以下、図面を参照して本実施の形態にかかるレーザ照射装置、レーザ照射方法について説明する。なお、以下の説明において、レーザが照射される被処理体をアモルファスシリコン膜付きガラス基板であるとして説明するが、被処理体は、特に限定されるものではない。
レーザ照射装置の一例は、基板上に形成されたアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して、ポリシリコン膜を形成するエキシマレーザアニール装置である。したがって、レーザ照射装置は、液晶表示パネルや有機EL(Electro Luminescence)表示パネルの製造工程において、TFT(Thin Film Transistor)アレイ基板を製造するために使用される。すなわち、レーザ照射装置は、TFTアレイ基板などの半導体装置の製造工程に用いられる。
実施の形態1.
(レーザ照射装置1の基本構成)
本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer Laser Anneal)装置である。まず、レーザ照射装置の基本構成について、図1~図3を用いて説明する。図1は、レーザ照射装置の基本構成を説明するための平面図である。図2は、図1に示すレーザ照射装置の切断線II-IIにおける断面図である。図3は、図1に示すレーザ照射装置の切断線III-IIIにおける断面図である。
なお、以下に示す図では、説明の簡略化のため、適宜、xyz3次元直交座標系を示している。z方向は鉛直上下方向であり、y方向はライン状のレーザスポットに沿った方向であり、x方向は、搬送方向である。x方向に搬送(スキャン)しながら、y方向に沿ったライン状のレーザ光を被処理体16に照射している。また、x方向とy方向は矩形状の被処理体16の端辺に沿った方向である。
図1~図3に示すように、レーザ照射装置1は、浮上ユニット10、搬送ユニット11、及びレーザ発生装置14を備える。図2に示すように、浮上ユニット10は、浮上ユニット10の表面からガス(例えば、空気や窒素)を噴出するように構成されており、浮上ユニット10の表面から噴出されたガスが被処理体16の下面に吹き付けられることで、被処理体16が浮上する。例えば、被処理体16はガラス基板である。被処理体16が搬送される際、浮上ユニット10は被処理体16の上側に配置されている他の機構(不図示)に被処理体16が接触しないようにかつ浮上ユニット10自身に被処理体16が接触しないように浮上量を調整している。
搬送ユニット11は、浮上している被処理体16を搬送方向(x方向)に搬送する。図1、図3に示すように、搬送ユニット11は、保持機構12と移動機構13とを備える。保持機構12は、被処理体16を吸着して保持する。例えば、保持機構12は、真空吸着機構を用いて構成することができる。保持機構12(真空吸着機構)は、エジェクタや真空ポンプなどの排気機構に接続されている。よって、保持機構12にはガスを吸引するための負圧が作用するため、保持機構12を用いて被処理体16を保持することができる。
また、保持機構12は吸着動作を行うための昇降機構を備えている。昇降機構は、例えば、エアシリンダやモータなどのアクチュエータ等を備えている。例えば、保持機構12は吸着位置まで上昇した状態で、被処理体16を吸着する。また、保持機構12は、吸着を解除した状態で、待機位置まで下降する。
本実施の形態では、図3に示すように、保持機構12は、被処理体16のレーザ光が照射される面(上面)と逆側の面(下面)、つまり、被処理体16の浮上ユニット10と対向する側の面を吸引することで、被処理体16を保持している。また、保持機構12は、被処理体16の+y方向における端部(つまり、被処理体16の搬送方向と垂直な方向における端部)を保持している。
搬送ユニット11が備える移動機構13は保持機構12と連結されている。移動機構13は、保持機構12を搬送方向(x方向)に移動可能に構成されている。搬送ユニット11(保持機構12及び移動機構13)は、浮上ユニット10の+y方向の端部側に設けられており、保持機構12で被処理体16を保持しつつ、移動機構13が搬送方向に移動することで被処理体16が搬送される。
図1に示すように、例えば、移動機構13は浮上ユニット10の+y方向の端部を+x方向に沿ってスライドするように構成されており、移動機構13が浮上ユニット10の端部を+x方向に沿ってスライドすることで、被処理体16がx方向に沿って搬送される。このとき、移動機構13の移動速度を制御することで、被処理体16の搬送速度を制御することができる。移動機構13は、例えば、図示しないモータなどのアクチュエータとリニアガイド機構やエアベアリング等を備えている。
図1、図2に示すように、被処理体16にはレーザ光15(以下、レーザ光の照射位置も符号15で示す)が照射される。例えば、レーザ照射装置はレーザアニール装置であり、この場合はレーザ発生装置14にエキシマレーザ等を用いることができる。レーザ発生装置14から供給されたレーザ光は、シリンドリカルレンズを有する光学系(不図示)においてライン状となる。被処理体16にはライン状、具体的には焦点がy方向に伸びるレーザ光15(ラインビーム)が照射される(図1参照)。換言すると、レーザ光15の被処理体16上における照射位置は被処理体16の搬送方向(x方向)と垂直な方向(y方向)に伸びている。
被処理体16は、例えば、非晶質膜(アモルファスシリコン膜)が形成されたガラス基板である。非晶質膜にレーザ光15を照射してアニール処理することで、非晶質膜を結晶化させることができる。例えば、アモルファスシリコン膜を、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)に改質することができる。
図1~図3に示すレーザ照射装置1では、浮上ユニット10を用いて被処理体16を浮上させながら、搬送ユニット11を用いて被処理体16の下面を保持して、被処理体16を搬送方向に搬送している。このとき、レーザ照射装置1が備える搬送ユニット11は、被処理体16を搬送した際に、平面視において(つまりz方向からみて)、搬送ユニット11がレーザ照射位置15と重畳しない位置を保持して被処理体16を搬送している。つまり、図1に示すように、被処理体16を搬送方向に搬送した際に、搬送ユニット11が被処理体16を保持する位置(保持機構12の位置に対応)が、レーザ照射位置15と重畳しないようにしている。
例えば、被処理体16の平面形状は4辺を有する四角形(矩形状)であり、搬送ユニット11(保持機構12)は、被処理体16の4辺中の1辺のみを保持している。そして、搬送ユニット11(保持機構12)は、被処理体16が搬送されている期間においてレーザ光が照射されない位置を保持している。
よって、レーザ照射時における保持機構12の保持による被処理体16への影響(例えば、たわみやレーザ反射光)を低減させることができる。
(保持機構12)
保持機構12は、上述のように、被処理体16の4辺中の1辺のみを吸着して保持する。ここで、保持機構12は、保持機構12が保持する被処理体16の1辺が長辺又は短辺のいずれであっても、その1辺を吸着できることが好ましい。
しかし、保持機構12が被処理体16の短辺を保持する場合、保持機構12の被処理体16を吸着する吸着面には被処理体16が部分的に載置された状態となるため、十分な吸着力を得ることができず、被処理体16を吸着できないことがある。また、保持機構12が被処理体16の短辺を保持する場合に限らず、被処理体16が反っている場合にも、保持機構12の吸着面には被処理体16が部分的に載置された状態となるため、被処理体16を吸着できないことがある。
そのため、保持機構12は、保持機構12の吸着面に被処理体16が部分的に載置された状態であっても、被処理体16を吸着できるようにすることが好ましい。以下、保持機構12の好適な例について説明する。ここでは、保持機構12の好適な例の理解を容易とするために、最初に、本発明者等が検討した比較例にかかる保持機構ついて説明する。
(比較例1にかかる保持機構120A)
まず、比較例1にかかる保持機構120Aについて、図4、図5を用いて説明する。図4、図5は、比較例1にかかる保持機構120Aの構成を模式的に示す側面図である。図4、図5に示すように、保持機構120Aは、台座153と、配管145と、圧力計149と、バルブ143と、配管147と、真空発生装置144と、を備えている。
