JP6771040B2 - コーヒー風味改善剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コーヒー風味改善剤およびその製造方法に関する。
香料組成物は、食品香料(フレーバー)や香粧品香料(フレグランス)などとして用いられる。飲食品用の香料組成物は天然香料、合成香料および/またはそれらを組合せた調合香料から調製できるが、最近では消費者の天然志向に伴い、フレーバーも、天然香料や天然感のあるものが望まれる傾向にあり、様々な製造方法が検討されている。
コーヒーフレーバーにおいても、現在様々な製造方法が採用されている。例えば、焙煎コーヒー豆からの香料組成物の製造方法として、様々な方法が知られている(特許文献1参照)。
具体的には、例えば、焙煎コーヒー粉砕物に水蒸気及び/又は不活性ガスを通じて放出させた揮発性コーヒーフレーバー成分含有気相をカラメルなどの溶液に補足するコーヒーフレーバーの製法、焙煎コーヒーを水蒸気蒸留して得られる凝縮水を分画する方法、果汁あるいはコーヒーを蒸留して得た香気成分含有蒸留液を、逆相分配型吸着剤と接触させた後、溶剤で抽出する方法、水蒸気蒸留法によって得られたコーヒーフレーバー原料を水層に含み、圧搾採油または超臨界流体等によって得られたコーヒーオイルを油相とする芳香成分と呈味成分を併せ持つコーヒーフレーバーの製剤化方法、茶葉を水蒸気蒸留して得られる留出液を茶葉と接触させ、加熱蒸留臭を除去する茶葉フレーバーの製法などが特許文献1に記載されている。
特許文献1によれば、水蒸気蒸留法は、原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに凝縮させる方法であり、原料の種類等に応じて、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留のいずれかの蒸留手段を採用することができると記載されている。
また、コーヒーフレーバーの中でも、特に挽きたての香りを付与できるフレーバーが長年求められている。そこで、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気を用いたコーヒー香料が記載されている(特許文献2〜6)。
特開2003−33137号公報 特許3719995号 特許4182471号 特許4308724号 特許4745591号 特開2003−144053号公報
特許文献2〜5に記載の方法は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気成分を含むガス(粉砕ガス)を、そのまま水やコーヒーオイルなどの溶媒に導入して香料組成物を製造していた。
また、特許文献6に記載の方法は、焙煎コーヒー豆の粉砕ガスを、加圧圧縮すると共に、アルミニウム製容器に保存していた。
しかしながら、特許文献2〜6に記載の方法で得られた香料組成物は、香気化合物を含むガスを溶媒に通気させるために捕集効率が高くなく、焙煎コーヒー豆を挽いたときの香りを十分には再現できない。
また、特許文献2〜6に記載の方法は、不活性ガスの使用、密閉した粉砕機、溶媒層への通路、溶媒層、恒温槽など、特別な装置を利用するため設備投資が大きくなり、簡単に実用化できるものではなかった。
本発明が解決しようとする課題は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気、すなわち焙煎コーヒー豆を挽いたときの香りを感じさせる、コーヒー風味改善剤を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、一般的な粉砕装置を利用して、大きな設備投資や装置に対する負荷などの負担なく実用化できる、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気、すなわち焙煎コーヒー豆を挽いたときの香りを感じさせる、コーヒー風味改善剤の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特許文献1〜6に記載の方法とは全く異なる方法として、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物と、チャフの薄片または粉砕物、コーヒー豆の過度に微細な粉砕物、およびその他夾雑物由来の薄片や粉砕物(以下、本明細書では総じて「微粉および薄片」と称する)と、を含むガスから当該微粉および薄片を除去した後に、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を吸着剤で吸着し、回収することにより、香気化合物を効率よく回収し、かつ一般的な粉砕装置(例えば、従来の粉砕装置)に対して負荷や更なる大きな設備投資を強いることなく、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気をトップに感じさせるとともに、ミドル以降にもまろやかなボリューム感などを付与し、コーヒー風味飲食品の風味を全体的に好ましく増強できる天然香料組成物としてのコーヒー風味改善剤を効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明およびその好ましい態様は以下のとおりである。
[1] 焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を含む溶液であるコーヒー風味改善剤であって、
前記溶液が条件A1を満たすプロピレングリコール溶液、条件B1を満たすエタノール溶液、またはこれらの組み合わせである、コーヒー風味改善剤:
条件A1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしプロピレングリコールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が90%以上95%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が5%超10%以下である;
条件B1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしエタノールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が93%以上98%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が2%超7%以下である。
[2] 前記プロピレングリコール溶液がさらに条件A2を満たす、および/または前記エタノール溶液がさらに条件B2を満たす、[1]に記載のコーヒー風味改善剤:
条件A2:以下の測定条件で測定した際、RIがアセトイン以下のクロマトグラムのピークの面積の合計値に対して、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒドのピーク面積値がそれぞれ0.1〜5.0%、1.0〜10%、1.0〜10%であり、RIがアセトインより大きいピークの面積の合計値に対して、2,5−ジメチルピラジンおよび2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積値がそれぞれ0.1〜2.5%および0.5〜3.0%である;
条件B2:以下の測定条件で測定した際、RIがアセトイン以下のクロマトグラムのピークの面積の合計値に対して、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒドのピーク面積値がそれぞれ0.05〜5.0%、1.0〜10%および1.0〜10%であり、RIがアセトインより大きいピークの面積の合計値に対して、2,5−ジメチルピラジンおよび2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積値が、それぞれ0.1〜2.0%および0.1〜2.5%である;
測定条件:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラム。
[3] 前記プロピレングリコール溶液がさらに2−メチルブチルアルデヒド プロピレングリコールアセタール、2−メチルブタナール プロピレングリコールアセタール、2−メチルフラン プロピレングリコールアセタール、およびイソバレルアルデヒド プロピレングリコールアセタールからなる群から選択される1以上を含む、[1]または[2]に記載のコーヒー風味改善剤。
[4] [1]〜[3]のいずれか一つに記載のコーヒー風味改善剤を、0.01〜10質量%含有する、飲食品。
[5] 容器詰飲料である、[4]に記載の飲食品。
[6] 加熱殺菌された、[4]または[5]に記載の飲食品。
[7] 焙煎コーヒー豆を粉砕する工程と、
前記焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を吸着剤に吸着させる吸着工程と、
前記吸着剤から前記香気化合物を回収して、前記香気化合物を含む溶液を調製する回収工程と、を含み、
前記回収工程が、プロピレングリコールまたはエタノールを脱着剤として用いて前記香気化合物を前記吸着剤から脱着し、得られたプロピレングリコール溶液またはエタノール溶液をコーヒー風味改善剤として得る、コーヒー風味改善剤の製造方法。
本発明によれば、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気、すなわち焙煎コーヒー豆を挽いているときの香気をトップに感じさせるとともに、ミドル以降(すなわちミドルからラストにかけて)にまろやかなボリューム感などをコーヒー風味飲食品に対して付与または増強可能なコーヒー風味改善剤を提供することができる。
また、本発明によれば、一般的な粉砕装置を、大きな追加設備投資や当該装置への負荷などの負担なく利用して、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気、すなわち焙煎コーヒー豆を挽いているときの香気をトップに感じさせるとともに、ミドル以降にまろやかなボリューム感などをコーヒー風味飲食品に対して付与または増強可能なコーヒー風味改善剤を提供することができる。
図1は、本発明に使用可能な香気回収装置の一例を示した概略図である。 図2は、本発明に使用可能な香気回収装置の他の一例を示した概略図である。 図3は、本発明に使用可能な吸着剤収容部の断面概略図である。 図4は、本発明品1のコーヒー風味改善剤のトータルイオンクロマトグラムの一例である。 図5は、比較品3のコーヒー風味改善剤のトータルイオンクロマトグラムの一例である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[コーヒー風味改善剤]
本発明のコーヒー風味改善剤は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を含む溶液であるコーヒー風味改善剤であって、
前記溶液が条件A1を満たすプロピレングリコール溶液、条件B1を満たすエタノール溶液、またはこれらの組み合わせである、コーヒー風味改善剤:
条件A1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしプロピレングリコールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が90%以上95%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が5%超10%以下である;
条件B1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしエタノールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が93%以上98%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が2%超7%以下である。
極性カラムの種類は特に限定されず、入手可能な任意の極性カラムを用いることができる。例として、InertCap−WAXなどの、InertCap−WAXシリーズの極性カラム(ジーエルサイエンス社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のコーヒー風味改善剤は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を含み、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気を感じさせるものである。また、コーヒー風味の飲食品(例えば、コーヒー飲料)に添加した際に、トップに感じられる甘香ばしい香りを増強するとともに、ミドル以降の風味についても、それを増強または改善(例えば、風味をまろやかにする、ボリューム感を増強する)することが好ましく、さらには、風味の持続性も増強することが好ましい。
焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気としては、具体的には、焙煎コーヒー豆を挽いている時の香りであることが好ましく、トップに感じられる香気が強いことが好ましく、また、ミドル以降にもボリュームがあり、余韻があることが好ましい。
本発明は、後述の実施例に示すように、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物の捕集に、従来食品分野で使用されてきた様々な溶剤のうち、特にプロピレングリコールおよび/またはエタノールを使用することで、顕著で多様な風味増強効果を奏するという、全く意外な発見に基づくものである。本発明のコーヒー風味改善剤は全体として、トップの香気のみならずミドル以降の香気に対しても優れた風味改善効果を発揮し、従来にない良好なバランスでコーヒー飲料の風味を改善することができる。その理由として、いかなる理論に拘泥するものでもないが、以下のように推測できる。
まず、本発明のコーヒー風味改善剤は、揮発性が高くトップに感じられる香気化合物の割合は高いものの、ミドル以降の比較的重い香気化合物も適量含まれるために、コーヒー風味飲食品に添加した際、当該飲食品の製造時などに失われやすい軽い香気化合物(すなわちトップの香り)を十分に増強するとともに、ミドル以降の風味も増強できるので、コーヒー風味飲食品全体の風味を従来にないバランスのよさで増強することができると考えられる。さらに、吸着剤に吸着された香気化合物の脱着の際、香気成分の一部と脱着液との反応物(例えば、PGアセタール化合物(プロピレングリコールアセタール化合物)、ジエチルアセタール化合物、エチルエステル化合物など)が微量生成し、それがトップまたはミドル以降の風味に影響を与える可能性が考えられる。
