図1は、本発明の第1の実施の形態に係る起伏ゲート1を示す側面図である。図2は、起伏ゲート1を示す平面図である。図3は、起伏ゲート1を前方から見た正面図である。起伏ゲート1は、浮体式の起伏ゲートである。起伏ゲート1は、例えば、堤防の開口部92において床面91(例えば、路面)上に設けられる。起伏ゲート1は、増水により開口部92から水が流入する際に、流入する水の圧力により起立して開口部92を遮蔽することにより、水が開口部92から生活空間等に流入することを抑制する。図1に示す例では、床面91は略水平に(すなわち、重力方向に略垂直に)広がる。
以下の説明では、起伏ゲート1において増水時に水が流入してくる側(すなわち、水の流入方向の上流側であり、例えば、起伏ゲート1よりも海や河川等の水辺側)を「前側」と呼び、起伏ゲート1における水の流入方向の下流側(例えば、起伏ゲート1よりも陸側)を「後側」と呼ぶ。すなわち、図1および図2中の左右方向が「前後方向」であり、図1および図2中の左側および右側がそれぞれ、「前側」および「後側」である。また、図2中の上下方向および図3中の左右方向を「幅方向」と呼ぶ。幅方向は前後方向に垂直であり、前後方向および幅方向は、上下方向に垂直である。図1および図3中の上下方向は、重力方向に略平行である。
起伏ゲート1は、扉体2と、一対の戸当たり部11と、起伏補助部3とを備える。図1ないし図3に示す扉体2は、前後方向および幅方向に広がる略直方体状の部材である。図1ないし図3では、扉体2が床面91上に倒伏している状態を示す。以下の説明では、図1中において実線にて示す扉体2の姿勢を「倒伏姿勢」と呼ぶ。倒伏姿勢の扉体2は、床面91に設けられている凹部93内に収容される。凹部93は、平面視において、倒伏姿勢の扉体2よりも少しだけ大きい。
倒伏姿勢の扉体2の上面(以下、「第1主面21」と呼ぶ。)の上下方向における位置は、凹部93の周囲における床面91の上下方向の位置と略同じである。例えば、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21上は、車両等が通過可能である。倒伏姿勢の扉体2の下面(以下、「第2主面22」と呼ぶ。)は、床面91の凹部93の底面に接触または近接している。なお、倒伏姿勢の扉体2の下端に板材(すなわち、前後方向および幅方向に広がる板材)が設けられていない場合、扉体2の第2主面22は、第1主面21から下方へと延びる桁部材等の下端面を意味する。図1に示す例では、床面91の一部である凹部93の底面も略水平に広がる。
倒伏姿勢の扉体2の後端部23は、凹部93の後端部において床面91に回動可能に取り付けられ、床面91により支持されている。以下の説明では、倒伏姿勢の扉体2の後端部23を「支持端部23」と呼ぶ。また、倒伏姿勢の扉体2の前端部24を「可動端部24」と呼ぶ。すなわち、倒伏姿勢の扉体2において、可動端部24は支持端部23よりも前側に位置する。以下の説明では、幅方向に垂直、かつ、扉体2の支持端部23と可動端部24とを結ぶ方向を、扉体2の「長手方向」という。倒伏姿勢の扉体2においては、扉体2の長手方向は、前後方向と同じ方向である。
扉体2は、支持端部23において幅方向に略平行に延びる回転軸J1を中心として、図1中における時計回りに回動することにより、可動端部24が床面91から上方へと離間して起立する。回転軸J1は、扉体2の第1主面21の後端縁近傍に位置する。図1に示す例では、二点鎖線にて示すように、扉体2は、床面91との成す角度が約75度になるまで起立可能である。以下の説明では、図1中に二点鎖線にて示す扉体2の姿勢を「最大起立姿勢」と呼ぶ。起伏ゲート1では、扉体2は、支持端部23を支点として回動することにより、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。なお、最大起立姿勢の扉体2と床面91との成す角度は、0度よりも大きく、かつ、90度以下の範囲で適宜設定されてよい。
一対の戸当たり部11は、扉体2の幅方向の両側に配置される。図1では、扉体2よりも手前側の戸当たり部11の図示を省略している。図3に示すように、一対の戸当たり部11の間の空間が、上述の開口部92である。戸当たり部11は、例えば、略板状の構造物である。一対の戸当たり部11の幅方向外側には、例えば防潮堤が設けられる。一対の戸当たり部11は、当該防潮堤に固定される。
戸当たり部11の幅方向内側の側面である扉体接触面111には、扉体2の側面が接触する。詳細には、扉体2の幅方向両側の側面には、扉体2の長手方向の略全長に亘って、図示省略のシール部材(例えば、水密ゴム)が設けられる。扉体2は、当該シール部材を介して戸当たり部11の扉体接触面111に接触する。当該シール部材により、扉体2と戸当たり部11との間が水密にシールされる。起伏ゲート1では、扉体2の姿勢に関わらず、扉体2の側面は扉体接触面111に接触しており、扉体2と戸当たり部11との間の水密性は維持される。
扉体2は、第1主面21と第2主面22との間において長手方向に略平行に延びる複数の縦桁27を備える。各縦桁27は、扉体2の支持端部23と可動端部24との間の略全長に亘って延びる。複数の縦桁27は、互いに離間しつつ幅方向に配列される。図2および図3に示す例では、6本の縦桁27が扉体2に設けられる。倒伏姿勢の扉体2における第1主面21の下側の空間は、6本の縦桁27により、幅方向に配列される7つの空間201に分割される。以下の説明では、空間201を「分割空間201」と呼ぶ。各分割空間201は、略直方体状の空間である。
起伏補助部3は、ねじりコイルバネ31を含む。図2および図3に示す例では、起伏補助部3は、6個のねじりコイルバネ31を含む。各ねじりコイルバネ31は、扉体2の支持端部23よりも前側にて、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21の下側に配置される。図2および図3では、ねじりコイルバネ31の形状の理解を容易にするために、第1主面21の下側に位置するねじりコイルバネ31を細い実線にて描く(図21および図22においても同様)。6個のねじりコイルバネ31は、前後方向の略同じ位置にて、互いに離間しつつ幅方向に配列される。6個のねじりコイルバネ31は、略同じ構造を有している。起伏補助部3に含まれるねじりコイルバネ31の数は、適宜変更されてよい。ねじりコイルバネ31の数は、例えば1であってもよく、2以上であってもよい。
ねじりコイルバネ31は、倒伏姿勢の扉体2の縦桁27の間に配置される。図3に示す例では、図中の左側から1番目、3番目、5番目および7番目の分割空間201にねじりコイルバネ31が配置される。すなわち、ねじりコイルバネ31は、倒伏姿勢の扉体2の内部に配置される。図3中の左側から3番目および5番目の分割空間201には、それぞれ2個のねじりコイルバネ31が配置される。ねじりコイルバネ31が配置される分割空間201の第2主面22側には、板材は設けられず、図3中の下方に向けて開口している。
