本発明の実施形態において、前記目標走行状態補正部は、前記自動変速機の変速中における入力トルクの変化を制限するように前記目標走行状態を補正することにある。このようにすれば、第1運転制御時には学習の機会を十分に担保できないような自動変速機の変速特性の学習が第2運転制御時に実行され易くなる。
また、前記目標走行状態補正部は、前記自動変速機の変速特性の前記学習が未完了である、前記所定の運転状態での変速が実行されるように前記目標走行状態を補正することにある。このようにすれば、第1運転制御時には学習の機会を十分に担保できないような自動変速機の変速特性の学習が第2運転制御時に実行され易くなる。
また、前記運転制御部は、地図情報及び道路情報のうちの少なくとも1つの情報に基づいて自動的に前記目標走行状態を設定し、前記目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで前記第2運転制御を行うことにある。このようにすれば、第2運転制御として、地図情報及び道路情報のうちの少なくとも1つの情報に基づいて自動的に設定した目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行う自動運転制御を行うことが可能な車両において、自動変速機の変速特性を学習する機会を増やして変速制御の精度を向上させることができる。
また、前記運転制御部は、前記第2運転制御として、前記車両に搭乗者がいない状態で前記加減速を自動的に行う無人走行による第2運転制御と、前記車両に搭乗者がいる状態で前記加減速を自動的に行う有人走行による第2運転制御とを選択的に行うことが可能であり、前記目標走行状態補正部は、前記無人走行による第2運転制御時には、前記有人走行による第2運転制御時と比べて、前記未完了である前記自動変速機の変速特性の前記学習が実行され易い運転状態となるように前記目標走行状態を補正することにある。このようにすれば、加速応答遅れが認識されない無人走行による第2運転制御時には、有人走行による第2運転制御時と比べて自動変速機の変速特性の学習が一層実行され易くなる。
図1は、本発明が適用される車両10の走行に関わる各部の概略構成を説明する図であると共に、その各部を制御する為の制御系統及び制御機能の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。
エンジン12は、駆動トルクを発生することが可能な動力源となり得る、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、電子スロットル装置や燃料噴射装置や点火装置などのエンジン12の出力制御に必要な種々の機器を有するエンジン制御装置50を備えている。エンジン12は、後述する電子制御装置70によって、運転者による車両10に対する駆動要求量に応じてエンジン制御装置50が制御されることで、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、何れも、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、駆動トルクを発生することが可能な動力源となり得る、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されており、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の出力トルク(力行トルク又は回生トルク)であるMG1トルクTg及びMG2トルクTmが制御される。
インバータ52は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々と接続されている。インバータ52は、第1回転機MG1に対して要求されたMG1トルクTg及び第2回転機MG2に対して要求されたMG2トルクTmが得られるように第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の作動に関わる電力の授受を制御する。バッテリ54は、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。具体的には、バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々が発電した電力を蓄電し、その蓄電した電力を第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に供給することが可能な蓄電装置である。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内に、エンジン12に直接或いは図示しないダンパーなどを介して間接的に連結された入力軸20、入力軸20に連結された電気式無段変速機22、電気式無段変速機22の出力回転部材である伝達部材24に連結された自動変速機(AT)26等を備えている。又、動力伝達装置16は、自動変速機26の出力回転部材であるAT出力軸28に連結されたプロペラシャフト30、そのプロペラシャフト30に連結されたディファレンシャルギヤ32、そのディファレンシャルギヤ32に連結された1対のドライブシャフト34等を備えている。入力軸20は、電気式無段変速機22の入力回転部材であり、直列に連結された電気式無段変速機22と自動変速機26とを備えた全体の変速機36の入力回転部材でもある。自動変速機26の入力回転部材であるAT入力軸38は、伝達部材24と一体的に連結されている。AT出力軸28は、変速機36の出力回転部材でもある。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、電気式無段変速機22、自動変速機26、ディファレンシャルギヤ32、及びドライブシャフト34等を順次介して駆動輪14へ伝達される。又、動力伝達装置16において、第2回転機MG2から出力される動力は、自動変速機26、ディファレンシャルギヤ32、及びドライブシャフト34等を順次介して駆動輪14へ伝達される。尚、変速機36はその軸心に対して対称的に構成されている為、図1においてはその下側が省略されている。
電気式無段変速機22は、エンジン12が動力伝達可能に連結された動力分割機構40と、動力分割機構40に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを備えている。動力分割機構40は、エンジン12から入力軸20を介して伝達された動力を第1回転機MG1及び伝達部材24へ分割(分配も同意)する。伝達部材24には、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。
動力分割機構40は、サンギヤS0、ピニオンギヤP0、そのピニオンギヤP0を自転且つ公転可能に支持するキャリアCA0、及びピニオンギヤP0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、差動作用を生じる差動機構として機能する。動力分割機構40では、キャリアCA0には入力軸20を介してエンジン12が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には伝達部材24が連結され且つ第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。動力分割機構40において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。電気式無段変速機22は、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されて第1回転機MG1の作動状態が制御されることにより、動力分割機構40の差動状態が制御されて変速比γ0(=エンジン回転速度Ne/MG2回転速度Nm)が制御される電気式変速機構である。
電気式無段変速機22は、更に、ブレーキB0とクラッチC0とを備えている。ブレーキB0はサンギヤS0とケース18との間に設けられ、クラッチC0はサンギヤS0とキャリヤCA0との間に設けられている。
電気式無段変速機22では、クラッチC0及びブレーキB0が共に解放されると、動力分割機構40は差動作用が作動可能な差動可能状態(差動状態)とされる。この電気式無段変速機22の差動状態では、エンジン12の動力が第1回転機MG1と伝達部材24とに分割されると共に、分割されたエンジン12の動力の一部で第1回転機MG1から発生させられた電力でバッテリ54が蓄電されたり第2回転機MG2が回転駆動される。電気式無段変速機22は、差動状態とされると、変速比γ0が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる無段変速状態とされる。
