以下、本発明を実施するための形態である研削装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る研削装置のアイドリング方法を実行する研削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る研削装置のチャックテーブルの概略断面図である。図3は、板状ワークの表面側を示す斜視図である。図4は、板状ワークに保護部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。図5は、研削加工が施された板状ワークを示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る研削装置のアイドリング時の側面図である。図7は、本実施形態に係る研削装置の研削運転中の側面図である。本実施形態の研削装置10は、後述するように板状ワークWの裏面Wbにおけるデバイス領域W1に対応する領域を研削してデバイス領域W1の厚さを所定厚さに形成するとともに、板状ワークWの裏面Wbにおける外周余剰領域を残存させてリング状の補強部W4を形成するためのものである。本実施形態の研削装置10は、基台12と、チャックテーブルユニット14と、吸引源34と、圧縮空気供給源36と、定温水供給装置38と、第1昇降部40aと、第2昇降部40bと、第1研削ユニット60aと、第2研削ユニット60bと、カセット90、92と、位置合わせ部94と、搬入部96と、搬出部98と、洗浄部100と、搬出入部102と、上述した各構成要素を制御する制御部110とを備えている。研削装置10は、加工室カバー86も備えている(図6及び図7参照)。
チャックテーブルユニット14は、ターンテーブル16と、チャックテーブル18、20、22とを備える。
ターンテーブル16は、基台12の上面に回転可能に設けられた円盤形状の台である。ターンテーブル16は、図示しない回転駆動機構によって、回転駆動される。
チャックテーブル18、20、22は、図1に示すように、ターンテーブル16上面に120度の位相角でそれぞれ等間隔に配設されている。チャックテーブル18、20、22は、それぞれ同様の構造を有する。以下、チャックテーブル18について説明し、チャックテーブル20、22については説明を省略する。チャックテーブル18は、ターンテーブル16が回転することにより、搬入搬出待機位置Aと、粗研削位置Bと、仕上げ研削位置Cとの間で相対移動される。ここで、搬入搬出待機位置Aとは、図1に示すように、搬入部96及び搬出部98に対して近接する位置である。ここで、粗研削位置Bとは、図1に示すように、第1研削ユニット60aに対して近接する位置である。ここで、仕上げ研削位置Cとは、図1に示すように、第2研削ユニット60bに対して近接する位置である。チャックテーブル18は、支持基台24と、セラミックス体26とを備える。
支持基台24は、図1及び図2に示すように、円柱形状の基台である。支持基台24は、例えば、材料がSUSである。支持基台24は、下面がターンテーブル16の上面に回転可能に固定されている。支持基台24は、図示しない回転駆動機構によって、回転駆動される。支持基台24は、ターンテーブル16が回転した場合に、ターンテーブル16と一体に回転する。支持基台24は、内部に連通路25が形成されている。連通路25は、一端が基台12及びターンテーブル16の内部に形成された図示しない流路に接続される。連通路25は、他端が多数に分枝し、支持基台24の上面に開口している。
セラミックス体26は、支持基台24の上面に載置されている。セラミックス体26は、円環形状の環状セラミックス28と、円盤形状のポーラスセラミックス30と、を備える。環状セラミックス28は、図2に示すように、円環の内側にポーラスセラミックス30を囲繞する。環状セラミックス28は、ポーラスセラミックス30よりも密なセラミックスであり、空気を通さない。
ポーラスセラミックス30は、無数の吸引孔が形成された多孔性部材である。ポーラスセラミックス30は、図2に示すように、支持基台24の上面に載置される。ポーラスセラミックス30の上面は、板状ワークWが載置される保持面32である。吸引源34は、例えば、真空ポンプである。圧縮空気供給源36とは、例えば、コンプレッサー及びブロアである。セラミックス体26は、多孔質のポーラスセラミックス30が支持基台24の上面に配置され、ポーラスセラミックス30の外周を環状セラミックス28で覆っている。また、支持基台24の上面には、多数の連通路25の端部が開口している。これにより、セラミックス体26は、連通路25から空気が吸引されることで、板状ワークWを保持面32上に吸着することができる。