ねじりコイルバネ31が配置されていない分割空間201(すなわち、図3中の左側から2番目、4番目および6番目の分割空間201)は、例えば、浮力部として利用される。当該浮力部は、例えば、第1主面21と第2主面22との間の空間に配置された発泡樹脂等の浮力体を含む。また、浮力部は、第1主面21と第2主面22との間に設けられた水密の空間を含んでいてもよい。
図4は、1つのねじりコイルバネ31を拡大して示す斜視図である。図4では、図3中の最も右側のねじりコイルバネ31を描いている。また、図4では、ねじりコイルバネ31の周囲の構造も併せて描いている。ねじりコイルバネ31は、コイル部32と、第1アーム33と、第2アーム34とを備える。コイル部32は、扉体2の幅方向を向く中心軸J2を中心とする略円筒状の部位である。コイル部32では、幅方向に略平行な中心軸J2を中心としてバネ材が螺旋状に巻回されている。
第1アーム33および第2アーム34はそれぞれ、コイル部32から突出する。第1アーム33および第2アーム34はそれぞれ、扉体2が倒伏姿勢である状態において、コイル部32から前側へと延びている。図4に示す例では、第1アーム33は、コイル部32の下部から前方へと延び、第2アーム34は、コイル部32の上部から前方へと延びる。幅方向を向く側面視において、第1アーム33および第2アーム34は、コイル部32から略接線方向に延びる。第1アーム33の長さと、第2アーム34の長さとは、略同じである。
第1アーム33の先端部は、略直角に折れ曲がっており、幅方向においてコイル部32から離れる方向に延びる。第1アーム33の先端部は、床面91(すなわち、凹部93の底部)に固定された接続部94の孔に挿入される。これにより、第1アーム33の先端部が接続部94を介して床面91に接続される。接続部94は、例えば金属製であり、ボルト等により床面91に固定される。以下の説明では、第1アーム33と床面91との接続部を「第1接続部331」という。第1接続部331は、例えば、第1アーム33の先端部が挿入されている接続部94の孔である。
第2アーム34の先端部は、第1アーム33の先端部と反対向きに略直角に折れ曲がっており、幅方向においてコイル部32から離れる方向に延びる。第2アーム34の先端部は、扉体2の縦桁27に設けられた孔に挿入される。これにより、第2アーム34の先端部が扉体2に接続される。以下の説明では、第2アーム34と扉体2との接続部を「第2接続部341」という。第2接続部341は、例えば、第2アーム34の先端部が挿入されている縦桁27の孔である。
コイル部32は、床面91および扉体2に対して非固定であり、第1アーム33および第2アーム34を介して、床面91および扉体2に間接的に接続される。図1に示すように、扉体2が倒伏姿勢である状態において、コイル部32は、床面91(すなわち、凹部93の底面)から上方に離間しており、また、扉体2の第1主面21から下方に離間している。
扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は自由角度よりも小さい。換言すれば、ねじりコイルバネ31は自由状態よりも圧縮されている。したがって、扉体2が倒伏姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の復元力により、扉体2を起立させる方向に働くモーメント(以下、「起立モーメント」と呼ぶ。)が扉体2に付与される。なお、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、第1アーム33および第2アーム34を、コイル部32の中心軸J2が向く方向に沿って側方から見た場合の角度である。また、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、側方視において第1アーム33および第2アーム34が平行である場合をゼロとして、第1アーム33と第2アーム34とが側方視にて近づくに従って小さくなる。
扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1接続部331の上下方向の位置と、第2接続部341の上下方向の位置とは、略同じである。また、第1接続部331と中心軸J2との間の前後方向の距離と、第2接続部341と中心軸J2との間の前後方向の距離とは、略同じである。
扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2アーム34は、第1接続部331からコイル部32に至る長手方向の範囲の全長に亘って、第1アーム33よりも上方、または、第1アーム33と上下方向の略同じ位置に位置する。換言すれば、側面視において、第1接続部331とコイル部32との間では、第1アーム33と第2アーム34とは交差しない。好ましくは、第2アーム34は、回転軸J1と第2接続部341とを結ぶ直線と側面視において重なる。
起伏ゲート1では、第2アーム34が第1アーム33よりも短くてもよい。すなわち、第2接続部341は、第1接続部331よりも後側に位置してもよい。この場合、第2アーム34、および、第2アーム34の前側への延長線が、第1接続部331からコイル部32に至る長手方向の範囲の全長に亘って、第1アーム33よりも上方、または、第1アーム33と上下方向の略同じ位置に位置する。換言すれば、側面視において、第1接続部331とコイル部32との間では、第1アーム33と、第2アーム34および第2アーム34の延長線とは交差しない。なお、起伏ゲート1では、第1接続部331が、第2接続部341よりも後側に位置していてもよい。
次に、図5ないし図9を参照しつつ、扉体2の起立の様子について説明する。図10は、扉体2の姿勢と、扉体2に働くモーメントとの関係を示す図である。図10中の横軸は、扉体2の床面91に対する角度(以下、単に「扉体2の角度」と呼ぶ。)を示す。扉体2の角度は、扉体2が倒伏姿勢である際に0度であり、扉体2が床面91に対して垂直に起立した際に90度である。図10中の縦軸は、図1中における反時計回りのモーメントを正として、扉体2に働く回転軸J1回りのモーメントを示す。すなわち、図10中の正のモーメントは、扉体2を倒伏させる方向に働くモーメント(以下、「倒伏モーメント」と呼ぶ。)であり、負のモーメントは、扉体2を起立させる方向に働く起立モーメントである。
図10中の破線81は、扉体2の自重によるモーメントであり、実線82は、起伏補助部3により扉体2に付与されるモーメントである。図10中の太い実線83は、線81および線82を合計した合計モーメントである。扉体2の角度が0度である場合(すなわち、扉体2が倒伏姿勢である場合)、扉体2の自重による倒伏モーメントの絶対値は、圧縮状態の起伏補助部3による起立モーメントの絶対値よりも大きい。
図5に示すように、起伏ゲート1に水90が流入すると、水90により扉体2に生じる浮力等により、扉体2に起立モーメントが付与され、扉体2の起立が開始される。このとき、扉体2には、水90による起立モーメント以外に、扉体2の自重による倒伏モーメント、および、ねじりコイルバネ31の復元力による起立モーメントが働く。
