以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、加熱ニップの加圧を解除してベルト部材を回転させて潤滑剤を移動させる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、ベルト部材に加圧ローラを圧接した画像加熱装置に限らず、ベルト部材に加圧ベルトを圧接した画像加熱装置でも実施できる。
像加熱装置が搭載される画像形成装置は、中間転写ベルト方式、記録材搬送ベルト方式、記録材へ枚葉式にトナー像を転写する方式、タンデム型、1ドラム型の区別無く実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1〜3に示される像加熱装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置10は、中間転写ベルト31に沿って画像形成部10Y、10M、10C、10Kを配置したタンデム型フルカラープリンタである。
画像形成部10Yでは、感光ドラム11Yにイエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト31に一次転写される。画像形成部10Mでは、感光ドラム11Mにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト31のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部10C、10Kでは、感光ドラム11C、11Kにそれぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト31のトナー像に重ねて順次一次転写される。
中間転写ベルト31に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2で記録材Pへ一括二次転写される。記録材カセット20からピックアップローラ21により引き出されて分離ローラで1枚ずつに分離された記録材Pは、レジストローラ23で待機し、中間転写ベルト31のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ送り出される。
二次転写部T2でトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置40で加熱加圧を受けて、表面にトナー像を定着された後に、排出ローラ63を通じて排出トレイ64へ排出される。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、それぞれに付設された現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部10Yについて説明し、他の画像形成部10M、10C、10Kについては、説明中の符号末尾のYを、M、C、Kに読み替えて説明されるものとする。
画像形成部10Yは、感光ドラム11Yの周囲に、コロナ帯電器12Y、露光装置13Y、現像装置14Y、転写ブレード17Y、クリーニング装置15Yを配置している。感光ドラム11Yは、帯電極性が負極性の感光層を形成した金属円筒で構成され、所定のプロセススピードで矢印方向に回転する。コロナ帯電器12Yは、感光ドラム11Yの表面を一様な負極性の電位に帯電させる。露光装置13Yは、帯電した感光ドラム11Yの表面に画像の静電像を書き込む。現像装置14Yは、二成分現像剤を攪拌して帯電させ、負極性に帯電したトナーで感光ドラム11Yの静電像を反転現像する。
転写ブレード17Yは、中間転写ベルト31の内側面を押圧して感光ドラム11Yと中間転写ベルト31との間に一次転写部を形成する。転写ブレード17Yに正極性の直流電圧を印加することにより、感光ドラム11Yに担持されたトナー像が中間転写ベルト31に一次転写される。
二次転写ローラ35は、対向ローラ34との間に中間転写ベルト31を挟み込んで、中間転写ベルト31と二次転写ローラ35との間に二次転写部T2を形成する。二次転写部T2は、トナー像を担持した中間転写ベルト31に重ね合わせて記録材Pを挟持搬送し、二次転写ローラ35に正極性の直流電圧を印加することで、中間転写ベルト31から記録材Pへトナー像が二次転写される。
<定着装置>
図2は定着装置の構成の説明図である。図3は定着装置の加圧機構の説明図である。図4はヒータの説明図である。
図2に示すように、定着装置40は、摺擦部材(404、403)によって内側面を支持されたベルト部材(405)に、下方から駆動部材(402)を圧接して、記録材Pの加熱ニップ(N)を形成する。記録材Pが加熱ニップ(N)を通過する過程で、ベルト部材(405)を介して、抵抗加熱素子(403b)から記録材Pに熱が供給されることにより、未定着トナー像tが軟化して記録材Pの表面に定着される。このような加圧ローラ駆動方式、テンションレスフィルム加熱方式の像加熱装置は、特開平4−44075〜44083号公報、特開平4−204980〜204984号公報等に開示されている。
