JP6771425B2 - 積層構造体及び成形体 - Google Patents

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Description

本開示は、積層構造体及び成形体に関する。
近年、自動車、又はスマートフォンもしくは腕時計等の電子製品などの分野の製品に対して、着色された色の濃度及び色相に優れるだけでなく、奥行き感という人間の感性に訴える質感が求められる場合がある。
上記のような質感は、製品に与えられる意匠性に由来する場合が多く、製品の見た目の印象に大きく影響を与え、製品自体の商品価値を左右するものである。製品の見た目の質感は、製品の種類により異なり、例えば色合い又は見た目の光の反射度合い等によっても大きく異なることがある。
上記に関連する技術として、例えば、ハードコート層に微粒子を含め、反射防止層の表面を凹凸形状にした防眩性ハードコートフィルムが開示され、防眩性に優れ、黒の濃さを向上させることが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
また、蒸着光学多孔層として、誘電体材料で形成された反射率減衰層と金属材料で形成された光吸収膜と隠蔽膜と備えた着色製品が開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、熱伝導性及び絶縁性の観点から、薄片化黒鉛を含む薄片化黒鉛層を有する複合シート、及び波長400nm〜700nmでの表面反射率及び裏面反射率が1%以下である光吸収部、遮光部、光吸収部より成る光吸収部材が開示されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
特開2013−178534号公報 特開2013−37040号公報 特開2011−189700号公報 特開2006−201697号公報
上記のように、従来から、防眩性を高める技術、光の反射抑制もしくは隠蔽性の付与又は黒色調の付与を目的とした技術が検討されている。しかしながら、いずれの文献も、黒色の質感を高めることが考慮された技術とは言い難い。
特に黒色の質感に関しては、黒色の色合いに加え、立体成形物とした場合の奥行き感のある質感を付与するため、ただ単に濃い黒ということではなく、黒度が高く、色味が加わった黒の色相を呈し、かつ、反射像が鮮鋭に映る表面光沢を有するが防眩性があって反射光が抑えられた色調、いわゆる漆調黒色が求められている。
例えば自動車等の内外装に用いられる材料、装飾又は塗料は、車体を保護し、耐久性を向上させることを目的とすることが多いが、最近では、人間の感性に訴える外観品質(例えば、内装材の場合は見た目の高級感、又は塗料の場合は塗装質感)の向上に対する要求が高い。塗装された製品の外観上の質感を向上させるには、製品を観察した際に視認される奥行き感を強くすることが重要となる。
古くから良好な質感を有する製品の代表例として、漆塗りの製品が知られている。特に黒漆塗りは、製品に奥行き感を持たせ、高級感が付与されるとされている。ところが、黒漆塗りは、職人らによる伝統工芸的な手法であることから、工業的生産に適していない課題がある。
しかしながら、従来より黒色系の材料として広く使用されているカーボンブラック及びカーボンナノチューブ等の炭素材料を単に適用するだけでは、黒濃度こそ実現できても、上記したように、黒度が高く、色味が加わった黒の色相を呈し、かつ、反射像が鮮鋭に映る表面光沢を有するが防眩性があって反射光が抑えられた漆調黒色を再現することは困難である。
漆調の黒色が漆以外の材料で再現されることは、近年の需要に沿うものと考えられる。
本開示は、上記に鑑みたものである。即ち、
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、色味(特に青味)を有し、かつ、黒度の高い漆調黒色を呈する積層構造体を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、色味(特に青味)を有し、かつ、黒度の高い漆調黒色を呈する成形体を提供することにある。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、基材上に配置された積層膜と、を備え、積層膜は、
400nm〜700nmの波長域の全域における平均消衰係数が0.01以上である光吸収層と、光吸収層からみて基材とは反対側に光吸収層に隣接させて配置され、かつ、屈折率が互いに異なる2以上の誘電体層を含み、2以上の誘電体層の間で相対的に低い屈折率を有する低屈折率誘電体層と、2以上の誘電体層の間で相対的に高い屈折率を有する高屈折率誘電体層と、を互いに接触させて積層された積層体を含む光学調整層と、を有し、かつ、以下に示す式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満たす、黒色調の積層構造体。
R1>R2>R3 式a
4.0%<R1<6.0% 式b1
4.0%<R2<6.0% 式b2
4.0%<R3<6.0% 式b3
R1は、400nm〜500nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表し、R2は、500nm〜600nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表し、R3は、600nm〜700nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表す。
<2> 低屈折率誘電体層の屈折率は、光吸収層の屈折率より低く、かつ、高屈折率誘電体層の屈折率は、光吸収層の屈折率より高い<1>に記載の積層構造体である。
<3> 低屈折率誘電体層の屈折率が、1.55以下である<1>又は<2>に記載の積層構造体である。
<4> 高屈折率誘電体層の屈折率が、1.70以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<5> 高屈折率誘電体層の屈折率と低屈折率誘電体層の屈折率との差の絶対値が、0.3以上である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<6> S偏光に対する反射率Rsが、下記式を満たす<1>〜<5>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