ねじりコイルバネ31による起立モーメントは、扉体2の姿勢が、図5に示す倒伏姿勢から図6に示す姿勢を経て図7に示す姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。これにより、扉体2の起立が補助され、扉体2の起立速度が増大する。その結果、水90が扉体2を越えて開口部92から流入することを抑制することができる。図7に示す状態では、ねじりコイルバネ31は、圧縮および伸張されていない自由状態である。換言すれば、ねじりコイルバネ31の第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度である。
以下の説明では、図7に示す扉体2の姿勢を「中間姿勢」と呼ぶ。また、中間姿勢の扉体2と床面91(すなわち、凹部93の底面)との成す角度を「中間角度」と呼ぶ。中間角度は、0度よりも大きく、最大起立姿勢の扉体2と床面91との成す角度(上記例では、約75度)よりも小さい。換言すれば、中間姿勢は、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間の姿勢である。中間角度は、例えば、5度以上かつ70度以下である。図7に示す例では、中間角度は約45度である。扉体2の中間角度、および、ねじりコイルバネ31の自由角度は、適宜変更されてよい。
扉体2が倒伏姿勢と中間姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、圧縮状態のねじりコイルバネ31において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は漸次増大し、ねじりコイルバネ31により扉体2に付与される起立モーメントの絶対値は漸次減少する。また、コイル部32は、床面91および扉体2に対して非固定であるため、扉体2の角度が大きくなるに従って上方かつ扉体2から離れる方向へと移動する。換言すれば、扉体2の姿勢変更に伴って、床面91および扉体2に対するコイル部32の相対位置が変更される。扉体2が中間姿勢まで起立すると、上述のように、ねじりコイルバネ31の圧縮が解除され、ねじりコイルバネ31の復元力により扉体2に付与されるモーメントは、実質的にゼロになる。
扉体2が中間姿勢よりも起立すると、ねじりコイルバネ31の第1アーム33と第2アーム34との成す角度が自由角度よりも大きくなり、ねじりコイルバネ31が伸張状態になる。これにより、ねじりコイルバネ31の復元力による倒伏モーメントが扉体2に働く。ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントは、扉体2の姿勢が、図7に示す中間姿勢から図8に示す姿勢を経て図9に示す最大起立姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。図9に示すように、扉体2が最大起立姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の第1アーム33は、コイル部32から前側へと延び、第2アーム34はコイル部32から上方へと延びている。
扉体2が中間姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2には、水90による起立モーメント、扉体2の自重による倒伏モーメント、および、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントが働く。実際には、ねじりコイルバネ31の自重による倒伏モーメントも扉体2に働くが、ねじりコイルバネ31は比較的軽量であるため、以下の説明では、ねじりコイルバネ31の自重による倒伏モーメントは無視する。扉体2が中間姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、ねじりコイルバネ31の第1アーム33と第2アーム34との成す角度は漸次増大し、ねじりコイルバネ31により扉体2に付与される倒伏モーメントの絶対値は漸次増大する。また、コイル部32は、扉体2の角度が大きくなるに従って上方かつ扉体2から離れる方向へと移動する。換言すれば、扉体2の姿勢変更に伴って、床面91および扉体2に対するコイル部32の相対位置が変更される。
起伏ゲート1では、扉体2が中間姿勢から最大起立姿勢まで起立する間、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントが扉体2に働くことにより、扉体2の起立速度が抑制される。図9に示すように、扉体2が最大起立姿勢である状態では、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントと、扉体2に働く水圧とがつり合っている。換言すれば、最大起立姿勢の扉体2の角度は、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントと、扉体2に働く水圧とにより決定される。なお、図7に示すように、扉体2が中間姿勢まで起立した状態では、水90の水面は扉体2の可動端部24(すなわち、天端)よりも下方に位置するため、扉体2の起立速度が抑制されても、水90が扉体2の可動端部24を越えて開口部92から流入することはない。起伏ゲート1では、扉体2が所定角度よりも起立することを制限するテンションロッド等の構造が設けられてもよい。これにより、扉体2の角度が当該所定角度よりも大きくなることを、より確実に防止することができる。
図9に示す状態から扉体2の前側の水位が下がり始めると、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメント、および、扉体2の自重による倒伏モーメントにより、扉体2の倒伏が開始される。扉体2が最大起立姿勢から中間姿勢まで倒伏する間、扉体2の自重による倒伏モーメントに加えて、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントが扉体2に継続的に働く。これにより、扉体2の倒伏が補助され、水90の水位の低下開始後、速やかに扉体2の倒伏が開始される。その結果、水90の水位が大きく低下した後に扉体2の倒伏が開始されて扉体2が急速に倒伏することを防止することができる。なお、最大起立姿勢における扉体2の角度が90度である場合、扉体2の倒伏開始時には、扉体2の自重による倒伏モーメントは働かず、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントのみが扉体2に働く。
扉体2が図7に示す中間姿勢よりも倒伏すると、ねじりコイルバネ31の圧縮が開始される。扉体2が中間姿勢から図5に示す倒伏姿勢まで倒伏する間、ねじりコイルバネ31による起立モーメントが扉体2に継続的に働くことにより、扉体2の倒伏速度が抑制される。これにより、扉体2が倒伏姿勢になる際に床面91等に加わる力を低減することができる。
