以下、図面を参照して本実施の形態に係るレーザ照射装置、レーザ照射方法、半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、レーザが照射される被処理体をアモルファスシリコン膜付きガラス基板であるとして説明するが、被処理体は、特に限定されるものではない。
レーザ照射装置の一例は、基板上に形成されたアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して、ポリシリコン膜を形成するエキシマレーザアニール装置である。従って、レーザ照射装置は、液晶表示パネルや有機EL(Electro Luminescence)表示パネルの製造工程において、TFT(Thin Film Transistor)アレイ基板を製造するために使用される。すなわち、レーザ照射装置は、TFTアレイ基板などの半導体装置の製造工程に用いられる。
(実施の形態1)
<レーザ照射装置の基本構成>
まず、レーザ照射装置の基本構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、レーザ照射装置の基本構成を模式的に示す平面図である。図2は、図1のII−II断面図である。図3は、図1のIII−III断面図である。
なお、以下の図面に示した右手系xyz3次元直交座標は、図面間において相互に対応しているが、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、xy平面が水平面を構成し、z軸方向正向きが鉛直上向きとなる。y軸方向はライン状のレーザスポットに沿った方向であり、x軸正方向は、搬送方向である。x軸正方向に搬送(スキャン)しながら、y軸方向に沿ったライン状のレーザ光を被処理体16に照射している。また、x軸方向とy軸方向は矩形状の被処理体16の端辺に沿った方向である。
図1〜図3に示すように、レーザ照射装置の基本構成1は、浮上ユニット10、搬送ユニット11、及びレーザ発生装置14を備える。図2に示すように、浮上ユニット10は、浮上ユニット10の表面からガス(例えば、空気や窒素)を噴出するように構成されており、浮上ユニット10の表面から噴出されたガスが被処理体16の下面に吹き付けられることで、被処理体16が浮上する。例えば、被処理体16はガラス基板である。被処理体16が搬送される際、浮上ユニット10は被処理体16の上側に配置されている他の機構(不図示)に被処理体16が接触しないようにかつ浮上ユニット10自身に被処理体16が接触しないように浮上量を調整している。
搬送ユニット11は、浮上している被処理体16を搬送方向(x軸方向)に搬送する。図1、図3に示すように、搬送ユニット11は、保持機構12と移動機構13とを備える。保持機構12は、被処理体16を保持する。例えば、保持機構12は、多孔質体を備える真空吸着機構を用いて構成することができる。保持機構12は、排気ポート(不図示)に接続されており、排気ポートはエジェクタや真空ポンプなどに接続されている。よって、保持機構12にはガスを吸引するための負圧が作用するため、保持機構12を用いて被処理体16を保持することができる。
また、保持機構12は吸着動作を行うための昇降機構を備えている。昇降機構は、例えば、エアシリンダやモータなどのアクチュエータ等を備えている。例えば、保持機構12は吸着位置まで上昇した状態で、被処理体16を吸着する。また、保持機構12は、吸着を解除した状態で、待機位置まで下降する。
図3に示すように、保持機構12は、被処理体16のレーザ光が照射される面(上面)と反対側の面(下面)、つまり、被処理体16の浮上ユニット10と対向する側の面を吸引することで、被処理体16を保持している。また、保持機構12は、被処理体16のy軸正方向における端部(つまり、被処理体16の搬送方向と垂直な方向における端部)を保持している。
搬送ユニット11が備える移動機構13は保持機構12と連結されている。移動機構13は、保持機構12を搬送方向(x軸方向)に移動可能に構成されている。搬送ユニット11(保持機構12及び移動機構13)は、浮上ユニット10のy軸正方向の端部側に設けられており、保持機構12で被処理体16を保持しつつ、移動機構13が搬送方向に移動することで被処理体16が搬送される。
図1に示すように、例えば、移動機構13は浮上ユニット10のy軸正方向の端部をx軸正方向に沿ってスライドするように構成されており、移動機構13が浮上ユニット10の端部をx軸正方向に沿ってスライドすることで、被処理体16がx軸方向に沿って搬送される。このとき、移動機構13の移動速度を制御することで、被処理体16の搬送速度を制御することができる。移動機構13は、例えば、図示しないモータなどのアクチュエータとリニアガイド機構やエアベアリング等を備えている。
図1、図2に示すように、被処理体16にはレーザ光15(以下、レーザ光の照射位置も符号15で示す)が照射される。例えば、レーザ照射装置はレーザアニール装置であり、この場合はレーザ発生装置14にエキシマレーザ等を用いることができる。レーザ発生装置14から供給されたレーザ光は、シリンドリカルレンズを有する光学系(不図示)においてライン状となる。図1に示すように、被処理体16にはライン状、具体的には焦点がy軸方向に伸びるレーザ光15が照射される。換言すると、レーザ光15の被処理体16上における照射位置は被処理体16の搬送方向(x軸方向)と垂直な方向(y軸方向)に伸びている。
被処理体16は、例えば、非晶質膜が形成されたガラス基板である。非晶質膜にレーザ光15を照射してアニール処理することで、非晶質膜を結晶化させることができる。例えば、アモルファスシリコン膜を、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)に改質することができる。
図1〜図3に示すレーザ照射装置では、浮上ユニット10を用いて被処理体16を浮上させながら、搬送ユニット11を用いて被処理体16の下面を保持して、被処理体16を搬送方向に搬送している。このとき、搬送ユニット11は、被処理体16を搬送した際に、平面視において(つまりz軸正方向側から見て)、搬送ユニット11がレーザ照射位置15と重畳しない位置を保持して被処理体16を搬送している。つまり、図1に示すように、被処理体16を搬送方向に搬送した際に、搬送ユニット11が被処理体16を保持する位置(保持機構12の位置)が、レーザ照射位置15と重畳しないようにしている。