一方で、電気式無段変速機22では、クラッチC0又はブレーキB0が係合されると、差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、クラッチC0が係合されてサンギヤS0とキャリヤCA0とが一体的に連結されると、動力分割機構40は、サンギヤS0、キャリヤCA0、リングギヤR0が一体回転させられるロック状態とされて差動作用が不能な非差動状態とされるので、電気式無段変速機22も非差動状態とされる。クラッチC0が係合される非差動状態では、エンジン12の回転と伝達部材24の回転速度とが一致する状態となるので、電気式無段変速機22は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態(すなわち有段変速状態)とされる。又、クラッチC0に替えてブレーキB0が係合されてサンギヤS0がケース18に連結されると、動力分割機構40は、サンギヤS0が非回転状態とさせられるロック状態とされて差動作用が不能な非差動状態とされるので、電気式無段変速機22も非差動状態とされる。ブレーキB0が係合される非差動状態では、リングギヤR0はキャリヤCA0よりも増速回転されるので、動力分割機構40は増速機構として機能するものであり、電気式無段変速機22は変速比γ0が「1」より小さい値(例えば0.7程度)に固定された増速変速機として機能する有段変速状態とされる。
自動変速機26は、動力源(エンジン12、第2回転機MG2)と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた自動変速機であって、伝達部材24と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。自動変速機26は、例えば複数組の遊星歯車装置(第1遊星歯車装置42、第2遊星歯車装置44、第3遊星歯車装置46)と複数の係合装置(クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2、ブレーキB3)とを有している。自動変速機26は、第1遊星歯車装置42、第2遊星歯車装置44、及び第3遊星歯車装置46の各回転要素(サンギヤS1,S2,S3、キャリアCA1,CA2,CA3、リングギヤR1,R2,R3)が、直接的に或いは係合装置(クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2,B3)を介して間接的(或いは選択的)に、一部が互いに連結されたり、AT入力軸38、ケース18、或いはAT出力軸28に連結されている。
自動変速機26は、後述する電子制御装置90により駆動要求量や車速V等に応じて複数の係合装置のうちの何れかが選択的に係合されることで、変速比(ギヤ比)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段)が選択的に形成される有段変速機である。自動変速機26の変速の際には、例えば複数の係合装置のうちの自動変速機26の変速に関与する係合装置を掴み替える(すなわち変速に関与する係合装置の係合と解放とを切り替える)、所謂クラッチツゥクラッチ変速が行われる。
クラッチC0、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB0、ブレーキB1、ブレーキB2、及びブレーキB3(以下、特に区別しない場合は係合装置CBと表す)は、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。これら係合装置CBは、油圧制御回路56内の各ソレノイドバルブ等から各々出力される調圧された各油圧(クラッチ圧)によりそれぞれのトルク容量(クラッチトルク)が変化させられることで、それぞれ作動状態(係合や解放などの状態)が切り替えられる。
以上のように構成された変速機36では、クラッチC0及びブレーキB0の何れかを係合させることで定変速状態とされた電気式無段変速機22と、有段の自動変速機26とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、変速機36全体の変速比γT(=エンジン回転速度Ne/AT出力回転速度No)が異なる複数のギヤ段が得られる。又、変速機36では、クラッチC0及びブレーキB0の何れも係合させないことで無段変速状態とされた電気式無段変速機22と、有段の自動変速機26とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。
変速機36が有段変速機として機能する場合には、例えば図2の係合作動表に示すように、係合装置CBの係合解放制御により、前進5段の各ギヤ段(第1速ギヤ段「1st」−第5速ギヤ段「5th」)、又は後進ギヤ段「R」、又はニュートラル状態「N」が成立させられる。一方で、変速機36が無段変速機として機能する場合には、例えば図2の係合作動表に示すように、クラッチC0及びブレーキB0が共に解放される。これにより、電気式無段変速機22が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機26が有段変速機として機能することにより、自動変速機26の各ギヤ段(第1速−第4速)に対して電気式無段変速機22の変速比γ0が無段的に変化させられて、自動変速機26の各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。従って、自動変速機26の各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機36の変速比γTが無段階に得られる。
図3は、電気式無段変速機22と自動変速機26とを備える変速機36における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図3において、電気式無段変速機22を構成する動力分割機構40の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわちAT入力軸38の回転速度)をそれぞれ表す軸である。又、自動変速機26の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する相互に連結されたサンギヤS1及びサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応するキャリヤCA1の回転速度、第6回転要素RE6に対応するリングギヤR3の回転速度、第7回転要素RE7に対応する相互に連結されたリングギヤR1、キャリヤCA2、及びキャリヤCA3の回転速度(すなわちAT出力軸28の回転速度)、第8回転要素RE8に対応する相互に連結されたリングギヤR2及びサンギヤS3の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、動力分割機構40のギヤ比(歯車比)ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8の相互の間隔は、第1,第2,第3遊星歯車装置42,44,46の各ギヤ比ρ1,ρ2,ρ3に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρ(=サンギヤの歯数Zs/リングギヤの歯数Zr)に対応する間隔とされる。又、横線X1は回転速度零を示し、横線X2は回転速度「1.0」すなわちキャリアCA0に連結された入力軸20の回転速度(すなわち入力軸20に連結されたエンジン12の回転速度Ne)を示し、横線XGが伝達部材24の回転速度(すなわちAT入力軸38の回転速度)を示している。
図3の共線図を用いて表現すれば、電気式無段変速機22(動力分割機構40)において、第1回転要素RE1がエンジン12に連結されると共にクラッチC0を介して第2回転要素RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1回転機MG1に連結されると共にブレーキB0を介してケース18に選択的に連結され、第3回転要素RE3が伝達部材24及び第2回転機MG2に連結されて、エンジン12の回転を伝達部材24を介して自動変速機26へ伝達するように構成されている。電気式無段変速機22では、Y2とX2との交点を通る直線L0により、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
電気式無段変速機22においてクラッチC0及びブレーキB0が共に解放されて無段変速状態に切り替えられたときは、動力分割機構40は第1回転要素RE1−第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされる。差動状態とされた動力分割機構40において、キャリアCA0に入力されるエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクである反力トルクが正回転にてサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=−(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、駆動要求量に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両前進方向の駆動トルクとして自動変速機26を介して駆動輪14へ伝達される。このとき、第1回転機MG1は正回転にて負トルクを発生する発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。電気式無段変速機22の無段変速状態において、直線L0と縦線Y3との交点で示されるリングギヤR0の回転速度が自動変速機26にて形成されるギヤ段によって駆動輪14の回転速度に対して固定される場合に、第1回転機MG1を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示されるサンギヤS0の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示されるキャリヤCA0の回転速度(すなわちエンジン回転速度Ne)が上昇或いは下降させられる。従って、電気式無段変速機22の無段変速状態では、エンジン12を効率の良い運転点にて作動させることが可能である。エンジン12の運転点は、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の動作点(以下、エンジン動作点という)である。
