JP2008296611A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】差動作用が可能な差動機構と電動機とを備える車両用動力伝達装置において、その動力伝達装置の温度が低いときに速やかに暖機させることができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】変速機構10の温度に応じて切換クラッチC0または切換ブレーキB0から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段102を備えるため、例えば、その変速機構10の温度が低い場合は発熱量増大手段102によって発熱量を多くすることで変速機構10の温度を高くすることができる。このようにして変速機構10を好適な温度に維持することで、変速機構10の低温時に発生する引き摺り抵抗の増加を抑制することができるため、車両の燃費を向上させることができる。
【選択図】図6
【解決手段】変速機構10の温度に応じて切換クラッチC0または切換ブレーキB0から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段102を備えるため、例えば、その変速機構10の温度が低い場合は発熱量増大手段102によって発熱量を多くすることで変速機構10の温度を高くすることができる。このようにして変速機構10を好適な温度に維持することで、変速機構10の低温時に発生する引き摺り抵抗の増加を抑制することができるため、車両の燃費を向上させることができる。
【選択図】図6
Description
本発明は、差動作用が可能な差動機構と電動機とを備える車両用動力伝達装置に関し、特に、その車両用動力伝達装置を速やかに暖機させる技術に関するものである。
差動機構の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、駆動源が接続される入力軸回転速度と出力軸回転数の差動状態が制御される電気式差動部を備えた車両用動力伝達装置が知られている。例えば特許文献1に記載されたハイブリッド形式の車両用動力伝達装置がそれである。このようなハイブリッド形式の車両用動力伝達装置では、差動機構が例えば遊星歯車装置で構成され、その差動機構の差動作用により、駆動源からの動力の一部を駆動輪へ機械的に伝達し、その駆動源からの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより変速比が連続的に変更される変速機として機能させられ、例えば電気的な無段変速機として機能させられて、駆動源を最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させるように制御装置により制御されて燃費が向上させられる。
ところで、上記特許文献1をはじめとしたハイブリッド形式の動力伝達装置において、その動力伝達装置の温度が低いと、その内部の作動油の温度も同様に低下するため、作動油の粘度が増加する。この作動油の粘度の増加によって、動力伝達装置の回転要素に働く引き摺り抵抗が増加して、動力伝達装置の動力伝達効率が低下するために、燃費効率が低下する可能性があった。このように、動力伝達装置の温度が低くなると燃費効率が低下するため、速やかに動力伝達装置を暖機させる必要がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、差動作用が可能な差動機構と電動機とを備える車両用動力伝達装置において、その動力伝達装置の温度が低いときに速やかに暖機させることができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)差動機構の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、駆動源が接続される入力軸回転速度と出力軸回転速度の差動状態が制御される電気式差動部と、その電気式差動部の差動を制限する係合要素からなる差動制限部とを、有する車両用動力伝達装置の制御装置において、(b)前記車両用動力伝達装置の温度に応じて前記差動制限部から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段を備えることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記発熱量増大手段は、前記車両用動力伝達装置の温度に応じたトルク分担率で前記差動制限部と前記第1電動機とが受け持つトルクを制御するトルク分担率制御手段を備えることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記トルク分担率制御手段は、前記温度が低い場合、その温度が高い場合と比較して前記差動制限部のトルク分担率を高くすることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記第1電動機の温度が所定値以上となると、前記差動制限部のトルク分担率を高くすることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項3または4の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記トルク分担率制御手段は、前記差動制限部のトルク分担率を高くする際には、前記第1電動機の反力トルクを小さくすると共に、前記差動制限部の係合トルクを大きくすることを特徴とする。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至5のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置において、前記係合要素は、摩擦板相互の摩擦によってトルクを伝達する摩擦係合要素であり、前記発熱量増大手段は、その摩擦係合要素をスリップさせて摩擦熱を増大させることにより前記差動制限部からの発熱量を多くするものであることを特徴とする。
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至6のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置において、前記電気式差動部と前記駆動輪との間の動力伝達経路には、第2電動機および機械式変速部が設けられていることを特徴とする。
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記差動制限部または前記第1電動機の制御により無段変速機構として作用することを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記車両用動力伝達装置の温度に応じて前記差動制限部から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段を備えるため、例えば、その車両用動力伝達装置の温度が低い場合は発熱量増大手段によって発熱量を増加させることで車両用動力伝達装置の温度を高くすることができる。このように、車両用動力伝達装置を好適な温度に維持することで、車両用動力伝達装置の低温時に発生する引き摺り抵抗の増加を抑制することができるため、車両の燃費を向上させることができる。
また、請求項2にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記車両用動力伝達装置の温度に応じたトルク分担率で前記差動制限部と前記第1電動機とが受け持つトルク量を制御することで、差動制限部で発生する発熱量を制御して、車両用動力伝達装置を好適な温度に維持することができる。これにより、車両用動力伝達装置内で発生する引き摺り抵抗を抑制して車両の燃費を向上させることができる。
