JP6770955B2 - 耐熱分解性に優れたポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

耐熱分解性に優れたポリカーボネート樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物と、その樹脂組成物を用いた成形体に関する。
従来、ポリカーボネート樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性を有し、耐熱性も良好な樹脂として知られているため、これらの特徴を生かして種々の分野に使用されている。しかし、ポリカーボネート樹脂は、耐薬品性、成形加工性がよくなく、衝撃強度の厚さ依存性を有するなどの欠点を有している。
一方、熱可塑性ポリエステル樹脂は、耐薬品性、成形加工性に優れているが、耐衝撃性、寸法安定性等に劣る欠点を有している。
このようなそれぞれの材料の特徴を生かし、欠点を補完することを目的として種々の樹脂組成物が提案されている。例えば、自動車部品等に要求される耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、成形性等を同時に満足させる試みが行われている。
現在、種々の工業分野において、金属製部材の、樹脂成形体(以下単に「成形体」ということがある)からなる樹脂製部材への代替が盛んに行なわれている。例えば、携帯電話、パソコンハウジング等の電化製品用部材や、自動車のフェンダー、ドアパネル、バックドアパネル等の車両用部材には、軽量化要求が強く、金属から樹脂に置き換える面積も広くなることで、金属代替による樹脂成形体の大型化や成形体形状の薄肉化が進められている。成形体の大型化や薄肉化に伴い、従来よりも大型の成形機を使用する必要がある為、成形時における樹脂への熱履歴や、金型充填時のせん断発熱により樹脂が熱分解しやすくなり、成形体表面に熱分解ガスによる外観不良(フラッシュ)等が発生する。なお、フラッシュは、シルバー又は銀条とも呼ばれる。
樹脂の熱分解を抑えるために、特許文献1では、ポリカーボネート樹脂と、ビスフェノール類のポリアルキレングリコール等で変性されたポリエステルーポリエーテル共重合体と、からなる樹脂組成物が提案されている。該樹脂組成物は優れた流動性を有し、薄肉形状でもせん断発熱が抑制されることから、該樹脂組成物を成形材料として用いた場合には、外観不良のない大型又は薄肉の成形体を得ることができる。しかし、成形体の更なる大型化や薄肉化、成形体の使用環境の更なる高温化等が進行する現状では、より一層の高耐熱性・高耐熱分解性を有する成形体を与え得る樹脂組成物が求められている。
国際公開WO2013/162043号公報
本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物において、優れた耐熱性及び耐熱分解性、低線膨張係数を有し、外観及び塗装後の外観の良好な成形体を与えることでき、さらに前記した各特性のバランスに優れた樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含むマトリックス樹脂成分に対して、ガラス転移温度が110℃以上の非晶性熱可塑性樹脂及び数平均長径が0.5μm以上45μm以下の板状フィラーのそれぞれ特定量を加えた樹脂組成物が、自動車部材などの大型成形体や薄肉形状の成形体に適した、優れた耐熱性(荷重たわみ温度)、耐熱分解性(示差熱熱重量同時測定装置による重量減少測定)、低線膨張係数を有することを見出し、さらに、該樹脂組成物が、分解ガスによる成形体表面のフラッシュ(銀状のスジ)の発生が顕著に抑制された良好な外観、及び塗装後の美麗な外観を有する成形体を与えることができ、さらに前記した各特性をバランス良く併せ持つことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1)(A)ポリカーボネート樹脂35重量%以上95重量%以下、及び(B)熱可塑性ポリエステル樹脂5重量%以上65重量%以下を含有する樹脂成分100重量部、ガラス転移温度が110℃以上の(C)非晶性熱可塑性樹脂1重量部以上20重量部以下、並びに数平均長径が0.5μm以上45μm以下の(D)板状フィラー1重量部以上50重量部以下を含むポリカーボネート樹脂組成物。
2)(C)非晶性熱可塑性樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂と非相溶であり、かつ(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と非相溶である、上記1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3)(C)非晶性熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂、変性スチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂である、上記1)又は2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4)荷重たわみ温度が110℃以上120℃以下であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5)示差熱熱重量同時測定装置における重量減少開始温度が410℃以上420℃以下であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6)上記1)〜5)に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
7)上記6)に記載の成形体であり、最大投影面積が10,000mm2以上10,000,000mm2以下である成形体。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性(荷重たわみ温度)及び耐熱分解性(示差熱熱重量同時測定装置による重量減少測定)に優れ、低線膨張係数を有し、優れた外観及び塗装後の外観を有する成形体を与えることができる。
実施例2で得られた樹脂組成物のペレットの透過型電子顕微鏡写真である。 実施例6で得られた樹脂組成物のペレットの透過型電子顕微鏡写真である。 比較例4で得られた樹脂組成物のペレットの透過型電子顕微鏡写真である。
(ポリカーボネート樹脂組成物)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(以下単に「本発明樹脂組成物」ということがある)は、(A)ポリカーボネート樹脂35重量%以上95重量%以下、及び(B)熱可塑性ポリエステル樹脂5重量%以上65重量%以下を含有する樹脂成分(以下「マトリックス樹脂成分」ということがある)100重量部、ガラス転移温度が110℃以上の(C)非晶性熱可塑性樹脂を1重量部以上20重量部以下、並びに数平均長径が0.5μm以上45μm以下の(D)板状フィラー1重量部以上50重量部以下を含む。マトリックス樹脂成分は、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)熱可塑性ポリエステル樹脂との合計で100重量部となることが好ましい。また、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)熱可塑性ポリエステル樹脂との合計100重量部に対して、ガラス転移温度が110℃以上の(C)非晶性熱可塑性樹脂を1重量部以上20重量部以下、並びに数平均長径が0.5μm以上45μm以下の(D)板状フィラー1重量部以上50重量部以下を含むことがさらに好ましい。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性を更に向上させるために、マトリックス樹脂成分100重量部に対し、(E)耐衝撃性改良剤を0.5重量部以上40重量部以下含むことが好ましい。(E)耐衝撃性改良剤の含有量は、耐熱性、剛性、成形性等の観点からより好ましくは1重量部以上20重量部以下であり、本発明樹脂組成物の成形体を好ましい用途である車両用部材として用いる場合に、必要な耐衝撃強度と耐熱性とを得る観点からは、さらに好ましくは2重量部以上10重量部以下である。