本発明は、以上の点の相互作用によって、コーヒー風味飲食品に対して以下のような優れた効果を奏すると推測できる。
・トップの甘く香ばしい香気を増強し、かつ、ミドル以降の風味が増強されるとともにまろやかになり、風味の持続性が増す。
・後味のキレがよくなる。
・軽くフレッシュなミルク感が増強される。
コーヒー風味改善剤は、四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積と、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積との比が、PG溶液の場合は、80:20、85:15、87:13、90:10、92:8、94:6、95:5、97:3、98:2から選択される2つの比を上限および下限値とするものであってよく、さらに好ましくは、85:15〜95:5、85:15〜97:3、87:13〜95:5、87:13〜97:3、90:10〜95:5、90:10〜97:3、92:8〜97:3のいずれかの範囲内でよい。エタノール溶液の場合は、90:10、92:8、95:5、94:6、97:3、98:2から選択される2つの比を上限および下限値とするものであってよく、さらに好ましくは、90:10〜95:5、90:10〜98:2、92:8〜95:5、92:8〜97:3のいずれかの範囲内でよい。リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積は、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積よりも大きいことが好ましく、1倍超、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、7倍以上、8倍以上、10倍以上、12倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、または50倍以上でよい。
なお、本明細書中、コーヒー風味改善剤のトータルイオンクロマトグラムのピークの面積値の算出は、コーヒー風味改善剤の溶媒(回収工程で用いた溶媒)に帰属するピークを除外して求めたものである。つまり、回収工程で用いた溶媒がプロピレングリコールである場合は、トータルイオンクロマトグラムのピークの面積値の算出は、プロピレングリコールに帰属するピークを除外して求める。回収工程で用いた溶媒がエタノールである場合も同様である。
また、本発明のコーヒー風味改善剤は、下記群Aから選択される1種以上の香気化合物を含有することが好ましく、本発明のコーヒー風味改善剤をコーヒー飲料に添加することによって、下記群Aから選択される1種以上の化合物の含有量を増加させることが好ましい:
(群A)アセトアルデヒド、アセトン、2−メチルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルフラン、メチルエチルケトン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、N−メチルピロール、2−メチル−5−ビニルフラン、ピリジン、ピラジン、フルフリルメチルエーテル、アセトイン、3−メチルピリジン、アセトール、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2,3−ジメチルピラジン、2−メチル−2−シクロペンテノン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、フラン、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、3−エチルピリジン、2−ビニルフラン、酢酸エチル、2,5−ジエチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−アセチルフラン、2−フルフリルメチルジスルフィド、2,3,5−トリメチルピラジン、酢酸、酢酸アセトール、2−ビニルピラジン、フルフラール、ギ酸フルフリル、2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、2−アセチルフラン、ピロール、フリルアセトン、プロピオン酸アセトール、酢酸フルフリル、5−メチル−2−フルフラール、プロピオン酸フルフリル、γ−ブチロラクトン、フルフリルアルコール、1−(1−ピロリル)−2−プロパノン、2,5−ジメチルピラジン、3−エチルピラジン、2,6−ジエチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、1−フルフリルピロール、フェノール。
特に、本発明のコーヒー風味改善剤は下記群Bから選択される1種以上の香気化合物を含有し、本発明のコーヒー風味改善剤をコーヒー飲料に添加することによって、下記群Bから選択される1種以上の化合物の含有量を増加させることが好ましい:
(群B)2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルフラン、フラン、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、3−エチルピリジン、2−ビニルフラン、酢酸エチル。
本発明のコーヒー風味改善剤がプロピレングリコール溶液である場合には、2−メチルブタナール PGアセタール、2−メチルフラン PGアセタール、イソバレルアルデヒド PGアセタール、2−メチルブチルアルデヒド PGアセタールから選択される1種以上のPGアセタールを含むことがより好ましく、少なくともさらにイソバレルアルデヒド PGアセタールを含むことが特に好ましく、少なくとも2−メチルブチルアルデヒド PGアセタールおよびイソバレルアルデヒド PGアセタールを含むことがより特に好ましい。いかなる理論に拘泥するものではないが、このようなアセタール類によって、風味改善効果(特にミドル以降の風味改善効果)が高まる可能性が考えられる。
また、本発明のコーヒー風味改善剤がプロピレングリコール溶液である場合には、ジプロピレングリコールを含むことが好ましい。
一方、本発明のコーヒー風味改善剤がエタノール溶液である場合には、ジエチルアセタールを含むことがより好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークに帰属する化合物の例を、アセトインを含めて挙げる。
アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、N−メチルピロール、2−メチル−5−ビニルフラン、ピラジン、フルフリルメチルエーテル、フラン、酢酸エチル、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2−メチルフラン、2−メチルブタナール PGアセタール、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド PGアセタール、イソバレルアルデヒド PGアセタール、アセトイン(RI=1294)。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークに帰属する化合物の例を挙げる。
アセトール(RI=1321)、フルフラール、2−アセチルフラン、フルフリルアセテート(酢酸フルフリル)、3−メチルピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2,3−ジメチルピラジン、2−メチル−2−シクロペンテノン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−エチルピリジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−ビニルピラジン、酢酸、酢酸アセトール、ギ酸フルフリル、2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、ピロール、酢酸フリル、プロピオン酸アセトール、5−メチル−2−フルフラール、プロピオン酸フルフリル、γ−ブチロラクトン、フルフリルアルコール、1−(1−ピロリル)−2−プロパノン、ジプロピレングリコール、フェノール。
本発明のコーヒー風味改善剤は、前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積値に対する、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、およびイソバレルアルデヒドのピーク面積値の割合が、それぞれ、コーヒー風味改善剤がプロピレングリコール溶液である場合には0.1〜5.0%、1.0〜10%および1.0〜10%;0.5〜4.0%、2.0〜8.0%および2.0〜8.0%;1.0〜3.0%、3.0〜7.0%および3.0〜7.0%;または1.5〜2.5%、4.0〜6.0%および3.0〜6.0%であってよい;コーヒー風味改善剤がエタノール溶液である場合には0.05〜5.0%、1.0〜10%および1.0〜10%;0.2〜4.0%、1.2〜8.0%および1.1〜8.0%;0.5〜3.0%、1.4〜7.0%および1.2〜7.0%;または1.0〜2.0%、1.6〜6.0%および1.2〜6.0%であってよい。
また、本発明のコーヒー風味改善剤は、前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積値に対する、2,5−ジメチルフラン、2−ビニルフラン、ピリジン、アセトインの各ピーク面積値の割合(%)が、プロピレングリコール溶液の場合は、以下であってよい。
2,5−ジメチルフラン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.5〜1.3;
2−ビニルフラン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.5〜1.3;
ピリジン:0.5〜3.0、1.0〜2.5、または1.3〜2.3;
アセトイン:0.5〜3.0、1.0〜2.5、または1.3〜2.3。
本発明のコーヒー風味改善剤は、前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積値に対する、2,5−ジメチルフラン、2−ビニルフラン、ピリジン、アセトインの各ピーク面積値の割合(%)が、コーヒー風味改善剤がエタノール溶液である場合には、以下であってよい。
2,5−ジメチルフラン:0.5〜3.5、1.0〜3.0、または1.5〜2.5;
2−ビニルフラン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.5〜1.3;
ピリジン:0.1〜2.5、0.5〜2.0、または0.7〜1.7;
アセトイン:0.5〜3.0、1.0〜2.5、または1.3〜2.3。
また、本発明のコーヒー風味改善剤は、前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積値に対する、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−アセチルフラン、1−フルフリルピロールの各ピーク面積値の割合(%)が、プロピレングリコール溶液の場合は、それぞれ以下であってよい。
2,5−ジメチルピラジン:0.1〜2.5、0.5〜2.0、1.2〜1.9;
2−エチル−6−メチルピラジン:0.5〜3.0、1.0〜2.7、1.7〜2.3;
2,6−ジメチルピラジン:0.1〜2.5、0.5〜2.0、または0.7〜1.7;
2−エチルピラジン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.7〜1.3;
3−エチル−2,5−ジメチルピラジン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9;
2−アセチルフラン:0.1〜2.5、0.5〜2.0、または0.7〜1.7;
1−フルフリルピロール:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9。
本発明のコーヒー風味改善剤は、前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積値に対する、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、2−アセチルフラン、1−フルフリルピロールの各ピーク面積値の割合(%)が、コーヒー風味改善剤がエタノール溶液である場合には、それぞれ以下であってよい。
2,5−ジメチルピラジン:0.1〜2.0、0.3〜1.5、0.4〜1.0;
2−エチル−6−メチルピラジン:0.1〜2.5、0.3〜2.0、0.7〜1.4;
2,6−ジメチルピラジン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9;
2−エチルピラジン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9;
3−エチル−2,5−ジメチルピラジン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9;
2−アセチルフラン:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.3〜0.9;
1−フルフリルピロール:0.1〜2.0、0.2〜1.5、または0.7〜1.3。
[本発明のコーヒー風味改善剤の用途]
本発明のコーヒー風味改善剤は、飲食品、香粧品、保健衛生品、医薬品などの各種類の基材に添加することができる。本発明のコーヒー風味改善剤は、コーヒー風味を呈する基材に用いること、より好ましくはコーヒー風味を呈する飲食品に添加して用いることが好ましい。さらには、本発明のコーヒー風味改善剤は、コーヒー風味を付与したい各種類の香料組成物に添加して用いることもできる。本発明において、コーヒー風味とは、コーヒーまたは焙煎コーヒー豆を想起させる香りおよび/または味を呈することを意味する。