また、請求項3にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記トルク分担率制御手段は、温度が低い場合、その温度が高い場合と比較して前記差動制限部のトルク分担率を高くするため、差動制限部が受け持つトルクが大きくなる。これにより、差動制限部のスリップ制御時の発熱量が多くなり、車両用動力伝達装置の温度を速やかに上昇させることができる。
また、請求項4にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、第1電動機の温度が所定値よりも高くとなると、前記差動制限部のトルク分担率を高くするため、第1電動機が受け持つ反力トルクが小さくなって、第1電動機で発生する発熱量が抑制されて第1電動機の温度上昇が抑制される。
また、請求項5にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、前記差動制限部のトルク分担率を高くする際には、前記第1電動機の反力トルクを小さくすると共に、前記差動制限部の係合トルク(反力トルク)を大きくするため、差動制限部側のトルク分担率が高くなる。
また、請求項6にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、発熱量増大手段は、摩擦係合要素をスリップさせて摩擦熱を増大させることで差動制限部からの発熱量を多くするため、比較的大きな発熱量が得られ、車両用動力伝達装置を速やかに暖機させることができる。
また、請求項7にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、電気式差動部と機械式変速部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。また、第2電動機を駆動させて駆動源の動力を補助するなどして、駆動トルクを無段階的に変更することもできる。
また、請求項8にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、電気式差動部で無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。なお、電気式差動部は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に、変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることもできる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)を介して直接に連結された差動部11と、その差動部11と駆動輪38(図6参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の変速機として機能する変速部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪38との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)36(図6参照)および一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪38へ伝達する。なお、エンジン8が本発明の駆動源に対応しており、変速機構10が本発明の車両用動力伝達装置に対応しており、伝達部材18が本発明の出力軸に対応している。
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16とを、備えている。また、伝達部材18と一体的に回転するように第2電動機M2が連結されている。なお、この第2電動機M2は伝達部材18から駆動輪38までの間の動力伝達経路を構成するいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。なお、差動部11が本発明の電気式差動部に対応している。
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、係合装置からなる切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。このように、第1電動機M1の運転状態が制御されることによりエンジン8に連結された入力軸14の回転速度と出力軸として機能する伝達部材18の回転速度の差動状態が制御される。なお、動力分配機構16が本発明の差動機構に対応している。
この状態で、上記切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が係合させられると動力分配機構16は前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態(ロック状態)とされる。すなわち、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動作用を制限する差動制限装置として機能する。具体的には、上記切換クラッチC0が係合させられて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合させられると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1が共に回転すなわち一体回転させられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて第1サンギヤS1がケース12に連結させられると、動力分配機構16は第1サンギヤS1が非回転状態とさせられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は増速機構として機能するものであり、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)の変速状態を差動状態と差動制限状態とに選択的に切り換える、すなわち差動部11(動力分配機構16)を電気的な差動装置として作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な無段変速機として作動する電気的な無段変速作動可能な無段変速状態と、電気的な無段変速作動しない変速状態例えば無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化を一定にロックする差動制限状態とに切り換える。なお、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が、本発明の差動制限部に対応している。
自動変速部20は、差動部11から駆動輪38への動力伝達経路の一部を構成し、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備えている。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。なお、自動変速部20が本発明の機械式変速部に対応している。
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。このように、自動変速部20と伝達部材18とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間すなわち差動部11(伝達部材18)と駆動輪38との間の動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3は従来の車両用有段式自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された変速機構10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、変速機構10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構10は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。また、差動部11も有段変速状態と無段変速状態とに切り換え可能な変速機であると言える。