ヒータガイド404、ヒータ403、ステイ406、定着フィルム405は、長手方向の両端に配置されたエンドキャップ(428:図3)によって相互の位置関係を定められて、定着フィルムユニット401を構成している。
摺擦部材の一例であるヒータガイド404は、ヒータ403の支持部材と定着フィルム405の内側面のガイド部材とを兼ねており、断熱性、高耐熱性、剛性を有する高耐熱性樹脂等で構成される。ヒータガイド404は、図面に垂直方向を長手方向とする横長部材であり、その下面の長手方向に沿って設けた溝部にヒータ403を嵌入させて、断熱・固定的に保持させてある。
加圧部材の一例であるステイ406は、ヒータガイド404を補強する金属製の断面コ字型の梁部材であって、定着フィルム405を長手方向に貫通して配置される。
ベルト部材の一例である定着フィルム405は、可撓性部材としての、耐熱性に優れた円筒状の樹脂フィルム材料で外径30mmに形成されている。定着フィルム405は、厚み30μm〜100μm程度のポリイミドを基層とした薄膜筒で、基層の上にプライマー層(接着層)を介して、軟化したトナーに対する離型性を付与するためのPFA、PTFE等のコートが施されている。定着フィルム405は、可撓性を有する金属円筒体や、金属層を有する樹脂やゴムの複合層構成の円筒材料であってもよい。
定着フィルム405の内周長は、ヒータガイド404、ヒータ403、ステイ406を含む集合体の外周長よりも大きくしてある。従って、定着フィルム405は、ヒータガイド404、ヒータ403、及びステイ406のアセンブリに対して周長が余裕を持つように、ルーズに外嵌している。
駆動部材の一例である加圧ローラ402は、定着フィルムユニット401のヒータ403及びステイ406の下面との間に定着フィルム405を挟み込む。加圧ローラ402は、金属軸402aの外周面にシリコンゴムからなる弾性層402bを配置して直径30mmに形成されている。弾性層402bの表面には、プライマー層(接着層)を介して10〜100μm程度の厚みを有するPFA等の離型層402cが設けられている。
加圧ローラ402は、定着フィルム405に当接して、記録材Pの搬送方向である矢印C方向に、所定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ402の回転に伴い、加熱ニップNにおける加圧ローラ402と定着フィルム405の摩擦力で定着フィルム405に矢印D方向(所定方向)の回転力が作用する。これにより、定着フィルム405は、加熱ニップNにおいて内側面がヒータ403の下向き面に密着して摺擦し、ヒータガイド404の回りを矢印D方向に回転する。
定着フィルム405は、当接する加圧ローラ402の回転に従動回転して、ヒータ403が配置されたヒータガイド404の加熱面に密着して摺擦しながら記録材Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転する。
加圧ローラ402に回転駆動されて定着フィルム405の回転がなされ、通電によりヒータ403が昇温して所定の目標温度に温調された状態において、加熱ニップNに記録材Pが導入される。定着フィルム405と加圧ローラ402との間に未定着トナー画像tを担持した記録材Pが導入され、記録材Pのトナー像担持面が定着フィルム405の外側面に密着して定着フィルム405と一緒に加熱ニップNを通過する。このとき、ヒータ403の熱が定着フィルム405を介して記録材Pに付与され、未定着トナー像tが記録材Pの面に加熱定着される。加熱ニップNを通った記録材Pは、定着フィルム405の面から曲率分離されて排出搬送される。
図3に示すように、ステイ406の長手方向の両端部に配置された加圧機構420は、像加熱時、可変の押圧力でステイ406を加圧ローラ402に向かって付勢する。これにより、加圧ローラ402の弾性層402bがヒータガイド404とヒータ403の輪郭線に沿って弾性変形して定着装置40に必要な加熱ニップNを形成させる。加圧ローラ402に向かって加圧されたとき、ステイ406は、ヒータガイド404及びヒータ403の撓み変形を防止している。
定着フィルム405の長手方向の長さ340mmに対して、ヒータガイド404は、長手方向の長さ360mm、加圧ローラ402は、ゴム(弾性層)長さ330mmである。加圧ローラ402は、定着装置40のフレームに固定されたベアリング426によって、金属軸402aの両端が両持ち式かつ回転自在に支持されている。
加圧機構420は、駆動モータ421を作動させてカム軸423を回転させ、一対の加圧カム422を回転させて、加圧バネ427の一端を昇降させる。これにより、加圧バネ427がステイ406の両端を押圧する力が変化して、定着フィルム405に対する加圧力を、第一の加圧力と第一の加圧力よりも加圧力が低い第二の加圧力とに変更可能である。
