JP6780302B2 - 複写防止媒体 - Google Patents

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本発明は、複写機による偽造を抑えるためのパターンを有する複写防止媒体に関する。
複写防止媒体は、原本とその複写物との判別が可能であるように構成された媒体であり、例えば、有価証券や各種証明書等のように、複写機による偽造を抑える必要のある印刷物として利用される。
詳細には、複写防止媒体は、例えば特許文献1に記載のように、複写によって再現される大きさの網点が配置された再現領域と、複写によって再現されない大きさの網点が配置された非再現領域とからなるパターンを有している。複写防止媒体の複写物においては、再現領域内には網点が印字される一方、非再現領域内には網点が印字されないため、再現領域と非再現領域との濃淡に差異が生じる結果、これらの領域の識別が可能となり、上記パターンが視認される。したがって、複写防止媒体とその複写物との判別が可能である。
特開2013−116587号公報
複写防止媒体の偽造防止効果を高めるためには、複写防止媒体とその複写物との判別が容易であること、すなわち、複写前の複写防止媒体においては、再現領域と非再現領域との差異が不明瞭であり、かつ、複写防止媒体の複写物においては、再現領域と非再現領域との差異が明瞭であることが望ましい。しかしながら、複写技術の向上に伴って複写物の高精細化が進む近年では、再現領域を構成する網点と非再現領域を構成する網点との大きさや配置の違いを利用して複写前後におけるこれらの領域間の見え方の違いを大きくすることには限界がある。したがって、複写防止媒体には、その複写物との判別を容易にするための新たな構成が求められている。
本発明は、偽造防止効果を高めることのできる複写防止媒体を提供することを目的とする。
上記課題を解決する複写防止媒体は、錯視を誘起する錯視誘起パターンと、前記錯視誘起パターンによる錯視の誘起を抑制する錯視抑制パターンとを含む複写防止パターンを表示面に含む媒体であって、前記錯視誘起パターンは、互いに隣り合う第1パターン要素群と第2パターン要素群とを含み、前記第1パターン要素群と前記第2パターン要素群とは、群ごとの方向からの仮想的な光の照射に従った陰影を各々が示す複数のパターン要素を含み、前記第1パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向は、前記表示面に含まれる1つの方向である操作方向に対して傾斜した方向であり、前記錯視誘起パターンは、前記操作方向に沿った前記表示面の往復動によって、前記第1パターン要素群が、前記操作方向とは異なる方向に、前記第2パターン要素群に対して相対的に動くように見える錯視を生じさせ、前記錯視抑制パターンは、複写機による前記表示面の複写によって顕像化するように構成され、前記錯視抑制パターンの顕像化によって前記錯視の誘起を抑制する。
上記構成によれば、複写防止媒体においては、錯視誘起パターンによって錯視が引き起こされる一方、複写防止媒体の複写物においては、錯視抑制パターンの顕像化によってこうした錯視が生じることが抑えられる。したがって、複写防止媒体とその複写物とを、錯視抑制パターンの顕像化の有無というパターンの見え方の違いに加えて、錯視が生じるか否かによって判別することができる。それゆえ、複写防止媒体と複写物との判別が容易となるため、複写防止媒体の偽造防止効果が高められる。
上記構成において、前記第1パターン要素群と前記第2パターン要素群とは、前記操作方向に沿って並んでいてもよい。
また、上記構成において、前記第1パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状は、前記第2パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状と異なってもよい。
また、上記構成において、前記第1パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状は、前記第2パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状と同一であってもよい。
また、上記構成において、前記第1パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向と、前記第2パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向とのなす角の角度は、180°とは異なる角度であってもよい。
また、上記構成において、前記パターン要素における縁部は、各パターン要素に1つずつの環上に位置し、前記錯視誘起パターンは、前記パターン要素間の隙間に位置する中濃度領域と、前記中濃度領域よりも色の薄い低濃度領域および前記中濃度領域よりも色の濃い高濃度領域の少なくとも一方である濃淡形成領域とを有し、前記濃淡形成領域は、前記パターン要素における前記縁部に位置し、当該縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以上を占めてもよい。
また、上記構成において、前記濃淡形成領域は、線状に延びる形状を有して前記パターン要素における前記縁部を構成してもよい。
また、上記構成において、前記錯視誘起パターンは、前記濃淡形成領域として前記低濃度領域および前記高濃度領域を有し、前記低濃度領域の位置する部分は、前記縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下であり、前記高濃度領域の位置する部分は、前記縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下であってもよい。
また、上記構成において、前記第1パターン要素群および前記第2パターン要素群の少なくとも一方において、前記パターン要素における前記濃淡形成領域の位置する前記縁部は、前記操作方向および前記操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に延びていてもよい。
また、上記構成において、前記第1パターン要素群および前記第2パターン要素群の少なくとも一方において、複数の前記パターン要素は、隣接する前記パターン要素間の距離が、前記操作方向および前記操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に並ぶ前記パターン要素間において最も近くなるように並んでいてもよい。
これらの構成によれば、複写防止媒体において、錯視誘起パターンによる錯視が好適に引き起こされるため、複写防止媒体とその複写物との判別がより容易である。