定温水供給装置38は、水供給源39から供給される水を、使用者によって定められた所定の温度に設定する装置である。定温水供給装置38は、例えば、水供給源39から供給される水を貯留するタンクと、タンク内の水を加熱するヒータと、タンクに貯留された水の温度を測定する測定部と、タンク内の水温が予め定められた設定温度に近づくようにヒータを制御するヒータ制御部とを備える。より詳細には、定温水供給装置38は、例えば、測定部が測定した水温と使用者によって予め定められた設定温度との差分に基づいてヒータのオンオフを制御する。
吸引源34、圧縮空気供給源36、及び定温水供給装置38は、図2に示すように、温調水供給路120を介してポーラスセラミックス30に接続されている。ここで、温調水供給路120は、連通路25、基台12及びターンテーブル16の内部に形成された図示しない流路と、連通路25とを含む。基台12及びターンテーブル16の内部に形成された図示しない流路は、吸引源34、圧縮空気供給源36、及び定温水供給装置38と連通路25の一端とを接続する。
第1昇降部40aは、第1垂直基台42aと、ガイドレール44、46と、ブラケット48と、ボルト50と、昇降用モータ52と、を備える。第1垂直基台42aは、基台12の上面に配置された基台である。第1垂直基台42aは、図1に示す第1進退方向R1に進退移動可能に設けられている。ここで、第1進退方向R1とは、粗研削位置Bに配置された保持面32の径方向である。第1垂直基台42aは、図示しない駆動機構によって、第1進退方向R1に駆動される。ガイドレール44、46は、図1に示すように、第1垂直基台42aの側面に設けられている。ガイドレール44、46は、互いに平行なレールである。ガイドレール44、46は、長手方向が鉛直方向を向くように設けられている。ブラケット48は、ガイドレール44、46に沿って鉛直方向に摺動可能に配設されている。ブラケット48は、図示しないナットを介してボルト50に支持されている。ボルト50は、昇降用モータ52と接続されている。昇降用モータ52は、回転軸がボルト50と連結されている。昇降用モータ52は、ボルト50を回転させることで、図示しないナットを介してブラケット48を昇降させる。つまり、第1昇降部40aは、周知のボールスクリュー機構によって構成される。なお、第2昇降部40bは、第1昇降部40aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
第1研削ユニット60aは、第1モータ62aと、第1モータ固定冶具64aと、第1研削砥石66aと、を有する。第1モータ62aは、第1モータ固定冶具64aを介して第1昇降部40aのブラケット48に固定される。第1研削砥石66aは、砥粒の大きさが粗い粗研削用の砥石である。第1研削砥石66aは、円環形状である。第1研削砥石66aは、直径が板状ワークWよりも小さい。第1研削砥石66aは、第1モータ62aの図示しないスピンドルに固定される。第1研削砥石66aは、図示しないスピンドルを介して第1モータ62aと一体に回転する。第1研削砥石66aの下面は、加工時に板状ワークWと接触する研削面68aである。第1研削砥石66aは、保持面32が粗研削位置Bに位置した場合に、研削面68aが保持面32と対向するように配置される。
第2研削ユニット60bは、第2垂直基台42b及び第2研削砥石66b以外は、第1研削ユニット60aと同様の構成を有するため、第2研削砥石66b以外の説明を省略する。
第2垂直基台42bは、基台12の上面に配置された基台である。第2垂直基台42bは、図1に示す第2進退方向R2に進退移動可能に設けられている。ここで、第2進退方向R2とは、仕上げ研削位置Cに配置された保持面32の径方向である。第2垂直基台42bは、図示しない駆動機構によって、第2進退方向R2に駆動される。
第2研削砥石66bは、仕上げ研削用の砥石である。つまり、第2研削砥石66bは、砥粒の大きさが第1研削砥石66aよりも細かい。第2研削砥石66bは、円環形状である。第2研削砥石66bは、直径が板状ワークWよりも小さい。第2研削砥石66bは、第2モータ62bの図示しないスピンドルに固定される。第2研削砥石66bは、図示しないスピンドルを介して第2モータ62bと一体に回転する。第2研削砥石66bは、保持面32が仕上げ研削位置Cに位置した場合に、研削面68aが保持面32と対向するように配置される。
加工室カバー86は、図6及び図7に示すように、粗研削位置B及び仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル18を覆う部材である。加工室カバー86は、加工室カバー86に覆われた加工室88を画成する。加工室カバー86は、第1研削砥石66a及び第2研削砥石66bが通過可能な開口が上面に設けられている。
第1研削水ノズル80aは、基台12の内部に形成された研削水供給路82を介して定温水供給装置38に接続されている。第1研削水ノズル80aは、粗研削位置Bに位置する保持面32に対してノズルが向けられている。第1研削水ノズル80aは、定温水供給装置38から所定の温度に設定した研削水84が供給された場合に、粗研削位置Bに位置する保持面32または板状ワークWに研削水84を供給する。
