JP6780632B2 - 複合ダンパー - Google Patents
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図1は、本発明の実施の形態1に係る複合ダンパー100の外観を示す模式図である。図1(a)は、複合ダンパー100を中心軸方向から見た図であり、図1(b)は、円筒形状の複合ダンパー100を側面から見た図である。なお、図1(b)における左側を「長手方向の一方」と、右側を「長手方向の他方」と称する。
軸力材10は、筒部11と、筒部11の両端に接合されているブレース端部12a、12bと、を有する。実施の形態1において筒部11は、円筒形状の部材であって、円筒形状の両端開口部にブレース端部12a、12bがそれぞれ接合されている。筒部11は、例えば円筒形状の鋼管である。筒部11は、円筒形状であれば平板の両端を溶接して製造されるものであっても、シームレス鋼管であっても良い。筒部11の材質は、望ましくは低降伏点鋼が用いられる。複合ダンパー100の両端から受ける筒部11の中心軸に沿った方向に働く荷重により筒部11が塑性変形することによって、複合ダンパー100は、構造物の振動エネルギーを吸収し、構造物の制振を行う。例えば柱及び梁で構成された建築物の主架構において、主架構より先に軸力材10の筒部11を降伏させ主架構を変形させるエネルギーを吸収させることにより、主架構の損傷を防止させることができる。
座屈補剛材20は、軸力材10の内側に配置され、筒部11の内周面側の面外変形を抑えるためのものである。実施の形態1においては、筒部11の内周面側に2つの座屈補剛材20a、20bが配置されている。座屈補剛材20aは、円筒を中心軸に沿った方向に分割した形状になっている。言い換えると、座屈補剛材20aは、複合ダンパー100の軸方向に垂直な断面において、軸力材10の筒部11に沿った円弧形状の部分である補剛部21aと、円弧形状の両端を繋いだ弦の部分である粘弾性体接合部22aと、を有する。実施の形態1においては、補剛部21aと粘弾性体接合部22aとは、それぞれ板状の部材であり、複合ダンパー100の軸方向に垂直な断面において、端部同士を接合されて、中空の筒状に形成されている。なお、座屈補剛材20aは、2つの部材を接合して形成されるものに限られず、引き抜き加工等により一体に形成されるものでもよい。
座屈補剛材20aと座屈補剛材20bとの間隙には、粘弾性体30が配置されている。詳しくは粘弾性体30は、座屈補剛材20aの粘弾性体接合部22aと座屈補剛材20bの粘弾性体接合部22bとの間に配置されている。粘弾性体30は、粘弾性体接合部22a及び粘弾性体接合部22bに接合されており、座屈補剛材20aと座屈補剛材20bとの間の相対変位によりせん断変形するものである。
座屈補剛材20aと座屈補剛材20bとの間隙には、スペーサー40が配置されている。スペーサー40は、座屈補剛材20aと座屈補剛材20bと間隙の粘弾性体30が配置されていない箇所に設けられている。実施の形態1においては、複合ダンパー100の軸方向において、粘弾性体30の両端にスペーサー40が設けられている。スペーサー40と粘弾性体30の端部との距離は、粘弾性体30がせん断変形したときに、スペーサー40と粘弾性体30との接触が生じないように設定されている。
図3は、本発明の実施の形態1の複合ダンパー100の組み立て手順の一例を示す説明図である。初めに、2つの座屈補剛材20a、20bをそれぞれ溶接等の手段により組み立てる。次に、座屈補剛材20aの粘弾性体接合部22aと座屈補剛材20bの粘弾性体接合部22bとの間に粘弾性体30とスペーサー40とを設置する。このとき、座屈補剛材20aの一方の端部24aが座屈補剛材20bの一方の端部24bから突出する位置関係になるように取り付けられる。また、座屈補剛材20bの他方の端部25bは、座屈補剛材20aの他方の端部25aから突出するような位置関係になっている。
図6は、図1の複合ダンパー100の軸方向に圧縮力90、91が加わったときの複合ダンパー100の動作を示す説明図である。図6(a)は、軸力材10の筒部11が弾性域の範囲内で変形している状態を示しており、図6(b)は、軸力材10の筒部11が面外変形を生じた状態を示している。図6(a)において、複合ダンパー100にかかる軸方向の圧縮力90は、軸力材10に伝達されている。しかし、圧縮力90は、軸力材10の筒部11の弾性域の範囲内となっており、筒部11に面外変形は生じていない。また、軸力材10が軸方向に縮むことにより、内部に配置された座屈補剛材20aと座屈補剛材20bとが互いに逆方向に移動し、その相対変位分だけ粘弾性体30はせん断変形が生じる。粘弾性体30の変形により、複合ダンパー100は、構造物に加わったエネルギーを吸収することが可能となる。
