JP6771704B2 - レーザレーダ装置 - Google Patents
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Description
レーザレーダ装置は、レーザ光を大気に送信したのち、大気中のエアロゾルに散乱された散乱光を受信し、散乱光の受信信号のドップラー周波数シフトを分析することで、エアロゾルの移動速度すなわち風速を計測している。
ドップラーレーダ装置を長期間に亘って動作させる場合、光増幅器の製品寿命は、レーザ光の出力を高める動作条件で光増幅器を使用すると、レーザ光の出力が低い動作条件で光増幅器を使用するときよりも低下する。
また、ビームスキャナの製品寿命は、レーザ光の送信方向を広範囲かつ高速に切り替える動作条件でビームスキャナを使用すると、レーザ光の送信方向を狭範囲かつ低速に切り替える動作条件でビームスキャナを使用するときよりも低下する。
したがって、レーザレーダ装置では、製品性能の向上と製品寿命の向上との両立を図ることが困難であるという課題があった。
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置を示す構成図である。レーザレーダ装置は、大きく分けて、光送受信部1と信号処理部11とを有する。
図1において、光送受信部1は、光源2、分配器3、パルス変調器4、光増幅器5、サーキュレータ6、送受光学系7、ビームスキャナ8、光合波器9および光受信機10を備えている。
光送受信部1は、レーザ光を大気中に照射し、大気中のエアロゾルにより散乱されたレーザ光、すなわち、照射したレーザ光に対する大気中からの散乱光を受信する。
光送受信部1は、散乱光をヘテロダイン検波することで、電気のアナログ信号である受信信号を得る。
分配器3は、光ファイバを介して、パルス変調器4と接続され、また、光ファイバを介して、光合波器9と接続されている。分配器3は、光源2から出力されるレーザ光を2つに分配し、分配後の一方のレーザ光をローカル光としてパルス変調器4に出力し、分配後の他方のレーザ光を光合波器9に出力する。
光増幅器5は、光ファイバを介して、サーキュレータ6と接続されている。光増幅器5は、パルス変調器4から出力されるレーザ光を増幅し、増幅後のレーザ光をサーキュレータ6に出力する。
送受光学系7は、サーキュレータ6から出力されるレーザ光のビーム径を広げ、ビーム径を広げたレーザ光をビームスキャナ8に出力するコリメートレンズなどの光学系である。また、送受光学系7は、ビームスキャナ8から出力される散乱光をサーキュレータ6に集光する。
ビームスキャナ8は、送受光学系7から出力されるレーザ光の送信方向を切り替えながら、レーザ光を大気に向けて送信する。また、ビームスキャナ8は、大気中のエアロゾルに散乱されたレーザ光を散乱光として受信し、散乱光を送受光学系7に出力する。
光受信機10は、光合波器9から出力される合波光をヘテロダイン検波することで電気信号に変換し、変換した電気信号であるアナログの受信信号を信号処理部11に出力する。
A/D変換器12は、光受信機10から出力される受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号であるデジタル受信信号を信号処理装置13に出力する。信号処理装置13は、A/D変換器12から出力されるデジタル受信信号を処理して風速を計測する。また、信号処理装置13は、光送受信部1を制御する。
信号処理装置13は、レンジビン分割器(分割器)201、周波数領域変換器(以下、「FFT処理器」と称する)202、積算処理器203、信号対雑音比算出器(以下、「SN比算出器」と称する)204、計測可能距離算出器205、周波数シフト算出器206、風速算出器207、機器制御部14およびデータ記憶部208を有する。
計測可能距離算出器205は、SN比算出器204と接続されている。計測可能距離算出器205は、それぞれのレンジビンのSN比から、それぞれのレンジビンでの風速が計測可能であるか否かを判定し、風速を計測可能な最長の距離である計測可能距離を算出する。
風速算出器207は、周波数シフト算出器206と接続されている。風速算出器207は、周波数シフト算出器206により算出される周波数シフトから、光送受信部1によりレーザ光が照射された方向の風速を算出する。算出される風速は、風ベクトルのレーザ光が照射された方向(視線方向とも呼ぶ)の成分である。また、風速算出器207は、複数の視線方向の風速(視線方向風速)から対象とする空間の風速ベクトルを算出する。