例えば、被処理体16の平面形状は矩形状(長方形状)であり、搬送ユニット11(保持機構12)は、被処理体16の4辺中の1辺のみを保持している。そして、搬送ユニット11(保持機構12)は、被処理体16が搬送されている期間においてレーザ光が照射されない位置を保持している。
そのため、レーザ照射時における保持機構12の保持による被処理体16への影響(例えば、たわみやレーザ反射光)を低減させることができる。
<レーザ照射装置の全体構成>
次に、本実施の形態に係るレーザ照射装置2について図4、図5を用いて説明する。本実施の形態に係るレーザ照射装置2は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer Laser Anneal)装置である。図4は、レーザ照射装置2を示す斜視図である。図5は、レーザ照射装置2を示すxy平面図である。レーザ光65を被処理体66に照射することで、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に改質している。図4、図5に示した搬送ユニット61_1〜61_4、保持機構62_1〜62_4、移動機構63_1〜63_4は、図1〜図3に示した基本構成1における搬送ユニット11、保持機構12、移動機構13にそれぞれ対応する。
浮上ユニット60は、浮上ユニット60の表面からガスを噴出するように構成されており、浮上ユニット60の表面から噴出されたガスが被処理体66の下面に吹き付けられることで、被処理体66が浮上する。浮上ユニット60は架台400の上に配置されている。
また、xy平面視において矩形状の浮上ユニット60が6つの領域60a〜60fに分割されている。具体的には、浮上ユニット60が第1の領域60a〜第4の領域60dと、照射領域60eと、モニタ領域60fとを備えている。第1の領域60aは、x軸負方向側かつy軸正方向側の角(図5における左上角)を含む矩形状の領域である。第2の領域60bは、x軸正方向側かつy軸正方向側の角(図5における右上角)を含む矩形状の領域である。第3の領域60cは、x軸正方向側かつy軸負方向側の角(図5における右下角)を含む矩形状の領域である。第4の領域60dは、x軸負方向側かつy軸負方向側の角(図5における左下角)を含む矩形状の領域である。
照射領域60eは、第1の領域60aと第2の領域60bとの間に配置されている。照射領域60eは、レーザ光が照射される領域である。すなわち、照射領域60eにレーザ照射位置65が含まれている。モニタ領域60fは、第3の領域60cと第4の領域60dとの間に配置されている。
従って、浮上ユニット60のy軸正方向側の半分の領域(図5の上半分の領域)は、x軸負方向側(図5の左側)から順に、第1の領域60a、照射領域60e、第2の領域60bとなっている。浮上ユニット60のy軸負方向側の半分の領域(図5の下半分の領域)は、x軸正方向側から順に、第3の領域60c、モニタ領域60f、第4の領域60dとなっている。
xy平面視において、第1の領域60a〜第4の領域60dはほぼ同じ面積となっていてもよい。xy平面視において、照射領域60eと、モニタ領域60fとは、ほぼ同じ面積の矩形状となっていてもよい。この場合、第1の領域60aと第4の領域60dがy軸方向に並んで配置されている。第2の領域60bと第4の領域60dがy軸方向に並んで配置されている。照射領域60eとモニタ領域60fがy軸方向に並んで配置されている。
被処理体66は、第1の領域60a〜第4の領域60dを順次搬送される。すなわち、被処理体66は、第1の領域60aからx軸正方向に搬送されると、照射領域60eを通過して、第2の領域60bまで移動する。照射領域60eを通過する際に、被処理体66にレーザ光が照射される。被処理体66は第2の領域60bからy軸負方向に搬送されると、第3の領域60cまで移動する。
被処理体66が第3の領域60cからx軸負方向に搬送されると、モニタ領域60fを通過して、第4の領域60dに移動する。モニタ領域60fでは、レーザ光の照射ムラをモニタする。照射ムラのモニタについては後述する。被処理体66が第4の領域60dからy軸正方向に搬送されると、第1の領域60aに移動する。
このように、被処理体66は、x軸正方向、y軸負方向、x軸負方向、y軸正方向と方向を変えて搬送されていく。換言すると、被処理体66は、第1の領域60a〜第4の領域60dを循環するように搬送される。なお、厳密には、第4の領域60dが被処理体66の搬入/搬出位置となっているため、被処理体66は、第4の領域60d、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cの順番で搬送されていく。もちろん、搬入/搬出位置は、第4の領域60dに限られるものではない。
さらには、被処理体66を反対方向に循環してもよい。例えば、第4の領域60d、第3の領域60c、第2の領域60b、第1の領域60aの順番で被処理体66を搬送してもよい。すなわち、図5の平面図において、搬送方向は、時計回りでもよく、反時計回りでもよい。レーザ照射装置の処理に応じて、搬送方向を適宜切り替えるようにしてもよい。
上記のように、被処理体66を循環して搬送するため、レーザ照射装置は、4つの搬送ユニット61_1〜61_4を備える。搬送ユニット61_1〜61_4は浮上ユニット60の外側であって、浮上ユニット60の各辺の近傍に設けられている。
浮上ユニット60はxy平面視した際の形状が矩形状であり、各々の搬送ユニット61_1〜61_4は、浮上ユニット60の各々の辺に沿って被処理体66を搬送するように設けられている。なお、各搬送ユニット61_1〜61_4は、浮上ユニット60の各辺の外側に設けられているが、浮上ユニット60の内側に設けられていてもよい。
具体的には、搬送ユニット61_1は浮上ユニット60のy軸正方向側の辺に設けられており、保持機構62_1と移動機構63_1とを備える。そして、保持機構62_1で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_1がx軸正方向に移動することで、被処理体66を第1の領域60aから第2の領域60bに搬送することができる。搬送ユニット61_1による搬送で、被処理体66が照射領域60eを通過する。よって、被処理体66が第1の領域60aから第2の領域60bに搬送される際にレーザ光65が被処理体66に照射される。