加圧機構420は、長期間の偏った加圧で加圧ローラ402が変形したり定着フィルム405に皺が入ったりするのを防止するために、定着装置40が停止された後に加熱ニップNのニップ圧力を解除する。停止中に加圧状態を継続して加圧ローラ402が変形すると、その後の起動時に、加圧ローラ402の変形が元に戻るまで画像形成を開始できないからである。
図4の(a)に示すように、加熱手段及び摺擦部材の一例であるヒータ403は、記録材Pの搬送方向に対して直角方向を長手方向とする細長の耐熱性・絶縁性・良熱伝導性の基板403aの表面(定着フィルム摺擦面側)に抵抗発熱体403bを配置している。
基板403aは、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックス材料が用いられ、ヒータ403は全体的に低熱容量である。抵抗発熱体403bは、銀・パラジウム・ガラス粉末(無機結着剤)・有機結着剤を混練して調合したペーストをスクリーン印刷により、基板403a上に細帯状に形成している。抵抗発熱体403bの材料としては、銀パラジウム(Ag/Pd)以外にRuO2、Ta2N等の電気抵抗材料を用いても良い。
抵抗発熱体403bの長手方向の端部に、銀パラジウムのスクリーン印刷パターンを用いた給電用電極403d、403eが配置される。給電用コネクタ42、43がヒータ403の給電用電極403d、403eに嵌着されると、給電用コネクタ42、43の電気接点がそれぞれ給電用電極403d、403eに対して接触状態になる。
図4の(c)に示すように、抵抗発熱体403bを形成したヒータ表面は、耐熱性オーバーコート層403cで覆って保護させている。オーバーコート層403cは、抵抗発熱体403bと定着フィルム(405:図2)の電気的な絶縁性を確保しつつ、定着フィルム(405:図2)に対する摺動性を高めることが主な目的である。オーバーコート層403cは、厚さ約50μmの耐熱性ガラス層である。ヒータ403は、オーバーコート層403cが形成された表面側を下向きに露呈させて、ヒータガイド(404:図2)の下面に固定してある。
図4の(b)に示すように、サーミスタTHは、ヒータ403の温度を検知するために設けられた検温素子であり、ヒータ裏面側、すなわち基板403aの抵抗発熱体403bを設けた側とは反対面側に配設してある。
図3に示すように、サーミスタTHは、最小サイズの記録材の通過幅の内側に設けられており、A/D変換器41を介して制御部50に通じている。
ヒータ403(403d、403e:図4)には、トライアック45を介して商用電源(AC電源)44が接続される。制御部50によってトライアック45が制御されてトライアック45を介して電力供給がされると、抵抗発熱体403bが長手方向の全長にわたって発熱して、迅速急峻に昇温する。昇温した刻々の温度がサーミスタTHで検出され、制御部50は、サーミスタTHの出力をA/D変換して取り込む。制御部50は、サーミスタTHの検出温度に基づいてトライアック45を制御して、抵抗発熱体403bに通電する電力を位相制御あるいは波数制御等により制御して、サーミスタTHの検出温度を所定温度に収束させる。
定着装置40の立上時には、制御部50は、サーミスタTHの検出温度に基づいてトライアック45を制御してヒータ403を長手方向の全長に渡って発熱させて所定温度に維持して、異常発熱することを抑止する。
<潤滑剤>
図5は定着装置の起動時の時間経過とモータトルクの関係の説明図である。図5中、(a)は時間経過と定着フィルムの表面温度の関係、(b)は時間経過とモータトルクの関係、(c)は時間経過とモータ回転数の関係、(d)は時間経過とモータ出力の関係である。図6は潤滑剤の温度と粘度の関係の説明図である。
定着装置40は、ヒータガイド404及びヒータ403と摺動(摺擦)する定着フィルム405の駆動負荷が大きいため、加圧ローラ402の回転トルクが大きいという問題がある。ヒータガイド404及びヒータ403と定着フィルム405の摺動(摺擦)摩擦が駆動負荷の大きな要因であり、加圧ローラ402により所定の圧力を加える構成では、定着フィルム405の摺動摩擦が加圧ローラ402の駆動負荷の大部分を占める。
定着装置40では、定着フィルム405とヒータガイド404の摺動摩擦を低下させるために、定着フィルム405の内側面に耐熱性の潤滑剤(耐熱性グリス)が塗布されている。定着フィルム405の耐摩耗性向上、安定した定着フィルム405の回転、及び定着フィルム405への均一な熱伝達等を考慮して、ヒータ403と定着フィルム405の摺擦面に耐熱性グリスが塗布されている。耐熱性グリスは、基油であるパーフロロポリエーテルや、増稠剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等から構成されているダウコーニングアジア社のHP−300を用いた。
定着装置40の冷間時においては耐熱グリスの粘性が高くなっているため、定着フィルム405の擦動抵抗となる。また、加圧ローラ402においても、停止状態で定着フィルム405とのニップ部分に変形が生じる。これらが主に定着装置40の起動時の回転トルクを増大させる原因となる。
