JP6770854B2 - 積層体、金属張積層体、プリント配線基板および電子機器 - Google Patents
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Description
また近年、環状オレフィン共重合体は耐熱性および誘電特性のバランスに優れていることから、例えば、プリント配線基板等の電子部品用の絶縁層を形成する絶縁性材料としても検討され始めている(特許文献2)。
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献3に記載のような基板材料は、はんだ耐熱性が十分に満足するものではないことが明らかになった。
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献4に記載のような積層体は、架橋性樹脂組成物層中に重合触媒が多く残ってしまう場合があり、残存する金属成分によって、積層体の色相悪化、透明性低下、電気特性悪化、および積層した他の層への金属成分の移動による積層体の性能低下等の問題があることが明らかになった。
ガラス転移温度が150℃以上の環状オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物(P)をシート状繊維基材に含浸させてなる樹脂繊維複合層(Q)と、
主鎖に芳香族環を有する基本単位を含み、融点又はガラス転移温度が100℃以上250℃以下の樹脂(B)を含む酸化防止層(Y)と、
を有する積層体であって、
当該積層体の最外層の少なくとも一方が上記酸化防止層(Y)である積層体。
[2]
上記[1]に記載の積層体において、
上記環状オレフィン共重合体(A)は、
下記一般式(I)で表される少なくとも1種のα−オレフィン由来の繰り返し単位(a)と、
下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、を含有する積層体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の積層体において、
上記環状オレフィン共重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100モル%としたとき、
下記一般式(V)で表される繰り返し単位、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位および下記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)の含有量が0.05モル%以下である積層体。
[4]
上記[2]または[3]に記載の積層体において、
上記環状オレフィン共重合体(A)中の上記α−オレフィン由来の繰り返し単位(a)が、上記一般式(I)においてR300が炭素原子数2以上10以下の直鎖状の炭化水素基である繰り返し単位を含む積層体。
[5]
上記[2]乃至[4]いずれか一つに記載の積層体において、
上記環状オレフィン共重合体(A)中の上記環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)が、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である積層体。
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載の積層体において、
上記樹脂(B)がポリフェニレンエーテル樹脂を含む積層体。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の積層体において、
上記樹脂(B)がラジカル重合性基を有する積層体。
[8]
上記[1]乃至[7]いずれか一つに記載の積層体において、
上記樹脂組成物(P)が架橋剤をさらに含む積層体。
[9]
上記[1]乃至[8]いずれか一つに記載の積層体において、
上記樹脂繊維複合層(Q)および上記酸化防止層(Y)のうち少なくとも一方が密着性向上剤(C)を含む積層体。
[10]
上記[9]に記載の積層体において、
上記密着性向上剤(C)がスチレン系エラストマー、変性ポリオレフィンおよび変性エラストマーからなる群から選択される一種または二種以上を含む積層体。
[11]
上記[9]または[10]に記載の積層体において、
上記密着性向上剤(C)の含有量が、上記樹脂繊維複合層(Q)中の環状オレフィン共重合体(A)または上記酸化防止層(Y)中の上記樹脂(B)を100質量部としたとき、1質量部以上10質量部以下である積層体。
[12]
上記[1]乃至[11]いずれか一つに記載の積層体と、上記積層体の少なくとも一方の面に積層された金属箔と、を備える金属張積層体。
[13]
上記[1]乃至[11]いずれか一つに記載の積層体と、上記積層体上に設けられた導体層とを備えるプリント配線基板。
[14]
上記[13]に記載のプリント配線基板を備えた電子機器。
本実施形態に係る積層体は、ガラス転移温度が150℃以上の環状オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物(P)をシート状繊維基材に含浸させてなる樹脂繊維複合層(Q)と、主鎖に芳香族環を有する基本単位を含み、融点又はガラス転移温度が100℃以上250℃以下の樹脂(B)を含む酸化防止層(Y)と、を有する。
そして、当該積層体の最外層の少なくとも一方が酸化防止層(Y)である。
本実施形態に係る積層体は、ガラス転移温度が150℃以上の環状オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物(P)をシート状繊維基材に含浸させてなる樹脂繊維複合層(Q)を備えることにより、得られる絶縁層について、誘電特性および耐熱性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る積層体は、少なくとも一方の最外層に酸化防止層(Y)を備えることにより、得られる絶縁層について、良好な誘電特性および耐熱性を満たしながら熱安定性を向上させることができる。すなわち、本実施形態に係る積層体は、高温(例えば、200℃程度)下に長時間置かれた場合であっても、表面が劣化してクラックが発生することを抑制することができる。
以上から、本実施形態によれば、プリント配線基板等の電子部品用の絶縁層に好適な高周波領域での誘電特性および耐熱性を満足しながら熱安定性にも優れた積層体を得ることが可能となる。
本実施形態に係る積層体の構成例としては以下のものが挙げられる。ただし、本実施形態に係る積層体は下記の層構成を有するものに限定されるものではない。