例えば、変速機構10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、全ての摩擦係合装置が解放される。
しかし、変速機構10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体としてのトータル変速比(総合変速比)γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部として機能する差動部11と有段変速部として機能する自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結されるとともに切換クラッチC0を介して第2回転要素(第1サンギヤS1)RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関
係が示される。
係が示される。
例えば、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態(差動状態)に切換えられたときは、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、車速Vに拘束される第1リングギヤR1の回転速度が略一定である場合には、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられる。また、切換クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、動力分配機構16は上記3回転要素が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると動力分配機構16は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第8回転要素RE8に差動部11すなわち動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置40には、図4に示す各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを示す信号、シフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を示す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温を示すAT油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量Accを示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、各車輪の車輪速を示す車輪速信号、変速機構10を有段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を有段変速状態(ロック状態)に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を示す信号、変速機構10を無段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を無段変速状態(差動状態)に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を示す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、エンジン8の空燃比A/Fを示す信号、第1電動機M1の温度を示す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置40からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置43(図6参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管95に備えられた電子スロットル弁96の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ97への駆動信号や燃料噴射装置98によるエンジン8の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置99によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42(図6参照)に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路42の油圧源である機械式オイルポンプおよび電動オイルポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置48の一例を示す図である。このシフト操作装置48は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー49を備えている。
そのシフトレバー49は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
上記シフトレバー49の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路42が電気的に切り換えられる。
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非駆動ポジション(停止ポジション)であって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される駆動ポジション(走行ポジション)であって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
具体的には、シフトレバー49が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー49が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー49が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー49が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
図6は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、有段変速制御手段54は、自動変速部20の変速を行う変速制御手段として機能するものである。例えば、有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された図7の実線および一点鎖線に示す関係(変速線図、変速マップ)から車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断し、すなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の変速を実行する。このとき、有段変速制御手段54は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を除いた油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令)を油圧制御回路42へ出力する。
ハイブリッド制御手段52は、変速機構10の前記無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセルペダル操作量Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