式中、θは、積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアンを満たし、Rs(θ)及びf(θ)は下記式で表される。
式中、θは、積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアンを満たす。λは、入射する光の波長であり、単位はnmである。A、B、C、D及びEは、それぞれ、A=4.813×10−13、B=−1.606×10−9、C=2.049×10−6、D=−1.212×10−3、E=1.846である。
なお、λはλの2乗を表し、λはλの3乗を表し、λはλの4乗を表す。
<7> 光吸収層が、下記式c及び式dを満たす<1>〜<6>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
N1>N2>N3>1.55 式c
K1>K2>K3>0.01 式d
上記において、N1は、400nm〜500nmの波長域の平均屈折率を表し、N2は、500nm〜600nmの波長域の平均屈折率を表し、N3は、600nm〜700nmの波長域の平均屈折率を表すである。K1は、400nm〜500nmの波長域の平均消衰係数を表し、K2は、500nm〜600nmの波長域の平均消衰係数を表し、K3は、600nm〜700nmの波長域の平均消衰係数を表すである。
<8> 光吸収層の厚みが、2μm以上である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<9> 光学調整層が、SiO、SiN、及びAlから選ばれる少なくとも一つの化合物を含む<1>〜<8>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<10> 光学調整層中の積層体が、低屈折率誘電体層の少なくとも2層と高屈折率誘電体層の少なくとも2層とを含み、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とが交互に積層された4層以上の積層体である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<11> 基材に対して積層膜が配置された側の表面粗さRaの算術平均値が、30nm以下である<1>〜<10>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<12> 積層膜の、光吸収層と積層体との界面における界面粗さの算術平均値並びに低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層との界面における界面粗さの算術平均値が、30nm以下である<1>〜<11>のいずれか1つに記載の積層構造体である。
<13> <1>〜<12>のいずれか1つに記載の積層構造体が2次元又は3次元に成形されてなる成形体である。
本発明の一実施形態によれば、色味(特に青味)を有し、かつ、黒度の高い漆調黒色を呈する積層構造体が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、色味(特に青味)を有し、かつ、黒度の高い漆調黒色を呈する成形体が提供される。
本開示の積層構造体の一例を示す概略断面図である。 実施例及び比較例の積層構造体の、400nm〜700nmの波長域における反射率を示す反射スペクトルである。 図2の部分拡大図である。 実施例1〜2の積層構造体の波長450nmでの反射率の入射角依存性を示すグラフである。 実施例1〜2の積層構造体の波長550nmでの反射率の入射角依存性を示すグラフである。 実施例1〜2の積層構造体の波長650nmでの反射率の入射角依存性を示すグラフである。 Niモスアイ構造膜の光学特性を示すグラフである。
以下、本開示の積層構造体及び成形体について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、屈折率及び消衰係数は、特に断りがない限り、波長550nmで分光エリプソメトリー法によって測定される値である。
また、平均屈折率及び平均消衰係数とは、特定の波長領域において、分光エリプソメトリー法により10nm以下で等間隔に測定した測定値を測定点の数で除した平均の値である。
<積層構造体>
本開示の積層構造体は、基材と、基材上に配置された積層膜と、を備えており、積層膜は、400nm〜700nmの波長域の全域における平均消衰係数が0.01以上である光吸収層と、光吸収層からみて基材とは反対側に光吸収層に隣接させて配置された光学調整層と、を有する積層構造を含み、かつ、以下に示す式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満たすものである。
R1>R2>R3 式a
4.0%<R1<6.0% 式b1
4.0%<R2<6.0% 式b2
4.0%<R3<6.0% 式b3
本開示における光学調整層は、屈折率が互いに異なる2以上の誘電体層を含み、2以上の誘電体層の間で相対的に低い屈折率を有する低屈折率誘電体層と、2以上の誘電体層の間で相対的に高い屈折率を有する高屈折率誘電体層と、を互いに接触させて(例えば3層以上からなる場合は低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とが交互に)積層された積層体を含む。
ここで、上記の式中におけるR1、R2及びR3はそれぞれ以下の通りである。
R1は、400nm〜500nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
R2は、500nm〜600nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
R3は、600nm〜700nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
本開示において、「2以上の誘電体層の間で相対的に低い屈折率を有する」又は「2以上の誘電体層の間で相対的に高い屈折率を有する」とは、積層体を形成している低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層との関係を示しており、複数の誘電体間の屈折率を対比した場合の屈折率の相対的な大小関係を指す。即ち、積層体に含まれる複数の誘電体層の各屈折率を対比した際、ある特定の誘電体層が、他の誘電体層に対して高い又は低い屈折率を有していることを意味している。