(1)(Q)層/(Y)層
(2)(Y)層/(Q)層/(Y)層
(3)(Q)層/(Y)層/(Q)層/(Y)層
(4)(Y)層/(Q)層/(Q)層/(Y)層
酸化防止層(Y)の厚み(2層以上の場合は合計厚み)は特に限定されないが、積層体の総厚みの1%以上30%以下の厚みであることが好ましい。
熱プレスするときの圧力は特に限定されないが、例えば、0.5〜20MPa、好ましくは2〜10MPaである。熱プレスは真空又は減圧雰囲気下で行ってもよい。熱プレスは公知のプレス機を用いて行なうことができる。
まず、本実施形態に係る樹脂組成物(P)について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)はガラス転移温度が150℃以上の環状オレフィン共重合体(A)を必須成分として含んでいる。
ただし、本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)は、環状オレフィン共重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100モル%としたとき、下記一般式(V)で表される繰り返し単位、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位および下記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)の含有量が、環状オレフィン共重合体(A)のガラス転移温度を向上させる観点から、例えば、0.05モル%以下であり、好ましくは0.01モル%以下である。
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは付加共重合して上記一般式(I)で表される構成単位を形成するものである。具体的には上記一般式(I)に対応する下記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーが用いられる。
具体的には、R300が炭素原子数2以上10以下の直鎖状または分岐状の炭化水素基である上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。中でも、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが好ましい。
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)の共重合原料の一つである環状オレフィンモノマー(b)は付加共重合して上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を形成するものである。具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、および上記一般式(IV)にそれぞれ対応する一般式(IIa)、(IIIa)、および(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)が用いられる。
なお、環状オレフィン共重合体(A)の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H2添加量、重合温度等の重合条件により制御することが可能である。
架橋剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤による硬化は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による硬化方法をそのまま適用できる。すなわち樹脂組成物(P)にジクミルパーオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、硬化する。架橋剤の配合割合は特に制限がないものの、環状オレフィン共重合体(A)100質量部あたり通常は0.02〜20質量部であり、好ましくは0.05〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。架橋剤の配合割合が上記上限値以下であると、得られる絶縁層の誘電特性が向上し、上記下限値以上であると、得られる絶縁層の耐熱性および機械的特性を向上させることができる。
また、これらの光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤の例としては、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2−ニトロフルオレン等のニトロ化合物、アントラセン、クリセン等の芳香族炭化水素、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン、テトラシアノエチレン等の窒素化合物等を挙げることができる。
架橋助剤としては特に制限はないが、例えば、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、及びo−ジイソプロペニルベンゼン等のイソプロペニル基を2以上有する多官能性化合物;p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、及びペンタエリトリトールトリメタクリレート等のメタクリル基を2以上有する多官能性化合物;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリル等のアリル化合物類;N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−(4,4'−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類;ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン類;ポリブタジエン等が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
これらの中でも、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメリット酸トリアリル等のイソシアヌレート類;ジビニルベンゼン;ポリブタジエンがより好ましい。
本実施形態に係るポリブタジエンとしては特に限定はされないが、例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、末端アクリレート変性ポリブタジエン、末端ウレタンメタクリレート変性ポリブタジエン等が挙げられる。