ハイブリッド制御手段52は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は例えばエンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとをパラメータとする二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に定められたエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)を予め記憶しており、その最適燃費率曲線に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
ハイブリッド制御手段52は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置98による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置99による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置43に出力して必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段52は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータ97を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。
前記図7の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機M2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図7に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図7中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に記憶手段56に予め記憶されている。
そして、ハイブリッド制御手段52は、例えば図7の駆動力源切換線図から車速Vと要求出力トルクTOUTとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。このように、ハイブリッド制御手段52によるモータ走行は、図7から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT時すなわち低エンジントルクTE時、或いは車速Vの比較的低車速時すなわち低負荷域で実行される。
ハイブリッド制御手段52は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用によりエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置60からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行には、エンジン走行+モータ走行も含むものとする。
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の運転状態を維持させられる。例えば、車両停止時に蓄電装置60の充電容量SOCが低下して第1電動機M1による発電が必要となった場合には、エンジン8の動力により第1電動機M1が発電させられてその第1電動機M1の回転速度が引き上げられ、車速Vで一意的に決められる第2電動機回転速度NM2が車両停止状態により零(略零)となっても動力分配機構16の差動作用によってエンジン回転速度NEが自律回転可能な回転速度以上に維持される。
増速側ギヤ段判定手段62は、変速機構10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて記憶手段56に予め記憶された前記図7に示す変速線図に従って変速機構10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。
差動状態切換制御手段50は、車両状態に基づいて前記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合/解放を切り換えることにより、前記無段変速状態と前記有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と差動制限状態とを選択的に切り換える。例えば、差動状態切換制御手段50は、記憶手段56に予め記憶された前記図7の破線および二点鎖線に示す関係(切換線図、切換マップ)から車速Vおよび要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、変速機構10(差動部11)の変速状態を切り換えるべきか否かを判断して、すなわち変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域(差動領域)内であるか或いは変速機構10を有段変速状態とする有段制御領域(ロック領域)内であるかを判定することにより変速機構10の切り換えるべき変速状態を判断して、変速機構10を前記無段変速状態(差動状態)と前記有段変速状態(差動制限状態)とのいずれかに選択的に切り換える変速状態の切換を実行する。
具体的には、差動状態切換制御手段50は有段変速制御領域内であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速を許可する。このときの有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された例えば図7に示す変速線図に従って自動変速部20の自動変速を実行する。例えば記憶手段56に予め記憶された図2は、このときの変速において選択される油圧式摩擦係合装置(係合装置)すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。すなわち、変速機構10全体すなわち差動部11および自動変速部20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段が判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために差動状態切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために差動状態切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、差動状態切換制御手段50によって変速機構10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、差動部11が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、変速機構10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
しかし、差動状態切換制御手段50は、変速機構10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域内であると判定した場合は、変速機構10全体として無段変速状態が得られるために差動部11を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは記憶手段56に予め記憶された例えば図7に示す変速線図に従って自動変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、差動状態切換制御手段50により無段変速状態に切り換えられた差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ここで前記図7について詳述すると、図7は自動変速部20の変速判断の基となる記憶手段56に予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)であり、車速Vと駆動力関連値である要求出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図の一例である。図7の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。
