JP6765897B2 - 保冷具 - Google Patents

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Description

本発明は、冷却時の色変化が容易に視認可能な保冷用組成物を備えた保冷具に関する。
保冷具は、各種生鮮物の保管時や輸送時の保冷に幅広く利用されており、通常は、繰り返して利用される。このような保冷具は、保冷作用を有する保冷用組成物を備え、熱伝導性を有する容器中にこの保冷用組成物が封入されて、構成される。
保冷用組成物としては、その存在が保冷具の外側から容易に視認可能となるように、着色剤を含有するものが知られており、例えば、染料により着色された保冷用組成物が封入され、その封入量が外部から容易に確認可能となっている保冷具が開示されている(特許文献1参照)。
特開2006−97984号公報
しかし、特許文献1に記載の保冷具は、保冷用組成物が染料を含有していても、凍結の有無など、冷却状態を目視により確認することは困難であり、保冷可能な所望の温度にまで保冷具が十分に冷却されているか、冷却状態の視認が困難であるという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷却状態が目的とする状態にあるか容易に視認可能な保冷具を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸塩と、を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物が、前記酸性の無機塩として、リン酸二水素塩とリン酸二水素塩以外の無機塩とを含有し、前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0であり、前記保冷用組成物は、リン酸塩、リン酸二水素塩及び水以外の含有成分をすべて除去した場合のpH(α1)が、前記pKaに対して、下記式(i)で表される関係を満たすものである、保冷具である。
pH指示薬のpKa≦pH(α1)≦pH指示薬のpKa+1.8 ・・・・(i)
本発明の第1の態様においては、前記保冷用組成物のpHが4.6〜8.8であることが好ましい。
本発明の第1の態様においては、前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜8.5となるものが好ましい。
また、本発明の第2の態様は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸一水素塩と、を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸一水素塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物において、水、前記無機塩及び増粘剤の総含有量に対する、リン酸一水素塩の含有量の割合が、0.2〜5.0質量%であり、前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0である、保冷具である。
本発明の第2の態様においては、前記保冷用組成物のpHが4.7〜8.0であることが好ましい。
本発明の第2の態様においては、前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜9.1となるものが好ましい。
また、本発明の第3の態様は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩の含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が7以下となるものであり、前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が7以上となるものであり、pH(α2)及びpH(α3)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示す、保冷具である。
本発明によれば、冷却状態が目的とする状態にあるか容易に視認可能な保冷具が提供される。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態に係る保冷具は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸塩と、を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物が、前記酸性の無機塩として、リン酸二水素塩とリン酸二水素塩以外の無機塩とを含有し、前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0であり、前記保冷用組成物は、リン酸塩、リン酸二水素塩及び水以外の含有成分をすべて除去した場合のpH(α1)が、前記pKaに対して、下記式(i)で表される関係を満たすものである。
pH指示薬のpKa≦pH(α1)≦pH指示薬のpKa+1.8 ・・・・(i)
前記保冷具は、pH指示薬の発色の有無が反映された保冷用組成物の色が、保冷用組成物の凍結の前後において大きく変化するために、冷却状態が目的とする状態(対象物を十分に冷却できる状態)にあるか容易に視認可能なものである。そして、凍結の前後における保冷用組成物の色は、前記無機塩、増粘剤等のpH指示薬以外の含有成分自体の色を主として反映したものではない。
第1実施形態における保冷用組成物は、その酸性度に影響を与える成分として、無機塩及び増粘剤を含有するが、無機塩として、酸性の無機塩であるリン酸二水素塩及びリン酸二水素塩以外の無機塩、並びにリン酸塩という特定の組み合わせのものを選択し、これらの含有量を限定し、さらにこれら無機塩に対してpKaが特定範囲にあるpH指示薬を組み合わせることで、pH指示薬の発色の変化又は有無に依存して、顕著に大きな色変化を生じるものである。
<無機塩>
第1実施形態における前記無機塩は、保冷剤の一成分として機能するものであり、主にその種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
また、前記無機塩は、前記pH指示薬に該当せず、保冷用組成物の凍結時に、結晶又はアモルファス(非晶質)として析出する成分であり、析出によって保冷用組成物の色変化に関与するものである。
第1実施形態における前記保冷用組成物は、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸塩と、を含有し、さらに前記酸性の無機塩として、リン酸二水素塩とリン酸二水素塩以外の無機塩とを含有する。
[酸性の無機塩]
(リン酸二水素塩)
第1実施形態において、前記酸性の無機塩として用いるリン酸二水素塩は、リン酸(HPO)中の1個の水素イオンがカチオンで置換されてなるものであり、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第1実施形態におけるリン酸二水素塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸二水素カルシウム(Ca(HPO)等のリン酸二水素金属塩;リン酸二水素アンモニウム(NHPO)等のリン酸二水素非金属塩等が挙げられる。
第1実施形態における保冷用組成物が含有するリン酸二水素塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
(リン酸二水素塩以外の無機塩)
第1実施形態において、前記酸性の無機塩として用いる、リン酸二水素塩以外の無機塩は、その水溶液が酸性を示すものであれば特に限定されず、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第1実施形態における前記リン酸二水素塩以外の無機塩としては、例えば、塩化アンモニウム(NHCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸アンモニウム((NHSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、ミョウバン(AlK(SO)、アンモニウムミョウバン(Al(NH)(SO)、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO・4HO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)等が挙げられ、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムが好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物が含有するリン酸二水素塩以外の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[リン酸塩]
第1実施形態における前記リン酸塩は、リン酸(HPO)中の3個の水素イオンがカチオンで置換されてなるものであり、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
前記リン酸塩は、通常、その水溶液が塩基性を示す塩基性の塩である。
第1実施形態におけるリン酸塩としては、例えば、リン酸三ナトリウム(NaPO)、リン酸三ナトリウム十二水和物(NaPO・12HO)、リン酸三カリウム(KPO)等のリン酸三金属塩;リン酸三アンモニウム((NHPO)等のリン酸三非金属塩等が挙げられ、リン酸三ナトリウム(NaPO)、リン酸三ナトリウム十二水和物、リン酸三カリウム(KPO)が好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物が含有するリン酸塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[その他の無機塩]