飲食品は、本発明のコーヒー風味改善剤を、飲食品の全質量に対して0.01〜10質量%添加したものであることが好ましく、0.05〜7質量%添加したものであることがより好ましい。また、本発明のコーヒー風味改善剤を添加された香料組成物は、本発明のコーヒー風味改善剤を、添加対象の香料組成物の全質量に対して0.1〜10質量%添加したものであることが好ましく、0.5〜5質量%添加したものであることがより好ましい。
飲食品は、容器詰飲食品であることが好ましく、容器詰飲料であることがより好ましい。また、本発明のコーヒー風味改善剤は、トップに感じられる香気化合物(低分子量などによって揮発性の高い成分)が比較的多い。そのため、本発明のコーヒー風味改善剤を含む容器詰飲料は、容器を開ける際に焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気を強く感じさせることができる。加えて、ミドル以降(揮発性の比較的低い成分)の香りも付与できる。従って、コーヒー風味の飲食品に対し、焙煎コーヒー豆の挽きたての香りを付与または増強させるとともに、飲食品のコーヒー風味を全体として強化および改善することができる。
容器詰食品または飲料としては、アイスクリーム、ソフトクリームまたはシャーベットなどの冷菓;ビスケット、クッキー、せんべい、饅頭、チョコレート、クリーム内包菓子、ゼリー、ガム、キャンディなどの菓子類;ブラックコーヒー、ミルク入りコーヒー、カフェラテ、カフェオレ、コーヒー牛乳、コーヒー風味豆乳飲料、コーヒー風味エナジードリンク、コーヒー風味炭酸飲料、コーヒー風味アルコール飲料などのコーヒー風味飲料;パン、パン用スプレッド、コーヒー風味健康食品(例えば、機能性表示食品、栄養補助食品、特定保健用食品など)、およびその他コーヒー風味を称する食品などを例示することができる。より具体的には、無糖ブラックコーヒー、加糖ブラックコーヒー、ミルク入りコーヒー(カフェラテタイプおよびカフェオレタイプを含む)、コーヒーゼリー、コーヒーキャンディ、コーヒーリキュールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
容器詰飲料とは、飲用するのに適当な濃度とし、容器に充填して得られる飲料(容器に充填する前または後に殺菌を行うことが一般的である)を意味する。
容器詰飲料は、ペットボトル、缶または紙容器に充填された容器詰飲料であることが好ましい。容器詰飲料には、麦茶飲料、穀物茶飲料、玄米茶飲料、茶類と焙煎した穀物類を混合したいわゆる混合茶類飲料(ブレンド茶飲料)などの茶系飲料、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料などの茶系飲料;コーヒー飲料;ビール、発泡酒、いわゆる第三のビール、ノンアルコールビール風味飲料などのビール風味飲料などが包含される。これらの中でも、コーヒーに用いられることが好ましい。
基材として用いられるコーヒーの態様としては特に制限はない。例えば、特開2013−252112号公報の[0028]〜[0039]、特開2015−149950号公報の[0037]〜[0042]に記載のコーヒーを採用することができ、これらの公報の内容は参照して本明細書に組み込まれる。
基材としてコーヒーを用いた、加熱殺菌前の賦香品(飲食品)の好ましい態様を説明する。
四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得た加熱殺菌前の飲食品のトータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)のリテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)のリテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積が100%超であることが好ましく、102%以上であることがより好ましく、103%以上であることが更に好ましく、105%以上であることが更に好ましく、107%以上であることが更に好ましく、110%以上であることが更に好ましく、111%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−メチルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2−メチルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−メチルブチルアルデヒドのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2−メチルブチルアルデヒドのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)のイソバレルアルデヒドのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)のイソバレルアルデヒドのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)のフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)のフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2,5−ジメチルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2,5−ジメチルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の3−ヘキサノンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の3−ヘキサノンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−ビニルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2−ビニルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)のピリジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)のピリジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の3−エチルピリジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の3−エチルピリジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2,5−ジメチルピラジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2,5−ジメチルピラジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、113%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の2−エチル−6−メチルピラジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌前の基材(無糖ブラックコーヒー)の酢酸エチルのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌前の飲食品(賦香品)の酢酸エチルのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
飲食品は、加熱殺菌されたものであってよい。容器詰飲料等の製造では、レトルト殺菌(121℃、10分程度の加熱殺菌)やUHT殺菌(135℃、1分程度の加熱殺菌)をされる。しかしながら、通常のトップの香りは加熱で失われやすい。本発明のコーヒー風味改善剤は、トップの香りが強いため、加熱されてもトップの香りが失われにくく、加熱殺菌された飲食品に好ましく用いられる。また従って、喫食前に加熱を必要とする飲食品においても、好ましく用いられる。
基材としてコーヒーを用いた加熱殺菌後の飲食品の好ましい態様を説明する。
四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得た加熱殺菌後の飲食品のトータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)のリテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)のリテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積が100%超であることが好ましく、102%以上であることがより好ましく、103%以上であることが更に好ましく、105%以上であることが更に好ましく、107%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−メチルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2−メチルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−メチルブチルアルデヒドのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2−メチルブチルアルデヒドのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)のイソバレルアルデヒドのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)のイソバレルアルデヒドのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)のフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)のフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2,5−ジメチルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2,5−ジメチルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の3−ヘキサノンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の3−ヘキサノンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−ビニルフランのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2−ビニルフランのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)のピリジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)のピリジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の3−エチルピリジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の3−エチルピリジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2,5−ジメチルピラジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2,5−ジメチルピラジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、112%以上であることがより特に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の2−エチル−6−メチルピラジンのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましい。
前記トータルイオンクロマトグラムにおいて、加熱殺菌後の基材(無糖ブラックコーヒー)の酢酸エチルのピーク面積を100%とした場合、加熱殺菌後の飲食品(賦香品)の酢酸エチルのピークの面積が100%超であることが好ましく、105%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更に好ましく、115%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが更に好ましく、125%以上であることが更に好ましく、130%以上であることが更に好ましく、140%以上であることが特に好ましい。
[コーヒー風味改善剤の製造方法]
本発明のコーヒー風味改善剤の製造方法(本発明の製造方法とも言う)は、焙煎コーヒー豆を粉砕する工程と、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を吸着剤に吸着させる吸着工程と、吸着剤から香気化合物を回収して、香気化合物を含む溶液を調製する回収工程と、を含み、前記回収工程が、プロピレングリコールまたはエタノールを脱着剤として用いて前記香気化合物を前記吸着剤から脱着し、得られたプロピレングリコール溶液またはエタノール溶液をコーヒー風味改善剤として得る。
上記の構成により、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気をトップに感じさせるとともに、ミドル以降にまろやかなボリューム感、余韻などをコーヒー風味飲食品に対して付与または増強できる、焙煎コーヒー豆からの香料組成物を製造できる。
なお、香気化合物が上記の条件を満たすようにする製造方法としては特に制限はなく、一例として、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物を含むガスに含まれる微粉および薄片を除去した後に、当該ガスを吸着剤に通気して香気化合物を吸着剤に吸着させ、回収する製造方法を挙げられる。
ここで、上記微粉および薄片について概説する。