また、図7の破線は差動状態切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための判定車速V1および判定出力トルクT1を示している。つまり、図7の破線はハイブリッド車両の高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、ハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが高出力となる高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。さらに、図7の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図7は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして差動状態切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。なお、この切換線図を含めて変速マップとして記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。
上記変速線図、切換線図、或いは駆動力源切換線図等は、マップとしてではなく実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。この場合には、差動状態切換制御手段50は、車両状態例えば実際の車速が判定車速V1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。また、差動状態切換制御手段50は、車両状態例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。
また、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時、例えば第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわち第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や、故障とか低温による機能低下が発生したような車両状態となる場合には、無段制御領域であっても車両走行を確保するために差動状態切換制御手段50は変速機構10を優先的に有段変速状態としてもよい。
前記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速部20の出力トルクTOUT、エンジントルクTE、車両加速度や、例えばアクセル開度或いはスロットル弁開度θTH(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度NEとに基づいて算出されるエンジントルクTEなどの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量或いはスロットル開度等に基づいて算出される要求(目標)エンジントルクTE、自動変速部20の要求(目標)出力トルクTOUT、要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
また、例えば判定車速V1は、高速走行において変速機構10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において変速機構10が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機M1の反力トルクをエンジンの高出力域まで対応させないで第1電動機M1を小型化するために、例えば第1電動機M1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機M1の特性に応じて設定されている。
図8は、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとをパラメータとして差動状態切換制御手段50により有段制御領域(ロック領域)と無段制御領域(差動領域)とのいずれであるかを領域判定するための境界線としてのエンジン出力線を有し、記憶手段56に予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。差動状態切換制御手段50は、図7の切換線図に替えてこの図8の切換線図からエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとに基づいて、それらのエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで表される車両状態が無段制御領域(差動領域)内であるか或いは有段制御領域(ロック領域)内であるかを判定してもよい。また、この図8は図7の破線を作るための概念図でもある。言い換えれば、図7の破線は図8の関係図(マップ)に基づいて車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標上に置き直された切換線でもある。
図7の関係に示されるように、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が、有段制御領域として設定されているので有段変速走行がエンジン8の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速の比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
同様に、図8の関係に示されるように、エンジントルクTEが予め設定された所定値TE1以上の高トルク領域、エンジン回転速度NEが予め設定された所定値NE1以上の高回転領域、或いはそれらエンジントルクTEおよびエンジン回転速度NEから算出されるエンジン出力が所定以上の高出力領域が、有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高トルク、比較的高回転速度、或いは比較的高出力時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルク、比較的低回転速度、或いは比較的低出力時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。図8における有段制御領域と無段制御領域との間の境界線は、高車速判定値の連なりである高車速判定線および高出力走行判定値の連なりである高出力走行判定線に対応している。
これによって、例えば、車両の低中速走行および低中出力走行では、変速機構10が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、実際の車速Vが前記判定車速V1を越えるような高速走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。また、出力トルクTOUTなどの前記駆動力関連値が判定トルクT1を越えるような高出力走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギ換言すれば第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて第1電動機M1或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。また、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。
