以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る回転工具としてのインパクトドライバ1の概略構成を示す側面図である。インパクトドライバ1は、モータ2(駆動部)から得られる回転駆動力によって、アンビル3に取り付けられたビットと呼ばれる工具(図示省略)を回転させることにより、ボルトやナット等に回転打撃力を与える。
以下の説明において、図1における左側をインパクトドライバの前方(以下、単に前方ともいう)といい、図1における右側をインパクトドライバの後方(以下、単に後方ともいう)という。また、図1における上側をインパクトドライバの上方といい、図1における下側をインパクトドライバの下方という。なお、インパクトドライバ1の駆動部分に関する説明は省略する。
インパクトドライバ1は、モータ2と、モータ2によって駆動される図示しない駆動機構と、モータ2及び前記駆動機構を収納するハウジング4と、フロントカバー5と、プロテクタ6と、サイドカバー7と、吊り具機構8と、フック部9と(固定吊り具)を備える。モータ2は、前記駆動機構に対して回転駆動力を伝達する出力軸2aを有する。図1において、符号Pは、モータ2の回転軸線である。モータ2及び前記駆動機構の構成については、詳しい説明を省略する。
ハウジング4は、ハウジング本体部11と、グリップ部12と、電源取付部13とを有する。ハウジング4は、右ハウジング4a及び左ハウジング4bを組み合わせることによって構成されている(図2参照)。すなわち、ハウジング4は、モータ2の回転軸線Pの軸線方向(以下、回転軸方向という)から見て、左右に分割された構成を有する。右ハウジング4a及び左ハウジング4bを組み合わせることにより、ハウジング本体部11、グリップ部12及び電源取付部13が構成される。
ハウジング本体部11は、モータ2の回転軸方向に延びる円筒状に形成されている。ハウジング本体部11の内部には、モータ2及び前記駆動機構が収容されている。
ハウジング本体部11の前端部には開口(図示省略)が設けられていて、該開口ではアンビル3が前記回転軸方向の前方に向かって突出している。図1に示すように、ハウジング本体部11の前端部は、アンビル3が前記開口を挿通した状態で、フロントカバー5によって覆われている。
ハウジング本体部11の後端部は、後述する吊り具機構8の保持部材30(保持部)が取り付けられた状態で、プロテクタ6によって覆われている。
ハウジング本体部11の側面には、前記回転軸方向から見て左右両側に、吊り具機構8の一対の吊り具20,60を配置するための凹部15,16がそれぞれ形成されている(図2、図3、図9参照)。すなわち、一対の吊り具20,60は、ハウジング本体部11の側面における左右両側に配置されている。ハウジング本体部11の側面における左右両側には、吊り具20,60を覆うように、サイドカバー7が配置されている。
このように、一対の吊り具20,60を、ハウジング本体部11の左右両側に配置することにより、作業者が左利きであっても右利きであっても、作業者の利き手によって一対の吊り具20,60の一方を掛止具に装着することが可能になる。
なお、ハウジング本体部11に設けられた凹部15,16の構成は同一であり、吊り具20,60の構成も同一なので、以下の説明では、ハウジング本体部11の側面に形成された凹部15と該凹部15内に配置された吊り具20の構成についてのみ説明する。
ハウジング本体部11の側面に形成された凹部15は、後述するように、吊り具20を収納可能な形状に形成されている。すなわち、凹部15は、吊り具20の後述する支持部本体24,25を収納可能な幅広の第1凹部15aと、スライド部26,27を収納可能で且つ該第1凹部15aよりも幅が狭い第2凹部15bとを有する(図3参照)。
図1に示すように、グリップ部12は、作業者が把持するための部分であり、ハウジング本体部11から、回転軸線Pに直交する方向(所定の方向)に延びている。図1では、グリップ部12は、ハウジング本体部11から下方に向かって延びている。グリップ部12には、モータ2のON/OFFなどの駆動を制御するためのトリガースイッチ12aが設けられている。
電源取付部13は、グリップ部12のハウジング本体部11とは反対側に設けられている。図1では、電源取付部13は、グリップ部12の下方に設けられている。電源取付部13は、インパクトドライバ1に対して電力を供給するバッテリBを接続可能に構成されている。電源取付部13は、バッテリBの上部の一部を覆うように、インパクトドライバ1の前後左右方向に広がる板状に形成されている。
上述のような構成を有するハウジング本体部11、グリップ部12及び電源取付部13は、一体で形成されている。