すなわち、機器制御部14は、積算された受信スペクトル212、SN比213および風速216のうちのいずれか1つ以上を参照して、レンジビン分割器201、積算処理器203、光源2、パルス変調器4、光増幅器5およびビームスキャナ8の動作のうちのいずれか1つ以上の動作を制御する。
機器制御部14は、信号処理装置13と同じコンピュータで動作するが、機能としては信号処理装置13の範囲外である。機器制御部14が動作を制御する対象は、機器制御部14を含まない信号処理装置13である。機器制御部14を、信号処理装置13とは別の計算機で実行するようにしてもよい。
ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
ここで、信号処理装置13においてハードウェアで実現される構成要素は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、または、これらを組み合わせたものが該当する。
信号処理装置13がソフトウェアまたはファームウェアなどで実現される場合、信号処理装置13の各構成要素の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
レーザレーダ装置は、ある特定の方向での距離に対する風速分布を計測するだけでなく、レーザ光の送信方向を切り替えることで、スキャンした領域全体における視線方向風速の分布(以下、「風速の空間分布」と称する)を計測する。
まず、光源2は、機器制御部14からレーザ光の発振指令に応じて、レーザ光を発振して、レーザ光を分配器3に出力する。分配器3は、光源2からレーザ光が入力されると、レーザ光を2つに分配する。分配器3は、分配後の一方のレーザ光をパルス変調器4に出力し、分配後の他方のレーザ光をローカル光として光合波器9に出力する。
図1に示すレーザレーダ装置では、光送受信部1が、パルス波形のレーザ光を光増幅器5に出力するパルス変調器4を備えている。しかし、これに限るものではなく、光送受信部1が、パルス変調器4の代わりに、連続波(CW:Continuous Waves)のレーザ光を光増幅器5に出力する変調器を備えるものであってもよい。CW方式の場合は、風速を測定する距離にビームを集光して、当該距離での風速を計測する。集光する距離を変えることで、距離ごとの風速を計測する。
送受光学系7は、サーキュレータ6から出力されるレーザ光のビーム径を広げ、ビーム径を広げたレーザ光をビームスキャナ8に出力する。
ビームスキャナ8から送信されたレーザ光は、大気中のエアロゾルに散乱される。このとき、大気中のエアロゾルは、移動しているので、エアロゾルに散乱されたレーザ光である散乱光の周波数は、エアロゾルの移動速度に相当する風速に応じてドップラーシフト(周波数シフト)を受ける。
ビームスキャナ8は、大気中のエアロゾルに散乱されたレーザ光である散乱光を受信し、散乱光を送受光学系7に出力する。
それぞれの距離での受信スペクトルから、それぞれの距離での風速を算出する処理、および視線方向速度から風ベクトルを算出する処理は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
風速算出器207は、ビームスキャナ8がレーザ光の送信方向を切り替えるため、距離方向の風速分布だけでなく、風速の空間分布を算出することができる。
以下、機器制御部14における制御例を具体的に説明する。
図4は、機器制御部14における第1の制御例を示すフローチャートである。図4の処理は、約10秒の周期で繰り返し動作する。
第1の制御例では、説明の簡単化のため、風速算出器207が、距離方向の風速分布を算出しているものとする。
機器制御部14は、信号処理部11により算出され、決められた積算時間で積算された、それぞれの距離でのスペクトルを解析することで、それぞれの距離についてのSN比を算出する(図4のステップST1)。スペクトルからSN比を算出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