ここで、変速機構10の温度が低いと、変速機構10内の作動油の温度も同様に低いため、作動油の粘度が高くなる。この粘度の増加に伴い、変速機構10内の回転要素の引き摺り抵抗が増加して、変速機構10の動力伝達効率が低下するために燃費が低下する可能性があった。とくに、本実施例のような構成においては、トルクコンバータなどの電動機に比べても比較的発熱量の大きい流体伝動装置が存在しないため、変速機構10の温度が引き摺り抵抗が抑制される好適な温度まで上昇するのに時間を要する。そこで、引き摺り抵抗を速やかに抑制するために、変速機構10を速やかに暖機することが望まれる。
そこで、本実施例では、変速機構10が速やかに暖機されて引き摺り抵抗が抑制されるように、差動制限部として機能する切換クラッチC0または切換ブレーキB0をスリップ制御させることで切換クラッチC0または切換ブレーキB0から発生する発熱量を多くして変速機構10を速やかに暖機させる。以下、この変速機構10の低温時において、変速機構10を速やかに暖機させる制御作動について説明する。
AT油温判定手段100は、油圧制御回路42内の作動油の油温をAT油温センサ80によって検出し、作動油の油温が所定油温よりも低いか否かを判定する。所定油温として、本実施例においては例えば3つの温度が設定されている。第1所定油温Temp1は、変速機構10を特に暖機する必要がない、すなわち変速機構10内の引き摺り抵抗が十分に抑制される下限の温度であり、例えば80℃に設定されている。第2所定油温Temp2は、変速機構10が比較低温である場合に対応する温度であり、例えば35℃に設定されている。第3所定油温Temp3は、変速機構10がさらに低温である場合に対応する温度であり、例えば0℃に設定されている。なお、本実施例において、作動油の油温が変速機構10の温度を代表するものであり、作動油の油温が変速機構10の温度と等しいものとして取り扱う。また、第1所定油温Temp1乃至第3所定油温Temp3は、実験或いは理論的に好適な値に設定されている。
発熱量増大手段102は、AT油温判定手段100の判定結果(変速機構10の温度)に応じて切換クラッチC0または切換ブレーキB0から発生させる発熱量を多くするものである。具体的には、切換クラッチC0または切換ブレーキB0を構成する摩擦係合要素の摩擦板をスリップさせて摩擦熱を増大させることにより、発熱量を多くする。また、発熱量増大手段102は、AT油温判定手段100による判定結果に応じたトルク分担率で切換クラッチC0または切換ブレーキB0と第1電動機M1とが受け持つトルク量を制御するトルク分担率制御手段104を備えている。
トルク分担率制御手段104は、作動油の油温すなわち変速機構10の温度に応じてトルク分配率を制御する。具体的には、エンジン8が出力するエンジントルクTEに対する反力トルクを、作動油の油温に応じて、第1電動機M1が受け持つ反力トルクTM1と、差動制限装置として機能する切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ反力トルクTBC(以下、C0/B0反力トルクTBCと記載)とに、適宜分配する。なお、このトルク分配率制御手段104は、車両の状態が無段制御領域にあるに拘わらず、変速機構10の温度に応じて優先して実行される。
図9は、エンジントルクTEに対して、変速機構10(動力伝達装置)の温度(作動油の油温)と、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ反力トルク分担率との、関係を示した図である。図9に示すように、第1所定油温Temp1である80℃以上の領域においては、切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率(以下、C0/B0トルク分担率と記載)が零となっている。すなわち、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は動力が伝達されない解放状態とされ、第1電動機M1が反力トルクを受け持つこととなる。また、第1所定油温Temp1(80℃)乃至第2所定油温Temp2(35℃)の間の温度領域においては、c%具体的には20%程度の反力トルクをC0/B0反力トルクTBCに受け持たせ、残りの反力トルクを第1電動機M1の反力トルクTM1に受け持たせる。第2所定油温Temp2(35℃)乃至第3所定油温Temp3(0℃)の間の温度領域においては、b%具体的には35%程度の反力トルクをB0/C0反力トルクTBCに受け持たせ、残りの反力トルクを第1電動機M1の反力トルクTM1に受け持たせる。さらに、第3所定油温Temp3(0℃)よりも低い温度領域においては、a%具体的には50%程度の反力トルクをC0/B0反力トルクTBCに受け持たせ、残りの反力トルクを第1電動機M1の反力トルクTM1に受け持たせる。このように、エンジントルクTEに対する反力トルクの分担率を作動油の油温に応じて変化させる、具体的には、油温が低い場合は、高い場合と比較して切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率が高くなるように制御する。
ここで、具体的に切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率を高くするには、第1電動機M1の反力トルクTM1が小さくなるように制御すると共に、切換クラッチC0または切換ブレーキB0の係合トルク(反力トルクTBC)を大きくするように制御する。すなわち、第1電動機M1の発電によって駆動される第2電動機M2や蓄電装置60などから構成される電気パス分が減って、分担率として切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率が上昇する。
図10は、変速機構10の温度(作動油の油温)と、図9のトルク分担率に基づく切換クラッチC0または切換ブレーキB0の係合トルク(反力トルクTBC)との、関係を示している。図10に示すように、図9のトルク分担率に基づいて、すなわち作動油の油温(変速機構10の温度)が低くなるにつれて切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ係合トルク(反力トルクTBC)が大きくなる。
ここで、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が伝達可能な許容伝達トルクが一定であれば、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ係合トルク(反力トルクTBC)が大きいほど切換クラッチC0または切換ブレーキB0で生じるスリップ量が増加する。そして、スリップ量が増加するに伴って切換クラッチC0または切換ブレーキB0で生じる発熱量(放熱量)が増加する。これにより、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ係合トルク(反力トルクTBC)が多くなるほど、すなわち作動油の油温(変速機構10の温度)が低いほど、発熱量が多くなり変速機構10の暖機が速やかに行われる。なお、前記許容伝達トルクは、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の油圧室の係合油圧によって制御される。
具体的には、図10に示すように、変速機構10の温度が第1所定油温Temp1(80℃)以上の温度領域では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が係合されないため、スリップ量は零となる。これにより、切換クラッチC0または切換ブレーキB0で発生する発熱量は零となる。