台座153は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、グラナイトなどからなる板状部材である。台座153は、2つの貫通穴152を備えている。貫通穴152の数は、複数であれば良く、2つに限定されるものではない。貫通穴152は、台座153の上面153aから下面153bに到達している。すなわち、z方向における貫通穴152の長さは台座153の厚みと同じとなっている。保持機構120Aでは、台座153の上面153aが被処理体16を吸着する吸着面となる。2つの貫通穴152は、それぞれ配管145に接続され、2つの配管145は、それぞれバルブ143に接続され、2つのバルブ143は、1つの配管147に接続され、配管147は、真空発生装置144に接続されている。
真空発生装置144は、真空ポンプやエジェクタなどの排気機構である。真空発生装置144は、配管145内部を負圧空間とするために、配管145内部のガスを排気する。ここでは、真空発生装置144は、コンプレッサ(不図示)から供給された空気を利用して、配管145内部のガスを排出ポート(不図示)から排出することで、配管145内部を排気するエジェクタであるとする。コンプレッサが供給する空気の流量はレギュレータ(不図示)で調整可能である。
バルブ143は、例えば、制御信号によって開閉制御されるエアオペレートバルブである。バルブ143が開くと、真空発生装置144が配管145内部を排気する。バルブ143が閉じると、配管145内部の排気が停止される。
圧力計149は、配管145と連通している。したがって、圧力計149は、配管145内部の圧力を測定する。なお、圧力計149を取り付ける位置は、配管145内部の圧力を測定することができる位置であれば特に限定されるものではない。例えば、台座153には、圧力計149を取り付けるポートを別途設けてもよい。
ここで、図4は、x方向のサイズが長い被処理体16が台座153の上面153aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152が塞がれた状態である。この状態で2つのバルブ143を開くと、2つの貫通穴152が共に塞がれており、台座153の上側のガスが貫通穴152から流入しないため、真空発生装置144が2つの配管145内部を排気することができる。その結果、2つの配管145内部は、例えば、真空発生装置144で消費した空気の消費量が50L/min(20℃、1atm)のとき、圧力が約-50kPa(gauge)の負圧空間となった。このように、被処理体16で塞がれている2つの貫通穴152にそれぞれ接続された2つの配管145の双方の内部が負圧空間となるため、2つの貫通穴152を介して被処理体16を吸着することが可能になる。
一方、図5は、x方向のサイズが短い被処理体16が台座153の上面153aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152のうちの1つのみ(図中左側の貫通穴152のみ)が塞がれた状態である。この状態で2つのバルブ143を開いても、図中右側の貫通穴152からガスが流入するため、真空発生装置144が図中左側の配管145内部を排気することができない。その結果、図中左側の配管145内部は、例えば、真空発生装置144で消費した空気の消費量が50L/min(20℃、1atm)であっても、圧力がほぼ大気圧、つまり0kPa(gauge)に近くなった。このように、被処理体16で塞がれている図中左側の貫通穴152に接続された配管145内部は負圧空間にはならないため、被処理体16を吸着することができない。
(比較例2にかかる保持機構120B)
続いて、比較例2にかかる保持機構120Bについて、図6、図7を用いて説明する。図6、図7は、比較例2にかかる保持機構120Bの構成を模式的に示す側面図である。図6、図7に示すように、保持機構120Bは、図4、図5を用いて説明した比較例1にかかる保持機構120Aに対して、台座153の上面153aに多孔質体151を貼り付けた構成になっている。
多孔質体151は、平板状に形成されており、上面151a及び下面151bを備えている。保持機構120Bでは、多孔質体151の上面151aが、被処理体16を吸着する吸着面となり、多孔質体151の下面151bが、貫通穴152と接する。多孔質体151の内部には、微細な気孔(すなわち細孔)が設けられている。多孔質体151は、例えば、アルミナセラミックスなどの多孔質セラミックスである。あるいは、多孔質体151は、多孔質カーボン、多孔質金属などである。
多孔質体151の気孔率、気孔径、厚さなどを変えることで、台座153の上側のガスの流入に対する流路抵抗を変更することができる。多孔質体151は、微細気孔のため、流路抵抗が大きく、被処理体16で塞がれていない貫通穴152があっても、その貫通穴152からのガスの流入を抑制することができる。
ここで、図6は、x方向のサイズが長い被処理体16が多孔質体151の上面151aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152が塞がれた状態である。この状態では、図4を用いて説明した比較例1にかかる保持機構120Aの場合と同様に、2つの貫通穴152を介して被処理体16を吸着することが可能になる。
一方、図7は、x方向のサイズが短い被処理体16が多孔質体151の上面151aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152のうちの1つのみ(図中左側の貫通穴152のみ)が塞がれた状態である。この状態で2つのバルブ143を開くと、図中右側の貫通穴152は被処理体16で塞がれていないが、多孔質体151は流路抵抗が大きいため、図中右側の貫通穴152からガスが流入することを抑制することができる。そのため、真空発生装置144が2つの配管145内部を排気することができる。その結果、2つの配管145内部は、例えば、真空発生装置144で消費した空気の消費量が50L/min(20℃、1atm)のとき、圧力が約-50~-40kPa(gauge)の負圧空間になった。このように、被処理体16により図中左側の貫通穴152のみが塞がれた状態であっても、図中左側の貫通穴152に接続された配管145内部が負圧空間となるため、図中左側の貫通穴152を介して被処理体16を吸着、つまり部分吸着することが可能になる。
このように、比較例2にかかる保持機構120Bでは、台座153の上面153aに多孔質体151を貼り付けた構成とすることで、保持機構120Bの吸着面に被処理体16が部分的に載置された状態であっても、被処理体16を吸着することが可能になる。
しかし、保持機構120Bでは、多孔質体151と被処理体16とが物理的に接触するため、脆い構造である多孔質体151には、被処理体16との物理的な接触によって割れやひびなどが発生しやすいという問題がある。また、多孔質体151は、パーティクルが発生しやすく、パーティクルが多孔質体151内部に目詰まりして、長期間の使用により性能が低下する、被処理体16に照射されたレーザ光15による劣化が生じやすいなどの問題がある。
また、保持機構120Bでは、多孔質体151と被処理体16とが物理的に接触するため、多孔質体151の特定の成分(例えば、ナトリウム)が金属イオンとして被処理体16に溶出する可能性がある。そのため、上記の特定の成分を使用しない多孔質体151が必要になるが、そのような多孔質体151は、歩留まりが悪く製造が困難である、高価である、使用時に割れが発生しやすいために取り扱いが困難であるなどの問題がある。
(保持機構12の概略構成)
続いて、本実施の形態にかかる保持機構12の概略構成について、図8、図9を用いて説明する。図8、図9は、本実施の形態にかかる保持機構12の構成を模式的に示す側面図である。
上述のように、図6、図7を用いて説明した比較例2にかかる保持機構120Bは、保持機構120Bの吸着面に被処理体16が部分的に載置された状態であっても、被処理体16を吸着することができる。しかし、台座153の上面153aに多孔質体151を貼り付けた構成であるため、多孔質体151に起因して、上記の種々の問題が生じる。