フック部9は、作業者の腰等に付けられたカラビナ等の掛止具に装着される。フック部9は、環状の吊り部9aと固定部9bとを有し、吊り部9aがインパクトドライバ1の後方に突出するように、固定部9bが電源取付部13の側方にネジによって取り付けられている。フック部9は、少なくとも外周側が厚み方向に曲げられている。具体的には、フック部9は、吊り部9aの内周側及び外周側が厚み方向に曲げられているとともに、固定部9bの外周側も厚み方向に曲げられている。これにより、フック部を平板によって構成する場合に比べて、フック部の剛性を向上することができ、該フック部の強度向上を図れる。
フック部9は、吊り部9aが前記掛止具に装着される。よって、フック部9を掛止具に装着した場合には、電源取付部13が上側に位置するとともに、インパクトドライバ1の中でも重量の大きいモータ2や駆動機構が収納されたハウジング本体部11が下側に位置する。
吊り部9aは、楕円状の穴を有する環状に形成されている。吊り部9aには、長軸方向の中央部分に、該吊り部9aの厚み方向に凹んだ凹部9cが形成されている。凹部9cは、吊り部9aにおいて、短軸方向の2箇所に設けられている。
凹部9cを設けることにより、吊り部9aを掛止具に対して容易に着脱することができる。すなわち、凹部9cを例えばカラビナのゲート部に当てることにより、該ゲート部に対して吊り部9aが滑りにくくなる。よって、掛止具に対する吊り部9aの着脱が容易になる。
なお、フック部9は、インパクトドライバ1の上下方向に対して斜めに傾いた状態で、電源取付部13に取り付けられている。これにより、吊り部9aを掛止具に対して容易に着脱することができる。
また、吊り部9aと固定部9bとの間には、吊り部9aが電源取付部13から離れるように段差が形成されている。これにより、吊り部9aをインパクトドライバ1のハウジング4から離間させることができる。よって、吊り部9aを掛止具に対して容易に着脱することができる。
(吊り具機構)
次に、ハウジング本体部11に配置された吊り具機構8の構成を、図1から図7を用いて説明する。図2は、インパクトドライバ1を斜め後方から見た場合の斜視図である。図3は、吊り具20を引き出し位置にスライド移動させた状態の図1相当図である。なお、図2及び図3は、説明のために、プロテクタ6及びサイドカバー7を取り外した状態のインパクトドライバ1を示している。
吊り具機構8は、吊り具20がハウジング本体部11に対し、モータ2の回転軸方向にスライド移動可能に構成されている。吊り具20は、ハウジング本体部11から引き出した状態で、該吊り具20を掛止具に装着可能な吊り部20aを有する(図3参照)。これにより、掛止具にインパクトドライバ1を吊り下げることができる。
図2及び図3に示すように、吊り具機構8は、ハウジング本体部11の側面上にスライド移動可能に配置された吊り具20と、吊り具20をハウジング本体部11に保持するための保持部材30(保持部)と、吊り具20を収容位置及び引き出し位置でそれぞれ固定するための係止機構40とを備える。
図4に、吊り具20の平面図を示す。図5に、吊り具20を連結部側から見た図を示す。
図4に示すように、吊り具20は、平面視でU字状に形成されている。また、吊り具20は、板状の部材を折り曲げることにより形成されている。すなわち、吊り具20は、平面視でU字状の板状部材である。
吊り具20は、一方向に延びる一対の支持部21,22と、支持部21,22同士を一端側で連結する連結部23とを有する。吊り具20は、一対の支持部21,22の中間点を結んだ線を中心に、対称の形状を有する。このように、吊り具20が対称な形状を有することにより、右利き用及び左利き用で同じ構成を有する一対の吊り具20,60をハウジング本体部11の左右両側に配置することができる。したがって、吊り具20の生産コストを低減することができる。
吊り具20は、連結部23がハウジング本体部11におけるモータ2の回転軸方向の外方側に位置するように、ハウジング本体部11の側面に沿って配置されている。これにより、吊り具20をハウジング本体部11に対してコンパクトに配置することができる。したがって、インパクトドライバ1の大型化を抑制することができる。
一対の支持部21,22は、連結部23側から見て、それぞれ、吊り具20の内方側部分が外方側部分に比べて厚み方向の一方側に位置するように傾斜した状態で、連結部23によって連結されている。すなわち、吊り具20が円筒状のハウジング本体部11の側面上に配置された状態で、モータ2の回転軸方向から見て、一対の支持部21,22は前記側面に沿うように設けられている。よって、吊り具20は、連結部23側から見て、ハウジング本体部11の側面に沿うように湾曲している。このような吊り具20の構成により、吊り具20をハウジング本体部11に対してよりコンパクトに配置することができる。したがって、インパクトドライバ1の大型化をより確実に抑制することができる。
一対の支持部21,22は、前記一端側、すなわち連結部23側に位置する支持部本体24,25と、他端側に位置するスライド部26,27とを有する。スライド部26,27の間隔は、支持部本体24,25の間隔よりも狭い。これにより、一対の支持部21,22は、支持部本体24,25とスライド部26,27との間に、それぞれ、段差部28,29を有する。
