以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造装置は、所定方向に沿ってこの順に並ぶ第1〜第N(Nは3以上の自然数)のステージと、第1〜第Nのステージにわたって延びるようにこれらの上方に配置された搬送モジュールと、制御部とを備える。搬送モジュールは、金型によって金属板が所定形状に沿って打ち抜かれた一つの打抜部材からなる鉄心部材又は複数の打抜部材が互いに接合されたブロック体からなる鉄心部材を所定方向に搬送するように構成されている。第1のステージは、搬送モジュールによる鉄心部材の搬送方向の最上流側に位置し且つ鉄心部材が仮積層された積層体が載置される載置ステージである。第M(Mは2〜N−1のいずれかの自然数)のステージは、鉄心部材に接着剤を供給可能に構成された供給ステージである。第Nのステージは、搬送方向の最下流側に位置し且つ接着剤が供給された鉄心部材が積層される本積層ステージである。搬送モジュールは、鉄心部材を保持可能に構成された第1〜第N−1の保持体と、第1〜第N−1の保持体のいずれもが取り付けられた搬送体と、搬送体を水平方向と上下方向とにそれぞれ移動させる駆動機構とを有する。制御部は、搬送モジュールを制御して、第n(nは1〜N−1のいずれかの自然数)の保持体によって一の鉄心部材を保持させつつ、互いに隣り合う第nのステージと第n+1のステージとの間を第nの保持体が往復移動するように搬送体を移動させることにより、載置ステージ上に載置されている積層体の最上層をなす鉄心部材を第1〜第Nのステージに対して一つずつこの順に載置させる第1の処理を実行する。
本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造装置では、金型において積層体を形成した後に、各鉄心部材の接着及び積層とが金型外において行われる。そのため、接着剤を供給する機構を、金型内に設ける必要がない。従って、金型を小型化することができると共に、金型において鉄心部材の形成処理を高速に行いつつ、全体としてのスループットを向上させることができる。また、接着剤を供給する機構は一般に金型よりも安価であるため、複数の金型を用いて全体としてのスループットを向上させようとする場合と比較して、低コスト化が図られる。以上より、本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造装置によれば、低コストで且つ効率的に積層鉄心を製造することが可能となる。
本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造装置では、各ステージの上方を搬送体が往復移動しつつ、各保持体において一の鉄心部材の保持及び解放が繰り返されることにより、一の鉄心部材が各ステージを順次移動する。そのため、鉄心部材が下流側のステージに素早く搬送される。従って、積層鉄心をより効率的に製造することが可能となる。また、隣り合うステージの間にそれぞれ鉄心部材の搬送機構を設ける必要がないので、鉄心部材を移動させるのに要する機構の数が少なくて済む。従って、製造装置自体も低コストで製造することが可能となる。
本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造装置では、隣り合う鉄心部材同士が接着剤で接着されることにより積層鉄心が得られる。そのため、鉄心部材同士がカシメ、溶接等で締結されている場合と比較して、磁気特性の低下が生じ難い。従って、このような積層鉄心を用いてモータを製造することにより、モータ特性の向上を図ることが可能となる。
[2]上記第1項に記載の装置は、所定方向に沿ってこの順に並ぶ第1〜第N(Nは4以上の自然数)のステージを備え、第L(Lは2〜N−2のいずれかの自然数)のステージは、鉄心部材の厚さを測定可能に構成された測定ステージであり、第M(Mは3〜N−1のいずれかで且つL<Mを満たす自然数)のステージは、鉄心部材に接着剤を供給可能に構成された供給ステージであり、搬送モジュールは、測定ステージと本積層ステージとの間において鉄心部材を回転させる回転機構とをさらに有し、制御部は、測定ステージにおいて一の鉄心部材の厚さが測定された後で且つ当該一の鉄心部材が本積層ステージにおいて他の鉄心部材に対して積層される前に、測定ステージによる鉄心部材の厚さの測定結果に基づいて当該一の鉄心部材の転積の要否を判断する第2の処理と、第2の処理における判断結果に基づいて回転機構を制御して、転積を要する鉄心部材を所定角度回転させる第3の処理とをさらに実行してもよい。この場合、一つずつの鉄心部材において転積の要否が判断される。そのため、転積の自由度が高まるので、最終的な積層鉄心の寸法精度を向上させることが可能となる。
[3]上記第1項に記載の装置は、所定方向に沿ってこの順に並ぶ第1〜第N(Nは4以上の自然数)のステージを備え、第Mのステージは、鉄心部材に接着剤を供給可能に構成された供給ステージであり、第K(Kは3〜N−1のいずれかで且つM<Kを満たす自然数)のステージは、鉄心部材のうち供給ステージによる接着剤の供給面を検査可能に構成された検査ステージであり、制御部は、検査ステージにおける検査に基づいて、鉄心部材に対する接着剤の供給状態の適否を判断する第4の処理と、第4の処理における判断結果に基づいて、接着剤の供給状態が適切でないと判断された鉄心部材を本積層ステージに至る前に除外させる第5の処理とをさらに実行してもよい。ところで、鉄心部材に対して接着剤が供給過多である場合には、複数の鉄心部材が本積層ステージにおいて積層されたときに、鉄心部材の間から接着剤がはみ出てしまい得る。鉄心部材に対して接着剤が供給過小である場合には、鉄心部材同士の接合力を十分得られず、積層鉄心が完成後に分離してしまい得る。しかしながら、第3項に記載の装置によれば、検査ステージにおいて、例えば、接着剤の供給量が過剰であったり過小であったりする鉄心部材を検出できる。そのため、接着剤の供給不良に起因する積層鉄心の不良の発生を抑制することが可能となる。
[4]上記第1項に記載の装置は、所定方向に沿ってこの順に並ぶ第1〜第N(Nは5以上の自然数)のステージを備え、第L(Lは2〜N−3のいずれかの自然数)のステージは、鉄心部材の厚さを測定可能に構成された測定ステージであり、第M(Mは3〜N−2のいずれかで且つL<Mを満たす自然数)のステージは、鉄心部材に接着剤を供給可能に構成された供給ステージであり、第K(Kは4〜N−1のいずれかで且つM<Kを満たす自然数)のステージは、鉄心部材のうち供給ステージによる接着剤の供給面を検査可能に構成された検査ステージであり、搬送モジュールは、測定ステージと本積層ステージとの間において鉄心部材を回転させる回転機構とをさらに有し、制御部は、測定ステージにおいて一の鉄心部材の厚さが測定された後で且つ当該一の鉄心部材が本積層ステージにおいて他の鉄心部材に対して積層される前に、測定ステージによる鉄心部材の厚さの測定結果に基づいて当該一の鉄心部材の転積の要否を判断する第2の処理と、第2の処理における判断結果に基づいて回転機構を制御して、転積を要する鉄心部材を所定角度回転させる第3の処理と、検査ステージにおける検査に基づいて、鉄心部材に対する接着剤の供給状態の適否を判断する第4の処理と、第4の処理における判断結果に基づいて、接着剤の供給状態が適切でないと判断された鉄心部材を本積層ステージに至る前に除外させる第5の処理とをさらに実行する。この場合、上記第2項及び上記第3項に記載の装置と同様の効果を奏する。
[5]上記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の装置は、本積層ステージ及び搬送体の上方に位置し且つ本積層ステージとは反対側から搬送体を加圧する加圧モジュールをさらに備え、制御部は、第N−1の保持体によって保持されている一の鉄心部材が本積層ステージ上に既に載置されている他の鉄心部材に対して積層される際に、加圧モジュールを制御して、搬送体及び第N−1の保持体を介して一の鉄心部材及び他の鉄心部材を加圧する第6の処理をさらに実行してもよい。ところで、第N−1の保持体が保持する一の鉄心部材を本積層ステージ上の他の鉄心部材に積層すると、その反力が第N−1の保持体に作用し、第N−1の保持体が設けられている搬送体が変位してしまう懸念がある。このとき、第N−1の保持体と他の鉄心部材との間で挟持される一の鉄心部材に作用する力が減少してしまいうる。しかしながら、第4項の装置によれば、加圧モジュールが本積層ステージとは反対側から搬送体を加圧している。そのため、搬送体に生ずる上記反力が加圧モジュールによって相殺されるので、搬送体の変位が抑制される。従って、第N−1の保持体と他の鉄心部材との間で挟持される一の鉄心部材に十分大きな力を作用させることができる。その結果、一の鉄心部材を他の鉄心部材に対して接着剤でしっかりと接合することが可能となる。
[6]上記第5項に記載の装置において、搬送モジュールは、搬送体のうち第N−1の保持体よりも搬送方向下流側に設けられた加圧補助体をさらに有し、制御部は、第1〜第N−1の保持体がそれぞれ第1〜第N−1のステージ上に位置している際に、加圧モジュールを制御して、搬送体及び加圧補助体を介して本積層ステージ上に積層されている複数の鉄心部材を加圧する第7の処理をさらに実行してもよい。この場合、第N−1の保持体が本積層ステージ上から他のステージ上に移動した場合であっても、加圧補助体が本積層ステージとは反対側から搬送体を加圧する。そのため、一の鉄心部材を他の鉄心部材に対して接着剤でよりしっかりと接合することが可能となる。
[7]上記第1項〜第6項のいずれか一項に記載の装置は、係合片を含む係合モジュールをさらに備え、積層体を構成する各鉄心部材の周縁には、係合片と係合可能な係合部がそれぞれ設けられており、係合部は、積層体の積層方向において隣り合う鉄心部材同士の間で重なり合っておらず、制御部は、載置ステージ上に載置されている積層体の最上層をなす鉄心部材を第1の保持体が保持する際に係合モジュールを制御して、積層体の最上層をなす鉄心部材又はその直下の鉄心部材の係合部に対して係合片を係合させる第8の処理をさらに実行してもよい。鉄心部材に設けられた係合部が凹状の切欠きである場合には、積層体の最上層をなす鉄心部材の切欠きと係合片とが係合することにより、最上層以外の鉄心部材の上方への移動を係合片が規制する。また、鉄心部材に設けられた係合部が突起である場合には、積層体の最上層の直下をなす鉄心部材の突起と係合片とが係合することにより、最上層以外の鉄心部材の上方への移動を係合片が規制する。そのため、最上層の鉄心部材を第1の保持体で保持して上方に持ち上げることにより、最上層の鉄心部材とそれ以外の鉄心部材とを簡単且つ確実に分離することが可能となる。
[8]上記第1項〜第7項のいずれか一項に記載の装置において、載置ステージは、載置された鉄心部材を昇降させる第1の昇降体と、第1の昇降体を上下動させる第1の昇降機構とを含み、本積層ステージは、積層された鉄心部材を昇降させる第2の昇降体と、第2の昇降体を上下動させる第2の昇降機構とを含み、制御部は、第1の昇降機構を制御して第1の昇降体を所定量上昇させた後に、搬送モジュールを制御して第1の昇降体から一の鉄心部材を保持させるか、又は、第1の保持体によって第1の昇降体から一の鉄心部材が保持された後に、第1の昇降機構を制御して、第1の昇降体を所定量上昇させる第9の処理と、第Nの保持体が保持する一の鉄心部材が第2の昇降体に載置された後に、第2の昇降機構を制御して、第2の昇降体を所定量降下させる第10の処理とをさらに実行してもよい。この場合、第1の保持体が第1の昇降体から鉄心部材を保持する位置を一定の高さ位置にすることができると共に、第Nの保持体が鉄心部材を第2の昇降体に対して載置させる位置を一定の高さ位置にすることができる。そのため、搬送モジュールが有する保持体を個別に上下動させる必要がないので、制御を簡略化することが可能となる。
