JP6772613B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置及び定着装置を備える画像形成装置に関する。
複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらのうちの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置に対し、近年、省エネルギー化、高速化についての市場要求が強くなってきている。
画像形成装置のなかでも定着装置は、消費電力量が多く、省エネルギー化の余地が大きいため、様々な提案がなされている。例えば、低熱容量でフィルム状に薄い無端状の定着部材(例えば、定着ベルト)を直接加熱する構成とし、高生産の画像形成装置に搭載されても良好な定着性を得ることができる定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の定着装置では、無端状の定着部材の外周側に配置された加圧部材(例えば、加圧ローラ)と、定着部材の内部(ループ内)に固定配置されたニップ形成部材とが、定着部材を介して圧接することによって定着ニップを形成している。
しかしながら、特許文献1に記載の定着装置は、ニップ形成部材が定着部材の内周と摺擦し続けることにより、定着部材の内周面を傷つけてしまい、定着部材の破損を招くという問題がある。
これに対して、ニップ形成部材と定着部材との摩擦負荷を低減するため、定着部材の内周面に、潤滑剤を塗布することが一般的である。
しかしながら、定着部材が回転し、定着ニップを通過する際、定着部材の内周面に塗布された潤滑剤は、定着ニップの入口や出口で、ニップ形成部材に掻き取られるため、ニップ形成部材の定着ニップ外側に、掻き取られた潤滑剤が、徐々に堆積する。そのため、定着部材の内周面に付着した潤滑剤の量は減少し、ニップ形成部材と定着部材との摩擦負荷が増大し、定着部材の破損や、定着部材を回転させる加圧部材の破損を招く虞がある。
また、定着部材の内周面とニップ形成部材との間に潤滑剤が配され、潤滑剤が溜まる潤滑剤溜まり部と、端部が定着部材の内周面に当接し又は近接している第1熱遮蔽部材と、定着部材の内周面の潤滑剤を堰き止める潤滑剤堰き止め部材と、を備える構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の定着装置によれば、定着部材の内周面と第1熱遮蔽部材の他端部との接触により、定着部材の回転が阻害されにくくなり、潤滑剤溜まり部から潤滑剤が供給されることで、定着部材をスムーズに回転させることができる。
しかしながら、特許文献2に記載の定着装置は、潤滑剤を常時供給しなければ、定着部材の内周面に付着した潤滑剤の量は減少し、ニップ形成部材と定着部材との間の摩擦負荷が増大し、定着部材の破損を招く虞がある。
本発明は、適量の潤滑剤により、ニップ形成部材による定着部材の破損を防止する定着装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の定着装置は、
可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材を押圧するとともに、従動回転させる加圧部材と、
前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材とニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記定着部材の端部において該定着部材を回転可能に保持する保持部材と、を備える定着装置であって、
前記定着部材の内周面には潤滑剤が塗布され、
前記ニップ形成部材は、前記定着部材の内周面と接触して前記定着部材の長手方向における温度勾配を緩くする熱移動補助部材を有し、前記熱移動補助部材が、前記ニップ部に搬送される際に前記定着部材の内周面に付着した余剰分の潤滑剤を掻き取る潤滑剤掻取部と、前記潤滑剤掻取部により掻き取られた潤滑剤を収容する潤滑剤収容部を有し、
前記潤滑剤掻取部は、前記熱移動補助部材のニップ形成部と前記潤滑剤収容部との接続部により構成され、
前記定着部材は、作像開始から作像終了までの間に、回転軌跡を変更可能とし、
前記定着部材の内周面は、該定着部材の回転軌跡の変更により前記潤滑剤収容部に収容された潤滑剤に少なくとも1回接触することを特徴とする。
本発明によると、適量の潤滑剤により、ニップ形成部材による定着部材の破損を防止する定着装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。 定着装置の一実施形態を示す概略的な断面構成図である。 定着ベルトの取付け構成を説明する説明図である。 定着ベルトの挙動について説明する説明図である。 定着ベルトの挙動について説明する説明図である。 従来の熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。 第1実施形態に係る熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。 第2実施形態に係る熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。この画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、そのプリンタ本体の中央には、中間転写ベルト30の展張方向に沿って4つの作像部4Y、4C、4M、4Kが並設されている。各作像部4Y、4C、4M、4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容する以外は、同じ構成である。