上述のように、一対の支持部21,22において、連結部23側に位置する支持部本体24,25に比べて間隔が狭いスライド部26,27を設けることにより、後述するように、スライド部26,27に幅方向(ハウジング本体部11の周方向)に突出する突出部26a,27aを設けた場合でも、吊り具20のコンパクト化を図れる。また、上述のように、支持部本体24,25とスライド部26,27との間に、それぞれ、段差部28,29が形成されるため、後述するように、段差部28,29を吊り具のスライド移動を規制する規制機構として利用することができる。
ここで、図3に示すように、ハウジング本体部11には、回転軸線Pを挟んで側面の両側(側面の左右)に吊り具20の支持部21,22を収容可能な凹部15が形成されている。この凹部15は、支持部21,22の支持部本体24,25を収納可能で且つ幅方向(ハウジング本体部11の周方向)の寸法が大きい第1凹部15aと、スライド部26,27を収納可能で且つ第1凹部15aよりも前記寸法が小さい第2凹部15bとを有する。
第1凹部15aと第2凹部15bとの間には、段差部15c(当接部)が形成されている。この段差部15cには、図2に示すように吊り具20が凹部15内に収容された際に、支持部21,22の段差部28,29が当接する。したがって、凹部15の段差部15c及び支持部21,22の段差部28,29が、吊り具20が収納位置(図2に示す位置)よりもアンビル3側に移動しないように規制する。
第2凹部15bには、該第2凹部15bを構成する幅方向(ハウジング本体部11の周方向)の両側面に、それぞれ、モータ2の回転軸方向に延びる溝15dが形成されている。溝15d内には、後述するスライド部26,27の突出部26a,27aが位置付けられる。
図2及び図3に示すように、ハウジング本体部11には、第2凹部15bの後方側、すなわち、第2凹部15bのアンビル3とは反対側には、膨出部15eが設けられている。膨出部15eは、第2凹部15bの後方側における幅方向(ハウジング本体部11の周方向)の中央部分に設けられている。膨出部15eは、前記幅方向の寸法が、一対の支持部21,22におけるスライド部26,27の間隔よりも大きくなるように形成されている。
これにより、第2凹部15bにおいて、第2凹部15bを区画する側面と膨出部15eとの間には、支持部21,22のみが通過可能なスペースが形成される。したがって、吊り具20をハウジング本体部11に対して引き出した際に、一対の支持部21,22の段差部28,29における吊り具20の内方側部分が、膨出部15eに当接する。よって、一対の支持部21,22の段差部28,29及び膨出部15eが、吊り具20の引き出し方向のスライド移動を規制する。
スライド部26,27は、それぞれ、一端側が支持部本体24,25に接続されているとともに、他端側に、吊り具20の幅方向(ハウジング本体部11の周方向)の外方に向かって突出する突出部26a,27aを有する。
突出部26a,27aは、ハウジング本体部11の第2凹部15bの両側面に設けられた溝15d内に配置されて、該溝15d内をモータ2の回転軸方向に移動する。すなわち、スライド部26,27は、ハウジング本体部11に形成された第2凹部15b内を、前記回転軸方向に摺動可能に配置されている。
上述のスライド部26,27の構成により、吊り具20は、ハウジング本体部11に対し、図2に示す収納位置と、図3に示す引き出し位置との間でスライド移動することができる。
なお、スライド部26,27において、突出部26a,27aの近傍における前記幅方向の寸法は、他の部分の前記幅方向の寸法に比べて小さい。
支持部本体24,25は、スライド部26,27が第2凹部15b内をスライド移動することにより、吊り具20が図3に示す引き出し位置に位置付けられた状態で、連結部23とともに吊り部20aを構成する。
支持部本体24,25には、一端側(連結部23側)の吊り具20の内方側に、台形状に切り欠かれた第1切り欠き部24a,25aが設けられている。また、支持部本体24,25には、第1切り欠き部24a,25aよりも他端側の吊り具20の外方側に、台形状に切り欠かれた第2切り欠き部24b,25bが設けられている。
以上の構成により、支持部本体24,25には、第1切り欠き部24a,25aと第2切り欠き部24b,25bとにより、支持部本体24,25同士の間隔が小さくなるようにクランク状に屈曲したクランク部24c,25cが形成されている。後述するように、掛止具であるカラビナから吊り具20を取り外す際に、クランク部24c,25cは、カラビナのゲート部と本体部との間に入り込む。これにより、カラビナのゲート部を作業者が片手でこじ開けることが可能になる。
なお、第1切り欠き部24a,25aは、第2切り欠き部24b,25bに比べて、切り欠き長さが長い。