[9]上記第1項〜第8項のいずれか一項に記載の装置において、供給ステージは、接着剤の流路と、流路と連通し且つ流路に沿って並ぶ複数の吐出口とが設けられた供給部材を含み、複数の吐出口の大きさは、流路の下流側に向かうにつれて大きくなるように設定されていてもよい。ところで、供給ステージから供給された接着剤が鉄心部材から零れ落ちることのないよう、接着剤は所定の粘度を有している必要がある。そのため、供給部材に設けられた流路を流れる接着剤の流速は下流側に向かうにつれて低下する傾向にある。そこで、第7項に記載の装置においては、供給部材に設けられた複数の吐出口の大きさを、流路の下流側に向かうにつれて大きくなるように設定している。この場合、流速が低下する傾向にある下流側の吐出口から吐出される接着剤の吐出量と、上流側の吐出口から吐出される接着剤の吐出量とが略均等になりやすい。従って、打抜部材同士を適切且つ強固に接合することが可能となると共に、積層鉄心の平坦性を高めることが可能となる。
[10]上記第1項〜第8項のいずれか一項に記載の装置において、供給ステージは、接着剤の流路と、流路に沿って並ぶ複数の吐出口とが設けられた供給部材を含み、流路の流路面積は、流路の下流側に向かうにつれて小さくなるように設定されていてもよい。この場合、流路の下流側ほど流速が速くなるので、流速が低下する傾向にある下流側の吐出口から吐出される接着剤の吐出量と、上流側の吐出口から吐出される接着剤の吐出量とが略均等になりやすい。従って、打抜部材同士を適切且つ強固に接合することが可能となると共に、積層鉄心の平坦性を高めることが可能となる。
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。固定子積層鉄心1は、円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔1aが設けられている。貫通孔1a内には、回転子が配置可能である。
固定子積層鉄心1は、ヨーク部2(本体部)と、複数のティース部3とを有する。ヨーク部2は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部2の径方向における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。ヨーク部2の外周面には、中心軸Axに沿って延びる複数の凹溝2aが設けられている。凹溝2aは、固定子積層鉄心1の一方の端面(図1の上面)から他方の端面(図1の下面)に至るまで延びている。本実施形態では、3つの凹溝2aが中心軸Ax周りに略120°間隔で、ヨーク部2の外周面に設けられている。
各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部2の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。固定子積層鉄心1においては、12個のティース部3がヨーク部2に一体的に形成されている。各ティース部3は、ヨーク部2の周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部3の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット4が画定されている。
固定子積層鉄心1は、複数の加工板10(鉄心部材;打抜部材)が積み重ねられた積層体である。すなわち、加工板10は、固定子積層鉄心1と対応する形状を呈している。加工板10の中央部分には、貫通孔11aが設けられている。加工板10は、ヨーク部2に対応するヨーク片部12と、各ティース部3に対応する複数のティース片部13とを有している。ヨーク片部12の外周縁には、凹溝2aに対応する切欠部12aが設けられている。隣り合うティース片部13の間には、スロット4に対応するスロット14(貫通孔)が画定されている。
積層方向(中心軸Axの延在方向)において隣り合う加工板10同士は、接着剤20によって接合されている。例えば、ヨーク片部12の表面には、ヨーク片部12の周方向に沿って略等間隔に並ぶようにスポット状の複数の接着剤20aが配置されている。本実施形態では、各接着剤20aは、各ティース片部13の基端部に対応する位置に配置されている。各ティース片部13の表面には、各ティース片部13にスポット状の接着剤20bが二つずつ配置されている。各ティース片部13における二つの接着剤20bは、ティース片部13の幅方向での中央部において、ティース片部13の延在方向(ヨーク片部12の径方向)に並んでいる。そのため、一つの接着剤20aと、当該接着剤20aに対応するティース片部13に配置されている二つの接着剤20bとは、ヨーク片部12の径方向において一列に並んでいる。これらの3つの接着剤20a,20b,20bの面積は、図1に示されるように中心軸Axから外方に向かうにつれて大きくなっていてもよいし、いずれも略同等であってもよいし、中心軸Axから外方に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
[積層体の構成]
次に、図2〜図4を参照して、積層体30について説明する。積層体30は、固定子積層鉄心1の凹溝2aに仮カシメ部31が嵌合している状態のものである。積層体30は、複数の打抜部材40が積み重ねられてなる。すなわち、打抜部材40は、積層体30と対応する形状を呈している。換言すれば、打抜部材40は、仮カシメ部31に対応する仮カシメ片41が加工板10の切欠部12aに嵌合している状態のものである。ただし、打抜部材40同士は接着剤20によって接合されていない。
仮カシメ片41と加工板10の切欠部12aとの間には、切断線CLが設けられている。各切断線CLは、例えば、電磁鋼板W(後述する)を切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、切り曲げ部分又は打ち抜き部分をプッシュバックして、元の電磁鋼板Wに圧入することにより、形成されてもよい。電磁鋼板Wが切り曲げ加工又は打抜き加工されると、切り曲げ部分又は打ち抜き部分が塑性変形して上型側(後述するパンチ133側)が若干延びるので、当該部分が元の電磁鋼板Wへ圧入されると、当該部分と元の電磁鋼板Wとは、人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合う。
積層方向において隣り合う打抜部材40同士は、仮カシメ片41を介して、仮カシメ片41に設けられた仮カシメ42によって締結されている。仮カシメ部31は、仮カシメ片41が積み重ねられた積層体であるともいえる。具体的には、仮カシメ42は、図3に示されるように、積層体30の最下層以外をなす打抜部材40の仮カシメ片41に形成された屈曲部42aと、積層体30の最下層をなす打抜部材40の仮カシメ片41に形成された貫通孔42bとを有する。屈曲部42aは、仮カシメ片41の表面側に形成された凹部と、仮カシメ片41の裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の仮カシメ片41の屈曲部42aの凹部は、当該一の仮カシメ片41の表面側に隣り合う他の仮カシメ片41の屈曲部42aの凸部と接合される。一の仮カシメ片41の屈曲部42aの凸部は、当該一の仮カシメ片41の裏面側において隣り合う更に他の仮カシメ片41の屈曲部42aの凹部と接合される。貫通孔42bには、積層体30の最下層に隣接する打抜部材40の仮カシメ片41の屈曲部42aの凸部が接合される。貫通孔42bは、積層体30を連続して製造する際、既に製造された積層体30に対して次に製造する積層体30の仮カシメ部31が屈曲部42aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
打抜部材40は、例えば、電磁鋼板Wが加工(例えば、打ち抜き加工、切り曲げ加工等)されることにより得られる。打抜部材40の厚さは、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうるが、例えば、0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。
積層体30は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、複数の打抜部材40を積層して積層体30を得るに際し、打抜部材40同士の角度を相対的にずらすことをいい、打抜部材40を回転させつつ積層することを含む。転積は、主に打抜部材40の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。打抜部材40を得るにあたり、打抜部材40を1枚ごとに転積してもよいし、打抜部材40が所定枚数積層された単位ブロックごとに転積してもよい。転積の角度又は頻度は任意の値に設定してもよい。
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、図5〜図15を参照して、固定子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板W(被加工板)から固定子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130(金型)と、焼鈍炉140と、仮カシメ除去装置150と、積層装置160と、コントローラ170(制御部)とを備える。
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板Wであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。コイル材111を構成する電磁鋼板Wの略全体には、パンチ133(後述する)の摩耗抑制、打抜部材40の打抜性向上等を目的として、オイルが塗布されている。送出装置120は、電磁鋼板Wを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ170からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板Wを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
コイル材111を構成する電磁鋼板Wの長さは、例えば500m〜10000m程度であってもよい。電磁鋼板Wの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板Wの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板Wの幅は、例えば50mm〜500mm程度であってもよい。
打抜装置130は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板Wを順次打抜加工して打抜部材40を形成する機能と、打抜加工によって得られた打抜部材40を順次積層して積層体30を製造する機能とを有する。具体的には、打抜装置130は、図6に示されるように、下型131と、ダイプレート132と、ストリッパ(図示せず)と、上型(図示せず)と、パンチ133とを備える。
下型131は、下型131に載置されたダイプレート132を保持する。下型131には、電磁鋼板Wから打ち抜かれた打抜部材40が排出される排出孔131aが、パンチ133に対応する位置にそれぞれ設けられている。排出孔131a内には、図6及び図7に示されるように、シリンダ131bと、ステージ131cと、プッシャ131dとが配置されている。
図6に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいてパンチ133が上下動して、ダイプレート132に保持されたダイ132a内にパンチ133が挿入されると、電磁鋼板Wから打抜部材40が打ち抜かれる。このとき、シリンダ131bは、パンチ133によって電磁鋼板Wから打ち抜かれた打抜部材40が下方に落下するのを防止するため、打抜部材40を弾性的に支持する。
シリンダ131bは、コントローラ170からの指示信号に基づいて上下方向に移動可能に構成されている。そのため、シリンダ131bは、シリンダ131b上に打抜部材40が積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ131b上において打抜部材40が所定枚数まで積層され、積層体30が形成されると、図7に示されるように、シリンダ131bの表面がステージ131cの表面と同一高さとなる位置にシリンダ131bが移動する。