搬送ユニット61_2は浮上ユニット60のx軸正方向側の辺に設けられており、保持機構62_2と移動機構63_2とを備える。そして、保持機構62_2で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_2がy軸負方向側に移動することで、被処理体66を第2の領域60bから第3の領域60cに搬送することができる。
搬送ユニット61_3は浮上ユニット60のy軸負方向側の辺に設けられており、保持機構62_3と移動機構63_3とを備える。そして、保持機構62_3で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_3がx軸負方向に移動することで、被処理体66を第3の領域60cから第4の領域60dに搬送することができる。搬送ユニット61_3による搬送で、被処理体66がモニタ領域60fを通過する。
搬送ユニット61_4は浮上ユニット60のx軸負方向側の辺に設けられており、保持機構62_4と移動機構63_4とを備える。そして、保持機構62_4で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_4がy軸正方向に移動することで、被処理体66を第4の領域60dから第1の領域60aに搬送することができる。
保持機構62_1〜62_4は、図1〜図3に示した保持機構12と同様の構成となっており、被処理体66を吸着する。保持機構62_2、62_4は、保持機構62_1、62_3と異なる向きで配置されている。より具体的には、xy平面視において、保持機構62_1、62_3は、x軸方向を長手方向とする矩形状になっている。また、保持機構62_2、62_4は、y軸方向を長手方向とする矩形状になっている。保持機構62_1〜62_4は、その移動方向が長手方向となるように設けられている。
さらに、矩形状の被処理体66の短辺と長辺のいずれを保持するかに応じて、保持機構62_1〜62_4のサイズを変えてもよい。例えば、図5では、x軸方向が被処理体66の長辺方向となっており、y軸方向が短辺方向となっている。具体的には、被処理体66のx軸方向のサイズは、1850mm、y軸方向のサイズは1500mm程度となる。よって、保持機構62_1、62_11、62_3は、被処理体66の長辺を保持し、保持機構62_2、62_4は短辺を保持する。この場合、保持機構62_1、62_11、62_3のy軸方向のサイズを10mm程度とし、保持機構62_2、62_4のy軸方向のサイズを30mm程度とする。短辺を保持する保持機構62_2、62_4の幅を、長辺を保持する保持機構62_1、62_11、62_3の幅よりも広くする。短辺を保持する場合、長辺を保持する場合よりも大きなモーメントが被処理体66に係るため、保持機構62_2、62_4にはより大きな吸着力が必要となるからである。保持機構62_1〜62_4は、被処理体66の端部を幅10〜30mm程度で吸着して、被処理体66を保持する。また、図5では、保持機構62_1〜62_4のそれぞれが被処理体66の1辺全体に設けられている構成が示されているが、被処理体66の1辺全体に設けられていなくてもよい。すなわち、保持機構62_1〜62_4のそれぞれが被処理体66の1辺を部分的に保持してもよい。具体的には、隣の辺を保持する保持機構と被処理体66の保持位置が重複しないように配置する。さらに、実施の形態1で示したように280mmの長さの保持機構を用いる場合、複数の保持機構を用いて、被処理体66の1辺を保持してもよい。
本実施の形態に係るレーザ照射装置2では、レーザ照射位置65のy軸方向における長さは、被処理体66のy軸方向における長さの半分程度の長さである。よって、被処理体66がレーザ照射位置65を通過した際に、被処理体66のy軸方向の半分の領域にレーザ光が照射される。従って、被処理体66が、浮上ユニット60の上を2回循環するように搬送されていく。このようにすることで、被処理体66のほぼ全面に、レーザ光が照射される。
ここで、図4、図5に示すように、浮上ユニット60の第4の領域60dに、回転機構68が設けられている。回転機構68は、図1〜図3を参照して説明した保持機構12と同様に、被処理体66を吸着して保持する。また、回転機構68は、被処理体66をz軸周りに回転させるモータ等のアクチュエータ(不図示)を備えている。そのため、回転機構68は、被処理体66の水平面(xy平面)を保持しながら被処理体66をz軸周りに180度回転させることができる。このような構成によって、y軸方向におけるレーザ照射位置65の長さが被処理体66の半分程度であっても、被処理体66のほぼ全体にレーザ光を照射することができる。
具体的には、搬送ユニット61_1を用いて被処理体66を第1の領域60aから第2の領域60bに搬送して被処理体66にレーザ光65を照射した後、搬送ユニット61_2〜61_4を用いて被処理体66を第2の領域60bから第1の領域60aまで搬送する途中、第4の領域60dにおいて回転機構68を用いて被処理体を180度回転させる。その後、再度、搬送ユニット61_1を用いて被処理体66を領域60aから領域60bに搬送して被処理体66にレーザ光65を照射する。これにより、被処理体66の全面にレーザ光65を照射することができる。なお、被処理体66の搬送動作の詳細については後述する。
また、回転機構68は、xy平面視において被処理体66の中心近傍を保持するように、浮上ユニット60内に配置されている。そのため、回転時に被処理体66が浮上ユニット60からはみ出す量を低減し、後述する補助浮上ユニット67の面積を削減することができる。回転機構68は、平面視円形状であって、例えば、浮上ユニット60に形成された貫通孔にz軸周りに回転可能に収容される。
また、第4の領域60dの外側には、補助浮上ユニット67が設けられている。補助浮上ユニット67は、第4の領域60dのy軸負方向側とx軸負方向側にそれぞれ配置されている。回転機構68による被処理体66の回転中に、被処理体66の一部が浮上ユニット60の外側にはみ出てしまうと、そのはみ出した部分では、浮上ユニット60による浮上力が発生せずに、被処理体66のたわみ量が大きくなってしまうおそれがある。補助浮上ユニット67は、浮上ユニット60と同様に、補助浮上ユニット67の表面からガスを噴出するように構成されており、補助浮上ユニット67の表面から噴出されたガスが被処理体66の下面に吹き付けられることで、被処理体66の浮上ユニット60からはみ出した部分に浮上力が発生する。このようにすることで、被処理体66を損傷することなく、回転機構68が被処理体66を回転させることができる。