一方で、電気式無段変速機22においてクラッチC0の係合によりサンギヤS0とキャリヤCA0とが連結されると、動力分割機構40は第1回転要素RE1−第3回転要素RE3が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Neと同じ回転で伝達部材24が回転させられる。或いは、ブレーキB0の係合によりサンギヤS0の回転が停止させられると動力分割機構40は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示されるリングギヤR0(すなわち伝達部材24の回転速度)は、エンジン回転速度Neよりも増速されて回転させられる。
又、自動変速機26において、第4回転要素RE4はクラッチC2を介して伝達部材24に選択的に連結されると共にブレーキB1を介してケース18に選択的に連結され、第5回転要素RE5はブレーキB2を介してケース18に選択的に連結され、第6回転要素RE6はブレーキB3を介してケース18に選択的に連結され、第7回転要素RE7はAT出力軸28に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材24に選択的に連結されている。自動変速機26では、係合装置の係合解放制御によって自動変速機26の各ギヤ段(第1速−第4速、後進ギヤ段)が形成され、縦線Y7を横切る各直線L1,L2,L3,L4,LRにより、AT出力軸28における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」,「Rev」の各回転速度が示される。
自動変速機26の各ギヤ段(第1速−第4速)に対してクラッチC0が係合されている場合には、エンジン回転速度Neと同じ回転速度で第8回転要素RE8が回転させられ、図3に示すように、各直線L1,L2,L3,L4により、変速機36の第1速ギヤ段「1st」−第4速ギヤ段「4th」(図2参照)に対応する、AT出力軸28における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」の各回転速度が示される。自動変速機26の第4速ギヤ段に対してクラッチC0に替えてブレーキB0が係合されている場合には、エンジン回転速度Neよりも高い回転速度で第8回転要素RE8が回転させられ、図3に示すように、直線L5により、変速機36の第5速ギヤ段「5th」(図2参照)に対応する、AT出力軸28における「5th」の回転速度が示される。
又、エンジン12を停止させると共に第2回転機MG2を動力源として走行するモータ走行では、動力分割機構40において、キャリアCA0は零回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。つまり、モータ走行では、エンジン12は駆動されず、エンジン回転速度Neは零とされ、MG2トルクTm(ここでは正回転の力行トルク)が車両前進方向の駆動トルクとして自動変速機26を介して駆動輪14へ伝達される。
図1に戻り、車両10は、更に、エンジン12、第1回転機MG1、第2回転機MG2、自動変速機26などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、回転機制御用、油圧制御用(変速制御用)等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、レゾルバ等のMG1回転速度センサ64、レゾルバ等のMG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、シフトポジションセンサ72、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、外気温センサ78、バッテリセンサ79、車載カメラなどの進路認識及び障害物検出センサ80、GPSアンテナ81、外部ネットワーク通信用アンテナ82、運転者がクルーズ制御による走行を設定する為のクルーズ制御スイッチ83、運転者が自動運転を選択する為の自動運転選択スイッチ84など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応するAT出力軸28の回転速度であるAT出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力軸38の回転速度であるAT入力回転速度Niすなわち第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量(すなわちアクセルペダルの操作量)であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、「P」,「R」,「N」,「D」等のシフトレバーの操作位置(シフトポジション)POSsh、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、車両10周辺の外気温THair、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、車両周囲情報Iard、GPS信号(軌道信号)Sgps、通信信号Scom、クルーズ制御信号Scrs、自動運転選択信号Sautoなど)が供給される。又、電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、外部ネットワーク通信用アンテナ82、操舵アクチュエータ86、ブレーキアクチュエータ88など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御するインバータ52を作動させる為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBを制御する為の油圧制御指令信号Sp、通信信号Scom、車輪(特には前輪)の操舵を制御する操舵アクチュエータ86を作動させる為の操舵信号Sste、フットブレーキを制御するブレーキアクチュエータ88を作動させる為の制動信号Sbraなど)が、それぞれ出力される。この油圧制御指令信号Spは、例えば係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ供給される各クラッチ圧を調圧する各ソレノイドバルブを駆動する為の指令信号(すなわち設定された各クラッチ圧に対応する指示圧(油圧指示値)に応じた駆動電流)であり、油圧制御回路56へ出力される。
電子制御装置90は、例えばバッテリ充放電電流Ibatなどに基づいてバッテリ54の充電状態(SOC)を表す値であるバッテリSOC値[%]を算出する。又、電子制御装置90は、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリSOC値に基づいて、バッテリ54の入力電力の制限を規定する充電可能電力(入力可能電力)Win、及びバッテリ54の出力電力の制限を規定する放電可能電力(出力可能電力)Woutを算出する。充放電可能電力Win,Woutは、例えばバッテリ温度THbatが常用域より低い低温域ではバッテリ温度THbatが低い程低くされ、又、バッテリ温度THbatが常用域より高い高温域ではバッテリ温度THbatが高い程低くされる。又、充電可能電力Winは、例えばバッテリSOC値が高い領域ではバッテリSOC値が高い程低くされる。又、放電可能電力Woutは、例えばバッテリSOC値が低い領域ではバッテリSOC値が低く程低くされる。
電子制御装置90は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、運転制御手段すなわち運転制御部91、運転状態制御手段すなわち運転状態制御部94、及び学習制御手段すなわち学習制御部96を備えている。
運転制御部91は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、地図情報及び道路情報のうちの少なくとも1つの情報に基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速と操舵とを自動的に行うことで走行する自動運転制御とを選択的に行うことが可能である。前記手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。その手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。自動運転制御は、自動運転にて走行する運転制御である。その自動運転は、運転者の運転操作(意思)に因らず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置90による制御により加減速、制動、操舵などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。