ステージ131cには、シリンダ131bが通過可能な孔131eが設けられている。プッシャ131dは、コントローラ170からの指示信号に基づいて、ステージ131cの表面上において水平方向に移動可能に構成されている。シリンダ131bの表面がステージ131cの表面と同一高さとなる位置にシリンダ131bが移動した状態で、プッシャ131dは、積層体30をシリンダ131bからステージ131cに払い出す。ステージ131cに払い出された積層体30は、図5に示されるように、打抜装置130と焼鈍炉140との間を延びるように設けられたコンベアCv1に排出される。コンベアCv1は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、積層体30を焼鈍炉140に送り出す。
焼鈍炉140は、積層体30を所定温度(例えば、750℃〜800℃程度)で所定時間(例えば、1時間程度)加熱することにより、打抜部材40に付着しているオイルを蒸発させる(除去する)と共に打抜部材40の内部に残留している歪みを除去する機能を有する。焼鈍炉140から排出された積層体30は、焼鈍炉140と仮カシメ除去装置150との間を延びるように設けられたコンベアCv2に載置される。コンベアCv2は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、積層体30を仮カシメ除去装置150に送り出す。
仮カシメ除去装置150は、コンベアCv2から送られた積層体30から仮カシメ部31を除去する機能を有する。仮カシメ除去装置150で積層体30から仮カシメ部31が除去されると、隣り合う加工板10同士が接合されていない状態で複数の加工板10が積層された仮積層体50(図8及び図9参照)となる。仮カシメ除去装置150から排出された仮積層体50は、仮カシメ除去装置150と積層装置160との間を延びるように設けられたコンベアCv3に載置される。コンベアCv3は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、仮積層体50を積層装置160に送り出す。
積層装置160は、コンベアCv3から送られた仮積層体50から加工板10を一つずつ取り出す機能と、加工板10に接着剤20を供給する機能と、接着剤20が供給された加工板10を他の加工板10に積み重ねる機能とを有する。積層装置160は、図8及び図9に示されるように、ベース200と、載置ステージ300と、測定ステージ400と、供給ステージ500と、検査ステージ600と、本積層ステージ700と、搬送モジュール800と、加圧モジュール900とを有する。
ベース200は、載置ステージ300、測定ステージ400、供給ステージ500、検査ステージ600及び本積層ステージ700を搭載して保持する機能を有する。本実施形態において、載置ステージ300、測定ステージ400、供給ステージ500、検査ステージ600及び本積層ステージ700は、所定の一方向(図8及び図9のX軸方向)に沿ってこの順に並んでいる。ベース200は、例えば、矩形状を呈する板状体であり、当該一方向に延びている。ベース200は、図示しない床面等に対して固定されている。
載置ステージ300は、固定板301と、一対の可動板302,303と、駆動機構304(第1の昇降機構)とを含む。固定板301は、ベース200に対して固定されている。具体的には、ベース200のうち固定板301と重なる領域には切欠きが設けられており、固定板301の周縁近傍がベース200の当該切欠きの周縁近傍に対して固定されている。固定板301は、例えば矩形状を呈する板状体である。固定板301の四隅にはそれぞれ貫通孔305が設けられている。
一対の可動板302,303は、上下方向(図8及び図9のZ軸方向)において対向している。可動板302は固定板301の下方に配置されており、可動板303(第1の昇降体)は固定板301の上方に配置されている。可動板302,303は、例えば矩形状を呈する板状体である。可動板302,303の四隅にはそれぞれ、可動板302と可動板303とを連結する連結部材306が取り付けられている。各連結部材306はそれぞれ、対応する貫通孔305内に挿通されている。
駆動機構304は、可動板302と接続されている。駆動機構304は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、可動板302,303を上下動させる。換言すれば、駆動機構304は、上下方向において、可動板302,303を固定板301に対して近接及び離間させるように動作させる。駆動機構304は、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等であってもよい。
測定ステージ400は、図8〜図10に示されるように、載置板401と、測定ユニット402とを含む。載置板401は、一つの加工板10を支持可能に構成されている。載置板401は、例えば矩形状を呈する板状体である。載置板401の四隅にはそれぞれ、載置板401とベース200とを連結する連結部材403が取り付けられている。
載置板401の上面には、図10に示されるように、スペーサ404が設けられている。スペーサ404は、例えば、円環状を呈する一つの部材で構成されていてもよいし、全体として円形状を呈するように並ぶ複数の部材で構成されていてもよい。スペーサ404の内側には、加工板10を配置可能である。スペーサ404の高さは、加工板10の厚さよりも高い。載置板401には、少なくとも一つの貫通孔405が設けられている。本実施形態では、載置板401には4つの貫通孔405が設けられている。これらの4つの貫通孔405は、加工板10のヨーク片部12に対応するように、円形状を呈するように並んでいる。
測定ユニット402は、載置板401の下面側に設けられている。測定ユニット402は、少なくとも一つのセンサ406を含む。本実施形態では、測定ユニット402は4つのセンサ406を含む。各センサ406はそれぞれ、その先端部が載置板401の上面から突出するように、対応する貫通孔405内に挿通されている。センサ406は、載置板401に載置されている一つの加工板10の厚さを測定する機能を有する。センサ406は、加工板10のヨーク片部12の厚さを2箇所以上測定してもよい。センサ406によって測定された測定データは、コントローラ170に送信される。センサ406は、接触式(例えば、電子マイクロメータ、リニアゲージ)であってもよいし、非接触式(例えば、レーザセンサ、撮像カメラ)であってもよい。センサ406が撮像カメラである場合には、撮像カメラで撮像された加工板10の撮像画像に基づいてコントローラ170が画像処理を実行し、加工板10の厚さが計算される。
供給ステージ500は、電磁鋼板Wに対して接着剤を供給する機能を有する。図8、図9及び図11に示されるように、載置板501と、供給プレート510(供給部材)と、送液ユニット520と、駆動機構530とを含む。
載置板501は、一つの加工板10を支持可能に構成されている。載置板501は、例えば矩形状を呈する板状体である。載置板501の中央部には、図8に示されるように、円形状を呈する貫通孔502が設けられている。載置板501は、貫通孔502の周縁部において加工板10の外周縁を支持する。載置板501の四隅にはそれぞれ、載置板501とベース200とを連結する連結部材503が取り付けられている。
供給プレート510は、矩形状を呈する板状体である。供給プレート510の内部には、図11及び図12に示されるように、液溜まり部511と、複数の分岐路512と、入口513と、複数の吐出口514が形成されている。
液溜まり部511は、接着剤20が一時的に貯留される空間である。液溜まり部511は、供給プレート510内の中心部に位置しており、上方から見て円形状を呈する。複数の分岐路512は、上方から見て液溜まり部511の中心部から放射状に拡がるように、液溜まり部511の外周縁から外方に向けて延びている。本実施形態では、加工板10のティース片部13に対応して、12つの分岐路512が供給プレート510に設けられている。加工板10が供給プレート510の上面に載置された状態で、各分岐路512は、加工板10の各ティース片部13にそれぞれ重なり合う。各分岐路512の先端部は、加工板10のヨーク片部12にそれぞれ重なり合う。液溜まり部511と複数の分岐路512とは、入口513と複数の吐出口514との間における接着剤20の流路Fcとして機能する。
入口513は、液溜まり部511から供給プレート510の下面に向けて鉛直方向に沿って延びている。入口513は、送液ユニット520に接続されている。複数の吐出口514は、上方から見て液溜まり部511の中心部から放射状に並んでいる。具体的には、複数の吐出口514は、各分岐路512にそれぞれ接続されており、対応する分岐路512の延在方向において一列に並んでいる。そのため、入口513、液溜まり部511、各分岐路512及び各吐出口514は、それぞれ連通している。送液ユニット520から送られてきた接着剤20は、入口513から液溜まり部511及び分岐路512を経て各吐出口514に到達した後、各吐出口514から吐出される。本実施形態では、一つの分岐路512に対して3つの吐出口514が接続されている。
流路Fcの上流側(入口513側)から下流側(吐出口514側)に向けて並ぶ複数の吐出口514の開口面積は、流路Fcの上流側から下流側に向かうにつれて大きくなっている。複数の吐出口514のうち最も下流側に位置する吐出口514aは、加工板10が供給プレート510の上面に載置された状態で、加工板10のヨーク片部12と重なり合う。複数の吐出口514のうち吐出口514aよりも上流側に位置する吐出口514bは、加工板10が供給プレート510の上面に載置された状態で、加工板10のうち対応するティース片部13と重なり合う。そのため、吐出口514から吐出された接着剤は、供給プレート510に載置された状態の加工板10の下面に対して、スポット状に供給される。加工板10に下面に対して供給される接着剤20の量は、複数の加工板10が積層されたときの圧力で加工板10同士の間からはみ出ない程度であってもよい。
送液ユニット520は、接着剤20を供給プレート510に送液する機能を有する。送液ユニット520は、図11に示されるように、シリンダ521と、ピストン522と、ネジ軸523と、駆動機構524と、液源525とを含む。
シリンダ521は、接着剤20を一時的に貯留する有底の容器である。シリンダ521の底壁には、吐出口521aが設けられている。吐出口521aは、配管526によって供給プレート510の入口513と接続されている。配管526上には、バルブ527が設けられている。バルブ527は、コントローラ170からの指示信号に基づいて開閉可能である。
ピストン522は、シリンダ521内に挿通されており、シリンダ521内をスライド可能である。ピストン522の外形は、シリンダ521の内径に略一致している。そのため、ピストン522がシリンダ521をスライドしても、ピストン522側への接着剤20の漏出が防がれている。ピストン522の内部には、ピストン522の延在方向に沿って延びるように雌ネジ孔522aが設けられている。雌ネジ孔522aは、ピストン522のうちシリンダ521側の端部(先端部)近傍から反対側の端部(基端部)の端面にかけて延びている。
ネジ軸523は、雌ネジ孔522aと螺合している。駆動機構524は、ネジ軸523と接続されており、コントローラ170からの指示信号に基づいてネジ軸523を回転させる。駆動機構524は、例えば回転モータであってもよい。駆動機構524によってネジ軸523が回転すると、ネジ軸523と螺合するピストン522がシリンダ521に対して進退する。
液源525は、接着剤20の供給源として機能する。接着剤20としては、例えば、アクリル系又はエポキシ系の接着剤が用いられてもよい。接着剤20は、1液型の接着剤であってもよいし、2液混合型の接着剤であってもよい。液源525は、配管528を介してシリンダ521内と接続されている。配管528上には、バルブ529が設けられている。バルブ529は、コントローラ170からの指示信号に基づいて開閉可能である。
駆動機構530は、図8及び図9に示されるように、ベース200上に設けられている。駆動機構530のシリンダは、供給プレート510の下面に接続されている。駆動機構530がコントローラ170からの指示信号に基づいて動作すると、駆動機構530のシリンダが伸縮して、供給プレート510が上昇位置(供給位置)と降下位置(退避位置)との間で上下動する。そのため、供給プレート510は、駆動機構530によって、供給プレート510の上方に位置する載置板501に対して近接及び離間するように変位する。