以上に説明したように、起伏ゲート1は、扉体2と、起伏補助部3とを備える。倒伏姿勢の扉体2において、扉体2の可動端部24は支持端部23よりも前側に位置する。扉体2は、支持端部23を支点として回動することにより、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。起伏補助部3は、ねじりコイルバネ31を含む。ねじりコイルバネ31は、倒伏姿勢の扉体2の上面(すなわち、第1主面21)の下側に配置される。ねじりコイルバネ31は、コイル部32と、第1アーム33と、第2アーム34とを備える。コイル部32では、扉体2の幅方向を向く中心軸J2を中心としてバネ材が螺旋状に巻回されている。第1アーム33は、コイル部32から突出する。第1アーム33の先端部は、床面91に接続される。第2アーム34は、コイル部32から突出する。第2アーム34の先端部は、扉体2に接続される。
起伏ゲート1では、扉体2が倒伏姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の復元力により、扉体2に起立モーメントが付与される。また、扉体2が最大起立姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の復元力により、扉体2に倒伏モーメントが付与される。このように、起伏ゲート1では、ねじりコイルバネ31により、扉体2の起立開始時における起立モーメントの付与、および、扉体2の倒伏開始時における倒伏モーメントの付与の双方を実現することができる。これにより、起伏ゲート1の構造を簡素化することができる。その結果、水の流入時に迅速に起立開始可能、かつ、水位低下時に早期に倒伏開始可能な起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
上述のように、ねじりコイルバネ31は、倒伏姿勢の扉体2の上面の下側に配置される。これにより、ねじりコイルバネ31を扉体2の側方(すなわち、扉体2よりも幅方向の外側)に配置する場合に比べて、起伏ゲート1を小型化することができる。その結果、起伏ゲート1の設置面積を小さくすることができる。
起伏ゲート1では、ねじりコイルバネ31を、扉体2の両側部よりも幅方向の中央側に配置することができる。このため、扉体2に起立または倒伏を補助するモーメントを付与する際に扉体の可動端部の両側部のみに力を加える場合に比べて、ねじりコイルバネ31から扉体2に加える力を増大することができる。一方、扉体2に同程度の力を加える場合、扉体の可動端部の両側部のみに力を加える場合に比べて、扉体2の径間長(すなわち、扉体2の幅)を増大することができる。また、扉体2の可動端部24近傍の部材を小型化し、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
上述のように、ねじりコイルバネ31は、倒伏姿勢の扉体2の内部に位置する。これにより、凹部93の底面(すなわち、床面91)に、ねじりコイルバネ31を収容するための穴等を設ける必要がない。また、上記穴等の排水設備等を設ける必要もない。したがって、起伏ゲート1の設置およびメンテナンスを容易とすることができる。
起伏補助部3は、一のねじりコイルバネ31とは幅方向の異なる位置に配置された他のねじりコイルバネ31をさらに備える。このように、複数のねじりコイルバネ31を設けることにより、各ねじりコイルバネ31を小型化することができる。また、複数のねじりコイルバネ31が幅方向に配列されることにより、扉体2の径間長をさらに増大することができ、また、扉体2の可動端部24近傍の部材をさらに小型化することもできる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを、より一層低減することができる。
起伏ゲート1では、ねじりコイルバネ31のコイル部32が、床面91および扉体2に対して非固定である。また、扉体2の姿勢変更に伴って、床面91および扉体2に対するコイル部32の相対位置が変更される。このように、コイル部32を移動可能とすることにより、コイル部32の中心軸J2が扉体2の回転軸J1から離れている場合であっても、第2接続部341を扉体2に対して相対移動可能とする必要がない。また、第1接続部331を床面91に対して相対移動可能とする必要もない。したがって、第1アーム33および第2アーム34の先端部に、ローラ等の移動機構を設ける必要がないため、起伏ゲート1の構造を簡素化することができる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを、より一層低減することができる。
また、コイル部32が床面91および扉体2に対して非固定であることにより、コイル部32を扉体2の回転軸J1に近接して配置する必要がない。このため、コイル部32、第1接続部331および第2接続部341の配置の自由度を向上することができる。したがって、扉体2の起伏時に、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される力の方向と、扉体2の回動の接線方向とを、容易に近づけることができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントを大きくすることができる。
上述のように、ねじりコイルバネ31は、扉体2の支持端部23よりも前側に配置される。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33および第2アーム34は、コイル部32から前側へと延びている。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも小さい。扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33はコイル部32から前側へと延び、第2アーム34はコイル部32から上方へと延びている。扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも大きい。これにより、第1アーム33および第2アーム34を長くすることができる。すなわち、第1接続部331および第2接続部341を、扉体2の回転軸J1から比較的大きく離れた位置に配置することができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントを大きくすることができる。
上述のように、扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2アーム34および第2アーム34の前側への延長線が、第1アーム33と床面91との接続部である第1接続部331からコイル部32に至る範囲の全長に亘って、第1アーム33よりも上方、または、第1アーム33と上下方向の同じ位置に位置する。これにより、扉体2の起伏時に、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される力の方向を、扉体2の回動の接線方向に近づけることができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントを大きくすることができる。第2アーム34は、好ましくは、回転軸J1と第2接続部341とを結ぶ直線と側面視において重なる。これにより、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントをさらに大きくすることができる。