また、第1の領域60aにはアライメント機構69が設けられている。アライメント機構69は、回転機構68と同様に、被処理体66を吸着して保持する。そして、アライメント機構69は被処理体66の位置、及び回転角度を調整する。例えば、被処理体66の搬入動作、搬送動作、回転動作によって、被処理体66の位置や回転角度が微小にずれることがある。アライメント機構69は、位置や回転角度のずれを補正している。これにより、被処理体66におけるレーザ光の照射位置を精度よく制御することができる。
<比較例に係る回転機構>
次に、図6を参照して、発明者らが事前に検討した比較例に係る回転機構ついて説明する。図6は、比較例に係る回転機構の模式的断面図である。図6に示すように、比較例に係る回転機構680は、台座810、蓋部820、配管L、バルブV、真空発生装置VGを備えている。図6には、浮上ユニット60(図6では不図示)によって浮上した状態の被処理体66も示されている。図6では、自重によって平面視中心部がz軸負方向に張り出すように、被処理体66が湾曲している様子を誇張して示している。
台座810は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、グラナイトなどからなる円板状部材である。台座810は、平面視の中心部に排気用貫通孔Hを備えている。排気用貫通孔Hは、台座810の上面から下面まで貫通しており、配管Lによって真空発生装置VGに接続されている。配管L上には、バルブVが設けられている。
蓋部820は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、グラナイトなどからなる円板状部材である。蓋部820の径は、台座810の上面の径と略等しい。回転機構680では、蓋部820の上面が被処理体66を吸着する吸着面となる。蓋部820の外周縁には平面視円環状の側壁SWが形成されている。そして、図6に示すように、台座810の上面と蓋部820の側壁SWの下面とが、互いに突き合わされる。そのため、台座810の上面、蓋部820の下面及び蓋部820(側壁SW)の内周面に囲まれた真空室(減圧室)VCが形成される。真空室VCの気密性を確保するため、台座810の上面と蓋部820の側壁SWの下面との間にはシール部材(不図示)が設けられている。
被処理体と接触する蓋部を構成する素材として、多孔質セラミックスや多孔質カーボンなどの多孔質材料を用いた場合、被処理体との物理的な接触によって割れ易いなどの問題があった。比較例に係る蓋部820では、上述の通り、素材として金属やグラナイトなどの非多孔質材料を用いているため、被処理体66と物理的に接触しても割れ難い。
他方、非多孔質材料からなる蓋部820には、被処理体66を吸着するための微細な吸引孔VHが多数形成されている。吸引孔VHは、蓋部820の上面から下面まで貫通し、真空室VCと連通している。すなわち、z軸方向における吸引孔VHの長さは蓋部820の厚みと同じとなっている。なお、蓋部に多孔質材料を用いた場合、無数の気孔によって蓋部の上面から下面まで連通するため、このような吸引孔を形成する必要はない。
比較例に係る回転機構680は、モータ等のアクチュエータ(不図示)によって被処理体66を回転させることができる。さらに、比較例に係る回転機構680は、シリンダー等のアクチュエータ(不図示)によって、図6に白抜き矢印で示すように、z軸方向に移動することができる。
回転機構680によって被処理体66を回転させる際、まず、被処理体66に接触するまで、回転機構680を上方(z軸正方向)に移動させる。
回転機構680を被処理体66に接触させたら、バルブVを開き、真空発生装置VGによって、真空室VC内を減圧する。真空室VC内が減圧されると、吸引孔VHを介した吸引力によって、蓋部820の上面に被処理体66が吸着される。
蓋部820の上面に被処理体66が吸着・保持されたら、回転機構680をz軸周りに回転させることによって、被処理体66を回転させる。
比較例に係る回転機構680では、被処理体66を吸着する際、蓋部820の中心側よりも先に外周部側において被処理体66が吸着される場合があった。このような場合、蓋部820と被処理体66との接触面の間にエアが残留する現象いわゆるエア溜まりが発生する虞があった。エア溜まりが発生すると、回転機構680による被処理体66の保持力(吸着力)が低下してしまう。
<実施の形態1に係る回転機構>
次に、図7〜図9を参照して、本実施の形態に係る回転機構ついて説明する。図7は、実施の形態1に係る回転機構の模式的断面図である。図7に示すように、本実施の形態に係る回転機構68は、台座81、蓋部82、配管L1、L2、バルブV1、V2、真空発生装置VGを備えている。図7にも、図6と同様に、浮上ユニット60(図7では不図示)によって浮上した状態の被処理体66も示されている。図8は、台座81の模式的平面図である。図9は、蓋部82の模式的平面図である。図7は、図8、図9におけるVII−VII断面図に相当する。
台座81は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、グラナイトなどからなる円板状部材である。図7に示すように、台座81では、上面側にフランジ部を有している。すなわち、下面の径を上面の径よりも小さくすることによって、全体を上面の径とした単純な円板形状に比べて軽量化が図られている。なお、フランジ部は必須ではなく、台座81は、単純な円板形状であってもよい。
図8に示すように、台座81は、平面視の中心部に排気用貫通孔(例えば、第1の排気用貫通孔)H1を備えている。図7に示すように、排気用貫通孔H1は、台座81の上面から下面まで貫通している。すなわち、z軸方向における排気用貫通孔H1の長さは台座81の厚みと同じとなっている。なお、排気用貫通孔H1は、以下に示す排気用貫通孔H2と同様に、複数設けられていてもよい。
