JP6773499B2 - 半導体駆動装置ならびにこれを用いた電力変換装置 - Google Patents
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Description
このような半導体スイッチング素子を制御するためには、半導体駆動装置が必要となる。一般に、電圧駆動型半導体の駆動装置は、半導体スイッチング素子のゲートに電圧を印加することで、素子の導通状態を制御する機能を有する。
ここで、ゲート抵抗Rgは、ゲートGに流れるゲート電流を制限することで、ゲートGとソースS間の電圧の変化率を調整するものである。これにより、MOSFET Q0のスイッチング速度、即ち、ドレイン電流Idの変化率及びドレインDとソースS間の電圧Vdsの変化率を適切に規定できる。なお、図1は、還流電流を流す目的で、MOSFET Q0と逆並列にダイオードD0を接続したMOSFETモジュールの構成を例としたものである。
(1)Type I短絡
Type I短絡は、自アーム素子がターンオンする際に短絡が生じるものである。一例として、インバータの上下アームを考えると、自アームがターンオフ中に対アーム素子が破壊して導通状態のままとなり、その状態で自アームがターンオンする状況で発生する。Type I短絡時には、短絡によってドレイン電流はMOSFETの飽和電流まで増加し、一方で、ドレイン−ソース間電圧は主回路の寄生インダクタンスと主電流の増加率の積によって発生する起電圧で変動する。この時、帰還容量Cgdを介してドレインからゲートに変位電流が流れる。このため、ゲート電圧は一時的に上昇する。
Type II短絡では、自アームMOSFETがゲートオン状態にあり、ドレイン電流Idが流れている期間に、オフ中の対アーム素子が突然破壊して短絡する場合がある。
このType II短絡ではゲートオン状態で短絡するため、その電流変化率は、素子特性で制限されるType I短絡よりも大きく、主回路の寄生インダクタンスによって制限されている。
その結果、ドレイン電流は急激に増大し、Type I短絡よりも激しい短絡となる。さらに、Type II短絡では、ドレイン−ソース間電圧が急激に増加するため、帰還容量Cgdを介してゲートに変位電流が流入することでゲート電圧が上昇し、飽和電流はさらに増加する。
Type III短絡では、Type II短絡と同様に、自アームMOSFETのゲートがオンしている状態で短絡するモードであるが、Type II短絡とは、逆並列接続されたダイオードが導通している状態で短絡する点が異なる。
一例として、自アームのダイオードが還流電流を流しており、かつ自アームのMOSFETのゲートがオンしている状態で、オフ中の対アームが突然破壊して短絡する場合がある。この場合も、ゲートオン状態で短絡するため、その電流変化率は、Type II短絡と同様に大きくなり、激しい短絡となる。
たとえば、MOSFETの場合、その短絡状態を検出する手段としては、ドレインの電圧を監視する方法、カレントトランスやセンス抵抗またはセンス用MOSFETを用いてドレイン電流値またはソース電流値を監視する方法、MOSFETモジュールの寄生インダクタンスに発生する起電圧またはそれから算出したドレイン電流値やソース電流値を監視する方法、及び、ゲート電圧またはゲート電流を監視する方法などが考えられる。
これに対し、ドレイン電圧検出方式は、オン状態であるにも拘らず、ドレイン−ソース間電圧が高い状態にあることを判定し、短絡を検出するものである。一般に、この検出方法は、ドレイン電流またはソース電流検出方式に比べて、検出遅延が大きくなるという不利益がある。
保護の高速化による対応は、フィルタ時間を短くする必要があるため、高速化に伴って誤検出のリスクが増大することが懸念される。
図2に示すように、実施例1に係る半導体駆動装置は、指令部1、ゲート電圧制御回路2、ドレイン電流検出部3、第1の過電流状態を検出する第1の過電流検出部4、第2の過電流状態を検出する第2の過電流検出部5、第1のゲート電圧低減指令部6、時間積分回路7及び遮断指令部8から構成されている。
時間積分回路7は、第2の過電流検出部5の出力を積分する回路であり、構成例として、コンデンサと抵抗等の受動素子を用いたフィルタ回路やオペアンプを用いたフィルタ回路等が挙げられる。