また、上述のように、第2アーム34および第2アーム34の前側への延長線が、第1アーム33よりも上方、または、第1アーム33と上下方向の同じ位置に位置することにより、扉体2が倒伏姿勢から起立する際に、扉体2の角度が大きくなるに従って、第1接続部331と第2接続部341とが上下方向に漸次離れる。このため、コイル部32は、扉体2の角度が大きくなるに従って、上方かつ扉体2の第1主面21から離れる方向へと漸次移動し、下方(すなわち、床面91に近づく方向)または第1主面21に近づく方向には移動しない。その結果、扉体2の起伏の際に、コイル部32が凹部93の底面(すなわち、床面91)、または、扉体2の第1主面21に接触することが防止され、扉体2の滑らかな起伏を実現することができる。
さらに、起伏ゲート1では、扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1接続部331の上下方向の位置と、第2アーム34と扉体2との接続部である第2接続部341の上下方向の位置とが同じである。また、第1接続部331と中心軸J2との間の前後方向の距離と、第2接続部341と中心軸J2との間の前後方向の距離とが同じである。これにより、上述のように扉体2の滑らかな起伏を実現しつつ、第2接続部341を扉体2の回転軸J1から比較的大きく離れた位置に配置することができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントをさらに大きくすることができる。
図11は、起伏ゲート1の他の例を示す側面図である。図12は、図11に示すねじりコイルバネ31を拡大して示す斜視図である。図11および図12に示す例では、扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2接続部341が第1接続部331よりも下方に位置する。また、第1接続部331と中心軸J2との間の前後方向の距離と、第2接続部341と中心軸J2との間の前後方向の距離とが同じである。このため、扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2アーム34が、幅方向を向く側面視において第1アーム33と交差する。これにより、扉体2の起伏時に、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される力の方向を、扉体2の回動の接線方向にさらに近づけることができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントを、より一層大きくすることができる。
図11および図12に例示する起伏ゲート1では、第2接続部341が、第1接続部331よりも後側に位置してもよい。この場合、扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2アーム34、または、第2アーム34の前側への延長線が、幅方向を向く側面視において第1アーム33と交差する。この場合も、上記と同様に、扉体2の起伏時に、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される力の方向と、扉体2の回動の接線方向とを、さらに近づけることができる。その結果、ねじりコイルバネ31から扉体2に付与される起立モーメントおよび倒伏モーメントを、より一層大きくすることができる。
なお、図11および図12に例示する起伏ゲート1では、扉体2が倒伏姿勢から起立する際に、コイル部32が、下方(すなわち、床面91に近づく方向)または扉体2の第1主面21に近づく方向に移動する可能性がある。この場合、例えば、第1接続部331および第2接続部341において、第1アーム33および第2アーム34の先端部が挿入される孔にガタ(すなわち、遊び)が設けられることが好ましい。第1アーム33および第2アーム34の先端部が孔内にて移動することにより、コイル部32が下方または第1主面21に近づく方向に移動することを防止または抑制することができる。
図13は、起伏ゲート1のさらに他の例を示す平面図である。図13に例示する起伏ゲート1では、扉体2が、幅方向に関して第1アーム33と第2アーム34との間に位置する浮力部28を備える。これにより、扉体2の浮力を増大することができるため、水の流入時に扉体2のさらに迅速な起立開始を可能とすることができる。浮力部28は、例えば、扉体2の第1主面21の下面に固定された発泡樹脂等の浮力体を含む。扉体2が倒伏姿勢である状態において、浮力部28は、第1アーム33および第2アーム34に接触することなく、第1アーム33と第2アーム34との幅方向の間に位置する。扉体2では、ねじりコイルバネ31が配置される分割空間201において、ねじりコイルバネ31の周囲(例えば、ねじりコイルバネ31と可動端部24との間)にも浮力部が設けられてよい。
図14は、起伏ゲート1のさらに他の例を示す側面図である。図14に例示する起伏ゲート1は、第1アーム33の先端部と、第2アーム34の先端部とを接続する紐状または帯状の起立制限部材35をさらに備える。起立制限部材35は、扉体2が最大起立姿勢である状態において、直線状に延びる。このように、起立制限部材35が弛みなく直線状となることにより、扉体2が最大起立姿勢よりも後側に回動することを防止することができる。起立制限部材35は、長手方向に実質的に伸縮しない部材である。起立制限部材35は、例えば、合成繊維製の帯状部材である。扉体2が倒伏姿勢である状態では、起立制限部材35は、例えば、長手方向の中央部にて2つ折りにされて、第1アーム33と第2アーム34との間に配置される。
起立制限部材35は、各ねじりコイルバネ31に取り付けられてもよく、複数のねじりコイルバネ31のうち、一部のねじりコイルバネ31に取り付けられてもよい。起立制限部材35は、例えば、第1アーム33の先端部および第2アーム34の先端部に直接的に取り付けられてもよい。あるいは、図15に示すように、起立制限部材35は、接続部94において第1アーム33の先端部が挿入されている孔とは異なる孔に締結され、接続部94を介して、第1アーム33の先端部に間接的に取り付けられてもよい。また、あるいは、起立制限部材35は、縦桁27において第2アーム34の先端部が挿入されている孔とは異なる孔に締結され、縦桁27を介して、第2アーム34の先端部に間接的に取り付けられてもよい。
図16ないし図19は、起伏ゲート1のさらに他の例を示す側面図である。図16に示す起伏ゲート1は、起立制限部材351,352をさらに備え、扉体2は、接続部291と、当接部292とをさらに備える。以下の説明では、起立制限部材351,352をそれぞれ、「第1起立制限部材351」および「第2起立制限部材352」と呼ぶ。第1起立制限部材351および第2起立制限部材352は、長手方向に実質的に伸縮しない紐状または帯状の部材である。第1起立制限部材351および第2起立制限部材352は、例えば、合成繊維製の帯状部材である。接続部291および当接部292は、扉体2の第1主面21と第2主面22との間に配置され、例えば、第1主面21に固定される。接続部291は、例えば、床面91に固定された接続部94と略同様の部材である。当接部292は、例えば、略板状の部材である。