本発明樹脂組成物は、耐熱性をさらに高める観点から、ISO75に準じて1.80MPa荷重での荷重たわみ温度が110℃以上120℃以下であることが好ましい。また、本発明樹脂組成物は、耐熱分解性をさらに高める観点から、示差熱熱重量同時測定装置により測定される重量減少開始温度が410℃以上420℃以下であることが好ましい。さらに、本発明樹脂組成物は、荷重たわみ温度が110℃以上120℃以下であり、かつ重量減少開始温度が410℃以上420℃以下であることにより、耐熱性、耐熱分解性、低線膨張係数、外観性、塗装外観性といった各特性を一層高水準でかつ非常にバランス良く併せ持つことができる。なお、前記のような荷重たわみ温度及び重量減少開始温度は、本明細書の記載に基づいて、成分やその含有量を選択することにより得ることができる。
本発明樹脂組成物は、(A)〜(D)の各成分の分散状態に特徴を有する。その特徴は、例えば、ペレット形態の本発明樹脂組成物を作製し、該ペレットの透過型電子顕微鏡写真から明らかになる。すなわち、該電子顕微鏡写真による分散形態は、そのペレット中において、(A)ポリカーボネート樹脂中(海)に(B)熱可塑性ポリエステル樹脂(島)と(C)非晶性熱可塑性樹脂(島)がそれぞれ独立して分散し、かつ板状フィラー(D)の大部分又は全体が、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂で覆われてなることを特徴とする。このように、一実施形態の本発明樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂中に(B)熱可塑性ポリエステル樹脂及び(C)非晶性熱可塑性樹脂がそれぞれ独立して分散した海/島/島構造を有し、板状フィラー(D)が主として(B)熱可塑性ポリエステル樹脂中に存在する分散構造を有している。
図1〜図2の透過型電子顕微鏡写真(倍率10000)は、該電子顕微鏡写真の全域に拡がる相対的に濃い灰色部分(海)1中に、相対的に薄い灰色部分(島)2、3がそれぞれ独立して存在する海/島/島構造を示している。灰色部分2は、複数の黒い部分4を覆って内包することがあり、概して一方向に長い細長い領域である。灰色部分3は、黒い部分4を内包することがなく、概してほぼ楕円〜真円に近い形状の領域である。ここで、灰色部分1が(A)ポリカーボネート樹脂、灰色部分2が(B)熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、灰色部分3が(C)非結性熱可塑性樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)、黒い部分4が複数の(D)板状フィラーの集合体である。このような分散構造が本発明の効果を得る上での一因になっていると考えられる。
以下、本発明樹脂組成物の各成分について、さらに詳しく説明する。本明細書では、「以上、以下」という表現を「〜」という表現で置き換えることがある。その逆もある。例えば、「10重量部以上90重量部以下」は「10〜90重量部」を意味し、「110〜120℃」は「110℃以上120℃以下」を意味し、「0.2〜0.8dl/g」は「0.2dl/g以上0.8dl/g以下」を意味する。数値範囲の単位はここに記載した単位(重量部、℃、dl/g)に限定されるものではない。
本発明樹脂組成物において、マトリックス樹脂成分は、(A)ポリカーボネート樹脂と、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と、を含有する。
<(A)ポリカーボネート樹脂>
本発明に用いる(A)ポリカーボネート樹脂とは、フェノール性水酸基を2個有する化合物(以下「2価フェノール」ということがある)より誘導されるポリカーボネート樹脂であり、通常2価フェノールとホスゲン、あるいは2価フェノールと炭酸ジエステルとの反応により得られる樹脂のことである。
前記2価フェノールとしては、特にビスフェノールAが好適であるが、これに限定されるものではない。
(A)ポリカーボネート樹脂の分子量としては、耐衝撃性、耐薬品性、成形加工性等の観点から、粘度平均分子量で10,000〜60,000範囲のものが好ましく、12,000〜30,000がより好ましく、15,000〜20,000がさらに好ましい。
(A)ポリカーボネート樹脂の含有量は、マトリックス樹脂成分全量の35重量%以上95重量%以下、好ましくは40重量%以上95重量%以下であり、流動性と耐熱性、機械物性のバランスの観点から、60重量%以上90重量%以下がより好ましく、70重量%以上80重量%以下がさらに好ましい。
<(B)熱可塑性ポリエステル樹脂>
本発明に係る(B)熱可塑性ポリエステル樹脂は、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸、またはエステル形成能を持つそれらの誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、その他の2価のアルコール、又はエステル形性能を有するそれらの誘導体等を用いて得られる飽和ポリエステル樹脂をいう。
飽和ポリエステル樹脂の中でも、加工性、機械物性、電気的性質、耐熱性などのバランスに優れるという点で、ポリアルキレンテレフタレート樹脂が好ましい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂が挙げられるが、耐熱性及び耐薬品性が優れるという点で、特にポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
本発明の(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は、マトリックス樹脂成分全量の5重量%以上65重量%以下、好ましくは5重量%以上60重量%以下であり、流動性と耐薬品性、耐熱性のバランスの観点から、10重量%以上40重量%以下がより好ましく、20重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
本発明で使用する(B)熱可塑性ポリエステル樹脂は必要に応じ、物性を大きく低下させない程度の割合で、他の成分を共重合することができる。共重合の成分としては、公知の酸成分、アルコール成分および/またはフェノール成分、あるいは、エステル形成能を持つこれらの誘導体が使用できる。
共重合可能な酸成分としては、例えば、2価以上の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、2価以上の炭素数4〜12の脂肪族カルボン酸、さらには、2価以上の炭素数8〜15の脂環式カルボン酸、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。共重合可能な酸成分の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボジフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4’−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いられる。これらのなかでも、得られた樹脂の物性、取り扱い性および反応の容易さに優れるという理由から、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸が好ましい。
