<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜5を参照して説明する。図1および図2では、サーマルヘッドX1の構成を概略的に示している。図3では、基板7、ソルダーレジスト層27、および開口28のみを示しており、被覆部材29および各種電極を省略している。図4では、被覆部材29を省略しており、接続バンプ23と第2ソルダーレジスト層27bを破線にて示している。図5では、被覆部材29を省略している。
サーマルヘッドX1は、ヘッド基体3と、コネクタ31と、封止部材12と、放熱板1と、接着部材14とを備えている。ヘッド基体3は、接着部材14を介して放熱板1上に載置されている。ヘッド基体3は、外部からの電圧が印加されることにより発熱部9を発熱させて、記録媒体P(図6参照)に印画を行っている。コネクタ31は、外部とヘッド基体3とを電気的に接続する。封止部材12は、コネクタ31とヘッド基体3とを接合している。放熱板1は、ヘッド基体3の熱を放熱するために設けられている。接着部材14は、ヘッド基体3と放熱板1とを接合している。
放熱板1は、直方体形状であり、基板7が載置される台部1aを有している。放熱板1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。
ヘッド基体3は、平面視して、長方形状であり、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体Pに印字を行う。
コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、一方がハウジング10の外部に露出しており、他方がハウジング10の内部に収容されている。複数のコネクタピン8は、ヘッド基体3の接続端子2に電気的に接続されており、ヘッド基体3の各種電極と電気的に接続されている。
封止部材12は、第1封止部材12aと第2封止部材12bとを有している。第1封止部材12aは基板7の第1面7f上に位置しており、第2封止部材12bは基板7の第2面7g上(図2における図示において下)に位置している。第1封止部材12aは、コネクタピン8および各種電極を封止している。第2封止部材12bは、コネクタピン8と基板7との接触部を封止している。
封止部材12は、接続端子2、およびコネクタピン8が外部に露出しないように設けられており、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。また、封止部材12は、コネクタ31とヘッド基体3との接合強度を向上させている。なお、第1封止部材12aと第2封止部材12bとが同じ材料により形成されていてもよく、別の材料により形成されていてもよい。
接着部材14は、放熱板1の台部1a上に配置されており、ヘッド基体3と放熱板1とを接合している。接着部材14としては、両面テープ、あるいは樹脂性の接着剤を例示することができる。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について、図1および図2を用いて説明する。
基板7は、放熱板1の台部1a上に配置されており、平面視して、矩形状である。基板7は、第1面7fと、第2面7gと、側面7eとを有している。側面7eは、第1面7fと第2面7gとを接続し、コネクタ31側に位置する。第1面7fは、第1長辺7aと、第2長辺7bと、第1短辺7cと、第2短辺7dとを有している。第1面7f上には、ヘッド基体3を構成する各部材が設けられている。第2面7gは、放熱板1側に位置する。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の第1面7f上に蓄熱層13が設けられている。蓄熱層13は、基板7の上方へ向けて突出した隆起部13aを備えている。隆起部13aは、基板7の第1長辺7aに隣り合うように配置されている。隆起部13aは、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延びている。隆起部13aの断面形状は、楕円を半分にしたような形状である。隆起部13aは、印画する記録媒体Pが、発熱部9上に形成された保護層25に良好に接触するように機能している。隆起部13aの高さは、基板7から15〜90μmである。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストをスクリーン印刷等によって基板7の上面(第1面7f)に塗布し、これを焼成することで形成される。
ヘッド基体3は、基板7上および蓄熱層13上に設けられた電気抵抗層15を有しており、電気抵抗層15上には、共通電極17および個別電極19を含む各種電極が設けられている。電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19を含む各種電極と同形状にパターニングされている。電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19の間に位置し、共通電極17および個別電極19から露出した露出領域を複数有する。各露出領域は、発熱部9を構成しており、隆起部13a上に列状に配置されている。
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図2では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、複数の発熱部9とコネクタ31とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の第1長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の第1短辺7cおよび第2短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。主配線部17dは、基板7の第2長辺7bに沿って延びている。