図16に示す起伏ゲート1では、ねじりコイルバネ31の第1アーム33の先端部は、上記と同様に、接続部94を介して床面91に接続される。一方、第2アーム34は扉体2に固定されていない。第2アーム34の先端部は、第1起立制限部材351の一方の端部が固定される。第1起立制限部材351の他方の端部は、接続部291に固定される。換言すれば、第2アーム34の先端部は、第1起立制限部材351を介して、扉体2に間接的に接続される。第2起立制限部材352の一方の端部は、第1アーム33の先端部に固定され、他方の端部は第2アーム34の先端部に固定される。換言すれば、第2起立制限部材352は、第1アーム33の先端部と第2アーム34の先端部とを接続する。
図16に示すように、扉体2が中間姿勢よりも倒伏している状態では、圧縮状態のねじりコイルバネ31の第2アーム34の先端部が、当接部292に下側から当接している。これにより、ねじりコイルバネ31から扉体2に起立モーメントが付与される。扉体2が倒伏姿勢である場合においても同様である。扉体2が中間姿勢よりも倒伏している状態では、第1起立制限部材351および第2起立制限部材352は弛んでいる。
図17に示すように、扉体2が中間姿勢である状態では、ねじりコイルバネ31は自然状態であるため、ねじりコイルバネ31から扉体2に対して起立モーメントおよび倒伏モーメントは付与されない。扉体2が中間姿勢である状態では、第1起立制限部材351および第2起立制限部材352は弛んでいる。
扉体2が、図17に示す中間姿勢から起立すると、自然状態のねじりコイルバネ31に第2アーム34は、扉体2から離間する。また、第1起立制限部材351および第2起立制限部材352は弛んでいるため、ねじりコイルバネ31から扉体2に対して起立モーメントおよび倒伏モーメントは付与されない。
扉体2が中間姿勢よりもある程度以上起立すると、扉体2と、扉体2から離間している自然状態の第2アーム34との間で、第1起立制限部材351が直線状に延びる。起伏ゲート1では、扉体2が中間姿勢である状態から第1起立制限部材351が直線状に延びるまでの間、ねじりコイルバネ31は自然状態であり、ねじりコイルバネ31から扉体2に対して起立モーメントおよび倒伏モーメントは付与されない。
第1起立制限部材351が直線状に延びた後は、扉体2が起立するに従って、図18に示すように、ねじりコイルバネ31の第2アーム34が、第1起立制限部材351を介して扉体2に引っ張られて第1アーム33から離れ、ねじりコイルバネ31が伸張状態となる。これにより、ねじりコイルバネ31から扉体2に対して倒伏モーメントが付与される。図18に示す状態では、第2起立制限部材352は弛んでいる。
図19に示すように、扉体2が最大起立姿勢になると、第1起立制限部材351および第2起立制限部材352が直線状に延びる。このように、第1起立制限部材351および第2起立制限部材352が弛みなく直線状となることにより、扉体2が最大起立姿勢よりも後側に回動することを防止することができる。また、扉体2が最大起立姿勢である状態では、ねじりコイルバネ31は上記と同様に伸張状態となっている。これにより、ねじりコイルバネ31から扉体2に対して倒伏モーメントが付与される。
このように、図16ないし図19に示す起伏ゲート1においても、上記と同様に、ねじりコイルバネ31により、扉体2の起立開始時における起立モーメントの付与、および、扉体2の倒伏開始時における倒伏モーメントの付与の双方を、簡素な構造で実現することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る起伏ゲート1aについて説明する。図20は、起伏ゲート1aを示す側面図である。図21は、起伏ゲート1aを示す平面図である。図22は、起伏ゲート1aを前方から見た正面図である。起伏ゲート1aは、図1ないし図3に示す起伏ゲート1の各構成に加えて、カウンタウエイト機構6をさらに備える。起伏ゲート1aのカウンタウエイト機構6以外の構造は、上述の起伏ゲート1と略同様である。以下の説明では、起伏ゲート1aのカウンタウエイト機構6以外の構成に、起伏ゲート1の対応する構成と同符号を付す。
カウンタウエイト機構6は、カウンタウエイト61と、紐状または帯状の接続部材であるロープ62とを備える。図20ないし図22に示す例では、2組のカウンタウエイト61およびロープ62が、カウンタウエイト機構6に設けられる。2つのカウンタウエイト61は、扉体2の幅方向両側において、扉体2の支持端部23よりも後側に配置される。カウンタウエイト61は、例えば、戸当たり部11の内部に配置される。カウンタウエイト61には、ロープ62の一方の端部が接続される。
ロープ62は、前後方向に並ぶ2つの定滑車63を介して前方へと延びる。定滑車63は、例えば、戸当たり部11に固定されている。ロープ62の他方の端部は、前側の定滑車63の下方にて扉体2の可動端部24に接続される。例えば、ロープ62の当該他方の端部は、可動端部24において幅方向外方へと突出する突出部241に接続される。カウンタウエイト61は、ロープ62により吊り下げられており、床面91から上方に離間している。扉体2が倒伏姿勢である場合、扉体2の自重による倒伏モーメントの絶対値は、圧縮状態の起伏補助部3のねじりコイルバネ31による起立モーメントとカウンタウエイト61の重量による起立モーメントとの合計の絶対値よりも大きい。
次に、図23ないし図27を参照しつつ、起伏ゲート1aにおける扉体2の起立の様子について説明する。図23に示すように、起伏ゲート1aに水90が流入すると、水90により扉体2に生じる浮力等により、扉体2に起立モーメントが付与され、扉体2の起立が開始される。このとき、扉体2には、水90による起立モーメント以外に、扉体2の自重による倒伏モーメント、ねじりコイルバネ31の復元力による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメント(すなわち、カウンタウエイト61に働く重力による起立モーメント)が働く。
ねじりコイルバネ31による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメントは、扉体2の姿勢が、図23に示す倒伏姿勢から図24に示す姿勢を経て図25に示す中間姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。これにより、扉体2の起立が補助され、扉体2の起立速度が増大する。扉体2が倒伏姿勢と中間姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、ねじりコイルバネ31による起立モーメントの絶対値、および、カウンタウエイト61による起立モーメントの絶対値は漸次減少する。