具体的に、それぞれ画像ステーションを構成する各作像部4Y、4C、4M、4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備えている。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに色用符号を付し、その他の作像部4Y、4C、4Mにおいては符号を省略している。
作像部4Y、4C、4M、4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
作像部4Y、4C、4M、4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36とを備える。更に、転写装置3は二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33、テンションローラ34、及びベルトクリーニング装置35を備えている。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、プリンタ本体の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にもプリンタ本体の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y、2C、2M、2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y、2C、2M、2Kと各現像装置7との間には、周知のように補給路が設けられ、この補給路を介して各トナーボトル2Y、2C、2M、2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
一方、プリンタ本体の下部には、記録材としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11などが設けられている。ここで、記録材には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシートなどが含まれる。また、周知のように、手差し給紙機構が設けられていてもよい。
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ(位置合わせローラ)12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。更に、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けられている。
本実施形態に係るプリンタの基本的動作は次のようである。作像動作が開始されると、各作像部4Y、4C、4M、4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。各感光体5の表面は、その後、除電され、表面電位が初期化される。
画像形成装置の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によってタイミングを計られ、二次転写ローラ36と二次転写バックアップローラ32との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
その後、中間転写ベルト30の周回走行に伴って、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、そのニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーはプリンタ本体内に置かれた廃トナー収容器へと搬送され、回収される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y、4C、4M、4Kの何れか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2は、定着装置の一実施形態を示す概略的な断面構成図である。定着装置20は、薄肉で可撓性を有し回転可能な無端状で筒状の定着部材である定着ベルト21と、この定着ベルト21の外周側から当接する加圧部材である加圧ローラ22とを有している。定着ベルト21は、その内部(ループ内)に配された複数の熱源としてのハロゲンヒータ23A,23Bの輻射熱によって加熱される。なお、ハロゲンヒータは、主たる熱源としての輻射型熱源を代表するものである。