共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分としては、例えば、2価以上の炭素数2〜15の脂肪族アルコール、2価以上の炭素数6〜20の脂環式アルコール、炭素数6〜40の2価以上の芳香族アルコール又は、フェノール、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステルが挙げられる。これらの中でも、得られた樹脂の物性、取り扱い性、反応の容易さに優れるという理由から、エチレングリコールおよびブタンジオールが好ましい。
さらに、ポリアルキレングリコール単位を一部共重合させてもよい。ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、および、これらのランダムまたはブロック共重合体、ビスフェノール化合物のアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらのランダムまたはブロック共重合体等)付加物等の変性ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。これらの中では、共重合時の熱安定性が良好で、かつ、本発明樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性があまり低下しにくい等の理由から、分子量500〜2000のビスフェノールAのポリエチレングリコール付加物が好ましい。
これらの(B)熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独で使用してもよく、または、2種以上併用しても良い。
本発明における(B)熱可塑性ポリエステル樹脂は、公知の重合方法、例えば、溶融重縮合、固相重縮合、溶液重合等によって得ることができる。また、重合時に樹脂の色調を改良するために、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニルの化合物を、1種または2種以上添加しても良い。
本発明で使用される(B)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量には特に限定はないが、フェノール/テトラクロロエタンが重量比で1/1の混合溶液中、25℃、0.5g/dlでの対数粘度(IV)が0.3〜1.00dl/gが好ましく、成形性・耐熱性・低線膨張性のバランスをより向上させる観点から、IV値は0.40〜0.85dl/gの範囲がより好ましい。
本発明樹脂組成物において、マトリックス樹脂成分は、通常はポリカーボネート樹脂35〜95重量%、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を5〜65重量%を含み、好ましくはポリカーボネート樹脂40〜95重量%、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を5〜60重量%を含み、より好ましくはポリカーボネート樹脂60〜90重量%、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を10〜40重量%を含み、さらに好ましくはポリカーボネート樹脂70〜80重量%、及び熱可塑性ポリエステル樹脂を20〜30重量%を含む。
本発明樹脂組成物は、上記マトリックス樹脂成分と共に、(C)非晶性熱可塑性樹脂及び(D)板状フィラーを必須成分として含み、さらに必要に応じて(E)耐衝撃性改良剤、安定剤、及び樹脂用添加剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を任意成分として含むことができる。
<(C)非晶性熱可塑性樹脂>
本発明における、(C)非晶性熱可塑性樹脂は、110℃以上のガラス転移温度を有する。(C)非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリアリレート樹脂、及び変性スチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。(C)非晶性熱可塑性樹脂を添加することにより、耐熱分解性・耐熱性を向上させることができる。また、(C)非晶性熱可塑性樹脂と他ポリマーとのポリマーアロイやポリマーブレンドのような混合品を用いることもできる。
本発明における、(C)非晶性熱可塑性樹脂としては、耐熱分解性の観点から(A)ポリカーボネート樹脂および(B)熱可塑性ポリエステルと非相溶性であることが好ましい。すなわち、(A)ポリカーボネート樹脂および(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と非相溶である(C)非晶性熱可塑性樹脂が好ましい。本発明では、(C)非晶性熱可塑性樹脂がマトリックス樹脂成分と十分相溶せず、海島構造を形成することにより、本発明樹脂組成物の上述した好ましい各特性が高水準でかつバランス良く発現するものと考えられる。
本発明における、非相溶性・相溶性とは、(A)ポリカーボネート樹脂または(B)熱可塑性ポリエステル樹脂:(C)非晶性熱可塑性樹脂=1:1(重量比)で280〜330℃で混練して得られた樹脂組成物(X)のガラス転移温度から判断する。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)において10℃/分で昇温して測定される。
非相溶性とは、前記樹脂組成物(X)中の(A)ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(A−Tg)(℃)または(B)熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(B−Tg)(℃)と(C)非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度(C−Tg)(℃)に帰属されるそれぞれのガラス転移温度が、混練する前のそれぞれのガラス転移温度から±20℃以内に位置することで特徴付けられ、より好ましくは±15℃以内である。
相溶性とは、前記樹脂組成物(X)中において(A−Tg)(℃)または(B−Tg)(℃)と(C−Tg)(℃)それぞれに帰属されるガラス転移温度が観察されず、単一のガラス転移温度が観察されるか、もしくは前記樹脂組成物(X)中の(A−Tg)(℃)または(B−Tg)(℃)と(C−Tg)(℃)が前記の相溶性の判定条件を満たさないことで特徴付けられる。
(C)非晶性熱可塑性樹脂としては、耐熱分解性と流動性の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂がより好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。耐熱性の観点から、ポリエーテルイミド樹脂がより好ましい。また、成形体の塗装後の外観(塗装外観性)に影響を与える成形体表面粗さの観点から、変性スチレン系樹脂がより好ましい。
本発明におけるポリエーテルイミド樹脂とは、脂肪族系、脂環族系または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば特に限定されない。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル結合以外の構造単位、例えば、芳香族エステル単位、脂肪族エステル単位、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記一般式1で示される構造単位を有する単独重合体または共重合体である。
Figure 0006770955
(式中、2つのR1は同一又は異なって水素原子、第一級アルキル基、第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基又は炭化水素オキシ基を表す。2つのR2は同一又は異なって第一級アルキル基、第二級アルキル基、アリール基又はアミノ基を表す。nは10以上の整数を表す。)