図3に示すように、定着装置40を定回転数制御された駆動モータ46(直流モータ)で回転駆動させて、耐熱性グリスを潤滑剤として用いた場合の起動負荷の変化を調べた。
図5の(a)に示すように、定着装置40は電源ONとともに、温度制御を始め、時刻t1、t2、t3におけるサーミスタTHの検出温度は、K1、K2を経てスタンバイ温度K3に制御される。この時、直流モータ46のトルクは、T1、T2を経てT3のように徐々にトルクが減少し、安定していく。定着装置40の起動時にトルクが大きくなる原因は、摺動部(摺擦部)に塗布された潤滑剤が低温のため粘度が高く、摺擦部の摩擦抵抗が大きくなって、定着フィルム405を回転させるためのトルクが大きくなるためである。
従って、所定時間を超える停止時間の後に再び電源をONにして起動する場合、定着装置40の温度を上げながら駆動モータ46を回転させると、起動初期のトルクは大きな値を示す。モータ出力は、モータトルクとモータ回転数の積に比例するので、(d)のような関係となる。
図6に示すように、低温時の潤滑剤は高粘度であるため、加圧ローラ402の起動初期には、内側面に潤滑剤が塗布された定着フィルム405の摩擦抵抗(粘性抵抗)が非常に大きくなる。
このため、加圧ローラ402の駆動モータ46の回転トルクが大きくなって、駆動モータ46がパルスモータの場合には脱調が発生して、定着フィルム405の駆動が停止することがあった。このため、駆動モータ46に高価で大型の高出力(高トルク)のモータが必要となる問題があった。
駆動モータ46のトルクを低減する対策として、特開平3−209491号公報や特開2000−338801号公報において、定着フィルム405の駆動開始を所定温度以上で行うことが提案されている。最初にヒータ403のみを起動して昇温状態とし、昇温によって潤滑剤が軟化して、ヒータ403と定着フィルム405の摩擦抵抗が減少するのを待って定着フィルム405の回転駆動を開始させている。
しかし、定着フィルム405の駆動開始を潤滑剤が溶融する所定温度以上で行って、ヒータ403と定着フィルム405の摩擦抵抗を減少させる方法は、摺動部に潤滑剤が存在する時に有効である。摺動部の潤滑剤が少量になったときは不利であり、画像形成が累積して摺動部の潤滑剤が枯渇した後は、さらに不利となる。
摺動部の潤滑剤が枯渇しないためには、潤滑剤を潤沢に塗布する構成が考えられる。また、定着装置40は、定着フィルム405の内側面に潤滑剤を塗布してヒータガイド404及びヒータ403に対する摺動性を上げているため、摺動性を上げるためにも、定着フィルム405に潤滑剤を潤沢に塗布する構成が考えられる。
しかし、ヒータガイド404及びヒータ403と定着フィルム405の間に潤滑剤を必要以上に介在させると、摺擦面で加圧されて外側へ漏れ出してしまう。長手方向へ漏れ出した潤滑剤は、定着フィルム405の両端部を回り込んで加熱ニップNに侵入する。加熱ニップNに潤滑剤が侵入すると、記録材Pが加熱ニップNに狭持搬送される際に加圧ローラ402が空回りして、スリップが発生し易くなる。このため、定着フィルム405に潤滑剤を潤沢に塗布することは許されず、外部から摺動部に新しい潤滑剤を補給することも好ましくない。
しかし、ヒータガイド404及びヒータ403と定着フィルム405の摺動部は加圧されているため、塗布された潤滑剤を摺動部から押し出す力が作用し、摺動部に介在する潤滑剤は少量となる。加熱ニップNに記録材Pの先端が通過する際には、記録材Pの先端がチューブを絞るように定着フィルム405を押し上げて、摺動部から潤滑剤を押し出してしまう。
そして、摺動部から押し出された潤滑剤が、摺動部を挟んだ上流側と下流側のヒータガイド404の縁に堆積する一方で、肝心の定着フィルム405の摺動部には十分な潤滑剤が無い状態となる。近年のプロセススピードの高速化に伴い、短時間でトナーを軟化させるために、加熱ニップNの加圧力が大きくなり、この傾向は顕著である。このため、起動時に潤滑剤を加熱して摺動性をあげようとしても、その効果が得られず、起動時の駆動モータ46に高トルクを必要とする。
ところで、上述したように、図3に示す加圧機構420は、定着ローラ402の変形を防止するために、定着装置40の停止後に、加熱ニップNの加圧力を解除する。このとき、上流側と下流側のヒータガイド404の縁に堆積した潤滑剤が摺動部へ自然に流れ込むことが期待できる。
しかし、いずれの場合も、摺動部の潤滑剤が枯渇する現象や、加熱劣化した現像剤が摺動部に停滞して摩擦抵抗が高まる現象を十分には阻止できなかった。
そこで、以下の実施例では、ヒータガイド404の上流側の縁に堆積した潤滑剤を摺動部(摺擦部)へ強制的に移動させる潤滑剤移動モードを実行可能にしている。実施例1、2では、処理ジョブの終了後、定着フィルム405を停止させて圧解除した後に定着フィルム405を再び回転させている。実施例3では、処理ジョブの終了後、放冷されていくベルトの温度をサーミスタで検知し、潤滑剤の粘度がある一定基準を満たす温度になったタイミングで定着フィルム405を回転させている。