上記構成において、前記錯視誘起パターンと前記錯視抑制パターンとは重なり、前記錯視抑制パターンは、前記第1パターン要素群を横切って延びる帯状の部分と、前記第2パターン要素群を横切って延びる帯状の部分とを有することが好ましい。
上記構成によれば、複写防止媒体の複写物において、錯視が好適に抑制されるため、複写防止媒体とその複写物との判別がより容易である。
本発明によれば、複写防止媒体における偽造防止効果を高めることができる。
複写防止媒体の一実施形態について、複写防止媒体の全体構成を示す平面図。 一実施形態における複写防止パターンの構成を模式的に示す図。 一実施形態における複写防止パターンの構成を拡大して示す図。 一実施形態における錯視誘起パターンの構成および錯視誘起パターンが誘起する錯視を模式的に示す図。 一実施形態における複写防止パターンの複写物を模式的に示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 複写防止パターンの構成の変形例を示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視誘起パターンの変形例を模式的に示す図。 錯視抑制パターンの変形例を模式的に示す図。
図1〜図5を参照して、複写防止媒体の一実施形態について説明する。
[複写防止媒体の全体構成]
図1を参照して、複写防止媒体の全体構成について説明する。図1が示すように、複写防止媒体100は、基材110を備えるとともに、複写防止媒体100の有する少なくとも1つの面である表示面に、複写機による偽造を抑えるためのパターンである複写防止パターン10を含んでいる。複写防止パターン10は、表示面の全体に配置されていてもよいし、一部に配置されていてもよい。
基材110の材料は特に限定されず、基材110は、例えば、紙や樹脂シートから構成されている。また、基材110は、1つの層から構成されていても複数の層から構成されていてもよいし、複写防止媒体100は、基材110に加えて、複写防止媒体100を保護するための層などの他の層を備えていてもよい。複写防止パターン10は、例えば、印刷によって基材110上に形成されている。
複写防止媒体100の用途は特に限定されず、複写防止媒体100は、有価証券や各種証明書等のように、複写機による偽造を抑える必要のある物品として用いられる。
[複写防止パターンの構成]
図2および図3を参照して、複写防止パターン10の構成について説明する。図2が示すように、複写防止パターン10は、錯視を誘起する錯視誘起パターン20と、錯視誘起パターン20によって錯視が引き起こされることを抑制する錯視抑制パターン30とが表示面において重ね合わされたパターンである。図2においては、各パターンを模式的に示し、錯視抑制パターン30を破線で示している。
錯視誘起パターン20は、複写前の物品である複写防止媒体100において目視により識別可能なパターンであり、低濃度領域21、中濃度領域22、および、高濃度領域23を含んでいる。各領域における色の濃さは、低濃度領域21、中濃度領域22、高濃度領域23の順に濃くなっている。なお、図2においてはこれらの領域の境界を明瞭に示すために、低濃度領域21と中濃度領域22との間に境界線を付しているが、こうした境界線は不要である。
錯視誘起パターン20は、複数のパターン要素群24から構成され、各パターン要素群24は、複数のパターン要素25から構成されている。複数のパターン要素群24は、1つの方向に沿って並び、このパターン要素群24の並ぶ方向がY方向であり、Y方向と直交する方向がX方向である。例えば、図2にて、錯視誘起パターン20は、3つのパターン要素群24から構成されており、同一のパターンである2つのパターン要素群24aに、このパターン要素群24aと異なるパターンであるパターン要素群24bが挟まれている。
パターン要素25は、パターン要素群24における繰り返しの最小単位であり、パターン要素25の縁部に位置する低濃度領域21と高濃度領域23とによって周囲から区画された任意の図形形状を有する。例えば、図2にて、Y方向の端部に位置するパターン要素群24aを構成するパターン要素25aは矩形形状を有し、Y方向の中央部に位置するパターン要素群24bを構成するパターン要素25bは円形状を有している。
詳細には、パターン要素25の縁部は、各パターン要素25に1つずつの閉環状を有し、この縁部を低濃度領域21と高濃度領域23とが構成している。そして、パターン要素25にて、低濃度領域21と高濃度領域23とからなる環の内部に中濃度領域22が位置している。また、互いに隣り合うパターン要素25間の隙間や、パターン要素群24を囲む部分にも、中濃度領域22が位置している。
低濃度領域21は、線状に延び、パターン要素25の縁部が形成する環においてその周方向の約2分の1を占めている。同様に、高濃度領域23は、線状に延び、上記環における低濃度領域21以外の部分、すなわち、上記環における周方向の約2分の1を占めている。そして、低濃度領域21の2つの端部のうちの一方と高濃度領域23の2つの端部のうちの一方とが接し、低濃度領域21の2つの端部のうちの他方と高濃度領域23の2つの端部の他方とが接している。例えば、パターン要素25aにおいては、矩形の互いに隣り合う2辺に低濃度領域21が位置し、他の2辺に高濃度領域23が位置する。また、パターン要素25bにおいては、低濃度領域21と高濃度領域23との各々が半円上に位置する。
1つのパターン要素25において、低濃度領域21と高濃度領域23との境界、すなわち、上記端部の一方同士が接する部分と上記端部の他方同士が接する部分との各々に位置する点を結ぶ直線である境界直線Aは、X方向およびY方向のいずれに対しても傾斜している。
1つのパターン要素群24を構成する複数のパターン要素25において、各パターン要素25に対して設定される境界直線AのY方向に対する傾きは同一である。また、Y方向に沿って互いに隣り合う2つのパターン要素群24において、パターン要素群24のそれぞれを構成するパターン要素25に対して設定される境界直線AのY方向に対する傾きは、互いに異なっている。すなわち、パターン要素群24aを構成するパターン要素25aに対応する境界直線Aaと、パターン要素群24bを構成するパターン要素25bに対応する境界直線Abとは、Y方向に対する傾きが異なっている。