1もしくはR2で表される第一級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−メチルペンチル,3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、n−ヘプチル基等の炭素数1〜7の鎖状第一級アルキル基が挙げられる。第二級アルキル基の好適な例としては、イソプロピル、sec−ブチル又は1−エチルプロピルが挙げられる。好適なポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなる単独重合体が挙げられる。好適な共重合体としては、上記一般式1で示される構造単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組み合わせからなるランダム共重合体が挙げられる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中、30℃で測定した固有粘度が、0.2〜0.8dl/gであるのが好ましく、より好ましくは0.25〜0.7dl/gのものであり、特に好ましくは0.3〜0.6dl/gのものが好適に使用される。固有粘度が0.2dl/g未満のものは、工業的に生産が難しい上に本発明樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となるため好ましくなく、0.8dl/gを超えるとゲル成分が多く、本発明樹脂組成物から形成される成形体外観が悪化する。
尚、ポリフェニレンエーテル樹脂の見かけ粘度を下げるため、ポリフェニレンエーテル樹脂と相溶性のスチレン系樹脂をポリフェニレンエーテル樹脂に対して最大35重量%まで含有させることができる。ここでいうスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。スチレン系樹脂量が35重量%超では、ポリフェニレンエーテルに比較し耐熱性の低下が起こるため、好ましくない。
本発明におけるポリスルホン系樹脂とは、主鎖に芳香環基とその結合基としてスルホン基を有する熱可塑性樹脂であり、一般にポリスルホンと、ポリエーテルスルホンと、ポリフェニルスルホンとに大別される。
本発明におけるポリアリレート樹脂とは、芳香族ジカルボン酸とビスフェノール類を繰り返し単位とする樹脂である。
ビスフェノール類の具体例として、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3,5ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは、2種類以上を混合して使用しても良い。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが経済的な観点から好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン等が挙げられ、なかでもテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明における変性スチレン系樹脂とは、芳香族ビニル化合物由来の構成単位を含むスチレン系樹脂とこれに共重合可能な他のビニル単量体(I)との共重合体、及び前記芳香族ビニル化合物とこれに共重合可能な他のビニル単量体(II)との共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
ここで、芳香族ビニル化合物とは、ビニル基またはアルキルエテニル基(アルキル基が置換したビニル基)がベンゼン環に結合した芳香族ビニル化合物である。該芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。該芳香族ビニル化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
芳香族ビニル化合物由来の構成単位を含むスチレン系樹脂としては、前記芳香族ビニル化合物の単独重合体、同族重合体、前記芳香族ビニル化合物とこれに共重合可能な他のビニル単量体(III)との共重合体等が挙げられる。前記共重合体において、ビニル単量体(III)の好ましい具体例としては、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸C1〜4アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
変性スチレン系樹脂のうち、スチレン系樹脂とそれに共重合可能な他のビニル単量体(I)との共重合体において、ビニル単量体(I)としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物などが挙げられる。これらの中でも、成形体の耐熱性、耐熱分解性だけでなく、塗装外観性の観点から、マレイミド系単量体が好ましく、N−フェニルマレイミドがさらに好ましい。ビニル単量体(I)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
変性スチレン系樹脂のうち、前記芳香族ビニル化合物とこれに共重合可能な他のビニル単量体(II)との共重合体において、ビニル単量体(II)としては、上記ビニル単量体(I)(III)の具体例として挙げた単量体群から選ばれる1種又は2種以上を使用できる。その中でも、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体
、マレイミド系単量体などが好ましい。
変性スチレン系樹脂の中でも、スチレン由来の構成単位及びN−フェニルマレイミド由来の構成単位を含む共重合体、スチレン由来の構成単位、N−フェニルマレイミド由来の構成単位及びアクリロニトリル由来の構成単位を含む共重合体、スチレン由来の構成単位、N−フェニルマレイミド由来の構成単位及びメタクリル酸アルキル(好ましくはメタクリル酸メチル)由来の構成単位を含む共重合体などがさらに好ましい。これらの共重合体を、本発明のように(A)ポリカーボネート樹脂と(B)熱可塑性ポリエステル樹脂とを含むマトリックス樹脂成分に対して、(D)平板状フィラーと共に配合した場合に、耐熱性を向上させるだけでなく、得られる成形体の表面粗度を小さくし、外観塗装性を向上させ得ることは従来から知られていない。
スチレン由来の構成単位及びN−フェニルマレイミド由来の構成単位を含む共重合体は市販されており、例えば、ポリイミレックス(商標名)PSX0371、PAS1460、PLM203(いずれも(株)日本触媒製)等が挙げられる。
本発明樹脂組成物における(C)非晶性熱可塑性樹脂の含有量は、マトリックス樹脂成分100重量部に対して、耐熱分解性・耐熱性を向上させる観点から、1重量部以上20重量部以下である。含有量の下限は、耐熱分解性・耐熱性の観点、成形性と流動性の観点から、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上である。含有量の上限は、
成形体の機械強度の低下や製品のコストアップを防止する観点から、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。すなわち、(C)非晶性熱可塑性樹脂の1重量部以上20重量部以下という含有量範囲において、含有量範囲の下限は、1重量部以上から2重量部以上又は5重量部以上に変更することができ、また含有量範囲の下限は、20重量部以下から15重量部以下又は10重量部以下に変更することができる。
<(D)板状フィラー>
本発明に係る(D)板状フィラー(以下単に「フィラー」ということがある)は、例えば、本発明樹脂組成物の成形体の線膨張性を小さくすることを目的の一つとして用いられる成分であり、シリカやアルミナを主成分とするアルカリ性の無機物である。フィラー形状としては平板状、薄片状、鱗片状等が挙げられる。