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、複数の発熱部9は、複数の群に分かれており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11が、個別電極19によって電気的に接続されている。
ヘッド基体3は、IC−コネクタ接続電極21を有している。IC−コネクタ接続電極21は、複数の信号電極21aと、グランド電極21bとを備えており、複数の駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。
信号電極21aは、異なる機能を有する複数の配線で構成され、種々の信号を駆動IC11に送っている。信号電極21aには、例えば、駆動IC11に駆動電圧をかけるVDD配線、印字データを読む込むクロック端子および印字データを保持するLATCH配線等がある。
グランド電極21bは、個別電極19と、信号電極21aと、共通電極17の主配線部17dとに囲まれており、広い面積を有している。グランド電極21bは、0〜1Vのグランド電位に接続される。
ヘッド基体3は、複数のIC−IC接続電極26を有している。IC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続しており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
電気抵抗層15および各種電極は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜形成技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、各種電極は、同じ工程によって同時に形成することができる。
接続端子2は、共通電極17、信号電極21aおよびグランド電極21bをコネクタ31に接続するために、基板7の第2長辺7b側に設けられている。接続端子2は、上部にコネクタピン8が配置されており、共通電極17、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26の一部により形成されている。
個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、ランド部4を有している。ランド部4には、接続バンプ23が配置されており、接続バンプ23を介して、上方に配置された駆動IC11と、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびIC−IC接続電極26とを、電気的に接続している。接続バンプ23としては、例えば、Niはんだバンプ、Auはんだバンプ、あるいはAgはんだバンプを例示することができる。サーマルヘッドX1および後述するX2においては、接続バンプ23としてはんだバンプを用いて説明する。なお、接続バンプ23とランド部4との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。駆動IC11に設けられた端子は、個別電極19の端部に位置するランド部4と、IC−コネクタ接続電極21の端部に位置するランド部4とに、接続バンプ23を介して接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有するスイッチングIC等を用いることができる。
駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって封止されている。なお、駆動IC11の下の領域は被覆部材29が充填されていなくてもよい。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の一部を被覆しており、被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体P(図6参照)との接触による摩耗から保護するためのものである。
保護層25は、導電性を有する無機材料により形成されており、例えば、TiN、Ti
CN、SiN、SiO2、SiON、SiC、TaN、TaONあるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができる。保護層25は、単層で構成されてもよいし、これらの層を積層して構成されてもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術、またはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
ソルダーレジスト層27は、基板7上に設けられており、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21を部分的に被覆している。ソルダーレジスト層27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する。
ソルダーレジスト層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜形成技術を用いて形成することができる。なお、ソルダーレジスト層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるように形成されていてもよい。ソルダーレジスト層27の厚みは、8〜30μmとすることができる。
コネクタ31とヘッド基体3とは、コネクタピン8、固定バンプ33、および封止部材12により接合されている。
固定バンプ33は、接続端子2とコネクタピン8との間に配置されている。固定バンプ33としては、例えば、Niはんだバンプ、Auはんだバンプ、あるいはAgはんだバンプを例示することができる。サーマルヘッドX1およびX2においては、固定バンプ33としてはんだバンプを用いて説明する。なお、固定バンプ33は必ずしも必要ではなく、クリップ式のコネクタピン8を用いて、コネクタピン8で基板7を挟持することにより、接続端子2とコネクタピン8とを直接接続してもよい。