第1実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩として、前記酸性の無機塩(リン酸二水素塩及びリン酸二水素塩以外の無機塩)並びにリン酸塩以外に、これらのいずれにも該当しないその他の無機塩を含有していてもよい。
前記その他の無機塩は、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第1実施形態における前記その他の無機塩は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、その水溶液が中性を示す中性の無機塩、その水溶液が塩基性を示すリン酸塩以外の無機塩等が挙げられる。
前記中性の無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カリウム(KSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、臭化カリウム(KBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、塩素酸カリウム(KClO)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、チオ硫酸ナトリウム(Na)等が挙げられる。
これらの中でも、前記中性の無機塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムであることが好ましい。
前記リン酸塩以外の塩基性の無機塩は、リン酸一水素塩以外の無機塩であることが好ましく、例えば、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、ホウ砂(Na)等が挙げられる。
これらの中でも、前記リン酸塩以外の塩基性の無機塩は、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであることが好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1実施形態での保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸塩の合計含有量の割合は、5〜100質量%であり、5.5〜100質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きくなる。
このような数値範囲の中で、前記割合の下限値としては、例えば、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、45質量%等が選択できるが、これらに限定されない。また、このような数値範囲の中で、前記割合の上限値としては、例えば、90質量%、80質量%、70質量%、60質量%、55質量%等が選択できるが、これらに限定されない。
第1実施形態における凍結前、好ましくは0℃以上の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その溶解している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち溶解している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
また、第1実施形態における凍結後の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その析出している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち析出している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
第1実施形態における保冷用組成物の無機塩の総含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
<増粘剤>
第1実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の粘度を増大させ、前記pH指示薬に該当しない成分である。第1実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の凍結時に析出しないものが好ましい。なお、本明細書において「増粘剤が保冷用組成物の凍結時に析出しない」とは、保冷用組成物の凍結時に、増粘剤が水に溶解した状態のまま固化することを意味し、増粘剤の分子が多量に集合することなく、水分子に取り囲まれたまま固化している状態であると推測され、多量の増粘剤の分子が集合して固化している状態ではないと推測される。
第1実施形態における前記増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系ポリマー(ポリアクリル酸骨格有する化合物);カルボキシメチルセルロース(CMC)等のカルボキシアルキルセルロース;グアーガム;ヒドロキシプロピルグアーガム等のヒドロキシアルキルグアーガム;ペクチン;キサンタンガム;タマリンドガム;カラギーナン;プロピレングリコール等のアルキレングリコール等が挙げられる。
第1実施形態における前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシアルキルグアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン及びアルキレングリコールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム及びヒドロキシアルキルグアーガムからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
このような増粘剤を用いることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きく、かつ取り扱い性により優れたものとなる。
第1実施形態における保冷用組成物が含有する増粘剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1実施形態における凍結前及び凍結後の保冷用組成物中で、増粘剤はその析出している量が少ないほど好ましく、増粘剤の総量のうち析出している量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(全量が析出していない)ことが特に好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物の増粘剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜6質量%であることがより好ましく、0.6〜3質量%であることが特に好ましい。
<pH指示薬>
第1実施形態における前記pH指示薬(酸塩基指示薬)は、その発色の有無を反映させて保冷用組成物の色を決定するものである。保冷用組成物は、pH指示薬を含有することにより、凍結の前後において色変化する。
第1実施形態における前記pH指示薬は、pKaが4.9〜8.0であれば、特に限定されない。
なお、本実施形態におけるpH指示薬のpKaは、特に断りのない限り、溶媒が水で温度が25℃である場合の値を意味する。
pH指示薬は、その変色が観察されるpH範囲、すなわち変色域を有している。pH指示薬は、溶液中で解離形と未解離形とに分かれて存在し、これらの間に解離平衡が成り立っており、解離形と未解離形とで呈する色が異なるものであるが、変色域外では、平衡は解離形か未解離形かのいずれか一方に著しく片寄っており、一方の色しかみられない。そして、変色域でpH指示薬は、解離形と未解離形とが比較できる程度の量で混在しており、両方の色の混ざりがみられる(「化学大辞典縮刷版第39刷、2006年9月15日」、共立出版株式会社」)。
表1に主なpH指示薬を例示する。表1には、pH指示薬と共に、その変色域及び色変化をあわせて記載している。なお、表1中の「色変化(低pH→高pH)」とは、pH指示薬が含有されている液体のpHが、特定の値からこれよりも高い値へ変化した際に、pH指示薬が変色域内で示す色変化を意味し、例えば、「赤→黄」とは、前記液体のpHが高くなる過程で、pH指示薬が前記液体を赤色から黄色に色変化させることを意味する。
Figure 0006765897
第1実施形態におけるpH指示薬は、例えば、その変色域(pH)が3.0〜10.5の範囲内にあるものが好ましく、4.0〜9.5の範囲内にあるものがより好ましく、4.5〜9.0の範囲内にあるものが特に好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物が含有するpH指示薬は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。ただし、通常はpH指示薬を1種のみ含有することが好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物のpH指示薬の含有量は、保冷用組成物の目的とする色変化が達成される限り特に限定されないが、1〜30ppmであることが好ましく、5〜20ppmであることがより好ましい。
<その他の成分>
第1実施形態における保冷用組成物は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、水以外の溶媒;防腐剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
第1実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
(溶媒)
第1実施形態における前記溶媒は、前記無機塩、増粘剤及びpH指示薬を溶解可能なものが好ましく、このようなものとしては、例えば、アルコール等が挙げられる。