各パターン要素群24において、複数のパターン要素25は規則的に配置されている。例えば、図2では、各パターン要素群24において、X方向に沿って延びる直線上に位置する複数のパターン要素25の列が、Y方向に沿って3つ並んでいる。Y方向に沿って互いに隣り合うパターン要素25の列において、各パターン要素25のX方向における位置は一致しておらず、すなわち、これらの列はパターン要素25のX方向における位置をずらしてY方向に並んでいる。なお、パターン要素群24は、その端部付近などに、パターン要素25の一部が欠けた要素を含んでいてもよい。
錯視抑制パターン30は、複写防止媒体100の複写物において顕像化するパターンである。すなわち、錯視抑制パターン30は、複写防止媒体100よりもその複写物において、視認性の高くなるパターンである。錯視抑制パターン30は、複数の再現領域32と複数の非再現領域31とから構成されている。複写防止媒体100にて、再現領域32と非再現領域31とは同程度の色の濃さを有する一方、複写防止媒体100の複写物において、非再現領域31の色は再現領域32の色よりも薄くなる。これにより、複写防止媒体100と比較して、その複写物では再現領域32と非再現領域31との色の濃さの違いが明瞭になるため、錯視抑制パターン30が顕像化する。
再現領域32と非再現領域31とは、折れ線状に延びる各別の帯上に位置し、再現領域32の含まれる帯状部分と非再現領域31の含まれる帯状部分とは、X方向に沿って交互に並んでいる。これらの帯状部分における屈曲部分は、Y方向に沿って互いに隣り合うパターン要素群24の間の領域に位置する。すなわち、再現領域32の含まれる帯状部分と非再現領域31の含まれる帯状部分との各々は、各パターン要素群24および各パターン要素25を直線状に横切る。そして、再現領域32の含まれる1つの帯状部分は、互いに隣り合うパターン要素群24を連続して横切り、非再現領域31の含まれる1つの帯状部分もまた、互いに隣り合うパターン要素群24を連続して横切る。
図3を参照して、複写防止パターン10の詳細構成について説明する。複写防止パターン10は、円形状や多角形状の点である網点や、直線状に延びる万線などの微細構成要素、および、直線状に塗りつぶされた部分である太線の集合であって、これらの構成要素が上述の各領域に配置されることによって、複写防止パターン10が構成されている。
図3が示す例では、低濃度領域21には上記構成要素が配置されておらず、空白である。また、高濃度領域23には太線が配置されている。すなわち、高濃度領域23は塗りつぶされている。なお、太線は、複数の網点が、隣り合う網点同士が接触する程度まで密に配置されることによって構成されていてもよい。中濃度領域22には、網点もしくは万線が配置されている。
複写防止パターン10では、錯視誘起パターン20と錯視抑制パターン30とが重なっており、低濃度領域21には再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分と、非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分とが含まれるが、これらのいずれにおいても、低濃度領域21には上記構成要素が配置されていない。同様に、高濃度領域23には再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分と、非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分とが含まれるが、これらのいずれにおいても、高濃度領域23には太線が配置されている。
中濃度領域22にも再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分と、非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分とが含まれるが、再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分には、万線が配置され、この領域は、中濃度領域22かつ再現領域32として機能する。一方、非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分には、網点が配置され、この領域は、中濃度領域22かつ非再現領域31として機能する。
再現領域32に配置される万線の線幅は、複写機を用いた複写によって同様の形状の万線が再現されやすい線幅であればよく、例えば、0.04mm以上0.3mm以下の範囲で設定されることが好ましい。
再現領域32において、単位面積当たりの微細構成要素が占める面積、すなわち、単位面積当たりにおいて万線が占める面積の割合が再現領域32の濃度であり、この濃度が、例えば、8%以上20%以下となるように、万線間の間隔が設定されることが好ましい。例えば、隣接する万線の幅方向の中心間の距離である万線間の間隔は、0.2mm以上1.5mm以下の範囲で設定されることが好ましい。なお、再現領域32に配置される万線の線幅や万線間の間隔は一定でなくともよい。
非再現領域31に配置される網点の大きさは、複写機を用いた複写によって同様の形状の網点が再現されにくい大きさであればよく、例えば、網点の直径は、0.01mm以上0.05mm以下の範囲で設定されることが好ましい。なお、網点が円とは異なる形状を有する場合には、網点の外接円の直径が上記範囲内であればよい。
非再現領域31において、単位面積当たりの微細構成要素が占める面積、すなわち、単位面積当たりにおいて網点が占める面積の割合が非再現領域31の濃度であり、この濃度が、例えば、8%以上20%以下となるように、網点間の間隔が設定されることが好ましい。例えば、隣接する網点の中心間の距離である網点間の間隔は、0.05mm以上0.15mm以下の範囲で設定されることが好ましい。また、非再現領域31の濃度は再現領域32の濃度と同程度に設定される。なお、非再現領域31に配置される網点の直径や網点間の間隔は一定でなくともよい。
このように、再現領域32の濃度と非再現領域31の濃度とは、各領域における単位面積当たりの微細構成要素の占める割合であり、換言すれば、各領域に配置される微細構成要素の密度によって規定される。そして、再現領域32の濃度と非再現領域31の濃度とが同程度であるため、複写防止媒体100においては再現領域32と非再現領域31との色の濃さが同程度に見える。したがって、複写防止媒体100においては再現領域32と非再現領域31との識別がしにくく、錯視抑制パターン30が個別に視認されにくい、すなわち、錯視抑制パターン30の視認性は低い。
なお、再現領域32と非再現領域31との双方に、網点が配置されてもよい。この場合、再現領域32に配置される網点の大きさは、複写機を用いた複写によって同様の形状の網点が再現されやすい大きさであればよく、例えば、網点の直径は、0.1mm以上0.3mm以下の範囲で設定されることが好ましい。また、再現領域32において、網点間の間隔は、例えば、0.25mm以上0.6mm以下の範囲で設定されることが好ましい。