また、第1所定油温Temp1(80℃)乃至第2所定油温Temp2(35℃)の間の温度領域においては、反力トルクTBC1を受け持つことで、切換クラッチC0または切換ブレーキB0において発熱(放熱)される。第2所定油温Temp2(35℃)乃至第3所定油温Temp3(0℃)の間の温度領域においては、反力トルクTBC1よりも大きな反力トルクTBC2を受け持つことで、発熱量がさらに増加する。また、第3所定油温Temp3以下の温度領域においては、反力トルクTBC2よりも大きな反力トルクTBC3を受け持つことで、発熱量が最も多くなる。これにより、作動油の油温(変速機構10の温度)が低くなるほど、発熱量が多くなるため、変速機構10の暖機が速やかに実行される。このように、トルク分担率制御手段104は、変速機構10の温度が低くなるほど、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ反力トルクTBCを多くなるように制御することで、切換クラッチC0または切換ブレーキB0から生じる発熱量を制御する。
図11は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち変速機構10を速やかに暖機するためのフローチャートであり、たとえば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、本行程のS1乃至S7が、発熱量増大手段102に対応している。
先ず、AT油温判定手段100に対応するステップS1(以下、ステップを省略)において、作動油の油温が第1所定油Temp1である80℃よりも低いか否かが判定される。S1が否定される、すなわち作動油の油温が第1所定油温Temp1よりも高いと判定されると、油温が最適な温度であると判定されてトルク分担率制御手段104に対応するS7において、C0/B0反力トルクTBCが零、すなわち切換クラッチC0または切換ブレーキB0のスリップ量およびトルク分担率が零に制御される。
S1が肯定されると、AT油温判定手段100に対応するS2において、作動油の油温が第2所定油温Temp2である35℃よりも低いか否かが判定される。S2が否定されると、トルク分配率制御手段104に対応するS6において、分担率c%に制御されて、C0/B0反力トルクTBC1でスリップ制御される。
S2が肯定されると、AT油温判定手段100に対応するS3において、作動油の油温が第3所定油温Temp3である0℃よりも低いか否かが判定される。S3が否定されると、トルク分担率制御手段104に対応するS5において、トルク分担率b%に制御されて、C0/B0反力トルクTBC2でスリップ制御される。
S3が肯定されると、トルク分担率制御手段104に対応するS4において、トルク分担率a%に制御されて、C0/B0反力トルクTBC3でスリップ制御される。
上述のように、本実施例によれば、変速機構10の温度に応じて切換クラッチC0または切換ブレーキB0から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段102を備えるため、例えば、その変速機構10の温度が低い場合は発熱量増大手段102によって発熱量を多くすることで変速機構10の温度を高くすることができる。このようにして変速機構10を好適な温度に維持することで、変速機構10の低温時に発生する引き摺り抵抗の増加を抑制することができるため、車両の燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、変速機構10の温度に応じたトルク分担率で切換クラッチC0または切換ブレーキB0と第1電動機M1とのトルク分担量を制御することで、切換クラッチC0または切換ブレーキB0で発生する発熱量を制御して、変速機構10を好適な温度に維持することができる。これにより、変速機構10内で発生する引き摺り抵抗を抑制して車両の燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、トルク分担率制御手段104は、温度が低い場合、その温度が高い場合と比較して切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率を高くするため、低温時において切換クラッチC0または切換ブレーキB0で発生する発熱量を多くして変速機構10の温度を速やかに上昇させることができる。
また、本実施例によれば、切換クラッチC0および切換ブレーキB0のトルク分担率を高くする際には、第1電動機M1の反力トルクを小さくすると共に、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合トルクを大きくするので、第1電動機M1が受け持つ反力トルクが少なくなり、切換クラッチC0または切換ブレーキB0側のトルク分担率が高くなる。
また、本実施例によれば、発熱量増大手段102は、摩擦係合要素をスリップさせて摩擦熱を増大させることで切換クラッチC0または切換ブレーキB0からの発熱量を多くするため、比較的大きな発熱量が得られ、変速機構10を速やかに暖機させることができる。
また、本実施例によれば、差動部11と自動変速部20とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。また、第2電動機M2を駆動させてエンジン8の動力を補助するなどして、駆動トルクを無段階的に変更することもできる。
また、本実施例によれば、差動部11で無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることができる。なお、差動部11は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に、変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることもできる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図12は、本実施例の変速機構10を速やかに暖機するための他のフローチャートである。図12では、前述した図11のフローチャートにさらにステップS10の行程が追加されている。
S10は、図6に示す電動機温度判定手段106に対応している。電動機温度判定手段106は、第1電動機M1に設けられている温度センサ82から検出される第1電動機M1の温度が第4所定温度Temp4よりも高いか否かを判定する。第4所定温度Temp4は、第1電動機M1が正常に作動する上限温度に設定されており、例えば150℃程度の温度に設定されている。電動機温度判定手段106が肯定される、すなわち第1電動機M1の温度が第4所定温度Temp4よりも高くなると、トルク分担率制御手段104によって、切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率を高くする。これにより、第1電動機M1の反力トルクTM1が抑制されて第1電動機M1の発熱量が抑制され、第1電動機M1の温度上昇が抑制される。このように、S10は第1電動機M1を保護するために設定されている。
図12において、S10が肯定される、すなわち第1電動機M1の温度が第4所定温度Temp4を越える場合、S4において、トルク分担率a%に制御されて、C0/B0反力トルクTBC3でスリップ制御される。ここで、トルク分担率がa%では、切換クラッチC0または切換ブレーキB0が受け持つ反力トルクTBCが多くなるため、第1電動機M1が受け持つ反力トルクTM1が小さくなる。これにより、第1電動機M1による発熱量が減少して第1電動機M1の温度上昇が抑制される。一方、S10が否定される、すなわち第1電動機M1の温度が第4所定温度Temp4よりも低い場合、図11と同様の制御が実行される。このように、第1電動機M1の温度が正常作動可能な温度範囲を超える場合は、切換クラッチC0または切換ブレーキB0側の反力トルクTBCを増加させて第1電動機M1が受け持つ反力トルクTM1を低減させることで、第1電動機M1の発熱量が抑制されて、第1電動機M1が保護される。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例の効果が得られるに加えて、第1電動機M1の温度が第4所定温度Temp4よりも高くとなると、切換クラッチC0または切換ブレーキB0のトルク分担率を高くするため、第1電動機M1で発生する発熱量が抑制されて第1電動機M1の温度上昇が抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の所定油温などの具体的な数値は、本実施例において適用されるものであり、変速機構10の構成や第1電動機M1の性質などに応じて適宜変更されるものである。