本実施形態では、第1切り欠き部24a,25a及び第2切り欠き部24b,25bは、それぞれ台形状に切り欠かれているとともに、第1切り欠き部24a,25aは、第2切り欠き部24b,25bに比べて、切り欠き長さが長い。しかしながら、第1切り欠き部24a,25a及び第2切り欠き部24b,25bの形状は、カラビナのゲート部を作業者が片手で開けることができる形状であれば、どのような形状であってもよいし、それぞれの切り欠き長さもどのような長さであってもよい。
段差部28,29は、図2に示すように吊り具20がハウジング本体部11の凹部15内で収納位置に位置付けられた際に、吊り具20の外方側部分が凹部15の段差部15cに当接する。一方、図3に示すように吊り具20が引き出し位置に位置付けられた際に、段差部28,29における吊り具20の内方側部分が、ハウジング本体部11に設けられた膨出部15eに当接する。したがって、段差部28,29は、吊り具20のスライド移動を規制する規制機構の一部として機能する。
図4に示すように、段差部28,29は、それぞれ、吊り具20の内方側に、係止切り欠き部28a,29aを有する。係止切り欠き部28a,29aは、それぞれ、半円状に形成されている。この係止切り欠き部28a,29aには、後述する係止機構40の係止部材41,42がそれぞれ係合する。詳しくは後述するように、係止切り欠き部28a,29aには、吊り具20が収容位置と引き出し位置とに位置付けられる際に、係止部材41,42がそれぞれ係合する。これにより、吊り具20を収容位置と引き出し位置とで固定することができる。
連結部23は、一対の支持部21,22の一端側同士を連結する。連結部23は、一対の支持部21,22に対してそれらの厚み方向に延びるように形成されている。すなわち、吊り具20は、連結部23が一対の支持部21,22に対して厚み方向に折り曲げられた形状を有する。連結部23をこのような形状にすることにより、連結部23を折り曲げない構成に比べて、吊り具20を長手方向にコンパクトな構成にすることができるとともに、吊り具20の剛性を向上することができる。
図5に、吊り具20を、連結部23側から見た図を示す。図5に示すように、連結部23は、既述のように傾いた状態で配置される一対の支持部21,22を連結するように設けられている。すなわち、連結部23は、その厚み方向から見て概略台形状に形成されている。
連結部23には、一対の支持部21,22における吊り具20の内方側同士を繋ぐ部分に、半円状の切り欠き部23aが設けられている。この切り欠き部23aを設けることにより、後述するように、カラビナに吊り具20を装着する際に、連結部23がカラビナに対して滑るのを防止できる。
連結部23と一対の支持部21,22との接続部分20b,20cは、その外方側に滑らかな曲面からなるR部を有する。これにより、掛止具に装着された吊り具20を外す際に、吊り具20の接続部分20b,20cが掛止具と干渉するのを防止できる。よって、吊り具20を掛止具から容易に外すことができる。
次に、保持部材30の構成を、図2、3、6、7を用いて説明する。図6は、保持部材30を連結部32側(インパクトドライバ1の後方側)から見た図であり、図7は、保持部材30をインパクトドライバ1の側方から見た側面図である。
保持部材30は、一対の吊り具20,60をハウジング本体部11に保持する。具体的には、保持部材30は、ハウジング本体部11に装着された状態で該ハウジング本体部11の側面上に配置される複数(本実施形態では4つ)の保持部31と、保持部31同士を連結する連結部32とを有する。保持部材30は、保持部31及び連結部32が一体で形成された板状部材からなる。保持部31は、板状部材がその厚み方向に折り曲げられることにより構成される。
複数の保持部31は、それぞれ、ハウジング本体部11の側面に沿うように湾曲している。保持部材30は、該保持部材30がハウジング本体部11の後端部に取り付けられた状態で、複数の保持部31のうち2つの保持部31が、ハウジング本体部11の側面上に回転軸線Pを挟んで対向する位置に位置付けられるように形成されている。本実施形態の場合、保持部材30は、4つの保持部31を有するため、該4つの保持部31によってハウジング本体部11を四方から保持する。
複数の保持部31は、保持部材30がハウジング本体部11の後端部に取り付けられた状態で、ハウジング本体部11の側面上に配置された一対の吊り具20,60を、ハウジング本体部11の径方向外方から保持する。これにより、一対の吊り具20,60は、ハウジング本体部11に対してモータ2の回転軸方向にはスライド移動可能である一方、ハウジング本体部11の径方向への移動は規制される。
連結部32は、保持部材30がハウジング本体部11の後端部に取り付けられた状態で、ハウジング本体部11の径方向に延びるように形成されている。連結部32の両端部には、それぞれ、一対の保持部31が設けられている。なお、連結部32には、両端部における一対の保持部31の間に、保持部材30をハウジング本体部11に固定するためのネジが挿通する貫通穴33が設けられている。