あるいは、再現領域32と非再現領域31との双方に、万線が配置されてもよい。この場合、非再現領域31に配置される万線の線幅は、複写機を用いた複写によって同様の形状の万線が再現されにくい大きさであればよく、例えば、0.01mm以上0.04mm未満の範囲で設定されることが好ましい。また、非再現領域31において、万線間の間隔は、例えば、0.05mm以上0.25mm以下の範囲で設定されることが好ましい。
あるいは、再現領域32に網点が配置され、非再現領域31に万線が配置されてもよい。要は、再現領域32には、複写による再現性の高い大きさの微細構成要素が配置されていればよく、非再現領域31には、複写による再現性の低い大きさの微細構成要素が配置されていればよい。
上記構成においては、複写防止媒体100の複写物において、低濃度領域21と高濃度領域23とは、複写前の複写防止媒体100と同様に再現されるため、錯視誘起パターン20は、複写防止媒体100における当該パターンとほぼ同様に識別可能である。
[錯視誘起パターンによる錯視]
図4を参照して、錯視誘起パターン20が誘起する錯視について説明する。錯視誘起パターン20は、特定の方向である操作方向に複写防止媒体100の表示面を往復動させたとき、すなわち、錯視誘起パターン20を往復動させたとき、観察者に視覚的な錯覚である錯視を生じさせる。操作方向は、表示面に含まれる方向のなかで、錯視誘起パターン20によって錯視が誘起される範囲で適宜設定されればよいが、例えば、複写防止媒体100が矩形形状である場合、その縦辺もしくは横辺である1つの辺に沿った方向とされる。本実施形態では、操作方向はパターン要素群24の並ぶ方向であるY方向と同一の方向であって、かつ、複写防止媒体100の1つの辺に沿った方向である。すなわち、本実施形態において、複数のパターン要素群24は、複写防止媒体100の1つの辺に沿って並んでいる。
こうした錯視の説明に先立って、パターン要素25の有する濃淡と仮想的な光との関係について説明する。上述のように、パターン要素25は、低濃度領域21と中濃度領域22と高濃度領域23とから構成され、周囲を中濃度領域22によって囲まれている。これらの領域によって形成される濃淡は、パターン要素25が位置する表示面から突き出た立体物の投影図における、所定の方向から立体物に光が照射された際の明暗として捉えられる。
すなわち、観察者にとって相対的に色の薄く見える部分である低濃度領域21の位置する部分が、立体物のなかで光のあたっている部分として捉えられ、観察者にとって相対的に色の濃く見える部分である高濃度領域23の位置する部分が、立体物のなかで陰になっている部分として捉えられる。このように、パターン要素25の有する濃淡は、仮想的な光の照射に従った陰影を示す濃淡として捉えることができる。
図4が示すように、パターン要素25に対する仮想的な光の照射方向Idは、低濃度領域21と高濃度領域23との境界を結ぶ境界直線Aと直交する方向であり、1つのパターン要素群24を構成する複数のパターン要素25の各々に対する仮想的な光の照射方向Idはすべて同一の方向である。
一方、Y方向に沿って互いに隣り合う2つのパターン要素群24において、パターン要素群24のそれぞれを構成するパターン要素25に対する仮想的な光の照射方向Idは、互いに異なっている。例えば、パターン要素群24aのパターン要素25aに対する照射方向Idaは、パターン要素群24bのパターン要素25bに対する照射方向Idbと異なっている。そして、いずれのパターン要素群24においても、パターン要素25に対する照射方向Idは操作方向に対して傾斜している。
なお、上述のように、各パターン要素群24において、X方向に沿って延びる直線上に位置する複数のパターン要素25の列は、パターン要素25のX方向における位置をずらしてY方向に並んでいる。このとき、複数のパターン要素25は、例えば、これらのパターン要素25に対する照射方向Idとほぼ一致する方向に沿って延びる直線上に並んでいる。このパターン要素25の並ぶ方向と照射方向Idとのなす角の角度は、10°以下であることが好ましい。
上記構成において、操作方向に錯視誘起パターン20を往復動させると、観察者には、互いに隣り合う2つのパターン要素群24の一方に含まれるパターン要素25が、操作方向とは異なる方向に、パターン要素群24の他方に含まれるパターン要素25に対して相対的に動いているように見える錯視が生じる。例えば、パターン要素群24bのパターン要素25bが、パターン要素群24aのパターン要素25aに対して振動しているように見える。なお、表示面からやや浮いた位置に焦点を合わせると、錯視が生じやすい。
こうした錯視が生じる原因は、例えば、以下のように推測される。すなわち、パターン要素25が光の照射に従った陰影を示すように認識されるため、観察者は、パターン要素25の位置を、その陰影の配置に基づいて、光源との位置関係によって認識する。この際、観察者は、互いに隣り合うパターン要素群24について、各々のパターン要素群24のパターン要素25の位置を、互いに異なる位置にある光源との位置関係に基づいて認識している状態となる。その結果、錯視誘起パターン20を動かした場合に、観察者は、互いに隣り合うパターン要素群24のパターン要素25の位置の移動量が異なるように、すなわち、パターン要素群24aのパターン要素25aの位置の移動の向きや大きさと、パターン要素群24bのパターン要素25bの位置の移動の向きや大きさとが異なるように錯覚すると考えられる。特に、パターン要素群24aの並ぶ方向であって、いずれの光の照射方向Idとも異なる操作方向に錯視誘起パターン20を往復動させたときに、その錯覚が顕著となり、パターン要素25が動くように見えると考えられる。
[錯視抑制パターンによる錯視の抑制]
図5を参照して、錯視抑制パターン30による上記錯視の抑制について説明するとともに、本実施形態の複写防止媒体100の偽造防止効果について述べる。図5は、複写防止媒体100の複写防止パターン10を複写した際に得られる像を模式的に示す図である。
上述のように、複写防止媒体100においては、錯視抑制パターン30の再現領域32と非再現領域31との色の濃さが同程度であるため、これらの領域の識別がしにくく、錯視抑制パターン30の視認性は低い。これに対し、複写防止媒体100の複写物においては、再現領域32に配置されている微細構成要素は複写防止媒体100と同様に再現される一方、非再現領域31に配置されている微細構成要素は再現されにくく、一部もしくは全部が欠けたり掠れたりする。そのため、複写防止媒体100よりもその複写物において、非再現領域31の色は薄くなる。すなわち、複写物において、非再現領域31の色は再現領域32の色よりも薄く見える。