従来から、入射される光の吸収を抑制もしくは防止する技術、又は防眩性を付与する技術、あるいは反射光がメタリック調に見えないように反射光を減衰させてダーク調黒色を得る技術など、種々の検討がなされるに至っている。
しかしながら、例えば特許文献1のように、単に防眩性を得るために、微粒子を用いたり、表面に凹凸形状を付与すると、防眩効果こそ期待できるが、表面性状が艶消し状になって光沢感が著しく損なわれ、結果、見た目の奥行き感も低下しやすい。また、特許文献2〜4に記載の発明でも、反射光に対する減衰効果は得られると考えられるが、単に反射光を減衰しても、艶がなくなり、奥行き感が得られなくなるに過ぎない。
このように、表面に粒子が存在したり凹凸形状が形成される等により、入射した光が表面で散乱しやすい場合には、光沢の低下を招くばかりか、奥行き感も低下すると考えられる。従来より提案されている技術では、艶のある光沢を再現しつつ、しかも黒色の濃淡によるのではなく、漆調黒色が有する、色味が加わった黒の色相を呈し、かつ、奥行き感のある色調を実現する技術までは提供されるに至っていないのが実情である。
例えば黒漆塗りの場合、適度の光沢があることで艶のある表面性を発現し、これにより奥行き感が得られていると考えられる。更に、黒色に色味を持たせると、奥行き感が高まることに加え、色味のある黒色調となって高級感のある色相になると考えられる。
本開示は、上記に鑑み、基材上に積層膜を設けるにあたり、光吸収層と屈折率が大小異なる複数の誘電体層を含む光学調整層とを設け、かつ、波長域400nm〜500nmの平均反射率R1、波長域500nm〜600nmの平均反射率R2、及び波長域600nm〜700nmの平均反射率R3が、R1>R2>R3の関係を満たし、更にR1、R2及びR3の全てが4.0%〜6.0%に調整される。これにより、黒色は、単に黒色が濃く光沢があるだけの質感とは異なり、色味(例えば青味)がかった黒調を呈し、反射像が鮮鋭に映るが防眩作用が得られる程度に反射率が抑えられて奥行き感のある色合いとして現れる。そのため、いわゆる漆塗りされた製品に近い高級感が得られる効果がある。
このように、本開示の積層構造体は、黒度が高く、かつ、漆調の黒色が再現されたものとなる。
本開示の積層構造体は、以下に示す式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満たすものである。
R1>R2>R3 式a
4.0%<R1<6.0% 式b1
4.0%<R2<6.0% 式b2
4.0%<R3<6.0% 式b3
各式において、R1、R2及びR3の詳細は、以下の通りである。
R1は、400nm〜500nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
R2は、500nm〜600nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
R3は、600nm〜700nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光(誘電体層の表面に対する垂直入射光)に対する平均反射率を表す。
本開示の積層構造体では、R1、R2及びR3が式aの関係を満たし、400nm〜700nmの波長域における短波長側ほど平均反射率が大きくなっている。したがって、本開示の積層構造体は、400nm〜500nmに近い側の反射が強く、黒色に青味が加わった色味のある黒色調を有している。これにより、漆調黒色の色合いに似た色調を呈するものとなる。
また、R1、R2及びR3は、式b1〜式b3を満たし、いずれも4.0%を超え6.0%未満の範囲である。つまり、400nm〜700nmの波長域の平均反射率が4.0%を超えていることで、艶消し状の黒調にならず、適度に艶のある黒色調が得られる。また、400nm〜700nmの波長域の平均反射率が6.0%未満であることで、反射像が鮮鋭に映るが防眩作用が得られる程度に反射率が抑えられ、奥行き感のある色合いが得られる。
上記と同様の理由から、R1、R2及びR3は、以下の式b4、式b5及び式b6を満たす場合がより好ましい。
5.0%<R1<6.0% 式b4
4.0%<R2<5.0% 式b5
4.0%<R3<5.0% 式b6
本開示の積層構造体の平均反射率は、以下の方法により測定される。
積層構造体に対し、積層体の基材から最も遠い位置に配置された最外層をなす誘電体層の表面に対し、反射分光膜厚計(大塚電子株式会社)を用いて、400nm〜500nmの波長域での平均反射率R1、500nm〜600nmの波長域での平均反射率R2、及び600nm〜700nmの波長域での平均反射率R3を測定する。各平均反射率は、各々の波長範囲内における、例えば1nm毎に測定した反射率の合計を、その測定点の数で除した値として求められる。
本開示の積層構造体は、例えば、図1に示す積層構造を有するものでもよい。図1は、本開示の積層構造体の一例を示す概略断面図である。
積層構造体100は、図1に示すように、基材30の上に、光学調整層22と光吸収層24とを含む積層構造を有する積層膜20が設けられており、さらに光学調整層22は、高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層とが交互に配置された、高屈折率誘電体層12、低屈折率誘電体層14、高屈折率誘電体層16、及び低屈折率誘電体層18の4層の誘電体層からなる積層体で形成されている。
−積層膜−
本開示における積層膜は、400nm〜700nmの波長域の全域における平均消衰係数が0.01以上である光吸収層と、光吸収層の基材を有する側とは反対側に光吸収層に隣接させて配置された光学調整層と、を有する積層構造を含み、光吸収層と光学調整層との間に接触界面を有している。
積層膜中には、光吸収層を少なくとも1層有していればよく、必要に応じて、2層以上の光吸収層が設けられてもよい。この場合、2層以上の光吸収層の各層は、400nm〜700nmの波長域において、互いに平均消衰係数が異なる光吸収層であってもよい。
(光吸収層)