水及び前記溶媒は、保冷剤の一成分として機能するものであり、前記無機塩と共に、主にこれらの種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
第1実施形態での保冷用組成物において、水及び前記溶媒の総含有量に対する前記溶媒の含有量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
(防腐剤)
第1実施形態における前記防腐剤としては、例えば、食品保存料、酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、ナトリウムピリチオン、パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、プロタミン、有機窒素硫黄系化合物等が挙げられる。
第1実施形態における保冷用組成物の防腐剤の含有量は、特に限定されないが、0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.04〜0.2質量%であることがより好ましい。
(界面活性剤)
第1実施形態における前記界面活性剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;デカン酸ナトリウム等のアルキルカルボン酸塩;N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンジアルキルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルケニルエーテル等が挙げられる。
第1実施形態における保冷用組成物は、水及び前記溶媒以外の成分(前記無機塩、増粘剤、pH指示薬、及び前記溶媒以外のその他の成分)の総含有量に対する、前記無機塩、増粘剤及びpH指示薬の総含有量の割合が、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。前記総含有量の割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は凍結の前後においてより大きく色変化する。
第1実施形態における保冷用組成物は、リン酸塩、リン酸二水素塩及び水以外の含有成分をすべて除去した場合のpH(α1)が、前記pH指示薬のpKaに対して、下記式(i)で表される関係を満たす。
pH指示薬のpKa≦pH(α1)≦pH指示薬のpKa+1.8 ・・・・(i)
pH(α1)は、第1実施形態における保冷用組成物が含有する量と同じ量のリン酸塩、リン酸二水素塩及び水のみを混合して得られた混合液(例えば、リン酸塩及びリン酸二水素塩を含有する水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いるリン酸塩及びリン酸二水素塩の混合物について、その酸性度の指標となるものである。
pH(α1)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記混合液の温度が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
pH(α1)は、前記式(i)の関係を満たした上で、さらに、5.0〜10.6であることが好ましく、5.3〜10.3であることがより好ましく、5.6〜10.0であることが特に好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物のpHは、4.6〜8.8であることが好ましく、4.9〜8.5であることがより好ましく、5.1〜8.3であることが特に好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度で前記数値範囲のpHを示すことが好ましく、前記保冷用組成物の温度が25℃であるときに前記数値範囲のpHをを示すことがより好ましい。
なお、本実施形態において、保冷用組成物についての単なる「pH」との記載は、特に断りのない限り、保冷用組成物自体のpHを意味するものとする。
第1実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が、4.4〜8.7であることが好ましく、4.9〜8.2であることがより好ましい。
pH(α2)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記無機塩のみを含有する無機塩含有水(例えば、無機塩水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる無機塩の酸性度の指標となるものである。
pH(α2)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記無機塩含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜8.5であることが好ましく、6.0〜8.3であることがより好ましく、例えば、6.0〜8.0であってもよいし、6.5〜7.5であってもよい。
pH(α3)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記増粘剤のみを含有する増粘剤含有水(例えば、増粘剤水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる増粘剤の酸性度の指標となるものである。
pH(α3)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記増粘剤含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第1実施形態における保冷用組成物は、水、前記無機塩、増粘剤、pH指示薬、及び必要に応じて前記その他の成分を配合することで得られる。
各成分の配合方法は特に限定されず、保冷用組成物の凍結温度よりも高い温度において、各成分が均一に溶解又は分散するように、任意に調節できる。
例えば、各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
本発明の第1実施形態に係る保冷具は、前記保冷用組成物を備えたものであり、例えば、液状物を封入可能な容器状、袋状等の保持手段によって、保冷用組成物を保持することで構成される。
前記保持手段の材質は、保持された保冷用組成物の色変化(変色)が視認可能な程度に透明性を有していれば、特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル等の合成樹脂等が挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
前記保持手段の材質や大きさは、例えば、保持手段の形態、保冷用組成物の保持量、又は凍結の前後における保冷用組成物の色変化の仕方等を考慮して、選択すればよい。
例えば、袋状の保持手段の場合には、好ましい保持手段の材質の一例としては、低密度ポリエチレンが挙げられる。また、容器状の保持手段の場合には、好ましい保持手段の材質の一例としては、高密度ポリエチレンが挙げられる。
例えば、袋状の保持手段は、これを小さいものとして用いる場合、すなわち保冷用組成物の保持量が比較的少ない場合に好ましいものである。また、容器状の保持手段は、これを大きいものとして用いる場合、すなわち保冷用組成物の保持量が比較的多い場合に好ましいものである。
ただし、ここに示す保持手段の材質や大きさの選択方法は一例に過ぎない。
前記保持手段の材質は、耐低温脆性、耐水性及び耐薬品性等に優れる点においては、ポリオレフィンであることが好ましく、さらに成形が容易で、高い強度を有する点においては、高密度ポリエチレンであることがより好ましい。
前記保持手段中のフィルム状又はシート状等の扁平部位の厚さは、特に限定されないが、5〜200μmであることが好ましい。
前記扁平部位は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。前記扁平部位が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
前記扁平部位が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい扁平部位の厚さとなるようにするとよい。
第1実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において大きく色変化するために、凍結の有無を容易に視認可能なものである。そして、保冷用組成物のこの色変化が、保冷具の外側から視認可能となっており、これにより保冷具は、所望の温度にまで十分に冷却されているか否かが容易に視認可能となっている。
また、前記保冷用組成物は、凍結及び解凍を繰り返すなど、冷却及び昇温を繰り返しても、効果が損なわれることがないので、これを備えた保冷具は、繰り返し利用にも適したものである。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態に係る保冷具は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸一水素塩と、を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸一水素塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物において、水、前記無機塩及び増粘剤の総含有量に対する、リン酸一水素塩の含有量の割合が、0.2〜5.0質量%であり、前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0のものである。