コーヒー豆(生豆)はコーヒーチェリーの種子部分であり、コーヒー豆にはシルバースキンと呼ばれる薄皮が付着している。焙煎コーヒー豆には、シルバースキンの焙煎物であり、渋味を呈するチャフが付着している。焙煎コーヒー豆を所望のサイズに粉砕すると、所望のサイズに粉砕されたコーヒー豆本体の粉砕物のほかに、チャフの薄片および粉砕物、コーヒー豆本体の過度に微細な粉砕物、または更にその他夾雑物由来の薄片または粉砕物(本明細書では総じて「微粉および薄片」と称する)が生じ、この微粉および薄片は軽いため飛散する。焙煎コーヒー豆の工業的粉砕においては、この微粉および薄片の少なくとも一部は飛散して粉砕装置で発生する気流の排気流に混じる。この排気流は、適宜微粉および薄片を除去した後、装置外にそのまま排出していた。これに対し、本発明のコーヒー風味改善剤は、この排気流に、焙煎コーヒー豆粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物が含まれていることを利用し、排気流から上記微粉および薄片を除去してから、排気流に含まれるガスを吸着剤に通気して香気化合物を吸着させ、脱着によって香気化合物を回収することで、製造することができる。
なお、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生するガスをそのまま吸着剤に吸着させようとすると、微粉および薄片によって吸着剤などが目詰まりしてしまう問題があったため、上記の製造方法は実用化されていなかったと推測される。
以下、本発明の製造方法の好ましい態様について説明する。
<焙煎コーヒー豆粗粉砕物を得る工程>
本発明の製造方法は、焙煎コーヒー豆を粉砕して、微粉および薄片を含む焙煎コーヒー豆粗粉砕物を得る工程を含むことが好ましい。
焙煎コーヒー豆を粉砕して焙煎コーヒー豆粗粉砕物を得る工程を他の工程よりも前に行うことが好ましい。
焙煎コーヒー豆を粉砕する方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、回転ミル、振動ミルなどの公知の粉砕装置を用いることができる。
焙煎コーヒー豆の粉砕速度としては、例えば、1〜500kg/hとすることができるが、特に限定されない。
焙煎コーヒー豆の粉砕サイズは特に限定されず、いわゆる細挽き、中挽き、粗挽きのいずれであってもよく、公知の好ましいサイズ範囲と同様でよい。例えば、0.2〜3mm程度とすることができる。
(焙煎コーヒー豆)
本発明の製造方法に用いられる焙煎コーヒー豆としては、特に制限はない。いかなる理由に拘泥するものでもないが、コーヒー豆の種類や、コーヒーの焙煎度合は、香料組成物中の分子量が大きい香気化合物の量比に主に影響があると推測される。香料組成物が焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気は、トップの香り(分子量が小さく揮散しやすい香気化合物に起因する)であるため、コーヒー豆の種類や、コーヒーの焙煎度合の影響が少ないと推測される。そのため、本発明は、コーヒー豆の種類や焙煎度合によらず汎用的に利用可能である。
本発明の製造方法に用いられるコーヒー豆としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等のいずれでも良く、その種類、産地を問わずいかなるコーヒー豆でも利用することができる。コーヒー生豆の焙煎はコーヒーロースターなどを用い常法により行うことができる。例えば、コーヒー生豆を回転ドラムの内部に投入し、この回転ドラムを回転攪拌しながら、下方からガスバーナー等で加熱することで焙煎できる。焙煎コーヒー豆の焙煎度は、通常、L値で表され、イタリアンロースト:16〜19、フレンチロースト:19〜21、フルシティーロースト:21〜23、シティーロースト:23〜25、ハイロースト:25〜27,ミディアムロースト:27〜29程度である。これより浅い焙煎は通常の飲用では一般的にはあまり使用されない。L値とはコーヒーの焙煎の程度を表す指標で、コーヒー焙煎豆の粉砕物の明度を色差計で測定した値である。黒をL値0で、白をL値100で表す。従って、コーヒー豆の焙煎が深いほど数値は低い値となり、浅いほど高い値となる。
コーヒー豆の種類、コーヒー豆の焙煎方法、焙煎コーヒー豆の処理方法としては特に制限はない。例えば、特開2013−252112号公報の[0015]〜[0027]、特開2015−149950号公報の[0021]〜[0024]に記載の方法を採用することができ、これらの公報の内容は参照して本明細書に組み込まれる。
(焙煎コーヒー豆粗粉砕物)
焙煎コーヒー豆粗粉砕物は、上記微粉および薄片と、所望のサイズに粉砕された焙煎コーヒー豆本体の粉砕物と、を含むことが好ましい。
微粉および薄片は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物を含むガスから除去されることが好ましい。具体的には、後に詳述する第1の流路をガスとともに通過し、微粉薄片除去装置にて前記ガスから除去されることが好ましい。
(焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物)
焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物は、1または複数の化合物である。詳細は香料組成物の説明にて示した。
<微粉および薄片の予備除去工程>
本発明の製造方法では、焙煎コーヒー豆粗粉砕物に含まれる微粉および薄片を除去する工程を、微粉および薄片をガスから除去する工程よりも前に行うことが好ましい。微粉および薄片は一部除去されればよいが、実質的に全て除去されてもよい。また、例えばチャフ以外を由来とする微粉および薄片を主に除去してもよく、チャフを由来とする微粉および薄片は、この予備除去工程で少なくとも一部除去されてもよく、殆ど除去されなくてもよい。
焙煎コーヒー豆粗粉砕物に含まれる微粉および薄片を除去する工程は、振動ふるいや風力分級機などの分級装置のような公知の微粉薄片除去装置などを用いて行うことができ、振動ふるいを用いた分級装置であることが好ましい。例えば、任意の目開きを有するふるいを用いて、その目開きより小さい微粉および薄片を除去することができる。
<微粉および薄片の除去工程>
本発明の製造方法は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物ならびに微粉および薄片を含むガスから、微粉および薄片を除去する工程を含むことが好ましい。微粉および薄片は一部除去されず残存してもよいが、微粉および薄片は実質的に全て除去されることが好ましい。例えば、この除去工程において除去される微粉および薄片は、チャフを由来とする微粉および薄片が少なくとも半分を占めていてもよく、実質的にチャフを由来とする微粉および薄片のみからなっていてもよい。
微粉および薄片を除去する工程としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
本発明の製造方法では、微粉および薄片を除去する工程を後述する微粉薄片除去装置で行うことが好ましい。
微粉薄片除去装置の詳細については、本発明に使用可能な香気回収装置の説明に示す。
<吸着工程>
本発明の製造方法は、微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気して、ガスに含まれる香気化合物を吸着剤に吸着させる吸着工程を含むことが好ましい。ここで、吸着剤は、香気化合物吸着装置内に設けられた吸着剤収容部に収容され、この吸着剤収容部は、ガス通気方向の両端に網状蓋を有することが好ましい。ここで、この吸着工程では微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気するため、網状蓋や吸着剤が微粉や薄片で目詰まりして起こり得るガスの流れへの抵抗や香気吸着効率の低下の懸念がなく、香気回収装置に許容範囲を超える負荷(本明細書では単に負荷とも記載する)がかかることなく、かつ効率的に香気化合物を吸着することができる。
吸着剤量は、吸着剤収容部に収容可能な量であれば限定されない。使用する吸着剤の体積(嵩容積)は、吸着剤収容部の体積と同じでも、それ未満でもよい。換言すれば、吸着剤は、吸着剤収容部に充填(粗充填または密充填)されていてもよいし、吸着剤を収容した吸着剤収容部に空間が存在していてもよい。
ガスの通気方向は、香気回収装置の設置面(香気回収装置を地面に設置する場合は接地面)に対して任意の角度をとってよく、例えば平行でも垂直でもよい。また、香気回収装置の設置面に接近する方向でも遠ざかる方向でもよい。換言すれば、吸着剤のガスの通気方向が、重力方向に対して、略反対方向でも、略同一方向でも、直角をなしていても、その他の角度をなしていてもよい。なお、吸着剤に重力方向と略反対方向にガスを流入および通気させる場合、使用する吸着剤の体積(嵩容積)を吸着剤収容部の体積より小さくして、香気化合物吸着装置をいわゆる流動層カラムとすることができ、通気するガスの流れに対する吸着剤の抵抗を抑えることができる。
本発明の製造方法では、気流発生装置を用いて気流を発生させて、微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気することが好ましい。また、流速調整装置を気流発生装置と併用して、ガスの流速および圧力を高めてもよい。この併用によって、ガスの流れに対する吸着剤の抵抗を超えてガスの通気を行うことができる。
気流発生装置および流速調整装置の詳細については、本発明に使用可能な香気回収装置の説明に示す。
本発明の製造方法では、微粉および薄片が除去されたガスの流路から分岐するように、吸着剤が配置された導入路を設けることで、導入路に微粉および薄片が除去されたガスの一部のみを流入および通過させ、そのガスを吸着剤に通気して香気化合物を回収することが好ましい。
導入路の詳細については、本発明に使用可能な香気回収装置の説明に示す。
(吸着剤)
吸着剤としては、特に限定されない。吸着剤としては、合成吸着剤、または活性炭などのその他の吸着剤を用いることができる。合成吸着剤を用いることが、脱着が容易である観点から好ましい。
吸着剤としては、スチレンジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン共重合体、2,6−ジフェニル−9−フェニルオキサイドの重合体、メタアクリル酸とジオールの重縮合ポリマーおよび修飾シリカゲルから選択される1以上であることが好ましい。修飾シリカゲルとは、シリカゲル表面のシラノール基の反応性を利用して、これに例えば、アルコール類、アミン類、シラン類などを化学結合させた化学結合型シリカゲルのことを言う。中でも、スチレンジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
吸着剤は、多孔性重合樹脂であることが好ましい。吸着剤の表面積が、例えば、約300m/g以上であることが好ましく、約500m/g以上であることがより好ましい。吸着剤の細孔分布が約10Å〜約500Åであることが好ましい。
吸着剤の形状は特に制限はないが、粒子状であることが好ましい。吸着剤が粒子状である場合の平均粒子直径は特に制限はなく、0.1〜20mm、または0.1〜1mmの範囲内が例示できるが、これらに限定されない。
上記の条件に該当する多孔性重合樹脂としては、例えば、HP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、スチレンジビニルベンゼン共重合体であるSP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、XAD−4(ローム・ハス社製)などがあり、市場で容易に入手することができる。また、メタアクリル酸エステル系樹脂も、例えば、XAD−7およびXAD−8(ローム・ハース社製)などの商品として入手することができる。
SP樹脂としては、セパビーズSP−70、SP−207を好ましく用いることができる。
微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気して香気化合物を吸着剤に吸着させる処理手段としては、バッチ方式あるいはカラム方式のいずれも採用できる。作業性の点からカラム方式を好ましく採用することができる。カラム方式で吸着させる方法としては、例えば、上記の吸着剤を充填したカラムにガスを導入することにより、香気化合物を吸着させることができる。吸着剤へのガスの流入および通気方向は、重力方向に対して任意の方向とすることができ、重力方向に対して、略同一方向、略反対方向などが例示できるが、これらに限定されない。
または、吸着剤の粒径および量を調製して吸着剤収容部に空間ができるようにして、更に、重力方向と略反対方向にガスの流入および通気を行って、流動層カラムとしてもよい。
吸着剤は、割れを抑制するために、純水を吸収させた後、完全に乾燥させる前に香気化合物吸着装置に収容することが好ましい。
微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気する際の通気量としては特に制限はなく、例えば、吸着剤の0.1倍〜1000倍の通気量であることが好ましい。
吸着剤に流入するガスの流速(通気ガスの速度)は、吸着剤量、吸着剤が占める部分(以下、吸着剤部分、または収容された吸着剤部分と称する)のガスの通気方向の長さ、後述する気流発生装置や流速調整装置の性能によって適宜設定してよく、特に制限はない。例えば、吸着剤に流入するガスの流速(通気速度)は、0.1〜10.0L/minであることが好ましく、0.5〜7.0L/minであることがより好ましく、1.0〜5.0L/minであることが特に好ましい。
なお、粉砕および吸着剤へのガス通気時間は、微粉および薄片が除去されたガスを吸着剤に通気する際の通気量や、吸着剤に流入するガスの流速から、好ましい範囲を設定できる。
本発明の製造方法では、吸着剤に流入するガスの流速(線速度)は、吸着剤量、吸着剤部分のガスの通気方向の長さ、後述する第2の流路の内径、気流発生装置や流速調整装置の性能によって適宜設定してよく、特に制限はない。例えば、1.0〜35.0m/sの範囲内であることが好ましく、2.0〜20.0m/sの範囲内であることがより好ましく、3.0〜10.0m/sの範囲内であることが特に好ましい。
<ガスの線速度を調整する工程>
本発明の製造方法は、吸着剤に流入するガスの線速度を調整する工程を含むことが、香気化合物吸着装置に多量の吸着剤を収容(例えば充填)した場合にも、吸着剤の抵抗を超えて吸着をできる観点、および後述する気流発生装置への負担を抑制できる観点から好ましい。
本発明の製造方法では、吸着剤に流入するガスの線速度の調整を、任意の公知の気流発生装置、例えば吸引ポンプまたは送風装置を用いて行うことができる。