<実施例1>
図7は実施例1の潤滑剤移動モードにおける潤滑剤の移動の説明図である。図7中、(a)は画像形成時の第一の加圧位置、(b)は潤滑剤移動モードの第二の加圧位置である。図8は実施例1の潤滑剤移動モードのフローチャートである。
図7の(a)に示すように、画像形成中、ヒータガイド404の上流側の部分Aに潤滑剤が堆積する。加圧機構420は、定着フィルム405を加圧ローラ402に第一の加圧力で加圧する。定着フィルム405を介してヒータガイド404及びヒータ403と加圧ローラ402の弾性層402bとを圧接させて、定着フィルム405回転方向における所定長さの加熱ニップNが形成される。この位置を第一の加圧位置とする。実施例1では、第一の加圧位置における定着フィルム405と加圧ローラ402の間の圧力(第一の加圧力)を0.2MPa程度とした。
ヒータ403は、ヒータガイド404の中央に固定された板状の抵抗加熱素子であって、定着フィルム405に対して凸部よりも0.2mm〜0.3mm後退させて配置されるので、ヒータガイド404との境界に潤滑剤の溜まりが形成される。溜まりの寸法は、回転方向の長さが8mmのヒータ403に対して、上流側と下流側に2mmずつである。
定着フィルム405は、加圧ローラ402に従動して回転する。潤滑剤は、動作初期時には、定着フィルム405の内側面における加熱ニップNに対応する領域に塗布されている。ヒータ403による加熱中は、潤滑剤が軟化することで、定着フィルム405の内側面に潤滑剤を膜状に保持して、定着フィルム405とヒータ403の摺動部の摩擦力を低下させる。
しかし、定着処理(像加熱処理)の累積処理枚数又は累積処理時間(累積パラメータ)の増加に伴って、ヒータガイド404の摺擦部よりも上流側の部分Aにはせき止められて停滞した潤滑剤の溜まりが形成される。一方、ヒータガイド404の摺擦部の下流側で窪みを形成するヒータ403の表面に隣接する部分Bには、入れ替わることのない潤滑剤が停滞して加熱による劣化が進行する。
そこで、図7の(b)に示すように、潤滑剤移動モードの制御を実行して、ヒータ403の表面に隣接する部分B(摺擦部と定着フィルム405との間)に、ヒータガイド404の摺擦部よりも上流側の部分Aに停滞していた潤滑剤を移動させる。潤滑剤移動モードでは、定着フィルム405の回転が停止された後に、加圧機構420を作動させて定着フィルム405をヒータ403から離間させ、定着フィルム405と加圧ローラ402を弱い圧力(第二の加圧力)で接触させる。この位置を第二の加圧位置とする。実施例1では、第二の加圧位置における定着フィルム405と加圧ローラ402の間の圧力(第二の加圧力)を0.1MPa以下とした。
そして、第二の加圧位置において、加圧ローラ402を再び回転させることにより、スリップを伴って定着フィルム405を約20度回転させて、加熱ニップN(摺擦部)の上流側の部分Aに堆積していた潤滑剤をヒータ403の表面に隣接する部分B(摺擦部と定着フィルム405との間)へ移動させる。
潤滑剤移動モードでは、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に潤滑剤を移動し易くするため、ヒータガイド404から定着フィルム405を離間させて潤滑剤が入り込む空間を確保する。そして、加熱ニップN近傍における定着フィルム405の軌道を変えることで、定着フィルム405の内側面が部分Aに堆積した耐熱性グリスと接触できるようにする。
図2を参照して図8に示すように、前回の潤滑剤移動モードの制御の実行から規定の累積画像形成枚数(1000枚)に達したプリントジョブ(処理ジョブ)が終了すると、潤滑剤移動モードの制御が開始される。制御部50は、ヒータ403の通電を停止し、駆動モータ46の駆動を停止して加圧ローラ402の回転を停止させる(S11)。そして、駆動停止直後に、制御部50は、加圧機構420を作動させて、定着フィルムユニット401を第一の加圧位置から第二の加圧位置に移動させ、第一の加圧力から第二の加圧力に低下させる(S12)。ここで、駆動停止直後とは、駆動モータ46への通電を停止した直後を意味しており、実施例1では1秒以内である。
制御部50は、加熱ニップNの裏側の部分Bへの潤滑剤の移動を促進するために、駆動モータ46を駆動して(S13)、加圧ローラ402を所定時間Tnだけ駆動させる(S14のYES)。定着フィルム405の外側面と加圧ローラ402の摩擦力により、定着フィルム405を駆動してスリップを伴って回転させる。
定着フィルム405は、部分Aに堆積した潤滑剤と接触した状態であるため、定着フィルム405の回転に伴って、図7の(b)に示すように、部分Aに堆積していた潤滑剤が部分Bへ移動する。加圧ローラ402を駆動する所定時間Tnは、スリップを勘案して、定着フィルム405が部分Aから部分Bまでの距離を移動する時間より大きい値に設定するのが望ましい。実施例1では0.5秒とした。