封止部材12は、接続端子2、およびコネクタピン8が外部に露出しないように設けられており、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。なお、第1封止部材12aと第2封止部材12bとが同じ材料により形成されていてもよく、別の材料により形成されていてもよい。
接着部材14は、放熱板1上に配置されており、ヘッド基体3の第2面7gと放熱板1とを接合している。接着部材14としては、両面テープ、あるいは樹脂性の接着剤を例示することができる。
図3、図4および図5を用いて、サーマルヘッドX1の駆動IC11の近傍について説明する。なお、図4(a)では、各種電極および被覆部材29の図示を省略している。また、図4(a)には、駆動IC11の中央を通る中心線CLを図示している。
ソルダーレジスト層27は、第1ソルダーレジスト層27aと、第2ソルダーレジスト層27bとを有している。第1ソルダーレジスト層27aは、平面視して、駆動IC11と重ならない領域に位置している。第2ソルダーレジスト層27bは、駆動IC11と重なる領域に位置している。ソルダーレジスト層27は、図3に示すように、基板7の略全域にわたって設けられており、複数の開口28が設けられている。開口28は、第1開口28aと、第2開口28bと、第3開口28cとを有している。
第1開口28aは、主走査方向に長く形成されており、基板7の第1長辺7aに隣り合うように配置されている。第1開口28aは、第1開口28a内に複数の発熱部9が位置
するように開口している。
第2開口28bは、主走査方向に長く形成されており、駆動IC11に対応して設けられている。そのため、第2開口28bは、主走査方向に複数配列して設けられ、第2開口28b内に複数のランド部4が位置するように開口している。第2開口28bは、第1ソルダーレジスト層27aと、第2ソルダーレジスト層27bによって形成されている。
駆動IC11の下方には、第1領域E1と第2領域E2とが設けられている。より具体的には、第1領域E1は、平面視して、駆動IC11の中央よりも発熱部9に近い側に位置する領域であり、第2領域E2は、平面視して、駆動IC11の中央よりも発熱部9に遠い側に位置する領域である。
第1ソルダーレジスト層27aは、第2開口28bを有しており、開口28bにおける発熱部9と反対側の縁が、駆動IC11の下方に向けて伸びており、駆動IC11の下方に位置する部分が第2ソルダーレジスト層27bとなっている。
第2ソルダーレジスト層27bは、平面視して、第2領域E2において、基板7側から駆動IC11の下面まで設けられている。言い換えると、第2ソルダーレジスト層27bは、厚み方向に、IC−コネクタ接続電極21と駆動IC11との隙間を埋めるように設けられている。なお、第2ソルダーレジスト層27bは、第1領域E1には位置しておらず、第2領域E2のみに位置している。また、第2ソルダーレジスト層27bは、第1領域E1側に位置する縁に、切欠部30が設けられており、ランド部4と離間している。
第3開口28cは、主走査方向に長く形成されており、基板7の第2長辺7b側に設けられている。第3開口28c内に複数の接続端子2が位置するように開口している。
接続バンプ23は、第1接続バンプ23aと、第2接続バンプ23bとを有している。第1接続バンプ23aは、平面視して、第1領域E1に位置しており、主走査方向に複数配列されている。第2接続バンプ23bは、平面視して、第2領域E2に位置しており、主走査方向に複数配列されている。
第1接続バンプ23aは、第2接続バンプ23bよりも多く設けられており、第1接続バンプ23aの数は、第2接続バンプ23bの数の約10倍となっている。また、隣り合う第2接続バンプ23b同士の距離は、隣り合う第1接続バンプ23a同士の距離よりも大きくなっている。
ここで、駆動IC11を接続バンプ23上に搭載してリフローすると、駆動IC11の重量が接続バンプ23に集中することとなる。それにより、接続バンプ23が潰れて、他の電極と接触して短絡するおそれがある。
これに対して、本実施形態のサーマルヘッドX1は、基板7と、基板7上に位置する発熱部9と、基板7上に位置するとともに発熱部9に繋がっており、ランド部4を有する電極(個別電極19、IC−コネクタ接続電極21)と、ランド部4に位置する接続バンプ23と、ランド部4とは離間した位置において、電極(個別電極19、IC−コネクタ接続電極21)を被覆するソルダーレジスト層27と、下方に位置する接続バンプ23を介してランド部4に繋がる駆動IC11と、を備え、ソルダーレジスト層27の一部である第2ソルダーレジスト層27bが、駆動IC11の下方において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置している。そのため、駆動IC11の重量を接続バンプ23だけでなく、第2ソルダーレジスト層27bにも分散させることができる。そのため、接続バンプ23がリフロー時に潰れにくくなり、接続バンプ23の他の電極との接触による短
絡が生じにくくなる。
本実施形態のサーマルヘッドX1では、第1接続バンプ23aの数が、第2接続バンプ23bの数よりも多く、第2ソルダーレジスト層27bが、駆動IC11の下方の第2領域E2において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置していてもよい。
第2領域E2に位置する第2接続バンプ23bの数が、第1領域E1に位置する第1接続バンプ23aの数よりも少ないときには、第2接続バンプ23bにかかる駆動IC11の重量が第1接続バンプ23aと比較して大きくなり、第2接続バンプ23bは第1接続バンプ23aと比べてリフロー時に潰れやすい。しかしながら、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第2ソルダーレジスト層27bが、駆動IC11の下方の第2領域E2において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置していることにより、第2接続バンプ23bの潰れを低減することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、平面視して、第2ソルダーレジスト層27bが、駆動IC11の下方の第1領域E1において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置していなくてもよい。すなわち、第2ソルダーレジスタ層27bが、第1領域E1に位置しておらず、第2領域E2のみに位置しているようにしてもよい。