上述のような構成を有する保持部材30を、ハウジング本体部11の後端部に取り付けることにより、ハウジング本体部11の剛性を向上することができる。すなわち、保持部材30は、右ハウジング4a及び左ハウジング4bによって構成されるハウジング本体部11の後端部を径方向に保持することができるため、右ハウジング4aと左ハウジング4bとをより強固に接続することができる。これにより、モータ2の出力軸2aの軸ぶれを抑えることができるとともに、モータ2の駆動によってハウジング本体部11内が高温になった際のハウジング本体部11の熱膨張を抑制することができる。したがって、モータ2の駆動によって生じる振動などを低減できる。
次に、吊り具20を収納位置及び引き出し位置で固定するための係止機構40の構成を、図2及び図3を用いて説明する。
図2及び図3に示すように、ハウジング本体部11の凹部15内には、係止機構40の一対の係止部材41,42が配置されている。係止機構40は、係止部材41,42と、吊り具20の段差部28,29に設けられた係止切り欠き部28a,29aとによって構成されている。すなわち、吊り具20の段差部28,29に設けられた係止切り欠き部28a,29aに、係止部材41,42がそれぞれ係合することにより、吊り具20がハウジング本体部11に対して所定位置で固定される。
係止部材41,42は、細長い板状部材が曲げられることにより形成された板ばねである。具体的には、係止部材41,42は、それぞれ、長手方向の中央部分に位置し且つ厚み方向に半円状に曲げられた取付部41a,42aと、長手方向の両端部に位置し且つ取付部41a,42aとは厚み方向の反対側に曲げられた係合部41b,41c,42b,42cとを有する。すなわち、係止部材41の長手方向の両端部には、それぞれ、係合部41b,41cが設けられているとともに、係止部材42の長手方向の両端部には、ぞれぞれ、係合部42b,42cが設けられている。なお、係合部41b,41c,42b,42cは、先端部分が吊り具20の係止切り欠き部28a,29aに係合可能なように円弧状に形成されている。
係止部材41,42の取付部41a,42aは、それぞれ、ハウジング本体部11の凹部15内に設けられた固定支持部15f,15g内に配置されている。固定支持部15f,15gは、それぞれ、ハウジング本体部11を側方から見て円弧状に形成された溝を有する。
具体的には、固定支持部15f,15gは、ハウジング本体部11の凹部15内の回転軸線方向の中央部分に、円弧状の溝が凹部15の幅方向(ハウジング本体部11の側面の周方向)の中央に向かって凸になるように設けられている。このように形成された固定支持部15f,15gに対して、係止部材41,42の取付部41a,42aを配置することにより、該係止部材41,42の係合部41b,41c,42b,42cが、取付部41a,42aよりもハウジング本体部11の凹部15の側面側に配置される。なお、係止部材41,42の係合部41b,41c,42b,42cは、該係止部材41,42の厚み方向に変位可能な自由端である。
上述のように係止部材41,42を配置することにより、吊り具20の段差部28,29に設けられた係止切り欠き部28a,29aが係合部41b,42bに位置付けられた際に、係合部41b,42bが係止切り欠き部28a,29aにそれぞれ係合する。また、吊り具20の段差部28,29に設けられた係止切り欠き部28a,29aが係合部41c,42cに位置付けられた際に、係合部41c,42cが係止切り欠き部28a,29aにそれぞれ係合する。
具体的には、吊り具20が図2に示す収納位置に位置している場合には、係止部材41の係合部41bが、吊り具20の段差部28に設けられた係止切り欠き部28aに係合するとともに、係止部材42の係合部42bが、吊り具20の段差部29に設けられた係止切り欠き部29aに係合する。一方、吊り具20が図3に示す引き出し位置に位置している場合には、係止部材41の係合部41cが、吊り具20の係止切り欠き部28aに係合するとともに、係止部材42の係合部42cが、吊り具20の係止切り欠き部29aに係合する。
これにより、吊り具20を、係止部材41,42によって、ハウジング本体部11に対して、図2に示す収納位置と、図3に示す引き出し位置とで、それぞれ固定することができる。上述のように、係止部材41,42は、それぞれ板ばねによって構成されている。そのため、係止部材41,42の係合部41b,42bが吊り具20の係止切り欠き部28a,29aに係合した状態、または、係合部41c,42cが係止切り欠き部28a,29aに係合した状態であっても、吊り具20をスライド移動させることによって、係合部41b,41cと係止切り欠き部28a,29aとの係合状態、または、係合部42b,42cとの係合状態を解除することができる。