また、架橋助剤(C)としては、上記一般式(I)で表される少なくとも1種のα−オレフィン由来の繰り返し単位(a)と、上記一般式(II)で表される繰り返し単位、上記一般式(III)で表される繰り返し単位および上記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、上記一般式(V)で表される繰り返し単位、上記一般式(VI)で表される繰り返し単位および上記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)と、を含有する環状オレフィン共重合体を用いてもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)における架橋助剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部である。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)における難燃剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、例えば、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部である。
有機充填剤としては特に限定されないが、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、廃プラスチック等の化合物粒子が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)における無機充填剤および有機充填剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、例えば、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部である。
密着性向上剤(C)の含有量は、樹脂繊維複合層(Q)中の環状オレフィン共重合体(A)を100質量部としたとき、得られる積層体の誘電特性および耐熱性を良好に保ちつつ、樹脂繊維複合層(Q)と酸化防止層(Y)の密着性を向上させる観点から、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
これらの中でも極性基を有する単量体をグラフトさせたポリオレフィンが好ましい。ここで、「グラフト」とは、主鎖である幹ポリマーに、極性基を有する化合物を導入することをいう。「グラフト重合させた」とは、主鎖である幹ポリマーに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。
極性基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミド基、エステル基、酸無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上の組み合わせで用いられる。これらの中でも、得られる絶縁層の機械的強度をより一層向上できる観点から、カルボキシル基および酸無水物から選択される少なくとも一種が好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、溶媒と混合することによりワニスとすることができる。上記ワニスを調製するための溶媒としては、環状オレフィン共重合体(A)に対して溶解性または親和性を損なわないものであれば特に限定されない。溶媒として好ましく用いられるものは、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。より好ましくはトルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンである。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態に係る樹脂繊維複合層(Q)は、本実施形態に係る樹脂組成物(P)とシート状繊維基材とを複合して形成されたものである。ここで、樹脂繊維複合層(Q)の中で半硬化状態(Bステージ状態)のものをプリプレグとも呼び、硬化状態(Cステージ状態)のものを絶縁層とも呼ぶ。
樹脂繊維複合層(Q)の製造方法としては特に限定されず、各種公知の方法が適用可能である。例えば、上述したワニスをシート状繊維基材に含浸し含浸体を得る工程と、得られた含浸体を加熱し上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程とを含む方法が挙げられる。
上記ワニスのシート状繊維基材への含浸は、例えば、所定量のワニスを、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法によりシート状繊維基材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラー等で押圧することにより行うことができる。
また、上記含浸体を加熱し上記ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程は特に限定されないが、例えば、バッチ式で送風乾燥機により空気中あるいは窒素中で乾燥する、あるいは、連続工程で加熱炉を通すことによって乾燥する、等の方法を挙げることができる。
本実施形態においては、ワニスをシート状繊維基材に含浸させた後、得られた含浸体を所定温度に加熱することにより、上記ワニスに含まれる溶媒が蒸発し、樹脂繊維複合層(Q)が得られる。
シート状繊維基材へのワニスの含浸は、例えば、浸漬および塗布によって実施される。含浸は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
これらのシート状繊維基材は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は所望により適宜選択されるが、例えば、樹脂繊維複合層(Q)中の10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械強度が高度にバランスされ、好適である。
本実施形態に係る酸化防止層(Y)は、主鎖に芳香族環を有する基本単位を含み、融点又はガラス転移温度が100℃以上250℃以下の樹脂(B)を含む樹脂組成物(X)から得られる層である。