本開示における積層膜は、400nm〜700nmの波長域の全域における平均消衰係数が0.01以上である光吸収層を有する。平均消衰係数が0.01以上であることは、光吸収層が吸光のある層であり、透明性の層でないことを指しており、本開示における光吸収層は、400nm〜700nmの波長域の全域に亘って吸収を有している。
消衰係数は、複素屈折率中の屈折率以外の虚数成分であり、波長λ〜波長λにおける平均屈折率N及び平均消衰係数Kは、以下により定義される。
平均屈折率及び平均消衰係数は、波長λ〜λにおける平均値として求められる。
具体的には、平均屈折率及び平均消衰係数は、400nm〜700nmの波長域において例えば1nm毎に300点の屈折率又は消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定し、測定された値を平均して求められる。又は、平均屈折率及び平均消衰係数は、上記のように測定された値から近似曲線(屈折率分散曲線)n(λ)を求め、下記の式に基づいて算出される。

光吸収層は、金属を主成分とする材料を含む層でないことが好ましい。ここで、主成分とは、金属元素の層中における含有比率が50質量%以上であることをいう。
光吸収層としては、平均消衰係数が0.01以上の材料を用いて形成することができる。平均消衰係数が0.01以上の材料としては、例えば、光学素子用の反射防止黒色塗料、レンズ用黒墨材料等の黒色塗料などを用いることができる。平均消衰係数が0.01以上の材料としては、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、光学黒墨GT−1000(キヤノン化成株式会社)等が挙げられる。
光吸収層は、下記の式c及び式dを満たす態様が好ましい。
N1>N2>N3>1.55 式c
K1>K2>K3>0.01 式d
N1は、400nm〜500nmの波長域の平均屈折率を表し、N2は、500nm〜600nmの波長域の平均屈折率を表し、N3は、600nm〜700nmの波長域の平均屈折率を表す。K1は、400nm〜500nmの波長域の平均消衰係数を表し、K2は、500nm〜600nmの波長域の平均消衰係数を表し、K3は、600nm〜700nmの波長域の平均消衰係数を表す。
上記の式c及び式dを満たすことにより、後述の光学調整層の積層数を減らしつつ、良好な奥行き感のある黒色調が得られやすい。そのため、製造適性も向上する。
本開示の積層構造体では、N1、N2及びN3が式cの関係を満たし、400nm〜700nmの波長域における短波長側ほど平均屈折率が大きいことが好ましい。即ち、本開示の積層構造体は、式cを満たし、400nm〜500nmに近い側の屈折率が高くなるように調整することにより、黒色に青味が加わった色味のある黒色調を実現しやすい。これにより、光学調整層での屈折率の調整が容易になり、結果、漆調黒色の色合いに似た色調に調整しやすくなる。
上記と同様の理由から、N1、N2及びN3は、以下の式c1を満たす場合がより好ましい。
N1>N2>N3>1.60 式c1
本開示の積層構造体では、K1、K2及びK3が式dの関係を満たし、400nm〜700nmの波長域における短波長側ほど平均消衰係数が大きいことが好ましい。即ち、本開示の積層構造体は、式dを満たし、400nm〜500nmに近い側ほど平均消衰係数が高くなるように調整されることにより、黒色に青味が加わった色味のある黒色調を実現しやすい。これにより、光学調整層での屈折率の調整が容易になり、結果、漆調黒色の色合いに似た色調に調整しやすくなる。
上記と同様の理由から、K1、K2及びK3は、以下の式d1を満たす場合がより好ましい。
K1>K2>K3>0.02 式d1
光吸収層の厚みとしては、2μm以上の範囲であることが好ましい。
光吸収層の厚みが2μm以上であると、黒の色相を確保するだけでなく、光に対する吸収性をより高めることができる。
光吸収層の厚みとしては、4μm以上がより好ましい。また、光吸収層の厚みの上限値は、特に制限はなく、例えば200μm以下としてもよい。
(光学調整層)
本開示における積層膜は、既述の光吸収層の基材を有する側とは反対側に、光吸収層に隣接させて配置された光学調整層を有する。
本開示における光学調整層は、屈折率が互いに異なる2以上の誘電体層を含み、2以上の誘電体層の間で相対的に低い屈折率を有する低屈折率誘電体層と、2以上の誘電体層の間で相対的に高い屈折率を有する高屈折率誘電体層と、が積層された積層体を有する。
光学調整層は、400nm〜700nmの波長域における平均消衰係数が0.01未満である層であることが好ましい。
光学調整層は、2層以上含まれることが好ましく、より好ましくは3層以上である。光学調整層は、積層体を有する積層構造となっており、積層構造体の反射スペクトルを調整して奥行き感を発現させる役割を担う。
光学調整層による反射スペクトルの調整は、積層体を形成する複数の誘電体層の膜厚及び屈折率を最適化することにより行うことができる。
低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層は、それぞれ少なくとも1層有していればよい。光学調整層は、低屈折率誘電体層及び高屈折率誘電体層の双方をそれぞれ2層以上有する4層以上の誘電体層を含む積層体、又は低屈折率誘電体層及び高屈折率誘電体層の一方を1層有し、かつ、他方が2層以上の層からなり、全体として3層以上の誘電体層を含む積層体であってもよい。
また、積層体中の低屈折率誘電体層及び高屈折率誘電体層の数は、それぞれ偶数層でも奇数層でもよい。積層体中の低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とは、同数であってもよいし、異なる数で含まれた態様であってもよい。
好ましい光学調整層は、4層以上の誘電体層を含む積層体を有する態様である。
中でも、光学調整層は、低屈折率誘電体層の少なくとも2層と高屈折率誘電体層の少なくとも2層とを含み、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とが交互に積層された4層以上の積層体とされている態様が好ましい。
上記態様であると、奥行き感に優れたものとなり、しかも製造上も容易である。
低屈折率誘電体層の屈折率が、光吸収層の屈折率より低く、かつ、高屈折率誘電体層の屈折率が、光吸収層の屈折率より高い場合が好ましい。