なお、本発明に係る半導体駆動装置が、基本構成要素である半導体が多数個ある場合にも適用できることは勿論のことである。
ここにおいて、図3に、実施例1と従来の短絡保護技術による場合の各動作波形例を示す。
実施例1では、受動素子やオペアンプを用いたフィルタ等によって保持期間を規定した。他に、指令部1からターンオフ指令が出るタイミングで、積分値をリセットする設定としても差し支えない。ただし、この保持期間は、少なくとも次のターンオン指令までに終了する必要がある。
ドレイン電流検出部3は、パワー半導体モジュールの寄生インダクタンスLeに発生する起電圧を積分することでドレイン電流を取得し、コンパレータ回路(4a、5a)で予め定めた規定値より高い過電流状態を判定する。積分回路はCRフィルタ回路で構成される。
第2の過電流状態を判定するコンパレータ5aと第2の過電流時間の積分値を判定する遮断指令部8の間にはダイオードD1が設けられ、第2の過電流状態が解消されても過電流時間積分値が保持される。
図2に示す実施例1と異なる点は、第1の過電流状態の検出によって、所定の期間中は強制的に出力されるゲート電圧低減指令が動作することである。そのための構成として、実施例1の第1のゲート電圧低減指令部6に替えて、第2のゲート電圧低減指令部9を設けている。その他の構成は、図2に示す実施例1と同様である。ゲート電圧低減指令を強制的に所定の期間出力することは、CRフィルタ回路等の種々の手段によって実現可能である。
本実施例の特徴は、過大な過電流状態の検出によるゲート電圧を低減する手段として、ツェナーダイオードDz1によるクランプ動作を用いる点であり、その他の構成は、図2または図5に示す実施例1または実施例2と同様である。図4に示す半導体駆動装置の電源の抵抗分圧によるゲート電圧の低減では、短絡時に帰還容量を介した変位電流がゲートに流入した際に、その電流量に応じた起電力が発生するため、ゲート電圧が上昇する懸念がある。本実施例によれば、ゲート電圧低減時のゲート電圧は、ツェナーダイオードDz1によってクランプされるため、変位電流がゲートに流入した際もゲート電圧の変動を抑制することができる。
図6に示す実施例3と異なる点は、第1の過電流状態のゲート電圧を低減する手段として、半導体駆動装置の電源の抵抗分圧を用い、さらにツェナーダイオードDz2を抵抗Rg2に並列接続する点である。実施例3と同様に、短絡中に帰還容量を介した変位電流がゲートに流入した際のゲート電圧変動を抑制するものであるところ、ゲート電圧低減時に抵抗Rg2が担う電圧よりも、ツェナーダイオードDz2のクランプ電圧がわずかに高くなるように設定することで、変位電流が流入した時のみ、ツェナーダイオードDz2がクランプ動作を行う。このため、駆動するパワー半導体素子Q0の入力容量が大きく、半導体駆動装置のゲート抵抗Rg1が小さく設定されている場合において、実施例3と比較して小容量のツェナーダイオードで対応できるので、部品を小型化することができる。
本実施例では、半導体駆動装置の正側の電源Vpと負側の電源Vmを抵抗R1と抵抗R2によって分圧したゲート電圧低減用の電位と、ゲート電圧低減用の電位を安定化させるためのコンデンサC1によってゲート電圧低減用電源11を設けたことが特徴である。第1の過電流状態を検出した際に、スイッチング素子10によってゲートを半導体駆動装置の正側の電源Vpから切り離すと共に、ゲートとゲート電圧低減用電源11を接続することによってゲート電圧を低減することを特徴とする。その他の構成は、図2または図5に示す実施例1または実施例2と同様である。
半導体駆動装置の構成は、図7に示す実施例4と同様であるが、半導体駆動装置とパワー半導体素子の制御端子とを、200nH以下のインダクタンスLg1を有するゲート配線またはインダクタンスLg1が200nH以下のラミネート・ブスバーで接続することが特徴である。本実施例によれば、駆動するパワー半導体素子の入力容量が大きく、ゲート配線に流れるゲート電流が大きい場合に、ゲート配線のインダクタンス(Lg1)とゲート電流の増減率(dIg/dt)との積によって発生する起電圧(Lg1(dIg/dt))を抑制できるため、ゲート電圧の振動を抑制することができる。また、ゲート電圧を制御する際に、半導体駆動装置とパワー半導体素子の制御端子間の信号遅延を低減できる。