SN比は、閾値Th1以下の場合、風速算出器207による風速の算出精度が、所望の算出精度よりも低くなる。そのため、SN比が閾値Th1よりも高い状態で、レーザレーダ装置を運用することが望ましい。SN比が閾値Th1よりも高い状態での運用は、製品性能を満足する動作条件に相当する。
要求距離は、風速算出器207によって風速の算出が可能な空間までの距離である計測可能距離の要求値である。計測可能距離の要求値は、事前に機器制御部14の内部メモリに格納されていてもよいし、データ記憶部208に記憶させていてもよい。要求距離は、外部から設定および変更が可能なものであってもよい。
点線は、要求距離に対応するSN比が閾値Th1よりも低い状態を示している。要求距離に対応するSN比が閾値Th1よりも低ければ、風速算出器207によるその時点での計測可能距離が、計測可能距離の要求値よりも小さいことを示している。
そして、機器制御部14は、閾値Th1以上であるSN比の中で最も遠い距離を、風速算出器207によるその時点での計測可能距離として決定する(図4のステップST2)。
機器制御部14は、その時点での計測可能距離が計測可能距離の要求値よりも大きければ(図4のステップST3:YESの場合)、その時点での計測可能距離が計測可能距離の要求値と同じになるように、光増幅器5においてレーザ光を増幅する増幅率を下げるように制御する。機器制御部14が、光増幅器5においてレーザ光を増幅する増幅率を下げることで、光増幅器5におけるレーザ光の出力が低下する(図4のステップST4)。
具体的には、光増幅器5が、レーザ媒質および励起用半導体レーザを備える光増幅器であれば、機器制御部14は、励起用半導体レーザの駆動電流を低下させることで、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を下げるように制御する。
機器制御部14は、その時点での計測可能距離が計測可能距離の要求値と等しくない、すなわち要求値よりも小さい場合(図4のステップST5:NOの場合)、光増幅器5におけるレーザ光のその時点での増幅率が、設定可能な最大の増幅率であれば(図4のステップST7:YESの場合)、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を維持する。機器制御部14が、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を維持することで、光増幅器5におけるレーザ光の出力は維持される(図4のステップST6)。
具体的には、光増幅器5が、レーザ媒質および励起用半導体レーザを備える光増幅器であれば、機器制御部14は、励起用半導体レーザの駆動電流を増加させることで、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を上げるように制御する。
ここで、設定可能な最大の増幅率が、例えば、励起用半導体レーザの駆動電流が定格値であるときの増幅率であれば、励起用半導体レーザの駆動電流が定格値以下の範囲で、光増幅器5を動作させることができる。
励起用半導体レーザの駆動電流が定格値以下の範囲で、光増幅器5を動作させる場合、励起用半導体レーザの駆動電流が定格値よりも大きい場合と比べて、光増幅器5の寿命が長くなり、消費電力も低下する。
図6は、機器制御部14における第2の制御例を示すフローチャートである。
機器制御部14は、風速算出器207が、距離方向の風速分布を算出するごとに、距離方向の風速分布を保存し、風速分布の時間変化を解析する。なお、通常時には、風速は例えば1秒周期で算出する。
機器制御部14は、決められた周期で決められた時間範囲での風速値を読み込む(図6のステップST10)。機器制御部14は、風速分布の時間変化を表す指標として、例えば、決められた周期(例えば、2分)で、決められた時間範囲(例えば、至近の10分)における風速の標準偏差を算出する(図6のステップST11)。
標準偏差が小さければ、風速の時間変化が緩やかであるため、積算処理器203においてスペクトルを積算する積算時間を長くして、SN比を高めることが可能である。積算処理器203におけるスペクトルの積算時間を長くして、SN比を高めれば、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させても、風速算出器207における風速分布の算出精度を維持することが可能である。例えば、風速を計測する周期を10秒にする。また、増幅率を例えば1/3に減少させる。