上述のように、扉体2が中間姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31は、圧縮および伸張されていない自由状態である。また、本実施の形態では、扉体2が中間姿勢になると、側面視において、扉体2と、扉体2の可動端部24から前側の定滑車63へと延びるロープ62とが、一直線上に位置する。換言すれば、側面視において、扉体2の回転軸J1から前側の定滑車63の下部へと延ばした接線と、扉体2および上記ロープ62とが重なる。これにより、カウンタウエイト61から扉体2に付与されるモーメントが、実質的にゼロになる。図25に示すカウンタウエイト61の位置は、カウンタウエイト61の最下点である。最下点においても、カウンタウエイト61は、ロープ62により吊り下げられており、床面91から上方に離間している。
扉体2が第2姿勢よりも起立すると、ねじりコイルバネ31が伸張状態になり、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントが扉体2に働く。また、カウンタウエイト61による倒伏モーメント(すなわち、カウンタウエイト61に働く重力による倒伏モーメント)も扉体2に働く。ねじりコイルバネ31による倒伏モーメント、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントは、扉体2の姿勢が、図25に示す中間姿勢から図26に示す姿勢を経て図27に示す最大起立姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。これにより、扉体2の起立速度が抑制される。扉体2が中間姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメントの絶対値、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントの絶対値は漸次増大する。
扉体2の前側の水位が下がり始めると、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメント、カウンタウエイト61による倒伏モーメント、および、扉体2の自重による倒伏モーメントにより、扉体2の倒伏が開始される。扉体2が最大起立姿勢から図25に示す中間姿勢まで倒伏する間、扉体2の自重による倒伏モーメントに加えて、ねじりコイルバネ31による倒伏モーメント、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントが扉体2に継続的に働く。これにより、扉体2の倒伏が補助され、水90の水位の低下開始後、速やかに扉体2の倒伏が開始される。
扉体2が中間姿勢から図23に示す倒伏姿勢まで倒伏する間、ねじりコイルバネ31による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメントが扉体2に継続的に働く。これにより、扉体2の倒伏速度が抑制される。
以上に説明したように、起伏ゲート1aは、カウンタウエイト61と、接続部材であるロープ62とをさらに備える。ロープ62は、カウンタウエイト61と扉体2の可動端部24とを接続して、カウンタウエイト61を吊り下げる。起伏ゲート1aでは、扉体2が倒伏姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の復元力およびカウンタウエイト61により扉体2に起立モーメントが付与される。また、扉体2が最大起立姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31の復元力およびカウンタウエイト61により扉体2に倒伏モーメントが付与される。
これにより、ねじりコイルバネ31を小型化することができる。また、起伏補助部3を設けず、カウンタウエイト機構6を設ける場合に比べて、カウンタウエイト61を軽量化することができる。これにより、扉体2の径間長(すなわち、扉体2の幅)を増大することができる。また、扉体2の可動端部24近傍の部材を小型化し、起伏ゲート1aの製造コストを低減することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る起伏ゲート1bについて説明する。図28は、起伏ゲート1bの側面図である。起伏ゲート1bでは、扉体2の回転軸J1が、扉体2の支持端部23において、扉体2の第2主面22の下側に位置する。また、床面91が、回転軸J1よりも少し前側において下方へと延びている。以下の説明では、床面91のうち、下方へと延びている部位を縦床面95と呼ぶ。縦床面95上には(すなわち、縦床面95の後側には)、接続部94が設けられる。扉体2の支持端部23は、縦床面95よりも後側に延びている。起伏ゲート1bでは、扉体2が、支持端部23の回転軸J1を支点として回動することにより、実線にて示す倒伏姿勢と、二点鎖線にて示す最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。起立した扉体2と床面91との間隙は、回転軸J1より前側において扉体2と縦床面95とを接続するシール部材96(例えば、薄板状の水密ゴム)により閉塞されている。
起伏ゲート1bの起伏補助部3bは、ねじりコイルバネ31bを含む。起伏補助部3bは、例えば、扉体2の幅方向に配列される複数のねじりコイルバネ31bを含む。各ねじりコイルバネ31bは、扉体2の支点である回転軸J1よりも後側に配置される。各ねじりコイルバネ31bは、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21の下側に配置される。複数のねじりコイルバネ31bは、同じ構造を有している。起伏補助部3bに含まれるねじりコイルバネ31bの数は、適宜変更されてよい。ねじりコイルバネ31bの数は、例えば1であってもよく、2以上であってもよい。
ねじりコイルバネ31bは、図4に示すねじりコイルバネ31と同様に、コイル部32と、第1アーム33と、第2アーム34とを備える。コイル部32は、扉体2の幅方向を向く中心軸J2を中心とする略円筒状の部位である。コイル部32では、幅方向に略平行な中心軸J2を中心としてバネ材が螺旋状に巻回されている。コイル部32は、床面91および扉体2に対して非固定である。扉体2が倒伏姿勢である状態において、コイル部32は、床面91の縦床面95から後方に離間している。
ねじりコイルバネ31bでは、第1アーム33および第2アーム34はそれぞれ、コイル部32から突出する。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33は、コイル部32から下方へと延びている。第1アーム33の先端部は、床面91の縦床面95に固定された接続部94の孔に挿入される。これにより、第1アーム33の先端部が接続部94を介して床面91に接続される。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第2アーム34は、コイル部32から後側へと延びている。第2アーム34の先端部は、扉体2の縦桁27(図4参照)に設けられた孔に挿入される。これにより、第2アーム34の先端部が扉体2に接続される。
扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも大きい。換言すれば、ねじりコイルバネ31bは自由状態よりも伸張されている。したがって、扉体2が倒伏姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31bの復元力により、扉体2に起立モーメントが付与される。ねじりコイルバネ31bによる起立モーメントは、扉体2の姿勢が倒伏姿勢から中間姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。
なお、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、第1アーム33および第2アーム34を、コイル部32の中心軸J2が向く方向に沿って側方から見た場合の角度である。また、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、側方視において第1アーム33および第2アーム34が平行である場合をゼロとして、第1アーム33と第2アーム34とが側方視にて近づくに従って小さくなる。
図28中において二点鎖線にて示すように、扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33および第2アーム34は、コイル部32から下方へと延びている。扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも小さい。換言すれば、ねじりコイルバネ31bは自由状態よりも圧縮されている。したがって、扉体2が最大起立姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31bの復元力により、扉体2に倒伏モーメントが付与される。ねじりコイルバネ31bによる倒伏モーメントは、扉体2の姿勢が中間姿勢から最大起立姿勢に至るまで、扉体2に対して継続的に働く。
起伏ゲート1bでは、図1に示す起伏ゲート1と同様に、扉体2が倒伏姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31bの復元力により、扉体2に起立モーメントが付与される。また、扉体2が最大起立姿勢である状態において、ねじりコイルバネ31bの復元力により、扉体2に倒伏モーメントが付与される。このように、起伏ゲート1bでは、ねじりコイルバネ31bにより、扉体2の起立開始時における起立モーメントの付与、および、扉体2の倒伏開始時における倒伏モーメントの付与の双方を実現することができる。これにより、起伏ゲート1bの構造を簡素化することができる。その結果、水の流入時に迅速に起立開始可能、かつ、水位低下時に早期に倒伏開始可能な起伏ゲート1bの製造コストを低減することができる。
また、ねじりコイルバネ31bは、倒伏姿勢の扉体2の上面(すなわち、第1主面21)の下側に配置される。これにより、ねじりコイルバネ31bを扉体2の側方(すなわち、扉体2よりも幅方向の外側)に配置する場合に比べて、起伏ゲート1bを小型化することができる。その結果、起伏ゲート1bの設置面積を小さくすることができる。
起伏ゲート1bでは、ねじりコイルバネ31bは、扉体2の回動の支点(すなわち、支持端部23の回転軸J1)よりも後側に配置される。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33はコイル部32から下方へと延び、第2アーム34はコイル部32から後側へと延びている。扉体2が倒伏姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも大きい。扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33および第2アーム34は、コイル部32から下方へと延びている。扉体2が最大起立姿勢である状態において、第1アーム33と第2アーム34との成す角度は、自由角度よりも小さい。
これにより、扉体2の長手方向の途中から下方へと延びる縦床面95を有する床面91にであっても、起伏ゲート1bを設置することができる。また、回転軸J1よりも前にねじりコイルバネ31bが設けられていないため、扉体2に大きな浮力部を設けることができる。その結果、扉体2の起立速度を増大することができる。
起伏ゲート1bでは、図1に示す起伏ゲート1と同様に、コイル部32が、床面91および扉体2に非固定であり、扉体2の姿勢変更に伴って、床面91および扉体2に対するコイル部32の相対位置が変更される。これにより、起伏ゲート1bの構造を簡素化することができる。その結果、起伏ゲート1bの製造コストを、より一層低減することができる。
起伏ゲート1bでは、図20に示す起伏ゲート1aと同様に、起伏補助部3bに加えて、カウンタウエイト機構6が設けられてもよい。これにより、ねじりコイルバネ31bを小型化することができる。また、起伏補助部3bを設けず、カウンタウエイト機構6を設ける場合に比べて、カウンタウエイト61を軽量化することができる。これにより、扉体2の径間長(すなわち、扉体2の幅)を増大することができる。また、扉体2の可動端部24近傍の部材を小型化し、起伏ゲート1bの製造コストを低減することができる。
上述の起伏ゲート1,1a,1bでは、様々な変更が可能である。
例えば、起伏ゲート1では、第1接続部331における第1アーム33と床面91との接続構造は、様々に変更されてよい。また、第2接続部341における第2アーム34と扉体2との接続構造も、様々に変更されてよい。例えば、第2アーム34の先端部と扉体2とが、実質的に伸縮しない紐状または帯状の部材を介して間接的に接続されていてもよい。これにより、ねじりコイルバネ31を小型化することができるとともに、第2接続部341を回転軸J1から大きく離れた位置に配置することができる。起伏ゲート1a,1bにおいても同様である。
起伏ゲート1,1aでは、ねじりコイルバネ31のコイル部32が床面91に固定されてもよい。この場合、第2アーム34の先端部に、扉体2に常に接して扉体2上にて移動可能なローラ等が設けられ、第2アーム34は当該ローラ等を介して扉体2に接続される。また、起伏ゲート1,1aでは、ねじりコイルバネ31のコイル部32が扉体2に固定されてもよい。この場合、第1アーム33の先端部に、床面91に常に接して床面91上にて移動可能なローラ等が設けられ、第1アーム33は当該ローラ等を介して床面91に接続される。起伏ゲート1bにおいても同様である。
起伏ゲート1,1aでは、凹部93の底面に穴等が設けられ、ねじりコイルバネ31の下部が当該穴等に収容されてもよい。また、床面91に凹部93は設けられず、倒伏姿勢の扉体2が、周囲と略同じ高さの平坦な床面91に設置されてもよい。起伏ゲート1bにおいても、倒伏姿勢の扉体2が、周囲と略同じ高さの平坦な床面91に設置されてもよい。
起伏ゲート1,1a,1bの構造は、水圧により扉体2が自動的に起立する起伏ゲート(いわゆる、浮体式起伏ゲート)以外の起伏ゲートに適用されてもよい。例えば、手動で扉体2を起立させる起伏ゲート、または、油圧シリンダや電動ジャッキ等で扉体2を起立させる起伏ゲートに、上述の起伏ゲート1,1a,1bの構造が適用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。