図7は、本発明の実施の形態1に係る複合ダンパー100の変形例である複合ダンパー200の内部構造を示す断面図である。図7は、変形例の複合ダンパー200の軸方向に垂直な断面を示している。複合ダンパー200は、複合ダンパー100に対し、断面形状を変更したものである。複合ダンパー200の外側の軸力材10の筒部11は、角形鋼管で構成されている。筒部11は、断面形状が角形であれば平板の両端を溶接して製造されるものであっても、シームレス角形鋼管であっても良い。筒部11の材質は、望ましくは低降伏点鋼が用いられる。また、筒部11の内部に設置されている座屈補剛材220a、220bは、複合ダンパー200の軸方向に垂直な断面において長方形の角形鋼管である。この2つの座屈補剛材220a、220bの粘弾性体接合部222a、222bの間に粘弾性体30が設置されることにより、座屈補剛材220aと座屈補剛材220bとの相対変位により粘弾性体30にせん断変形が生じる。これにより、複合ダンパー100と同様に、複合ダンパー200は、軸力材10の筒部11が有する鋼材ダンパーとしての機能と、粘弾性体30による粘弾性ダンパーとしての機能により、高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
図8は、本発明の実施の形態1に係る複合ダンパー100の変形例である複合ダンパー300の内部構造を示す断面図である。複合ダンパー300は、複合ダンパー100に対し、内部の座屈補剛材20の数量を変更したものである。複合ダンパー300は、複合ダンパー100と同様に軸力材10の筒部11が低降伏点鋼シームレス鋼管により構成されている。筒部11の内部には、4つの座屈補剛材320a〜320dが配置されている。座屈補剛材320aは、実施の形態1に係る座屈補剛材20aと同様に、円筒を中心軸に沿った方向に分割した形状になっている。座屈補剛材320aの補剛部321aは、円弧状になっており、直角に曲げられた断面L字形の平板である粘弾性体接合部322aが円弧形状の両端に接合されている。なお、粘弾性体接合部322aは、2つの平板を溶接によりL字形に接合したものでもよい。他の3つの座屈補剛材320b〜320dも同様に構成されている。4つの座屈補剛材320a〜320dは、それぞれの粘弾性体接合部322a〜322dの面同士を対向させた配置されている。そして、粘弾性体接合部322aと粘弾性体接合部322bとの間の隙間には粘弾性体330aが配置されている。また、同様に粘弾性体接合部322bと粘弾性体接合部322cとの間の隙間には粘弾性体330b、粘弾性体接合部322cと粘弾性体接合部322dとの間の隙間には粘弾性体330c、粘弾性体接合部322dと粘弾性体接合部322aとの間の隙間には粘弾性体330dが配置されている。
(1)実施の形態1に係る複合ダンパー100、200、300によれば、両端を結ぶ軸方向にかかる荷重を受ける複合ダンパー100、200、300において、軸方向に垂直な断面において閉鎖断面形状の軸力材10、210と、軸力材10の内部に配置される複数の座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dと、複数の座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dの間に配置され軸方向の荷重により変形する粘弾性体30、330a〜330dと、を備える。
このように構成されることにより、複合ダンパー100、200、300は、軸力材10、210が鋼材ダンパーとして機能し、そして粘弾性体30、330a〜330dがブレース端部12aとブレース端部12bとの相対変位により変形して粘弾性ダンパーとして機能する。これにより、複合ダンパー100、200、300が設置された構造物の微小変形から大変形までに効率的にエネルギーを吸収できる。また、鋼材ダンパーの軸力材10、210を軸方向に垂直な断面において閉鎖断面形状としたので、軸力材10、210の面外剛性が大きく、必要な補剛力も小さくて済む。さらに、軸力材10、210を座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dより外側とした構造としたので、軸力材10、210の変形状態を目視で確認することが可能となり、構造物に設置された複合ダンパー100、200、300の取り替えの判断が容易になる。
このように構成されることにより、粘弾性体30は、軸力材10の両端部の相対変位に従って変形し、複合ダンパー100、200、300は粘弾性ダンパーとしての機能を発揮できる。