閾値Th2は、事前に機器制御部14の内部メモリに格納されていてもよいし、データ記憶部208に記憶させていてもよい。閾値Th2は、外部から設定および変更が可能なものであってもよい。他の閾値に関しても同様である。
機器制御部14は、標準偏差が閾値Th2よりも小さければ(図6のステップST12:YESの場合)、光出力が低下中であるか否かをチェックする(図6のステップST13)。機器制御部14は、光出力が低下中でない場合(図6のステップST13:NOの場合)、積算処理器203におけるスペクトルの積算時間を長くするように制御し、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を下げることで、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させる(図6のステップST14)。このとき、機器制御部14は、長くした積算時間が、ビームスキャナ8による送信方向の切替時間よりも長くなれば、送信方向の切替時間を長くするように制御する。光増幅器5におけるレーザ光の出力が低下することで、光増幅器5の寿命が長くなり、消費電力も低下する。機器制御部14は、光出力が低下中である場合(図6のステップST13:YESの場合)、低下中を維持する。
図7は、機器制御部14における第3の制御例を示すフローチャートである。
機器制御部14は、風速算出器207が、距離方向の風速分布を算出するごとに、距離方向の風速分布を保存し、風速分布の時間変化を解析する。
機器制御部14は、決められた周期で決められた時間範囲での風速値を読み込む(図7のステップS20)。機器制御部14は、風速分布の時間変化を表す指標として、例えば、決められた周期(例えば、2分)で、決められた時間範囲(例えば、至近の10分)における風速の標準偏差を算出する(図7のステップST21)。
標準偏差が小さければ、風速の時間変化が緩やかであるため、ビームスキャナ8における送信方向の切替速度を遅くしても、風速算出器207における風速分布の算出精度を維持することが可能である。
機器制御部14は、標準偏差が閾値Th3よりも小さければ(図7のステップST22:YESの場合)、スキャン速度が低下中か否かをチェックする(図7のステップST23)。機器制御部14は、スキャン速度が低下中でない場合(図7のステップST23:NOの場合)、ビームスキャナ8のスキャン速度を低下させるように制御する(図7のステップST24)。例えば、通常時にはスキャン速度が10度/秒であるのを、3度/秒に低下させる。
ビームスキャナ8が、例えば、モータ駆動式のウェッジスキャナまたはミラー型スキャナであれば、スキャン速度が低下することで、モータが故障に至るまでのビームスキャナ8の寿命を長くすることができる。
また、ビームスキャナ8が、例えば、スイッチ式のビームスキャナであれば、スイッチの切替速度を落とす(小さくする)ことで、スイッチが故障となる切替回数に至るまでの時間を長くして、スイッチとしての寿命を長くすることができる。
図8は、機器制御部14における第4の制御例を示すフローチャートである。
機器制御部14は、風速算出器207が距離方向の風速分布を算出するごとに、距離方向の風速分布を保存する。複数の方向での距離に対する風速分布を風速算出器207が算出すると、風速の空間分布の標準偏差を算出する。例えば、2方向で、例えば3個のレンジビンの風速が計算できたものとする。方向1でのレンジビンごとの風速を、近い方からv1、v2、v3のように計測できたとする。方向1とは異なる方向である方向2で、レンジビンごとの風速を、近い方からv4、v5、v6のように計測できたとする。風速v1〜v6の標準偏差を空間分布の大きさを表す指標として算出する。
標準偏差が小さければ、風速の空間変化が緩やかである。したがって、風速の急激な変化を生じる可能性が低いため、積算処理器203におけるスペクトルの積算時間を長くして、SN比を高めることが可能である。積算処理器203におけるスペクトルの積算時間を長くして、SN比を高めれば、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させても、風速算出器207における空間分布の算出精度を維持することが可能である。