前記保冷具は、pH指示薬の発色の有無が反映された保冷用組成物の色が、保冷用組成物の凍結の前後において大きく変化するために、冷却状態が目的とする状態(対象物を十分に冷却できる状態)にあるか容易に視認可能なものである。そして、凍結の前後における保冷用組成物の色は、前記無機塩、増粘剤等のpH指示薬以外の含有成分自体の色を主として反映したものではない。
第2実施形態における保冷用組成物は、その酸性度に影響を与える成分として、無機塩及び増粘剤を含有するが、無機塩として、酸性の無機塩及びリン酸一水素塩という特定の組み合わせのものを選択し、これらの含有量を限定し、リン酸一水素塩については、水、無機塩及び増粘剤の総含有量に対する含有量の割合も限定し、さらにこれら無機塩及び増粘剤に対してpKaが特定範囲にあるpH指示薬を組み合わせることで、pH指示薬の発色の変化又は有無に依存して、顕著に大きな色変化を生じるものである。
<無機塩>
第2実施形態における前記無機塩は、保冷剤の一成分として機能するものであり、主にその種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
また、前記無機塩は、前記pH指示薬に該当せず、保冷用組成物の凍結時に、結晶又はアモルファス(非晶質)として析出する成分であり、析出によって保冷用組成物の色変化に関与するものである。
第2実施形態における前記保冷用組成物は、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸一水素塩と、を含有する。
[酸性の無機塩]
第2実施形態における前記酸性の無機塩は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択でき、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第2実施形態における酸性の無機塩としては、例えば、第1実施形態における前記酸性の無機塩と同じもの、すなわち、リン酸二水素塩とリン酸二水素塩以外の無機塩と、が挙げられる。
第2実施形態における保冷用組成物が含有する前記酸性の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[リン酸一水素塩]
第2実施形態における前記リン酸一水素塩は、リン酸(HPO)中の2個の水素イオンがカチオンで置換されてなるものであり、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
前記リン酸一水素塩は、通常、その水溶液が塩基性を示す塩基性の塩である。
第2実施形態におけるリン酸一水素塩としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸水素カルシウム(CaHPO)等のリン酸一水素金属塩;リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)等のリン酸一水素非金属塩等が挙げられる。
第2実施形態における保冷用組成物が含有するリン酸一水素塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[その他の無機塩]
第2実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩として、前記酸性の無機塩及びリン酸一水素塩以外に、これらのいずれにも該当しないその他の無機塩を含有していてもよい。
前記その他の無機塩は、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第2実施形態における前記その他の無機塩は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、その水溶液が中性を示す中性の無機塩、その水溶液が塩基性を示すリン酸一水素塩以外の無機塩等が挙げられる。
前記中性の無機塩としては、例えば、第1実施形態における前記中性の無機塩と同じものが挙げられ、塩化ナトリウム、塩化カリウム又は硫酸ナトリウムであることが好ましい。
前記リン酸一水素塩以外の塩基性の無機塩は、リン酸塩以外の無機塩であることが好ましく、例えば、第1実施形態における前記リン酸塩以外の塩基性の無機塩と同じものが挙げられ、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであることが好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第2実施形態における保冷用組成物で好ましいものとしては、前記酸性の無機塩であるリン酸二水素塩と、中性の無機塩と、を含有するものが挙げられる。このような保冷用組成物は、凍結の前後における色変化の完了に要する時間がより短く、より好ましい性状を有する。
第2実施形態における保冷用組成物が、リン酸二水素塩及び中性の無機塩を含有する場合、前記中性の無機塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムであることが好ましい。このような中性の無機塩を併用することで、第2実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において、より短時間で色変化が完了する。
第2実施形態における保冷用組成物が、リン酸二水素塩及び中性の無機塩を含有する場合、無機塩の総含有量に対する、中性の無機塩の含有量の割合は、40〜60質量%であることが好ましく、43〜57質量%であることがより好ましく、46〜54質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、第2実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において、より短時間で色変化が完了し、かつより大きく色変化する。
第2実施形態における保冷用組成物が、リン酸二水素塩及び中性の無機塩を含有する場合、リン酸一水素塩の含有量(質量)に対する、リン酸二水素塩の含有量(質量)の比率([保冷用組成物のリン酸二水素塩の含有量(質量)]/[保冷用組成物のリン酸一水素塩の含有量(質量)])は、0.04〜2であることが好ましく、0.04〜1.6であることがより好ましく、0.04〜1.4であることが特に好ましい。前記比率がこのような範囲であることで、第2実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において、より短時間で色変化が完了する。
さらに、第2実施形態における保冷用組成物が、凍結の前後において、より大きく色変化することから、前記比率は、0.04〜1.2であることが好ましく、0.07〜0.8であることがより好ましく、0.1〜0.6であることが特に好ましい。
第2実施形態での保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸一水素塩の合計含有量の割合は、5〜100質量%であり、5.5〜100質量%であることが好ましく、6〜100質量%であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きくなる。
このような数値範囲の中で、前記割合の下限値としては、例えば、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、45質量%等が選択できるが、これらに限定されない。また、このような数値範囲の中で、前記割合の上限値としては、例えば、90質量%、80質量%、75質量%、70質量%、65質量%等が選択できるが、これらに限定されない。
第2実施形態における凍結前、好ましくは0℃以上の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その溶解している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち溶解している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
また、第2実施形態における凍結後の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その析出している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち析出している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
第2実施形態における保冷用組成物の無機塩の総含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましく、例えば、15〜25質量%であってもよい。
<増粘剤>
第2実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の粘度を増大させ、前記pH指示薬に該当しない成分である。第2実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の凍結時に析出しないものが好ましい。なお、本明細書において「増粘剤が保冷用組成物の凍結時に析出しない」とは、第1実施形態において、先に説明したとおりである。
第2実施形態における前記増粘剤としては、例えば、第1実施形態における増粘剤と同じものが挙げられる。
第1実施形態の場合と同様に、第2実施形態における前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシアルキルグアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン及びアルキレングリコールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム及びヒドロキシアルキルグアーガムからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