このような構成を有するときには、第2ソルダーレジスト層27bに伝わる駆動IC11で発生した熱は、第2領域E2に放熱されることとなり、発熱部9側に放熱され難くなる。それにより、駆動IC11に隣接する発熱部9に熱が籠りにくくなり、複数の発熱部9の温度差に起因する主走査方向における濃度ムラの発生を低減することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、図5に示すように、第2ソルダーレジスト層27bが、駆動IC11の下方の2つの第2接続バンプ23bの間において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置していてもよい。
このような構成を有するときには、第2ソルダーレジスト層27bを挟んで隣り合う2つの第2接続バンプ23bの両方の潰れを防止することができる。
さらに、第2ソルダーレジスト層27bが駆動IC11の熱を発熱部9と反対側の第2領域E2に逃がすことができるため、発熱部9に熱が籠ることを抑制することができる。そのため、サーマルヘッドX1の発熱部9の主走査方向における濃度ムラが生じにくくなる。
また、図5に示すように、第2ソルダーレジスト層27bと駆動IC11との間に空隙32があってもよい。それにより、第2ソルダーレジスト層27bが駆動ICで発生した熱によって熱膨張した場合においても、第2ソルダーレジスト層27bの熱膨張を、空隙32によって緩和することができる。
次に、サーマルヘッドX1の製造方法について説明する。
まず、基板7上に、電気抵抗層15および各種電極層をスパッタリング法により順次成膜する。続いて、発熱部9を被覆するように保護層25をスパッタリング法により成膜する。
次に、ソルダーレジスト層27を形成するために、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、およびイミダゾールを混合してソルダーレジスト層27用樹脂を作製する。
続いて、印刷法によりソルダーレジスト層27用樹脂を基板7に塗布する。その際に、開口28がそれぞれ形成され、第2開口28bからランド部4が露出するようにソルダーレジスト層27用樹脂を塗布する。
例えば、ソルダーレジスト層27の膜厚を平均8μmとする場合、樹脂材料に有機溶媒を加えて、粘度を下げて塗布することで薄いソルダーレジスト層27とすることができる。
さらに、ソルダーレジスト層27の膜厚を平均30μmとする場合、樹脂材料を2回塗布することによって、厚いソルダーレジスト層27とすることができる。
なお、ソルダーレジスト層27の膜厚は、サーマルヘッドX1を副走査方向に切断し、切断面において基板7からソルダーレジスト層27の上面までの高さを測定することにより求めることができる。
次に、図2に示すように、接続バンプ23が設けられた駆動IC11をランド部4上に搭載し、リフローによりランド部4と接続バンプ23とを電気的に接続する。
続いて、駆動IC11が埋設されるように、被覆部材29を第2開口28bにディスペンサにより塗布、硬化して、駆動IC11を封止する。なお、駆動IC11ごとに被覆部材29を個別に設けてもよく、複数の第2開口28bにわたって、主走査方向に延びるように被覆部材29を設けることにより、複数の駆動IC11を同時に封止してもよい。
また、空隙32は、ソルダーレジスト層27を塗布した後に、駆動IC11と接する部分に発泡剤または有機溶媒を添加し、加熱硬化させることで作製することができる。
次に、サーマルヘッドX1を有するサーマルプリンタZ1について、図6を参照しつつ説明する。
本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上を通過するように、図6の矢印S方向に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、記録媒体Pが、インクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルム(不図示)を搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9へ向けて押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等
の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護層25上に押圧しつつ、発熱部9上に位置する保護層25上を通過するように記録媒体Pを搬送機構40によって搬送する。そして、サーマルプリンタZ1は、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
サーマルヘッドX2について図7および図8を参照して説明する。図7(a)は、第2の実施形態に係るサーマルヘッドを構成する駆動IC近傍を拡大して示す平面図、図7(b)は、図7(a)に示すVIIb−VIIb線断面図である。図8は、図7(a)に示すVIII−VIII線断面図である。
サーマルヘッドX2を示す図7および図8において、サーマルヘッドX1と同一の部材については同じ符号を付しており、重複する説明を省略する。サーマルヘッドX2は、接続バンプ123、第2開口128b、ソルダーレジスト層127、および切欠部130の構成がサーマルヘッドX1と異なっている。
接続バンプ123は、第1接続バンプ123aと第2接続バンプ123bとを有している。第1接続バンプ123aは、第1領域E1に位置している。第2接続バンプ123bは、第2領域E2に位置している。図8に示すように、第1接続バンプ123aは、ランド部4から駆動IC11までの厚みが、第2接続バンプ123bの厚みよりも厚くなっている。