そこで、図8、図9に示すように、保持機構12は、台座153の上面153aに多孔質体151を貼り付けない構成を採る。台座153は、上述したように、金属やグラナイトからなる部材であるため、ナトリウムなどの特定の成分が被処理体16へ溶出する可能性を抑制できると共に、高精度な平面を容易に得ることができる。また、台座153の材質は、加工が容易となる観点から、アルミニウム製とすることが好ましい。また、台座153をアルミニウム製とする場合には、被処理体16の吸着面となる上面153aには表面処理を施すのが好ましい。
ただし、台座153の上面153aに多孔質体151を貼り付けない構成とした場合、図4、図5を用いて説明した比較例1にかかる保持機構120Aのように、被処理体16で塞がれていない貫通穴152がある場合、その貫通穴152から台座153の上側のガスが流入することに起因して、被処理体16を吸着できなくなる可能性がある。
そこで、保持機構12では、2つの配管145のそれぞれの途中に吸着補助バルブ150を設けている。この吸着補助バルブ150は、貫通穴152から配管145に流入したガスの流量に応じて開閉するバルブであり、具体的には、流量がしきい値以上となった場合に閉じるバルブである。吸着補助バルブ150は、例えば、貫通穴152から流入したガスの流量を測定する流量計と、流量計で測定された流量がしきい値以上となった場合に閉じるバルブと、の組み合わせで実現することができる。あるいは、吸着補助バルブ150は、上記の流量計とバルブとを組み合わせた機能を備える単一のバルブで実現しても良い。なお、保持機構12では、複数の圧力計149を、複数の配管145のそれぞれの内部のうち吸着補助バルブ150よりも真空発生装置144側に連通されているが、圧力計149の位置及び数はこれに限定されない。圧力計149は、例えば、配管147内部に1つだけ設けても良い。
ここで、図8は、x方向のサイズが長い被処理体16が台座153の上面153aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152が塞がれた状態である。この状態で2つのバルブ143を開くと、2つの貫通穴152が共に塞がれており、台座153の上側のガスが貫通穴152から流入しない。また、貫通穴152からガスが流入しないため、2つの配管145の途中に設けた吸着補助バルブ150は共に開いたままである(open)。そのため、真空発生装置144が2つの配管145内部を排気することができる。その結果、2つの配管145内部は、例えば、真空発生装置144で消費した空気の消費量が50L/min(20℃、1atm)のとき、圧力が約-50kPa(gauge)の負圧空間になった。このように、被処理体16で塞がれている2つの貫通穴152にそれぞれ接続された2つの配管145の双方の内部が負圧空間となるため、2つの貫通穴152を介して被処理体16を吸着することが可能になる。
一方、図9は、x方向のサイズが短い被処理体16が台座153の上面153aに載置され、被処理体16により2つの貫通穴152のうちの1つのみ(図中左側の貫通穴152のみ)が塞がれた状態である。この状態で2つのバルブ143を開くと、図中右側の貫通穴152からガスが流入するが、流入したガスの流量がしきい値以上になると、図中右側の配管145の途中に設けた吸着補助バルブ150が閉じる。そのため、以降、図中右側の配管145は大気から遮断され、図中右側の貫通穴152からのガスの流入が抑制される。一方、図中左側の配管145の途中に設けた吸着補助バルブ150は、台座153の上側のガスが流入しないため、開いたままである。そのため、真空発生装置144が2つの配管145内部を排気することができる。その結果、2つの配管145は、例えば、真空発生装置144で消費した空気の消費量が50L/min(20℃、1atm)のとき、圧力が約-50~-40kPa(gauge)の負圧空間になった。このように、被処理体16により図中左側の貫通穴152のみが塞がれた状態であっても、図中左側の貫通穴152に接続された配管145内部が負圧空間となるため、図中左側の貫通穴152を介して被処理体16を吸着、つまり部分吸着することが可能になる。
続いて、保持機構12の変形例について図10を用いて説明する。図10は、6つの貫通穴152を設けた保持機構12の変形例の構成を模式的に示す側面図である。図10は、x方向のサイズが長い被処理体16が台座153の上面153aに載置されているが、被処理体16は+x方向側の端部が上向きに反ってしまっており、図中右側の2つの貫通穴152が被処理体16により完全には塞がれていない状態である。この状態で2つのバルブ143を開くと、被処理体16で塞がれていない図中右側の2つの貫通穴152から台座153の上側のガスが流入するため、図中右側の2つの配管145の途中に設けた吸着補助バルブ150は閉じる。一方、図中左側の4つの配管145の途中に設けた吸着補助バルブ150は開いたままである。そのため、真空発生装置144が6つの配管145内部を排気することができ、その結果、6つの貫通穴152にそれぞれ接続された6つの配管145内部は負圧空間となる。そのため、図中左側の4つの貫通穴152を介して被処理体16を吸着、つまり部分吸着することが可能になる。
(保持機構12の詳細構成)
続いて、本実施の形態にかかる保持機構12の詳細構成について、図11~図14を用いて説明する。図11は、保持機構12を台座153と配管145との境界部分で上下に分断した分解斜視図である。図12は、保持機構12の吸着面付近の拡大斜視図である。図13は、図12に示す保持機構12のA領域における拡大平面図である。図14は、図12に示す保持機構12の切断線II-IIにおける断面図である。
図11に示すように、保持機構12は、被処理体16を吸着する吸着面となる上面153aが、被処理体16の搬送方向(x方向)に複数に分割されている。なお、上面153aの分割方向は、搬送方向(x方向)だけでなく、被処理体16の搬送方向と垂直な方向(y方向)のサイズが長い場合には、y方向にさらに分割しても良い。
図12~図14に示すように、分割された各上面153a毎に、搬送方向(x方向)の中央付近(A領域)に貫通穴152が形成されている。図13、図14に示すように、貫通穴152は、4つの貫通穴152aと、貫通穴152aよりも径が大きい1つの貫通穴152bと、が互いに接続された構成になっている。分割された各上面153aでは、4つの貫通穴152aが開口している。貫通穴152aの数は一例であり、これに限定されるものではない。また、分割された各上面153aにおいて、貫通穴152が形成される搬送方向(x方向)の位置は、中央付近の位置に限定されず、中央付近からずれていても良い。配管145は、分割された各上面153a毎に、つまり、貫通穴152毎に設けられており、貫通穴152bに接続される。
図12~図14に示すように、分割された各上面153aには、溝154が形成されており、より広い面積で被処理体16を吸着できるようになっている。溝154の形状は、長辺が搬送方向(x方向)に沿うように長方形を搬送方向(x方向)に並べて、各長方形の対角の頂点同士を結んだ形状としているが、これに限定されない。1つの上面153aに形成された溝154同士は互いに繋がっており、ガスの流路を形成している。4つの貫通穴152aは、溝154が存在する位置にて開口するように形成されている。そのため、4つの貫通穴152aの各々の内部の流路と溝154で形成された流路とは互いに繋がっている。
(吸着補助バルブ150の効果)
本実施の形態では、保持機構12は、台座153に複数の貫通穴152が形成されており、複数の貫通穴152にそれぞれ接続される複数の配管145の途中には、貫通穴152から配管145に流入したガスの流量に応じて開閉する吸着補助バルブ150が設けられている。
吸着補助バルブ150が無い構成では、被処理体16により塞がれていない貫通穴152があった場合、比較例1にかかる保持機構120Aと同様に、その貫通穴152からガスが流入するため、配管145内部を排気することができず、配管145内部を負圧空間とすることができない。そのため、被処理体16を吸着することができない。