ポリフェニレンエーテル樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィー測定(GPC)におけるスチレン換算による数平均分子量は特に限定されないが、500〜7000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、従来公知の方法(例えば、特開2010−111758号公報)で製造することができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂として、市販品をそのまま使用することもできる。
また、ラジカル重合性基の置換位置は、特に制約されず、高分子主鎖の片末端であっても、両末端であってもよく、側鎖(高分子の繰り返し単位中の任意の位置)であってもよい。
密着性向上剤(C)の含有量は、酸化防止層(Y)中の樹脂(B)を100質量部としたとき、得られる積層体の誘電特性および耐熱性を良好に保ちつつ、樹脂繊維複合層(Q)と酸化防止層(Y)の密着性を向上させる観点から、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
これらの成分の具体例としては、樹脂組成物(P)に含有させる成分で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物(X)における架橋助剤の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
本実施形態に係る樹脂組成物(X)における難燃剤の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、例えば、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部である。
本実施形態に係る樹脂組成物(X)における無機充填剤および有機充填剤の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、例えば、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部である。
また、本実施形態に係る酸化防止層(Y)を、Bステージ(半硬化)の樹脂繊維複合層(Q)上に積層し、加熱プレスして完全硬化させることによって本実施形態に係る積層体を得ることができる。
酸化防止層(Y)の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜60μmであり、さらに好ましくは5〜50μmである。
本実施形態に係る積層体は、少なくとも一方の面に金属箔を積層して積層プレス等により加熱硬化することにより金属張積層体としてもよい。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、ステンレス箔等が挙げられる。
本実施形態の金属張積層体を作製する方法は各種公知の方法が適用可能である。
例えば、本実施形態に係る積層体に対し、金属箔を積層し、必要に応じてプレス等により加熱硬化することにより金属張積層体を作製することができる。
そのため、本実施形態に係る金属張積層体は、プリント配線基板の絶縁層用材料として好適に使用することができる。
上述したように、本実施形態に係る積層体は、誘電特性、耐熱性および熱安定性の性能バランスに優れることから、プリント配線基板に好適に用いることができる。
プリント配線基板の製造方法としては一般的に公知の方法を採用でき特に限定されないが、例えば、前述の方法により製造した積層体を積層プレス等により加熱硬化し、絶縁層を形成する。次いで、得られた絶縁層に導体層を公知の方法で積層し、積層体を作製する。その後、該積層体中の導体層を回路加工等することにより、プリント配線基板を得ることができる。
このような電子機器としては、例えば、サーバ、ルータ、スーパーコンピューター、メインフレーム、ワークステーション等のICTインフラ機器;GPSアンテナ、無線基地局用アンテナ、ミリ波アンテナ、RFIDアンテナ等のアンテナ類;携帯電話、スマートフォン、PHS、PDA、タブレット端末等の通信機器;パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、POS端末、ウェアラブル端末、デジタルメディアプレーヤー等のデジタル機器;電子制御システム装置、車載通信機器、カーナビゲーション機器、ミリ波レーダー、車載カメラモジュール等の車載電子機器;半導体試験装置、高周波計測装置等;が挙げられる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
銅張積層体を288℃の半田槽中に20秒間浸漬し、その後、銅張積層体の状態を観察した。以下の基準で銅張積層体のはんだ耐熱性を評価した。
○:変形および膨れの両方が発生しなかった
×:変形および膨れの少なくとも一方が発生した
円筒空洞共振器法により、12GHzにおける積層体の誘電正接を測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザー(YHP社製の8510B)、シンセサイズドスイーパー(YHP社製の8340B)、テストセット(8515A)を用い、12GHzにおける積層体の誘電正接を測定した。
積層体を温度200℃のオーブンに静置し、100時間後に取り出した。取り出した積層体の状態から熱安定性を評価した。
○:積層体に異常なし
×:積層体にクラックが入った
J.Am.Chem.Soc.2000,122,5499−5509.に記載の方法により合成した。
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(三井化学株式会社製)
ポリブタジエン(日本曹達社製、B−3000、Tg:−21℃)
架橋剤1:2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(東京化成工業株式会社製、1分半減期温度:330℃)
架橋剤2:ジクミルパーオキシド(日油社製、パークミルD、1分半減期温度:175℃)
環状オレフィン共重合体(A−1):1−オクテン(以下、C8とも呼ぶ。)とテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下、TDとも呼ぶ。)とからなる共重合体(C8/TD=34/66(モル比)、Tg:246℃)
環状オレフィン共重合体(A−2): 1−ヘキセン(以下、C6とも呼ぶ。)とテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとからなる共重合体(C6/TD=46/54(モル比)、Tg:220℃)