ソルダーレジスト層127は、第1ソルダーレジスト層127aと第2ソルダーレジスト層127bとを有している。第2開口128bは、第1ソルダーレジスト層127aと第2ソルダーレジスト層127bによって形成されている。第2ソルダーレジスト層127bは、第2領域E2において、基板7側から駆動IC11の下面にわたって位置している。第2ソルダーレジスト層127bは、第1領域E1側の縁に、切欠部130が設けてられており、ランド部4と離間している。
切欠部130は、第1切欠部130aと第2切欠部130bを有している。第1切欠部130aは、サーマルヘッドX1の切欠部30と同様である。第2切欠部130bは、平面視して、駆動IC11と重なる領域から、駆動IC11と重ならない領域にわたって位置している。第1切欠部130aは、第2開口128bの主走査方向における両端部に位置している。第2切欠部130bは、第2開口128bの主走査方向における中央部に位置している。
また、本実施形態のサーマルヘッドX2では、平面視して、ソルダーレジスト層127は、駆動IC11と重なる領域に第2切欠部130bを有しており、第2切欠部130bは、ソルダーレジスト層127と駆動IC11とが重ならない領域まで引き出されており
、被覆部材29が、第2切欠部130bに入り込んでいてもよい。
このような構成を有するときには、第2開口128bに被覆部材29を塗布する際に、被覆部材29が駆動IC11の下方に入り込みやすくなる。それにより、駆動IC11を被覆部材29により封止することができる。
また、被覆部材29とソルダーレジスト層127の接触面積が増え、被覆部材29とソルダーレジスト層127との接合強度が増す。そのため、被覆部材29が駆動IC11から剥離しにくくなり、駆動IC11が空気中の水分や塵等に触れる可能性を低減することができる。その結果、駆動IC11が故障しにくくなる。
また、第2切欠部130bは複数あってもよい。第2切欠部130bが複数あることで、被覆部材29とソルダーレジスト層127との接触面積をさらに増加させることができ、接合強度を向上させることができる。
また、図8に示すように、本実施形態のサーマルヘッドX2では、第2接続バンプ123bの厚みが、第1接続バンプ123aの厚みよりも薄くてもよい。
このような構成を有することで、第1接続バンプ123aよりも数が少なく、放熱性が低くなっている第2接続バンプ123b側の駆動IC11と基板7までの距離を第1接続バンプ123a側と比べて短くすることができる。
そのため、駆動IC11で発生した熱を逃がしやすくなり、駆動IC11の記録媒体Pの搬送方向における上流側に位置する発熱部9に熱が籠りにくくなり、駆動IC11の記録媒体Pの搬送方向における上流側以外に位置する発熱部9との温度差が生じることを抑制できる。その結果、サーマルヘッドX2の主走査方向における濃度ムラを低減することができる。
なお、例えば、第2接続バンプ123bを形成する半田の量を、第1接続バンプ123aを形成する半田の量よりも少なくすることにより、第1接続バンプ123aの厚みよりも薄い第2接続バンプ123bを作製することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX2では、第1ソルダーレジスト層127aが、駆動IC11の側面に接していてもよい。
このような構成を有するときには、ソルダーレジスト層127と駆動IC11の接触面積を増やすことができ、駆動IC11で発生した熱をソルダーレジスト層127に効率よく逃すことができる。そのため、駆動IC11に熱が籠りにくくなり、駆動IC11の記録媒体Pの搬送方向における上流側に位置する発熱部9に熱が籠りにくくすることができ、他の位置の発熱部9との温度差を低減できる。
その結果、サーマルヘッドX2の主走査方向における濃度ムラを低減することができる。さらに、第1ソルダーレジスト層127aが、駆動IC11の側面に接していることにより、リフロー時における駆動IC11の位置ずれが生じにくくなる。
<変形例>
以上、本開示のサーマルヘッドの実施形態の複数の例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2をサーマルプリ
ンタZ1に用いてもよい。
例えば、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示したが、これに限定されるものではない。各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成した、いわゆる厚膜ヘッドに適用してもよい。
また、発熱部9が基板7上に形成された平面ヘッドを例示して説明したが、発熱部9が基板7の端面に設けられた、いわゆる端面ヘッドに適用してもよい。
また、上記実施形態では、蓄熱層13が隆起部13aのみからなる例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13が隆起部13a以外の領域広がっていてもよく、また、隆起部13aを設けなくてもよい。
また、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を形成してもよい。
なお、封止部材12を、駆動IC11を被覆する被覆部材29と同じ材料により形成してもよい。その場合、被覆部材29を印刷する際に、封止部材12が形成される領域にも印刷して、被覆部材29と封止部材12とを同時に形成してもよい。
また、駆動IC11の下面が被覆部材で満たされていない例を示したが、駆動IC11の下の領域が被覆部材29によって満たされていてもよい。
また、平面視において、駆動IC11の外側から駆動IC11へ向かって副走査方向に第1ソルダーレジスト層27a、127aが伸びる例を示したが、駆動IC11の外側から駆動IC11へ向かって主走査方向に第1ソルダーレジスト層27a、127aが伸びるようにしてもよい。