更に、定着ベルト21の内側(内部)には、定着ベルト21を介して加圧ローラ22とで定着ニップ(ニップ部)Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持するステー部材25(支持部材)とが配されている。定着ベルト21の幅方向(長手方向)に亘って配されたニップ形成部材24が、ステー部材25によって固定支持されることで、加圧ローラ22からの圧力によってニップ形成部材24に撓みが生じることを防止し、加圧ローラ22の軸方向(長手方向)に亘って均一なニップ幅が得られるようになっている。なお、ニップ形成部材24は、機械的強度が高く耐熱温度200℃以上の耐熱性部材、特に耐熱性樹脂、例えばポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、それらをガラス繊維で強化したもので構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定した定着ニップの状態を確保し、出力画質の安定化を図っている。また、ステー部材25やハロゲンヒータ23A,23Bは、その長手方向両端を、定着装置20の側板あるいは別途設けられたホルダに固定保持されている。ニップ形成部材24の長手方向両端部には、主たる熱源(定着熱源)とは別の端部熱源としての端部ヒータ26が一体に取り付けられている。端部ヒータとしては、一般的に、セラミックセータのような抵抗発熱体である接触伝熱型熱源が用いられる。
定着ベルトの長手方向における温度勾配を緩くする均熱部材とも称される熱移動補助部材27が、ニップ形成部材24及び端部ヒータ26の、定着ベルト21の内周面に対向する各面を覆うように配されている。熱移動補助部材27は、短時間で熱移動が可能となる熱伝導率の高い材料、例えば銅、アルミニウム、銀などで形成されている。これにより、小サイズ紙の通紙時や端部ヒータ26点灯時に定着ベルト21の端部領域に熱が留まることを防止して、熱移動補助部材27の長手方向に熱を積極的に移動させて、定着ベルト21の長手方向の温度不均一を解消させる。なお、本実施の形態では、熱移動補助部材27は、ニップ形成部材24を構成する構成部品として形成され、熱移動補助部材27の定着ベルト21の内周面に対向する面が、定着ベルト21に直接接触する面であり、ニップ形成面となっている。定着ベルト21の内周面には、潤滑剤が塗布され、定着ベルト21の内周面と熱移動補助部材27との摺動性を高めている。
図2の描写では、ニップ形成面は、平坦状に形成されているが、凹形状やその他の形状であってもよい。ニップ形成面が凹形状であると、用紙先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上してジャムの発生が抑制される。
周知のように、定着ベルト21の外周側の適切な位置、例えば定着ニップのベルト回転方向上流側には、ベルト温度を検知する温度センサ29が設けられており、定着装置20の用紙搬送方向下流側には、定着ベルト21から用紙Pを分離する分離部材41が配されている。更に、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する解除可能な加圧手段も設けられている。
低熱容量化を図るため、フィルムのように薄肉で小径化した無端状の定着ベルト21は、ニッケルやSUSなどの金属材料やポリイミドなどの樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。基材と離型層の間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。未定着トナーを押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。低熱容量化の観点から、定着ベルト21は、全体として厚さ1mm以下に、直径20〜40mmに設定されている。そして、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さは、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定されている。更に、低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、更に望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよく、直径は30mm以下とするのが望ましい。
断面T字状のステー部材25は、定着ニップN側と反対側が起立した起立部25aを有しており、主たる熱源としてのハロゲンヒータ23A,23Bが起立部25aによって隔てられるように配置されている。ハロゲンヒータ23A,23Bは、一方が小サイズ紙に対応した長手方向中央部に発熱部を有するものであり、他方が大サイズ紙に対応して長手方向両端部に発熱部を有するものである。ハロゲンヒータ23A,23Bは、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、定着ベルト21の外周に設けられた温度センサ29によるベルト表面の温度検知結果に基づいて行われる。このようなヒータの出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
また、ステー部材25とハロゲンヒータ23A,23Bの間には反射部材28A,28Bが配されている。これにより、ハロゲンヒータ23A,23Bの定着ベルト21に対する加熱効率を上げると共に、ハロゲンヒータ23A,23Bからの輻射熱によりステー部材25が加熱されることによる無駄なエネルギー消費を抑制できる。反射部材28A,28Bを備える代わりに、ステー部材25表面に断熱若しくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。
