた、いわゆる歪み補償の構造にしても良い。
また、上述した実施形態においては、低熱伝導層321を、1層のn型AlInAs層320を酸化したAlInAs酸化層から構成しているが、必ずしも1層に限定されるものではない。具体的に、被酸化層としてのAlInAs層を、InP層などの他の組成の半導体層によって挟んだ状態で複数層設けて低熱伝導層を構成することも可能である。さらに、低熱伝導層321を、空洞から構成することも可能であり、この場合においても、上述と同様の効果を得ることができる。