また、前述の実施例の電動機温度判定手段106は、第1電動機M1の保護のために設定されたものであるため、本発明の課題に対して必ずしも必要とされるものではない。さらに、電動機温度判定手段106に対応する図12に示すステップS10は、例えばS1が否定された場合のS7への行程間などで実行するなど、矛盾のない範囲で適宜実行することができる。
また、前述の実施例の作動油の油温に対して設定されている所定油温は、第1所定油温Temp1乃至第3所定油温Temp3の所定油温が適用され、4段階にトルク分担率が設定されているが、さらに多段階にトルク分担率を設定することもできる。また、トルク分担率を温度に対して連続的に設定して制御することもできる。
また、前述の実施例の発熱量増大手段102は、作動油の油温に応じてエンジントルクTEに対する反力トルクの分担率を制御することで発熱量を増大させるものであったが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0で発生する発熱量を増大するには、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が伝達可能な許容伝達トルクを制御することで発熱量を増大することもできる。具体的には、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の油圧室の油圧を制御することで、スリップ量を変化させて、発熱量を増大(制御)することができる。
また、前述の実施例において、トルク分担率制御手段104によって第1電動機M1の反力トルクTM1が小さくなるように制御されると、第1電動機M1の発電量が減少し、蓄電容量SOCが低下する可能性がある。そこで、本制御において、制御時間や蓄電容量SOCに閾値を設けて制約を設けて実施してもよい。
また、前述の実施例では、第2電動機M2は、伝達部材18に直接連結されているが、第2電動機M2の連結位置はそれに限定されず、差動部11から駆動輪34への間の動力伝達経路に直接的或いは変速機等を介して間接的に連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、差動部11はそのギヤ比γ0が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、たとえば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用することができる。
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、たとえばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、たとえばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられてそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配列されていてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、たとえば伝達部材18としてカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
また、前述の実施例の差動機構として動力分配機構16は、たとえばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。また、このような2以上の遊星歯車装置から構成された場合においても、これらの遊星歯車装置の各回転要素にエンジン8、第1および第2電動機M1、M2、伝達部材18が動力伝達可能に連結され、さらに遊星歯車装置の各回転要素に接続されたクラッチCおよびブレーキBの制御により有段変速と無段変速とが切り換えられるような構成であっも構わない。
また、前述の実施例ではエンジン8と差動部11とが直接連結されているが、必ずしも直接連結される必要はなく、エンジン8と差動部11との間にクラッチを介して連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、差動状態切換手段として油圧式摩擦係合装置を用いているが、必ずしもこのような装置である必要はなく、電磁クラッチや電磁パウダクラッチ等、差動を制限することによって熱量を発生する手段であれば何れの装置であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:エンジン(駆動源) 10:変速機構(車両用動力伝達装置) 11:差動部(電気式差動部) 14:入力軸 16:動力分配機構(差動機構) 18:伝達部材(出力軸) 20:自動変速部(機械式変速部) 34:駆動輪 102:発熱量増大手段 104:トルク分担率制御手段 M1:第1電動機 M2:第2電動機 C0:切換クラッチ(差動制限装置) B0:切換ブレーキ(差動制限装置)
Claims (8)
- 差動機構の回転要素に連結された第1電動機の運転状態が制御されることにより、駆動源が接続される入力軸回転速度と出力軸回転速度の差動状態が制御される電気式差動部と、該電気式差動部の差動を制限する係合要素からなる差動制限部とを、有する車両用動力伝達装置の制御装置であって、
前記車両用動力伝達装置の温度に応じて前記差動制限部から発熱させる発熱量を多くする発熱量増大手段を備えることを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記発熱量増大手段は、前記車両用動力伝達装置の温度に応じたトルク分担率で前記差動制限部と前記第1電動機とが受け持つトルクを制御するトルク分担率制御手段を備えることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記トルク分担率制御手段は、前記温度が低い場合、該温度が高い場合と比較して前記差動制限部のトルク分担率を高くすることを特徴とする請求項2の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記第1電動機の温度が所定値以上となると、前記差動制限部のトルク分担率を高くすることを特徴とする請求項3の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記トルク分担率制御手段は、前記差動制限部のトルク分担率を高くする際には、前記第1電動機の反力トルクを小さくすると共に、前記差動制限部の係合トルクを大きくすることを特徴とする請求項3または4の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記係合要素は、摩擦板相互の摩擦によってトルクを伝達する摩擦係合要素であり、前記発熱量増大手段は、該摩擦係合要素をスリップさせて摩擦熱を増大させることにより前記差動制限部からの発熱量を多くするものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記電気式差動部と前記駆動輪との間の動力伝達経路には、第2電動機および機械式変速部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記電気式差動部は、前記差動制限部または前記第1電動機の制御により無段変速機構として作用することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの車両用動力伝達装置の制御装置。
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