第2研削水ノズル80bは、基台12の内部に形成された図示しない流路を介して定温水供給装置38に接続されている。第2研削水ノズル80bは、仕上げ研削位置Cに位置する保持面32に対してノズルが向けられている。第2研削水ノズル80bは、定温水供給装置38から所定の温度に設定した研削水84が供給された場合に、仕上げ研削位置Cに位置する保持面32または板状ワークWに研削水84を供給する。
カセット90、92は、複数のスロットを有する板状ワークW用の収容器である。カセット90は、研削加工前の板状ワークWを収容する。カセット92は、研削加工後の板状ワークWを収容する。
位置合わせ部94は、カセット90から取り出された板状ワークWが仮置きされるテーブルである。位置合わせ部94は、板状ワークWの中心位置合わせを行うためのテーブルである。
搬入部96は、水平面内で回転駆動する搬送アームである。搬入部96は、アームの先端部に吸着パッドを有する。搬入部96は、位置合わせ部94で位置合わせされた研削加工前の板状ワークWを吸着パットで保持する。搬入部96は、保持した板状ワークWを搬入搬出待機位置Aに位置するポーラスセラミックス30の保持面32に搬入する。
搬出部98は、水平面内で回転駆動する搬送アームである。搬出部98は、アームの先端部に保持パッドを有する。搬出部98は、搬入搬出待機位置Aに位置するポーラスセラミックス30の保持面32に保持された研削加工後の板状ワークWを保持パッドで保持する。搬出部98は、保持した板状ワークWを洗浄部100に搬出する。
洗浄部100は、研削加工後の板状ワークWを洗浄し、研削された加工面に付着している研削屑等のコンタミネーションを除去する。
搬出入部102は、ハンド104を備えるロボットピックである。搬出入部102は、ハンド104によって板状ワークWを吸着保持して搬送する。具体的には、搬出入部102は、研削加工前の板状ワークWをカセット90から位置合わせ部94へ搬出し、研削加工後の板状ワークWを洗浄部100からカセット92へ搬入する。
制御部110は、研削装置10を構成する上述した構成要素を制御して、板状ワークW対する研削を実行させる。ここで、制御部110は、例えば、CPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する図示しない表示部や、オペレータが加工内容の情報を登録する際に用いる図示しない操作部と接続されている。
本実施形態で研削加工する板状ワークWについて説明する。板状ワークWとは、例えば、半導体ウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、板状金属、樹脂の延性材料である。板状ワークWは、円盤形状である。板状ワークWは、デバイスDが表面Waに複数形成されている。ここで、デバイスDとは、例えば、IC及びLSIである。表面Waは、図3に示すように、複数のデバイスDが形成された円形のデバイス領域W1と、デバイス領域W1を囲む円環形状の余剰領域W2とを有する。板状ワークWの表面Waには、図3及び図4に示すように、研削加工がなされる場合に、デバイスDを保護するテープ等の保護部材Tが予め貼着される。板状ワークWは、保護部材Tと保持面32とが対向する状態でポーラスセラミックス30上に載置される。つまり、保持面32は、保護部材Tを介して板状ワークWの表面Waを吸引保持する。
以下、本実施形態に係る研削装置10の研削加工の動作について説明する。研削装置10は、搬出入部102を制御することで、カセット90から研削前の板状ワークWを位置合わせ部94に搬出する。位置合わせ部94は、板状ワークWの中心位置を所定の基準位置に合わせる。研削装置10は、搬入部96を制御することで、位置合わせ部94から搬入搬出待機位置Aに位置するポーラスセラミックス30の保持面32上に板状ワークWを搬入する。研削装置10は、吸引源34を制御することで、板状ワークWを保持面32に吸着保持させる。ここで、板状ワークWは、被研削面である裏面Wb側が上面を向くように配置されている。
研削装置10は、図示しない駆動源を制御することで、ターンテーブル16を120度時計回りに回転させて、搬入搬出待機位置Aから粗研削位置Bへ板状ワークWを移動する。研削装置10は、図示しない駆動源を制御することで、支持基台24を反時計回りに回転させる。研削装置10は、第1モータ62aを制御することで、第1研削砥石66aを反時計回りに回転させる。研削装置10は、図7に示すように、定温水供給装置38を制御することで、第1研削水ノズル80aから研削水84を板状ワークWに供給する。研削装置10は、第1昇降部40aを制御することで、第1研削砥石66aを下降させて、板状ワークWのデバイス領域W1に第1研削砥石66aを接触させて、板状ワークWの裏面Wbに対して研削加工を行う。研削装置10は、所定量の研削が完了した場合、第1昇降部40aを制御することで、第1研削砥石66aを上昇させる。