加圧ローラ402が停止して(S15)、所定時間T1の経過後(S16のYES)、制御部50は、加圧機構420を作動させて、定着フィルムユニット401を第二の加圧位置から第一の加圧位置に移動させる(S17)。第一の加圧位置に戻すことで、次のプリントジョブの開始時に、加圧動作によるプリント動作への時間のロスを減らすことが可能となる。
定着フィルムユニット401を第二の加圧位置から第一の加圧位置に移動させる場合、潤滑剤が温められた状態に比べ、放冷されて粘度が上がった状態の方が、加圧力により潤滑剤が押し出される量が少くて済む。そこで、部分Bの潤滑剤保持量を十分に確保するために、所定時間T1は、潤滑剤が放冷されて固化する時間とする。実施例1では、定着装置40とダウコーニングアジア社の耐熱性グリスHP−300を用いたので、所定時間T1を60秒とした。
その後、停止状態が10分以上続くと、加圧ローラ402の変形を防止するために、加圧機構420が、定着フィルムユニット401を第一の加圧位置から第二の加圧位置に移動させる。
実施例1の潤滑剤移動モードの制御によれば、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に適切な量の潤滑材を保持できるので、長寿命の定着装置40を提供できる。潤滑剤を回収する構成を用いることで、潤滑剤を追加することなく、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に適切な量の潤滑材を保持でき、駆動にかかる負荷を低減できる。
実施例1の潤滑剤移動モードの制御によれば、潤滑剤移動モードを1000枚の定着処理ごとに実行するため、プリントジョブの終了毎に毎回、潤滑剤移動モードを実施する場合に比べて定着装置40の長寿命化を実現できる。新品状態で潤滑剤の劣化が少ないときに部分Aの潤滑剤の劣化を小さく保ち、その結果、寿命末期で部分Bの潤滑剤の劣化が進んだときに部分Aの劣化が小さい潤滑剤を部分Bに供給できる。その結果、ヒータ403の表面に停滞する潤滑剤の劣化が遅くなり、潤滑剤移動モードを行わない場合に20万枚で定着画像に出ていたスリップの影響が、30万枚を超えても出てこなくなった。
なお、所定時間T1を用いずに、加圧ローラ402の駆動停止後すぐに第一の加圧位置に戻すことで、次のプリントジョブの待ち時間のロスを減らす構成にしてもよい。また、次のプリントジョブを開始するまで、第二の加圧位置のままで待機してもよい。いずれにせよ、本発明の目的は達成できる。
<実施例2>
実施例2では、図2に示す定着装置40において実施例1と同様な潤滑剤移動モードを実行するが、潤滑剤移動モードの実行頻度の制御が実施例1とは異なる。
すなわち、実施例1では、定着装置40の新品状態から寿命末期まで、一律1000枚の累積画像形成枚数ごとに潤滑剤移動モードを実行した。これに対して、実施例2では、定着装置40の新品状態では潤滑剤移動モードの実行頻度を低くし、定着処理の総累積量が増えて潤滑剤の劣化が進むのに合わせて、潤滑剤移動モードを高頻度に実行する。
図2に示すように、定着装置40の記録材処理枚数が増加していくと、潤滑剤は徐々に劣化していく。特に潤滑剤(耐熱性グリス)の基油分が蒸発により減少していくことで、潤滑剤の粘度が増加する傾向が見られる。表1に、潤滑剤移動モードを行わずに20万枚の画像形成を累積した後の図7の(b)に示す部分A及び部分Bにおける単位重量の潤滑剤中に含まれる基油の重量比を示す。
表1に示すように、ヒータ403の表面に接する部分Bの潤滑剤は、ヒータ403にて直接加熱されることで、基油分の減少が促進される。これに対して、ヒータガイド404の上流側の部分Aの潤滑剤は直接加熱されないために基油分の減少が少ない。
プリントジョブの終了時に実施例1の潤滑剤移動モードを実行すると、部分Aと部分Bの基油重量比が近づく。このため、実施例1の潤滑剤移動モードを実施しない場合に比べてヒータ403と定着フィルム405の摺動部の潤滑剤粘度が低く保たれ、その結果として、加圧ローラ402の駆動トルクも低く保たれる。
しかし、定着装置40が新品状態の場合は潤滑剤の劣化がほとんど無いため、基油の重量比が高くて潤滑剤粘度が低い状態で、つまり実際には必要の無い状況で潤滑剤移動モードが実行されてしまう。逆に、定着装置40の寿命末期には、潤滑剤の劣化が著しく進行しており、基油の重量比が低くて潤滑剤粘度が高い状態で、つまり直ちに実行すべき状況でも潤滑剤移動モードがなかなか実行されない。
そこで、実施例2では、潤滑剤移動モードの実施間隔を表2に示すように累積画像形成枚数に応じて変化させ、定着装置40の新品状態では実行間隔を長くする一方、寿命末期には実行間隔を短くしている。
図2に示すように、潤滑剤移動モードの実施判断用のカウンタ51と通算処理枚数用のカウンタ52とを設けており、制御部50は、記録材Pの定着動作を1枚行う度にカウンタ51、52のカウンタ値を+1加算する。カウンタ51のカウンタ値が表2に示すカウンタ52の枚数区分に対応する制御実施間隔を超えると、そのプリントジョブの終了を待って、実施例1と同様に潤滑材移動モードを実行する。潤滑材移動モードの実行後はカウンタ51のカウンタ値を0にリセットする。
