JP6764777B2 - 空冷モジュール - Google Patents
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Description
また、CAB法では、雰囲気ガスの対流加熱により優れた昇温効率が得られるが、フッ化物系フラックスがアルミニウム合金中のMgと反応し不活性化することで接合が阻害されるため、高い熱伝導性や強度を有するMg含有アルミニウム合金が使用できない。このことから、Mgを添加した高強度な構造部材を使用し、低コストで製造可能な空冷ヒートシンクモジュールが望まれている。
また、低融点、かつ、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い金属元素をベア材合金に添加することで、ベア材表面の緻密なAl酸化皮膜が変質してろう付時に分解され易くなることで接合状態がさらに改善することを明らかにした。低融点元素を添加したベア材表面では、ろう付昇温過程でベア材表面に低融点元素が濃縮して緻密な酸化皮膜の成長を抑制するため、Mgを含有する活性な溶融ろう材と接触した際に酸化皮膜が分解され易くなったと考えられる。本材を空冷モジュール構成部材の板フィンに適用することでろう付性がさらに向上する。
また、Mgを添加したベア材表面においても低融点元素が表面に濃縮することでMgO皮膜の成長が抑制されるため、より安定した接合状態が得られる。酸化物の標準生成自由エネルギーが低い低融点元素をベア材に添加すると、表面濃縮した低融点元素が酸化物層を形成して接合を阻害するため、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い低融点元素を選択することが重要となる。
発熱側の伝熱を行うベースプレートと、前記ベースプレートに接合される第1のブレージングシートと、前記第1のブレージングシートに接合される板フィンと、前記第1のブレージングシートと前記板フィンを挟んで反対側に配置されて前記板フィンに接続される第2のブレージングシートと、を接合部材として有し、
前記ベースプレートが10〜40mmの厚さをもつJIS A1000系またはJIS A3000系またはA6000系のアルミニウム合金からなり、
前記板フィンが1〜10mmの厚さをもつJIS A1000系またはJIS A3000系またはJIS A6000系のアルミニウム合金からなり、
前記第1および第2のブレージングシートが、0.5〜3mmの厚さを有し、JIS A1000系、3000系または6000系芯材の片面または両面に0.7〜2.5質量%のMg、3.0〜13質量%のSiを含有するAl−Si−Mg系ろう材が貼り合わされたものであり、
かつ、ろう付前における前記各接合部材の各接合面の表面粗さRzが20μm以下であることを特徴とする。
(ベースプレート)
厚さ:10〜40mm
本発明では、産業用途や鉄道向け空冷モジュール製品のろう付状態最適化を念頭にしているが、これらの製品は長期使用に耐える構造強度や耐食性や放熱性能などが必要となるため、相応の材料肉厚で製作される。10mm未満では十分な耐久性が確保できず、40mm超では放熱性能が低下するため好ましくない。
JIS A1000系、3000系、6000系のアルミニウム合金
Al−Si系合金ろう材によるろう付では、製品温度を600℃付近まで加熱するため、これより固相線温度が低い合金部材を用いるとろう付後の構造寸法精度の確保が難しくなる。本発明では、この問題を生じない何れのアルミニウム合金も使用できるが、熱伝導性や強度に優れるJIS A1000系、A3000系、A6000系合金を用いることが好適である。
厚さ:0.05〜3mm
ブレージングシートは各種部材を接合するろう材の供給源となるが、ろう材が少ないとフィレットが小さくなり十分な接合強度が確保できないことやクリアランスを埋めきれずに接合不良となることが問題となる。また、ろう材が多過ぎると余剰な溶融ろうが接合部以外に流れて製品の外形不良となる。ブレージングシート製造の貼り合せ工程では、クラッド率のばらつきが小さく良好な貼り合せ状態を確保するため、実用的に5〜20%程度のクラッド率が用いられているが、空冷モジュールの製造では、接合部材間のクリアランス量などに応じてブレージングシートのろう材合金組成や板厚、および、クラッド率を最適化することで適切なろう材量を供給する。ブレージングシート板厚が0.05mm未満だと実用的なクラッド率範囲で十分なろう材量が供給できず、3mmより大きいとろう材過多になり易いためこの範囲で製造することが望ましい。さらに、ブレージングシートの厚みが大き過ぎると熱伝達経路が長くなり放熱性能が低下するため、3mm以下にすることが望ましい。
Al−Si系合金ろう材によるろう付では、製品温度を600℃付近まで加熱するため、これより固相線温度が低い合金部材を用いるとろう付後の構造寸法精度の確保が難しくなる。本発明では、この問題を生じない何れのアルミニウム合金も使用できるが、熱伝導性や強度に優れるJIS A1000系、A3000系、A6000系合金を用いることが好適である。