その一方、吸着補助バルブ150がある構成では、被処理体16により塞がれていない貫通穴152があった場合にも、その貫通穴152に接続された配管145の途中に設けられた吸着補助バルブ150が閉じることで、その貫通穴152からのガスの流入が抑制される。これにより、その貫通穴152に接続された配管145内部を負圧空間とすることができるため、被処理体16を吸着、つまり部分吸着することが可能になる。
また、被処理体16により複数の貫通穴152の全てが塞がれていない場合にも、複数の貫通穴152に接続された複数の配管145の途中にそれぞれ設けられた吸着補助バルブ150の全てが閉じるため、複数の貫通穴152からのガスの流入が抑制される。ただし、その場合には、被処理体16により複数の貫通穴152のいずれかが塞がれている場合と比較して、真空圧力が小さくなる(圧力が0に近くなる)。
そのため、保持機構12は、被処理体16により複数の貫通穴152の全てが塞がれていない状態の圧力を、被処理体16が載置されているか否か、すなわち、被処理体16を吸着したか否かを判定する吸着判定のしきい値として保持しても良い。この場合、保持機構12は、圧力計149で測定した測定圧力がしきい値未満の場合(測定圧力がしきい値よりもマイナス方向に大きい場合。以下同じ)、吸着が完了したと判定し、測定圧力がしきい値以上の場合(測定圧力がしきい値と同じ場合又はしきい値よりも0に近い場合。以下同じ)、吸着が完了していないと判定することができる。
そして、被処理体16の吸着が完了したと判定された場合に、移動機構13が保持機構12を移動させる(図1等を参照)。すなわち、被処理体16の吸着検知を被処理体16の搬送開始のトリガーとすることができる。以下、被処理体16の吸着判定と、移動機構13の動作を行うための制御系について図15を用いて説明する。
レーザ照射装置1は、A/Dコンバータ52と、制御部53と、モータドライバ56と、モーションコントローラ54と、モータ57と、を備えている。モータ57は、移動機構13に設けられたアクチュエータであり、保持機構12を搬送方向(図1の+x方向)に移動させる。モータドライバ56はモータ57を駆動する。また、レーザ照射装置1は、上記した搬送ユニット11、保持機構12、移動機構13、浮上ユニット10、圧力計149等を備えている。なお、図15における圧力計149は、複数の配管145にそれぞれ設けられた複数の圧力計149のうち任意の1つとする。図15における圧力計149は、被処理体16により塞がれる可能性が高い貫通穴152(例えば、搬送方向(x方向)の中央付近の貫通穴152)に接続された配管145に設けられた圧力計149の中から選択すれば良い。
圧力計149は、圧力計149が連通している配管145内部の圧力を測定して、測定圧力に応じた測定信号をA/Dコンバータ52に出力する。A/Dコンバータ52はアナログの測定信号をA/D変換する。そして、A/Dコンバータ52はデジタルの測定信号を制御部53に出力する。制御部53は、CPUやメモリ等を備える演算処理装置である。また、制御部53は、レーザ照射装置1に設けられた各機器(例えば、バルブ143、モータ、シリンダ等の各種アクチュエータ、レーザ発生装置14等)を制御している。
制御部53は、予め設定されたしきい値と測定信号の値(測定圧力)を比較することで、吸着判定を行う。すなわち、制御部53は、測定圧力がしきい値未満の場合、吸着が完了したと判定する。制御部53は、測定圧力がしきい値以上の場合、吸着が完了していないと判定する。このように制御部53は、吸着判定を行う判定部となる。
制御部53は、吸着判定の結果に応じた動作指令をモーションコントローラ54に出力する。すなわち、吸着が完了したと判定された場合、制御部53は、動作指令をモーションコントローラ54に出力する。動作指令が移動開始のトリガーとなっているため、移動機構13による移動が開始する。
具体的には、モーションコントローラ54がパルス又は通信により、制御信号をモータドライバ56に出力する。これにより、モータドライバ56は、制御信号に応じた駆動信号をモータ57に出力する。よって、移動機構13のモータ57が+x方向に保持機構12を移動させる。保持機構12に保持された被処理体16が+x方向に搬送される。
また、モータ57のエンコーダからは、モータドライバ56にエンコーダ値が出力されている。モータドライバ56は、エンコーダ値に応じたフィードバック信号をモーションコントローラ54に出力する。そして、モーションコントローラ54は、フィードバック信号に応じたフィードバック制御を行う。これにより、被処理体16が所定の搬送速度で、所定の搬送距離だけ+x方向に搬送される。
次に、図16を用いて、被処理体16を吸着して、搬送する処理について説明する。図16は、被処理体16を吸着して、搬送する処理を示すフローチャートである。
まず、保持機構12が上昇する(S11)。すなわち、被処理体16の下方に配置された保持機構12が被処理体16と当接する位置まで、+z方向に移動する。そして、保持機構12による吸着をオンする(S12)。具体的には、制御部53は、図8等に示すバルブ143を開く。これにより、配管145内部が排気され、負圧となる。次に、吸着が完了したか否かの判定を制御部53が行う(S13)。すなわち、制御部53が圧力計149の測定値としきい値とを比較して、比較結果に応じて吸着判定を行う。吸着が完了していないと判定された場合(S13のNO)、吸着が完了するまでS13の吸着判定を繰り返す。すなわち、配管145内部の圧力がしきい値以上の場合、配管145内部の圧力がしきい値未満になるまで搬送を待機する。
吸着が完了したと判定された場合(S13のYES)、被処理体16を搬送する(S14)。すなわち、配管145内部の圧力がしきい値未満になった場合、移動機構13のモータ57が動作を開始する。これにより、保持機構12に保持された被処理体16が+x方向に搬送される。
次に、被処理体16の吸着を解除する処理について、図17を用いて説明する。図17は、吸着解除の処理を示すフローチャートである。
まず、被処理体16の吸着をオフ(解除)する(S21)。具体的には、制御部53は、図8等に示すバルブ143を閉じると、配管145内部の圧力が上昇する。次に、吸着の解除が完了したか否かの判定を制御部53が行う(S22)。すなわち、制御部53が圧力計149の測定値としきい値とを比較して、比較結果に応じて吸着解除の判定を行う。吸着解除が完了していないと判定された場合(S22のNO)、吸着解除が完了するまでS22の吸着判定を繰り返す。すなわち、配管145内部の圧力がしきい値未満の場合、配管145内部の圧力がしきい値以上になるまで待機する。
吸着解除が完了したと判定された場合(S22のYES)、保持機構12が下降する(S23)。すなわち、被処理体16と当接していた保持機構12が被処理体16と離れる位置まで-z方向に移動する。これにより、吸着解除の処理が終了する。
なお、上記では、複数の配管145毎に複数の圧力計149を設け、複数の圧力計149の中から、被処理体16により塞がれる可能性が高い貫通穴152に接続された配管145に設けられた圧力計149の1つを選択しているが、これに限定されるものではない。被処理体16により塞がれる可能性が高い1つ以上の貫通穴152が事前に分かっていれば、その1つ以上の貫通穴152にそれぞれ接続された配管145にのみ圧力計149を設ければ良い。このようにして、2つ以上の圧力計149を設けた場合は、その中から圧力計149を選択すれば良く、1つの圧力計149のみを設けた場合は、選択の手順を省略することができる。
このように、本実施の形態では、圧力計149が測定した圧力に応じて、吸着判定、及び吸着解除判定を行っている。すなわち、圧力測定値としきい値とを比較することで、保持機構12が被処理体16を吸着しているか否かの判定が行われる。このようにすることで、吸着されているかを適切かつ迅速に判定することができる。
保持機構12が被処理体16を吸着したと制御部53が判定した後、移動機構13が移動を開始する。保持機構12が被処理体16を吸着していないと制御部53が判定した後、保持機構12が昇降する。これにより、搬送ユニット11の動作を迅速に行うことができるため、タクトタイムを短縮することができる。さらに、吸着が完了する前に、保持機構12が移動することを防ぐことができる。
実施の形態2.