例えば、吸着剤に流入するガスの線速度は、第2の流路に流れるガスの線速度に対して任意の比率でよく、上限を100%として、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上であってよい。具体的には、0.05〜35m/s、0.08〜20m/s、1.0〜10m/s、1.0〜5m/s、1.0〜2m/sの範囲を例示することができるが、これらに限定されない。
例えば、後述する気流発生装置の性能に合わせて、第2の流路に流れるガスの線速度に対する吸着剤に流入するガスの線速度の比率を調整することが好ましい。このような調整によって、気流発生装置への負担を抑制することができる。
<回収工程>
本発明の製造方法は、吸着剤から香気化合物を回収して、香気化合物を含む溶液を調製する回収工程を含む。
本発明の製造方法では、回収工程で有機溶媒を用いて吸着剤から香気化合物を脱着して回収する。具体的には、前記回収工程が、プロピレングリコールまたはエタノールを脱着剤として用いて前記香気化合物を前記吸着剤から脱着し、得られたプロピレングリコール溶液またはエタノール溶液をコーヒー風味改善剤として得ることができる。または、プロピレングリコール溶液またはエタノール溶液を適宜希釈したもの、プロピレングリコール溶液およびエタノール溶液を混合したものも、本発明のコーヒー風味改善剤として使用してよい。なお、本明細書では、プロピレングリコールおよびエタノールを脱着液または溶剤と呼ぶこともある。
プロピレングリコールまたはエタノールを用いて吸着剤から香気化合物を脱着する前に、吸着剤を水洗してもよい。
一般的な有機溶媒としては、アルコール類、油脂類を挙げることができる。
プロピレングリコール溶液およびエタノール溶液を本発明のコーヒー風味改善剤として単独または併用してコーヒー風味飲食品(例えばコーヒー飲料)に添加することができるが、両者の混合液を調整して本発明のコーヒー風味改善剤とし、これをコーヒー風味飲食品に添加してもよい。なお、本明細書では、プロピレングリコールで脱着して得た本発明のコーヒー風味改善剤を「PG溶液」、エタノールで脱着して得られた本発明のコーヒー風味改善剤を「エタノール溶液」と称することがある。
PG溶液およびエタノール溶液の混合比率は任意であり、例えば、PG溶液に対するエタノール溶液の質量比が、PG溶液1質量部に対し、0.1〜10、0.2〜5、0.5〜3、0.8〜2の範囲内が例示できる。また、PG溶液とエタノール溶液との質量比として、約1:1、約2:1、約3:2、約2:3、および約1:2が例示できる。PG溶液はトップの香りの増強とともに、ミドル以降のボリューム感、まろやかさおよび持続性を増強し、エタノール溶液はミドル以降のボリューム感も増強するが特にトップの香りを増強するので、所望の風味に応じてPG溶液とエタノール溶液の比率を任意に調整することができる。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、プロピレングリコールおよびエタノールは回収した香気化合物の一部をアセタール化(PGアセタール化、ジエチルアセタール化など)でき、その結果として、風味改善効果が高くなる可能性がある。
また、本発明において、香気化合物を含有するPG溶液およびエタノール溶液は、使用目的などに応じて、適宜飲食品に使用可能な溶媒で希釈してもよい。そのような溶媒として、例えば、水(イオン交換水など)、エタノールなどのアルコール類、プロピレングリコールやグリセリンなどの多糖類、トリアセチン、各種脂肪酸、植物性油脂、などが挙げられるが、これらに限定されない。50〜100質量%のアルコール水溶液を用いてよく、エタノールであれば、エタノール濃度50〜95質量%の含水エタノールを用いることが、PGであれば50〜100質量%PGを用いることが好ましい。
カラムを用いる場合、プロピレングリコールまたはエタノールを通液する流速としては、SV=0.1〜20の流速とすることが好ましい。
プロピレングリコールまたはエタノールの量としては特に制限はなく、吸着剤の1倍〜100倍の通液量であることが好ましく、3倍〜40倍の通液量であることがより好ましく、5倍〜20倍の通液量であることが特に好ましい。
吸着剤に吸着されている香気化合物をプロピレングリコールまたはエタノールで溶出させることにより、水溶性のコーヒー風味改善剤を得ることができる。
<吸着剤の再利用および洗浄>
吸着剤について有機溶媒による脱着前および脱着後の通液の圧力を比較して、圧力が同等(例えば2倍以下)であれば、目詰まりは発生していないか無視できるレベルであり、洗浄をせずに再利用可能であると判断できる。香気回収装置を管理する方法が、吸着剤について有機溶媒による脱着前および脱着後の通液の圧力を比較して、圧力が同等であることを確認する工程を含んでいてもよい。具体的には、脱着前および脱着後に、それぞれ超純水への置換を行ってから超純水をSV=10程度にて流した際の圧力を測定した後、脱着前の圧力に対する脱着後の圧力を算出することが好ましい。
一方、本発明の製造方法は、吸着剤の洗浄工程を含んでいてもよい。すなわち、香気回収装置を管理する方法が、吸着剤の洗浄工程を含んでいてもよい。本発明の製造方法では、微粉および薄片は吸着剤にほとんど吸着されないが、ガスに含まれるその他の成分(特に重合可能な成分)が吸着剤に吸着されることがある。吸着剤の洗浄方法は当業者には公知であり、順次極性を変えた数種類の溶剤を通液させればよく、溶剤の種類に特に制限はないが、例えば吸着剤にPGまたはエタノールを通液して脱着した後に、酢酸エチル、ヘキサンの順で通液して洗浄し、再生の際には、酢酸エチルおよび水の順で通液させればよい。
吸着剤は、必要に応じて香気化合物を回収後に洗浄を行いつつ、吸着および回収を5回以上繰り返すまで再利用することが好ましく、10回繰り返すまで再利用することがより好ましい。
<確認工程>
本発明の製造方法は、前記溶液が条件A1を満たすプロピレングリコール溶液、条件B1を満たすエタノール溶液またはこれらの組み合わせであることを確認する工程を含むことが好ましい。
さらに、本発明の製造方法は、前記溶液が、下記条件を満たすことを確認する工程を含むことがより好ましい。
四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、前記条件A2および/または前記条件B2を満たすことを確認することが好ましい。
極性カラムの種類は特に限定されず、入手可能な任意の極性カラムを用いることができる。例として、InertCap−WAXなどの、InertCap−WAXシリーズの極性カラム(ジーエルサイエンス社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
[焙煎コーヒー豆からの香気回収装置]
焙煎コーヒー豆からの香気回収装置としては特に制限はない。焙煎コーヒー豆からの香気回収装置は、焙煎コーヒー豆の粉砕装置と、
粉砕装置と連通し、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物ならびに微粉および薄片を含むガスが通過可能な第1の流路と、
第1の流路と連通し、微粉および薄片を除去する微粉薄片除去装置と、
微粉薄片除去装置と連通し、微粉および薄片が除去されたガスが通過可能な第2の流路と、
第2の流路と連通した香気化合物吸着装置と、
粉砕装置から香気化合物吸着装置まで連続した気流を発生させる気流発生装置と、
を備え、
香気化合物吸着装置は、吸着剤が収容された吸着剤収容部を有し、吸着剤収容部は、前記ガスの通気方向の両端に網状蓋を有することが好ましい。
以下、本発明に使用可能な香気回収装置の好ましい態様について説明する。
<香気回収装置の全体の構成>
香気回収装置の全体の構成を、図面を参照して説明する。図1は、本発明に使用可能な香気回収装置の一例を示した概略図である。図2は、本発明に使用可能な香気回収装置の他の一例を示した概略図である。
図1の香気回収装置の一例は、粉砕装置11、第1の流路1、気流発生装置13、微粉薄片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kを備える。香気化合物吸着装置Kは、網状蓋Ka1およびKa2を有する吸着剤収容部Kbを有する(図3)。さらに、図1の香気回収装置の一例は、導入路3および線速度調整装置4を備えるが、これらは必須の構成ではない。
なお、図1の香気回収装置のうち、粉砕装置11、第1の流路1、気流発生装置13、微粉薄片除去装置14、第2の流路2を有する粉砕装置は一般的に使用されており(例えば、米国特許1649781(1927年)などを参照)、本発明はこのような構成の一般的な粉砕装置に香気化合物吸着装置Kを設け、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物を回収できるようにしたものである。
図1の香気回収装置では、粉砕装置11によって焙煎コーヒー豆が粉砕されて焙煎コーヒー豆粗粉砕物が製造されている最中に、気流発生装置13で発生させた気流によって、粉砕装置11から、焙煎コーヒー豆から発生した香気化合物21ならびに焙煎コーヒー豆粗粉砕物に含まれる微粉および薄片22を含むガスが、第1の流路1へと移動する。香気化合物21および微粉および薄片22を含むガスは、気流に乗って第1の流路1から微粉薄片除去装置14に移動される。微粉薄片除去装置14において、微粉および薄片が除去されたガス(香気化合物21を含む)は第2の流路2へと、微粉および薄片22は微粉薄片除去装置14で除去されて装置外へと、それぞれ移動される。気流発生装置13で発生させた気流(および、必要に応じて線速度調整装置4で発生させた気流)によって、第2の流路2から、微粉および薄片が除去されたガス(香気化合物21を含む)の一部が導入路3へと流入し、導入路3に配置された香気化合物吸着装置Kに収容された吸着剤に流入して、ガスの吸着剤への通気が行われ、当該吸着剤に香気化合物21が吸着される。香気化合物21が吸着され、吸着剤を通過したガスは、導入路の出口3Bから再び第2の流路2に移動され、導入路3に流入せずに第2の流路2を通過した微粉および薄片が除去されたガスと合流し、排出ガス24として装置外へと放出される。
なお、本発明は上述の通り導入路3は必須の構成ではないので、導入路3を設けず、第2の流路を流れるガス(香気化合物21を含み、微粉および薄片が除去されている)の一部ではなく全部を香気化合物吸着装置Kへの流入および通気に使用してもよい。その場合、香気化合物吸着装置Kは第2の流路内に配置されてよい。
図2の香気回収装置の他の一例は、粉砕装置11、微粉薄片予備除去装置12、第1の流路1、気流発生装置13、微粉薄片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kを備える。さらに、図2の香気回収装置の一例は、導入路3および線速度調整装置4を備えるが、これらは必須の構成ではない。
図2の香気回収装置では、粉砕装置11によって焙煎コーヒー豆が粉砕されて製造された焙煎コーヒー豆粗粉砕物が、図示しない搬送機構によって微粉薄片予備除去装置12に移動する。微粉薄片予備除去装置12では、焙煎コーヒー豆粗粉砕物から微粉および薄片22の少なくとも一部を除去して、図示しない廃棄部に除去された微粉および薄片22を収容して装置外に排出する。一方で、気流発生装置13で発生させた気流によって、香気化合物21および微粉薄片予備除去装置12で除去されなかった微粉および薄片22を含むガスは第1の流路1へと移動される。第1の流路1以降の香気化合物21および微粉および薄片22の流れは、図1と同様である。
以下、香気回収装置が備えることが好ましい各装置について、それぞれの好ましい態様を説明する。
<粉砕装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、焙煎コーヒー豆の粉砕装置を備えることが好ましい。
粉砕装置としては特に制限はない。例えば、ローラーミルなどを用いることができる。
粉砕装置11内で粉砕によって発生するガスは、気流発生装置によって発生する気流によって吸着剤まで運ばれるため発散しづらく、必ずしも粉砕装置は密閉されていなくてもよい。しかし香気化合物をより効率よく回収する観点からは、粉砕装置11は第1の流路1に連通し、その他の部分は密閉された状態で粉砕を行ってもよい。
<微粉薄片予備除去装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、粉砕装置と第1の流路の間に、微粉薄片予備除去装置をさらに備えることが好ましい。
微粉薄片予備除去装置は、粉砕装置と連通し、焙煎コーヒー豆の粉砕によって得られる焙煎コーヒー豆粗粉砕物から微粉および薄片の少なくとも一部を除去することが好ましい。なお、微粉および薄片が除去された焙煎コーヒー豆精製粉砕物(すなわち所望のサイズに粉砕された焙煎コーヒー豆本体の粉砕物)は、飲食品またはその製造に用いることができる。
微粉および薄片の一部または大半が除去され、装置外に排出されてもよい。微粉薄片予備除去装置から第1の流路に移動する微粉および薄片の量が少ないほど、下流の微粉薄片除去装置の負荷を減らすことができる。
微粉薄片予備除去装置としては、公知の装置を用いることができ、振動ふるいや風力分級機などの分級装置を用いることが好ましい。
<第1の流路>
本発明に使用可能な香気回収装置は、粉砕装置と連通し、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物ならびに微粉および薄片を含むガスが通過可能な第1の流路を備えることが好ましい。
第1の流路は、粉砕装置と直接連通していてもよく、微粉薄片予備除去装置を介して粉砕装置と連通していてもよい。
第1の流路の直径(内径)は特に限定されないが、30mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、50mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
微粉薄片予備除去装置12は、第1の流路1に連結させるための吸揚口を備えていてもよい。
<微粉薄片除去装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、第1の流路と連通し、微粉および薄片を除去する微粉薄片除去装置を備える。
微粉薄片除去装置としては、公知の装置を用いることができ、サイクロン式の分離装置(紛体分離装置)を用いることが好ましい。