本発明では、(D)板状フィラーの数平均長径が0.1〜45μmであることを要し、成形体の低線膨張性、表面外観の観点から、好ましくは0.1〜25μmである。フィラーの長径とは、フィラーに含まれる最長の直線の長さ、すなわちフィラーの面方向における最大長さを意味する。フィラーの数平均長径は、走査型電子顕微鏡(SEM)において1視野当たり5個のフィラーを任意に選定し、選定したフィラーの長径を測定し、この測定を20視野について実施し、得られた測定値を算術平均した値である。また、フィラーの数平均のアスペクト比、即ち、フィラーの長径/フィラーの厚さは、好ましくは2〜200、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜75の範囲である。なお、フィラーの厚さとは、フィラーに含まれる、フィラーの長径である直線を含む最大の平面に垂直な、直線の長さ、すなわちフィラーの厚さ方向(フィラーの長径である直線を含む最大の平面に対して垂直な方向)の最大長さを意味する。また、数平均アスペクト比は、前述のようにしてフィラーの長径を測定する際に、フィラーの厚さをも測定して当該フィラーのアスペクト比を算出し、得られた計算値を算術平均した値である。
本発明樹脂組成物における(D)板状フィラーの含有量は、マトリックス樹脂成分100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下である。含有量の下限は、低線膨張性、衝撃強度の観点から、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上である。含有量の下限は、成形体の表面粗さや成形体塗装性の観点から、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下である。すなわち、(D)板状フィラーの1重量部以上50重量部以下という含有量範囲において、含有量範囲の下限は、1重量部以上から3重量部以上又は5重量部以上に変更することができ、また含有量範囲の上限は、50重量部以下から40重量部以下又は35重量部以下に変更することができる。
本発明に係る(D)板状フィラーとしては、シリカやアルミナを主成分としかつ板状の形状を有するフィラーであれば特に限定されないが、成形体中での各成分の分散状態を実現させる観点から、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレーク、板状アルミナ、合成ハイドロタルサイトからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、本発明の寸法安定性向上効果の観点から、マイカ、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、カオリン、ガラスフレークがより好ましく、耐衝撃性、流動性、製品外観のバランスの観点から、マイカ、タルク、ガラスフレーク、カオリンがさらに好ましく、特に好ましいのはマイカ、カオリン、タルクである。
前記マイカとしては、天然、合成のどちらでもよく、また、白雲母、黒雲母、金雲母のいずれでも良い。
(D)板状フィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
<(E)耐衝撃改質剤>
前記(E)耐衝撃改良剤としては、(E1)多段グラフト重合体、(E2)ポリオレフィン系重合体、(E3)オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体及び熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
<(E1)多段グラフト重合体>
前記多段グラフト重合体(コア型/シェル型グラフトポリマー)とは、ゴム状弾性体にビニル系化合物をグラフト重合させたものである。
前記ゴム状弾性体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好ましく、より好ましくは−40℃以下のものである。
このようなゴム状弾性体の具体例としては、例えばポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチルゴム、シリコン系/アクリル酸ブチル複合ゴムなどのアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系ゴム、ポリジメチルシロキサン系ゴム、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体系ゴムが例示される。
これらの中でも、耐衝撃性の面より、アクリル系ゴムが好ましく、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体などがさらに好ましい。ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体の具体的なゴムとしてブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体が例示でき、ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体がより好ましく使用される。前記ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体のうちでも、アクリル酸ブチル50〜70重量%とブタジエン30〜50重量%との共重合体が耐候性、耐衝撃性から好ましい。
ゴム状弾性体の平均粒子径は特に限定はないが、0.05〜2.00μmの範囲のものが好ましく、0.1〜0.4μmがより好ましい。また、ゴム状弾性体としてはメチルエチルケトン溶剤に不溶なゲルを含有するものでもよく、該ゴム状弾性体のゲル含有量は特に限定はないが、10〜99重量%、さらには70〜98、より好ましくは80〜96重量%の範囲のものが好ましく使用される。
有機リン系乳化剤を用いて乳化重合などにより製造された多段グラフト重合体を用いることが特に好ましい。有機リン系乳化剤としてはリン酸のポリオキシエチレンモノアルキルエステル、ポリオキシエチレンジアルキルエステル、ポリオキシエチレントリアルキルエステルなどである。
前記多段グラフト重合体の製造において、ゴム状弾性体にグラフト重合されるビニル系化合物としては、たとえば芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。前記芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、αメチルスチレンが、シアン化ビニル化合物の例としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリルが、アクリル酸エステルの例としてはメチルメタクリレートが特に好ましいものとして挙げられる。
多段グラフト重合体を調製する際のゴム状弾性体とビニル系化合物との使用割合はゴム状弾性体10〜90重量%、さらには30〜85重量%に対して、ビニル系化合物90〜10重量%、さらには15〜70重量%が好ましい。ゴム状弾性体の割合が10重量%未満では本発明樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる効果が不十分になり、一方、90重量%を超えると本発明樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向が生ずる。
<(E2)ポリオレフィン系重合体>