(レーザ照射装置2の基本構成)
本実施の形態2にかかるレーザ照射装置2について図18、図19を用いて説明する。図18は、レーザ照射装置2の主要部分の構成を示す斜視図である。図19は、レーザ照射装置2の主要部分の構成を示すxy平面図である。なお、実施の形態1と重複する構成については適宜説明を省略する。例えば、搬送ユニット61_1~61_4、保持機構62_1~62_4、移動機構63_1~63_4の基本的な構成については、実施の形態1に示した搬送ユニット11、保持機構12、移動機構13と同様であるため、適宜説明を省略する。さらには、図15で示した制御系を用いて、図16、図17に示す処理を行うことが可能である。また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様にレーザ発生装置からのレーザ光65を被処理体66に照射することで、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に改質している。
浮上ユニット60は、浮上ユニット60の表面からガスを噴出するように構成されており、浮上ユニット60の表面から噴出されたガスが被処理体66の下面に吹き付けられることで、被処理体66が浮上する。浮上ユニット60は架台400の上に配置されている。
また、xy平面視において矩形状の浮上ユニット60が6つの領域60a~60fに分割されている。具体的には、浮上ユニット60が第1の領域60a~第4の領域60dと、照射領域60eと、モニタ領域60fとを備えている。第1の領域60aは、‐x側かつ+y側の角(図19における左上角)を含む矩形状の領域である。第2の領域60bは、+x側かつ+y側の角(図19における右上角)を含む矩形状の領域である。第3の領域60cは、+x側かつ‐y側の角(図19における右下角)を含む矩形状の領域である。第4の領域60dは、‐x側かつ‐y側の角(図19における左下角)を含む矩形状の領域である。
照射領域60eは、第1の領域60aと第2の領域60bとの間に配置されている。照射領域60eは、レーザ光が照射される領域である。すなわち、照射領域60eにレーザ照射位置65が含まれている。モニタ領域60fは、第3の領域60cと第4の領域60dとの間に配置されている。したがって、浮上ユニット60の+y側の半分の領域(図19の上半分の領域)は、-x側(図19の左側)から順に、第1の領域60a、照射領域60e、第2の領域60bとなっている。浮上ユニット60の‐y側の半分の領域(図19の下半分の領域)は、+x側から順に、第3の領域60c、モニタ領域60f、第4の領域60dとなっている。
xy平面視において、第1の領域60a~第4の領域60dはほぼ同じ面積となっていてもよい。xy平面視において、照射領域60eと、モニタ領域60fとは、ほぼ同じ面積の矩形状となっていてもよい。この場合、第1の領域60aと第4の領域60dがy方向に並んで配置されている。第2の領域60bと第4の領域60dがy方向に並んで配置されている。照射領域60eとモニタ領域60fがy方向に並んで配置されている。
また、第1の領域60aにはアライメント機構69が設けられている。アライメント機構69は、実施の形態1の保持機構12と同様に、被処理体66を吸着して保持する。そして、アライメント機構69は被処理体66の位置、及び回転角度を調整する。例えば、被処理体66の搬入動作、搬送動作、回転動作によって、被処理体66の位置や回転角度が微小にずれる可能性がある。アライメント機構69は、位置や回転角度のずれを補正している。これにより、被処理体66におけるレーザ光の照射位置を精度よく制御することができる。
また、第4の領域60dには、回転機構68が設けられている。回転機構68は、実施の形態1の保持機構12と同様に、被処理体66を吸着して保持する。そして、回転機構68は、z方向と平行な回転軸(以下、z軸)周りに被処理体66を回転する。また、回転機構68は、被処理体66をz軸周りに回転するモータ等のアクチュエータを備えている。
また、第4の領域60dの外側には、補助浮上ユニット67が設けられている。補助浮上ユニット67は、第4の領域60dの-y側と-x側にそれぞれ配置されている。回転機構68による被処理体66の回転中に、被処理体66の一部が浮上ユニット60の外側にはみ出てしまうと、そのはみ出した部分では、浮上ユニット60による浮上力が発生せずに、被処理体66のたわみ量が大きくなってしまうおそれがある。補助浮上ユニット67は、浮上ユニット60と同様に、補助浮上ユニット67の表面からガスを噴出するように構成されており、補助浮上ユニット67の表面から噴出されたガスが被処理体66の下面に吹き付けられることで、被処理体66の浮上ユニット60からはみ出した部分に浮上力が発生する。このようにすることで、被処理体66を損傷することなく、回転機構68が被処理体66を回転させることができる。
被処理体66は、第1の領域60a~第4の領域60dを順次搬送される。すなわち、被処理体66は、第1の領域60aから+x方向に搬送されると、照射領域60eを通過して、第2の領域60bまで移動する。照射領域60eを通過する際に、被処理体66にレーザ光が照射される。被処理体66は第2の領域60bから‐y方向に搬送されると、第3の領域60cまで移動する。
被処理体66が第3の領域60cから‐x方向に搬送されると、モニタ領域60fを通過して、第4の領域60dに移動する。モニタ領域60fでは、被処理体66を撮像することで、レーザ光の照射ムラをモニタする。被処理体66が第4の領域60dから+y方向に搬送されると、第1の領域60aに移動する。
このように、被処理体66は、+x方向、-y方向、-x方向、+y方向と方向を変えて搬送されていく。換言すると、被処理体66は、第1の領域60a~第4の領域60dを循環するように搬送される。なお、厳密には、第4の領域60dが被処理体66の搬入/搬出位置となっているため、被処理体66は、第4の領域60d、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cの順番で搬送されていく。もちろん、搬入/搬出位置は、第4の領域60dに限られるものではない。
さらには、被処理体66を反対方向に循環してもよい。例えば、第4の領域60d、第3の領域60c、第2の領域60b、第1の領域60aの順番で被処理体66を搬送してもよい。すなわち、図19の平面図において、搬送方向は、時計回りでもよく、反時計回りでもよい。レーザ照射装置2の処理に応じて、搬送方向を適宜切り替えるようにしてもよい。
(搬送ユニット61_1~61_4)
上記のように、被処理体66を循環して搬送するため、レーザ照射装置2は、4つの搬送ユニット61_1~61_4を備える。搬送ユニット61_1~61_4は浮上ユニット60の外側であって、浮上ユニット60の各辺の近傍に設けられている。
浮上ユニット60はxy平面視した際の形状が矩形状であり、各々の搬送ユニット61_1~61_4は、浮上ユニット60の各々の辺に沿って被処理体66を搬送するように設けられている。なお、各搬送ユニット61_1~61_4は、浮上ユニット60の各辺の外側に設けられているが、浮上ユニット60の内側に設けられていてもよい。
具体的には、搬送ユニット61_1は浮上ユニット60の+y方向側の辺に設けられており、保持機構62_1と移動機構63_1とを備える。そして、保持機構62_1で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_1が+x方向に移動することで、被処理体66を第1の領域60aから第2の領域60bに搬送することができる。搬送ユニット61_1による搬送で、被処理体66が照射領域60eを通過する。よって、被処理体66が第1の領域60aから第2の領域60bに搬送される際にレーザ光65が被処理体66に照射される。
搬送ユニット61_2は浮上ユニット60の+x方向側の辺に設けられており、保持機構62_2と移動機構63_2とを備える。そして、保持機構62_2で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_2が‐y方向側に移動することで、被処理体66を第2の領域60bから第3の領域60cに搬送することができる。
搬送ユニット61_3は浮上ユニット60の‐y方向側の辺に設けられており、保持機構62_3と移動機構63_3とを備える。そして、保持機構62_3で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_3が‐x方向に移動することで、被処理体66を第3の領域60cから第4の領域60dに搬送することができる。搬送ユニット61_3による搬送で、被処理体66がモニタ領域60fを通過する。