<第2の流路>
本発明に使用可能な香気回収装置は、微粉薄片除去装置と連通し、微粉および薄片が除去されたガスが通過可能な第2の流路を備えることが好ましい。
本発明に使用可能な香気回収装置は、第2の流路の直径(内径)は特に限定されないが、30mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、50mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。第2の流路は、後述の香気化合物吸着装置に流入するガスの方向が所望のものとなるように、任意に配置できる。
<香気化合物吸着装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、第2の流路と連通した香気化合物吸着装置を備えることが好ましい。
香気化合物吸着装置は、その内部に吸着剤が収容された吸着剤収容部を有し、吸着剤収容部は、ガスの通気方向の両端に網状蓋を有することが好ましい。この網状蓋によって、吸着剤収容部に収容された吸着剤が香気化合物吸着装置外に漏出することを防止し、かつガスを吸着剤に通気することができる。
網状蓋は任意の厚さを有するシート状であり、その大きさは特に限定されず、香気化合物吸着装置からの吸着剤の漏出を防ぐことができる範囲で任意に選択できる。ガスの通過しやすさの観点から、吸着剤収容部のガスの通気方向の断面積以上の面積を有することが好ましい。
網状蓋は、その全体が網状でも、一部が網状でもよい。ガスの通過しやすさの観点から、香気化合物吸着装置または吸着剤収容部の断面に相当する部分が網状であることが好ましい。
網状蓋の目開きは、使用する吸着剤が通過しない範囲で任意に選択できる。10μm〜20mmの範囲内を例示できるが、これに限定されない。
本発明では、香気化合物吸着装置は、吸着剤収容部に収容された吸着剤が占める部分、すなわち吸着剤部分を含むことが好ましい。
本発明では、吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)は特に限定されないが、吸着剤の抵抗を低くする観点から、1000mm以下であることが好ましく、700mm以下であることがより好ましく、500mm以下であることが更に好ましく、400mm以下であることが更に好ましく、300mm以下であることが更に好ましく、200mm以下であることが特に好ましい。例えば、吸着剤部分の長さは、10mm〜800mm、20mm〜400mm、40mm〜200mm、または50mm〜100mmの範囲内であってよい。
吸着剤部分の、ガスの通気方向とは垂直の面の長軸または直径(以下、総じて断面直径と称する)は特に限定されないが、吸着剤の量および吸着剤部分の長さにあわせて制御することが好ましい。吸着剤部分の断面直径は、ガスの通気しやすさの観点から、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
吸着剤量を増やしたい場合、吸着剤部分の断面直径を大きくして吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向)を抑えるのが、通気するガスの流れに対する吸着剤による抵抗を抑える観点から好ましい。
吸着剤量は、吸着剤収容部内に収容可能な量であれば限定されない。使用する吸着剤の嵩容積は、吸着剤収容部の体積と同じでも、それ未満でもよい。換言すれば、吸着剤は、吸着剤収容部内に充填(粗充填または密充填)されていてもよいし、吸着剤を収容した吸着剤収容部に空間が存在してもよい。
香気化合物吸着装置の配置については、図1、2では、香気化合物吸着装置が香気回収装置の設置面と平行(接地面と平行、すなわち水平)になるように設けられているが、当該設置面と垂直でも、その他の角度をなして設けられたものであってもよい。また、ガスの流入および通気方向が香気回収装置の設置面に接近する方向となるように設計しても、設置面から離れる方向となるように設計してもよい。換言すれば、香気化合物吸着装置および吸着剤へのガスの流入および通気方向が、重力方向に対して略反対方向でも、略同一方向でも、直角をなしていても、その他の角度をなしていてもよい。
なお、香気化合物吸着装置を流動層カラムとする場合、使用する吸着剤の嵩容積を吸着剤収容部の体積未満とし、かつ吸着剤に重力方向と略反対方向にガスを流入および通気させればよい。流動層カラムを使用すれば、通気させるガスの流れに対する吸着剤の抵抗を抑えることができる。
香気化合物吸着装置は、吸着剤収容部としてバスケットを備えたものであってもよい。バスケットとしては、側面部に空孔を有するノーマルタイプのバスケットと、側面部に空孔を有さないサイドウォールタイプのバスケットが知られている。側面部に空孔を有さないサイドウォールタイプのバスケットを用いることが、微粉および薄片が除去されたガスが側面から逃げることなく、通気するガスの吸着剤通過距離を長くできる観点から好ましい。
<気流発生装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、粉砕装置から香気化合物吸着装置まで連続した気流を発生させる気流発生装置を備えることが好ましい。この気流発生装置13によって、粉砕装置11、(微粉薄片予備除去装置12、)第1の流路1、微粉薄片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kに連続した気流を発生可能である。
気流発生装置は、送風装置であっても、吸引装置であってもよい。吸引装置の例としては、吸揚ブロワーが挙げられる。
<導入路>
本発明に使用可能な香気回収装置は、微粉および薄片が除去されたガスの流路(第2の流路)に、該流路から分岐し、かつ香気化合物吸着装置と連通する導入路3を備えることが、導入路および吸着剤に微粉および薄片が除去されたガスの一部のみを通気して香気化合物を回収して、吸着剤による抵抗を抑える観点から好ましい。このように香気化合物吸着装置は、導入路を介して第2の流路と連通していてもよい。
導入路の直径(内径)は特に限定されないが、内径が5mm以上であることがより多くのガスを通過させる観点から好ましく、15mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることが更に好ましく、70mm以上であることが更に好ましく、100mm以上であることが更に好ましく、150mm以上であることが更に好ましく、200mm以上であることが更に好ましく、300mm以上であることが特に好ましい。
なお、導入路3は、第2の流路と一体的に成形されたものでも、第2の流路に着脱可能に接続されるものでもよく、導入路3の少なくとも一部が第2の流路2に粘着テープやねじ等の任意の固定手段で固定されてもよい。
導入路3の入口3Aは、第2の流路2のいかなる位置から分岐していてもよい。例えば、図1では第2の流路2の水平(紙面の左右方向)に伸びている位置に設けてあるが、気流発生装置13から鉛直上方向(紙面の上方向)に延びている第2の流路2に設けてもよい。
導入路3の出口3Bは、香気化合物を吸着した後のガスを第2の流路2に戻せるように、第2の流路2に接続させることが好ましい。
また、導入路3の入口3Aおよび出口3Bは、いかなる角度で第2の流路2と接続していてもよく、導入路3は直線状でも、曲線状でも、1以上の箇所で折れ曲がっていてもよい。
また、導入路3の材質は限定されず、例えば、金属製または樹脂製であってよい。
<線速度調整装置>
本発明に使用可能な香気回収装置は、微粉および薄片が除去されたガスの線速度を調整する線速度調整装置4をさらに備えることが好ましい。
線速度調整装置は、送風装置であっても、吸引装置であってもよい。それぞれ、ブロワー、吸引ポンプを例として挙げることができる。
本発明に使用可能な香気回収装置における線速度調整装置の位置は特に限定されず、香気化合物吸着装置に対し、通気させるガスの流れの上流でも下流でもよく、使用する装置によって任意に決定してよい。例えば送風装置であれば上流、吸引装置であれば下流とすればよい。
線速度調整装置4として用いられる吸引装置としては、気流発生装置13よりもポンプ性能が高い吸引装置を用いることが効率的に香気化合物を回収する観点から好ましい。
線速度調整装置4は、導入路3に配置することが好ましい。線速度調整装置4は、導入路の入口3Aに配置しても、導入路の出口3Bに配置してもよい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
実施例1では、焙煎コーヒー豆粉砕時の香気化合物の回収、コーヒー風味改善剤の官能評価を行った。
(1)香気回収
本発明に使用可能な香気回収装置A、比較例1の香気回収装置a1、および比較例2の香気回収装置a2を用いて、焙煎コーヒー豆砕時の香気化合物を回収した。
まず、本実施例で使用する香気回収装置Aの概要を示す。
香気回収装置Aは、図2および図3に示した構成である。具体的には、香気回収装置Aは、粉砕装置11、微粉薄片予備除去装置12、第1の流路1、気流発生装置13、微粉薄片除去装置14、第2の流路2、香気化合物吸着装置Kを備える。なお、図2では、香気化合物吸着装置Kが香気回収装置Aの設置面と平行(接地面と平行、すなわち水平)になるように記載されているが、香気化合物吸着装置Kは当該設置面に対して略垂直に配置し、吸着剤部分のガスの通気方向は重力方向と略同一とした。
香気回収装置Aは、粉砕装置11としてローラーミルを備える。粉砕装置11は微粉薄片予備除去装置12に連通し、その他の部分は密閉された状態で粉砕を行うことができる。
微粉薄片予備除去装置12は、粉砕装置11に連通する。微粉薄片予備除去装置12として、ふるい(目開き0.8mm)を備える振動分級装置を用い、第1の流路1は、微粉薄片予備除去装置12および気流発生装置13に連通する。気流発生装置13は、第1の流路1および第2の流路2に連通する。
香気回収装置Aは、気流発生装置13として吸揚ブロワーを備える。この吸揚ブロワーによって、粉砕装置11、微粉薄片予備除去装置12、第1の流路1、微粉薄片除去装置14、第2の流路2、および香気化合物吸着装置Kに連続した気流を発生可能である。また、線速度調整装置4として吸引ポンプを香気化合物吸着装置Kの当該気流の下流に備え、気流発生装置13とともに気流を発生させる。
香気回収装置Aは、微粉薄片除去装置14としてサイクロン式の分離装置を備える。
第1の流路1および第2の流路2の内径は200mmとした。
香気回収装置Aは、内径200mmの第2の流路2から分岐する導入路3に、香気化合物吸着装置Kを備える。導入路3には、導入路の入口3A以前において第2の流路に流れていたガスの半量が流入するように設計した。香気化合物吸着装置Kには、導入路3に流入したガスの全量が流入する。
また、比較例1として、香気化合物吸着装置Kの代わりに、粉砕装置11の上部から分岐する香気化合物吸着装置k1を備える以外は香気回収装置Aと同様である香気回収装置a1を用意した。香気化合物吸着装置k1は、粉砕装置11の上部から分岐して吸着剤に気流を導入する導入路と、吸着剤から出てきた気流を排出する排出路とを有するものとした。粉砕装置11の上部から分岐する導入路に流れるガス量は、香気回収装置Aの導入路3に流れるガスと同量となるように設計した。
更に、比較例2として、香気化合物吸着装置Kの代わりに、第1の流路1の途中から分岐する香気化合物吸着装置k2を備える以外は香気回収装置Aと同様である香気回収装置a2を用意した。香気化合物吸着装置k2は、内径200mmの第1の流路1から分岐して吸着剤に気流を導入する導入路と、吸着剤から出てきた気流を排出する排出路とを有するものとした。導入路に流れるガス量は、その入口以前に第1の流路1に流れるガスの半量(つまり香気回収装置Aの導入路3に流れるガス量と同じ)が流れるように設計した。
香気化合物吸着装置K、香気化合物吸着装置k1、香気化合物吸着装置k2は全て、同種類で同量の吸着剤を充填した。
そして、香気回収装置A、比較例1の香気回収装置a1、および比較例2の香気回収装置a2を用いて、焙煎コーヒー豆粉砕時の香気化合物を回収した。
具体的には、以下の方法で香気化合物の回収を行った。
気流発生装置13によって気流を発生させた状態で、ローラーミル(粉砕装置11)で焙煎コーヒー豆(L値:24)を100kg/hにて約1mmの粉砕サイズになるように粉砕して、微粉および薄片を含む焙煎コーヒー豆粗粉砕物を得た。
各香気回収装置(A、a1またはa2)を用いて、分級装置(微粉薄片予備除去装置12)において、焙煎コーヒー豆粗粉砕物23から微粉および薄片22の一部を除去して廃棄した。また、微粉薄片予備除去装置12で除去されなかった微粉および薄片22(主としてチャフに由来する微粉および薄片を含む)を、焙煎コーヒー豆を粉砕中の粉砕装置11内のガス(香気化合物21を含むガス)とともに、上記気流によって、微粉薄片予備除去装置12から連通する第1の流路1を通過させた。なお、焙煎コーヒー豆粗粉砕物23からの微粉および薄片22の除去によって、所望のサイズに粉砕された焙煎コーヒー豆精製粉砕物が得られるが、これは図示しない収容部に収容し、香気回収装置A外に出してコーヒー製品の製造に使用するまで保管することができる。
この微粉および薄片22は、微粉薄片除去装置14によって焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気化合物21ならびに微粉および薄片22を含むガスから除去した。
ガスから除去された微粉および薄片22は、微粉薄片除去装置14と連通した廃棄部(図示せず)に収容して廃棄した。
一方で、微粉および薄片22を除去されたガスを、微粉薄片除去装置14と連通する第2の流路2を通過させた。第2の流路を通過するガスの線速度は4.1m/sであった。
焙煎コーヒー豆の粉砕を行っている最中に、導入路3に流入したガスを、香気化合物吸着装置(K、k1、またはk2)の吸着剤収容部Kbにそれぞれ収容(粗充填)された吸着剤に通気して、ガスに含まれる香気化合物21を吸着させた。
各香気化合物吸着装置の吸着剤および通気は、共通して以下の条件とした。なお、吸着剤収容部として、側面部に空孔を有さない、円筒状のサイドウォールタイプのバスケットを用いた。また、吸着剤は、割れを抑制するために、純水を吸収させた後、完全に乾燥させる前に香気化合物吸着装置に充填した。
香気化合物の吸着剤:SP−207(スチレンジビニルベンゼン共重合体系合成吸着剤、三菱ケミカル(株)製)
吸着剤部分の断面直径:100mm