また、図8に示すように、台座81は、平面視の外周部(図8の例ではフランジ部)に排気用貫通孔(例えば、第2の排気用貫通孔)H2を備えている。図8の例では、4つの排気用貫通孔H2が円周方向に等間隔で配置されている。図7に示すように、排気用貫通孔H2は、台座81の上面からフランジ部の下面まで貫通している。すなわち、z軸方向における排気用貫通孔H1の長さは台座81におけるフランジ部の厚みと同じとなっている。なお、排気用貫通孔H2は、1つでもよい。排気用貫通孔H2を複数設ける場合、図8の例のように、円周方向に等間隔で配置することが好ましい。
図7に示すように、排気用貫通孔H1は、配管L1によって真空発生装置VGに接続されている。配管L1上には、バルブ(例えば、第1のバルブ)V1が設けられている。他方、排気用貫通孔H2は、配管L2によって真空発生装置VGに接続されている。配管L2上には、バルブ(例えば、第2のバルブ)V2が設けられている。バルブV1とバルブV2とは、真空発生装置VGに対して並列に設けられている。
蓋部82は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、グラナイトなどからなる円板状部材である。そのため、素材として多孔質セラミックスや多孔質カーボンなどの多孔質材料を用いた場合に比べて、被処理体66と物理的に接触しても割れ難い。図7に示すように、蓋部82の径は、台座81の上面の径と略等しい。回転機構68では、蓋部82の上面が被処理体66を吸着する吸着面となる。
図7、図9に示すように、蓋部82の外周縁には平面視円環状の側壁SWが形成されている。さらに、蓋部82の下面(内面)には中心部側と外周部側とを仕切る仕切壁PTが形成されている。図9に示すように、図の例では、仕切壁PTが側壁SWと同心円状に形成されている。なお、仕切壁PTや側壁SWは、蓋部82に代えて台座81に設けられていてもよい。
そして、図7に示すように、台座81の上面と蓋部82の側壁SWの下面とが、互いに突き合わされる。また、台座81の上面と蓋部82の仕切壁PTの下面とが、互いに突き合わされる。そのため、台座81の上面、蓋部82の下面及び仕切壁PTの内周面に囲まれた真空室(例えば、第1の減圧室)VC1が形成される。さらに、台座81の上面、蓋部82の下面、仕切壁PTの外周面及び蓋部82(側壁SW)の内周面に囲まれた真空室(例えば、第2の減圧室)VC2が形成される。
真空室VC1、VC2の気密性を確保するため、台座81の上面と蓋部82の側壁SW及び仕切壁PTの下面との間にはシール部材(不図示)が設けられている。シール部材としては、樹脂製接着層あるいはOリングなどの樹脂製パッキンなどを挙げることができる。このように、仕切壁PTによって、中心側の真空室VC1と外周側の真空室VC2とが仕切られている。そのため、真空室VC1、VC2は互いに連通しておらず、互いに独立して真空発生装置VGによって減圧される。
ここで、図7に示すように、真空室VC1は配管L1に設けられたバルブV1を介して真空発生装置VGに接続されている。また、真空室VC2は配管L2に設けられたバルブV2を介して真空発生装置VGに接続されている。上述の通り、バルブV1とバルブV2とが、真空発生装置VGに対して並列に設けられているため、真空室VC1、VC2を独立して真空発生装置VGによって減圧することができる。
真空発生装置VGは、真空ポンプやエジェクタなどの排気装置である。バルブV1、V2は、例えば、制御信号によって開閉制御されるエアオペレートバルブである。バルブV1が開くと、真空発生装置VGによって真空室VC1が排気され、バルブV1が閉じると、真空室VC1内の排気が停止される。バルブV2が開くと、真空発生装置VGによって真空室VC2が排気され、バルブV2が閉じると、真空室VC2内の排気が停止される。
また、図7に示すように、蓋部82において真空室VC1を構成する領域には、被処理体66を吸着するための微細な吸引孔(例えば、第1の吸引孔)VH1が多数形成されている。吸引孔VH1は、蓋部82の上面から下面まで貫通し、真空室VC1と連通している。すなわち、z軸方向における吸引孔VH1の長さは蓋部82の厚みと同じとなっている。
図9に示すように、吸引孔VH1は、平面視では蓋部82の中心から同心円状かつ放射状に配列されている。蓋部82の上面には、吸引孔VH1同士を連通する同心円状の溝G11及び放射状の溝G12が形成されている。換言すると、同心円状の溝G11及び放射状の溝G12によって、全体としてウェブ状に溝が連通して形成されている。そして、同心円状の溝G11と放射状の溝G12との各交点に吸引孔VH1が1つずつ設けられている。なお、溝(例えば、第1の溝)G11、G12は必須ではないが、溝G11、G12を設けることにより、より広い面積で被処理体66を吸着することができる。
図10は、吸引孔VH1の配置の変形例を示す平面図である。図10に示すように、同心円状の溝G11と放射状の溝G12との各交点に吸引孔VH1が4つずつ設けてもよい。なお、図10に示した変形例において、同心円状の溝G11と放射状の溝G12との交差がT字状の場合、当該交点には吸引孔VH1が3つ設けられることになる。また、図9、図10に示した吸引孔VH1及び吸引孔VH1を連通する溝G11、G12の配置は、あくまでも一例であって何ら限定されるものではない。
図7に示すように、蓋部82において真空室VC2を構成する領域には、被処理体66を吸着するための微細な吸引孔(例えば、第2の吸引孔)VH2が多数形成されている。吸引孔VH2は、蓋部82の上面から下面まで貫通し、真空室VC2と連通している。すなわち、z軸方向における吸引孔VH2の長さは、吸引孔VH1の長さと同様に、蓋部82の厚みと同じとなっている。
図9に示すように、吸引孔VH2も、平面視では蓋部82の中心から同心円状かつ放射状に配列されている。蓋部82の上面には、吸引孔VH2同士を連通する同心円状の溝G21及び放射状の溝G22が形成されている。換言すると、同心円状の溝G21及び放射状の溝G22によって、全体としてウェブ状に溝が連通して形成されている。そして、同心円状の溝G21と放射状の溝G22との各交点に吸引孔VH2が1つずつ設けられている。なお、溝(例えば、第2の溝)G21、G22は必須ではないが、溝G21、G22を設けることにより、より広い面積で被処理体66を吸着することができる。
ここで、真空室VC2に連通した吸引孔VH2及び溝G21、G22と、真空室VC1に連通した吸引孔VH1及び溝G11、G12とは、互いに連通しておらず、互いに独立して被処理体66を吸着することができる。