搬送ユニット61_4は浮上ユニット60の‐x方向側の辺に設けられており、保持機構62_4と移動機構63_4とを備える。そして、保持機構62_4で被処理体66を保持しつつ、移動機構63_4が+y方向に移動することで、被処理体66を第4の領域60dから第1の領域60aに搬送することができる。
被処理体66の搬送方向を変えるタイミングでは、搬送ユニット61_1~61_4の間で被処理体66を持ち替える持ち替え動作が行われる。例えば、搬送ユニット61_2が第2の領域60bまで被処理体66を搬送すると、搬送ユニット61_2から搬送ユニット61_3への持ち替え動作が行われる。具体的には、搬送ユニット61_2が第3の領域60cまで被処理体66を搬送したら、搬送ユニット61_2の保持機構62_2が吸着を解除するとともに、搬送ユニット61_3の保持機構62_3が被処理体66を吸着する。このように、搬送ユニット61_1~61_4が被処理体66を順番に持ち替えることで、上記した搬送を行うことができる。
さらに、アライメント機構69は、搬送ユニット61_4、61_1との間で持ち替え動作を行う。例えば、搬送ユニット61_4によって第1の領域60aに搬送された被処理体66は、搬送ユニット61_4からアライメント機構69に持ち替えられる。また、アライメント機構69によってアライメントされた被処理体66は、アライメント機構69から搬送ユニット61_1に持ち替えられる。
また、回転機構68は、搬送ユニット61_3、61_4との間で持ち替え動作を行う。例えば、搬送ユニット61_3から第4の領域60dに搬送された被処理体66は、搬送ユニット61_3から回転機構68に持ち替えられる。回転機構68によって回転された被処理体66は、回転機構68から搬送ユニット61_4に持ち替えられる。
(保持機構62_1~62_4)
保持機構62_1~62_4は、実施の形態1と同様の構成となっており、被処理体66を吸着する。保持機構62_2、62_4は、保持機構62_1、62_3と異なる向きで配置されている。より具体的には、xy平面視において、保持機構62_1、62_3は、x方向を長手方向とする矩形状になっている。また、保持機構62_2、62_4は、y方向を長手方向とする矩形状になっている。保持機構62_1~62_4は、その移動方向が長手方向となるように設けられている。
さらに、矩形状の被処理体66の短辺と長辺のいずれを保持するかに応じて、保持機構62_1~62_4のサイズを変えてもよい。例えば、図19では、x方向が被処理体66の長辺方向となっており、y方向が短辺方向となっている。具体的には、被処理体66のx方向のサイズは、1850mm、y方向のサイズは1500mm程度となる。よって、保持機構62_1、62_3は、被処理体66の長辺を保持するため、移動方向(x方向)のサイズは被処理体66の長辺と同じとしている。保持機構62_2、62_4は、短辺を保持するため、移動方向(y方向)のサイズは被処理体66の短辺と同じとしている。この場合、保持機構62_1、62_3のy方向のサイズを10mm程度とし、保持機構62_2、62_4のx方向のサイズを35mm程度とする。つまり、保持機構62_2、62_4の幅を、保持機構62_1、62_3の幅よりも広くする。保持機構62_1は、保持する被処理体66が照射領域60eを通過するため、被処理体66を保持する領域を小さくすれば、被処理体66におけるレーザ光が照射可能な領域を広く確保することができる。また、長辺を保持する場合、短辺を保持する場合よりも被処理体66にかかるモーメントは小さい。そのため、保持機構62_1の幅は狭くすることが好適である。これに対して、保持機構62_2、62_4は、保持する被処理体66が照射領域60eを通過しないため、被処理体66を確実に保持することが優先される。また、短辺を保持する場合、長辺を保持する場合よりも大きなモーメントが被処理体66にかかるため、より大きな吸着力が必要となる。そのため、保持機構62_2、62_4の幅は広くすることが好適である。なお、保持機構62_3の幅は、対向する保持機構62_1と同じ幅としているが、被処理体66を確実に保持することを優先して、隣接する保持機構62_2、62_4と同じ幅としても良い。保持機構62_1~62_4は、被処理体66の端部を吸着して、被処理体66を保持する。また、図19では、保持機構62_1~62_4のそれぞれが被処理体66の1辺全体に設けられている構成が示されているが、被処理体66の1辺全体に設けられていなくてもよい。すなわち、保持機構62_1~62_4のそれぞれが被処理体66の1辺を部分的に保持してもよい。具体的には、隣の辺を保持する保持機構と被処理体66の保持位置が重複しないように配置する。また、被処理体66のサイズは、上記のサイズに限定されず、上記のサイズ以下としても良い。
ここで、実施の形態2にかかるレーザ照射装置2では、レーザ照射位置65のy方向における長さは、被処理体66のy方向における長さの半分程度の長さである。よって、被処理体66がレーザ照射位置65を通過した際に、被処理体66のy方向の半分の領域にレーザ光が照射される。したがって、被処理体66が、浮上ユニット60の上を2回循環するように搬送されていく。このようにすることで、被処理体66のほぼ全面に、レーザ光が照射される。
このように被処理体66のほぼ全面にレーザ光を照射する場合は、図18、図19に示すように、浮上ユニット60の第4の領域60dに、被処理体66の水平面(xy平面)を保持しながら被処理体66を180度回転させる回転機構68を設ける。つまり、搬送ユニット61_1を用いて被処理体66を第1の領域60aから第2の領域60bに搬送して被処理体66にレーザ光65を照射した後、搬送ユニット61_2~61_4を用いて被処理体66を搬送させつつ、回転機構68を用いて被処理体を180度回転させる。そして、再度、搬送ユニット61_1を用いて被処理体66を領域60aから領域60bに搬送して被処理体66にレーザ光65を照射することで、被処理体66の全面にレーザ光65を照射することができる。
本実施の形態では、被処理体66の全面にレーザ光65を照射するために、回転機構68が被処理体66を180度回転させているが、回転機構68は、被処理体66の90度回転を可能な構成としても良い。例えば、被処理体66上のレーザ光の照射ムラが大きい場合、循環搬送を1回増やして、レーザ光の再照射を行うことが好適である。その場合、被処理体66上でレーザ光の照射ムラが大きくなっている位置によっては、回転機構68で被処理体66を180度回転させるよりも、90度回転させる方が効率的な場合がある。そのため、回転機構68は、被処理体66を180度回転させるだけでなく、90度回転も可能な構成とするのが好適である。
この場合、保持機構62_1~62_4は、保持機構保持機構62_1~62_4が保持する被処理体66の1辺が長辺又は短辺のどちらかとなるが、その一辺が長辺又は短辺のいずれであっても、その1辺を吸着できることが好ましい。
本実施の形態では、保持機構62_1、62_3は、移動方向(x方向)のサイズを被処理体66の長辺と同じとしているため、被処理体66の短辺を保持する場合には、保持機構62_1、62_3の吸着面に被処理体66が部分的に載置されることになる。しかし、保持機構62_1~62_4は、実施の形態1に示した、部分吸着の機能を実現可能な保持機構12と略同様にすることで、保持機構62_1、62_3は、被処理体66の短辺を保持することができる。一方、保持機構62_2、62_4は、移動方向(y方向)のサイズを被処理体66の短辺と同じとしているため、被処理体66の長辺を保持する場合には、被処理体66の長辺を部分的に保持することになる。この場合、保持機構62_2、62_4は、被処理体66により貫通穴152が全て塞がれることになるため、被処理体66の長辺を保持することができる。
以下、保持機構62_1~62_4の好適な例について説明する。最初に、保持機構62_1の好適な例について説明する。
本実施の形態では、保持機構62_1は、保持する被処理体66が照射領域60eを通過するものであり、この点では実施の形態1に示した保持機構12と同様である。そのため、保持機構62_1は、実施の形態1に示した保持機構12と同様に、図11~図14に示した構成とすることができる。また、保持機構62_1の幅、すなわちy方向のサイズは狭くするのが好適である。そのため、保持機構62_1は、y方向のサイズを10mm程度にするのが良い。
続いて、保持機構62_2の好適な例について、図20、図21を用いて説明する。図20は、保持機構62_2の吸着面付近の拡大斜視図である。図21は、図20に示す保持機構62_2の切断線II-IIにおける断面図である。図20の切断線II-IIは、貫通穴152が形成されているA領域付近を切断した線となる。なお、図20、図21では、吸着補助バルブ150の図示を省略している。