機器制御部14は、標準偏差が閾値Th4よりも小さければ(図8のステップST32:YESの場合)、光出力が低下中か否かをチェックする(図8のステップST33)。機器制御部14は、光出力が低下中でない場合(図8のステップST33:NOの場合)、積算処理器203におけるスペクトルの積算時間を長くするように制御し、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を下げることで、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させる(図8のステップST34)。このとき、機器制御部14は、長くした積算時間が、ビームスキャナ8による送信方向の切替時間よりも長くなれば、送信方向の切替時間を長くするように制御する。光増幅器5におけるレーザ光の出力が低下することで、光増幅器5の寿命が長くなり、消費電力も低下する。
機器制御部14は、光出力が低下中である場合(図8のステップST33:YESの場合)、光増幅器5および信号処理部11におけるそれぞれの光出力を低下中での動作を維持する。
図9は、機器制御部14における第5の制御例を示すフローチャートである。第5の制御例では、第4の制御例と同様に、風速の空間分布を算出する。第5の制御例では、風速の空間分布に応じてビームスキャナ8のスキャン速度を制御する。
機器制御部14は、決められた個数(例えば3方向)のビーム方向の各距離の風速値(レンジビンの個数は例えば5個)を読み込む(図9のステップST40)。ST40は、例えば新たな1方向での各距離の風速が計測できた際に、実施される。
標準偏差が小さければ、風速の空間変化が緩やかである。したがって、風速の急激な変化を生じる可能性が低いため、ビームスキャナ8における送信方向の切替速度を遅くしても、風速算出器207における空間分布の算出精度を維持することが可能である。
機器制御部14は、標準偏差が閾値Th5よりも小さければ(図9のステップST42:YESの場合)、スキャン速度が低下中か否かをチェックする(図9のステップST43)。機器制御部14は、スキャン速度が低下中でない場合(図9のステップST43:NOの場合)、ビームスキャナ8のスキャン速度を低下させるように制御する(図9のステップST44)。例えば、通常時にはスキャン速度が10度/秒であるのを、3度/秒に低下させる。ビームスキャナ8のスキャン速度が低下することで、ビームスキャナ8の寿命が長くなる。
スキャン速度が低下中か否かをチェックする(図9のステップST45)。機器制御部14は、スキャン速度が低下中である場合(図9のステップST45:YESの場合)、ビームスキャナ8のスキャン速度を通常の値に戻す(図9のステップST46)。機器制御部14は、スキャン速度が低下中でない場合(図9のステップST45:YESの場合)、ビームスキャナ8における通常時のスキャン動作を維持する。
図10は、機器制御部14における第6の制御例を示すフローチャートである。第6の制御例では、第4の制御例と同様に、風速の空間分布を算出する。第6の制御例では、風速の空間分布に応じてパルス幅および時間ゲートの長さを制御する。
機器制御部14は、決められた個数(例えば3方向)のビーム方向の各距離の風速値(レンジビンの個数は例えば5個)を読み込む(図10のステップST50)。ST50は、例えば新たな1方向での各距離の風速が計測できた際に、実施される。
標準偏差が小さければ、風速の空間変化が緩やかである。したがって、風速の急激な変化を生じる可能性が低いため、パルス変調器4によりパルス変調されるレーザ光のパルス幅を長くするとともに、信号処理部11におけるレンジビン分割器201で使用する時間ゲートの長さを長くして距離分解能を粗くする。距離分解能を粗くすることで、SN比を高めることが可能である。
レーザ光のパルス幅を長くして、時間ゲートの長さを長くすることで、信号処理部11により時間ゲート内のデジタル受信信号がフーリエ変換される際の周波数帯域絞込み効果が高くなるため、SN比が高くなる。周波数帯域は、時間ゲートの長さに逆比例する。
SN比が高くなれば、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させても、風速算出器207における空間分布の算出精度を維持することが可能である。