吸引孔VH1、VH2の径、溝G11、G12、G21、G22の幅は、いずれも0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがさらに好ましい。また、溝G11、G12、G21、G22の深さは、特には限定されないが、例えば、幅と同程度である。
なお、図9に示した吸引孔VH2及び吸引孔VH2を連通する溝G21、G22の配置は、あくまでも一例であって何ら限定されない。当然のことながら、図10に示した吸引孔VH1の配置の変形例は、吸引孔VH2の配置にも適用可能である。
本実施の形態に係る回転機構68は、モータ等のアクチュエータ(不図示)によって被処理体66を回転させることができる。さらに、本実施の形態に係る回転機構68は、シリンダー等のアクチュエータ(不図示)によって、図7に白抜き矢印で示すように、z軸方向に移動することができる。
回転機構68によって被処理体66を回転させる際、まず、被処理体66に接触するまで、回転機構68を上方(z軸正方向)に移動させる。
回転機構68を被処理体66に接触させたら、バルブV1を開き、真空発生装置VGによって、中心側の真空室VC1内を減圧する。真空室VC1内が減圧されると、吸引孔VH1を介した吸引力によって、蓋部82の上面における真空室VC1上の領域(すなわち中心側の領域)に被処理体66が吸着される。
続いて、バルブV2を開き、真空発生装置VGによって、外周側の真空室VC2内を減圧する。真空室VC2内が減圧されると、吸引孔VH2を介した吸引力によって、蓋部82の上面における真空室VC2上の領域(すなわち外周側の領域)に被処理体66が吸着される。
蓋部82の上面全体に被処理体66が吸着・保持されたら、回転機構68をz軸周りに回転させることによって、被処理体66を回転させる。
上述の通り、本実施の形態に係る回転機構68では、仕切壁PTによって、中心側の真空室VC1と外周側の真空室VC2とが仕切られている。そして、真空室VC1、VC2を独立して真空発生装置VGによって減圧することができる。そのため、被処理体66を吸着する際、回転機構68の中心側から外周側に向かって順次被処理体66を吸着することによって、エア溜まりの発生を抑制することができる。
なお、仕切壁PTを複数設けて、回転機構68の中心側から外周側に向かって真空室を3つ以上設けてもよい。
ここで、図11は、蓋部82の変形例の模式的平面図である。図9に示した蓋部82では、同心円状の溝G11、G21及び放射状の溝G12、G22によって、全体としてウェブ状に溝が形成されている。
これに対し、図11に示した蓋部82の真空室VC1を構成する領域には、x軸方向に延設された直線状の溝G1x及びy軸方向に延設された直線状の溝G1yによって、全体として格子状に溝が連通して形成されている。そして、溝G1xと溝G1yとの各交点に真空室VC1に連通した吸引孔VH1が1つずつ設けられている。
同様に、蓋部82の真空室VC2を構成する領域には、x軸方向に延設された直線状の溝G2x及びy軸方向に延設された直線状の溝G2yによって、全体として格子状に溝が連通して形成されている。そして、溝G2xと溝G2yとの各交点に真空室VC2に連通した吸引孔VH2が1つずつ設けられている。
ここで、真空室VC2に連通した吸引孔VH2及び溝G2x、G2yと、真空室VC1に連通した吸引孔VH1及び溝G1x、G1yとは、互いに連通しておらず、互いに独立して被処理体66を吸着することができる。
なお、当然のことながら、図10に示した吸引孔VH1の配置の変形例は、図11に示した蓋部82における吸引孔VH1、VH2の配置にも適用可能である。
<搬送動作>
以下、搬送ユニット61_1〜61_4による搬送動作について図12〜図22を用いて詳細に説明する。
レーザ照射装置2を用いて被処理体66にレーザ光65を照射する場合は、まず、図12に示すように、第4の領域60dに被処理体66が搬入される。例えば、図示しない移載ロボットが被処理体66を第4の領域60dに搬入する。
次に、被処理体66のx軸負方向側の端部の下面を、搬送ユニット61_4の保持機構62_4を用いて保持する。その後、保持機構62_4が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_4の移動機構63_4をy軸正方向側に移動させて、被処理体66をy軸正方向側に搬送する。これにより、図13に示すように、被処理体66が第1の領域60aに移動する。
被処理体66が第1の領域60aに移動すると、保持機構62_4からアライメント機構69への持ち替え動作が行われる。具体的には、保持機構62_4が保持している被処理体66をアライメント機構69が吸着体を介して保持する。そして、保持機構62_4の保持状態を解放して、保持機構62_4が被処理体66を保持していない状態とする。保持機構62_4が被処理体66を解放した後、搬送ユニット61_4は元の位置(第4の領域60d)に戻る。そして、アライメント機構69が被処理体66のアライメントを行う。
アライメント後、被処理体66のy軸正方向側の端部の下面を、搬送ユニット61_1の保持機構62_1を用いて保持する。すなわち、アライメント機構69から保持機構62_1に被処理体66が持ち替えられる。その後、図14に示すように、保持機構62_1が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_1の移動機構63_1をx軸正方向側に移動させて、被処理体66をx軸正方向側に搬送する。これにより、被処理体66は、照射領域60eを通過する。従って、被処理体66の片側半分の領域にレーザ光65が照射されていく(レーザ光が照射されている領域を結晶化領域71として示す)。結晶化領域71では、非晶質膜(アモルファスシリコン膜)が結晶化して、多結晶膜(ポリシリコン膜)が形成されている。
図15に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第2の領域60bに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_1から保持機構62_2に変更する。具体的には、保持機構62_1が被処理体66を吸着するとともに、保持機構62_4が被処理体66の吸着を解除する。すなわち、保持機構62_1と保持機構62_2とが被処理体66の持ち替え動作を行う。また、搬送ユニット61_1を元の位置(第1の領域60a)に戻す。図15では、被処理体66が照射領域60eを1回通過しているため、被処理体66のy軸負方向側のほぼ半分が結晶化領域71となっている。なお、図15では、被処理体66の半面全体にレーザ光を照射しているが、被処理体66の半面の一部のみにレーザ光を照射するようにしてもよい。