検査ステージ600は、図8及び図9に示されるように、載置板601と、撮像装置602とを含む。載置板601は、一つの加工板10を支持可能に構成されている。載置板601は、例えば矩形状を呈する板状体である。載置板601の中央部には、図8に示されるように、円形状を呈する貫通孔603が設けられている。載置板601は、貫通孔603の周縁部において加工板10の外周縁を支持する。載置板601の四隅にはそれぞれ、載置板601とベース200とを連結する連結部材604が取り付けられている。
撮像装置602は、コントローラ170からの指示信号に基づいて、載置板601に載置された状態の加工板10の下面を、貫通孔603を通じて撮像するように構成されている。撮像装置602によって撮像された撮像画像は、コントローラ170に送信される。コントローラ170は、当該撮像画像を画像処理して、加工板10の下面に供給された接着剤20が設計に沿った位置にあるか又は設計に沿った寸法となっているか否かを判断する。この場合、接着剤20に蛍光物質(例えば、ブラックライトに反応して発光する物質など)を含有させておき、加工板10に供給された接着剤20の視認性を高めてもよい。
本積層ステージ700は、固定板701と、可動板702(第2の昇降体)と、駆動機構703(第2の昇降機構)と、センサ704,705とを含む。固定板701は、ベース200に対して固定されている。具体的には、ベース200のうち固定板701と重なる領域には切欠きが設けられており、固定板701の周縁近傍がベース200の当該切欠きの周縁近傍に対して固定されている。固定板701は、例えば矩形状を呈する板状体である。固定板701の中央部には図示しない貫通孔が設けられている。
固定板701の上面には、上下方向に延びる複数の案内部材706が設けられている。本実施形態では、固定板701の上面には、3つの案内部材706が設けられている。これらの案内部材706は、固定板701の中心部周りにおいて、全体として円形を呈するように並んでいる。これらの案内部材706の内周面は、全体として、加工板10の周縁に対応する形状を呈していてもよい。この場合、案内部材706の内周面によって加工板10の周縁を保持することで、案内部材706で加工板10の位置決めを行うことができる。また、案内部材706の内周面には、上下方向に延びると共に加工板10の切欠部12aに対応する形状を有する突条が設けられていてもよい。この場合、加工板10の切欠部12aを当該突条に係合させつつ案内部材706の内周面によって加工板10の周縁を保持することで、加工板10をより精度よく位置決めすることができる。
可動板702は、固定板701の上方に配置されている。可動板702は、例えば矩形状を呈する板状体である。可動板702上には、少なくとも一つの加工板10が載置可能に構成されている。可動板702の中央部には、可動板702と駆動機構703とを連結する連結部材707が取り付けられている。連結部材707は、固定板701の貫通孔内に挿通されている。
可動板702には、複数の貫通孔708が設けられている。本実施形態では案内部材706の数に対応して、可動板702には3つの貫通孔708が設けられている。これらの貫通孔708は、可動板702の中心部周りにおいて、全体として円形を呈するように並んでいる。各貫通孔708は、案内部材706に対応する形状を呈している。各貫通孔708内にはそれぞれ、対応する案内部材706が挿通されている。
駆動機構703は、可動板702に接続されている。駆動機構703は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、可動板702を案内部材706に沿って上下動させる。換言すれば、駆動機構703は、上下方向において、可動板702を固定板701に対して近接及び離間させるように動作させる。駆動機構703としては、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等が用いられてもよい。
センサ704は、可動板702上における荷重を計測可能に構成された重量センサである。センサ704は、例えば、駆動機構703と連結部材707との間に配置されていてもよい。センサ704は、例えば、ロードセルであってもよい。センサ704によって計測された荷重のデータは、図9に示されるように、コントローラ170に送信される。
センサ705は、センサ705から可動板702までの距離を計測可能に構成された距離センサである。センサ705は、上下方向から見て可動板702と重なり合うように、固定板701上に配置されている。センサ705は、例えば、レーザ変位計であってもよいし、超音波変位計であってもよい。センサ705によって計測された距離のデータは、図9に示されるように、コントローラ170に送信される。
搬送モジュール800は、図8及び図9に示されるように、駆動部810と、駆動部820と、保持体831〜834と、加圧補助体840と、回転機構850と、吸気部860とを含む。
駆動部810は、一対の搬送レール811と、一対の搬送プレート812,813(搬送体)と、リンク部材814,815と、駆動機構816とを含む。一対の搬送レール811は、図示しない固定壁に固定されている。一対の搬送レール811は、各ステージ300〜700の上方において、所定の一方向(図8及び図9のX軸方向)に沿って延びている。
一対の搬送プレート812,813は、上下方向(図8及び図9のZ軸方向)において対向している。一対の搬送プレート812,813は、搬送レール811の下方に配置されている。搬送プレート812は、搬送プレート813の上方に配置されている。搬送プレート812,813は、例えば矩形状を呈する板状体である。
搬送プレート812の上面には、複数のスライダ817が取り付けられている。搬送プレート812の一方の側縁側において、各スライダ817は搬送レール811の延在方向に沿って一列に並んでいる。搬送プレート812の他方の側縁側において、各スライダ817は搬送レール811の延在方向に沿って一列に並んでいる。各スライダ817は、搬送レール811と嵌合している。そのため、搬送プレート812は、搬送レール811の延在方向に沿ってスライド可能である。
搬送プレート813は、搬送プレート812とは上下方向において離間している。搬送プレート813は、載置ステージ300側において、上下方向に延びる連結シャフト818によって搬送プレート812と連結されている。搬送プレート813は、連結シャフト818に対してスライド可能に取り付けられている。搬送プレート813のうち本積層ステージ700側の端縁部には、一対の案内シャフト813aが設けられている。一対の案内シャフト813aは、搬送プレート813の上面から上方に向けて延びている。一対の案内シャフト813aはそれぞれ、搬送プレート812のうち本積層ステージ700側の端縁部に設けられた一対の貫通孔812a(図13参照)内に挿通されている。そのため、案内シャフト813aは貫通孔812a内においてスライド可能である。なお、搬送プレート812,813の間には、図示しない弾性部材(例えば引張りコイルばね)によって、互いに近づく方向に付勢力が付与されている。
リンク部材814,815はそれぞれ、一方向に延びる柱状部材である。リンク部材814の一端には、連結シャフト818が挿通されている。そのため、リンク部材814は、連結シャフト818周りに揺動可能である。リンク部材814の他端と、リンク部材815の一端とは、連結シャフト819によって連結されている。そのため、リンク部材814,815は、連結シャフト819周りに回転可能である。
駆動機構816は、リンク部材815の他端に接続されている。駆動機構816は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、リンク部材815を回転させる。駆動機構816は、例えば、回転モータであってもよい。
駆動機構816の回転に伴ってリンク部材815が回転すると、連結シャフト819を介してリンク部材814が揺動しつつX軸方向に進退する。ここで、リンク部材814が連結シャフト818を介して搬送プレート812,813と連結されており、搬送プレート812がスライダ817を介して搬送レール811に接続されているので、搬送プレート812,813が搬送レール811に沿って進退する。具体的には、搬送プレート812,813は、保持体831〜834及び加圧補助体840がそれぞれステージ300〜700に一対一で対応する基本位置(図16及び図17参照)と、保持体831〜834がそれぞれステージ400〜700に一対一で対応する一方で加圧補助体840がいずれのステージにも対応していない進行位置(図9参照)との間で水平移動する。すなわち、駆動部810は、全体として、スライダクランク機構を構成している。
駆動部820は、図8、図9及び図13に示されるように、全体として一対の搬送プレート812,813の間に配置されている。駆動部820は、本体821と、傾斜プレート822と、支持プレート823と、駆動機構824とを含む。
本体821は、搬送プレート812,813の長手方向において延びる柱状部材である。本体821の両側面にはそれぞれ、複数のローラ825が本体821に対して回転可能に取り付けられている。
傾斜プレート822は、図9及び図13に示されるように、搬送プレート812の下面に対して固定されている。傾斜プレート822の下面は、搬送プレート813の上面と対向しており、ローラ825の周面と当接している。傾斜プレート822の下面は、所定の一方向に向かうほど(本実施形態では駆動機構824に近づくほど)、当該下面と搬送プレート813の上面との離間距離が大きくなるように傾斜する傾斜面である。
支持プレート823は、搬送プレート813の上面に対して固定されており、本体821の下方に位置している。支持プレート823の上面は、ローラ825の周面と当接している。従って、ローラ825は、傾斜プレート822の下面と支持プレート823の上面とで挟持されている。
駆動機構824は、本体821のうち本積層ステージ700側の端部と接続されている。駆動機構824は、搬送プレート813に対して固定されているが、搬送プレート812に対しては接続されていない。駆動機構824は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、本体821をその延在方向に沿って進退させる。駆動機構824は、例えば、アクチュエータ、エアシリンダ等であってもよい。
駆動機構824が、本体821を例えば載置ステージ300側に向けて押し出すと、ローラ825が傾斜プレート822の下面及び支持プレート823の上面を転がり、これらの面の離間距離が狭い側に向けて移動する。そのため、ローラ825は、傾斜プレート822からの反力を受けて、支持プレート823を下方に押し出そうとする。ここで、搬送プレート813が連結シャフト818に対してスライド可能に取り付けられており、案内シャフト813aが貫通孔812a内においてスライド可能であるので、搬送プレート813は、図示しない弾性部材の付勢力に抗して、連結シャフト818及び案内シャフト813aの延在方向に沿って下方に移動する。こうして、搬送プレート813は、降下位置に到達する。
駆動機構824が、本体821を例えば本積層ステージ700側に向けて引き込むと、ローラ825が傾斜プレート822の下面及び支持プレート823の上面を転がり、これらの面の離間距離が広い側に向けて移動する。そのため、ローラ825は、図示しない弾性部材の付勢力を受けて、ローラ825が傾斜プレート822及び支持プレート823によって挟持された状態を保ちながら、搬送プレート813が、連結シャフト818及び案内シャフト813aの延在方向に沿って上方に移動する。こうして、搬送プレート813は、上昇位置に到達する。
保持体831〜834は、搬送プレート813の下面側において搬送プレート813に取り付けられている。保持体831〜834は、載置ステージ300側から本積層ステージ700に向けてこの順で並んでいる。保持体831〜834はそれぞれ、その下面側において加工板10を保持可能に構成されている。保持体831〜834は、例えば、気体の吸引力を利用して加工板10を吸着する機能を有していてもよい。具体的には、図10に示されるように、保持体831は、その上面側に設けられた排気口831aと、その下面側に設けられた複数の吸気口831bと、排気口831aと複数の吸気口831bとの間を延びるように設けられた流路831cとを含んでいてもよい。保持体832〜834についても同様である。