その結果、複写物では再現領域32と非再現領域31との色の濃さの違いが明瞭になるため、錯視抑制パターン30が顕像化し、図5が示すように、パターン要素群24を横切る帯状のパターンが視認されるようになる。
こうした複写物を、操作方向に往復動させても、複写防止媒体100にて生じた錯視は起こりにくい。このように錯視が抑えられる原因は、例えば、以下のように推測される。すなわち、パターン要素群24と重なる帯状の錯視抑制パターン30の存在により、観察者は、パターン要素25の位置を、この帯状のパターンとの位置関係によって認識する。この際、観察者は、互いに隣り合うパターン要素群24について、各々のパターン要素群24のパターン要素25の位置を、これらに共通した折れ線状の帯状部分との位置関係に基づいて認識している状態となる。そのため、複写物を動かしたとしても、互いに隣り合うパターン要素群24のパターン要素25の位置の移動量が異なるように錯覚することが抑えられると考えられる。
なお、帯状部分の延びる方向は、例えば、パターン要素25に対する仮想的な光の照射方向と同一であることが好ましい。すなわち、複数のパターン要素25が仮想的な光の照射方向と略同一な方向に延びる直線上に配列されている場合は、このパターン要素25の並ぶ方向と略同一な方向に帯状部分が延びることが好ましい。
このように、本実施形態の複写防止媒体100によれば、複写防止媒体100とその複写物とを、複写防止パターン10に含まれる領域の色の濃さに基づいた見え方の違いに加えて、錯視が生じるか否かによって判別することができる。すなわち、パターンの顕像化の有無を利用する判別方法に加えて、こうした単なるパターンの見え方とは異なる、錯視を利用した判別方法によって複写防止媒体100とその複写物とを判別することが可能となるため、複写防止媒体100と複写物との判別が容易となる。したがって、複写防止媒体100の偽造防止効果が高められる。
また、こうした複写防止媒体100によれば、複写による偽造を抑えるための対策が施された媒体であるか否かを、複写防止パターン10にて錯視が生じることを確かめることによって、器具や装置等を用いずに確認することも可能である。
[変形例]
上記実施形態の変形例について説明する。
<複写防止パターン10の構成要素>
上記実施形態では、複写防止パターン10は、低濃度領域21にはパターンの構成要素が配置されておらず、中濃度領域22には網点もしくは万線が配置され、高濃度領域23には太線が配置されることにより構成されていた。こうした構成は、以下のように変更してもよい。
図6が示すように、高濃度領域23には、万線が配置されていてもよい。また、高濃度領域23には、網点が配置されていてもよい。このように高濃度領域23に微細構成要素が配置される場合、高濃度領域23の濃度が中濃度領域22の濃度よりも高くなるように、各領域における微細構成要素の配置密度が設定される。
高濃度領域23に微細構成要素が配置される場合、高濃度領域23の全体、もしくは、高濃度領域23のなかで非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分が、複写防止媒体100よりもその複写物において、色が薄くなるように構成されていてもよい。
例えば、図7が示すように、高濃度領域23にて、複写によって再現されやすい線幅の万線と再現されにくい線幅の万線とが交互に配置される。こうした構成によれば、複写防止媒体100よりもその複写物において、高濃度領域23の色が薄くなる。したがって、複写物においては、パターン要素25の有する濃淡の差が小さくなるため、この濃淡が仮想的な光の照射に従った陰影を示すように認識されにくくなる。結果として、複写物において錯視がより生じ難くなるため、複写防止媒体100と複写物との判別がより容易となる。
また例えば、図8が示すように、高濃度領域23のなかで再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分には、複写によって再現されやすい大きさの網点が配置され、高濃度領域23のなかで非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分には、複写によって再現されにくい大きさの網点が配置されてもよい。部分によって配置される網点の大きさが異なっていても、単位面積当たりの網点の占める面積の割合が同程度であれば、高濃度領域23の色の濃さは高濃度領域23の全体で均等に見える。こうした構成によれば、高濃度領域23のなかで非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分は、高濃度領域23かつ非再現領域31として機能し、この部分の色は、複写防止媒体100よりもその複写物において薄くなる。したがって、複写物においては、パターン要素25の有する濃淡が仮想的な光の照射に従った陰影を示すように認識されにくくなるとともに、錯視抑制パターン30の視認性がより高められる。結果として、複写物において錯視がより生じ難くなるため、複写防止媒体100と複写物との判別がより容易となる。
図9が示すように、高濃度領域23のなかで非再現領域31の含まれる帯状部分と重なる部分には、再現領域32の含まれる帯状部分と重なる部分と比較して細い線幅の太線が配置されてもよい。また、図10が示すように、高濃度領域23に太線が配置される場合において、太線は点線状であってもよい。高濃度領域23に配置される構成要素が占有面積の小さい構成要素であるほど、複写物でのその構成要素の再現性が低くなり、その構成要素の配置部分では高濃度領域23の色が薄くなりやすい。そのため、上記構成によっても、複写物においてパターン要素25の有する濃淡が仮想的な光の照射に従った陰影を示すように認識されにくくなり、錯視がより生じ難くなる。
図11が示すように、非再現領域31に配置される微細構成要素は、マイクロ文字であってもよい。マイクロ文字は、微細な文字や記号であって、複写機を用いた複写によって同様の形状のマイクロの文字が再現されにくい大きさおよび線幅を有している。具体的には、マイクロ文字の文字径、すなわち、マイクロ文字を囲む最小の正方形における対角線の長さは、0.15mm以上0.35mm以下であることが好ましい。また、マイクロ文字の線幅は、0.04mm未満であることが好ましい。マイクロ文字が用いられる構成では、複写防止媒体100とその複写物とを拡大して観察することによって、複写防止媒体100と複写物とをより容易に判別することができる。