このような増粘剤を用いることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きく、かつ取り扱い性により優れたものとなる。
第2実施形態における保冷用組成物が含有する増粘剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第2実施形態における凍結前及び凍結後の保冷用組成物中で、増粘剤はその析出している量が少ないほど好ましく、増粘剤の総量のうち析出している量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(全量が析出していない)ことが特に好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物の増粘剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜6質量%であることがより好ましく、0.6〜3質量%であることが特に好ましい。
第2実施形態での保冷用組成物において、水、前記無機塩及び増粘剤の総含有量に対する、リン酸一水素塩の含有量の割合は、0.2〜5.0質量%であり、0.23〜4.9質量%であることが好ましく、0.26〜4.8質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きくなる。
<pH指示薬>
第2実施形態における前記pH指示薬(酸塩基指示薬)は、その発色の有無を反映させて保冷用組成物の色を決定するものである。保冷用組成物は、pH指示薬を含有することにより、凍結の前後において色変化する。
第2実施形態における前記pH指示薬は、pKaが4.9〜8.0であれば、特に限定されない。
なお、本実施形態におけるpH指示薬のpKaは、特に断りのない限り、溶媒が水で温度が25℃である場合の値を意味する。
第2実施形態における前記pH指示薬としては、例えば、第1実施形態におけるpH指示薬と同じものが挙げられる。
第2実施形態におけるpH指示薬は、例えば、その変色域(pH)が3.0〜9.0の範囲内にあるものが好ましく、4.0〜8.5の範囲内にあるものがより好ましく、4.5〜8.0の範囲内にあるものが特に好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物が含有するpH指示薬は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。ただし、通常はpH指示薬を1種のみ含有することが好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物のpH指示薬の含有量は、保冷用組成物の目的とする色変化が達成される限り特に限定されないが、1〜30ppmであることが好ましく、5〜20ppmであることがより好ましい。
<その他の成分>
第2実施形態における保冷用組成物は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、第1実施形態の場合と同様の水以外の溶媒;防腐剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
第2実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第2実施形態における保冷用組成物の前記その他の成分の含有量は、第1実施形態における保冷用組成物のその他の成分の含有量と同じである。
例えば、第2実施形態での保冷用組成物において、水及び前記溶媒の総含有量に対する前記溶媒の含有量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
また、第2実施形態における保冷用組成物の防腐剤の含有量は、特に限定されないが、0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.04〜0.2質量%であることがより好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物は、水及び前記溶媒以外の成分(前記無機塩、増粘剤、pH指示薬、及び前記溶媒以外のその他の成分)の総含有量に対する、前記無機塩、増粘剤及びpH指示薬の総含有量の割合が、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。前記総含有量の割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は凍結の前後においてより大きく色変化する。
第2実施形態における保冷用組成物のpHは、4.7〜8.0であることが好ましく、5.0〜7.7であることがより好ましく、5.2〜7.5であることが特に好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度で前記数値範囲のpHを示すことが好ましく、前記保冷用組成物の温度が25℃であるときに前記数値範囲のpHをを示すことがより好ましい。
なお、本実施形態において、保冷用組成物についての単なる「pH」との記載は、特に断りのない限り、保冷用組成物自体のpHを意味するものとする。
第2実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が、4.7〜8.0であることが好ましく、5.2〜7.5であることがより好ましい。
pH(α2)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記無機塩のみを含有する無機塩含有水(例えば、無機塩水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる無機塩の酸性度の指標となるものである。
pH(α2)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記無機塩含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜9.1であることが好ましく、6.5〜8.6であることがより好ましい。
pH(α3)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記増粘剤のみを含有する増粘剤含有水(例えば、増粘剤水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる増粘剤の酸性度の指標となるものである。
pH(α3)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記増粘剤含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第2実施形態における保冷用組成物は、配合成分が異なる点以外は、上述の第1実施形態における保冷用組成物と同じ方法で得られる。
本発明の第2実施形態に係る保冷具は、前記保冷用組成物を備えたものであり、保冷用組成物が異なる点以外は、上述の第1実施形態に係る保冷具と同様の構成とすることができる。
本発明の第2実施形態に係る保冷具は、前記保冷用組成物を用いる点以外は、上述の第1実施形態に係る保冷具と同様の方法で得られる。
第2実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において大きく色変化するために、凍結の有無を容易に視認可能なものである。そして、保冷用組成物のこの色変化が、保冷具の外側から視認可能となっており、これにより保冷具は、所望の温度にまで十分に冷却されているか否かが容易に視認可能となっている。
また、前記保冷用組成物は、凍結及び解凍を繰り返すなど、冷却及び昇温を繰り返しても、効果が損なわれることがないので、これを備えた保冷具は、繰り返し利用にも適したものである。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態に係る保冷具は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩を含有し、前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩の含有量の割合が、5〜100質量%であり、前記保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が7以下となるものであり、前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が7以上となるものであり、pH(α2)及びpH(α3)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示すものである。
前記保冷具は、pH指示薬の発色の有無が反映された保冷用組成物の色が、保冷用組成物の凍結の前後において大きく変化するために、冷却状態が目的とする状態(対象物を十分に冷却できる状態)にあるか容易に視認可能なものである。そして、凍結の前後における保冷用組成物の色は、前記無機塩、増粘剤等のpH指示薬以外の含有成分自体の色を主として反映したものではない。
第3実施形態における保冷用組成物は、その酸性度に影響を与える成分として、無機塩及び増粘剤を含有するが、無機塩として酸性の無機塩を選択し、その含有量を限定し、無機塩及び増粘剤の酸性度を限定して、さらにこれら無機塩及び増粘剤に対して、適した変色域を有するpH指示薬を組み合わせることで、pH指示薬の発色の変化又は有無に依存して、顕著に大きな色変化を生じるものである。
<無機塩>
第3実施形態における前記無機塩は、保冷剤の一成分として機能するものであり、主にその種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