実施例2の潤滑剤移動モードの制御(頻度制御)では、実施例1のような一定不変の実行間隔ではなく、潤滑剤の劣化に応じて短くなる実行間隔で潤滑剤移動モードを実施する。これにより、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部の摩擦負荷を長期間に渡って低く保つことができる。新品状態で部分Bの潤滑剤の基油分が比較的多いときに部分Aの潤滑剤の基油分の減少を抑制でき、その結果、寿命末期で部分Bの基油分が減少したときに、部分Aの基油分が多く保たれた潤滑剤を部分Bに供給できる。従って、実施例1の制御よりも定着装置40の一層の長寿命化を実現できる。
なお、実施例2では、潤滑剤移動モードの実施間隔の判断を行うための像加熱処理の累積パラメータとして定着枚数を用いたが、駆動モータ46の累積駆動時間で判断しても同様の効果を得ることができる。
<実施例3>
図9は実施例3の潤滑剤移動モードにおける潤滑剤の移動の説明図である。図10は実施例3の潤滑剤移動モードのフローチャートである。実施例3では、図2に示す定着装置40において実施例1と同様な潤滑剤移動モードを実行するが、第二の加圧位置で実行される定着フィルム405の回転タイミングが実施例1とは異なる。
すなわち、実施例1では、プリント直後の高温の潤滑剤(耐熱性グリス)の低粘度を利用して、潤滑剤を摺動部へ流動的に回収する。これに対して、実施例3では、高温から冷却されて粘度が上がっていく潤滑剤(耐熱性グリス)をヒータガイド404の凸部で掻き取ることにより、摺動部に回収する。実施例2では、潤滑剤の回収タイミングの検知手段として、定着フィルム405の温度を検知するサーミスタTHを用いている。
図9の(a)に示すように、ヒータガイド404には、潤滑剤を保持するための溝404aを設けている。溝404aの深さはそれほど深いものとはせず、0.5mmから1.5mm程度とし、長手方向の全域に設置する。摺動部における潤滑剤を適切な量に保ち、より長寿命化することを目的として、摺動部に潤滑剤を保持するための溝を設けた構成が特開2000−306655号公報に示される。
ヒータガイド404には、定着フィルム405の回転方向の上流側および下流側に凸部404b、404cを長手方向の全域に配置している。凸部404b、404cの高さは、404b<404cとする。挟み込みの加圧力を高めた第一の加圧力の状態である第一の加圧位置では、両方の凸部404b、404cが定着フィルム405に当接する。しかし、挟み込みの加圧力を低下させた第二の加圧力の状態である第二の加圧位置では、下流側の凸部404cが定着フィルム405に当接する一方、上流側の凸部404bが定着フィルム405から離間する。
第一の加圧位置において、定着フィルム405の回転方向におけるヒータガイド404の上流側の凸部404bと下流側の凸部404cとは定着フィルム405に圧接している。このため、定着フィルム405の回転に伴って、潤滑剤は、定着フィルム405からヒータガイド404へ移動する。潤滑剤は、ヒータガイド404の上流側の凸部404bにせき止められて加熱ニップNよりも上流側の部分Aに堆積する一方、加熱ニップNの加圧力によって加熱ニップNの下流側へ押し出される。
画像形成が終了して、ヒータ403の加熱を停止すると、摺動部の温度が低下して、潤滑剤が低温化し、図6で示したように粘度が高くなる。このため、その後に加圧機構420を作動させて、定着フィルム405をヒータ403から離間させても、ヒータ403と定着フィルム405の摺動面に潤滑剤は戻ってこない。このため、上述したように、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に潤滑剤を十分に保持することができず、摺動部での摺動性が低下する。
図2を参照して図10に示すように、制御部50は、プリントジョブ後に、ヒータ403の通電を停止し(S21)、駆動モータ46の駆動を停止して加圧ローラ402の回転を停止する(S22)。サーミスタTHは、放熱する定着フィルム405の内側面の温度を検出する。制御部50は、サーミスタTHの検出温度がTm以下になった際に(S23のYES)、加圧機構420を作動させて定着フィルムユニット401を第一の加圧位置から第二の加圧位置に移動させる(S24)。
ここで、温度Tmは、潤滑剤が放冷されて、ある一定の粘度を満たす温度とする。実施例3では、図6に示す温度と粘度の関係から、温度Tmを60℃とした。
制御部50は、駆動モータ46を作動させて加圧ローラ402を所定時間Tnだけ駆動させ、第二の加圧位置に移動した定着フィルムユニット401の定着フィルム405表面との摩擦力により、定着フィルム405を回転させる(S25)。
図7の(b)に示すように、定着フィルム405の回転方向におけるヒータガイド404の下流側の凸部404cは、上流側の凸部404bよりも放射方向に高い。このため、一定の粘度を有して定着フィルム405の内側面に盛り上がった潤滑剤は、凸部404cで掻き取られて、部分Bに回収される。