研削装置10は、図示しない駆動源を制御することで、ターンテーブル16を120度時計回りに回転させて、粗研削位置Bから仕上げ研削位置Cに板状ワークWを移動させる。研削装置10は、図示しない駆動源を制御することで、支持基台24を時計回りに回転させる。研削装置10は、第2モータ62bを制御することで、第2研削砥石66bを時計回りに回転させる。研削装置10は、図7に示すように、定温水供給装置38を制御することで、第2研削水ノズル80bから研削水84を板状ワークWに供給する。研削装置10は、第2昇降部40bを制御することで、第2研削砥石66bを下降させて、板状ワークWのデバイス領域W1に第2研削砥石66bを接触させて、板状ワークWの裏面Wbに対して研削加工を行う。
研削装置10は、図示しない駆動源を制御することで、ターンテーブル16を120度時計回りに回転させて、仕上げ研削位置Cから搬入搬出待機位置Aへ板状ワークWを移動させる。研削装置10は、吸引源34を制御することで、保持面32に吸着保持されていた板状ワークWの吸引保持を解除する。研削装置10は、圧縮空気供給源36及び定温水供給装置38を制御することで、保持面32に温調水122及び圧縮空気を供給する。これにより、保持面32と板状ワークWとが研削加工によって固着していた場合でも、保持面32と板状ワークWとの間に流体を供給することができ、ポーラスセラミックス30を冷却することができ、保持面32から板状ワークWを取り外し易くすることができる。
このようにして、研削装置10は、板状ワークWを研削加工する。研削加工の結果、板状ワークWは、図5に示すように、裏面Wbに凹形状部W3及び凹形状部W3を囲むリング状の補強部W4が形成される。
次に、図6及び図7を参照して本実施形態における研削装置10のアイドリング方法について説明する。研削装置10は、一定時間以上研削加工を停止した後、再度研削を開始する場合、アイドリングを実施する。本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法では、まず、オペレータが、定温水供給装置38を起動する。次に、オペレータは、定温水供給装置38の設定温度を図示しない操作部に入力する。ここで、設定温度は、研削装置10が板状ワークWを研削加工している時に、チャックテーブル18、20、22が加工熱の影響を受けて達する温度に基づいて適宜調整される温度である。設定温度は、チャックテーブルの保持面32に保持した板状ワークWに供給する研削水84より所定温度高い水温であり、例えば、36℃である。研削加工時におけるチャックテーブル18、20、22の温度は、加工条件によって変化する。ここで、加工条件とは、例えば、チャックテーブル本体の材料、ポーラスセラミックス30の材料、第1研削砥石66aの材料、及び第1研削砥石66aの回転数等である。定温水供給装置38は、タンクに貯留された水が設定温度に近づくようにヒータを制御する。
研削装置10は、図6に示すように、定温水供給装置38のタンクに貯留された水が設定温度に達した場合に、定温水供給装置38を制御することで、温調水供給路120を介して温調水122を保持面32に供給する。なお、本実施形態においては、チャックテーブル18、20、22それぞれに温調水122を供給する。
研削装置10は、温調水122を保持面32に所定時間供給した後に、温調水122の供給を停止する。なお、定温水供給装置38は、温調水122の供給を停止したあとも、タンクに貯留された水が設定温度に近づくように制御を続ける。
本実施形態に係るアイドリング方法は、温調水供給路120を介して、設定温度に調整された温調水122をチャックテーブル18、20、22の保持面32に所定時間供給する。これにより、加工室88の温度を研削の際に生じる加工熱の影響を受けた状態にすることができ、アイドリング後の研削加工開始直後からチャックテーブル18、20、22を研削加工時に達する温度に近い温度にすることができる。これによれば、研削装置10が板状ワークWの研削加工を開始した場合でも、チャックテーブル18、20、22の温度変化を抑制することができ、支持基台24とセラミックス体26との材料が異なる場合でも、チャックテーブル18、20、22が温度変化によって研削加工中に変形することを抑制することができる。その結果、研削加工中にチャックテーブル18、20、22の変形によって板状ワークWの保持位置が変化することを抑制でき、複数枚の板状ワークWの研削加工を行った場合でも、それぞれの板状ワークWの面内厚さばらつきを小さくすることができ、研削加工の歩留まりを上げることができる。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、温調水供給路120を介して設定温度に調整された温調水122をチャックテーブル18、20、22の保持面32に所定時間供給するとしたが、これとともに研削水ノズルを利用した方法を用いても良い。