また、前記無機塩は、前記pH指示薬に該当せず、保冷用組成物の凍結時に、結晶又はアモルファス(非晶質)として析出する成分であり、析出によって保冷用組成物の色変化に関与するものである。
第3実施形態における前記保冷用組成物は、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩を含有する。
[酸性の無機塩]
第3実施形態における前記酸性の無機塩は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択でき、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第3実施形態における酸性の無機塩で好ましいものとしては、例えば、第1実施形態におけるリン酸二水素塩以外の無機塩と同じもの、すなわち、塩化アンモニウム(NHCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸アンモニウム((NHSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、ミョウバン(AlK(SO)、アンモニウムミョウバン(Al(NH)(SO)、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO・4HO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)等が挙げられ、塩化アンモニウムが好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物が含有する前記酸性の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
[その他の無機塩]
第3実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩として、前記酸性の無機塩以外に、その他の無機塩を含有していてもよい。
前記その他の無機塩は、非水和物であってもよいし、水和物であってもよい。
第3実施形態における前記その他の無機塩は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、その水溶液が中性を示す中性の無機塩、その水溶液が塩基性を示す塩基性の無機塩等が挙げられる。
前記中性の無機塩としては、例えば、第1実施形態における前記中性の無機塩と同じものが挙げられ、塩化ナトリウム又は塩化カリウムであることが好ましい。
前記塩基性の無機塩は、リン酸塩及びリン酸一水素塩以外の無機塩であることが好ましく、例えば、第1実施形態における前記リン酸塩以外の塩基性の無機塩と同じものが挙げられ、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであることが好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の無機塩は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第3実施形態での保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩の含有量の割合は、5〜100質量%であり、例えば、20〜80質量%、40〜60質量%等とすることができるが、これらに限定されない。
このような数値範囲の中で、前記割合の下限値としては、上記の20質量%、40質量%以外にも、例えば、10質量%、30質量%、45質量%等が選択できるが、これらに限定されない。また、このような数値範囲の中で、前記割合の上限値としては、上記の80質量%、60質量%以外にも、例えば、90質量%、70質量%、55質量%等が選択できるが、これらに限定されない。
第3実施形態における凍結前、好ましくは0℃以上の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その溶解している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち溶解している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
また、第3実施形態における凍結後の保冷用組成物中で、前記無機塩は、その析出している量が多いほど好ましく、前記無機塩の総量のうち析出している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であってもよい。
第3実施形態における保冷用組成物の無機塩の総含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
<増粘剤>
第3実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の粘度を増大させ、前記pH指示薬に該当しない成分である。第3実施形態における前記増粘剤は、保冷用組成物の凍結時に析出しないものが好ましい。なお、本明細書において「増粘剤が保冷用組成物の凍結時に析出しない」とは、第1実施形態において、先に説明したとおりである。
第3実施形態における前記増粘剤としては、例えば、第1実施形態における増粘剤と同じものが挙げられる。
第1実施形態の場合と同様に、第3実施形態における前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシアルキルグアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン及びアルキレングリコールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、前記増粘剤は、アクリル系ポリマー、カルボキシアルキルセルロース、キサンタンガム、グアーガム及びヒドロキシアルキルグアーガムからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
このような増粘剤を用いることで、保冷用組成物は、凍結の前後における色変化が大きく、かつ取り扱い性により優れたものとなる。
第3実施形態における保冷用組成物が含有する増粘剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第3実施形態における凍結前及び凍結後の保冷用組成物中で、増粘剤はその析出している量が少ないほど好ましく、増粘剤の総量のうち析出している量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(全量が析出していない)ことが特に好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物の増粘剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜6質量%であることがより好ましく、0.6〜3質量%であることが特に好ましい。
<pH指示薬>
第3実施形態における前記pH指示薬(酸塩基指示薬)は、その発色の有無を反映させて保冷用組成物の色を決定するものである。保冷用組成物は、pH指示薬を含有することにより、凍結の前後において色変化する。
第3実施形態における前記pH指示薬は、特に限定されないが、pKaが4.0〜7.5であるものが好ましい。
なお、本実施形態におけるpH指示薬のpKaは、特に断りのない限り、溶媒が水で温度が25℃である場合の値を意味する。
第3実施形態における前記pH指示薬としては、例えば、第1実施形態におけるpH指示薬と同じものが挙げられる。
第3実施形態におけるpH指示薬は、例えば、その変色域(pH)が3.0〜10.5の範囲内にあるものが好ましく、3.3〜9.5の範囲内にあるものが好ましく、3.5〜9.0の範囲内にあるものが特に好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物が含有するpH指示薬は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。ただし、通常はpH指示薬を1種のみ含有することが好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物のpH指示薬の含有量は、保冷用組成物の目的とする色変化が達成される限り特に限定されないが、1〜30ppmであることが好ましく、5〜20ppmであることがより好ましい。
<その他の成分>
第3実施形態における保冷用組成物は、水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、第1実施形態の場合と同様の水以外の溶媒;防腐剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
第3実施形態における保冷用組成物が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第3実施形態における保冷用組成物の前記その他の成分の含有量は、第1実施形態における保冷用組成物のその他の成分の含有量と同じである。
例えば、第3実施形態での保冷用組成物において、水及び前記溶媒の総含有量に対する前記溶媒の含有量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