アルミニウムの接合では、金属結合を阻害する酸化皮膜の破壊が必要となるが、Al−Si−Mg系ろう材を用いた常圧下のろう付では、ろう付昇温過程でろう材中のMgが材料表面のAl2O3酸化皮膜と反応して分解することで接合が得られる。ろう材は、接合部の形態に応じて芯材の片面または両面に貼り合わせて使用する。
Mgは、接合部表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解することで活性な金属表面を露出させる作用を有する。また、芯材や被接合部材に拡散したMgは、Siと化合物(Mg2Si)を形成することで材料強度を高める。Mgの含有量が少ないと酸化皮膜の還元作用が不足し、過剰であると強度が高くブレージングシートの圧延性が低下するため、0.7〜2.5%とすることが望ましい。なお、同様の理由で下限を0.8%、上限を2.0%とするのが一層望ましい。
Siは、Alに含有することにより合金の融点を低下させ、ろう付中に母材よりも低い温度で溶融して所定の継手を形成する基本的な元素である。これら作用を得るため、Siの含有量は、3%以上が必要であり、3%未満では生成する液相量が不足し十分な流動性が得られない。一方、13.0%を超えると初晶Siが急激に増加して加工性が悪化するとともに、ろう付時に接合部のろう侵食が著しく促進される。これらのため、Si含有量は、3.0〜13.0%とする。なお、同様の理由により、Siの含有量の下限を5.0%、上限を11.0%とするのが一層望ましい。
Biは溶融ろう材の表面張力を低下させることで濡れ性を向上させるため、所望により含有させることができる。ただし、0.01%未満の含有では十分な効果が得られず、0.5%を超えた含有では、固溶できないBiが熱間圧延や焼鈍時(271℃以上)に材料表面に溶け出し、材料の表面品質低下などを招くため好ましくない。なお、同様の理由で下限を0.05%、上限を0.2%とするのが一層望ましい。
厚さ:1〜10mm
フィンはベースプレート裏面のデバイスから発せられた熱を効率的に外気へ逃がすために用いられる。空冷モジュールの放熱設計や構造強度などから、板状のままや、ディンプル加工フィン、スリット加工フィンなど各種フィン形状を用いることができる。接合に際し板厚は特に限定されるものではないが、1mm未満では製品に求められる構造強度が不足し、10mmより大きいとフィンとしての体をなさず放熱作用が低下するため望ましくない。
JIS A1000系、3000系、6000系合金
Al−Si系合金ろう材によるろう付では、製品温度を600℃付近まで加熱するため、これより固相線温度が低い合金部材を用いるとろう付後の構造寸法精度の確保が難しくなる。本発明では、この問題を生じない何れのアルミニウム合金も使用できるが、熱伝導性や強度に優れるJIS A1000系、A3000系、A6000系合金を用いることが好適である。
接合面の最大粗さを小さくすることで、接合面におけるろうの充填を確実にし、フィン接合率を向上させる。上記基準のRzが20μmを超えると、接合部におけるクリアランスが大きすぎるため、接合面間のろう充填が良好になされずフィン接合率が低下する。
なお、RzはJIS B 0633−2001に定義される基準長さを用いて測定されるJIS B 0601−2013で定義される最大高さ粗さである。
ベースプレート接合面の面積は本発明としては特に限定されないが、半導体素子のヒートシンクとして使用する場合、1600〜1440000mm2が好適なものとして示される。1600mm2未満では、十分な放熱効果が得られず、1440000mm2を超えると製品サイズが大きくハンドリング中のたわみ等により最大高さ粗さが変動し易くなるため好ましくない。
融点350℃以下、かつ、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG0)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素を添加することで、表面の酸化皮膜が変質してろう付時に分解され易くなるため接合状態がさらに改善する。低融点元素を添加した材料表面では、ろう付昇温過程で表面に低融点元素が濃縮して緻密な酸化皮膜の成長を抑制し、さらに、MgO皮膜の成長が抑制されるため、Mgを含有する活性な溶融ろう材と接触した際に酸化皮膜が分解され易くなる。
上記元素の融点が350°を超えると、ろう付昇温過程で表面に濃縮が進み難く酸化皮膜の変質作用が低下するため、接合状態の改善が得られなくなる。
また、酸化物の標準生成自由エネルギーが−150(kg cal/gr mol O2)以下であると、表面に濃縮した元素が酸化し酸化皮膜を形成することで接合を阻害し易くなる。
上記を満たす元素としては、In、Sn、Bi、Se、K、NaおよびPbなどが挙げられる。
上記で示した低融点元素は一つまたは二つ以上添加することで効果が得られるが、その添加量は各々0.01〜0.5質量%とする。過剰に含有すると、濃縮効果が飽和し、少量では効果が不十分となる。このため、各元素では、下限を0.01%、上限を0.5%とするのが望ましい。さらに、各元素で、下限を0.05%、上限を0.2%とするのが一層望ましい。