上記(E2)ポリオレフィン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、好適に使用されうるが、これらに限定されるものではない。ポリオレフィン系重合体は、ホモポリマーでもよいし、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンーブテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のコポリマーでもよい。また、ポリオレフィン系重合体の重合度は特に限定されないが、通常メルトインデックスが0.05〜50g/10分の範囲のものであれば任意に選択・使用しうる。このようなポリオレフィン系重合体の中でも、耐衝撃性をより向上させる観点から、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体が好ましい。
<(E3)オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体及び熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれる1種以上>
上記(E3)オレフィンー不飽和カルボン酸エステル共重合体におけるオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。これらのオレフィンは単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用され得る。特に好ましいオレフィンはエチレンである。
前記オレフィンー不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸グリシジル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらは、単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸グリシジルである。
前記オレフィンー不飽和カルボン酸エステル共重合体中における、上記オレフィン単位と上記不飽和カルボン酸エステル単位との共重合比(オレフィン/不飽和カルボン酸エステル)は、重量比で、好ましくは40/60〜95/5、より好ましくは50/50〜90/10である。共重合体中の不飽和カルボン酸エステル単位の共重合比が5未満では、耐薬品性改良効果が不十分である場合が多い。共重合体中の不飽和カルボン酸エステル単位の共重合比が60を超えると、溶融時(例えば、成形加工時)の熱安定性が不十分である場合が多い。
前記オレフィンー不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレンーアクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。このうち、耐衝撃性をより向上させる観点から、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。前記オレフィンー不飽和カルボン酸エステル共重合体に更に酢酸ビニル、スチレン等を共重合することもできる。

前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体と、数平均分子量700〜3000のポリエーテルと、からなる共重合体であり、ポリエーテルに由来する成分の割合が5〜80重量%、さらには10〜70重量%の範囲のものが好ましい。ポリエーテルに由来する成分の割合が5重量%未満では本発明樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる効果が不十分になる傾向が生じ、80重量%を超えると本発明樹脂組成物の耐熱性が低下しやすくなる。
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーの溶液粘度はフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で濃度0.5g/dl(5g/l)における対数粘度(IV)が0.3〜2.0dl/g、さらには0.4〜1.5dl/gの範囲のものが好ましい。該対数粘度が0.3dl/g未満では耐衝撃性、耐薬品性などが低下しやすくなり、一方、2.0dl/gを超えると成形加工性などが低下する傾向が生じる。
前記熱可塑性ポリエステル系エラストマーの製造に使用される芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、それらのエステル形成性誘導体などが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。一方、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、それらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、前記ポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。前記ポリエーテルの数平均分子量としては、700〜3000の範囲が好ましい。数平均分子量が700未満では耐熱性が低下する傾向にあり、一方、数平均分子量が3000を超えると熱安定性が低下する傾向にある。
<安定剤>
本発明樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、任意成分として安定剤を含むことができる。前記安定剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、硫黄系安定剤からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、熱安定性に優れることから、これらの安定剤を2種以上組み合わせて使用することがより好ましい。
前記リン系安定剤としては、より好ましくはホスファイト系安定剤であり、たとえば、トリス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、旭電化株式会社製アデカスタブ(登録商標)2112)などが挙げられるが、これに限定されるわけではない。
前記フェノール系安定剤としては、より好ましくはヒンダードフェーノール系安定剤であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(例えば、チバスペシャルティケミカルズ製イルガノックス(登録商標)1010)などが挙げられるが、これに限定されるわけではない。
<その他添加剤>
本発明樹脂組成物には、該組成物の好ましい特性や効果を損なわない範囲で、一般的な樹脂用添加剤を含有することができる。該樹脂用添加剤としては、例えば、光安定剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料・染料、(D)板状フィラー以外の無機充填剤、アクリロニトリル−スチレン共重合体などの(A)〜(C)の各樹脂以外の樹脂成分などが挙げられる。該樹脂用添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
<製造方法>
本発明樹脂組成物の製造は任意の方法で行うことができる。たとえば、ブレンダースーパーミキサーなどを用いての混合、単軸または多軸のスクリュー押出機などでの混練により、本発明樹脂組成物が製造される。
<成形法>
本発明樹脂組成物の成形は任意の方法で行うことができる。例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などで、本発明樹脂組成物を成形することが出来る。
<成形体>