また、第3実施形態における保冷用組成物の防腐剤の含有量は、特に限定されないが、0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.04〜0.2質量%であることがより好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物は、水及び前記溶媒以外の成分(前記無機塩、増粘剤、pH指示薬、及び前記溶媒以外のその他の成分)の総含有量に対する、前記無機塩、増粘剤及びpH指示薬の総含有量の割合が、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。前記総含有量の割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は凍結の前後においてより大きく色変化する。
第3実施形態における保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が7以下となるものである。
pH(α2)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記無機塩のみを含有する無機塩含有水(例えば、無機塩水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる無機塩の酸性度の指標となるものである。
pH(α2)は3.5〜7.0であることが好ましく、4.0〜6.6であることがより好ましく、4.5〜6.3であることが特に好ましい。
pH(α2)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記無機塩含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が7以上となるものである。
pH(α3)は、前記保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記増粘剤のみを含有する増粘剤含有水(例えば、増粘剤水溶液)のpHに相当し、前記保冷用組成物で用いる増粘剤の酸性度の指標となるものである。
pH(α3)は7.0〜9.5であることが好ましく、7.0〜9.0であることがより好ましく、7.0〜8.5であることが特に好ましい。
pH(α3)は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましく、前記増粘剤含有水が25℃であるときのpHであることがより好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物は、pH(α2)及びpH(α3)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示すものである。
第3実施形態における保冷用組成物のpHは、4.1〜7.4であることが好ましく、4.4〜7.1であることがより好ましく、4.6〜6.9であることが特に好ましい。
第3実施形態における保冷用組成物は、pH指示薬が前記保冷用組成物中で溶解している温度で前記数値範囲のpHを示すことが好ましく、前記保冷用組成物の温度が25℃であるときに前記数値範囲のpHをを示すことがより好ましい。
なお、本実施形態において、保冷用組成物についての単なる「pH」との記載は、特に断りのない限り、保冷用組成物自体のpHを意味するものとする。
第3実施形態における保冷用組成物は、配合成分が異なる点以外は、上述の第1実施形態における保冷用組成物と同じ方法で得られる。
本発明の第3実施形態に係る保冷具は、前記保冷用組成物を備えたものであり、保冷用組成物が異なる点以外は、上述の第1実施形態に係る保冷具と同様の構成とすることができる。
本発明の第3実施形態に係る保冷具は、前記保冷用組成物を用いる点以外は、上述の第1実施形態に係る保冷具と同様の方法で得られる。
第3実施形態における保冷用組成物は、凍結の前後において大きく色変化するために、凍結の有無を容易に視認可能なものである。そして、保冷用組成物のこの色変化が、保冷具の外側から視認可能となっており、これにより保冷具は、所望の温度にまで十分に冷却されているか否かが容易に視認可能となっている。
また、前記保冷用組成物は、凍結及び解凍を繰り返すなど、冷却及び昇温を繰り返しても、効果が損なわれることがないので、これを備えた保冷具は、繰り返し利用にも適したものである。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。なお、以下において、pH指示薬の含有量(配合量、濃度)の単位「ppm」は、すべて質量比に基づくものである。
本実施例及び比較例で使用した原料を、以下に示す。
(増粘剤)
・HPG1(ヒドロキシプロピルグアーガム):三晶社製「メイプロHPG8111」
・CMC(カルボキシメチルセルロース):第一工業製薬社製「セロゲン」
・CVP(カルボキシビニルポリマー):東亜合成社製「レオジック270」
(pH指示薬)
・BCP:ブロモクレゾールパープル(和光純薬社製)
・PR:フェノールレッド(和光純薬社製)
・BTB:ブロモチモールブルー(和光純薬社製)
・MR:メチルレッド(和光純薬社製)
・BCG:ブロモクレゾールグリーン(和光純薬社製)
(防腐剤)
三愛石油社製「ソジウムオマジン」
[実施例1]
<保冷用組成物及び保冷具(第1実施形態)の製造>
室温(20〜25℃)下において、水(79.16質量部)にBCPを添加して溶解させ、次いで、さらに塩化アンモニウム(9.72質量部)、塩化カリウム(9.72質量部)、リン酸三ナトリウム十二水和物(0.15質量部)及びリン酸二水素アンモニウム(0.10質量部)を添加して溶解させ、次いで、HPG1(1.10質量部)を添加して、室温下のままで1時間撹拌して溶解させ、得られた液状物が十分に増粘していることを確認した後、防腐剤(0.05質量部)を添加して、室温下のままで30分間撹拌することにより保冷用組成物を得た。このとき、BCPの配合量は、得られた保冷用組成物での含有量が8ppmとなるように調節した。各配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表2に示す。なお、表2中、配合成分の欄の「塩基性の塩」とは、リン酸塩及びリン酸一水素塩以外の塩基性の塩を意味する。また、リン酸三ナトリウム十二水和物は、結晶水(12HO)を省略して記載している。これらは、以降の表においても同様である。
また、pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)、溶媒が水で温度が25℃である場合のpH指示薬のpKa、保冷用組成物のpH等の物性を表7に示す。pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)及び前記pHは、いずれも測定対象物の温度を25℃として測定した。得られた保冷用組成物における、無機塩の総含有量に対する、酸性の無機塩及びリン酸塩の合計含有量の割合(以下、この値を符号「(X1)」で示すことがある)も表7に示している。
次いで、得られた保冷用組成物を高密度ポリエチレン製の容器に封入して、第1実施形態の保冷具を得た。
<保冷用組成物の評価>
(色変化)
得られた保冷用組成物(保冷具)を−25℃まで冷却した。この間、保冷用組成物は、−25℃よりも高い温度で凍結すると共に、凍結の前後で色変化した。そして、この凍結前後での保冷用組成物の色変化を、下記基準にしたがって目視で評価した。結果を表9に示す。表9には、用いたpH指示薬の変色域及び色変化もあわせて示す。
なお、表9において、評価結果の欄に記載されている「色変化」とは、凍結前後での保冷用組成物の色変化を示し、例えば、「緑→黄」とは、保冷用組成物の色が凍結前は緑色で凍結後は黄色であったことを示す。
○:凍結前後での色変化が大きく、冷却状態の視認が極めて容易である。
△:凍結前後での色変化が判別可能であり、冷却状態の視認が可能である。
×:凍結前後での色変化が不明瞭であり、冷却状態の視認が困難又は不可能である。
また、表9において、pH指示薬の変色域の欄に記載されている「低pH→高pH色変化」とは、pH指示薬が含有されている液体のpHが、特定の値からこれよりも高い値へ変化した際に、pH指示薬が変色域内で示す色変化を示し、例えば、「黄→紫」とは、前記液体のpHが高くなる過程で、pH指示薬が前記液体を黄色から紫色に色変化させることを示す。
<保冷用組成物及び保冷具(第1実施形態)の製造、保冷用組成物の評価>
[実施例2〜13]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表2及び3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、第1実施形態の保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表7に、評価結果を表9に、それぞれ示す。
[実施例14]
<保冷用組成物及び保冷具(第2実施形態)の製造>
室温(20〜25℃)下において、水(78.90質量部)にBCPを添加して溶解させ、次いで、さらに塩化アンモニウム(9.70質量部)、塩化カリウム(9.70質量部)及びリン酸水素二アンモニウム(0.50質量部)を添加して溶解させ、次いで、CMC(1.10質量部)を添加して、室温下のままで1時間撹拌して溶解させ、得られた液状物が十分に増粘していることを確認した後、防腐剤(0.05質量部)を添加して、室温下のままで30分間撹拌することにより保冷用組成物を得た。このとき、BCPの配合量は、得られた保冷用組成物での含有量が8ppmとなるように調節した。各配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表3に示す。
また、pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)、溶媒が水で温度が25℃である場合のpH指示薬のpKa、保冷用組成物のpH等の物性を表7に示す。pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)及び前記pHは、いずれも測定対象物の温度を25℃として測定した。得られた保冷用組成物における、無機塩の総含有量に対する、酸性の無機塩及びリン酸一水素塩の合計含有量の割合(以下、この値を符号「(X2)」で示すことがある)と、水、無機塩及び増粘剤の総含有量に対する、リン酸一水素塩の含有量の割合(以下、この値を符号「(X3)」で示すことがある)も表7に示している。