加圧ローラ22は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFEなどから成る離型層とによって構成されている。バネなどの加圧手段により加圧ローラ22が定着ベルト21に押し付けられ定着ベルト21と圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層が押し潰されることで、所定幅の定着ニップNが形成される。加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータなどの駆動源によって回転駆動する。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転する。定着ベルト21は、定着ニップNで挟み込まれて回転し、定着ニップN以外では両端部に配された後述する保持部材としてのフランジにガイドされ、走行する。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの熱源を配設してもよい。弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラの内部に熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
次に、定着ベルトの取付け構成を説明する。
図3は、定着ベルトの取付け構成を説明する説明図である。
定着ベルト21の端部には、定着ベルト21を回転可能に保持する保持部材としてのフランジ37を有する。フランジ37は、定着ベルト21の端部で内周側に挿入される挿入部39を有する。挿入部39の外径は、定着ベルト21の内径よりも小さく形成される。
定着ベルト21の内径と挿入部39の外径との間の間隔に余裕がない場合、定着ベルト21の内周面と挿入部39の外周面との間の摺動抵抗が増大し、定着ベルト21の端部が破損する虞がある。
本実施の形態では、定着ベルト21の内径と挿入部39の外径との間に所定の間隔を設ける。
このような定着ベルト21の取付け構成により、定着ベルト21を保持する箇所を削減できる。そのため、定着ベルト21が回転動作を実行する際、特に回転動作の開始時に、定着ベルト21は、後述するような断面形状で真円の状態を保たないような挙動を積極的に引き起こすことができる。また、定着ベルト21が、このような挙動を示した場合であっても、定着ベルト21の内周面と挿入部39の外周面との摺動抵抗を低減することができる。また、定着ベルトの内周面に接触する部材を低減し、省エネの向上を図れる。
なお、定着ベルト21の長手方向端部とフランジ37との間に、定着ベルト21の回転に伴って回転する摺動リング38を設けてもよい。これにより、定着ベルト21の長手方向端部にかかる摺動抵抗を低減することができる。
次に、定着ベルトの挙動について説明する。
図4は、定着ベルトの挙動について説明する説明図である。図5は、定着ベルトの挙動について説明する説明図である。
上記取付け構成の定着ベルト21は、例えば定着ベルト21が回転を開始するときに、真円の状態を保たないような挙動を積極的に引き起こす。
具体的には、停止状態の定着ベルト21が回転を開始すると、図4に符号21Bで示すように、定着ベルト21全体が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方(用紙搬送方向下流側)にスライドする状態(不安定走行状態)になる場合がある。また、停止状態の定着ベルト21が回転を開始すると、図5の符号21Cに示すように、定着ベルト21全体が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より下方(用紙搬送方向上流側)にスライドした後に、図4に符号21Bで示すように、定着ベルト21全体が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方にスライドする状態(不安定走行状態)になる場合がある。すなわち、定着ベルト21は、作像開始から作像終了までの間に、回転軌跡を変更する。作像開始から作像終了までの間とは、作像のために定着装置20が駆動(回転)を開始してから、駆動(回転)を終了するまでの間をいう。
定着ベルト21が、このような挙動をする場合、定着ベルト21の内周面は、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より、定着ニップNの入口側で熱移動補助部材27に近づく瞬間がある。定着ニップNの入口側とは、定着ニップNより定着ベルト21の走行方向上流側をいい、定着ニップNの出口側とは、定着ニップNより定着ベルト21の走行方向下流側をいう。
なお、定着ベルト21は、定着ニップNの面圧、熱移動補助部材27と定着ベルト21の内周面との摩擦力、駆動開始時の線速、定着ニップNのレイアウトが重力に対して水平方向であるか又は垂直方向であるか等により、様々な挙動を示すが、いずれの場合でも、定着ベルト21の内周面は、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より、定着ニップNの入口側で熱移動補助部材27に近づく瞬間がある。
次に、従来の熱移動補助部材の構成を説明する。
図6は、従来の熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。
従来の熱移動補助部材27は、図6に示すように、ニップ形成部27aと、ニップ形成部27aの定着ニップNの入口側の端部から定着ニップN側とは反対側に延在する延在部27cと、を有する。