本実施例は、ゲート電圧が半導体駆動装置の正側の電源Vpよりも大きくなった状態をコンパレータ回路等によって検出する過ゲート電圧検出部12を備え、過ゲート電圧状態の検出によってゲート電圧を低減する指令を出力することが特徴である。その他の基本構成は、図2または図5に示す実施例1または実施例2と同様であり、前述した実施例1〜7に対して適用可能である。
本実施例では、ドレイン電流の増加率(dId/dt)を監視し、予め定めた規定値よりドレイン電流増加率が大きい状態を検出する電流増加率検出部13を備え、ドレイン電流の増加率(dId/dt)の過大検出によってゲート電圧低減指令が出力されることが特徴である。その他の構成は、図2または図5に示す実施例1または実施例2と同様であり、前述した実施例1〜7に対して適用可能である。
実施例10に係る電力変換装置は、前記した実施例1から9のいずれかに係る半導体駆動装置を、電力変換装置における半導体スイッチング素子の駆動装置として適用したものである。
また、実施例10では、パワー半導体素子Q11〜Q16としてMOSFETを用いているが、これに限定されるものではなく、IGBTなど他のスイッチング素子を用いて構成してもよい。
Q0、Q11〜Q16 ・・・ パワーMOSFET、G ・・・ ゲート、
D ・・・ ドレイン、S ・・・ ソース、Id ・・・ ドレイン電流、
Rg ・・・ ゲート抵抗、D0、D11〜D16 ・・・ ダイオード、
Vp ・・・ 半導体駆動装置の正側電源電圧、
Vm ・・・ 半導体駆動装置の負側電源電圧、
R1、R2、Rg1、Rg2 ・・・ 抵抗、
Le ・・・ パワー半導体モジュールの寄生インダクタンス、
Dz1、Dz2 ・・・ ツェナーダイオード、C1 ・・・ コンデンサ、
Lg1 ・・・ ラミネート・ブスバー、
dId/dt ・・・ ドレイン電流の増減率、
1 ・・・ 指令部、2 ・・・ ゲート電圧制御回路、
3 ・・・ ドレイン電流検出部、4 ・・・ 第1の過電流検出部、
5 ・・・ 第2の過電流検出部、4a、5a ・・・ コンパレータ、
6 ・・・ 第1のゲート電圧低減指令部、7 ・・・ 時間積分回路、
8 ・・・ 遮断指令部、9 ・・・ 第2のゲート電圧低減指令部、
10 ・・・ スイッチング素子、11 ・・・ ゲート電圧低減用電源、
12 ・・・ 過ゲート電圧検出部、13 ・・・ 電流増加率検出部、
14 ・・・ 電力変換装置、15 ・・・ 直流電源
Claims (10)
- 第1及び第2の主端子並びに当該第1及び第2の主端子に流れる主電流を制御する制御端子を有する半導体素子を駆動する半導体駆動装置であって、
前記制御端子及び前記第2の主端子間に印加する制御電圧を制御する制御電圧制御部と、
前記主電流の第1及び第2の過電流状態を検出する第1及び第2の過電流検出部と、
前記第1の過電流検出部からの前記第1の過電流状態の検出信号により、前記制御電圧制御部に対して前記半導体素子のオン状態を維持可能にする電圧範囲内で前記制御電圧を低減するための低減指令を送出する制御電圧低減指令部と、
前記第2の過電流検出部からの前記第2の過電流状態の検出信号を時間積分し、当該時間積分した出力を前記過電流状態が解消されてから第1の所定期間維持する積分回路部と、
前記積分回路部の前記出力が所定値に達すると、前記制御電圧制御部に対して前記主電流を遮断するための遮断指令を送出する遮断指令部と
を備え、
前記制御電圧低減指令部は、前記低減指令を強制的に第2の所定期間送出する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 第1及び第2の主端子並びに当該第1及び第2の主端子に流れる主電流を制御する制御端子を有する半導体素子を駆動する半導体駆動装置であって、
前記制御端子及び前記第2の主端子間に印加する制御電圧を制御する制御電圧制御部と、
前記主電流の第1及び第2の過電流状態を検出する第1及び第2の過電流検出部と、
前記制御端子の電圧の過電圧状態を検出する過電圧検出部と、