研削装置10のアイドリング方法は、例えば、研削装置10が定温水供給装置38とは別系統の定温水供給装置をさらに備え、別系統の定温水供給装置から設定温度に調整した温調研削水を第1研削水ノズル80a及び第2研削水ノズル80bから保持面32に供給してもよい。つまり、温調研削水及び温調水122を保持面32に同時に供給してもよい。これにより、チャックテーブル18、20、22を内部及び保持面32から同時に温めることができ、短い時間でチャックテーブル18、20、22を設定温度に近づけることができる。ここで、設定温度とは、研削装置10が板状ワークWを研削加工している時に、チャックテーブル18、20、22が加工熱の影響を受けて達する温度に基づいて適宜調整される温度であり、研削水84よりも所定温度高い水温である。また、この場合、研削装置10が研削を開始した後は、温調研削水よりも温度の低い研削水84を保持面32に供給する。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、温調水122を保持面32に所定時間供給した後に温調水122の供給を停止するとしたが、これに限定されない。研削装置10のアイドリング方法は、温調水122の供給を停止するタイミングをチャックテーブル18、20、22毎に制御し、チャックテーブル18、20、22のそれぞれに保持面32に板状ワークWが載置されるまで温調水122の供給を続けてもよい。これにより、チャックテーブル18、20、22のそれぞれの保持面32について、温調水122の供給を停止してから板状ワークWが研削加工されるまでの時間を短くすることができ、温調水122の供給を停止してから板状ワークWが研削加工されるまでにチャックテーブル18、20、22の温度が低下することを抑制することができる。これにより、チャックテーブル18、20、22が温度変化によって研削加工中に変形することをより抑制することができ、研削加工中にチャックテーブル18、20、22の変形によって板状ワークWの保持位置が変化することをより抑制できる。その結果、板状ワークWの面内厚さばらつきをより小さくすることができ、研削加工の歩留まりをより上げることができる。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、オペレータが設定温度を入力するとしたがこれに限定されない。例えば、チャックテーブル18、20、22に温度センサが取り付けられ、定温水供給装置38が研削加工時のチャックテーブル18、20、22の温度に基づいて設定温度を調整する構成としてもよい。これにより、研削加工時にチャックテーブル18、20、22が達する温度を計測することができ、計測した温度に基づいて設定温度を調整することができ、研削加工に伴うチャックテーブル18、20、22の温度変化をより抑制することができ、チャックテーブル18、20、22が温度変化によって研削加工中に変形することをより抑制することができる。その結果、研削加工中にチャックテーブル18、20、22の変形によって板状ワークWの保持位置が変化することをより抑制でき、板状ワークWの研削加工を複数回行った場合でも、それぞれの板状ワークWの面内厚さばらつきをより小さくすることができ、研削加工の歩留まりをより上げることができる。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、研削装置10が温調水122を保持面32に所定時間供給した後に、温調水122の供給を停止するとしたがこれに限定されない。温調水122の供給を停止するタイミングは、例えば、研削加工前の板状ワークWが保持面32に載置される直前でもよい。そうすることで、温調水122の供給が停止してから、研削加工が開始するまでの時間を短くすることができ、チャックテーブル18、20、22の温度が低下することを抑制することができ、研削加工に伴うチャックテーブル18、20、22の温度変化をより抑制することができ、チャックテーブル18、20、22が温度変化によって研削加工中に変形することをより抑制することができる。その結果、研削加工中にチャックテーブル18、20、22の変形によって板状ワークWの保持位置が変化することをより抑制でき、板状ワークWの研削加工を複数回行った場合でも、それぞれの板状ワークWの面内厚さばらつきをより小さくすることができ、研削加工の歩留まりをより上げることができる。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、定温水供給装置38がタンク内に貯留された水の温度を調整するとしたがこれに限定されない。定温水供給装置38は、例えば、タンク内に代えて温調水供給路120にヒータが設けられ、ヒータの2次側に温度センサが設けられ、該温度センサの計測値に応じてヒータを調整することで一定温度の水を保持面32に供給する構成としてもよい。これにより、温調水122を供給する時以外はヒータの電源を切ることができ、定温水供給装置38が消費する電力を削減することができる。