機器制御部14は、標準偏差が閾値Th6よりも小さければ(図10のステップST52:YESの場合)、光出力が低下中か否かをチェックする(図10のステップST53)。機器制御部14は、光出力が低下中でない場合(図10のステップST53:NOの場合)、パルス変調器4によりパルス変調されるレーザ光のパルス幅を長くし、時間ゲートの長さを長くするように制御する。同時に、機器制御部14は、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を下げることで、光増幅器5におけるレーザ光の出力を低下させる(図10のステップST54)。光増幅器5におけるレーザ光の出力が低下することで、光増幅器5の寿命が長くなり、消費電力も低下する。
機器制御部14は、光出力が低下中である場合(図10のステップST53:YESの場合)、光増幅器5および信号処理部11におけるそれぞれの光出力を低下中での動作を維持する。
以上のことは、以下の実施の形態でも同様である。
実施の形態2では、信号処理装置13Aが、外部から大気の状態を表す外部情報を取得し、大気の状態が光送受信部1の停止条件に該当すれば、光送受信部1の動作を停止させる機能を備えるように、実施の形態1のレーザレーダ装置を変更した構成について説明する。
雨量計41は、レーザレーダ装置の近傍に設置されている。雨量計41は、レーザレーダ装置の近傍の雨量を観測して、雨量の観測値を信号処理装置13Aに出力する。カメラ42は、光送受信部1からレーザ光が送信される方向を撮像し、撮像結果であるカメラ画像を信号処理装置13Aに出力する。気象情報44は、気象関連機関から有線または無線で送信されてくる情報である。
また、機器制御部14Aは、図1に示す機器制御部14と同様に、積算された受信スペクトル212、SN比213および風速216のうちのいずれか1つ以上に基づき、光送受信部1および信号処理装置13のいずれか一つ以上の動作を制御する。
さらに、機器制御部14Aは、雨量計41から出力される雨量の観測値、カメラ42から出力されるカメラ画像または気象情報44に基づいて、光送受信部1からレーザ光が送信される方向の大気の状態を監視する。
機器制御部14Aは、大気の状態が光送受信部1の動作を停止する条件である計測停止条件221に該当すれば、光送受信部1の動作を停止させる機能を有する。データ記憶部208Aが計測停止条件221を記憶せずに、機器制御部14Aがその内部に光送受信部1の動作を停止する条件を記憶してもよい。
ただし、雨量計41、カメラ42および信号処理装置13A以外は、図1に示すレーザレーダ装置と同様であるため、ここでは、雨量計41、カメラ42および信号処理装置13Aの動作のみを説明する。
機器制御部14Aは、雨量計41から雨量の観測値が入力されると、雨量の観測値と計測停止条件221の一部として記憶された閾値Th7を比較する。雨量が多い状態では、光送受信部1から出力されるレーザ光が多くの雨滴に散乱されるため、レーザ光の送信距離が短くなり、要求距離での風速の計測ができなくなることがある。閾値Th7は、要求距離での風速の計測ができる最大の雨量に対応する値である。雨量の観測値が閾値Th7よりも大きい場合は、光増幅器5におけるレーザ光の増幅率を最大に設定しても、要求距離での風速を計測することが不可能である。
機器制御部14Aは、光増幅器5の動作を停止させたのち、雨量の観測値が閾値Th4以下になれば、光増幅器5、ビームスキャナ8および信号処理部11Aにおけるそれぞれの動作を再開させる。
機器制御部14Aは、カメラ42からカメラ画像が入力されると、カメラ画像を解析して視程を求める。カメラ画像から視程を求める処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
機器制御部14Aは、気象情報44が、光送受信部1からレーザ光が送信される方向の雨量が閾値Th9よりも大きい旨を示している場合、計測停止条件に該当すると判断して、光増幅器5の動作を停止させる。閾値Th9は、計測停止条件221の一部としてデータ記憶部208A記憶されている。閾値Th9は、雨量計41で計測する雨量に対する閾値Th7と同じでもよいし、異なってもよい。
実施の形態3は、機器制御部14の代わりに、機器制御部14Bを備え、機器制御部14Bが、光源2及びビームスキャナ8などの機器の動作を、長寿命になるように変更する条件(動作変更条件と呼ぶ)を、レーザレーダ装置の動作実績のデータに基づき調整する動作変更条件調整部230を有するように、実施の形態1のレーザレーダ装置を変更した構成について説明する。