前記第1の過電流検出部からの前記第1の過電流状態の検出信号により、前記制御電圧制御部に対して前記半導体素子のオン状態を維持可能にする電圧範囲内で前記制御電圧を低減するための低減指令を送出する制御電圧低減指令部と、
前記第2の過電流検出部からの前記第2の過電流状態の検出信号を時間積分し、当該時間積分した出力を前記過電流状態が解消されてから第1の所定期間維持する積分回路部と、
前記積分回路部の前記出力が所定値に達すると、前記制御電圧制御部に対して前記主電流を遮断するための遮断指令を送出する遮断指令部と
を備え、
前記過電圧検出部は、前記制御端子の電圧が当該半導体駆動装置の電源電圧を超えた状態を検出した場合に前記低減指令を前記制御電圧制御部に対して送出する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 第1及び第2の主端子並びに当該第1及び第2の主端子に流れる主電流を制御する制御端子を有する半導体素子を駆動する半導体駆動装置であって、
前記制御端子及び前記第2の主端子間に印加する制御電圧を制御する制御電圧制御部と、
前記主電流の第1及び第2の過電流状態を検出する第1及び第2の過電流検出部と、
前記主電流の電流増加率を検出する電流増加率検出部と、
前記第1の過電流検出部からの前記第1の過電流状態の検出信号により、前記制御電圧制御部に対して前記半導体素子のオン状態を維持可能にする電圧範囲内で前記制御電圧を低減するための低減指令を送出する制御電圧低減指令部と、
前記第2の過電流検出部からの前記第2の過電流状態の検出信号を時間積分し、当該時間積分した出力を前記過電流状態が解消されてから第1の所定期間維持する積分回路部と、
前記積分回路部の前記出力が所定値に達すると、前記制御電圧制御部に対して前記主電流を遮断するための遮断指令を送出する遮断指令部と
を備え、
前記電流増加率検出部は、前記電流増加率が所定値を超えた状態を検出した場合に前記低減指令を前記制御電圧制御部に対して送出する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体駆動装置であって、
前記第1の所定期間は、前記半導体素子の次のターンオン指令までに終了する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体駆動装置であって、
前記制御電圧低減指令部は、前記低減指令を強制的に第2の所定期間送出する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体駆動装置であって、
当該半導体駆動装置の電源電圧を抵抗によって分圧して、前記低減指令の送出時の前記制御電圧を生成する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体駆動装置であって、
当該半導体駆動装置の電源電圧をツェナーダイオードによる電圧クランプを用いて分圧して、前記低減指令の送出時の前記制御電圧を生成する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項6に記載の半導体駆動装置であって、
前記抵抗に対してツェナーダイオードを並列に接続する
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 請求項6に記載の半導体駆動装置において、
前記抵抗に対してコンデンサを並列に接続して構成した制御電圧低減用電源を、前記低減指令の送出時に前記制御端子に接続して前記制御電圧とする
ことを特徴とする半導体駆動装置。 - 第1及び第2の主端子並びに当該第1及び第2の主端子に流れる主電流を制御する制御端子を有する半導体素子及び当該半導体素子を駆動する請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体駆動装置を用いた電力変換装置であって、
直流電源に対して前記半導体素子を2個直列接続した上下アームを複数個並列に接続し、前記半導体素子のそれぞれに対して前記半導体駆動装置を接続した電力変換装置。
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