次に、本実施形態に係る研削装置10に本発明のアイドリング方法を実施することで、面内厚さばらつきが抑制できることを実験により確認した。本実験に用いた研削装置は、本実施形態に係る研削装置10と同様の構成を有する。図8は、本実施形態に係る研削装置のアイドリング方法を実施して研削加工を行った場合の板状ワークの形状変化量を測定したグラフである。図9は、所定温度よりも高い温調水を用いて研削加工を行った場合の板状ワークの形状変化量を測定したグラフである。
図8及び図9に示した実験結果は、いずれも一定時間の間温調水122をチャックテーブル18、20、22に供給し、チャックテーブル18、20、22が温調水122の温度まで加熱された後に研削加工を実施した場合の実験結果を示す。
まず、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法を実施した場合と、温調水122の温度調整を実施しない場合の実験結果について説明する。図8に示したグラフは、横軸が板状ワークWの加工枚数を示している。図8に示したグラフは、縦軸が板状ワークWの厚さ方向の形状変化量を示している。ここで、形状変化量とは、1枚目に研削した板状ワークWの厚さを基準とした変化量である。例えば、最も変化が大きくなりやすい板状ワークWの中央の厚さを示す。図8に示したグラフは、縦軸の単位がμmである。図8に示したグラフは、研削装置10がチャックテーブルを3つ有するため、チャックテーブル18、20、22に対する実験結果をそれぞれ示している。図8において、実線で示した測定値は、定温水供給装置38で温調水122をα℃に調整して本発明のアイドリング方法を行った後に研削加工を実施した場合の実験結果を示す。ここで、α℃とは、加工熱の影響を受けた状態のチャックテーブル18、20、22の温度を再現するための温調水122の温度を表す。本実施形態においては、α℃は、36℃である。図8において破線で示した測定値は、研削時に板状ワークWに供給する研削水84の温度と同じ温度の水を供給した場合の実験結果を示す。ここで、本実験においては、研削水84の水温は、α−12℃(24℃)であった。なお、図8において破線で示した測定値は、水温以外は、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法と同様の条件で研削加工を行った値である。
実験の結果、図8に示すように、本実施形態の研削装置10に係るアイドリング方法を実施した場合、水温が24度の場合と比較して、板状ワークWの形状変化を抑制することができた。すなわち、α℃に温度調整された温調水122を一定時間の間温調水供給路120を介してチャックテーブル18、20、22に供給した後に研削加工を実施することで、研削加工を継続して行った場合でも、チャックテーブル18、20、22の温度変化を抑制し、チャックテーブル18、20、22の温度変化に伴う面内厚さばらつきを抑制することが示された。
次に、温調水122の温度がα℃よりも高い場合の実験結果について説明する。図9に示したグラフは、横軸が板状ワークWの加工枚数を示している。図9に示したグラフは、縦軸が板状ワークWの厚さ方向の形状変化量を示している。ここで、形状変化量とは、1枚目に研削した板状ワークWの厚さを基準とした変化量である。図9に示したグラフは、縦軸の単位がμmである。図9に示したグラフは、研削装置10がチャックテーブルを3つ有するため、チャックテーブル18、20、22に対する実験結果をそれぞれ示している。図9に示した測定値は、定温水供給装置38で温調水122をα+10℃に調整してアイドリング運転を行った後に研削加工を実施した場合の実験結果を示す。なお、図9に示した測定値は、温調水122の温度がα+10℃であること以外は、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法と同様の条件で研削加工した場合の値である。
実験の結果、図9に示すように、温調水122の温度をα+10℃に調整した場合、本実施形態の研削装置10に係るアイドリング方法を実施した場合と比較して、板状ワークWの形状変化が大きくなることが確認できた。すなわち、研削水84より高い温度の温調水122を供給するだけでなく、加工条件に応じた適切な温度の温調水122を供給することが板状ワークWの形状変化を抑えることに繋がることが確認できた。
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、3つのチャックテーブル18、20、22がターンテーブルに設けられている構成としたが、チャックテーブルの数は1つでも4つでもよく、特に限定されない。
なお、本実施形態に係る研削装置10のアイドリング方法は、研削装置10が板状ワークWの裏面Wbに凹形状部W3及び凹形状部W3を囲むリング状の補強部W4を形成するとしたが、これに限定されない。研削装置10のアイドリング方法は、例えば、研削装置10が板状ワークWの裏面全面を研削する場合でも適用可能である。