以上の構成により、カラビナなどの掛止具に装着される吊り具20を、ハウジング本体部11に対してスライド移動させることにより、該吊り具20を収納位置と引き出し位置とに位置付けることができる。これにより、吊り具20をハウジング本体部11の凹部15内にコンパクトに収納できるとともに、使用時には、吊り具20をハウジング本体部11に対して容易に引き出すことができる。
また、ハウジング本体部11に吊り具20を設けることにより、別体の吊り具を取り付ける構成に比べて、コンパクト化及び吊り具20とハウジング本体部11との接続部分の強度向上を図れるとともに、吊り具20を取り付ける際の問題が生じるのを防止できる。
さらに、以上の構成により、吊り具20を収納位置及び引き出し位置で固定することができるため、吊り具20をハウジング本体部11から引き出して使用している状態で、吊り具20が収納位置側にスライド移動するのを規制することができる。
吊り具20は、ハウジング本体部11の側面に設けられた凹部15内に収容されている。これにより、ハウジング本体部11に対して吊り具20をコンパクトに収容することができる。すなわち、吊り具20は、ハウジング本体部11の側面に設けられた凹部15内に収容されるため、吊り具20がハウジング本体部11の外方に突出するのを抑制することができる。
吊り具20は、ハウジング本体部11の側面に沿うように湾曲している。これにより、ハウジング本体部11に対して吊り具20をよりコンパクトに配置することができる。したがって、吊り具20による回転工具の大型化をより確実に抑制することができる。
吊り具20は、ハウジング本体部11を挟んで対向する位置に一対、配置されている。これにより、ハウジング本体部11を回転軸方向から見てハウジング本体部11を挟み込むように、すなわちハウジング本体部11の両側に、吊り具20が位置付けられる。よって、作業者が右利きであっても左利きであっても、吊り具20を掛止具に容易に装着することができる。
インパクトドライバ1は、吊り具20を、凹部15内に収納された収納位置で固定する一方、凹部15から引き出した引き出し位置で固定する係止部材41,42をさらに備える。
これにより、吊り具20を収納位置と引き出し位置とにそれぞれ固定することができる。したがって、作業者の意図と関係なく吊り具20がハウジング本体部11に対してスライド移動するのを防止できる。
(カラビナからの取り外し)
次に、上述のような構成を有する吊り具20をカラビナ100に装着した状態から取り外す場合の動作を、図8を用いて説明する。図8は、カラビナ100から吊り具20を取り外す様子を模式的に示す図である。
カラビナ100は、C字状の本体部101と、該本体部101の一端側に回転可能に接続された棒状のゲート部102とを有する。ゲート部102は、基端側が本体部101に該本体部101の内方に向かって回転可能に支持されている一方、先端側が本体部101の他端側に係合可能な構成を有する。カラビナ100は、一般的な構成と同様なので、詳しい説明を省略する。
吊り具20をカラビナ100に装着した状態から該吊り具20を取り外す際には、まず、図8に示すように、ゲート部102に対し、吊り具20における一対の支持部本体24,25のうちカラビナ100の外方に位置する支持部本体24の第1切り欠き部24aを押し当てて、ゲート部102を本体部101の内方に少し回転させる。
そして、支持部本体24のクランク部24cを、ゲート部102の先端部と本体部101の他端側との間に挿入することにより、支持部本体24の第2切り欠き部24bをカラビナ100の本体部101の他端部に押し当てる。
これにより、ゲート部102の先端部と本体部101の他端部との間に、支持部本体24のクランク部24cを位置付けることができる。そして、該支持部本体24をそのままカラビナ100の本体部101の内方に押し込むことにより、カラビナ100に対する吊り具20の装着状態が解除される。
以上のように、吊り具20をカラビナ100に装着した状態から取り外す際に、カラビナ100のゲート部102に吊り具20の支持部本体24の第1切り欠き部24aを押し当てることにより、支持部本体24がゲート部102に対して滑るのを抑制することができる。また、吊り具20の支持部本体24の第2切り欠き部24bをカラビナ100の本体部101の他端部に押し当てることにより、支持部本体24が本体部101に対して滑るのを抑制することができる。
したがって、吊り具20に第1切り欠き部24a,25a及び第2切り欠き部24b,25bを設けることにより、カラビナ100から吊り具20を取り外す際に、吊り具20がカラビナ100に対して滑るのを防止できる。よって、カラビナ100から吊り具20を容易に取り外すことができる。
(吊り具の固定構造)
次に、吊り具20を引き出し位置に位置付けた状態で、ハウジング本体部11に対して固定する構成を、図9及び図10を用いて説明する。なお、図9は、プロテクタ6、サイドカバー7及び係止部材41,42を取り外した状態のインパクトドライバ1の側面を示す図である。図10は、固定部材50を上方から見た図である。図9において、符号16cは、凹部15の段差部15cと同様の構成を有する段差部である。