図6の符号21Aは、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21の状態を示す。図6の符号21Bは、定着ベルト21が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方にスライドした状態(不安定走行状態)を示す。図6の符号21Cは、定着ベルト21が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より下方にスライドした状態(不安定走行状態)を示す。
定着ベルト21は、図6の符号21Bに示すように、定着ベルト21が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方にスライドした状態(不安定走行状態)で、定着ベルト21は、熱移動補助部材27の延在部27cに多少近づくが、熱移動補助部材27の延在部27cの近傍までは近づかない。
[第1実施形態]
次に、第1実施形態の熱移動補助部材の構成を説明する。
図7は、第1実施形態に係る熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。
第1実施形態の熱移動補助部材27は、図7(a)に示すように、ニップ形成部27aと、ニップ形成部27aの定着ニップNの入口側の端部から、定着ベルト21の内周面に沿うように傾斜した潤滑剤収容部の一例である傾斜部27bと、傾斜部27bの端部から定着ニップN側とは反対側に延在する延在部27cと、を有する。ニップ形成部27aと傾斜部27bとの定着ニップN側の接続部は、潤滑剤掻取部27eを構成する。なお、ニップ形成部27aの定着ニップNの出口側の熱移動補助部材27の形状は、同様の形状としてもよい。
図7(a)及び図7(b)の符号21Aは、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21の状態を示す。図7(a)及び図7(b)の符号21Bは、定着ベルト21が、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方にスライドした状態(不安定走行状態)を示す。
定着ベルト21は、図7(a)及び図7(b)の符号21Bに示すように、定着ベルトが、停止状態又は安定走行状態の定着ベルト21より上方にスライドした状態(不安定走行状態)で、定着ベルト21は、熱移動補助部材27の傾斜部27bの近傍に近づく。
定着ニップNの出口側では、余剰な潤滑剤が滞留する場合があり、滞留している潤滑剤が定着ベルト21の内周面に付着する。
定着ベルト21が安定して回転している状態(安定走行状態)では、図7(b)に符号21Aで示すように、定着ニップNの入口側で、定着ベルト21の内周面が、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られ、傾斜部27b上に潤滑剤溜まり40を形成する。また、定着ベルト21が安定して回転している状態(安定走行状態)では、図7(b)に符号21Aで示すように、定着ベルト21は、傾斜部27b上に形成された潤滑剤溜まり40に接触しない。これにより、潤滑剤が、定着ニップNに過剰に供給される状態になることはない。
また、線速変更等により、定着ベルト21の回転の挙動が変化して、定着ベルト21の内周面が潤滑剤溜まり40に接触しても、定着ニップNの入口側で、定着ベルト21の内周面が、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られる。そのため、潤滑剤が、定着ニップNに過剰に供給される状態になることはない。
停止状態の定着ベルト21が回転を開始した直後の状態(不安定走行状態)では、図7(b)に符号21Bで示すように、定着ベルト21は、熱移動補助部材27の傾斜部27bの近傍に近づき、潤滑剤溜まり40に接触し、定着ベルト21の内周面に潤滑剤が付着する。定着ベルト21の内周面に付着した潤滑剤は、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られる。これにより、定着ベルト21の内周面に、適量の潤滑剤が供給されることとなる。
また、定着ベルト21の内周面の潤滑剤は、熱による微少な揮発分以外は、熱移動補助部材27の傾斜部27bで回収され、潤滑剤溜り40を形成する。そのため、定期的な潤滑剤の補充を行わなくても、定着ニップNの摺動抵抗を増大させることなく、定着ユニットの寿命まで継続して使用することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る熱移動補助部材の構成を説明する。
図8は、第2実施形態に係る熱移動補助部材の構成を説明する説明図である。
第2実施形態の熱移動補助部材は、傾斜部に代えて、凹部を有する点で、第1実施形態と異なる。
第2実施形態の熱移動補助部材27は、図8に示すように、ニップ形成部27aと、ニップ形成部27aの定着ニップNの入口側の端部から、定着ベルト21の内周面から離れる方向に凹形状を形成する潤滑剤収容部の一例である凹部27dと、凹部27dの端部から定着ニップN側とは反対側に延在する延在部27cと、を有する。ニップ形成部27aと凹部27dとの定着ニップN側の接続部は、潤滑剤掻取部27eを構成する。凹部27dには潤滑剤が堆積して潤滑剤溜まり40を形成する。凹部27dは、潤滑剤溜まり40が、定着ベルト21の内周面に沿うように形成される。なお、凹部27dの形状は、潤滑剤溜まり40が、定着ベルト21の内周面に沿うように形成されればよく、多種多様な形状を適用できる。ニップ形成部27aの定着ニップNの出口側の熱移動補助部材27の形状は、同様の形状としてもよい。