運転制御部91は、自動運転選択スイッチ84において自動運転が選択されていない場合には手動運転制御を実行する。運転制御部91は、アクセル開度θaccなどに基づいてエンジン12や回転機MG1,MG2や変速機36(つまり係合装置CB)を各々制御することで手動運転制御を実行する。
運転制御部91は、運転者によって自動運転選択スイッチ84が操作されて自動運転が選択されている場合には自動運転制御を実行する。運転制御部91は、各種センサからの信号や情報等に基づいて、エンジン12や回転機MG1,MG2や変速機36を各々制御すると共に、操舵アクチュエータ86やブレーキアクチュエータ88を作動させることで、自動運転制御を実行する。
具体的には、運転制御部91は、走行計画を生成する走行計画生成手段すなわち走行計画生成部92と、走行制御手段すなわち走行制御部93とを備えている。走行計画生成部92は、図4に示すように、運転者により入力された目的地や走行モード(時間優先モード/燃費優先モード)や設定車速等の各種設定と、例えば公知のナビゲーションシステム58に記憶された情報及び/又は車外との通信により取得された情報に基づく、車両位置(GPS)、カーブ等の道路状態や勾配や高度や法定速度等の前記地図情報、インフラ情報、目標ルート及び目標進路、及び天候等と、進路認識及び障害物検出センサ80などにより取得された走行路の車線、走行路における標識、走行路における歩行者などの道路情報とに基づいて自動的に目標走行状態を設定する。走行計画生成部92は、安全マージンを考慮して、先行車両に対する目標車間距離や先行車両に対する実際の車間距離(実車間距離ともいう)に基づいて、前記目標走行状態としての目標車速を設定する。この車間距離は、歩行者、障害物、前方に来ると予測される側方車両との距離であっても良い。目標車間距離から実車間距離を減算した値が負値の場合は車間距離に十分な余裕がある為、走行計画生成部92は、その減算した値をゼロで下限ガードする。これにより、目標車速が不必要に増加させられない。又、前記目標走行状態としては、例えば目標駆動力(又は目標加減速度)などが設定されても良い。
走行制御部93は、走行計画生成部92により設定された目標走行状態に基づいて加減速と制動と操舵とを自動的に行うことで自動運転制御を行う。尚、この加減速は車両10の加速と車両10の減速とであり、ここでの減速には制動を含めても良い。走行制御部93は、図4に示すように、目標走行状態(ここでは目標車速)に基づくフィードフォワード制御(F/F制御)によるF/F駆動力、及び目標車速と実車速Vとの車速差分に基づくフィードバック制御(F/B制御)によるF/B駆動力を算出する。次いで、走行制御部93は、F/F駆動力及びF/B駆動力の合計駆動力と、走行抵抗分とに基づいて、動力伝達装置16の要求駆動力又は要求制動力(図4中のパワートレーン駆動力/制動力)を演算する。尚、上記走行抵抗は、例えば予め運転者によって車両10に設定された値、車外との通信により取得された地図情報や車両諸元に基づく値、又は、走行中に勾配や実駆動量や実前後加速度Gx等に基づいて演算された推定値などが用いられる。走行制御部93は、要求駆動力(駆動トルクも同意)又は要求制動力(制動トルクも同意)が得られるように、エンジン12や回転機MG1,MG2や変速機36を各々制御する指令を運転状態制御部94に出力する。走行制御部93は、利用可能な範囲でフットブレーキによる要求制動力を演算し、その要求制動力が得られるように、制動トルクを制御する指令をブレーキアクチュエータ88に出力する。これらの結果、エンジン12(ENG)や回転機MG1,MG2(MG)や変速機36(T/M)が制御されて、所望する駆動トルク又は制動トルクが得られる。ここでの制動トルクは、エンジン12によるエンジンブレーキトルクや第2回転機MG2による回生ブレーキトルクである。又は、ブレーキアクチュエータ88が制御されて、所望するフットブレーキによる制動トルクが得られる。
運転制御部91は、運転者によるアクセル操作及びブレーキ操作に因ることなく、運転者がクルーズ制御スイッチ83によって設定した、目標車速及び/又は先行車両に対する目標車間距離を維持するように制御しつつ、アクセル操作及びブレーキ操作を除く操舵操作などの他の運転操作を運転者が行うことによって走行するクルーズ走行によるクルーズ運転制御を行うことが可能である。クルーズ運転制御は、自動運転制御と同様に、運転者の運転操作に因らず目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速を自動的に行うことで走行する運転制御である。本実施例では、手動運転制御を第1運転制御と称し、自動運転制御とクルーズ運転制御とを第2運転制御と称する。よって、運転制御部91は、運転者の運転操作に基づいて走行する第1運転制御と、運転者の運転操作に因らず目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速を自動的に行うことで走行する第2運転制御とを選択的に行うことが可能である。
運転制御部91は、自動運転制御として、車両10に搭乗者がいない状態で加減速を自動的に行う無人走行による自動運転制御と、車両10に搭乗者がいる状態で加減速を自動的に行う有人走行による自動運転制御とを選択的に行うことが可能である。
運転制御部91は、エンジン12や回転機MG1,MG2や変速機36を各々制御する指令を運転状態制御部94に出力する。運転状態制御部94は、エンジン12の作動状態を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各作動状態を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能、及び係合装置CBの作動状態を制御する油圧制御手段すなわち油圧制御部としての機能を有しており、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2の各出力制御を実行したり、又、変速機36の変速比γTを制御する。以下に、通常走行による手動運転制御の場合を例示して、運転状態制御部94による制御を具体的に説明する。
運転状態制御部94は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動要求量マップ)にアクセル開度θacc及び車速V(AT出力回転速度No等も同意)を適用することで駆動要求量としての駆動輪14における要求駆動力を算出する。前記駆動要求量としては、駆動輪14における要求駆動力[N]の他に、駆動輪14における要求駆動トルク[Nm]、駆動輪14における要求駆動パワー[W]、AT出力軸28における要求AT出力トルク等を用いることもできる。又、駆動要求量として、単にアクセル開度θacc[%]、スロットル弁開度θth[%]等を用いることもできる。尚、クルーズ走行によるクルーズ運転制御、無人走行による自動運転制御、及び有人走行による自動運転制御の各運転制御では、それらの各運転制御を実現する為の要求駆動力が算出される(自動運転制御については図4参照)。
運転状態制御部94は、自動変速機26の変速制御を実行する。具体的には、運転状態制御部94は、例えば図5に示すような車速Vと駆動要求量(例えば要求駆動トルク)とを変数として予め定められたアップシフト線(実線)及びダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速マップ)に、車両10の運転状態を表す車速V及び駆動要求量(例えば要求駆動トルク)を適用することで、自動変速機26にて形成するギヤ段を判断する。そして、運転状態制御部94は、例えば図2に示す係合作動表に従ってその判断したギヤ段を形成するように、クラッチC0及びブレーキB0を除いた自動変速機26の変速に関与する係合装置を係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号Spを油圧制御回路56へ出力して、自動変速機26の変速制御を実行する。
運転状態制御部94は、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。具体的には、運転状態制御部94は、変速機36の無段変速状態においてエンジン12を効率の良い作動域で作動させる一方で、エンジン12と第2回転機MG2との駆動力の配分や第1回転機MG1の発電による反力が最適になるように変化させて電気式無段変速機22の変速比γ0を制御する。例えば、運転状態制御部94は、バッテリ54の充放電可能電力Win,Wout等を考慮して、要求駆動力を実現するように、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2を制御する指令信号(エンジン制御指令信号Se及び回転機制御指令信号Smg)を出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルク(そのときのMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTg)を出力する第1回転機MG1の発電電力の指令値であり、又、そのときのMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力の指令値である。変速機36の無段変速状態において、運転状態制御部94は、例えば第1回転機MG1による発電電力をインバータ52を通してバッテリ54や第2回転機MG2へ供給する。