Claims (10)
- レーザ光を大気中に照射し、レーザ光に対する大気中からの散乱光を受信して、前記散乱光をヘテロダイン検波することで受信信号を得る光送受信部と、
前記光送受信部により得られた受信信号を時間ゲートに分割する分割器、前記分割器により分割されたそれぞれの前記時間ゲートの受信信号を周波数領域に変換することで、前記時間ゲートごとの受信スペクトルを得る周波数領域変換器、前記時間ゲートごとの受信スペクトルを積算する積算処理器、前記積算処理器により積算された受信スペクトルである積算後受信スペクトルの信号対雑音比を算出する信号対雑音比算出器、前記積算後受信スペクトルから、前記光送受信部により照射されたレーザ光に対する周波数シフトを算出する周波数シフト算出器、および、前記周波数シフトから、前記光送受信部によりレーザ光が照射された方向の風速を算出する風速算出器を有する信号処理装置と、
前記風速に基づき、前記光送受信部および前記信号処理装置のいずれか一つ以上の動作を制御する機器制御部とを備えたレーザレーダ装置。 - 前記光送受信部は、
レーザ光を出力する光源と、
前記光源から出力されるレーザ光をパルス変調するパルス変調器と、
前記パルス変調器によりパルス変調されたレーザ光を増幅する光増幅器と、
前記光増幅器により増幅されたレーザ光の送信方向を切り替えるビームスキャナとを含んでおり、
前記機器制御部は、前記風速に基づき、前記分割器、前記積算処理器、前記光源、前記パルス変調器、前記光増幅器および前記ビームスキャナのそれぞれの動作のうちのいずれか1つ以上の動作を制御することを特徴とする請求項1記載のレーザレーダ装置。 - 前記機器制御部は、前記風速の時間変化に基づいて、前記光増幅器においてレーザ光を増幅する増幅率を制御するとともに、前記積算処理器において受信スペクトルを積算する積算時間を制御することを特徴とする請求項2記載のレーザレーダ装置。
- 前記機器制御部は、前記風速の時間変化に基づいて、前記ビームスキャナにおける送信方向の切替速度を制御することを特徴とする請求項2または請求項3記載のレーザレーダ装置。
- 前記機器制御部は、前記風速の空間分布に基づいて、前記光増幅器においてレーザ光を増幅する増幅率を制御するとともに、前記積算処理器において受信スペクトルを積算する積算時間を制御することを特徴とする請求項2から請求項4のうちのいずれか1項記載のレーザレーダ装置。
- 前記機器制御部は、前記風速の空間分布に基づいて、前記ビームスキャナにおける送信方向の切替速度を制御することを特徴とする請求項2記載のレーザレーダ装置。
- 前記機器制御部は、前記風速の空間分布に基づいて、前記パルス変調器によりパルス変調されるレーザ光のパルス幅、前記光増幅器においてレーザ光を増幅する増幅率および前記時間ゲートの長さのそれぞれを制御することを特徴とする請求項2から請求項6のうちのいずれか1項記載のレーザレーダ装置。
- 前記光送受信部からレーザ光が照射される方向の大気の状態を取得する外部情報取得部をさらに備え、
前記機器制御部は、前記大気の状態が前記光送受信部の停止条件に該当する場合、前記光送受信部の動作を停止させることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のレーザレーダ装置。 - 前記光増幅器は、レーザ媒質および励起用半導体レーザを有しており、
前記機器制御部は、前記励起用半導体レーザの駆動電流を制御することで、前記増幅率を制御することを特徴とする請求項3、請求項5および請求項7のうちのいずれか1項記載のレーザレーダ装置。 - 前記光送受信部および前記信号処理装置における動作実績を記憶する動作実績記憶部と、
前記風速に基づき、前記光送受信部および前記信号処理装置のいずれか1つ以上の動作を制御する動作変更条件を、前記動作実績記憶部に記憶された動作実績に基づいて調整する動作条件調整部とをさらに備えた請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載のレーザレーダ装置。
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