以下の説明では、吊り具60について説明するが、吊り具20についても同様に、固定部材50を用いて、引き出し位置で固定することができる。
図9に示すように、吊り具60を、ハウジング本体部11に対して引き出した位置で、固定部材50(固定部)によって固定する。固定部材50は、例えば棒状の部材によって構成されている。固定部材50は、図9及び図10に示すように、C字状に曲げられているとともに、両端部が折り返された形状を有する。具体的には、固定部材50は、一対の折り返し部51,52と、折り返し部51,52を連結する連結部53とを有する。一対の折り返し部51,52は、連結部53に対して同じ側に折り曲げられている。
上述のような構成を有する固定部材50は、図9に示すように、折り返し部51,52が、それぞれ、吊り具60の段差部68,69とハウジング本体部11の凹部16の段差部16cとの間に挟みこまれるように、インパクトドライバ1に対して取り付けられる。このとき、連結部53は、吊り具60に対してハウジング本体部11の径方向外方側に位置付けられる。これにより、固定部材50が、ハウジング本体部11の凹部16内への吊り具60のスライド移動を規制するため、吊り具60は、引き出し位置で固定される。
したがって、以上の構成により、吊り具60が誤ってハウジング本体部11の凹部16内へスライド移動するのを防止できる。
なお、吊り具60を固定する構成としては、上述のような固定部材50を用いた構成に限らず、例えば、ボルトやピン等によって、吊り具60をハウジング本体部11、プロテクタ6及びサイドカバー7の少なくとも一つに固定してもよいし、吊り具60の引き出し位置において連結部23とハウジング本体部11との間にスライド移動を規制する規制部材を取り付けてもよい。
また、ハウジング本体部11に、バネ等によってハウジング本体部11の径方向に進退可能な突起部を設けてもよい。この突起部は、吊り具60がスライド移動している際には径方向内方側に位置付けられる一方、吊り具60が引き出し位置に位置している際には径方向外方に突出するように設けられている。また、前記突起部は、吊り具60が引き出し位置に位置付けられた状態で、吊り具60における段差部68,69の収納位置への移動を規制する位置に設けられている。前記突起部は、爪形状でもよいし、ピン形状でもよい。
さらに、ハウジング本体部11の外周面上に、吊り具20の収納位置へのスライド移動を規制する第1位置と、吊り具60の収納位置へのスライド移動を規制する第2位置とに切り替え可能なように、ハウジング本体部11の周方向に移動可能な移動部材を設けてもよい。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、吊り具20,60は、板状部材を曲げることにより形成されている。しかしながら、吊り具20,60を、棒状部材を曲げることによって形成してもよい。
前記実施形態では、吊り具20は、段差部28,29を有する。しかしながら、支持部本体24,25同士の間隔とスライド部26,27同士の間隔とが等しくてもよい。すなわち、吊り具20に段差部を設けなくてもよい。また、支持部本体24,25同士の間隔が、スライド部26,27同士の間隔よりも大きくてもよい。
前記実施形態では、グリップ部12がハウジング本体部11から回転軸線Pに直交する方向に延びているが、この限りではなく、グリップ部12をハウジング本体部11に対して回転軸方向に配置してもよい。
前記実施形態では、回転工具として、インパクトドライバ1を例に挙げている。しかしながら、工具を回転させる駆動部がハウジング本体部11内に収納された構成であれば、どのような構成の回転工具であってもよい。
(その他の参考事項)
以下、上記実施形態に関する参考事項について説明する。
上記一実施形態に係る回転工具は、工具を回転させる駆動部と、内部に前記駆動部を収納可能なように前記駆動部の回転軸方向に延びる筒状に形成されたハウジング本体部と、前記ハウジング本体部から所定の方向に延びるグリップ部とを有するハウジングと、前記ハウジングを吊り下げ可能な吊り部を有し、前記ハウジング本体部における前記回転軸方向の端部に、前記ハウジング本体部に対して前記回転軸方向にスライド移動可能に設けられた吊り具と、を備える。前記ハウジング本体部には、前記吊り具を収容可能で且つ該吊り具が前記回転軸方向にスライド移動可能な収容部が設けられている(第1の構成)。
これにより、工具を回転させる駆動部が収納されたハウジング本体部の回転軸方向の端部に設けられた吊り具によって、回転工具を吊り下げることができる。この吊り具は、前記ハウジング本体部に設けられた収容部内に前記回転軸方向にスライド移動可能に収容されている。そのため、別体の吊り具をハウジング本体部に取り付ける必要がなくなり、上述の特許文献2に開示されている構成のような不具合を生じることがない。