環状オレフィン共重合体(A−3): 1−ヘキセンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとからなる共重合体(C6/TD=65/35(モル比)、Tg:188℃)
環状オレフィン共重合体(A−4): 1−ヘキセンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとからなる共重合体(C6/TD=77/23(モル比)、Tg:151℃)
環状オレフィン共重合体(A−5):エチレンとビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンとからなる共重合体(製品名:トパス6013S−04、ポリプラスチック社製、Tg:138℃)
十分に窒素置換したガラス製反応器にトルエン40mLを装入し、液相及び気相を30L/hの流量の窒素で飽和させた。続いて、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(TD)20.0mL、α−オレフィンとして1−オクテン5.5mL、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で10mmolを添加した。トルエンに溶解させた遷移金属化合物(1)0.010mmolを添加し、重合を開始した。25℃で15分間重合を継続した後、イソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。反応物を0.5mLの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ500ml)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後グラスフィルターでろ過した。ポリマーを130℃、10時間で減圧乾燥した後、TD/1−オクテン共重合体を得た。NMRにより決定したポリマー中のモノマー組成は、TD66mol%、1−オクテン34mol%、DSCで測定したガラス転移温度は246℃であった。
ここで、NMR分析法はMacromolecules 2016,49,59−70.に記載の方法に従った。
α−オレフィンを1−ヘキセン14.0mLとした以外は、合成例1と同様の方法でTD/1−ヘキセン共重合体を合成した。NMRにより決定したポリマー中のモノマー組成は、TD54mol%、1−ヘキセン46mol%、DSCで測定したガラス転移温度は220℃であった。
α−オレフィンを1−ヘキセン28.2mLとした以外は、合成例1と同様の方法でTD/1−ヘキセン共重合体を合成した。NMRにより決定したポリマー中のモノマー組成は、TD35mol%、1−ヘキセン65mol%、DSCで測定したガラス転移温度は188℃であった。
α−オレフィンを1−ヘキセン55.0mLとした以外は、合成例1と同様の方法でTD/1−ヘキセン共重合体を合成した。NMRにより決定したポリマー中のモノマー組成は、TD23mol%、1−ヘキセン77mol%、DSCで測定したガラス転移温度は151℃であった。
少なくとも1つのラジカル重合性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂(B−1):以下の合成例5に従って合成した変性ポリフェニレンエーテル(Tg:158℃)
少なくとも1つのラジカル重合性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂(B−2):ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製SA9000、Tg:160℃)
密着性向上剤(C−1):以下の合成例6に従って合成した。
架橋助剤1:トリアリルイソシアヌレート
架橋助剤2:ジビニルベンゼン
国際公開第2014/203511号に記載の方法により合成した。具体的には、以下のとおりである。
まず、トルエン200gを装入したガラス製反応器に、ポリフェニレンエーテルオリゴマー(SABIC社製SA90)100g、クロロメチルスチレン15g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.6gを加え、撹拌しながら75℃に加熱し溶解させた。次いで50wt%の水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し75℃で4時間撹拌した。その後、塩酸で中和し、メタノールを投入して生成物を析出させた。析出した生成物を、メタノールと水を重量比80:20で混合した溶液で洗浄した後、80℃、減圧下で10時間乾燥させ、末端ビニル変性ポリフェニレンエーテル(数平均分子量Mn=2300)を得た。
撹拌翼を備えた容量1.0Lのガラス製オートクレーブに、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(シェル化学社製、クレイトンG1652、数平均分子量:8.5×104、スチレン含量:30質量%)105g、および脱水トルエン340mlを入れ、165℃に加熱して溶解させた。続いて、無水マレイン酸3.46gを脱水トルエン40mlに溶解させた溶液、およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.31gを脱水トルエン40mlに溶解させた溶液を調製し、両溶液を4時間かけて逐次滴下した。滴下終了後、165℃で2時間後反応を行った。
得られた変性共重合体の無水マレイン酸グラフト量を酸素分析により測定したところ、3.5質量%であった。
まず、環状オレフィン共重合体(A−1)、密着性向上剤(C−1)、および架橋剤1を表1に記載の配合割合で(表中の数値は質量部を示す)、トルエンに添加し、混合することによりワニス状の樹脂組成物(P−1)を調製した。
樹脂組成物(P)の組成を表1に示す組成に変えた以外は、樹脂組成物(P−1)と同様にしてワニス状の樹脂組成物(P−2)〜(P−7)をそれぞれ調製した。
得られたワニス状の樹脂組成物(P−1)をガラスクロス(有沢製作所社製、1031NT S640)に含浸し、送風乾燥機中110℃で10分間乾燥することにより、厚さ0.1mmのプリプレグ(Q−1)を作製した。
ワニス状の樹脂組成物(P−1)の代わりにワニス状の樹脂組成物(P−2)〜(P−7)を用いた以外は、プリプレグ(Q−1)と同様にしてプリプレグ(Q−2)〜プリプレグ(Q−7)を得た。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B−1)、架橋助剤1、および架橋剤1を表2に記載の配合割合で(表中の数値は質量部を示す)、トルエンに添加し、混合することによりワニス状の樹脂組成物(X−1)を調製した。