本実施の形態では、保持機構62_2は、通常は短辺を保持することから、より大きな吸着力を得るために、保持機構62_2の幅、すなわちx方向のサイズを広くするのが好適である。そのため、図20、図21に示すように、保持機構62_2は、x方向のサイズを35mm程度に広くし、実施の形態1に示した保持機構12と同形状の溝154の列をx方向に1列追加して計2列にした構成としている。また、保持機構62_2は、x方向のサイズを広くしたため、x方向に5つの貫通穴152aを形成して、これら貫通穴152aを空間152cに接続し、この空間152cを貫通穴152bに接続している。
保持機構62_2は、その他の構成は実施の形態1に示した保持機構12と同様の構成となっている。ただし、保持機構62_2は、x方向のサイズが広いため、台座153の上面153aを、搬送方向(y方向)だけでなく、x方向にさらに分割しても良い。その場合、分割された各上面153a毎に貫通穴152を設けるため、貫通穴152は、y方向に2以上設けると共に、x方向にも2以上設けることになる。
続いて、保持機構62_2の変形例について、図22、図23を用いて説明する。図22は、保持機構62_2の変形例の吸着面付近の拡大斜視図である。図23は、図22に示す保持機構62_2の切断線II-IIにおける断面図である。図22の切断線II-IIは、貫通穴152が形成されているA領域を切断した線となる。なお、図22、図23では、吸着補助バルブ150の図示を省略している。
図22、図23に示すように、保持機構62_2は、x方向のサイズを35mm程度に広くし、実施の形態1に示した保持機構12と同形状の溝154の列をx方向に2列追加して計3列にした構成としている。また、保持機構62_2は、x方向のサイズを広くしたため、x方向に4つの貫通穴152aを形成して、これら貫通穴152aを空間152cに接続し、この空間152cを貫通穴152bに接続している。その他の構成は、図20、図21に示したものと同様の構成になっている。
なお、保持機構62_4は、保持機構62_2と同様の構成にすれば良い。すなわち、保持機構62_4は、図20、図21に示した構成又は図22、図23に示した構成のいずれかと同様の構成にすれば良い。また、保持機構62_3は、保持機構62_1又は保持機構62_2のいずれかと同様の構成にすれば良い。すなわち、保持機構62_3は、図11~図14に示した構成、図20、図21に示した構成、又は図22、図23に示した構成のいずれかと同様の構成にすれば良い。
(搬送動作)
以下、搬送ユニット61_1~61_4による搬送動作について図24~図34を用いて詳細に説明する。
レーザ照射装置2を用いて被処理体66にレーザ光65を照射する場合は、まず、図24に示すように、第4の領域60dに被処理体66が搬入される。例えば、図示しない移載ロボットが被処理体66を第4の領域60dに搬入する。
次に、被処理体66の‐x方向側の端部の下面を、搬送ユニット61_4の保持機構62_4を用いて保持する。その後、保持機構62_4が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_4の移動機構63_4を+y方向側に移動させて、被処理体66を+y方向側に搬送する。これにより、図25に示すように、被処理体66が第1の領域60aに移動する。
被処理体66が第1の領域60aに移動すると、アライメント機構69の上に被処理体66が載せられる。そして、アライメント機構69が被処理体66のアライメントを行う。
アライメント後、被処理体66の+y方向側の端部の下面を、搬送ユニット61_1の保持機構62_1を用いて保持する。その後、図26に示すように、保持機構62_1が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_1の移動機構63_1を+x方向側に移動させて、被処理体66を+x方向側に搬送する。これにより、被処理体66は、照射領域60eを通過する。したがって、被処理体66の片側半分の領域にレーザ光65が照射されていく(レーザ光が照射されている領域を結晶化領域71として示す)。結晶化領域71では、非晶質膜(アモルファスシリコン膜)が結晶化して、多結晶膜(ポリシリコン膜)が形成されている。
図27に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第2の領域60bに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_1から保持機構62_2に変更する。具体的には、保持機構62_1が被処理体66を吸着するとともに、保持機構62_4が被処理体66の吸着を解除する。すなわち、保持機構62_1と保持機構62_2とが被処理体66の持ち替え動作を行う。また、搬送ユニット61_1を元の位置(第1の領域60a)に戻す。図27では、被処理体66が照射領域60eを1回通過しているため、被処理体66の-y側のほぼ半分が結晶化領域71となっている。なお、図27では、被処理体66の半面全体にレーザ光を照射しているが、被処理体66の半面の一部のみにレーザ光を照射するようにしてもよい。
その後、図28に示すように、保持機構62_2が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_2の移動機構63_2を-y方向側に移動させて、被処理体66を-y方向側に搬送する。
図29に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第3の領域60cに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_2から保持機構62_3に変更する。すなわち、保持機構62_2と保持機構62_3とが被処理体66の持ち替え動作を行う。また、搬送ユニット61_2を元の位置(第2の領域60b)に戻す。その後、保持機構62_3が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_3の移動機構63_3を-x方向側に移動させて、被処理体66を-x方向側に搬送する。
そして、図30に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第4の領域60dに搬送されて、回転機構68の上に到達した後、保持機構62_3から回転機構68への持ち替え動作が行われる。具体的には、保持機構62_3が保持している被処理体66を回転機構68が吸着体を介して保持する。そして、保持機構62_3の保持状態を解放して、保持機構62_3が被処理体66を保持していない状態とする。保持機構62_3が被処理体66を解放した後、搬送ユニット61_3は元の位置(第4の領域60d)に戻る。
そして、回転機構68の上に被処理体66が載っている状態で、回転機構68を180度回転させる。これにより被処理体66が180度回転して、図31に示すように、被処理体66の結晶化領域71が-y方向側から+y方向側になる。その後、保持機構62_4が被処理体66を保持する。すなわち、回転機構68から保持機構62_4に被処理体66が持ち替えられる。そして、保持機構62_4が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_4の移動機構63_4を+y方向側に移動させて、被処理体66を+y方向側に搬送する。
図32に示すように、被処理体66が浮上ユニット60の第1の領域60aに到達すると、被処理体66を保持する保持機構を保持機構62_4から保持機構62_1に変更する。また、搬送ユニット61_4を元の位置(第4の領域60d)に戻す。図32に示す位置において、保持機構62_1が被処理体66を保持する前に、アライメント機構69によりアライメント動作を行ってもよい。
その後、図33に示すように、保持機構62_1が被処理体66を保持した状態で、搬送ユニット61_1の移動機構63_1を+x方向側に移動させて、被処理体66を+x方向側に搬送する。これにより、被処理体66が照射領域60eを通過する。被処理体66の他方の半分の領域にレーザ光65が照射されていく。したがって、被処理体66の残り半分の非晶質膜が結晶化されていき、結晶化領域71となっていく。
そして、図34に示すように、第2の領域60bまで被処理体66を搬送することで、被処理体66のほぼ全面にレーザ光を照射することができる。そして、図27~図30に示した搬送動作と同様の搬送動作を行うと、被処理体66が第4の領域60dに移動する。