加圧補助体840は、搬送プレート813の下面側において搬送プレート813に取り付けられている。加圧補助体840は、保持体834よりも本積層ステージ700寄り(載置ステージ300から離れる側)に位置している。
回転機構850は、図9に示されるように、本実施形態において、保持体832の上部に設けられている。回転機構850は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、上下方向に延びる仮想軸周りにおいて保持体832を回転させる。
吸気部860は、ポンプ861と、バルブ862とを含む。ポンプ861は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、ポンプ861に接続された配管863を通じて気体を吸引する。配管863は、各保持体831〜834の排気口にそれぞれ接続されている。バルブ862は、配管863上に設けられている。バルブ862は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて開閉可能である。
加圧モジュール900は、図8、図9及び図13に示されるように、駆動機構901と、支持プレート902と、押圧シャフト903,904とを含む。駆動機構901は、支持プレート902に接続されている。駆動機構901は、図9に示されるように、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、支持プレート902を上下動させる。
支持プレート902は、例えば矩形状を呈する板状体である。支持プレート902は、一対の押圧シャフト903と、一つの押圧シャフト904とを支持している。押圧シャフト903,904は、支持プレート902の下面側から下方に向けて延びている。本実施形態では、一対の押圧シャフト903は、支持プレート902の下面のうち本積層ステージ700寄りの領域に配置されている。一つの押圧シャフト904は、支持プレート902の下面のうち載置ステージ300寄りの領域に配置されている。
図13に示されるように、一対の押圧シャフト903は、搬送プレート812に設けられた一対の長孔812bにそれぞれ挿通されている。押圧シャフト904は、搬送プレート812に設けられた長孔812c及び本体821に設けられた長孔821aに挿通されている。これらの長孔812b,812c,821aはいずれも、搬送プレート812及び本体821の延在方向に延びている。長孔812cは、一対の長孔812bの間に位置していると共に、上下方向から見て長孔821aと重なり合っている。押圧シャフト903,904の下端面はいずれも、搬送プレート813の上面と対向している。
コントローラ170は、製造装置100を部分的又は全体的に制御する。コントローラ170は、図14に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラ170の機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラ170を構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application SpecificIntegrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取る。記録媒体RMは、製造装置100に各種動作を実行させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。
記憶部M2は、種々のデータを記憶する。記憶部M2は、例えば、読取部M1において読み取られたプログラムの他、例えば、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データ等を記憶する。
処理部M3は、各種データを処理する。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、ローラ121,122、打抜装置130、焼鈍炉140、仮カシメ除去装置150、駆動機構304,524,530,703,816,824,901、回転機構850、ポンプ861、バルブ527,529,862、センサ406,704,705、撮像装置602又はコンベアCv1〜Cv3を動作させるための信号を生成する。
処理部M3は、センサ406から受信した測定データ(加工板10の厚さのデータ)に基づいて、当該測定データに対応する加工板10の転積の要否を判断する。処理部M3は、判断の結果が転積要であった場合、回転機構850を回転させるための指示信号を生成する。処理部M3は、センサ704から受信した測定データ(可動板702上における荷重のデータ)に基づいて、測定荷重が所定値以上であるか否かを判断する。処理部M3は、判断の結果、測定荷重が所定値未満であった場合には、可動板702を駆動機構703により上昇させるための指示信号を生成する。処理部M3は、センサ705から受信した測定データ(センサ705から可動板702までの距離のデータ)に基づいて、測定距離が所定の範囲内であるか否かを判断する。処理部M3は、判断の結果、測定距離が所定の範囲未満であった場合には、可動板702上にさらに加工板10を積層させるための指示信号を生成する。処理部M3は、判断の結果、測定距離が所定の範囲を超えていた場合には、例えば作業者にその旨を報知するための指示信号を生成する。
指示部M4は、処理部M3において生成された信号を、駆動機構304,524,530,703,816,824,901、回転機構850、ポンプ861、バルブ527,529,862、センサ406,704,705、撮像装置602又はコンベアCv1〜Cv3に送信する。
コントローラ170のハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成される。コントローラ170は、ハードウェア上の構成として、例えば図15に示される回路E1を有する。回路E1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路E1は、具体的には、プロセッサE2と、メモリE3と、ストレージE4と、ドライバE5と、入出力ポートE6とを有する。プロセッサE2は、メモリE3及びストレージE4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートE6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。ドライバE5は、製造装置100の各種装置をそれぞれ駆動する回路である。入出力ポートE6は、ドライバE5と製造装置100の各種装置との間で、信号の入出力を行う。
本実施形態では、製造装置100は、一つのコントローラ170を備えているが、複数のコントローラ170で構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。製造装置100がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラ170によって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラ170の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラ170が複数のコンピュータ(回路E1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路E1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路E1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラ170は、複数のプロセッサE2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサE2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサE2の組み合わせによって実現されていてもよい。
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、図5、図9及び図16〜図21を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。
まず、積層体30を形成する。具体的には、コントローラ170の指示信号に基づいて、送出装置120によって電磁鋼板Wを打抜装置130に送り出し、打抜装置130によって電磁鋼板Wの被加工部位を所定形状に打ち抜く。これにより、打抜部材40が形成される。この打抜加工を繰り返すことにより、複数の打抜部材40が互いに仮カシメ42によって締結されながら所定枚数積層されて、一つの積層体30が製造される。このとき、積層体30を構成する各打抜部材40にはオイルが付着している。
続いて、コントローラ170の指示信号に基づいて、打抜装置130から排出された積層体30をコンベアCv1が焼鈍炉140まで搬送する。焼鈍炉140は、コントローラ170の指示信号に基づいて積層体30を焼鈍処理する。これにより、積層体30を構成する各打抜部材40に付着しているオイルが除去される。その後、コントローラ170の指示信号に基づいて、焼鈍炉140から排出された焼鈍処理済の積層体30をコンベアCv2が仮カシメ除去装置150まで搬送する。
続いて、仮カシメ除去装置150は、コントローラ170の指示信号に基づいて、積層体30から仮カシメ部31を除去する。例えば、仮カシメ除去装置150は、積層体30のうち固定子積層鉄心1となる部分を固定し、仮カシメ部31に対して積層方向にピストン等で力を付与する。これにより、積層体30から仮カシメ部31が取り除かれ、隣り合う加工板10が締結されていない状態で複数の加工板10が積層された仮積層体50が形成される。その後、コントローラ170の指示信号に基づいて、仮カシメ除去装置150から排出された仮積層体50をコンベアCv3が積層装置160まで搬送する。
続いて、人手で又はロボットハンド等の搬送機構を用いて、仮積層体50を載置ステージ300の可動板303上に載置する。次に、コントローラ170からの指示信号に基づいて積層装置160を動作させ、保持体831〜834及び加圧補助体840を第1の状態(初期状態)とする(図16参照)。第1の状態では、搬送プレート812,813が基本位置に位置し且つ搬送プレート813が上昇位置に位置している。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831〜834及び加圧補助体840を第2の状態とする(図17参照)。第2の状態では、搬送プレート812,813が基本位置に位置し且つ搬送プレート813が降下位置に位置している。次に、コントローラ170が積層装置160に指示して、図18に示されるように、駆動機構304により可動板303を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させると共に、駆動機構703により可動板702を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させる。これにより、保持体831の下面が、可動板303上に載置されている仮積層体50のうち最上層をなす加工板10の上面と当接する。なお、可動板702の動作の詳細については後述する。次に、コントローラ170が積層装置160に指示して、吸気部860により保持体831〜834の下面に負圧を発生させる。これにより、保持体831によって当該加工板10が吸着される。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831に加工板10を保持させたまま搬送プレート813を上昇させ、保持体831〜834及び加圧補助体840を第1の状態とする(図19参照)。このとき、コントローラ170が積層装置160に指示して、駆動機構703により可動板702を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)下降させる(同図参照)。なお、可動板702の動作の詳細については後述する。次に、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831〜834及び加圧補助体840を第3の状態とする(図9参照)。第3の状態では、搬送プレート812,813が進行位置に位置し且つ搬送プレート813が上昇位置に位置している。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831に加工板10を保持させたまま搬送プレート813を降下させ、保持体831〜834及び加圧補助体840を第4の状態とする(図20参照)。第4の状態では、搬送プレート812,813が進行位置に位置し且つ搬送プレート813が降下位置に位置している。次に、コントローラ170が積層装置160に指示して、吸気部860による吸気動作を停止させる。これにより、保持体831による加工板10の吸着が解除されるので、加工板10が測定ステージ400の載置板401上に載置される。測定ステージ400では、測定ユニット402により加工板10の厚さが測定される。このとき、コントローラ170が積層装置160に指示して、駆動機構703により、可動板702を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させてから(図21参照)、可動板702を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)降下させる(図20参照)。なお、可動板702の動作の詳細については後述する。