定着ベルト21が安定して回転している状態(安定走行状態)では、定着ニップNの入口側で、定着ベルト21の内周面が、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られ、凹部27dに潤滑剤が堆積する。また、定着ベルト21が安定して回転している状態(安定走行状態)では、定着ベルト21は、凹部27d上に堆積した潤滑剤溜まり40に接触しない。これにより、潤滑剤が、定着ニップNに過剰に供給される状態になることはない。
また、線速変更等により、定着ベルト21の回転の挙動が変化して、定着ベルト21の内周面が凹部27dに堆積した潤滑剤溜まり40に接触しても、定着ニップNの入口側で、定着ベルト21の内周面が、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られる。そのため、潤滑剤が、定着ニップNに過剰に供給される状態になることはない。
停止状態の定着ベルト21が回転を開始した直後の状態(不安定走行状態)では、図8に符号21Bで示すように、定着ベルト21は、熱移動補助部材27の凹部27dに堆積した潤滑剤溜まり40に接触し、定着ベルト21の内周面に潤滑剤が付着する。定着ベルト21の内周面に付着した潤滑剤は、潤滑剤掻取部27eと接触し、定着ベルト21の内周面に付着した余剰分の潤滑剤が掻き取られる。これにより、定着ベルト21の内周面に、適量の潤滑剤が供給されることとなる。
また、定着ベルト21の内周面の潤滑剤は、熱による微少な揮発分以外は、熱移動補助部材27の凹部27dに回収される。そのため、定期的な潤滑剤の補充を行わなくても、定着ニップNの摺動抵抗を増大させることなく、定着ユニットの寿命まで継続して使用することができる。また、余剰な潤滑剤が漏れ出し、装置内を汚染することを防止できる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
例えば、定着ベルト21の内周面に対向する熱移動補助部材27の面は、平滑であることが望ましい。また、摺動性を高めるために、摩擦係数を低減するような施しを行うことが望ましい。例えば、PFAやPTFEのようなフッ素系の塗装やコーティングを施す。これにより、熱移動補助部材27と定着ベルト21の内面との摺動を良好に維持することができる。また、熱移動補助部材27と定着ベルト21の内周面との間に必要な潤滑剤を微量にすることができる。
なお、本発明の定着装置を備える画像形成装置としては複写機あるいはプリンタに限らず、ファクシミリや複数の機能を備える複合機であってもよい。
20 定着装置
21 定着ベルト(定着部材の一例)
22 加圧ローラ(加圧部材の一例)
24 ニップ形成部材
37 フランジ(保持部材の一例)
N 定着ニップ(ニップ部)
特開2014−174440号公報 特開2011−22430号公報

Claims (4)

  1. 可撓性を有する無端状の定着部材と、
    前記定着部材を押圧するとともに、従動回転させる加圧部材と、
    前記定着部材の内周側に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材とニップ部を形成するニップ形成部材と、
    前記定着部材の端部において該定着部材を回転可能に保持する保持部材と、を備える定着装置であって、
    前記定着部材の内周面には潤滑剤が塗布され、
    前記ニップ形成部材は、前記定着部材の内周面と接触して前記定着部材の長手方向における温度勾配を緩くする熱移動補助部材を有し、前記熱移動補助部材が、前記ニップ部に搬送される際に前記定着部材の内周面に付着した余剰分の潤滑剤を掻き取る潤滑剤掻取部と、前記潤滑剤掻取部により掻き取られた潤滑剤を収容する潤滑剤収容部を有し、
    前記潤滑剤掻取部は、前記熱移動補助部材のニップ形成部と前記潤滑剤収容部との接続部により構成され、
    前記定着部材は、作像開始から作像終了までの間に、回転軌跡を変更可能とし、
    前記定着部材の内周面は、該定着部材の回転軌跡の変更により前記潤滑剤収容部に収容された潤滑剤に少なくとも1回接触することを特徴とする定着装置。
  2. 作像開始から作像終了までの間に、前記定着部材が安定して走行する安定走行状態と、前記定着部材が不安定に走行する不安定走行状態と、を有し、
    前記安定走行状態では、前記定着部材の内周面は、前記潤滑剤収容部に収容された潤滑剤に非接触であり、
    前記不安定走行状態では、前記定着部材の内周面は、前記潤滑剤収容部に収容された潤滑剤に少なくとも1回接触することを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記潤滑剤収容部は、前記定着部材の回転方向で、前記ニップ部の上流に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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