すなわち、ハウジング本体部に吊り具を設けることにより、別体の吊り具を取り付ける前記特許文献2に開示されている構成に比べて、コンパクト化及び吊り具とハウジング本体部との接続部分の強度向上を図れるとともに、吊り具を取り付ける際の問題が生じるのを防止できる。
また、前記吊り具が不要な場合には、前記吊り具をスライド移動させることにより前記ハウジング本体部の収容部内に収容できるため、回転工具のコンパクト化を図れる。
さらに、上述のように、前記ハウジング本体部に対して前記吊り具をスライド移動可能な構成にすることにより、前記吊り具を引き出し位置と前記ハウジング本体部内の収容位置とに容易に切り替えることができる。
前記第1の構成において、前記吊り具は、前記回転軸方向に延びる一対の支持部と該支持部同士を連結する連結部とからなる平面視でU字状の板状部材であり、前記連結部が前記ハウジング本体部における前記回転軸方向の外方側に位置するように前記ハウジング本体部の側面に沿って配置されている。前記一対の支持部は、それぞれ、前記連結部側に位置する支持部本体を有する。前記吊り部は、前記支持部本体及び前記連結部によって構成されている(第2の構成)。
このように、吊り具を平面視でU字状の板状部材によって構成することにより、前記吊り具の剛性を向上することができる。したがって、前記吊り具の強度を向上することができる。
しかも、前記吊り具を、板状部材によって構成するとともに、ハウジング本体部の側面に沿って配置することにより、吊り具をハウジング本体部に対してコンパクトに配置することができる。したがって、回転工具の大型化を抑制することができる。
また、前記吊り具の一対の支持部がそれぞれ有する支持部本体と、連結部とによって吊り部が構成されるため、該吊り部を、カラビナ等の掛止具が掛けられるようなU字状に形成することができる。
前記第2の構成において、前記一対の支持部は、さらに、前記支持部本体よりも前記支持部同士の間隔が狭く且つ前記収容部に対してスライド移動するスライド部と、前記支持部本体と前記スライド部との間に位置する段差部とを有する。前記ハウジング本体部には、前記吊り具が前記収容部内の収容位置に位置付けられた状態で、前記段差部が当接する当接部が設けられている(第3の構成)。
これにより、吊り具を収容部内の収容位置までスライド移動させる際には、吊り具の段差部が、ハウジング本体部に設けられた当接部に当たる。したがって、吊り具を収容部内の収容位置により確実に位置付けることができる。
前記第2または第3の構成において、前記支持部本体には、前記一対の支持部の間隔が狭くなるようにクランク状に屈曲したクランク部が設けられている(第4の構成)。これにより、カラビナ等の掛止具を吊り具に装着した状態で、該吊り具を取り外す場合に、前記吊り具の支持部本体に設けられたクランク部を利用して、片手で掛止具から前記吊り具を取り外すことが可能になる。すなわち、前記吊り具における一対の支持部のうち前記カラビナの外に位置する支持部の支持部本体に設けられたクランク部を、前記カラビナのゲート部に対して該ゲート部を開けるように押し当てることにより、前記ゲート部と本体部とが前記クランク部を挟み込んだ状態となる。この状態で、吊り具を、前記ゲート部に対して該ゲート部を開ける方向に押し当てることにより、吊り具を片手でカラビナから取り外すことができる。
したがって、上述の構成により、前記吊り具を掛止具から容易に取り外すことができる。
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記ハウジング本体部の前記端部に、前記ハウジング本体部に対して前記吊り具を前記回転軸方向と直交する方向に保持するように設けられた保持部をさらに備える(第5の構成)。
これにより、保持部によって吊り具の回転軸方向と直交する方向への移動が規制される。よって、吊り具をハウジング本体部に対して前記回転軸方向にスムーズにスライド移動させることができる。
しかも、前記保持部は、前記ハウジング本体部の前記回転軸方向の端部に取り付けられるため、前記保持部によって前記ハウジング本体部の剛性を向上することができる。したがって、回転工具全体の剛性を向上することができ、駆動部によって安定した状態で工具を回転させることができる。
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記グリップ部における前記ハウジング本体部とは反対側に設けられた環状の固定吊り具をさらに備える。前記固定吊り具は、少なくとも外周部分が厚み方向に曲げられている(第6の構成)。
これにより、作業者は、吊り具及び固定吊り具のうち、使いやすい方を、掛止具に装着することができる。よって、作業者の利便性を向上することができる。
しかも、固定吊り具の外周部分を厚み方向に曲げることにより、該固定吊り具の剛性を向上することができる。したがって、固定吊り具の強度向上を図れる。