制御部50は、加圧ローラ402を所定時間Tn駆動した後に(S26のYES)、駆動モータ46の駆動を停止させる(S27)。その後、加圧機構420が定着フィルムユニット401を第二の加圧位置から第一の加圧位置に移動させる(S28)。定着フィルムユニット401を第一の加圧位置に戻すことにより、次のプリントジョブの際に加圧動作によるプリント待ち時間のロスを減らすことが可能となる。
また、ステップS26で、定着フィルム405を回転させるための加圧ローラ402の駆動時間をTnとしたが、加圧ローラ402の回転数Nn(回転角度ωn)で制御してもよい。
実施例3の潤滑剤移動モードによれば、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に適切な量の潤滑剤を保持し続けて、長寿命の定着装置40を提供できる。
実施例1では、潤滑剤移動モードを通じたベルト部材(405)の回転量は、摺擦部材(404)の回転方向の長さよりも短い。しかし、実施例3では、潤滑剤移動モードを通じて凸部404cが潤滑剤を回収するため、ベルト部材(405)の回転量は、1回転以上としてもよい。
<実施例4>
図11は実施例4の潤滑剤移動モードのフローチャートである。実施例4では、図2に示す定着装置40において実施例1と同様な潤滑剤移動モードを実行するが、潤滑剤移動モードの実行タイミングが実施例1とは異なる。
すなわち、実施例1では、プリント直後に潤滑剤移動モードを実行したが、実施例4では定着装置が冷却放置された後の起動時に潤滑剤移動モードを実行する。実施例4では、プリントジョブの終了後に放冷して固化したグリスを、次のプリントジョブの開始前に、実施例3と同様にヒータガイド404の凸部404cで掻き取って部分Bに回収する。
図2を参照して図10に示すように、加圧機構420によって定着フィルムユニット401が加圧ローラ402に圧接された状態で長期放置されると、加圧しておくローラ402の弾性層402bが変形する。そして、加圧ローラ402の弾性層402bが変形すると、画像形成時の定着画像に、定着ローラの1回転周期ごとに横帯状の画像不良が発生するという課題がある。
その対策として、上述したように、プリントジョブの終了後には、加圧機構420を作動させて、定着フィルムユニット401を第一の加圧位置から第二の加圧位置に移動させている(S31)。
定着装置40が電源OFFされて冷却した後、電源ONされると、駆動モータ46を作動させて加圧ローラ402を所定時間Tnだけ回転させ、定着フィルム405の外側面との摩擦力により定着フィルム405を回転させる(S32)。
図7の(b)に示すように、定着フィルム405の回転方向におけるヒータガイド404の下流側の凸部404cは、上流側の凸部404bよりも放射方向に高い。このため、実施例3の場合と同様に、冷却して定着フィルム405の内側面に盛り上がった潤滑剤は、凸部404cで掻き取られて、部分Bに回収される。
所定時間Tnが経過すると(S33)、制御部50は、駆動モータ46を停止させた後、加圧機構420を作動させて定着フィルムユニット401を第二の加圧位置から第一の加圧位置に移動させる(S34)。
制御部50は、ヒータ403に給電し、ヒータ403の長手方向の全長に渡って発熱させ(S35)、少し遅れて駆動モータ46を作動させて加圧ローラ402を回転させる(S36)。定着フィルム405は加圧ローラ402に従動して回転し、制御部50は、その後、サーミスタTHの検出温度が所定温度に収束するのを待って画像形成を開始する。ヒータ403を所定の温度に制御して定着フィルム405の温度を制御し、プリント準備の状態とする。
また、ステップS33で、定着フィルム405を回転させるための加圧ローラ402の駆動時間をTnとしたが、加圧ローラ402の回転数Nn(回転角度ωn)で制御してもよい。
実施例4の潤滑剤移動モードによれば、ヒータ403と定着フィルム405の摺動部に適切な量の潤滑剤を保持し続けて、長寿命の定着装置40を提供できる。
<その他の実施例>
特開2001−14327号公報には、図2に示す加熱手段(403)を誘導加熱装置に置き換えた定着装置が示される。このような定着装置においても実施例1〜4の潤滑剤移動モードを実施できる。この場合、定着フィルム405は電磁誘導発熱性フィルムとする必要があり、加熱手段として電磁誘導発熱性フィルムに磁束を作用させて該フィルムを発熱させる励磁コイルおよび磁性コアを用いることができる。
特開2002−108119号公報には、図2に示す加熱手段(403)をハロゲンランプヒータに置き換えた定着装置が示される。このような定着装置においても実施例1〜4の潤滑剤移動モードを実施できる。
実施例1〜4では、像加熱処理の累積パラメータが所定量に達するのを待って潤滑剤移動モードを自動的に実行させた。しかし、図2に示すように、操作パネル53を通じてメンテナンスモードの一覧を表示させ、ユーザーがその中から選択して手動で潤滑剤移動モードを実行してもよい。