変速機36の変速比γTは、自動変速機26の変速比γatと、電気式無段変速機22の変速比γ0とによって決定される。従って、運転状態制御部94は、変速機36の変速比γTを制御する。具体的には、運転状態制御部94は、動力性能や燃費向上などの為に自動変速機26のギヤ段を考慮してエンジン12及び各回転機MG1,MG2の制御を実行する。この制御では、エンジン12を効率の良い作動域で作動させる為に定まるエンジン回転速度Neと、車速V及び自動変速機26のギヤ段で定まる伝達部材24の回転速度(すなわちAT入力回転速度Ni=MG2回転速度Nm)とを整合させる為に、電気式無段変速機22が無段変速機として機能させられる。すなわち、運転状態制御部94は、エンジン12の最適燃費線上にて目標エンジン出力を充足するエンジン動作点となる、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとにてエンジン12が作動させられるように、変速機36の変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速機26のギヤ段を考慮して電気式無段変速機22の変速比γ0を制御すると共に、スロットル弁開度θth等を制御してエンジントルクTeを制御する。エンジン12の最適燃費線は、例えばエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め定められたエンジン12の動作ラインの一種である。
又、運転状態制御部94は、電気式無段変速機22の無段変速機としての機能によってMG1回転速度Ng及び/又はMG2回転速度Nmを制御してエンジン回転速度Neを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御することができる。例えば、自動変速機26のギヤ段が形成された車両走行中にはMG2回転速度Nmが車速Vに拘束される(すなわち駆動輪14の回転速度に対して固定される)ので、車両走行中にエンジン回転速度Neを引き上げる場合には、図3の共線図からもわかるように、運転状態制御部94はMG1回転速度Ngの引き上げを実行する。又、自動変速機26の変速中にエンジン回転速度Neを略一定に維持する場合には、運転状態制御部94はエンジン回転速度Neを略一定に維持しつつ自動変速機26の変速に伴うMG2回転速度Nmの変化とは反対方向にMG1回転速度Ngを変化させる。
又、運転状態制御部94は、第2回転機MG2のみを動力源として走行するモータ走行を実行することができる。図5の太実線Aは、車両10の走行用の動力源をエンジン12と第2回転機MG2とで切り替える為の(すなわち、少なくともエンジン12を走行用の動力源として車両10を走行させる所謂エンジン走行と第2回転機MG2のみを走行用の動力源として車両10を走行させる所謂モータ走行とを切り替える為の)、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図5の太実線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速Vと駆動要求量(例えば要求駆動トルク)とを変数とする二次元座標で構成された動力源切替マップの一例である。この動力源切替マップは、例えば同じ図5中の実線及び一点鎖線に示す変速マップと共に予め定められている。
そして、運転状態制御部94は、例えば図5の動力源切替マップに車速V及び駆動要求量(例えば要求駆動トルク)を適用することでモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断して、モータ走行或いはエンジン走行を実行する。モータ走行は、図5から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルク域すなわち低エンジントルク域、或いは車速Vの比較的低車速時すなわち低負荷域で実行される。
運転状態制御部94は、車両10の運転状態に基づいてクラッチC0及びブレーキB0の作動状態を切り替えることにより、変速機36の変速状態を無段変速状態と有段変速状態との何れかに選択的に切り替える。具体的には、運転状態制御部94は、例えば図5の破線及び二点鎖線に示すような予め定められた関係(変速状態切替マップ)に車速V及び駆動要求量(例えば要求駆動トルク)を適用することで、変速機36を無段変速状態とする無段制御領域内であるか、又は変速機36を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定することにより変速機36の切り替えるべき変速状態を判断して、変速機36を無段変速状態と有段変速状態との何れかに選択的に切り替える。
運転状態制御部94は、変速機36を有段変速状態に切り替える有段制御領域内であると判定した場合は、無段変速制御を禁止すると共に、例えば図5に示す変速マップに従って自動変速機26の自動変速を実行し、図2に示す係合作動表に従って有段変速時のギヤ段を形成する。一方で、運転状態制御部94は、無段制御領域内であると判定した場合は、変速機36全体として無段変速状態が得られる為に電気式無段変速機22を無段変速状態として無段変速可能とするようにクラッチC0及びブレーキB0を解放する。加えて、運転状態制御部94は、例えば図5に示す変速マップに従って自動変速機26の自動変速を実行し、図2に示す係合作動表に従って無段変速時のギヤ段を形成する。すなわち、運転状態制御部94は、図2に示す係合作動表においてクラッチC0の係合及びブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速を行う。
図5の破線は運転状態制御部94による有段制御領域と無段制御領域との判定の為の判定車速V1及び判定駆動トルクT1を示している。つまり、図5の破線は車両10の高速走行を判定する為の予め定められた高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、要求駆動トルクが高い高出力走行を判定する為の予め定められた高出力走行判定値である判定駆動トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。更に、図5の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図5の変速状態切替マップは、運転状態制御部94により有段制御領域と無段制御領域との何れであるかを領域判定する基となる予め定められた高車速判定線及び高出力走行判定線を有する、車速Vと要求駆動トルクとを変数とする二次元座標で構成された関係の一例である。
判定車速V1は、例えば高速走行において変速機36が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制する為に、その高速走行において変速機36が有段変速状態とされるように設定されている。又、判定駆動トルクT1は、車両10の高出力走行において第1回転機MG1の反力トルクをエンジン12の高出力域まで対応させないで第1回転機MG1を小型化する為に、例えば第1回転機MG1の最大発電電力を小さくして配設可能とされた第1回転機MG1の特性に応じて設定されている。
図5の関係に示されるように、要求駆動トルクが判定駆動トルクT1以上の高出力領域、或いは車速Vが判定車速V1以上の高車速領域が有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン12の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速Vの比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン12の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン12の常用出力域において実行される。これによって、例えば、車両10の低中速走行及び低中出力走行では、変速機36が無段変速状態とされて車両10の燃費性能が確保されるが、車速Vが判定車速V1を越えるような高速走行では変速機36が有段変速状態とされ、専ら機械的な動力伝達経路でエンジン12の出力が駆動輪14へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電力との間の変換損失が抑制されて燃費が向上する。又、要求駆動トルクが判定駆動トルクT1を越えるような高出力走行では、変速機36が有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン12の出力が駆動輪14へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる領域が車両10の低中速走行及び低中出力走行となって、第1回転機MG1が発生すべき電力の最大値を小さくできて第1回転機MG1或いはそれを含む車両10の動力伝達装置16が一層小型化される。又、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態に切り替えられる。これによって、運転者は、例えば有段自動変速走行におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度Neの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度Neの変化が楽しめる。