本発明樹脂組成物は、大型成形体用の材料として優れている。大型成形体とは、より具体的には、縦横寸法が300〜4000mm×100〜2500mm程度であり、最大投影面積が10,000mm2〜10,000,000mm2のものである。成形体の好ましい最大投影面積は30,000mm2〜7,000,000mm2であり、より好ましい最大投影面積は50,000cm2〜4,000,000mm2である。さらに上記大型成形体の線膨張係数は、測定温度−30℃と+80℃との間で測定した面内の線膨張係数として、6.5×10-5/℃〜3.5×10-5/℃であるものが好ましい。より具体的には、最大投影面積が30000cm2を超え、測定温度−30℃と+80℃との間で測定した面内の線膨張係数が6.5×10-5/℃以下である成形体が好ましい。
前記投影面積とは、成形体を平行な光で照らした場合にできる影の面積である。成形体形状によって、光源方向に依存して投影面積が異なる場合は、三次元の各軸(X軸・Y軸・Z軸で)で回転させたときの投影面積の最大値を最大投影面積とする。
このような特性を有する本発明の成形体は、例えば車両用部品等の成形体として好適に用いることができる。また、車両用部品のうち、自動車外装部品として好適に用いることができ、中でも、ガーニッシュ、ピラー、スポイラーに特に好適である。自動車外装部品として本発明樹脂組成物の耐熱性や耐熱分解性のメリットを更に発揮する部位としては、自動車の水平外装部材が最も好適であり、水平外装部材としてリアスポイラー、ボンネット(カバー)、ルーフパネル、ルーフサイドガーニッシュ、テールゲートガーニッシュが更に好適である。
<用途>
本発明樹脂組成物は、既知の種々の方法、たとえば射出成形法、押出し成形法などにより、自動車部品、電気・電子部品、雑貨などに成形される。得られた成形体は、耐熱性、耐衝撃性、剛性、寸法安定性、耐薬品性、成形加工性、耐候性ならびに熱安定性(耐熱分解性)に優れ、成形体の表面光沢、外観に優れたものとなる。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を実施例に基づいて具体的に説明する。
下記測定条件や実施例などにおける「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
<配合原料>
まず、使用した材料、及び測定条件につき以下説明する。
[(A)ポリカーボネート樹脂]
(A−1)製品名:タフロン(登録商標)A2200、粘度平均分子量22,000、出光興産(株)製。
(A−2)製品名:ユーピロン(登録商標)H3000、粘度平均分子量17,000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製。
[(B)熱可塑性ポリエステル樹脂]
(B−1)ポリエチレンテレフタレート樹脂、対数粘度0.75dl/g、製品名:EFG−70、(株)ベルポリエステルプロダクツ製
[(C)非晶性熱可塑性樹脂]
(C−1)ポリフェニレンエーテル樹脂、製品名:ユピエース(登録商標)PX−100L、ガラス転移温度219℃、固有粘度0.47dl/g、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製。
(C−2)ポリアリレート樹脂、製品名:Uポリマー(登録商標)U−100、ガラス転移温度195℃、ユニチカ(株)製。
(C−3)ポリエーテルイミド樹脂、ガラス転移温度220℃、製品名:ULTEM(登録商標)1000、サビックイノベーションプラスッチクス社製。
(C−4)N−フェニルマレイミド/スチレン共重合体、製品名:ポリイミレックス(登録商標)PSX0371、ガラス転移温度199℃、(株)日本触媒製、以下「変性スチレン系樹脂1」とする。
(C−5)N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル/スチレン共重合体、製品名:ポリイミレックス(登録商標)PAS1460、ガラス転移温度169℃、(株)日本触媒製、以下「変性スチレン系樹脂2」とする。
(C−6)ポリスチレン樹脂、製品名:トーヨースチロールGP(登録商標)HRM24N、ガラス転移温度103℃、東洋スチレン(株)製。
[(D)板状フィラー]
(D−1)雲母、製品名:マスコバイトマイカA−21S、数平均長径27μm、数平均アスペクト比70、(株)ヤマグチマイカ製。
(D−2)雲母、製品名:マスコバイトマイカA−41S、数平均長径40μm、数平均アスペクト比80、(株)ヤマグチマイカ製。
(D−3)タルク、製品名:ローズタルク、数平均長径17μm、数平均アスペクト比
24、日本タルク(株)製
(D−4)マイカ、製品名:マイカW−20、数平均長径5μm、数平均アスペクト比
20、(株)華晶製。
(D−5)カオリン、製品名:トランスリンク77、数平均長径0.7μm、数平均アスペクト比12、BASFジャパン社製。
<評価方法>
次に、評価方法につき以下に説明する。
(耐熱性)
耐熱性の指標として、荷重たわみ温度(℃)をISO 75に準じて、1.80MPa荷重で測定した。
(耐熱変形性)
耐熱変形性の指標として、ヒートサグ試験をJIS K7195に準じた試験片を用い、熱風式オーブンにて100℃×5時間後の熱変形量を測定した。熱変形量は水平面上に試験片を置き、長手の一方を押さえた時の逆端部が水平面上から浮き上がっている高さのことであり、ノギスを用いて測定した。
(耐熱分解性)
得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを130℃で4時間乾燥後、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、TG/DTA7200)を用い、室温から500℃まで10℃/分で昇温し、初期からの重量減少度(%)が1%となったときの温度および、JIS K7120に準拠した一段階重量減少の場合の重量減少開始温度を測定した。1%重量減少温度、重量減少開始温度が高くなることで、分解ガスが発生しにくく成形体の外観不良が発生しにくいことであると言える。
(流動性)
流動性の指標として、スパイラルフローを測定した。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを130℃で4時間乾燥後、射出成形機(製品名:FAS−150、ファナック(株)製)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力1000kg/cm2で成形し、スパイラル状の成形体(10mm幅×2mm厚、ピッチ5mm)におけるスパイラルフロー(mm)を測定した。
(成形体成形性)
成形性の指標として、ポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形した大型成形体の表面性を評価した。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを130℃で4時間乾燥後、射出成形機(製品名:850−MG160、三菱重工業(株)製)を用い、シリンダー温度280℃にて、試験片として、最大投影面積が600mm×200mm(ゲートから端部までの距離は600mm)の成形体とし、厚みは3.0mm、2.5mm、2.0mmの3点にて、大型射出成形体である自動車パネル部品を作成し、肉眼で観察して、次の基準にしたがって評価した。射出成形用金型の末端部まで樹脂組成物の充填がなされ、厚みがより薄い自動車のパネル部品であっても、その表面外観が良好であるほど大型成形性に優れた材料であると言える。
[表面性の評価基準]
◎:樹脂組成物が射出成形用金型の末端まで充填され、表面のフラッシュが全く認められず、緻密で質感が高くかつ光沢のある表面を有するもの。
○:樹脂組成物が射出成形用金型の末端まで充填され、表面のフラッシュがほとんど認められず、緻密で質感の高い表面を有するもの。
△:樹脂組成物が射出成形用金型の末端まで充填され、表面のフラッシュが少し認められ、緻密な質感の点でやや劣る表面を有するもの。
×:樹脂組成物が射出成形用金型の末端まで充填されるものの、表面のフラッシュが著しく、質感のない表面を有するもの。
××:樹脂組成物を射出成形用金型の末端まで充填できないもの。