吸着剤への流入ガスの線速度:2.0m/s
吸着剤部分の長さ(ガスの通気方向の長さ):8.0cm
吸着剤の使用量:2500ml
ガスの種類:空気
粉砕および吸着剤部分へのガス通気時間:5時間
本実施例では、吸着剤部分の断面直径は、上述のバスケットの、ガスの通気方向の断面直径(内径)と同一である。
各香気回収装置を用いた5時間の通気後、各香気化合物吸着装置の吸着剤にプロピレングリコール(PG)25kgをSV=10にて通液して、香気化合物21を吸着剤から脱着させた。SV(Space velocity:空間速度)は、1時間当たりに樹脂の容積の何倍量を通液するかを表す単位である。このようにして、香気化合物吸着装置K、k1、およびk2で捕集した香気化合物をそれぞれ含む焙煎コーヒー豆フレーバー(PG溶液としたコーヒー風味改善剤)を得た。これらのコーヒー風味改善剤をそれぞれ、本発明品1、比較品1および比較品2として得た。
ここでは、粉砕に供した500kg(毎時100kgで5時間粉砕)の焙煎コーヒー豆から発生した香気化合物を含有するガスの半量を吸着剤に通気させた(上述の通り、第2の流路2に流れるガスの半量を導入路3および吸着剤に流すよう設計した)ので、吸着剤に焙煎コーヒー豆250kg分の香気化合物を含むガスを吸着させたこととなり、その香気化合物をPGにて脱着して25kgのPG溶液(コーヒー風味改善剤)を得て、香気化合物を発生させた焙煎コーヒー豆の重量に対しコーヒー風味改善剤の重量が10%となるようにして、本発明品1、比較品1および2を調製した。
一方で、焙煎コーヒー豆粗粉砕物の香気化合物を水蒸気蒸留によって回収し、比較品1を調製した。具体的には、粉砕した焙煎コーヒー豆2000gを3Lカラムに収容し、大気圧下にてカラム下部より水蒸気を送り込み2時間かけて水蒸気蒸留を行い、カラム上部より得られ香気化合物を含む水蒸気を冷却管にて凝縮させ、香気化合物を含有する水溶液2000gを得た。次いで、吸着剤(SP−207)50mlに得られた水溶液を通液後、PG200gを吸着剤に通液して吸着した香気化合物を脱着して、200gのPG溶液を水蒸気蒸留フレーバーとして得た。この水蒸気蒸留フレーバーを比較品3とした。ここでも本発明品1、比較品1および2と同様に、本発明品1、比較品1および2と同じように10質量%となるようにして、香気の直接比較ができるようにした。
(2)香気回収装置の負担
香気化合物の回収後、香気化合物を脱着した後の吸着剤が再利用可能かどうかを確認した。
再利用可能性の確認は、香気化合物吸着装置(k1、k2およびK)に収容された吸着剤(以下、それぞれ吸着剤q1、吸着剤q2、および吸着剤Qとする)について、PGによる脱着前および脱着後の通液の圧力を比較することで確認した。具体的には、脱着前および脱着後に、それぞれ超純水への置換を行ってから超純水をSV=10にて流した際の圧力を測定した後、脱着前の圧力に対する脱着後の圧力を算出した。
その結果、吸着剤q1および吸着剤q2は圧力がそれぞれ10倍および5倍であり、目詰まりが発生していたと認められた。このような場合、吸着剤は数回の洗浄または廃棄が必要となる。一方で、吸着剤Qでは圧力の差は同等であり、目詰まりは発生しておらず、数回の洗浄も廃棄も不要であることが確認された。
以上から、本発明に使用可能な香気回収装置によって、吸着剤の再生の手間もコストも軽減されることが確認された。また、比較例で用いた装置では、焙煎コーヒー豆の粉砕時に焙煎コーヒー豆から発生する香気を回収することが、工業的には不適であることが確認された。
(3)コーヒー風味改善剤の官能評価
基材(市販の無糖ブラックコーヒー)に対して、本発明品1、比較品1〜3のコーヒー風味改善剤を、それぞれ下記表2に記載の添加量で添加し、Bx1.0°、レトルト殺菌前のpH6.5の賦香品を調製した。
レトルト殺菌条件を121℃、10分間とし、各賦香品に対してレトルト殺菌を行った。得られたレトルト殺菌後の賦香品はpH5.8であった。
レトルト殺菌後の賦香品のうち、本発明品1、比較品1〜3について、よく訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。パネラー10名の平均的な官能評価結果を下記表1に示す。
Figure 0006771040
上記表1に示すように、本発明品1のコーヒー風味改善剤は、比較品とは異なり、焙煎コーヒー豆を挽いている時の香り、すなわち焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気を感じさせる優れたフレーバーであった。これは、(2)で確認したように吸着剤が微粉および薄片による目詰まりを起こしており、そのため香気化合物の吸着効率が悪く香気の特徴および香りの強さに違いが出たと思われる。
[実施例2] 本発明の風味改善剤の分析値
実施例1と同様に、香気化合物吸着装置K(すなわち、微粉および薄片を除去した後のガスから香気化合物を吸着する装置)を用い、脱着液として実施例1に記載のプロピレングリコールに代えてエタノールを用いた以外は同様にして、焙煎コーヒー豆フレーバー(エタノール溶液としたコーヒー風味改善剤、本発明品2)を得た。焙煎コーヒー豆に対するコーヒー風味改善剤の質量比は、PG溶液の場合(本発明品1)と同様に10%となる。
実施例1と同様にして調製した本発明品1および比較品3、ならびに、上記方法で調製した本発明品2の各コーヒー風味改善剤について、GC/MSを用いて分析した。なお、本発明品1、本発明品2、比較品3はそれぞれ3つずつ調製し、分析に供した。
香気捕集方法として、SBSE(Stir Bar Sorptive Extraction)法を用いた。本発明品1、本発明品2または比較品3が入ったバイアルにゲステル株式会社製のTwister(登録商標)を入れて撹拌した。Twister(登録商標)とは、長さ約1.5cmのStir Bar(スターバー)にPDMS(polydimethyl siloxane)をコーティングしたものであり、液体試料を入れたバイアル中でTwister(登録商標)を攪拌させることにより、液体試料中の成分を抽出できる。
各コーヒー風味改善剤に含まれる香気化合物を抽出後、自動加熱脱着システムでGC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析計)に導入した。
GC/MS測定条件を以下に示す。
GC/MS;7890A GC/5975C inert XL MSD(四重極型質量分析計)(Agilent Technologies社製)
カラム:InertCap−WAX、60mx0.25mmx内径(I.D.)0.25μm (ジーエルサイエンス社製)
キャリアガス:He
モード:コンスタントフロー
カラム流量:1.4mL/分
MS:電子衝撃イオン化法(EIモード)、70eV
注入法:Gerstel TDU
初期温度:20℃
レート:720℃/分
最終温度:260℃
ホールド時間:2分
オーブン初期温度:40℃
ホールド時間:5分
レート:5℃/分
最終温度:230℃
ホールド時間:20分
上記のとおりSBSE法で捕集した香気をGC/MSで分析して得られたトータルイオンクロマトグラムを図4、5に示した。図4は本発明品1の、図5は比較品3のトータルイオンクロマトグラムである。なお、図4、5のRT=23分程度の振り切れたピークは、脱着に使用したPGに帰属するピークである。
図4、5の横軸は保持時間(retention time;RT)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
各コーヒー風味改善剤に含まれる各成分の面積比について、リテンションインデックス(RI)で分類した。
具体的には、RIがアセトイン以下の成分(トップ)と、RIがアセトインより大きい成分に分類した。なお、アセトインのRIは1294であり、アセトインのRTは約15minであった。
得られた各トータルイオンクロマトグラムに基づいて、本発明品1(PG溶液)、本発明品2(エタノール溶液)および比較品3(水蒸気蒸留品)のトータルイオンクロマトグラムの総面積値に対するRIがアセトイン以下の成分(トップ)と、トータルイオンクロマトグラムの総面積値に対するRIがアセトインより大きい成分の面積%を求めた。3つの本発明品1の結果は、それぞれ89:11、90:10、および91:9であり、3つの本発明品2の結果は、それぞれ94:6、93:7、および96:4であり、3つの比較品3の結果は、27:73、29:71、および30:70であった。また、レトルト殺菌前の基材(市販の無糖ブラックコーヒー)についても、上記の方法と同様に、SBSE法で捕集した香気をGC/MSで分析し、同様に各成分の面積%を求めた。得られた結果を下記表2に示した。表2に示す数値は、各品の3つの平均値である。
また、得られた各トータルイオンクロマトグラムに基づいて、本発明品1および比較品3のコーヒー風味改善剤のRIがアセトイン以下の成分(トップ)に対する、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、2−ビニルフランの面積値(対トップの面積%)、およびRIがアセトインより大きい(ミドル以降)に対する、2,6−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジンの面積%(対ミドル以降の面積%)を求めた。これらの面積%は、各品3つ調製したものの3つの平均値である。3つの本発明品1の結果は、2−メチルフランについては2.6%、2.5%、2.4%であり、2−メチルブチルアルデヒドについては5.0%、5.0%、4.8%であり、イソバレルアルデヒドについては3.1%、3.0%、3.1%であり、2,5−ジメチルピラジンについては1.2%、1.8%、1.7%であり、2−エチル−6−メチルピラジンについては1.8%、2.3%、1.8%であった。3つの本発明品2の結果は、2−メチルフランについては1.6%、1.6%、1.5%であり、2−メチルブチルアルデヒドについては1.9%、1.8%、1.7%であり、イソバレルアルデヒドについては1.0%、1.2%、11.3%であり、2,5−ジメチルピラジンについては0.9%、0.5%、0.7%であり、2−エチル−6−メチルピラジンについては1.3%、1.1%、0.8%であった。また、レトルト殺菌前の基材(市販の無糖ブラックコーヒー)についても、上記の方法と同様に、SBSE法で捕集した香気をGC/MSで分析し、同様に各成分の面積%を求めた。得られた結果を下記表3および表4に示した。
Figure 0006771040
Figure 0006771040
Figure 0006771040
また、本発明品1の上記分析で同定された化合物の代表例を下記に示す。
(本発明品1)
(1)RIがアセトイン以下:アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、N−メチルピロール、2−メチル−5−ビニルフラン、ピラジン、フルフリルメチルエーテル、フラン、酢酸エチル、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2−メチルフラン、2−メチルブタナール PG アセタール、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド PG アセタール、イソバレルアルデヒド PG アセタール、アセトイン(RI=1294)。
(2)RIがアセトインより大きい:
アセトール(RI=1321)、フルフラール、2−アセチルフラン、フルフリルアセテート(酢酸フルフリル)、3−メチルピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2,3−ジメチルピラジン、2−メチル−2−シクロペンテノン、2−エチル−3−メチルピラジン、3−エチル−2,5−ジメチルピラジン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−エチルピリジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−ビニルピラジン、酢酸、酢酸アセトール、ギ酸フルフリル、2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、ピロール、酢酸フリル、プロピオン酸アセトール、5−メチル−2−フルフラール、プロピオン酸フルフリル、2−フルフリルメチルジスルフィド、γ−ブチロラクトン、フルフリルアルコール、1−(1−ピロリル)−2−プロパノン、1−フルフリルピロール、ジプロピレングリコール、フェノール。
本発明品2の前述の分析で同定された化合物の代表例については、本発明品1と同じであった(ただし、PGアセタールを除く)。
上記表2より、本発明品1のコーヒー風味改善剤は、RIがアセトイン以下の成分(トップ)の含有量が、RIがアセトインより大きい成分(ミドル以降)の含有量より多く、トップの比重がある程度高い香気バランスであることがわかった。ここで、RIがアセトイン以下の成分は揮発性が高く、基材(市販の無糖ブラックコーヒー)では含有量が少なく、水蒸気蒸留で得られた比較品3でも含有量が少ない。また、RIがアセトインより大きい成分は、揮発性が比較的低く、本発明品1および本発明品2は、RIがアセトイン以下の成分の含有量は多いものの、RIがアセトインより大きい成分もある程度含むために、トップの香りの増強のみならずミドル以降にも十分にボリューム感を付与できることがわかった。
また、上記表3および表4より、本発明品1および本発明品2のコーヒー風味改善剤は、基材および比較品3とは香気化合物のバランスが異なることが分かった。トップの香気化合物としては、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒドおよびイソバレルアルデヒドの含有割合が、基材に比べて高くなっていることがわかった。また、ミドル以降の香気化合物では、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジンの含有量が基材に比べて高くなっていることが分かった。
以上から、比較品3は、すでにミドル以降の香気化合物の比重の高い基材に対し、さらにミドル以降の風味を主として増強するに留まるのに対し、本発明品1および本発明品2は、トップからミドル以降までバランス良く香気を増強できるといえる。
[実施例3] 本発明の風味改善剤(PG溶液)のコーヒー飲料への添加効果および分析値