光吸収層の屈折率を中心として低屈折率側と高屈折率側とを、屈折率の異なる複数の誘電体層によって調整されるので、層数を少なく抑えながら、色味のある黒色調が得られやすく、かつ、奥行き感のある色調に調整しやすい。
低屈折率誘電体層の屈折率としては、1.55以下の範囲であることが好ましい。
低屈折率誘電体層の屈折率が1.55以下であると、高屈折率誘電体層との間の屈折率差を確保しやすく、色味と奥行き感のある漆調黒色に調整しやすい。
高屈折率誘電体層の屈折率としては、1.70以上の範囲であることが好ましい。
高屈折率誘電体層の屈折率が1.70以上であると、低屈折率誘電体層との間の屈折率差を確保しやすく、色味と奥行き感のある漆調黒色に調整しやすい。
高屈折率誘電体層の屈折率と低屈折率誘電体層の屈折率との差の絶対値は、0.3以上であることが好ましい。
高屈折率誘電体層の屈折率と低屈折率誘電体層の屈折率との差の絶対値が0.3以上であると、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層との間の屈折率差を確保しやすく、色味と奥行き感のある漆調黒色に調整しやすい。
S偏光に対する反射率Rsは、下記式を満たしていることが好ましい。
S偏光は、積層膜の誘電体層の表面に直交し入射光及び反射光を含む入射面に垂直に電解が振動する偏光をいう。
上記の式において、θは、積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアン(0°≦θ≦60°)を満たし、Rs(θ)及びf(θ)は下記式で表される。
上記の式において、θは、積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアンを満たす。
λは、入射する光の波長であり、単位はnmである。なお、λはλの2乗を表し、λはλの3乗を表し、λはλの4乗を表す。
A、B、C、D及びEは、それぞれ、A=4.813×10−13、B=−1.606×10−9、C=2.049×10−6、D=−1.212×10−3、E=1.846である。
f(θ)は、理想的な反射スペクトルからのずれを示すファクタであり、黒漆塗りの色調を得るのに必要とされる値として経験的に求まる値である。f(θ)は、上記式から明らかなように、入射角θが大きくなると値が大きくなる。即ち、入射角θが積層膜における積層体の誘電体膜の表面に対して直角(即ちθ=0°)である場合を基準とし、入射角θが0°からずれた場合、反射率も垂直入射した際の反射率からずれを生じて変化することを考慮したものである。
したがって、Pは、入射角θの範囲で反射率が値の小さい側に許容される範囲でずれを生じた場合の最小値を示し、Qは、入射角θの範囲で反射率が値の大きい側に許容される範囲でずれを生じた場合の最大値を示す。よって、S偏光に対する反射率RsがP〜Qの範囲を満足しているということは、入射角θの範囲では斜めから光が入射した場合も、漆調黒色に似た色調が再現されることを示している。
光学調整層は、SiO、TiO、Al、SiN、SiON、Ta、ZrO、MgFなどの無機物の層でもよい。
光学調整層は、スパッタリング法によって好適に形成することができる。
また、反射スペクトルを調整するのに適した樹脂を含有する塗布用調整液を用いた塗布法によって形成されてもよい。この場合、光学調整層は、塗布層で形成される。
光学調整層は、マイクロオーダーないしナノオーダーの微粒子等の含有量が、層固形分に対して30質量%未満であることが好ましく、更には、上記の微粒子を含まない(ゼロ質量%である)ことがより好ましい。上記の微粒子等を含有すると、微粒子等の大きさにもよるが、散乱効果が生じやすく、光沢を損ないやすく、高い奥行き感が得られなくなる場合がある。
光学調整層は、膜の平坦性、耐水性、耐擦傷性の観点から、SiO、SiN、及びAlから選ばれる少なくとも一つの化合物を含む層として設けられていることが好ましい。
低屈折率誘電体層及び高屈折率誘電体層の層厚としては、1nm〜1μmが好ましく、3nm〜0.5μmがより好ましい。層厚が1nm以上であると、膜の平坦性の向上の点で有利である。また、層厚が1μm以下であると、干渉(反射率)の調整が行いやすい。
また、光学調整層の厚みとしては、干渉(反射率)の調整の行い易さと耐傷性を両立させる観点から、0.05μm〜2μmが好ましい。
−基材−
本開示の積層構造体は、基材を有する。
基材の材料としては、例えば、樹脂材料、無機材料などが挙げられる。
樹脂材料及び無機材料は、透明性のある材料であることが好ましい。ここで、「透明性」があるとは、波長400nm〜700nmの可視光の透過率が80%以上であることを意味する。したがって、透明性の樹脂材料又は無機材料を用いた基材は、波長400nm〜700nmの可視光の透過率が80%以上である基材を指し、基材の可視光の透過率は90%以上であることが好ましい。
樹脂材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂などが挙げられる。
無機材料としては、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子;透光性圧電セラミックス(PLZT)等のセラミックス;石英;蛍石;サファイア基材;などが挙げられる。
基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、10μm〜5000μmが好ましく、25μm〜250μmがより好ましく、50μm〜200μmが更に好ましい。
また、基材の形状は、特に制限はなく、例えば、ロール状の形態のもの、ロール状に巻き取れるほどの可撓性を有しないもの、可撓性が低いが負荷を与えることで曲がるもののいずれでもよい。
基材は、単一で用いられてもよいし、複数の基材を重ねて重層構造として用いられてもよい。複数の基材を重ねた重層構造を有する場合、同一の基材を重ねた重層構造でもよいし、異なる基材を組み合わせて重ねた重層構造でもよい。
本開示の積層構造体は、基材に対して積層膜が配置された側の表面粗さRaが、算術平均値で30nm以下である態様が好ましい。表面粗さが30nm以下の平滑な表面であることで、表面の粗れに起因する艶やかさの低下が抑えられ、より艶のある光沢を維持することができ、ひいては奥行き感に優れたものとなる。