センサ406によるヨーク片部12の測定箇所は、例えば、仮カシメの個数に合わせて3箇所であってもよい。当該測定箇所は、中心軸Ax周りに120°おきに設定されていてもよい。これにより、ヨーク片部12の3箇所の厚さが得られる。なお、測定箇所の数は、3箇所に限られず、2箇所以上であってもよい。測定位置は、中心軸Ax周りに等間隔であってもよいし、任意の間隔であってもよい。センサ406は、加工板10の厚さを測定すると、測定データをコントローラ170に送信する。
コントローラ170は、センサ406から加工板10の測定データを受信すると、当該加工板10の転積の要否を判断する。具体的には、コントローラ170は、まず加工板10の積厚差を算出する。続いて、コントローラ170は、算出した積厚差が所定の閾値以下である場合には、当該加工板10の転積が不要であると判断する。一方、コントローラ170は、算出した積厚差が所定の閾値を超えている場合には、当該加工板10の転積が必要であると判断すると共に、それまでに本積層ステージ700の可動板702上に積層された加工板10の集合体に対して積厚差を打ち消すのに最も適した角度を算出する。なお、当該加工板10が可動板702に対して載置される最初の一つである場合には、コントローラ170は、当該加工板10の転積の要否を判断しなくてもよい。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、加工板10をいずれの保持体にも保持させずに、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第3の状態(図9)、第1の状態(図16)を経て、第2の状態(図17)とする。次に、上記と同様に、可動板303,702を所定量上昇させ、さらに吸気部860により保持体831〜834の下面に負圧を発生させる。これにより、仮積層体50のうち最上層をなす加工板10が保持体831によって吸着されると共に、測定ステージ400において厚さが測定された加工板10が保持体832によって吸着される。コントローラ170が加工板10の転積が必要であると判断していた場合には、保持体832が加工板10を吸着している際に、回転機構850により、算出された角度に従って当該加工板10を回転させてもよい。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831,832によってそれぞれ加工板10を保持させたまま、上記と同様に、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第1の状態(図16)、第3の状態(図9)を経て、第4の状態(図20)とする。第4の状態のとき、供給ステージ500においては、保持体832による加工板10の吸着が解除されると、加工板10が供給ステージ500の載置板501上に載置される。供給ステージ500では、加工板10の下面に対して供給プレート510から接着剤20が供給される。ここでは、供給プレート510は、駆動機構530によって供給位置に位置されている。なお、このとき上記と同様に、可動板702を所定量上昇及び降下させる(図21及び図20参照)。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、加工板10をいずれの保持体にも保持させずに、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第3の状態(図9)、第1の状態(図16)を経て、第2の状態(図17)とする。次に、上記と同様に、可動板303,702を所定量上昇させ、さらに吸気部860により保持体831〜834の下面に負圧を発生させる。これにより、仮積層体50のうち最上層をなす加工板10が保持体831によって吸着され、測定ステージ400において厚さが測定された加工板10が保持体832によって吸着されると共に、供給ステージ500において接着剤20が供給された加工板10が保持体833によって吸着される。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831〜833にそれぞれ加工板10を保持させたまま搬送プレート813を上昇させ、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第1の状態(図16)、第3の状態(図9)を経て、第4の状態(図20)とする。第4の状態のとき、検査ステージ600においては、保持体833による加工板10の吸着が解除されると、加工板10が検査ステージ600の載置板601上に載置される。検査ステージ600では、加工板10の下面に接着剤20が適切に付与されているか否かが検査される。なお、このとき上記と同様に、可動板702を所定量上昇及び降下させる(図21及び図20参照)。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、加工板10をいずれの保持体にも保持させずに、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第3の状態(図9)、第1の状態(図16)を経て、第2の状態(図17)とする。次に、上記と同様に、可動板303,702を所定量上昇させ、さらに吸気部860により保持体831〜834の下面に負圧を発生させる。これにより、仮積層体50のうち最上層をなす加工板10が保持体831によって吸着され、測定ステージ400において厚さが測定された加工板10が保持体832によって吸着され、供給ステージ500において接着剤20が供給された加工板10が保持体833によって吸着されると共に、検査ステージ600において検査された加工板10が保持体834によって吸着される。
続いて、コントローラ170が積層装置160に指示して、保持体831〜834にそれぞれ加工板10を保持させたまま、保持体831〜834及び加圧補助体840を、第1の状態(図16)、第3の状態(図9)を経て、第4の状態(図20)とする。第4の状態のとき、本積層ステージ700においては、上記と同様に、可動板702が所定量上昇される(図21参照)。そのため、本積層ステージ700の可動板702上に既に積層されている加工板10の集合体が、保持体833に吸着されている加工板10に対して押し付けられる。これにより、保持体833に吸着されている加工板10が、当該集合体のうち最上層をなす加工板10に対して接着される。このとき、コントローラ170が積層装置160に指示して、駆動機構901により押圧シャフト903,904を降下させる。これにより、押圧シャフト903,904が搬送プレート813に押し付けられる。そのため、可動板702上に積層されている加工板10の集合体は、可動板702と保持体834とで挟持される。保持体833による加工板10の吸着が解除されると、可動板702が所定量降下される(図20参照)。その後、駆動機構703,901は、保持体831〜834及び加圧補助体840が第2の状態(図17)となった場合にも動作して、押圧シャフト903,904を搬送プレート813に押し付ける。そのため、可動板702上に積層されている加工板10の集合体は、可動板702と加圧補助体840とでも挟持される。これにより、当該集合体に十分な荷重が付与されうる。
なお、加工板10が可動板702上に最初に載置される場合には、供給ステージ500において加工板10に対して接着剤20が供給されない。このとき、供給プレート510は、駆動機構530によって退避位置に位置される。
以上の処理が仮積層体50の加工板10の一つ一つに対して繰り返えされることにより、各加工板10が本積層ステージ700の可動板702上に一つ一つ積層される。その結果、複数の加工板10が積層されると共に隣り合う加工板10同士が接着剤によって接合されてなる固定子積層鉄心1が完成する。
このとき、センサ705は、センサ705から可動板702までの距離のデータを継続的に測定しており、固定子積層鉄心1が所望の積厚(所望の加工板10の積層枚数)に達したか否かを判断している。ここで得られた固定子積層鉄心1の積厚を、次に製造される固定子積層鉄心1の転積又は積層に際して利用してもよい。例えば、固定子積層鉄心1が所望の積厚に達していない場合、又は固定子積層鉄心1の積厚偏差が既定値を超えている場合、転積を考慮した新たな加工板10の積み増しを行ってもよい。これにより、固定子積層鉄心1の積厚又は積厚偏差を容易に調整でき、固定子積層鉄心1の不良の発生を抑制することが可能となる。
[作用]
ところで、通常、オイルの除去処理及び接着剤20の供給処理は、打抜装置130において電磁鋼板Wを打ち抜いて打抜部材40を形成する処理よりも遅い。しかしながら、以上のような本実施形態では、打抜装置130において積層体30を形成し、さらに仮カシメ部31を除去して仮積層体50を形成した後に、各加工板10の接着及び積層とが打抜装置130外(金型外)において行われる。すなわち、本実施形態では、焼鈍炉140及び供給ステージ500が打抜装置130外にある。そのため、接着剤20を供給する機構を、打抜装置130内に設ける必要がない。従って、打抜装置130を小型化することができると共に、打抜装置130と独立して焼鈍炉140及び供給ステージ500を複数設けることで、打抜装置130において加工板10の形成処理を高速に行いつつ、全体としてのスループットを向上させることができる。また、接着剤20を供給する機構は一般に打抜装置130よりも安価であるため、複数の打抜装置130を用いて全体としてのスループットを向上させようとする場合と比較して、低コスト化が図られる。以上より、本実施形態によれば、低コストで且つ効率的に固定子積層鉄心1を製造することが可能となる。
本実施形態では、各ステージ300〜700の上方を搬送体が往復移動しつつ、各保持体831〜834において一の加工板10の保持及び解放が繰り返されることにより、一の加工板10が各ステージ300〜700を順次移動する。そのため、加工板10が下流側のステージに素早く搬送される。従って、固定子積層鉄心1をより効率的に製造することが可能となる。また、隣り合うステージの間にそれぞれ加工板10の搬送機構を設ける必要がないので、加工板10を移動させるのに要する機構の数が少なくて済む。従って、製造装置100自体も低コストで製造することが可能となる。
本実施形態では、隣り合う加工板10同士が接着剤20で接着されることにより固定子積層鉄心1が得られる。そのため、加工板10同士がカシメ、溶接等で締結されている場合と比較して、磁気特性の低下が生じ難い。従って、このような固定子積層鉄心1を用いてモータを製造することにより、モータ特性の向上を図ることが可能となる。特に近年、加工対象である電磁鋼板Wの厚さが薄くなってきており(例えば0.2mm〜0.25mm程度からそれ以下)、このような薄い電磁鋼板Wから得られる加工板10は極めて変形しやすいことから、加工板10同士を接着のみで接合する要望が高まってきている。そのため、本実施形態によれば、このような要望を、低コストで且つ効率的に固定子積層鉄心1を製造しつつ、このような要望をも満たすことが可能である。