その後、図16に示すように、保持機構62_2が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_2の移動機構63_2をy軸負方向側に移動させて、被処理体66をy軸負方向側に搬送する。
図17に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第3の領域60cに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_2から保持機構62_3に変更する。すなわち、保持機構62_2と保持機構62_3とが被処理体66の持ち替え動作を行う。また、搬送ユニット61_2を元の位置(第2の領域60b)に戻す。その後、保持機構62_3が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_3の移動機構63_3をx軸負方向側に移動させて、被処理体66をx軸負方向側に搬送する。
そして、図18に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第4の領域60dに搬送されて、回転機構68の上に到達した後、保持機構62_3から回転機構68への持ち替え動作が行われる。具体的には、保持機構62_3が保持している被処理体66を回転機構68が吸着体を介して保持する。そして、保持機構62_3の保持状態を解放して、保持機構62_3が被処理体66を保持していない状態とする。保持機構62_3が被処理体66を解放した後、搬送ユニット61_3は元の位置(第4の領域60d)に戻る。
そして、回転機構68の上に被処理体66が載っている状態で、回転機構68を180度回転させる。これにより被処理体66が180度回転して、図19に示すように、被処理体66の結晶化領域71がy軸負方向側からy軸正方向側になる。その後、保持機構62_4が被処理体66を保持する。すなわち、回転機構68から保持機構62_4に被処理体66が持ち替えられる。そして、保持機構62_4が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_4の移動機構63_4をy軸正方向側に移動させて、被処理体66をy軸正方向側に搬送する。
図20に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第1の領域60aに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_4から保持機構62_1に変更する。また、搬送ユニット61_4を元の位置(第4の領域60d)に戻す。図20に示す位置において、保持機構62_1が被処理体66を保持する前に、アライメント機構69によりアライメント動作を行ってもよい。
その後、図21に示すように、保持機構62_1が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_1の移動機構63_1をx軸正方向側に移動させて、被処理体66をx軸正方向側に搬送する。これにより、被処理体66が照射領域60eを通過する。被処理体66の他方の半分の領域にレーザ光65が照射されていく。従って、被処理体66の残り半分の非晶質膜が結晶化されていき、結晶化領域71となっていく。
そして、図22に示すように、第2の領域60bまで被処理体66を搬送することで、被処理体66のほぼ全面にレーザ光を照射することができる。そして、図15〜図18に示した搬送動作と同様の搬送動作を行うと、被処理体66が第4の領域60dに移動する。
このように、本実施の形態では、被処理体66が浮上ユニット60上を複数回循環するように搬送されている。ここでは、第4の領域60dから、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cを経由して、第4の領域60dに戻る搬送動作を1回の循環搬送とする。上記の循環搬送動作を複数回繰り返すことで、被処理体66がレーザ照射位置65を複数回通過するようにすることができる。2回の循環搬送を行う事で、被処理体66のほぼ全面にレーザ光が照射される。さらに、3回以上循環搬送することで、被処理体66の同一箇所に複数回レーザ光を照射することができる。そして、所定の回数だけ循環搬送したら、第4の領域60dから被処理体66を搬出する。
なお、上記で説明したレーザ照射装置2では、回転機構68を浮上ユニット60の領域60dに設けた場合について説明したが、本実施の形態では回転機構68を設ける場所は浮上ユニット60の第4の領域60d以外であってもよい。すなわち、レーザ照射位置65を通過した後、再度レーザ照射位置65を通過する前に被処理体66を180度回転させればよいので、回転機構68を設ける場所は浮上ユニットの第1の領域60a〜第4の領域60dのいずれかであればよい。
また、本実施の形態に係るレーザ照射装置2では、被処理体66を第4の領域60d、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cの順に搬送して被処理体66にレーザ光65を照射しているので、同時に複数枚の被処理体66を循環搬送することができる。
つまり、本実施の形態に係るレーザ照射装置2では、被処理体66にレーザ光65を照射している間に、別の被処理体66を搬送したり、回転機構68で回転させたり、被処理体66を搬入、搬出することができる。よって、被処理体66にレーザ光65を照射した後、すぐに他の被処理体にレーザ光65を照射することができるので、レーザ光65が被処理体に照射されない時間を削減することができる。すなわち、本実施の形態では、レーザ照射装置2のスループットを向上させることができる。なお、この場合は、回転機構68を第1の領域60a、第2の領域60b以外の領域に設けることが好ましく、例えば、回転機構68を第4の領域60dに設けることが好ましい。
<その他の実施の形態>