表面粗さRaとしては、15nm以下がより好ましい。表面粗さRaは、値が小さいほど好ましいが、下限値としては例えば0.1nm以上としてもよい。
表面粗さRaは、日本工業規格(JIS)B0601(2001年)に準拠して測定される値であり、例えば、原子間力顕微鏡(ブルガー社製)を用いて5μm四方の領域の表面情報を測定した値から求めることができる。
本開示の積層構造体は、積層膜の、光吸収層と積層体との界面における界面粗さの算術平均値、並びに、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層との界面における界面粗さの算術平均値が、30nm以下である態様が好ましい。
界面粗さが30nm以下の平滑な表面であることで、界面の粗れに起因する艶やかさの低下が抑えられ、より艶のある光沢を維持することができ、ひいては奥行き感に優れたものとなる。
界面粗さとしては、15nm以下がより好ましい。界面粗さは、値が小さいほど好ましいが、下限値としては例えば0.1nm以上としてもよい。
界面粗さは、イオンビームエッチング法により積層体の断面を切り出し、切り出した断面を透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社)によって観察し、界面の写真を取得して測定される値である。
<成形体>
本開示の成形体は、既述の本開示の積層構造体が2次元又は3次元に成形されてなるものである。本開示の成形体は、既述の積層構造体を用いて成形されているので、色味(特に青味)を有し、かつ、黒度の高い漆調黒色を呈する。したがって、単に黒色が濃く光沢があるだけの質感とは異なり、例えば青味がかった黒調を呈し、その黒調は、反射像が鮮鋭に映るが反射率が抑えられて奥行き感のある色合いとして現れる。そのため、いわゆる漆塗りされた製品に近い高級感が得られる。
成形は、積層構造体を2次元又は3次元に成形できればいずれの方法で成形されてもよく、型を用いた成型でもよい。
成型方法の例としては、熱成型又は真空成型などが好適に挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(実施例1)
−積層構造体の作製−
10cm四方の大きさに裁断した石英(Qz)基材の上に、光学黒墨GT−1000(キヤノン化成株式会社)を、濃度を調節して塗布し、乾燥させて乾燥厚みが4μmの光吸収層を形成した。その後、光吸収層の上に反応性スパッタリングにより、下記表1に示すようにSiO層とAl層とを交互に積層し、下記表1に示す厚みを有する酸化ケイ素(SiO)層と酸化アルミニウム(Al)層とがそれぞれ2層ずつ積層された積層体である光学調整層を形成した。
以上のようにして、黒色調の積層構造体を作製した。
なお、本実施例において、膜厚は、薄膜計算ソフトEssential Macleod(Thin Film Center社)を用いてシミュレーションし、表1に示す最適化された膜厚にて形成した。以下に示す他の実施例についても同様である。
SiO層及びAl層の屈折率を下記表1に示す。なお、SiO層及びAl層の屈折率は、分光エリプソメトリー法によって測定した波長550nmにおける値である。
また、光吸収層の平均屈折率及び平均消衰係数を下記表2に示す。なお、光吸収層の平均屈折率及び平均消衰係数は、400nm〜700nmの波長域において1nm毎に300点の屈折率又は消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定し、測定された値を平均して求めた。
なお、上記と同様に測定したSiO層及びAl層の消衰係数は、0.01未満であり、SiO層及びAl層はいずれも透明性を有していた。
−測定及び評価−
作製した積層構造体について、以下の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表10及び図2〜図6に示す。
(1)平均反射率
イ.測定:
作製した積層構造体のAl層の表面に対し、反射分光膜厚計(大塚電子株式会社)を用いて、400nm〜500nmの波長域での平均反射率R1、500nm〜600nmの波長域での平均反射率R2、及び600nm〜700nmの波長域での平均反射率R3を測定した。各平均反射率は、各々の波長範囲内において1nm毎に測定した反射率の合計をその測定点の数で除して求めた。
そして、平均反射率R1、R2及びR3がそれぞれ、式a(R1>R2>R3)並びに式b1、式b2及び式b3(いずれも4.0%〜6.0%の範囲)の関係式を満たす場合を「G」とし、上記の関係式を満たさない場合を「NG」として評価した。測定及び評価の結果を表10に示す。
ロ.黒色調:
上記で測定した平均反射率の、400nm〜700nmにおけるスペクトルを図2及び図3に示す。得られたスペクトルを観察し、下記の評価基準にしたがって、スペクトル形状の判定及び黒色調の評価を行った。
<スペクトル判定の評価基準>
A:黒漆塗りの反射スペクトルとほぼ同等の形状を有している。
B:黒漆塗りの反射スペクトルと形状の異なる形状を有している。
<黒色調の評価基準>
A:400nm〜500nmの波長域の反射率が、500nmを超える波長域の反射率に比べて高くなっており、青味がかった黒色調であった。
B:400nm〜500nmの波長域の反射率が、500nmを超える波長域の反射率と同程度以下であり、青味が加わっていない黒色であった。
なお、「青味が加わっていない黒色」では、例えば、色味が無い、又は緑味もしくは赤味が加わった黒色である場合が含まれる。
ハ.角度依存性:
上記で測定した平均反射率のうち、波長450nm、550nm、及び650nmにおける平均反射率の、入射した光の入射角に対する依存性を下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:全ての波長において、平均反射率がP≦Rs(θ)≦Qを満たしている。
B:いずれかの波長において、平均反射率がP≦Rs(θ)≦Qを満たしていない。
(2)奥行き感
作製した積層構造体に対し、1000ルクスの蛍光灯下、下記の方法により30人の評価者による奥行き感の評価を行った。