又、運転状態制御部94は、電気式無段変速機22を電気的な無段変速機として作動させる為の回転機MG1,MG2等の電気系の制御機器の故障や機能低下時には、無段制御領域であっても車両走行を確保する為に変速機36を優先的に有段変速状態としても良い。
学習制御部96は、自動変速機26の変速特性を所定の運転状態での変速毎に学習により補正する。自動変速機26の変速特性は、例えば変速過渡中におけるAT入力回転速度Niの変化態様(例えばAT入力回転速度Niの変化速度、変速制御開始からAT入力回転速度Niの変化開始時点までの時間、AT入力回転速度Niの吹き上がりなど)、及び/又は自動変速機26の出力トルクであるAT出力トルクToの変化態様(例えばAT出力トルクToの変化速度、AT出力トルクToの落ち込みなど)である。自動変速機26の変速特性を目標の変速特性とする為の、変速過渡中に変化させる油圧制御指令信号Sp(油圧指示値)の所定パターンが、例えば1→2パワーオンアップシフト,3→2パワーオンダウンシフト,3→2コーストダウンシフトなどの変速の種類毎に定められている。目標の変速特性は、例えば変速ショックの抑制と速やかに実行される変速とを両立させる為の予め定められた変速特性である。
自動変速機26の係合装置や油圧制御回路56内の各ソレノイドバルブ等の個体ばらつきや経年変化により、油圧指示値に対して実際のクラッチ圧にばらつきが生じる可能性がある。又は、自動変速機26のユニット毎のばらつきによって、元々上記所定パターン自体が自動変速機26の変速特性を目標とすることができない可能性がある。このようなことから、自動変速機26の変速特性が目標の変速特性となるように学習により補正する。自動変速機26の変速特性を学習により補正するということは、自動変速機26の変速時における係合装置に対する油圧指示値を学習により補正するということである。具体的には、学習制御部96は、自動変速機26の変速特性が目標の変速特性に対してずれている分に応じた油圧指示値に対する補正値を算出し、その補正値によって次回の自動変速機26の変速時に用いる油圧指示値を補正することで、自動変速機26の変速特性を学習により補正する。このような自動変速機26の変速特性の学習は、所定の運転状態での変速毎に実行される。所定の運転状態での変速は、所定の運転状態での走行中に実行される変速である。所定の運転状態は、例えば予め定められた複数種類の異なる、車速V及び駆動要求量で表される車両10の運転状態である。例えば、所定の運転状態は、低車速且つ低駆動要求量となる運転状態、中車速且つ中駆動要求量となる運転状態、高車速且つ低駆動要求量となる運転状態、低車速且つ高駆動要求量となる運転状態、高車速且つ高駆動要求量となる運転状態などの車両10の運転状態である。
自動変速機26の変速特性の学習は、自動変速機26の変速中に自動変速機26の入力トルクであるAT入力トルクTiが安定していないと、誤学習となるおそれがある。その為、学習制御部96は、自動変速機26の変速中にAT入力トルクTiが所定トルクを超えて変化した場合には、そのときの変速における変速特性の学習を実行しない。自動変速機26の変速中のAT入力トルクTiの変化が所定トルク以下であることは、自動変速機26の変速特性の学習を許可する条件の一つである。ここでの自動変速機26の変速中は、特には、変速特性を学習する(油圧指示値を補正する)対象となる期間である。例えば、変速過渡中のイナーシャ相中においてAT入力回転速度Niの変化が目標値となるようにフィードバック制御により油圧指示値を補正するような実施態様を採用する場合には、そのイナーシャ相中の期間は油圧指示値を補正する対象とはならず、イナーシャ相開始前の期間が油圧指示値を補正する対象となる。上記所定トルクは、例えば変速特性の学習が誤学習とならない程度にAT入力トルクTiが安定している(すなわちAT入力トルクTiの変化が小さい)と判断できる為の予め定められたAT入力トルクTiの変化分の上限値である。
ところで、駆動要求量が変化させられることに伴ってAT入力トルクTiが所定トルクを超えて変化させられると、自動変速機26の変速特性の学習が実行されず、学習の実施頻度が低下してしまう。特に、第1運転制御(手動運転制御)では運転者の運転操作のばらつきによってAT入力トルクTiが安定しない可能性があり、上述したような学習の実施頻度が低下してしまうことが生じ易い。又は、例えば高車速且つ低駆動要求量となる運転状態のように発生する頻度が低い運転状態での変速では、学習の実施頻度が低下してしまう。又は、同じ走行路を走行する頻度が高いときには、発生する運転状態が偏ってしまい、それ以外の特定の運転状態での変速では、学習の実施頻度が低下してしまう。学習の実施頻度が少ない運転状態での変速では、変速制御の精度が向上させられ難く、変速ショックの抑制等のドライバビリティが改善されるまでに時間を要してしまう。
ここで、第2運転制御(自動運転制御、クルーズ運転制御)では、運転者の運転操作に基づいて走行する第1運転制御(手動運転制御)と比べて、加速応答遅れ等が問題となり難く、走行計画(目標車速、目標駆動力など)に基づく車速や駆動力制御を運転者ではなく車両制御にて調整できる自由度が高いと考えられる。そこで、本実施例では、車両10の運転制御の違いを考慮することで自動変速機26の変速特性の学習頻度を向上させる。
電子制御装置90は、上述した自動変速機26の変速特性の学習頻度を向上させることを実現する為に、状態判定手段すなわち状態判定部97、及び目標走行状態補正手段すなわち目標走行状態補正部98を更に備えている。
状態判定部97は、学習制御部96による、所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習(つまり自動変速機26の変速時における油圧指示値の学習)が完了していない(すなわち学習が未完了である)か否かを判定する。例えば、状態判定部97は、現時点からの過去の所定期間内において、同じ所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習が、複数種類ある所定の運転状態の何れでも各々所定回数以上実行されている場合に、自動変速機26の変速特性の学習が完了していると判定する。上記所定期間及び上記所定回数は、例えば所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習が完了したと判断できる為の予め定められた閾値である。
状態判定部97は、学習制御部96による、所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習が未完了であると判定した場合には、自動運転制御の実行中であるか否かを判定する。状態判定部97は、自動運転制御の実行中であると判定した場合には、無人走行中であるか否かを判定する。状態判定部97は、自動運転制御の実行中でないと判定した場合には、クルーズ走行中であるか否かを判定する。
状態判定部97は、自動変速機26の変速中であるか否かを判定する。状態判定部97は、自動変速機26の変速中であると判定した場合には、その変速中にAT入力トルクTiがAT入力トルク変化許容量(すなわち、後述する目標走行状態補正部98により設定されたAT入力トルク変化許容量)を超えて変化するか否かを判定する。AT入力トルクTiがAT入力トルク変化許容量を超えて変化するか否かを判定する、自動変速機26の変速中は、特には、変速特性を学習する対象となる期間である。
状態判定部97は、自動変速機26の変速中でないと判定した場合には、現在の運転状態(車速V及び駆動要求量)が、自動変速機26の変速特性の学習が所定回数以上実行されていない(すなわち学習頻度が低い)所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なり(所定の運転状態内のアップシフト線又はダウンシフト線)の近傍にあるか否かを判定する。例えば、状態判定部97は、現在の運転状態における車速Vが所定車速範囲内にあり、且つ現在の運転状態における駆動要求量が所定要求量範囲内にあるか否かに基づいて、現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあるか否かを判定する。上記所定車速範囲は、例えば上記変速点における車速Vを含むその車速V近傍の予め定められた所定範囲である。上記所定要求量範囲は、例えば上記変速点における駆動要求量を含むその駆動要求量近傍の予め定められた所定範囲である。
状態判定部97は、現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあると判定した場合には、駆動要求量が駆動要求量変化許容量(すなわち、後述する目標走行状態補正部98により設定された駆動要求量変化許容量)を超えて変化するか否かを判定する。
目標走行状態補正部98は、状態判定部97により所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習が未完了と判定されたときであって、且つ、状態判定部97により第2運転制御にて走行していると判定されたとき(つまり、自動運転制御の実行中であると判定されたとき、又は、クルーズ走行中であると判定されたとき)には、第1運転制御にて走行しているときと比べて、その未完了である自動変速機26の変速特性の学習が実行され易い運転状態となるように(つまり油圧指示値の学習頻度が増加するように)第2運転制御における目標走行状態を補正する。第2運転制御(自動運転制御、クルーズ運転制御)では、第1運転制御(手動運転制御)と比べて、走行計画や駆動力制御を調整する自由度が高いと考えられるので、又は、AT入力トルクTiの増大を抑制することで加速応答遅れが発生したとしても運転者に加速応答遅れとして認識され難いと考えられるので、自動変速機26の変速特性の学習が実行される運転状態を増加させる。学習頻度を増加させる方法の具体例を以下に説明する。