図11に示す例では、非再現領域31には、複数種類の文字径のマイクロ文字と複数種類の直径の網点とが混在して配置されている。このように、複写防止パターン10を構成する領域の各々には、複数種類の構成要素が配置されていてもよい。
また、上記実施形態においては、低濃度領域21に構成要素が配置されていないが、低濃度領域21の濃度が中濃度領域22の濃度よりも低くなる構成であれば、すなわち、単位面積当たりにおいて構成要素が占める面積の割合が中濃度領域22よりも低濃度領域21にて低くなる構成であれば、低濃度領域21に網点等の構成要素が配置されていてもよい。
<錯視誘起パターン20の構成>
錯視誘起パターン20は、特定の方向である操作方向に錯視誘起パターン20を往復動させた場合に、複数のパターン要素群24の一部が他のパターン要素群24に対して相対的に動くように見える錯視を生じさせるパターンであれば、上記実施形態のパターンとは異なっていてもよい。例えば、錯視誘起パターン20は、以下のように変更してもよい。なお、図12〜図19においては、パターンの構成を明瞭に示すために、錯視誘起パターン20のみを示す。
・パターン要素25の形状は、矩形形状や円形状に限らず、三角形や五角形等の多角形形状や楕円形状であってもよい。また、パターン要素群24ごとにパターン要素25の形状が異なってもよいし、すべてのパターン要素群24についてパターン要素25の形状が同一であってもよい。また、1つのパターン要素群24に、複数種類の形状のパターン要素25が含まれてもよい。
・パターン要素群24におけるパターン要素25の配列の態様は特に限定されない。複数のパターン要素25は、Y方向やX方向に沿って並んでいてもよいし、これらとは異なる方向に並んでいてもよい。すなわち、複数のパターン要素25は、隣接するパターン要素25間の距離が、操作方向や操作方向と直交する方向に隣接するパターン要素25間において最も近くなるように並んでいてもよいし、操作方向および操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に隣接するパターン要素25間において最も近くなるように並んでいてもよい。
例えば、図12が示す例では、パターン要素群24のパターン要素25は、隣接するパターン要素25間の距離が、Y方向に対して傾斜した方向に隣接するパターン要素25間において最も近くなるように並んでいる。図12が示すように、互いに隣接するパターン要素25は接していてもよい。また例えば、図13が示す例では、パターン要素群24aのパターン要素25aは、隣接するパターン要素25a間の距離が、X方向に隣接するパターン要素25a間において最も近くなるように並んでいる。
隣接するパターン要素25間の距離が操作方向もしくは操作方向と直交する方向において最も近くなるように複数のパターン要素25が並んでいるとき、パターン要素25の縁部に位置する低濃度領域21や高濃度領域23は、操作方向および操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に延びていることが好ましい。また、パターン要素25の縁部に位置する低濃度領域21や高濃度領域23が、操作方向もしくは操作方向と直交する方向に延びているとき、隣接するパターン要素25間の距離が操作方向および操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向において最も近くなるように複数のパターン要素25が並んでいることが好ましい。
こうした構成によれば、パターン要素25の配列方向とパターン要素25の縁部の延びる方向との双方が、操作方向もしくは操作方向と直交する方向と一致する構成と比較して、錯視誘起パターン20を操作方向に往復動させた場合に、パターン要素25の位置の錯覚が生じやすい。
・パターン要素25の有する濃淡を、仮想的な光の照射に従った陰影として捉えた場合に、この光の照射方向は、少なくとも一部のパターン要素群24のパターン要素25にて、操作方向に対して傾斜していればよい。そして、この光の照射方向が操作方向に対して傾斜した方向であるパターン要素25が、他のパターン要素群24のパターン要素25に対して動くように見える錯視が生じるように、各パターン要素群24のパターン要素25に対する仮想的な光の照射方向が設定され、その方向に応じた濃淡を各パターン要素25が有していればよい。例えば、先の図13が示す例において、パターン要素群24aのパターン要素25aに対する仮想的な光の照射方向は操作方向に対して傾斜しておらず、パターン要素群24bのパターン要素25bに対する仮想的な光の照射方向は操作方向に対して傾斜している。
ただし、すべてのパターン要素群24について、パターン要素25に対する仮想的な光の照射方向が操作方向に対して傾斜している構成の方が、錯視誘起パターン20を操作方向に往復動させた場合に、パターン要素25の位置の錯覚が生じやすいため好ましい。また、こうしたパターン要素25の位置の錯覚を生じやすくするためには、互いに隣り合う2つのパターン要素群24において、各パターン要素群24のパターン要素25に対する仮想的な光の照射方向のなす角度は、180°とは異なる角度であることが好ましく、20°以上160°以下であることがより好ましく、60°以上120°以下であることがさらに好ましい。
・上記実施形態では、錯視誘起パターン20は、低濃度領域21と中濃度領域22と高濃度領域23との3段階の濃度の領域を有し、低濃度領域21と高濃度領域23とがパターン要素25の縁部に位置することによって、パターン要素25の有する濃淡が表された。これに限らず、仮想的な光の照射に従った陰影を示すことが可能であれば、パターン要素25の有する濃淡は、2段階の濃度や4段階以上の濃度の領域を用いて表されてもよい。例えば、図14が示すように、錯視誘起パターン20が、中濃度領域22と、中濃度領域22よりも濃度の高い高濃度領域23とから構成され、パターン要素25の縁部に高濃度領域23が位置することによって、パターン要素25の有する濃淡が表現されてもよい。
すなわち、パターン要素25の縁部には、パターン要素25間の隙間に位置する中濃度領域22よりも色の薄い低濃度領域21および中濃度領域22よりも色の濃い高濃度領域23の少なくとも一方が濃淡形成領域として位置し、パターン要素25において仮想的な光の照射に従った陰影を示す濃淡が形成されていればよい。
・上記図14が示すように、パターン要素25の縁部に位置する上記濃淡形成領域は、閉環を構成していなくてもよい。すなわち、パターン要素25の縁部は環上に位置していれば、視認可能な閉環を構成していなくともよい。例えば、図15が示すように、パターン要素25の縁部が位置する環上において、低濃度領域21の端部と高濃度領域23の端部とは離れていてもよい。