実施例1と同様にして調製した本発明品1または比較品3を用いた賦香品(レトルト殺菌前およびレトルト殺菌後)ならびに基材(市販の無糖ブラックコーヒー)について、GC/MSを用いて分析した。なお、本発明品1または比較品3を用いた賦香品はそれぞれ3つずつ調製し、分析に供した。
得られた各トータルイオンクロマトグラムから、レトルト殺菌前および後の、市販の無糖ブラックコーヒー(基材)、本発明品1(PG溶液)を添加した無糖ブラックコーヒー、および比較品3(水蒸気蒸留品)を添加した無糖ブラックコーヒーについて、実施例2と同様にして、RIがアセトイン以下の成分(トップ)、RIがアセトインより大きい成分の面積%(対基材のそれぞれの面積%)を求めた。得られた結果を下記表5に示した。
また、得られた各トータルイオンクロマトグラムから、実施例2と同様にして、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−エチル−6−メチルピラジン、および2,5−ジメチルピラジンの面積%(対基材のそれぞれの面積%)を求めた。得られた結果を下記表6に示した。
Figure 0006771040
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上記表6より、本発明品1のコーヒー風味改善剤を用いた賦香品(レトルト殺菌前)において、トップおよびミドル以降の香気の添加効果を確認できた。特に2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、およびイソバレルアルデヒド(以上RIがアセトイン以下の香気化合物)、ならびに2−エチル−6−メチルピラジンおよび2,6−ジエチルピラジン(以上RIがアセトインより大きい香気化合物)の含有量が、基材(市販の無糖ブラックコーヒー)よりも増えていることがわかった。一方で比較品3は、ほとんどミドル以降の香気のみ増加し、トップからミドル以降までバランスよく増加させているとは言い難かった。
また、本発明品1のコーヒー風味改善剤を用いた賦香品(レトルト殺菌後)において、トップおよびミドルの香気の添加効果を確認できた。2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−エチル−6−メチルピラジンおよび2,6−ジエチルピラジンの含有量が、基材(市販の無糖ブラックコーヒー)よりも増えていることがわかった。したがって、レトルト殺菌後も、トップおよびミドルの香気が残存していることがわかった。一方で比較品3は、ミドル以降の香気のみ増加し、トップからミドル以降までバランスよく増加させているとは言い難かった。
したがって上記表6より、本発明品1のコーヒー風味改善剤を用いた賦香品は、レトルト殺菌前およびレトルト殺菌後において、トップの香りとミドル以降の香りとがバランス良く増加されており、それに起因して焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気のみならず、特にミドル以降のボリューム感が十分豊かになったと感じさせ、トップからラストまでの風味のバランスが非常に良好になることがわかった。
上記表6より、本発明品1のコーヒー風味改善剤を用いた賦香品は、注目した2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、およびイソバレルアルデヒドの含有量が、レトルト殺菌前およびレトルト殺菌後において、基材よりも約20%強化されていることがわかった。また、3−エチルピリジンおよび2,5−ジメチルピラジンが基材よりも約20%強化されていることが分かった。
[実施例4]本発明のコーヒー風味改善剤(PG溶液およびエタノール溶液)のコーヒー飲料への添加効果
比較例として、香気化合物吸着装置Kを用い、脱着液として実施例1に記載のプロピレングリコールに代えて中鎖脂肪酸トリグリセライド(花王株式会社製、ココナード ML)(以下、MCT)を用いた以外は同様にして、焙煎コーヒー豆香気組成物1(MCT溶液と)を得て、比較品4とした。焙煎コーヒー豆に対するこのコーヒー香気組成物の質量比は、プロピレングリコールの場合(本発明品1)と同様に10%となる。なお、MCTは飲食品分野において溶剤として一般的に使用される植物性油である。
また、さらなる比較例として、導入路3の気流を30Lタンクに収容した25kgのMCTに通気して、MCTに香気化合物21を捕集して、焙煎コーヒー豆香気組成物2(MCT溶液)を得て、比較品5とした。比較品5においても、本発明品1、2、比較品4と同様に、焙煎コーヒー豆250kg分の香気化合物を含むガスを25kgの大豆油に5時間通気して、香気化合物を発生させた焙煎コーヒー豆の重量に対しコーヒー風味改善剤の重量が10%となるようにしてコーヒー香気組成物を得た。
次いで、本発明品1、本発明品2、比較品4、および比較品5を、基材として用意した2種の市販のコーヒー飲料(市販の無糖ブラックコーヒーおよびミルク入りコーヒー)に表7に記載のとおりに添加して、実施例3と同様にレトルト殺菌して、本発明品のコーヒー飲料(飲料A〜F)および比較品(飲料a〜d)のコーヒー飲料を得た。得られた各コーヒー飲料について、基材(すなわち、フレーバーを添加していない市販コーヒー飲料)を対照品として、対照品と比べた本発明品および比較品のコーヒー飲料の風味の好ましさについて、よく訓練された20名のパネラーによる官能評価を行った。その結果を表7に示す。なお、官能評価では、以下に記載の基準に従ってスコア付けを行った。さらに、表8に、前記パネラーから得られた平均的なコメントを示す。
(官能評価スコア)
(1)嗜好性について
5:対照品より顕著に好ましい
3:対照品よりやや好ましい
1:対照品と同等に好ましい
0:コーヒーとは異なる違和感のある風味があり対照品より好ましくない
(2)トップの風味について
5:対照品より顕著に増強され甘く香ばしい香りが強く感じられる
3:対照品よりやや増強され甘く香ばしい香りが感じられる
1:対照品と同等の強度である
0:対照品より弱い、またはコーヒー風味とは異なる違和感がある
(3)ミドルの風味について
5:対照品より顕著に増強されボリューム感と余韻が強く感じられる
3:対照品よりやや増強されボリューム感と余韻が感じられる
1:対照品と同等の強度である
0:対照品より弱い、またはコーヒー風味とは異なる違和感がある
Figure 0006771040
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表7および表8に示すとおり、比較品の飲料が基材より若干好ましいという評価であったのに対して、本発明品の飲料は基材の風味を顕著に改善し、嗜好性を高めるものであることがわかった。
また、比較品の飲料は、トップの風味改善効果は認められるものの、ミドル以降の風味の増強に乏しく、コーヒー飲料全体の嗜好性があまり高まっていなかった。一方で、本発明品の飲料は、トップの風味改善効果が比較品より高いことに加えて、ミドル以降の風味改善効果が高く(例えば、ボリューム感、ミルク風味のコクやフレッシュ感、ラストの余韻など)、コーヒー飲料全体として嗜好性を顕著に高めるものであった。
以上から、本発明のコーヒー風味改善剤は、溶剤としてプロピレングリコールやエタノールを用いることで、トップの香気のみならずミドル以降の風味も改善および増強させることができ、コーヒー飲料の風味全体をより自然で好ましいものにすることが確認された。
[実施例5] 本発明のコーヒー風味改善剤を添加したコーヒー飲料の分析値
実施例4で得られた各種無糖ブラックコーヒー飲料およびミルク入りコーヒー飲料について、実施例2と同様にして、これらの飲料に含まれる香気化合物をガスクロマトグラフィによって分析した。その結果を表9に示す。また、表10および表11に、本発明の飲料C、Fについて、基材に対して増加が見られた主な化合物(実施例2、3に記載した2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、2−ビニルフラン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジンを除く)、およびその増加率(基材を100%とした場合の割合)を記載した。
Figure 0006771040
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表9に示すように、本発明品のコーヒー飲料は、無糖ブラックコーヒーでもミルク入りコーヒーでも、RIがアセトイン以下の化合物(トップの香気化合物)も、RIがアセトインより大きい化合物(ミドル以降の香気化合物)も基材より増加することが確認され、実施例4のトップのみならずミドル以降の風味が増強されたという官能評価の結果が裏付けられているといえる。
また、表10および表11は、基材のコーヒー飲料に本発明品1および本発明品2を同量添加した場合(すなわち飲料C、F)に、基材のコーヒー飲料より含有量の増加が見られた化合物例を挙げたものだが、トップの香気化合物の中に大幅に増加した化合物が見られ(例えば、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、酢酸エチル)、かつ、ミドル以降にも増加した化合物が多く見られた(例えば、3−エチルピリジン、2,6−ジエチルピリジン)。
以上のように、本発明のコーヒー風味改善剤は、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物の溶剤として特定の溶剤を使用することで、トップのみならずミドル以降の風味にも顕著な改善効果を奏するものであり、従来にないバランスのよい風味の改善効果をもたらすことができる。
1 第1の流路
2 第2の流路
3 導入路
3A 導入路の入口
3B 導入路の出口
4 線速度調整装置
11 粉砕装置
12 微粉薄片予備除去装置
13 気流発生装置
14 微粉薄片除去装置
21 香気化合物
22 微粉および薄片
23 焙煎コーヒー豆粗粉砕物
24 排出ガス
K 香気化合物吸着装置
Ka1、Ka2 網状蓋
Kb 吸着剤収容部
k1 比較例1で用いた香気化合物吸着装置
k2 比較例2で用いた香気化合物吸着装置

Claims (6)

  1. 焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気化合物を含む溶液であるコーヒー風味改善剤であって、
    前記溶液が条件A1を満たすプロピレングリコール溶液、条件B1を満たすエタノール溶液、またはこれらの組み合わせである、コーヒー風味改善剤:
    条件A1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしプロピレングリコールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が90%以上95%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が5%超10%以下である;
    条件B1:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラムにおいて、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2,5−ジメチルフラン、3−ヘキサノン、2−ビニルフラン、ピリジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、および3−エチルピリジンのピークを有し、前記クロマトグラムのすべてのピークの合計面積(ただしエタノールを除く)に対する、リテンションインデックスがアセトイン以下のすべてのピークの合計面積の割合が93%以上98%未満、リテンションインデックスがアセトインより大きいすべてのピークの合計面積の割合が2%超7%以下である。
  2. 前記プロピレングリコール溶液がさらに条件A2を満たす、および/または前記エタノール溶液がさらに条件B2を満たす、請求項1に記載のコーヒー風味改善剤:
    条件A2:以下の測定条件で測定した際、RIがアセトイン以下のクロマトグラムのピークの面積の合計値に対して、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒドのピーク面積値がそれぞれ0.1〜5.0%、1.0〜10%、1.0〜10%であり、RIがアセトインより大きいピークの面積の合計値に対して、2,5−ジメチルピラジンおよび2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積値がそれぞれ0.1〜2.5%および0.5〜3.0%である;
    条件B2:以下の測定条件で測定した際、RIがアセトイン以下のクロマトグラムのピークの面積の合計値に対して、2−メチルフラン、2−メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒドのピーク面積値がそれぞれ0.05〜5.0%、1.0〜10%および1.0〜10%であり、RIがアセトインより大きいピークの面積の合計値に対して、2,5−ジメチルピラジンおよび2−エチル−6−メチルピラジンのピーク面積値が、それぞれ0.1〜2.0%および0.1〜2.5%である;
    測定条件:四重極型質量分析計を備えるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて、極性カラムを使用して、70eVにおける電子衝撃イオン化法(EIモード)で得たトータルイオンクロマトグラム。
  3. 前記プロピレングリコール溶液がさらに2−メチルブチルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、2−メチルブタナールプロピレングリコールアセタール、2−メチルフランプロピレングリコールアセタール、およびイソバレルアルデヒドプロピレングリコールアセタールからなる群から選択される1以上を含む、請求項1または2に記載のコーヒー風味改善剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーヒー風味改善剤を、0.01〜10質量%含有する、飲食品。
  5. 容器詰飲料である、請求項4に記載の飲食品。
  6. 加熱殺菌された、請求項4または5に記載の飲食品。
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