(3)実施の形態1に係る複合ダンパー100、200、300によれば、座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dは、軸力材10の変形を軸力材10の内部で支持する補剛部21a、21b、221a、221b、321a、321bと、粘弾性体30、330a〜330dが接合された粘弾性体接合部22a、22b、222a、222b、322a、322bと、を備える。補剛部21a、21b、221a、221b、321a、321bは、軸力材10の内周面に沿って所定の隙間を持って配置され、粘弾性体30は、対向する粘弾性体接合部22a、22b、222a、222b、322a、322bの間に設置されたものである。
このように構成されることにより、座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dは、軸力材10の筒部11が複合ダンパー100、200、300にかかる荷重により変形した際に軸力材10の端部のブレース端部12aとブレース端部12bとの間の相対変位に連動して動く。そして、座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dの動きに従い、粘弾性体30、330a〜330dがせん断変形し、複合ダンパー100、200、300は、粘弾性ダンパーとしての機能を発揮することができる。また、軸力材10が、低降伏鋼管である筒部11と、筒部11の両端部に接合されたブレース端部12a、12bから構成されるため、複合ダンパー100、200、300は、鋼材ダンパーとしての機能も発揮でき、製造も容易な構成になっている。
このように構成されることにより、片持ち梁形式で軸力材10に固定されている座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dは、軸力材10の筒部11の面外変形により面外力がかかり、弾性変形内で曲げを生じる可能性があるが、座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dに設置されたスペーサー40によって、面外力がスペーサー40に圧縮力として伝わり、粘弾性体30には圧縮力が伝達しない。よって、複合ダンパー100、200、300の軸方向に圧縮力が加わり、軸力材10の筒部11が変形し座屈補剛材20a、20b、220a、220b、320a〜320dに荷重がかかっても、粘弾性体30は、所定の厚さを保持でき、せん断変形により地震エネルギーを吸収することが可能となる。従って、複合ダンパー100、200、300は、鋼材ダンパーと粘弾性ダンパーのそれぞれで高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
このように構成されることにより、複合ダンパー100、300は、体積が小さく構造物に効率的に配置でき、簡易な構成で高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
実施の形態2は、実施の形態1に係る複合ダンパー100に対し、座屈補剛材20aと座屈補剛材20bとの間に板状の粘弾性体支持部材480を追加し、粘弾性体30を多層にしたものである。実施の形態2では、実施の形態1に対する変更部を中心に説明する。
(6)実施の形態2に係る複合ダンパー400によれば、一対の座屈補剛材420a、420bの間に配置された粘弾性体支持部材480を更に備える。粘弾性体430は、座屈補剛材420a、420bと粘弾性体支持部材480との間に設置されたものである。
このように構成されることにより、座屈補剛材420aと座屈補剛材420bとの間に配置された粘弾性体430を多層に構成することができる。よって、粘弾性体430一つ当たりの厚さを厚くすることなく、複合ダンパー400を構成することができる。
このように構成されることにより、座屈補剛材420aと座屈補剛材420bとの間の粘弾性体430が多層構造になっても、スペーサー40により粘弾性体430は所定の厚さを保持でき、せん断変形により地震エネルギーを吸収することが可能となる。従って、複合ダンパー400は、鋼材ダンパーと粘弾性ダンパーのそれぞれで高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
このように構成されることにより、粘弾性体430は2層に直列に構成され、座屈補剛材420a、420bの相対変位は、2つの粘弾性体430に分散する。従って、1つあたりの粘弾性体430のせん断変形量も分散する。よって、1つの粘弾性体430の厚さを薄くすることができる。また、それぞれの粘弾性体430の厚みを厚くすることにより、複合ダンパー400は、より大きな軸方向変形に対しても粘弾性体430が追従できる。よって、複合ダンパー400は、より大きなエネルギー吸収効果を発揮できる。