次いで、得られた保冷用組成物を高密度ポリエチレン製の容器に封入して、第2実施形態の保冷具を得た。
<保冷用組成物の評価>
得られた保冷用組成物を、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
<保冷用組成物及び保冷具(第2実施形態)の製造、保冷用組成物の評価>
[実施例15〜33]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を、表3〜5に示すとおりとした点以外は、実施例14と同じ方法で、第2実施形態の保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表7〜8に、評価結果を表9に、それぞれ示す。
[実施例34]
<保冷用組成物及び保冷具(第3実施形態)の製造>
室温(20〜25℃)下において、水(79.35質量部)にMRを添加して溶解させ、次いで、さらに塩化アンモニウム(9.75質量部)及び塩化カリウム(9.75質量部)添加して溶解させ、次いで、CMC(1.10質量部)を添加して、室温下のままで1時間撹拌して溶解させ、得られた液状物が十分に増粘していることを確認した後、防腐剤(0.05質量部)を添加して、室温下のままで30分間撹拌することにより保冷用組成物を得た。このとき、MRの配合量は、得られた保冷用組成物での含有量が8ppmとなるように調節した。各配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表5に示す。
また、pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)、溶媒が水で温度が25℃である場合のpH指示薬のpKa、保冷用組成物のpH等の物性を表8に示す。pH(α1)、pH(α2)、pH(α3)及び前記pHは、いずれも測定対象物の温度を25℃として測定した。得られた保冷用組成物における、無機塩の総含有量に対する、酸性の無機塩の含有量の割合(以下、この値を符号「(X4)」で示すことがある)も表8に示している。
次いで、得られた保冷用組成物を高密度ポリエチレン製の容器に封入して、第3実施形態の保冷具を得た。
<保冷用組成物の評価>
得られた保冷用組成物を、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
<保冷用組成物及び保冷具(第3実施形態)の製造、保冷用組成物の評価>
[実施例35〜37]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を、表5に示すとおりとした点以外は、実施例34と同じ方法で、第3実施形態の保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表8に、評価結果を表9に、それぞれ示す。
<保冷用組成物及び保冷具の製造、保冷用組成物の評価>
[比較例1〜9]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を、表5及び6に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表8に、評価結果を表9に、それぞれ示す。
Figure 0006765897
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上記結果から明らかなように、本発明の第1実施形態に係る保冷具(実施例1〜13)、第2実施形態に係る保冷具(実施例14〜33)、第3実施形態に係る保冷具(実施例34〜37)においては、いずれも保冷用組成物が、凍結時の無機塩の析出に伴い、pH指示薬の発色の変化を反映して、凍結の前後において色が明瞭に変化し、冷却状態を容易に視認できた。
第1実施形態に係る保冷具のうち、特に実施例1〜3、8〜11、13の保冷具においては、保冷用組成物の色変化の完了に要する時間が短く、特に好ましい性状を示した。
第2実施形態に係る保冷具のうち、特に実施例22〜27の保冷具においては、保冷用組成物の色変化の完了に要する時間が短く、特に好ましい性状を示した。これは、保冷用組成物がリン酸二水素塩及び中性の無機塩を含有している場合に、このような好ましい性状を示す傾向にあることを示していた。
これに対して、比較例1〜9の保冷具においては、保冷用組成物が上記の実施例のものとは異なっており、凍結の前後において色の変化が不明瞭であり、冷却状態の視認が困難であるか又は不可能であった。
<保冷用組成物及び保冷具(第1実施形態)の製造、保冷用組成物の評価>
[実施例38〜40]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表10に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、第1実施形態の保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表11に、評価結果を表12に、それぞれ示す。
<保冷用組成物及び保冷具(第2実施形態)の製造、保冷用組成物の評価>
[実施例41〜46]
保冷用組成物の配合成分及びその保冷用組成物での含有量を表10に示すとおりとした点以外は、実施例14と同じ方法で、第2実施形態の保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。各物性を表11に、評価結果を表12に、それぞれ示す。
Figure 0006765897
Figure 0006765897
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上記のように、本発明の第1実施形態に係る保冷具(実施例38〜40)、第2実施形態に係る保冷具(実施例41〜46)においては、いずれも保冷用組成物が、凍結時の無機塩の析出に伴い、pH指示薬の発色の変化を反映して、凍結の前後において色が明瞭に変化し、冷却状態を容易に視認できた。
本発明は、各種生鮮物用の保冷具として利用可能である。

Claims (7)

  1. 水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、
    前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸塩と、を含有し、
    前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、
    前記保冷用組成物が、前記酸性の無機塩として、リン酸二水素塩とリン酸二水素塩以外の無機塩とを含有し、
    前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0であり、
    前記保冷用組成物は、リン酸塩、リン酸二水素塩及び水以外の含有成分をすべて除去した場合のpH(α1)が、前記pKaに対して、下記式(i)で表される関係を満たすものである、保冷具。
    pH指示薬のpKa≦pH(α1)≦pH指示薬のpKa+1.8 ・・・・(i)
  2. 前記保冷用組成物のpHが4.6〜8.8である、請求項1に記載の保冷具。
  3. 前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜8.5となるものである、請求項1又は2に記載の保冷具。
  4. 水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、
    前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩と、リン酸一水素塩と、を含有し、
    前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩及びリン酸一水素塩の合計含有量の割合が、5〜100質量%であり、
    前記保冷用組成物において、水、前記無機塩及び増粘剤の総含有量に対する、リン酸一水素塩の含有量の割合が、0.2〜5.0質量%であり、
    前記pH指示薬のpKaが4.9〜8.0である、保冷具。
  5. 前記保冷用組成物のpHが4.7〜8.0である、請求項4に記載の保冷具。
  6. 前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が、6.0〜9.1となるものである、請求項4又は5に記載の保冷具。
  7. 水、無機塩、増粘剤及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を備えた保冷具であって、
    前記保冷用組成物が、前記無機塩として、その水溶液が酸性を示す酸性の無機塩を含有し、
    前記保冷用組成物において、前記無機塩の総含有量に対する、前記酸性の無機塩の含有量の割合が、5〜100質量%であり、
    前記保冷用組成物は、前記無機塩及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α2)が7以下となるものであり、
    前記保冷用組成物は、前記増粘剤及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α3)が7以上となるものであり、
    pH(α2)及びpH(α3)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示す、保冷具。
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