評価者に対し、同じサイズの後述の比較例1のサンプルと、金属膜にニッケル(Ni)めっき(エビナ電化工業株式会社)が施され、図7に示すように400nm〜700nmの可視域の全域に亘る反射率が1%以下であるNiモスアイ構造膜と、実施例1で作製した積層構造体と、の3種を観察させ、3種のうち、高級感を有し、かつ、質感が高いと判断されるものを選択させて、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:3種のうち、実施例1の積層構造体を選択した評価者が15人以上である。
B:3種のうち、実施例1の積層構造体を選択した評価者が15人未満である。
(3)表面粗さ及び界面粗さ
作製した積層構造体のAl層の表面(光学調整層1の露出面)の表面粗さRaを、原子間力顕微鏡(ブルガー社製)を用い、5μm四方の領域の表面情報を測定することにより求めた。表面粗さの結果を表1に示す。
また、作製した積層構造体の黒墨を用いた光吸収層とSiO層(光学調整層4)との界面における界面粗さを透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社)によって観察し、界面の写真を取得して測定した。この際、イオンビームエッチング法により積層構造体の断面を切り出し、切り出した断面について行った。界面粗さの結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、光学調整層を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色調の積層構造を作製し、かつ、測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表10及び図2〜図6に示す。なお、SiN層及びSiO層の形成は、スパッタリングにより行った。
作製した積層構造体は、SiN層/SiO層/SiN層/SiO層/黒墨層/基材の層構造となっている。


(実施例3〜5)
実施例1において、光学調整層を下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、5層又は6層からなる光学調整層を有する黒色調の積層構造体を作製し、かつ、測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表10及び図2〜図3に示す。表面粗さの測定は、実施例3〜4では光学調整層2の露出面に対して行い、実施例5では光学調整層1の露出面に対して行った。また、界面粗さの測定は、積層構造体の黒墨を用いた光吸収層と光学調整層6との界面について行った。
なお、MgF層の形成は、電子ビーム蒸着法により行い、SiN層、SiO層、TiO層、及びTa層の形成は、いずれもスパッタリングにより行った。
作製した積層構造体は、例えば実施例3では、MgF層/SiN層/SiO層/SiN層/MgF層/黒墨層/基材の層構造となっている。実施例4〜5についても、同様に積層構造となっている。

(比較例1)
実施例1において、光吸収層の上に光学調整層を形成しなかったこと(表4参照)以外は、実施例1と同様にして、黒色調の積層構造体を作製し、かつ、測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表10及び図2〜図3に示す。
(比較例2〜6)
実施例1において、光学調整層及び光吸収層をそれぞれ下記表4〜表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、4層又は5層からなる光学調整層を有する黒色調の積層構造体を作製し、かつ、測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、下記表10及び図2〜図3に示す。
ここで、光学調整層であるSiN層、クロム(Cr)層、及びSiO層の形成は、いずれも反応性スパッタリングにより行った。
また、光吸収層である銀(Ag)層及びCr層の形成は、いずれも反応性スパッタリングにより行った。
なお、薄膜計算ソフトEssential Macleod(Thin Film Center社)によるシミュレーションに際し、Cr及びAgの光学定数(平均屈折率、平均消衰係数)は、下記表7〜表8に示すように、Edward D. Palik, Handbook of Optical Constants of Solidsのデータを使用した。
また、ブラック(黒)レジストは、チタンブラックレジスト(カラーモザイク、富士フイルム株式会社)を用いた。
なお、ブラック(黒)レジストの光学定数として、Siウエハ上に塗布して形成された厚み200nmの塗膜に対して分光エリプソメトリー法によって平均屈折率及び平均消衰係数を実測し、各実測値を薄膜計算ソフトEssential Macleodに組み入れて行った。平均屈折率及び平均消衰係数の実測値を下記表9に示す。







実施例1〜2では、図2〜図3に示す反射スペクトルに表されるように、黒漆塗りの反射スペクトルと似通ったスペクトル形状が得られた。そして、実施例1〜2の積層構造体は、単に黒色が濃く光沢があるだけの質感とは異なり、青味がかった黒調を呈しており、反射像が鮮鋭に映るが防眩作用が得られる程度に反射率が抑えられて、奥行き感のある色調が得られた。即ち、膜厚の調整によって、色味のある黒色調と奥行き感とを兼ね備えた漆調黒色を実現することが分かる。
また、光の入射角を0°、15°、30°、45°、及び60°とした際の反射率を図4〜図6に示す。図4〜図6に示されるように、S偏光に対する反射率Rsが、既述のP≦Rs≦Qを満たして入射光の入射角に依存しない良好な色調を有している。したがって、積層構造体を斜め方向から観察した場合でも、漆調黒色として現れ、黒漆に似た性状が得られている。
また、実施例1〜5において、光吸収層として用いた黒墨材料は、既述の式c(N1>N2>N3>1.55)及び式d(K1>K2>K3>0.01)を満たすものであり、青味がかった黒漆調の黒色が実現されており、奥行き感のある良好な漆調黒色が得られた。即ち、式c及び式dを満たす実施例では、光学調整層による色味の調整が行いやすいと考えられる。
これに対し、比較例1〜6の積層構造体では、いずれも平均反射率が式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満たしていない。したがって、図2〜図3に示されるように、反射スペクトルは、黒漆塗りの反射スペクトルと異なる形状となっており、高い奥行き感を得ることはできなかった。