ろう材用アルミニウム合金として、質量%で、Si:3.0〜13.0%、Mg:0.7〜2.5%、所望により、Bi:0.01〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成に調製する。
また、芯材用アルミニウム合金として、JIS A1000系、3000系または6000系のアルミニウム合金の組成に調製する。
JIS A1000系としては、1050、1100、1200合金などが挙げられる。
JIS A3000系としては、3003、3004合金などが挙げられる。
JIS A6000系としては、6101、6060、6N01、6063合金などが挙げられる。
各金属元素の含有量は特に限定されないが、実用的な範囲では0.01〜0.5質量%とする。
通常、ベースプレートには圧延材を用いるが、圧延ロールの表面租度など設備仕様により一般的に圧延ままのRzは最大20〜50μm程度あると考えられる。これを上記条件を満たすRzとする方法は特に限定されるものではないが、レベラーロールによる矯正や切削加工、あるいは機械研磨などで20μm以下とすることができる。
第1のブレージングシート11のろう材11C側には、板フィン13が立設するように設置する。板フィン13は、板材を複数並列したものであり、図示奥行き方向に面が伸張している。したがって、板フィン13の端面とろう材11Cとが接触してそれぞれ接合面となっている。
板フィン13の対向側には、第2のブレージングシート12を設置する。第2のブレージングシートは、芯材12Aと、板フィン13側の芯材12Aの片面に位置するろう材12Bとを有している。上記組み合わせによって、板フィン13は、第1のブレージングシート11と第2のブレージングシート12と挟まれて設置されている。
ただし、本発明としては、空冷モジュールの使用用途が上記に限定されるものではない。
準備した部材を図1の構成でフィン間隔5mmに組付け、酸素濃度20ppmの窒素ガス雰囲気中で600℃まで加熱するろう付処理を行った。ろう付後の空冷モジュールにつき、超音波映像装置と断面観察で接合面を解析し、以下の判定によりろう付状態を評価したものを表4に示す。
ろう付後のフィンとブレージングシートの接合長さ
フィン接合率(%)=―――――――――――――――――――――――×100
組付け時のフィンとブレージングシートの接触長さ
〇:フィン接合率90%以上
△:フィン接合率90%未満80%以上
×:フィン接合率80%未満
10 ベースプレート
11 第1のブレージングシート
11A 芯材
11B ろう材
11C ろう材
12 第2のブレージングシート
12A 芯材
12B ろう材
13 板フィン
Claims (6)
- 常圧下または10−1Pa以上の低真空下の非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付される空冷モジュールであって、
発熱側の伝熱を行うベースプレートと、前記ベースプレートに接合される第1のブレージングシートと、前記第1のブレージングシートに接合される板フィンと、前記第1のブレージングシートと前記板フィンを挟んで反対側に配置されて前記板フィンに接続される第2のブレージングシートと、を接合部材として有し、
前記ベースプレートが10〜40mmの厚さをもつJIS A1000系またはJIS A3000系またはJIS A6000系のアルミニウム合金からなり、
前記板フィンが1〜10mmの厚さをもつJIS A1000系またはJIS A3000系またはJIS A6000系のアルミニウム合金からなり、
前記第1および第2のブレージングシートが、0.5〜3mmの厚さを有し、JIS A1000系、3000系または6000系の芯材の片面または両面に0.7〜2.5質量%のMg、3.0〜13質量%のSiを含有するAl−Si−Mg系ろう材が貼り合わされたものであり、
かつ、ろう付前における前記各接合部材の各接合面の表面粗さRzが20μm以下であることを特徴とする空冷モジュール。 - ベースプレート接合面の面積が1600〜1440000mm2であることを特徴とする請求項1記載の空冷モジュール。
- 前記ベースプレートおよび前記板フィンの少なくとも一方のアルミニウム合金中に、融点350℃以下、かつ、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG0)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の空冷モジュール。
- 前記ベースプレートおよび前記板フィンの少なくとも一方のアルミニウム合金中に、In、Sn、Bi、Se、K、NaおよびPbの内から選ばれる一つ、または、二つ以上の元素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空冷モジュール。
- 前記各元素が0.01〜0.5質量%の範囲内で含まれることを特徴とする請求項4に記載の空冷モジュール。
- 前記Al−Si−Mg系ろう材に、さらに、0.01〜0.5質量%のBiが含まれていることを特徴とする請求項1〜5に記載の空冷モジュール。
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