このように、本実施の形態では、被処理体66が浮上ユニット60上を複数回循環するように搬送されている。ここでは、第4の領域60dから、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cを経由して、第4の領域60dに戻る搬送動作を1回の循環搬送とする。上記の循環搬送動作を複数回繰り返すことで、被処理体66がレーザ照射位置65を複数回通過するようにすることができる。2回の循環搬送を行う事で、被処理体66のほぼ全面にレーザ光が照射される。さらに、3回以上循環搬送することで、被処理体66の同一箇所に複数回レーザ光を照射することができる。そして、所定の回数だけ循環搬送したら、第4の領域60dから被処理体66を搬出する。
なお、上記で説明したレーザ照射装置2では、回転機構68を浮上ユニット60の領域60dに設けた場合について説明したが、本実施の形態では回転機構68を設ける場所は浮上ユニット60の第4の領域60d以外であってもよい。すなわち、レーザ照射位置65を通過した後、再度レーザ照射位置65を通過する前に被処理体66を180度回転させればよいので、回転機構68を設ける場所は浮上ユニットの第1の領域60a~第4の領域60dのいずれかであればよい。
また、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、被処理体66を第4の領域60d、第1の領域60a、第2の領域60b、第3の領域60cの順に搬送して被処理体66にレーザ光65を照射しているので、同時に複数枚の被処理体66を循環搬送することができる。
つまり、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、被処理体66にレーザ光65を照射している間に、別の被処理体66を搬送したり、回転機構68で回転させたり、被処理体66を搬入、搬出することができる。よって、被処理体66にレーザ光65を照射した後、すぐに他の被処理体にレーザ光65を照射することができるので、レーザ光65が被処理体に照射されない時間を削減することができる。すなわち、本実施の形態では、レーザ照射装置2のスループットを向上させることができる。なお、この場合は、回転機構68を第1の領域60a、第2の領域60b以外の領域に設けることが好ましく、例えば、回転機構68を第4の領域60dに設けることが好ましい。
<その他の実施の形態>
次に、その他の実施の形態として、上記で説明したレーザ照射装置を用いた半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態では、レーザ照射装置としてレーザアニール装置を用いることで、基板上に形成した非晶質膜にレーザ光を照射して非晶質膜を結晶化させることができる。例えば、半導体装置はTFT(Thin Film Transistor)を備える半導体装置であり、この場合はアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化させてポリシリコン膜を形成することができる。
(半導体装置の製造方法)
図35は、半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。上記で説明した本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
まず、図35(a)に示すように、ガラス基板201上に、ゲート電極202を形成する。ゲート電極202は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、図35(b)に示すように、ゲート電極202の上に、ゲート絶縁膜203を形成する。ゲート絶縁膜203は、ゲート電極202を覆うように形成される。その後、図35(c)に示すように、ゲート絶縁膜203の上に、アモルファスシリコン膜204を形成する。アモルファスシリコン膜204は、ゲート絶縁膜203を介して、ゲート電極202と重複するように配置されている。
ゲート絶縁膜203は、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO2膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜203とアモルファスシリコン膜204とを連続成膜する。アモルファスシリコン膜204付のガラス基板201がレーザ照射装置1、2における被処理体16、66となる。
そして、図35(d)に示すように、上記で説明したレーザ照射装置を用いてアモルファスシリコン膜204にレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜204を結晶化させて、ポリシリコン膜205を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜205がゲート絶縁膜203上に形成される。
このとき、上記で説明した本実施の形態にかかるレーザ照射装置を用いることで、レーザ照射時におけるガラス基板201のたわみの影響を低減させることができ、アモルファスシリコン膜204に照射されるレーザ光の焦点深度(DOF)から外れてしまうことを抑制することができる。よって、均一に結晶化されたポリシリコン膜205を形成することができる。
その後、図35(e)に示すように、ポリシリコン膜205の上に層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを形成する。層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、TFTを備える半導体装置を製造することができる。なお、これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
(有機ELディスプレイ)
次に、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明する。図36は、有機ELディスプレイの概要を説明するための断面図であり、有機ELディスプレイの画素回路を簡略化して示している。図36に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PxにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
有機ELディスプレイ300は、基板310、TFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び封止基板314を備えている。図36では、封止基板314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態にかかる半導体装置は、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられていてもよい。
基板310は、ガラス基板又は金属基板である。基板310の上には、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素Pxに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。なお、TFT層311は、図35で説明したTFTに対応しており、ゲート電極202、ゲート絶縁膜203、ポリシリコン膜205、層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを有する。
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素Pxごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素Px間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素Pxには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
カラーフィルタ層313の上には、封止基板314が設けられている。封止基板314は、絶縁性がありかつ透明なガラス基板などの透明基板であり、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素Pxに供給することで、各画素Pxでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
なお、上記では、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明したが、TFTを備える半導体装置は、例えば液晶ディスプレイであってもよい。また、上記では、本実施の形態にかかるレーザ照射装置をレーザアニール装置に適用した場合について説明した。しかし、本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、レーザアニール装置以外の装置にも適用することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。