目標走行状態補正部98は、自動変速機26の変速中におけるAT入力トルクTiの変化を制限するように目標走行状態を補正する。これにより、変速中にAT入力トルクTiが安定し易くなって変速特性の学習頻度が増加させられる。
具体的には、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により自動変速機26の変速中であると判定された場合には、AT入力トルク変化許容量を設定する。このAT入力トルク変化許容量は、例えば自動変速機26の変速特性の学習が未完了であるときの第2運転制御時の変速中(特には、変速特性を学習する対象となる期間)において、AT入力トルクTiの変化として許容される変化分であり、少なくとも、自動変速機26の変速特性の学習を許可する条件の一つに相当する前述した所定トルク以下の値である。そして、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により自動変速機26の変速中にAT入力トルクTiがAT入力トルク変化許容量を超えて変化すると判定された場合には、変速中におけるAT入力トルクTiの変化の最大値がAT入力トルク変化許容量となるように目標走行状態(例えば目標駆動力や目標加減速度)を補正する。目標走行状態を補正することで駆動要求量が補正され、結果的にAT入力トルクTiの変化が制限される。
AT入力トルク変化許容量が所定トルク以下の値であれば変速特性の学習頻度が増加させられるので、無人走行による自動運転制御、有人走行による自動運転制御、及びクルーズ走行によるクルーズ運転制御では、一律のAT入力トルク変化許容量が設定されても良い。又は、各々異なるAT入力トルク変化許容量が設定されても良い。例えば、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中であると判定され、且つ、無人走行中であると判定された場合には、(すなわち無人走行による自動運転制御時には、)AT入力トルク変化許容量として所定値1を設定する。目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中であると判定され、且つ、無人走行中でないと判定された場合には、(すなわち有人走行による自動運転制御時には、)AT入力トルク変化許容量として所定値2を設定する。目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中でないと判定され、且つ、クルーズ走行中であると判定された場合には、(すなわちクルーズ走行によるクルーズ運転制御時には、)AT入力トルク変化許容量として所定値3を設定する。各々異なるAT入力トルク変化許容量を設定することは、例えばAT入力トルク変化許容量を一律に所定トルク以下の値としないような実施態様を採用する場合に有用である。
又は、目標走行状態補正部98は、自動変速機26の変速特性の学習が未完了である、所定の運転状態での変速が実行されるように目標走行状態を補正する。これにより、所定の運転状態での変速が実行され易くなって変速特性の学習頻度が増加させられる。
具体的には、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあると判定された場合には、駆動要求量変化許容量を設定する。この駆動要求量変化許容量は、駆動要求量の変化として許容される変化分であり、学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速が実行され易くなる為の予め定められた駆動要求量の変化の上限値である。そして、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により駆動要求量が駆動要求量変化許容量を超えて変化すると判定された場合には、駆動要求量の変化の最大値が駆動要求量変化許容量となるように目標走行状態(例えば目標駆動力や目標加減速度)を補正する。目標走行状態を補正することで駆動要求量が補正され、結果的に駆動要求量の変化が制限される。これにより、発生する頻度が低い運転状態(すなわち学習頻度が低い所定の運転状態)である、例えば高車速且つ低駆動要求量(又は極低駆動要求量)となる運転状態での変速を意図的に実施することができる。
駆動要求量変化許容量によって駆動要求量の変化が制限されれば変速特性の学習頻度が増加させられるので、無人走行による自動運転制御、有人走行による自動運転制御、及びクルーズ走行によるクルーズ運転制御では、一律の駆動要求量変化許容量が設定されても良い。又は、各々異なる駆動要求量変化許容量が設定されても良い。例えば、目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中であると判定され、且つ、無人走行中であると判定された場合には、駆動要求量変化許容量として所定値Aを設定する。目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中であると判定され、且つ、無人走行中でないと判定された場合には、駆動要求量変化許容量として所定値Bを設定する。目標走行状態補正部98は、状態判定部97により、自動運転制御の実行中でないと判定され、且つ、クルーズ走行中であると判定された場合には、駆動要求量変化許容量として所定値Cを設定する。
無人走行による自動運転制御は有人走行による自動運転制御と比べて、又、自動運転制御はクルーズ運転制御と比べて、走行計画や駆動力制御を調整する自由度が高いと考えられ、又は、加速応答遅れが問題とならない(或いは問題となり難い)と考えられる。従って、車両10の運転制御毎のAT入力トルク変化許容量の相対関係は、所定値1<所定値2<所定値3となる。又、車両10の運転制御毎の駆動要求量変化許容量の相対関係は、所定値A<所定値B<所定値Cとなる。このように、目標走行状態補正部98は、走行計画や駆動力制御を調整する自由度が高い程(つまり余地が大きい程)、自動変速機26の変速特性の学習が実行され易い運転状態となるように、目標走行状態を補正する。これにより、走行計画や駆動力制御を調整する自由度が高い程、変速特性の学習が一層実行され易くなる。
図6は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち第1運転制御と第2運転制御とを選択的に行うことが可能な車両10において自動変速機26の変速特性を学習する機会を増やして変速制御の精度を速やかに向上させる為の制御作動を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。図7は、図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例であって、自動運転制御時のアップシフト時に実行される実施態様を示す図である。図8は、図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の運転状態の一例を示す図であって、意図的に学習頻度が低い運転状態で走行する実施態様を示す図である。
図6において、先ず、状態判定部97の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、自動変速機26の変速時における油圧指示値の学習が未完了であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部97の機能に対応するS20において、自動運転制御の実行中であるか否かが判定される。このS20の判断が肯定される場合は状態判定部97の機能に対応するS30において、無人走行中であるか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は状態判定部97の機能に対応するS40において、自動変速機26の変速中であるか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS50において、AT入力トルク変化許容量として所定値1が設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS60において、変速中にAT入力トルクTiが所定値1を超えて変化するか否かが判定される。このS60の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS60の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS70において、変速中におけるAT入力トルクTiの変化の最大値が所定値1となるように目標走行状態が補正されて、AT入力トルクTiの変化が制限される。これにより、自動変速機26の変速特性を学習する機会が増やされる。上記S40の判断が否定される場合は状態判定部97の機能に対応するS80において、現在の運転状態における車速Vが所定車速範囲内にあり、且つ現在の運転状態における駆動要求量が所定要求量範囲内にあるか否かに基づいて、現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあるか否かが判定される。このS80の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS80の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS90において、駆動要求量変化許容量として所定値Aが設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS100において、駆動要求量が所定値Aを超えて変化するか否かが判定される。このS100の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS100の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS110において、駆動要求量の変化の最大値が所定値Aとなるように目標走行状態が補正されて、駆動要求量の変化が制限される。これにより学習頻度が低い変速が実行され易くなる。尚、高車速且つ低駆動要求量(又は極低駆動要求量)となる運転状態での変速を意図的に実施する場合には、駆動要求量が増大する方向の変化が制限されれば良いので、このS110では、駆動要求量が駆動要求量上限値(現在の駆動要求量+所定値A)にて制限されるように目標走行状態が補正される。