実施の形態3は、実施の形態2に係る複合ダンパー400に対し、座屈補剛材420aと座屈補剛材420bとの間に設置されている板状の粘弾性体支持部材480の設置状態を変更し、さらに軸力材10の構造を変更したものである。実施の形態3では、実施の形態2に対する変更部を中心に説明する。
(9)粘弾性体30、330a〜330dは、軸力材510の一方の端部に固定された一対の座屈補剛材520a、520bの間に設置されたものである。
(10)実施の形態3に係る複合ダンパー500によれば、軸力材510は、両端部にブレース端部12a、12bを有し、一対の座屈補剛材520a、520bは、一方のブレース端部12bに接合され、粘弾性体支持部材480は、他方のブレース端部12aに接合され、粘弾性体530は、一対の座屈補剛材520a、520bのそれぞれと粘弾性体支持部材480との間に設置されたものである。
このように構成されることにより、複数の粘弾性体530を並列にならべて粘弾性ダンパーを構成できる。粘弾性体530を並列に並べることができるため、粘弾性体530のせん断面積が2倍となるため、振動の減衰力も2倍になり、より大きな軸方向の荷重に対しても、高いエネルギー吸収性能を発揮できる。また、粘弾性体530の数、厚さ、及び硬度を適宜変更し、様々な振動に対応できる粘弾性ダンパーを構成することが可能となる。
このように構成されることにより、座屈補剛材520a、520bが設置されていない部分で軸力材510が局所変形することがなく、第1筒部511aの面外変形を確実に座屈補剛材520a、520bで受けることができる。よって、複合ダンパー500は、軸力材510の第1筒部511aが有する鋼材ダンパーとしての機能と、粘弾性体530による粘弾性ダンパーとしての機能により、高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
Claims (11)
- 両端を結ぶ軸方向にかかる荷重を受ける複合ダンパーにおいて、
前記軸方向に垂直な断面において閉鎖断面形状の軸力材と、
前記軸力材の内部に配置される複数の座屈補剛材と、
複数の前記座屈補剛材の間に配置され前記軸方向の荷重によりせん断変形する粘弾性体と、を備えた、複合ダンパー。 - 前記粘弾性体は、
前記軸力材の両端部のうち異なる端部に固定された一対の前記座屈補剛材の間に設置された、請求項1に記載の複合ダンパー。 - 前記粘弾性体は、
前記軸力材の一方の端部に固定された一対の前記座屈補剛材の間に設置された、請求項1に記載の複合ダンパー。 - 前記座屈補剛材は、
前記軸力材の変形を前記軸力材の内部で支持する補剛部と、
前記粘弾性体が接合された粘弾性体接合部と、を備え、
前記補剛部は、
前記軸力材の内周面に沿って所定の隙間を持って配置され、
前記粘弾性体は、
対向する前記粘弾性体接合部の間に設置された、請求項1〜3の何れか1項に記載の複合ダンパー。 - 対向する前記座屈補剛材の距離が所定以上に近づかないようにスペーサーが設置されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の複合ダンパー。
- 一対の前記座屈補剛材の間に配置された粘弾性体支持部材を更に備え、
前記粘弾性体は、
前記座屈補剛材と前記粘弾性体支持部材との間に設置された、請求項1〜5の何れか1項に記載の複合ダンパー。 - 前記座屈補剛材と前記粘弾性体支持部材との間に、前記座屈補剛材と前記粘弾性体支持部材との距離が所定以上に近づかないようにスペーサーが設置されている、請求項6に記載の複合ダンパー。
- 前記軸力材は、
両端部にブレース端部を有し、
一対の前記座屈補剛材は、
それぞれ異なる前記ブレース端部に接続され、
前記粘弾性体は、
一対の前記座屈補剛材のそれぞれと前記粘弾性体支持部材との間に設置された、請求項6又は7に記載の複合ダンパー。 - 前記軸力材は、
両端部にブレース端部を有し、
一対の前記座屈補剛材は、
一方の前記ブレース端部に接合され、
前記粘弾性体支持部材は、
他方の前記ブレース端部に接合され、
前記粘弾性体は、
一対の前記座屈補剛材のそれぞれと前記粘弾性体支持部材との間に設置された、請求項6又は7に記載の複合ダンパー。 - 前記軸力材は、
低降伏点鋼で構成される第1筒部と、
前記第1筒部よりも降伏点の高い材料で構成された第2筒部と、を有し、
前記第2筒部は、
前記粘弾性体支持部材が接合されている他方の前記ブレース端部から前記座屈補剛材までの間の空間の外周側を覆っている、請求項9に記載の複合ダンパー。 - 前記軸力材は、
円筒形状であり、
前記座屈補剛材は、
円筒を中心軸に平行に分割した形状である、請求項1〜10の何れか1項に記載の複合ダンパー。
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