本実施形態では、センサ406によって測定された加工板10の厚さに基づいて、コントローラ170が当該加工板10の転積の要否を判断している。そのため、一つずつの加工板10において転積の要否が判断される。従って、転積の自由度が高まるので、最終的な固定子積層鉄心1の寸法精度を向上させることが可能となる。
ところで、加工板10に対して接着剤20が供給過多である場合には、複数の加工板10が本積層ステージ700において積層されたときに、加工板10の間から接着剤20がはみ出てしまい得る。加工板10に対して接着剤20が供給過小である場合には、接着剤20の接合力を十分得られず、固定子積層鉄心1が完成後に分離してしまい得る。しかしながら、本実施形態では、検査ステージ600において、例えば、接着剤20の供給量が過剰であったり過小であったりする加工板10を検出できる。そのため、接着剤20の供給不良に起因する固定子積層鉄心1の不良の発生を抑制することが可能となる。
ところで、保持体834が保持する加工板10を本積層ステージ700上の他の加工板10に積層すると、その反力が保持体834に作用し、保持体834を介して搬送プレート813が変位してしまう懸念がある。このとき、保持体834と可動板702との間で挟持される加工板10の集合体に作用する力が減少してしまいうる。しかしながら、本実施形態では、加圧モジュール900(押圧シャフト903,904)が本積層ステージ700とは反対側から搬送プレート813を加圧している。そのため、搬送プレート813に生ずる上記反力が加圧モジュール900によって相殺されるので、搬送プレート813の変位が抑制される。従って、保持体834と可動板702との間で挟持される加工板10の集合体に十分大きな力を作用させることができる。その結果、一の加工板10を他の加工板10に対して接着剤20でしっかりと接合することが可能となる。
本実施形態では、加圧モジュール900が、搬送プレート813及び加圧補助体840を介して本積層ステージ700上に積層されている加工板10の集合体を加圧している。そのため、保持体834が本積層ステージ700上から検査ステージ600上に移動した場合であっても、加圧補助体840が本積層ステージ700とは反対側から搬送プレート813を加圧する。そのため、一の加工板10を他の加工板10に対して接着剤20でよりしっかりと接合することが可能となる。
本実施形態では、駆動機構304により可動板303を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させた後に、上昇された可動板303上の仮積層体50のうち最上層をなす一の加工板10を可動板702から保持体831に保持(吸着)させている。また、本実施形態では、保持体834が保持する加工板10が可動板702に載置された後に、可動板702を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)降下させている。そのため、保持体831が可動板303から加工板10を保持する位置を一定の高さ位置にすることができると共に、保持体834が加工板10を可動板702に対して載置させる位置を一定の高さ位置にすることができる。従って、搬送モジュール800が有する保持体831,834を個別に上下動させる必要がないので、制御を簡略化することが可能となる。
本実施形態では、供給プレート510に設けられた複数の吐出口514の開口面積が、流路Fcの上流側から下流側に向かうにつれて大きくなっている。そのため、流速が低下する傾向にある下流側の吐出口514から吐出される接着剤20の吐出量と、上流側の吐出口514から吐出される接着剤20の吐出量とが略均等になりやすい。従って、加工板10同士を適切且つ強固に接合することが可能となると共に、固定子積層鉄心1の平坦性を高めることが可能となる。また、この場合、液溜まり部511の容積を小さくしても脈動が生じ難くなる。さらに、液溜まり部511の容積が小さくなることで、メンテナンス時の清掃が容易となると共に、メンテナンス時に液溜まり部511から廃棄される接着剤20の量を低減することが可能となる。
本実施形態では、打抜装置130において積層体30を形成した後に、積層体30のオイル除去と、各加工板10の接着及び転積とが打抜装置130外において行われる。そのため、オイルを除去する機構、接着剤20を供給する機構及び加工板10を転積する機構を、打抜装置130内に設ける必要がない。従って、打抜装置130を小型化することが可能となる。その結果、電磁鋼板Wから打抜部材40を複数列一組で形成する、いわゆる「複数列取り」の打抜装置130とした場合や、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心となる打抜部材40を同じ電磁鋼板Wから形成する、いわゆる「共取り」の打抜装置130とした場合でも、打抜装置130の大型化を抑制することができる。
ところで、特許文献1に記載の方法では金型内で接着剤が使用される。そのため、嫌気性の接着剤が用いられる場合、金型内の空気が遮断された領域で金属イオン結合が生じて接着剤が金型に付着してしまい、金型のクリーニングが必要となる。また、熱硬化性の接着剤が用いられる場合、金型内に加熱装置を設置する必要があり、金型が大型化してしまう。さらに、2液混合型の接着剤が用いられる場合、2つの液を金型内に導入するために、金型内に設置する塗布機構や配管に工夫が必要となる。そのため、特許文献1に記載の方法では、用いることのできる接着剤の種類に制約が生じうる。これに対して、本実施形態では、接着剤20の供給ステージ500が打抜装置130の外(金型外)にある。そのため、本実施形態によれば、周囲に金属性の部材が配置されていない限り、嫌気性の接着剤20を使用することができる。また、本実施形態によれば、熱硬化性や2液混合型の接着剤20を使用したとしても、金型による設置上の制約がない。従って、本実施形態は、特許文献1に記載の方法と比較して、接着剤20の選定上の制約が少なく、柔軟に対応することができる。
本実施形態では、打抜装置130で積層体30を形成し、その後、焼鈍炉140において積層体30からオイルを除去している。そのため、オイルの表面張力によって加工板10同士がくっつき合うことが抑制される。従って、後続の工程において仮積層体50から加工板10を一つずつ取り出しやすくなる。また、積層体30全体からオイルを除去しているので、一つ一つの加工板10からオイルを除去する場合と比較して、オイルの除去を効率的に行える。さらに、積層体30からオイルが除去されているので、接着剤20の接着性能に影響が生じ難くなる。
ところで、打抜装置130において電磁鋼板Wを打ち抜いて打抜部材40を形成すると、打抜部材40の周縁部が電磁鋼板Wから打ち抜かれる過程で打抜部材40には歪みが生じている。歪みを有する打抜部材40から得られた固定子積層鉄心1を用いてモータが製造されると、モータの特性に影響が生じうる。しかしながら、本実施形態では、積層体30を焼鈍することにより積層体30に付着しているオイルを除去している。そのため、オイルの除去と、打抜部材40からの歪みの緩和とが同時に行われる。従って、固定子積層鉄心1をより効率的に製造することが可能となる。これに対し、特許文献1に記載の方法では、接着剤が塗布された後の金属板を打ち抜いて、他の打抜部材に対して接着剤により接着させながら積層している。そのため、得られた積層体を焼鈍しようとすると、接着剤も高温(例えば、750℃〜800℃程度)に長時間(例えば、1時間程度)曝されてしまう。焼鈍の温度に耐えうる耐熱性を有する接着剤は、本願の出願時において存在していないか、入手することが極めて困難である。従って、特許文献1に記載の方法では、打抜部材に対して焼鈍処理することができず、打抜部材の歪みを緩和することができないので、モータ特性の低下が懸念される。しかしながら、本実施形態では、接着剤20の供給ユニット162が打抜装置130の外(金型外)にあり、積層体30の焼鈍後に接着剤が加工板10に供給されるので、接着剤20の選定上の制約を少なくすることができる。
本実施形態では、打抜部材40同士を仮カシメ42によって互いに締結しつつ積層することにより積層体30が得られる。そのため、焼鈍炉140による焼鈍処理に際して、複数の打抜部材40を積層体30として一体的に取り扱える。また、本実施形態では、積層体30の焼鈍処理後に積層体30から仮カシメ部31を除去している。そのため、最終的な製品である固定子積層鉄心1には仮カシメ42が存在しておらず、加工板10同士が接着剤によって接合されている。従って、固定子積層鉄心1の製造過程における取り扱いの容易性の向上と、モータの特性の向上との両立を図ることが可能となる。
ところで、図6に示されるように、パンチ133で電磁鋼板Wを打ち抜くと、打ち抜きの過程で電磁鋼板Wがパンチ133とダイ132aとの間で引き伸ばされ、電磁鋼板Wから打ち抜かれた打抜部材40の寸法がダイ132aよりも大きくなることがある。そのため、パンチ133が上方に移動すると打抜部材40がダイ132a内において山型に湾曲することがある。この場合、特許文献1に記載の方法のようにダイ132a内で打抜部材40同士を接着剤で接着しようとすると、打抜部材40の変形に抗して打抜部材40同士を接着するために、多量の接着剤を要する可能性がある。そうすると、打抜部材40同士の間に厚膜状の接着層が介在してしまい、最終的に製品として得られた固定子積層鉄心1の平坦性又は占積率(固定子積層鉄心1全体の体積のうち加工板10の体積が占める割合をいい、接着剤20の使用量が増えるほどこの値が低下する。)が損なわれうる。しかしながら、本実施形態では、打抜装置130から排出された後の仮積層体50から加工板10を一つずつ取り出して積層しているので、加工板10がダイ132aから拘束を受けていない。そのため、加工板10同士を接着するための接着剤20を少量とすることができると共に、最終的に製品として得られる固定子積層鉄心1の平坦性又は占積率を高めることが可能となる。さらには、固定子積層鉄心1の平行度及び直角度が高まり、固定子積層鉄心1の貫通孔1a内に配置される回転子積層鉄心との干渉が抑制されると共に、固定子積層鉄心1と回転子積層鉄心との組み付けを容易に行うことが可能となる。
ところで、特許文献1に記載の方法では、接着剤が塗布された後の金属板を打ち抜いて、他の打抜部材に対して接着剤により接着させながら積層している。そのため、打抜部材の積層の途中で何らかの原因により製造装置が停止すると、時間の経過により接着剤が固化し、途中まで積層された打抜部材に対して新たな打抜部材を接着させることができなくなる。従って、途中まで積層された打抜部材の全てを廃棄しなければならない。しかしながら、本実施形態では、加工板10一つずつに対して接着剤20を供給しているので、何らかの原因で製造装置100が停止して、接着剤20が固化したとしても、一つの加工板10が廃棄されるだけですむ。そのため、本実施形態によれば、材料費のコストの削減及び歩留まりの向上が図られると共に、固定子積層鉄心1の不良の発生を抑制することが可能となる。
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、焼鈍処理以外の他の手法によって積層体30からオイルを除去してもよい。例えば、焼鈍に至らない温度(例えば、100℃〜550℃程度)及び時間(例えば30分から1時間程度)で積層体30を加熱(例えば、バーンオフ炉によるバーンオフ処理、ブルーイング炉によるブルーイング処理など)してもよいし、積層体30を溶剤(例えば、アセトンなど)に含浸してもよいし、積層体30に付着しているオイルをエアで吹き飛ばしてもよい。あるいは、積層体30を常温の環境に所定時間(例えば、1日間)放置して自然乾燥することにより、積層体30からオイルを除去してもよい。