一方で、前記S30の判断が否定される場合は状態判定部97の機能に対応するS120において、自動変速機26の変速中であるか否かが判定される。このS120の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS130において、AT入力トルク変化許容量として所定値2が設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS140において、変速中にAT入力トルクTiが所定値2を超えて変化するか否かが判定される。このS140の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS140の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS150において、変速中におけるAT入力トルクTiの変化の最大値が所定値2となるように目標走行状態が補正されて、AT入力トルクTiの変化が制限される。これにより、自動変速機26の変速特性を学習する機会が増やされる。上記S120の判断が否定される場合は状態判定部97の機能に対応するS160において、現在の運転状態における車速Vが所定車速範囲内にあり、且つ現在の運転状態における駆動要求量が所定要求量範囲内にあるか否かに基づいて、現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあるか否かが判定される。このS160の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS160の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS170において、駆動要求量変化許容量として所定値Bが設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS180において、駆動要求量が所定値Bを超えて変化するか否かが判定される。このS180の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS180の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS190において、駆動要求量の変化の最大値が所定値Bとなるように目標走行状態が補正されて、駆動要求量の変化が制限される。これにより学習頻度が低い変速が実行され易くなる。尚、高車速且つ低駆動要求量(又は極低駆動要求量)となる運転状態での変速を意図的に実施する場合には、このS190では、駆動要求量が駆動要求量上限値(現在の駆動要求量+所定値B)にて制限されるように目標走行状態が補正される。
他方で、前記S20の判断が否定される場合は状態判定部97の機能に対応するS200において、クルーズ走行中であるか否かが判定される。このS200の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS200の判断が肯定される場合は状態判定部97の機能に対応するS210において、自動変速機26の変速中であるか否かが判定される。このS210の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS220において、AT入力トルク変化許容量として所定値3が設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS230において、変速中にAT入力トルクTiが所定値3を超えて変化するか否かが判定される。このS230の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS230の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS240において、変速中におけるAT入力トルクTiの変化の最大値が所定値3となるように目標走行状態が補正されて、AT入力トルクTiの変化が制限される。これにより、自動変速機26の変速特性を学習する機会が増やされる。上記S210の判断が否定される場合は状態判定部97の機能に対応するS250において、現在の運転状態における車速Vが所定車速範囲内にあり、且つ現在の運転状態における駆動要求量が所定要求量範囲内にあるか否かに基づいて、現在の運転状態が自動変速機26の変速特性の学習頻度が低い所定の運転状態における自動変速機26の変速点の連なりの近傍にあるか否かが判定される。このS250の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS250の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS260において、駆動要求量変化許容量として所定値Cが設定される。次いで、状態判定部97の機能に対応するS270において、駆動要求量が所定値Cを超えて変化するか否かが判定される。このS270の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS270の判断が肯定される場合は目標走行状態補正部98の機能に対応するS280において、駆動要求量の変化の最大値が所定値Cとなるように目標走行状態が補正されて、駆動要求量の変化が制限される。これにより学習頻度が低い変速が実行され易くなる。尚、高車速且つ低駆動要求量(又は極低駆動要求量)となる運転状態での変速を意図的に実施する場合には、このS280では、駆動要求量が駆動要求量上限値(現在の駆動要求量+所定値C)にて制限されるように目標走行状態が補正される。
図7において、t1時点は、アップシフトの変速制御が開始された時点を示している。破線に示す通常走行による手動運転制御時では、本来の要求駆動力の変化に合わせてAT入力トルクTiが変化させられている。これに対して、実線に示す自動運転制御時では、確実に油圧指示値の学習が実行されるように、その学習を実施する領域(ここではイナーシャ相開始時点(t2時点参照)前)において、本来の要求駆動力の変化に対して要求駆動力の変化が抑制されて、学習の実行が許可可能となるような小さなAT入力トルクTiの変化とされている。尚、アップシフトのイナーシャ相中では、要求駆動力が得られるように自動変速機26の変速比γatの変化に合わせてAT入力トルクTiが変化させられている。又、自動運転制御時では、アップシフト終了時点(t3時点参照)後に、本来の要求駆動力が得られるようにAT入力トルクTiが変化させられている。
図8において、走行計画や駆動力制御を調整する自由度が高かったり、又は、加速応答遅れが認識されない(つまりドライバビリティの悪化が問題とならない)、無人走行による自動運転制御には、意図的に油圧指示値の学習頻度が低い車両状態(アップシフトでは極低駆動要求量且つ高車速領域;図中の破線Aで囲った領域参照)で走行する。これにより、学習頻度が低い車両状態での変速(矢印B,C参照)が実行され易くなる。
上述のように、本実施例によれば、所定の運転状態での変速における自動変速機26の変速特性の学習が未完了のときであって且つ第2運転制御(自動運転制御、クルーズ運転制御)にて走行しているときには、第1運転制御(手動運転制御)にて走行しているときと比べて、その未完了である自動変速機26の変速特性の学習が実行され易い運転状態となるように目標走行状態が補正されるので、第1運転制御時には学習の機会を十分に担保できないような自動変速機26の変速特性の学習が、第1運転制御時と比べて加速応答性等のドライバビリティの悪化が問題となり難い第2運転制御時に実行され易くなる。よって、第1運転制御と第2運転制御とを選択的に行うことが可能な車両10において、自動変速機26の変速特性を学習する機会を増やして変速制御の精度を速やかに向上させることができる。変速制御の精度が速やかに向上させられると、例えば変速ショックを早期に低減収束させることができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。