樹脂組成物(X)の組成を表2に示す組成に変えた以外は、樹脂組成物(X−1)と同様にして樹脂組成物(X−2)〜(X−3)をそれぞれ得た。
樹脂組成物(X−1)をポリイミドフィルム上にダイコーターにより塗布し、次いで、110℃、5分の条件にて加熱を行い、溶剤を除去した後、ポリイミドフィルムを剥離して、厚さ12μmの酸化防止層(Y−1)を得た。
樹脂組成物(X−1)の代わりに樹脂組成物(X−2)〜(X−3)をそれぞれ用いた以外は、酸化防止層(Y−1)と同様にして酸化防止層(Y−2)〜(Y−3)をそれぞれ得た。
(積層体の作製)
プリプレグ(Q−1)を2枚積層し、その両面を未硬化の厚さ12μmの酸化防止層(Y−1)で挟み、真空プレスにより、3MPaに加圧し、室温(25℃)から一定速度で昇温し、280℃で60分保持し、積層体を得た。得られた積層体に対し、誘電正接測定および熱安定性評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
(銅張積層体の作製)
プリプレグ(Q−1)を2枚積層し、その両面を未硬化の厚さ12μmの酸化防止層(Y−1)で挟み、これをさらに厚み18μmの銅箔で挟み、真空プレスにより、3MPaに加圧し、室温(25℃)から一定速度で昇温し、280℃で60分保持し、銅張積層体を得た。得られた銅張積層体に対し、はんだ耐熱性評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
層構成を表3に示す層構成に変えた以外は、実施例1と同様に積層体および銅張積層体をそれぞれ作製し、評価をそれぞれ実施した。
層構成を表3に示す層構成に変え、真空プレスの条件を250℃で90分に変えた以外は、実施例1と同様に積層体および銅張積層体をそれぞれ作製し、評価をそれぞれ実施した。
層構成を表3に示す層構成に変え、真空プレスの条件を200℃で120分に変えた以外は、実施例1と同様に積層体および銅張積層体をそれぞれ作製し、評価をそれぞれ実施した。
これに対し、酸化防止層(Y)を含まない比較例1および樹脂(B)を含まない酸化防止層を用いた比較例2の積層体は熱安定性に劣っていた。また、ガラス転移温度が150℃未満の環状オレフィン共重合体を用いた比較例3の積層体ははんだ耐熱性が劣っていた。さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む樹脂繊維複合層を用いた比較例4の積層体は誘電特性が劣っていた。
Claims (13)
- ガラス転移温度が150℃以上の環状オレフィン共重合体(A)を含む樹脂組成物(P)をシート状繊維基材に含浸させてなる樹脂繊維複合層(Q)と、
主鎖に芳香族環を有する基本単位を含み、融点又はガラス転移温度が100℃以上250℃以下の樹脂(B)を含む酸化防止層(Y)と、
を有する積層体であって、
当該積層体の最外層の少なくとも一方が前記酸化防止層(Y)であり、
前記環状オレフィン共重合体(A)中に含まれる繰り返し単位の合計を100モル%としたとき、
下記一般式(V)で表される繰り返し単位、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位および下記一般式(VII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の非共役ジエン系オレフィン由来の繰り返し単位(c)の含有量が0.05モル%以下である積層体。
- 請求項1に記載の積層体において、
前記環状オレフィン共重合体(A)は、
下記一般式(I)で表される少なくとも1種のα−オレフィン由来の繰り返し単位(a)と、
下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、を含有する積層体。
- 請求項2に記載の積層体において、
前記環状オレフィン共重合体(A)中の前記α−オレフィン由来の繰り返し単位(a)が、前記一般式(I)においてR300が炭素原子数2以上10以下の直鎖状の炭化水素基である繰り返し単位を含む積層体。 - 請求項2または3に記載の積層体において、
前記環状オレフィン共重合体(A)中の前記環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)が、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である積層体。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体において、
前記樹脂(B)がポリフェニレンエーテル樹脂を含む積層体。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体において、
前記樹脂(B)がラジカル重合性基を有する積層体。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体において、
前記樹脂組成物(P)が架橋剤をさらに含む積層体。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の積層体において、
前記樹脂繊維複合層(Q)および前記酸化防止層(Y)のうち少なくとも一方が密着性向上剤(C)を含む積層体。 - 請求項8に記載の積層体において、
前記密着性向上剤(C)がスチレン系エラストマー、変性ポリオレフィンおよび変性エラストマーからなる群から選択される一種または二種以上を含む積層体。 - 請求項8または9に記載の積層体において、
前記密着性向上剤(C)の含有量が、前記樹脂繊維複合層(Q)中の環状オレフィン共重合体(A)または前記酸化防止層(Y)中の前記樹脂(B)を100質量部としたとき、1質量部以上10質量部以下である積層体。 - 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体と、前記積層体の少なくとも一方の面に積層された金属箔と、を備える金属張積層体。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体と、前記積層体上に設けられた導体層とを備えるプリント配線基板。
- 請求項12に記載のプリント配線基板を備えた電子機器。
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