積層装置160は、加工板10に欠陥(例えば、傷、凹み、打痕、打抜カスなど)があるか否かを検査する検査ステージをさらに有していてもよい。具体的には、当該検査ステージにおいて撮像装置(例えば、カメラなど)で加工板10を撮像し、当該撮像画像をコントローラ170が画像処理することにより、加工板10の欠陥を検出してもよい。加工板10に欠陥があることが検出された場合、当該加工板10を廃棄してもよい。また、加工板10の欠陥が加工板10に残存する打抜カスである場合には、打抜カスをエアブローなどで除去してもよい。当該検査ステージにおいて他の検査を兼ねてもよい。なお、特許文献1に記載の方法では、個々の打抜部材が接着及び積層された積層体が金型から排出されるので、いずれかの打抜部材に欠陥があるか否かを確認することはできない。
積層装置160は、加工板10の形状又は寸法を検査する検査ステージをさらに有していてもよい。具体的には、当該検査ステージにおいて撮像装置(例えば、カメラなど)で加工板10を撮像し、当該撮像画像をコントローラ170が画像処理することにより、加工板10が設計に沿った形状又は寸法となっているか否かを判断してもよい。確認対象とする形状又は寸法は、加工板10のうち重要な箇所に限定してもよい。当該検査ステージにおいて他の検査を兼ねてもよい。なお、特許文献1に記載の方法では、個々の打抜部材が接着及び積層された積層体が金型から排出されるので、個々の打抜部材の形状又は寸法を確認することはできない。
2つのコイル材111の端部同士を溶接により接合して用いてもよい。この場合、パンチ133でコイル材111同士の溶接部が打ち抜かれると、当該溶接部を含む打抜部材40が積層体30に混在する。このような積層体30から得られた固定子積層鉄心1を用いてモータが製造されると、モータの特性に影響が生じうる。そのため、第1の手段としては、積層装置160が、加工板10に溶接部が存在しているか否かを検査する検査ステージをさらに有していてもよい。具体的には、当該検査ステージにおいて撮像装置(例えば、カメラなど)で加工板10を撮像し、当該撮像画像をコントローラ170が画像処理することにより、加工板10における溶接部の有無を判断してもよい。加工板10に溶接部があると判断された場合、当該加工板10を廃棄してもよい。あるいは、第2の手段としては、コイル材111同士の溶接部をパンチ133が打ち抜かないよう、パンチ133よりも上流側においてパンチ133(打抜部材40の外形に対応する領域、又は、打抜部材40の外形とパイロット孔とを含む領域)よりも大きな径の補助パンチにより当該溶接部を予め打ち抜いてもよい。この場合、電磁鋼板Wのうち溶接部に相当する領域がパンチ133に到達しても、電磁鋼板Wの当該領域には貫通孔が存在しているので、パンチ133が空振りし、打抜部材40が形成されない。以上によれば、電磁鋼板Wのうち溶接部が存在する領域のみが廃棄されるので、材料の損失が最小限に抑えられる。そのため、コストの低減及び歩留まりの向上を図ることが可能となる。なお、特許文献1に記載の方法では、個々の打抜部材が接着及び積層された積層体が金型から排出されるので、いずれかの打抜部材に溶接部があるか否かを事前に確認することはできない。そのため、特許文献1に記載の方法では、溶接部を含む打抜部材が混在した積層体全てを廃棄しなければならず、材料費のコスト増及び歩留まりの低下に繋がりうる。
供給ステージ500において、接着剤20を加工板10に供給する前又は供給した後に、接着性能の向上を図るために接着補助剤(例えば、硬化開始剤、硬化促進剤、プライマなど)を加工板10に供給してもよい。接着剤20の供給前に接着補助剤を加工板10に供給する場合には、接着補助剤を加工板10に供給した後の工程において、接着剤20を接着補助剤に重なるように供給してもよい。一方、接着剤20の供給後に接着補助剤を加工板10に供給する場合には、接着剤20を加工板10に供給した後の工程において、接着補助剤を接着剤20に重なるように供給してもよい。接着補助剤を用いる場合においても、上記実施形態によれば、接着補助剤の供給ユニットが打抜装置130の外(金型外)にあり、積層体30の焼鈍後に接着補助剤が加工板10に供給されるので、接着補助剤の選定上の制約を少なくすることができる。なお、接着補助剤を用いることにより、加工板10にオイルが残存した状態でも接着剤20の接着性能の低下を抑制することができる場合には、焼鈍等による積層体30の加熱処理を省略してもよい。
接着剤20は、加工板10に対して、スポット状に供給されてもよいし、拡がりをもって塗布されてもよい。加工板10の下面に対して供給される接着剤20の量は、複数の加工板10が積層されたときの圧力で加工板10同士の間からはみ出ない程度であってもよい。
接着剤20の供給後に接着補助剤を加工板10に供給する場合には、加工板10に接着補助剤を塗布してもよいし、噴霧してもよい。この場合、接着補助剤を加工板10の上側から噴霧してもよいし、加工板10の下側から噴霧してもよい。補助剤が吸収された柔軟な多孔質体(例えば、スポンジ等)を加工板10に押し付けることにより、接着補助剤を加工板10に供給してもよい。
接着補助剤は、加工板10に対して、スポット状に供給されてもよいし、拡がりをもって塗布されてもよい。
積層装置160は、加工板10に供給された接着補助剤の位置及び/又は寸法(直径)を検査するステージをさらに有していてもよい。具体的には、当該検査ステージにおいて撮像装置(例えば、カメラなど)で加工板10を撮像し、当該撮像画像をコントローラ170が画像処理することにより、供給された接着補助剤が設計に沿った位置にあるか又は設計に沿った寸法となっているか否かを判断してもよい。この場合、接着補助剤に蛍光物質(例えば、ブラックライトに反応して発光する物質など)を含有させておき、加工板10に供給された接着補助剤の視認性を高めてもよい。接着補助剤の供給面を検査し、接着補助剤が所望の位置又は寸法にない場合には、そのような加工板10を廃棄してもよいし、加工板10に対して接着補助剤を再度供給してもよい。以上のようにすると、接着補助剤の供給不良に起因する固定子積層鉄心1の不良の発生を抑制することが可能となる。具体的には、複数の加工板10が積層されたときの圧力で、接着補助剤が加工板10同士の間からはみ出し難くなる。
固定子積層鉄心1を構成する加工板10の積層枚数は、仮カシメ除去装置150から排出された仮積層体50を構成する加工板10の積層枚数と同じであってもよいし異なっていてもよい。
上記実施形態では、仮積層体50から加工板10を一つずつ取り出し、一つずつの加工板10に接着剤20を供給したうえで、加工板10を一つずつ積層していたが、複数の加工板10が積層され且つこれらが互いに接合されたブロック体(鉄心部材)を一つずつ取り出し、一つずつのブロック体に接着剤20を供給した上で、ブロック体を一つずつ積層してもよい。この場合、ブロック体を構成する複数の加工板10は、仮カシメ部31によって互いに締結されていてもよいし、ヨーク片部12又はティース片部13に設けられたカシメによって互いに締結されていてもよいし、外周面が溶接されることによって互いに締結されていてもよい。測定ステージ400においては、ブロック体の積厚が測定された後に、一つずつのブロック体に対して転積の要否が判断される。供給ステージ500においては、ブロック体の下面に接着剤20が供給される。
供給プレート510において、入口513から各吐出口514に至るまでの流路Fcの形態は、上記の実施形態のものに限定されない。流路Fcの形態としては、例えば、各吐出口514から吐出される接着剤20の吐出量が均一となるように設定されていてもよい。具体的には、図22に示されるように、各吐出口514の開口面積がいずれも略同一であると共に、入口513から各分岐路512に向かうにつれて(流路Fcの下流側に向かうにつれて)流路Fcの流路面積が小さくなるように流路Fcの形態が設定されていてもよい。この場合、流路Fcの下流側ほど流速が速くなるので、流速が低下する傾向にある下流側の吐出口514から吐出される接着剤の吐出量と、上流側の吐出口514から吐出される接着剤の吐出量とが略均等になりやすい。従って、加工板10同士を適切且つ強固に接合することが可能となると共に、固定子積層鉄心1の平坦性を高めることが可能となる。
図23に示されるように、仮積層体50は、積層方向において隣り合う加工板10同士の間で切欠部12a(係合部)が重なり合わないように複数の加工板10が積層されて構成されていてもよい。この場合、載置ステージ300の可動板303上に載置されている仮積層体50のうち最上層をなす加工板10を保持体831によって吸着する際に、図24に示されるように、係合モジュール1000を利用してもよい。係合モジュール1000は、切欠部12aに係合可能に構成された係合片1001と、駆動機構1002とを含む。駆動機構1002は、コントローラ170からの指示信号に基づいて動作し、係合片1001を切欠部12a(加工板10)に対して近接及び離間させるように構成されている。図24(a)に示されるように、最上層をなす加工板10の切欠部12a内に係合片1001の先端が挿入され、切欠部12aと係合片1001とが係合すると、係合片1001の先端は、その直下の加工板10を押さえつける。すなわち、係合片1001は、最上層の直下の加工板10の上方への移動を規制する。そのため、図24(b)に示されるように、最上層の加工板10とそれ以外の加工板10とを簡単且つ確実に分離することが可能となる。なお、切欠部12aに代えて、径方向に突出する突起(係合部)が加工板10に設けられている場合には、最上層の直下をなす加工板10の突起に係合片1001を係合させることで、最上層以外の加工板10の上方への移動を係合片1001によって規制することができる。
図25に示されるように、積層装置160は、加圧補助体840を有していなくてもよい。
積層装置160は、加圧モジュール900を有していなくてもよい。
上記実施形態では、載置ステージ300において、駆動機構304により可動板303を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させた後に、上昇された可動板303上の仮積層体50のうち最上層をなす一の加工板10を可動板702から保持体831に保持させていた。これに代えて、可動板303上の仮積層体50のうち最上層をなす一の加工板10に保持体831が当接するように駆動機構824により保持体831を降下させ、当該一の加工板10を保持体831に保持させた後に、駆動機構824により保持体831を上昇させ、さらに駆動機構304により可動板303を所定量(例えば、一つの加工板10の厚さ分)上昇させてもよい。
積層装置160は、加工板10に対して種々の処理を行うために、第1〜第N(Nは3以上の自然数)のステージを有していてもよい。この場合、搬送プレート813には、第1〜第N−1の保持体が取り付けられている。第1〜第N−1の保持体のうち第n(nは1〜N−1のいずれかの自然数)の保持体は、加工板10を保持しつつ、互いに隣り合う第nのステージと第n+1のステージとの間を往復移動する。なお、載置ステージ300、供給ステージ500及び本積層ステージ700はこの順で並んでいる。測定ステージ400は、供給ステージ500よりも上流側に位置していればよい。検査ステージ600は、供給ステージ500よりも下流側に位置していればよい。
案内部材706と共に、又は案内部材706に代えて、加工板10のスロット14に対応する外形を有する少なくとも一つの挿通ピンが固定板701上に設けられていてもよい。当該挿通ピンは、固定板701上において、スロット14に対応する位置に配置されている。この場合、対応するスロット14内に挿通ピンが挿通されるように、可動板702上に加工板10が順次積層される。そのため、加工板10の積層と同時に、加工板10が所定位置に位置決めされる。また、スロット14内に打抜カスが混入している場合には、挿通ピン163cがスロット14内に挿通される際に挿通ピン163cによって打抜カスが外部に排出される。従って、加工板10の積層時において打抜部材40の面内でずれが生じているか否か又はスロット14内に打抜カスが残存しているか否かを、加工板10の積層後に別途検査(この検査を「ゲージ通し検査」ということがある。)する必要がなくなる。その結果、固定子積層鉄心1をより効率的に製造することが可能となる。
固定子積層鉄心1のみならず回転子積層鉄心に対しても、本発明を適用してもよい。
上記実施形態では、一枚の電磁鋼板Wを打ち抜く場合について説明したが、複数枚の電磁鋼板Wを同時に打ち抜く場合にも、本発明を適用してもよい。