次に、その他の実施の形態として、上記で説明したレーザ照射装置を用いた半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態では、レーザ照射装置としてレーザアニール装置を用いることで、基板上に形成した非晶質膜にレーザ光を照射して非晶質膜を結晶化させることができる。例えば、半導体装置はTFT(Thin Film Transistor)を備える半導体装置であり、この場合はアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化させてポリシリコン膜を形成することができる。
<半導体装置の製造方法>
図23は、半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。上記で説明した本実施の形態に係るレーザ照射装置は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
まず、図23(a)に示すように、ガラス基板201上に、ゲート電極202を形成する。ゲート電極202は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、図23(b)に示すように、ゲート電極202の上に、ゲート絶縁膜203を形成する。ゲート絶縁膜203は、ゲート電極202を覆うように形成される。その後、図23(c)に示すように、ゲート絶縁膜203の上に、アモルファスシリコン膜204を形成する。アモルファスシリコン膜204は、ゲート絶縁膜203を介して、ゲート電極202と重複するように配置されている。
ゲート絶縁膜203は、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO2膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜203とアモルファスシリコン膜204とを連続成膜する。アモルファスシリコン膜204付のガラス基板201が、実施の形態1における被処理体16、66に該当する。
そして、図23(d)に示すように、上記で説明したレーザ照射装置を用いてアモルファスシリコン膜204にレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜204を結晶化させて、ポリシリコン膜205を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜205がゲート絶縁膜203上に形成される。
このとき、上記で説明した本実施の形態に係るレーザ照射装置を用いることで、レーザ照射時におけるガラス基板201のたわみの影響を低減させることができ、アモルファスシリコン膜204に照射されるレーザ光の焦点深度(DOF)から外れてしまうことを抑制することができる。よって、均一に結晶化されたポリシリコン膜205を形成することができる。
その後、図23(e)に示すように、ポリシリコン膜205の上に層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを形成する。層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、TFTを備える半導体装置を製造することができる。なお、これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
<有機ELディスプレイ>
次に、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明する。図24は、有機ELディスプレイの概要を説明するための断面図であり、有機ELディスプレイの画素回路を簡略化して示している。図24に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PxにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
有機ELディスプレイ300は、基板310、TFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び封止基板314を備えている。図24では、封止基板314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態に係る半導体装置は、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられていてもよい。
基板310は、ガラス基板又は金属基板である。基板310の上には、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素Pxに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。なお、TFT層311は、図24で説明したTFTに対応しており、ゲート電極202、ゲート絶縁膜203、ポリシリコン膜205、層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを有する。
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素Pxごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素Px間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素Pxには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
カラーフィルタ層313の上には、封止基板314が設けられている。封止基板314は、ガラス基板などの透明絶縁基板であり、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素Pxに供給することで、各画素Pxでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
なお、上記では、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明したが、TFTを備える半導体装置は、例えば液晶ディスプレイであってもよい。また、上記では、本実施の形態に係るレーザ照射装置をレーザアニール装置に適用した場合について説明した。しかし、本実施の形態に係るレーザ照射装置は、レーザアニール装置以外の装置にも適用することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。