なお、パターン要素25の有する濃淡が仮想的な光の照射に従った陰影として認識されやすくするためには、濃淡形成領域は、パターン要素25の縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以上を占めることが好ましい。また、濃淡形成領域が低濃度領域21と高濃度領域23とから構成される場合、低濃度領域21の位置する部分は、上記環においてその周方向の2分の1以下であり、高濃度領域23の位置する部分は、上記環においてその周方向の2分の1以下であることが好ましい。
・図16が示すように、低濃度領域21や高濃度領域23は、パターン要素25の縁部に限らず、パターン要素25の内部に位置してもよい。要は、パターン要素25は、仮想的な光の照射に従った陰影を示す濃淡を有していればよい。
・上記実施形態では、低濃度領域21と高濃度領域23とは線状に延びてパターン要素25の縁部を構成したが、仮想的な光の照射に従った陰影を示す濃淡を形成可能であれば、低濃度領域21と高濃度領域23とは線状でなくてもよい。
例えば、図17が示すように、パターン要素25は低濃度領域21と高濃度領域23とから構成され、低濃度領域21と高濃度領域23との境界がパターン要素の中央を通る直線状に延びていてもよい。こうした構成においては、低濃度領域21と高濃度領域23との各々は、パターン要素25の縁部と内部とに位置する。
また例えば、低濃度領域21の位置する縁部から高濃度領域23の位置する縁部に向けて、パターン要素25内で濃度が徐々に変化してもよい。すなわち、パターン要素25の有する濃淡がグラデーションを構成していてもよい。
また、パターン要素群24ごとに、こうした濃淡を形成するための低濃度領域21と高濃度領域23との構成が異なっていてもよい。例えば、図18が示す例では、パターン要素群24aのパターン要素25aでは、低濃度領域21と高濃度領域23とは線状に延び、パターン要素群24bのパターン要素25bでは、低濃度領域21と高濃度領域23とはパターン要素25bの中央部まで広がっている。
・錯視誘起パターン20に含まれるパターン要素群24の数は、特に限定されず、錯視誘起パターン20は、互いに隣り合う2つのパターン要素群24を含み、各パターン要素群24は、群ごとの方向からの仮想的な光の照射に従った陰影を示す複数のパターン要素25から構成されていればよい。
・パターン要素群24は、仮想的な光の照射方向が同一となる濃淡を有するパターン要素25の集合であって、互いに隣り合うパターン要素群24の間には、これらのパターン要素群24を区分けする間隔があいていなくてもよいし、パターン要素群24はX方向にも並んでいてもよい。また、Y方向に隣り合うパターン要素群24について、X方向の端部に位置するパターン要素25は、Y方向に延びる直線上に配置されていなくてもよいし、1つのパターン要素群24において、Y方向の端部に位置するパターン要素25は、X方向に延びる直線上に配置されていなくてもよい。
・上記実施形態では、パターン要素群24の並ぶ方向と一致する方向を操作方向としたが、操作方向は、パターン要素群24の並ぶ方向と異なっていてもよい。例えば、図19が示す例では、操作方向は紙面上下方向であり、パターン要素群24の並ぶ方向は操作方向に対して傾斜している。すなわち、錯視誘起パターン20は、少なくとも特定の1つの方向に往復動させるときに錯視を引き起こすパターンであればよい。
また、操作方向に錯視誘起パターン20を往復動させたときに見えるパターン要素25の動きは、複数のパターン要素群24のなかで、一部のパターン要素群24が他のパターン要素群24に対して相対的に動いているように見える動きであればよい。例えば、上記実施形態の錯視誘起パターン20において、パターン要素群24aのパターン要素25aが、パターン要素群24bのパターン要素25bに対して動いているように見えてもよい。
・錯視誘起パターン20は、単色によって表現されてもよいし、複数色によって表現されてもよい。上記実施形態では、パターン要素25の濃淡を形成するための各領域の色の濃さは、各領域における単位面積当たりの構成要素の占める面積の割合によって規定されたが、これに限らず、各領域の示す色の色相や彩度や明度等によって、各領域の色の濃さが規定されてもよい。
<錯視抑制パターン30の構成>
錯視抑制パターン30は、錯視誘起パターン20による錯視の誘起を抑えることの可能なパターンであれば、上記実施形態のパターンとは異なっていてもよい。
例えば、図20が示すように、錯視抑制パターン30は、曲線状の帯が錯視誘起パターン20の中央部から延びる渦巻き状のパターンであってもよい。また、錯視抑制パターン30は、錯視誘起パターン20と重ならず、例えば、錯視誘起パターン20と接する位置に配置されていてもよい。
なお、錯視抑制パターン30が、錯視を抑えやすくするため、すなわち、パターン要素25の位置の認識の基準として機能しやすくするためには、錯視抑制パターン30は、1つのパターン要素群24を横切って延びる帯状の部分と、このパターン要素群24と隣接するパターン要素群24を横切って延びる帯状の部分とを有し、これらの帯状部分が1つの連続した帯形状の一部であることが好ましい。
以上説明したように、上記実施形態および変形例の複写防止媒体によれば、以下の効果が得られる。なお、上記実施形態および変形例においては、パターン要素群24bが第1パターン要素群の一例であり、パターン要素群24aが第2パターン要素群の一例である。
(1)複写防止媒体100においては、錯視誘起パターン20によって錯視が引き起こされる一方、複写防止媒体100の複写物においては、錯視抑制パターン30の顕像化によってこうした錯視が生じることが抑えられる。したがって、複写防止媒体100とその複写物とを、錯視抑制パターン30の顕像化の有無というパターンの見え方の違いに加えて、錯視が生じるか否かによって判別することができる。それゆえ、複写防止媒体100と複写物との判別が容易となるため、複写防止媒体100の偽造防止効果が高められる。
(2)以下の構成によって、操作方向に沿って表示面を往復動させた場合に、パターン要素25の位置の錯覚が生じやすくなる。すなわち、第1パターン要素群が、操作方向とは異なる方向に、第2パターン要素群に対して相対的に動くように見える錯視が生じやすくなり、複写防止媒体100とその複写物との判別がより容易になる。
・第1パターン要素群と第2パターン要素群とが操作方向に沿って並んでいる。
・第1パターン要素群に含まれるパターン要素25に対する仮想的な光の照射方向と、第2パターン要素群に含まれるパターン要素25に対する仮想的な光の照射方向とのなす角の角度は、180°とは異なる角度である。