(成形体表面粗さ)
先述の方法で得た成形体600mm×200mm大、厚み3.0mm、2.5mm、2.0mmの成形体を用い、表面粗さの指標として表面粗さをレーザー顕微鏡を用いて測定した。測定長さは800μm(カットオフ値0.8μm)で平均粗さRa(μm)を算出した。
(成形体塗装性)
先述の方法で得た成形体600mm×200mm大、厚み3.0mm、2.5mm、2.0mmの成形体を塗装し次の基準にしたがって評価した。塗膜密着性が不十分とは、碁盤目ハクリ試験にて塗膜ハクリが5/100を超え生じたものを塗膜密着性が不十分であると判断した。また表面外観性に関しては塗装面に文字を鏡のように写しこませた時の鮮映性に関して、40cm離れたところから観察し文字がはっきりと読めないものは外観性が不十分であると判断した。
[成形体塗装性の評価基準]
○:塗膜面の表面外観性が良好であり、塗膜密着性の問題もないもの。塗装面が鏡面状の光沢を有し、文字、人の顔や物体の輪郭が鮮明に映り込み、明確に判別可能であるもの。
△:塗膜面の表面外観性が不均一で不良であり、塗膜密着性の問題がないもの。塗装面に鏡面状の光沢を有するものの、映り込んだ文字、人の顔や物体の輪郭がやや不鮮明となり、判別し難い場合があるもの。
×:塗膜面の表面外観性が不均一で不良であり、塗膜密着性が不十分であるもの。塗装面が光沢に乏しく、映り込んだ文字、人の顔や物体の輪郭が不鮮明になり、判別し難い場合が多いもの。
(低線膨張性)
低線膨張性の指標として、線膨張係数を評価した。JIS K7197に準じて、成形体中央部を切り出して得た試験片について流動(MD)方向と流動に対して直角(TD)方向について、それぞれ測定温度−30℃と+80℃との間で試験を実施し、線膨張係数を評価した。
(実施例1〜22、及び比較例1〜4)
表1〜2に示した原料と配合組成(単位:重量部)に従い、予めドライブレンドした。ベント式44mmφ同方向2軸押出機(製品名:TEX44、日本製鋼所(株)製)を用い、前記ドライブレンド物をホッパー孔から供給し、シリンダー設定温度250〜280℃にて溶融混練を行い、ペレット化し、ペレット形態の樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を前記記載の評価方法にて評価した。評価結果を、表1〜2に示す。
なお、表1〜2中では、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂を「(B)PE樹脂」と表記し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を「PET樹脂」と表記し、ポリフェニレンエーテル樹脂を「PPE樹脂」と標記した。
表1〜2に示されるとおり、本発明樹脂組成物によれば、耐熱分解性が優れることから、大型成形体であっても外観性を損なうことなく、耐熱性・成形性・低線膨張性のバランスが優れた樹脂組成物を提供することができる。
Figure 0006770955
Figure 0006770955
図1〜図3において、濃い灰色部分1はポリカーボネート樹脂(海)であり、灰色のポリカーボネート樹脂(海)中に、薄い灰色部分(島)2が分散している。薄い灰色部分(島)2はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、板状フィラーの集合体である黒い部分4の全体を覆っているものも存在する。また、図1〜2では、ポリカーボネート樹脂(海)中には、薄い灰色部分(島)2とは別の薄い灰色部分(島)3が、黒い部分4を覆わず独立して分散している。灰色部分(島)3はポリフェニレンエーテル樹脂である。なお、灰色部分3は、黒い部分4という形態ではないものの、板状フィラーを含む場合がある。
図1に示す実施例2のペレットの電子顕微鏡差写真では、ポリカーボネート樹脂の海に、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂が共に島として分散する海/島/島構造を形成している。ポリエチレンテレフタレート樹脂は溶融粘度が低い為に、ポリカーボネート樹脂中のせん断場において細長く引き伸ばされ板状フィラーの周囲を囲んでいる。ポリフェニレンエーテル樹脂は溶融状態から冷却時にガラス転移温度が高く、最も早く溶融粘度が高くなる為、板状フィラーを囲まずポリカーボネート樹脂中に最大径3μm未満程度でかつ、真円状に近い形状で分散している。このようにポリカーボネート樹脂中にポリフェニレンエーテル樹脂が島として分散することで、ポリフェニレンエーテル樹脂が有機フィラーのような効果を担い耐熱性の底上げ効果が得られていると同時に微分散することで流動性への影響が少なく耐熱性と流動性のバランスがとれていると考えられる。
図2に示す実施例6のペレットの電子顕微鏡写真では、図1(実施例2)の電子顕微鏡写真と同様にポリカーボネート樹脂の海に、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂が共に島として分散する海/島/島構造を形成しており、ポリフェニレンエーテル樹脂はポリカーボネート樹脂中に最大径は3μmを超える程度でかつ、楕円〜真円状に近い形状で分散している。
図3に示す比較例4のペレットの電子顕微鏡写真では、ポリカーボネート樹脂の海にポリエチレンテレフタレート樹脂が島として分散する海/島構造を形成しているが、図1および図2の電子顕微鏡写真のように板状フィラーの集合体を囲わず分散しているポリフェニレンエーテル樹脂はないことが確認できる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂からなりかつ板状フィラーの集合体4を内包することがある灰色部分2の寸法に関し、図1及び図3を比較すると、図1の方が明らかに大きくなっている。このような灰色部分2の寸法の相違には、ポリフェニレンエーテル樹脂の存在又は非存在が関与している可能性がある。また、本発明における、このような灰色部分2の寸法が本発明の効果を得る上での一因になっている可能性がある。
1 ポリカーボネート樹脂
2 熱可塑性ポリエステル樹脂
3 ポリフェニレンエーテル樹脂
4 マイカ

Claims (5)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂35重量%以上95重量%以下、及び(B)熱可塑性ポリエステル樹脂5重量%以上65重量%以下を含有する樹脂成分100重量部、ガラス転移温度が110℃以上の(C)非晶性熱可塑性樹脂1重量部以上20重量部以下、並びに数平均長径が0.5μm以上45μm以下の(D)板状フィラー1重量部以上50重量部以下を含み、
    (C)非晶性熱可塑性樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂と非相溶であり、かつ(B)熱可塑性ポリエステル樹脂と非相溶であり、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂、及び変性スチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂である、ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 荷重たわみ温度が110℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 示差熱熱重量同時測定装置における重量減少開始温度が410℃以上420℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
  5. 請求項に記載の成形体であり、最大投影面積が10,000mm以上10,000,000mm以下である成形体。
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