特に比較例2、3及び6は、光吸収層の上に誘電体層と金属層とが積層された層構造となっており、本開示の積層構造体のように、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とが交互に積層された層構造を有していない。そのため、いずれも平均反射率が式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満足し得ないものであった。
また、比較例2及び4で用いたブラックレジスト、比較例3で用いたAg層、並びに比較例5で用いたCr層は、既述の式c(N1>N2>N3>1.55)及び式d(K1>K2>K3>0.01)を満たさず、実施例に比べて、黒色調及び奥行き感において劣っていた。
本開示の積層構造体は、自動車、エレクトロニクス製品、建材等の幅広い分野において、内外装に用いられる材料用途、装飾用途、塗料用途などに好適に適用することができる。

Claims (13)

  1. 基材と、前記基材上に配置された積層膜と、を備え、
    前記積層膜は、
    400nm〜700nmの波長域の全域における平均消衰係数が0.01以上である光吸収層と、
    前記光吸収層からみて前記基材とは反対側に前記光吸収層に隣接させて配置され、かつ、屈折率が互いに異なる2以上の誘電体層を含み、前記2以上の誘電体層の間で相対的に低い屈折率を有する低屈折率誘電体層と、前記2以上の誘電体層の間で相対的に高い屈折率を有する高屈折率誘電体層と、を互いに接触させて積層された積層体を含む光学調整層と、
    を有し、かつ、
    以下に示す式a、並びに、式b1、式b2及び式b3を満たす、黒色調の積層構造体。
    R1>R2>R3 式a
    4.0%<R1<6.0% 式b1
    4.0%<R2<6.0% 式b2
    4.0%<R3<6.0% 式b3
    R1は、400nm〜500nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表し、R2は、500nm〜600nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表し、R3は、600nm〜700nmの波長域での、積層体の積層方向に平行な入射光に対する平均反射率を表す。
  2. 前記低屈折率誘電体層の屈折率は、前記光吸収層の屈折率より低く、かつ、前記高屈折率誘電体層の屈折率は、前記光吸収層の屈折率より高い請求項1に記載の積層構造体。
  3. 前記低屈折率誘電体層の屈折率が、1.55以下である請求項1又は請求項2に記載の積層構造体。
  4. 前記高屈折率誘電体層の屈折率が、1.70以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層構造体。
  5. 前記高屈折率誘電体層の屈折率と前記低屈折率誘電体層の屈折率との差の絶対値が、0.3以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層構造体。
  6. S偏光に対する反射率Rsが、下記式を満たす請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層構造体。

    式中、θは、前記積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアンを満たし、Rs(θ)及びf(θ)は下記式で表される。

    式中、θは、前記積層膜の積層方向に入射する光の入射角を表し、0ラジアン≦θ≦π/3ラジアンを満たす。λは、入射する光の波長であり、単位はnmである。A、B、C、D及びEは、それぞれ、A=4.813×10−13、B=−1.606×10−9、C=2.049×10−6、D=−1.212×10−3、E=1.846である。
  7. 前記光吸収層が、下記式c及び式dを満たす請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層構造体。
    N1>N2>N3>1.55 式c
    K1>K2>K3>0.01 式d
    N1は、400nm〜500nmの波長域の平均屈折率を表し、N2は、500nm〜600nmの波長域の平均屈折率を表し、N3は、600nm〜700nmの波長域の平均屈折率を表す。K1は、400nm〜500nmの波長域の平均消衰係数を表し、K2は、500nm〜600nmの波長域の平均消衰係数を表し、K3は、600nm〜700nmの波長域の平均消衰係数を表す。
  8. 前記光吸収層の厚みが、2μm以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層構造体。
  9. 前記光学調整層が、SiO、SiN、及びAlから選ばれる少なくとも一つの化合物を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の積層構造体。
  10. 前記光学調整層中の前記積層体が、前記低屈折率誘電体層の少なくとも2層と前記高屈折率誘電体層の少なくとも2層とを含み、前記低屈折率誘電体層と前記高屈折率誘電体層とが交互に積層された4層以上の積層体である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の積層構造体。
  11. 前記基材に対して前記積層膜が配置された側の表面粗さRaの算術平均値が、30nm以下である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の積層構造体。
  12. 前記積層膜の、前記光吸収層と前記積層体との界面における界面粗さの算術平均値並びに前記低屈折率誘電体層と前記高屈折率誘電体層との界面における界面粗さの算術平均値が、30nm以下である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の積層構造体。
  13. 請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の積層構造体が2次元又は3次元に成形されてなる成形体。
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