・第1パターン要素群および第2パターン要素群の少なくとも一方において、パターン要素25の縁部にて低濃度領域21および高濃度領域23の少なくとも一方である濃淡形成領域の位置する部分は、操作方向および操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に延びている。
・第1パターン要素群および第2パターン要素群の少なくとも一方において、複数のパターン要素25は、隣接するパターン要素25間の距離が、操作方向および操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に並ぶパターン要素25間において最も近くなるように並んでいる。
(3)以下の構成によって、パターン要素25の有する濃淡が仮想的な光の照射に従った陰影として認識されやすくなる。したがって、操作方向に沿って表示面を往復動させた場合に、錯視が生じやすくなる。
・錯視誘起パターン20は、中濃度領域22と、低濃度領域21および高濃度領域23の少なくとも一方である濃淡形成領域とを有し、濃淡形成領域は、パターン要素25における縁部に位置し、当該縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以上を占める。
・濃淡形成領域は、線状に延びる形状を有してパターン要素25の縁部を構成する。
・濃淡形成領域が低濃度領域21と高濃度領域23とから構成され、低濃度領域21の位置する部分は、パターン要素25の縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下であり、高濃度領域23の位置する部分は、上記縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下である。
(4)錯視誘起パターン20と錯視抑制パターン30とが重なり、錯視抑制パターン30が、第1パターン要素群を横切って延びる帯状の部分と、第2パターン要素群を横切って延びる帯状の部分とを有する構成では、複写防止媒体100の複写物において、錯視が好適に抑制される。したがって、複写防止媒体100とその複写物との判別がより容易である。
10…複写防止パターン、20…錯視誘起パターン、21…低濃度領域、22…中濃度領域、23…高濃度領域、24…パターン要素群、25…パターン要素、30…錯視抑制パターン、31…非再現領域、32…再現領域、100…複写防止媒体。

Claims (9)

  1. 錯視を誘起する錯視誘起パターンと、前記錯視誘起パターンによる錯視の誘起を抑制する錯視抑制パターンとを含む複写防止パターンを表示面に含む媒体であって、
    前記錯視誘起パターンは、互いに隣り合う第1パターン要素群と第2パターン要素群とを含み、前記第1パターン要素群と前記第2パターン要素群とは、群ごとの方向からの仮想的な光の照射に従った陰影を各々が示す複数のパターン要素を含み、
    前記第1パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向は、前記表示面に含まれる1つの方向である操作方向に対して傾斜した方向であり、
    前記錯視誘起パターンは、前記操作方向に沿った前記表示面の往復動によって、前記第1パターン要素群が、前記操作方向とは異なる方向に、前記第2パターン要素群に対して相対的に動くように見える錯視を生じさせ、
    前記錯視抑制パターンは、複写機による前記表示面の複写によって顕像化するように構成され、前記錯視抑制パターンの顕像化によって前記錯視の誘起を抑制する
    複写防止媒体。
  2. 前記第1パターン要素群と前記第2パターン要素群とは、前記操作方向に沿って並んでいる
    請求項1に記載の複写防止媒体。
  3. 前記第1パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状は、前記第2パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状と異なる
    請求項1または2に記載の複写防止媒体。
  4. 前記第1パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状は、前記第2パターン要素群に含まれる前記パターン要素の有する形状と同一である
    請求項1または2に記載の複写防止媒体。
  5. 前記第1パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向と、前記第2パターン要素群に対する前記仮想的な光の照射方向とのなす角の角度は、180°とは異なる角度である
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の複写防止媒体。
  6. 前記パターン要素における縁部は、各パターン要素に1つずつの環上に位置し、
    前記錯視誘起パターンは、前記パターン要素間の隙間に位置する中濃度領域と、前記中濃度領域よりも色の薄い低濃度領域および前記中濃度領域よりも色の濃い高濃度領域の少なくとも一方である濃淡形成領域とを有し、
    前記濃淡形成領域は、前記パターン要素における前記縁部に位置し、当該縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以上を占める
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の複写防止媒体。
  7. 前記錯視誘起パターンは、前記濃淡形成領域として前記低濃度領域および前記高濃度領域を有し、
    前記低濃度領域の位置する部分は、前記縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下であり、前記高濃度領域の位置する部分は、前記縁部が位置する環においてその周方向の2分の1以下である
    請求項に記載の複写防止媒体。
  8. 前記第1パターン要素群および前記第2パターン要素群の少なくとも一方において、前記パターン要素における前記濃淡形成領域の位置する前記縁部は、前記操作方向および前記操作方向と直交する方向のいずれとも異なる方向に延びている
    請求項6または7に記載の複写防止媒体。
  9. 前記錯視誘起パターンと前記錯視抑制パターンとは重なり、
    前記錯視抑制パターンは、前記第1パターン要素群を横切って延びる帯状の部分と、前記第2パターン要素群を横切って延びる帯状の部分とを有する
    請求項1〜のいずれか一項に記載の複写防止媒体。
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