本発明のトリガー式泡噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、噴出器本体の前方側に配置されたノズル部材と、噴出器本体に設けられたトリガー部を後方へ引き操作することにより、容器体の内部の液体をノズル部材の噴出孔から前方に向けて射出させるトリガー機構と、径方向に貫く外気導入孔が設けられた筒状に形成され、噴出孔の前方に設けられて噴出孔を囲繞する筒状の造泡部と、を備え、噴出孔から前方に向けて射出された液体を造泡部によって泡状にして噴出させるトリガー式泡噴出器であって、液体を水とした場合において、トリガー部をフルストロークの1/3のストロークで30spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布と、トリガー部をフルストロークで90spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布との差が、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の何れの粒度分布においても40マイクロメートル未満であることを特徴とする、トリガー式泡噴出器である。
本発明のトリガー式泡噴出器は、例えば、図1〜図4に記載の構成を有するものとすることができる。以下、図1〜図4を参照しつつ、本発明の一実施の形態であるトリガー式泡噴出器10について例示説明する。
この実施形態に係るトリガー式泡噴出器10は、液体が収容された図示しない容器体に装着される噴出器本体11と、この噴出器本体11の前端に設けられ、液体を前方に向けて噴射する噴出孔26aが形成されたノズル部材20と、を備えている。
噴出器本体11には、上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部12と、この縦供給筒部12から前方に向けて延設され、内側が縦供給筒部12の内部に連通した射出筒部13と、前後方向に揺動可能に垂設されたトリガー部15を有するトリガー機構Tと、縦供給筒部12、射出筒部13および後述するシリンダ14aを上方、後方および左右方向から覆うカバー体Cと、が備えられている。
ここで、本実施形態では、縦供給筒部12の中心軸線を軸線としたとき、この軸線に沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿って容器体側を下側、その反対側を上側という。前記軸線に直交する方向であって、射出筒部13に沿う方向を前後方向といい、上下方向および前後方向の双方向に直交する方向を左右方向という。
縦供給筒部12は、大径部12aと、大径部12aから上方に延びる小径部12bと、を備える多段状の筒体とされている。大径部12aには、容器体の口部に装着される装着筒部16が設けられている。小径部12bには、パイプ17が嵌合されている。パイプ17の下端開口部は、装着筒部16が口部に取り付けられたときに容器体内の底部に位置する。小径部12bの上端開口部には、吸い上げ弁18が設けられている。吸い上げ弁18は、後述する往復ポンプ14のシリンダ14a内が加圧されたときに閉弁してパイプ17内と射出筒部13内との連通を遮断させ、減圧されたときに開弁してパイプ17内と射出筒部13内とを連通させる。
トリガー部15は、射出筒部13から下方に向けて延設され、前方付勢状態で後方に引き操作可能(揺動自在)に配設されている。トリガー機構Tは、トリガー部15の後方への引き操作(揺動)によって、液体を縦供給筒部12内から射出筒部13内に導入させるとともに、射出筒部13内から噴出孔26a側に向けて射出させる。トリガー機構Tは、トリガー部15の前後動に伴って内部が加圧および減圧されるシリンダ14aを有する往復ポンプ14と、トリガー部15を前方に付勢する弾性部材51と、を備えている。
シリンダ14aは、前後方向に延設され前方に向けて開口している。シリンダ14aは、縦供給筒部12とは別体に形成されていて、縦供給筒部12の前面に組み付けられている。シリンダ14a内には、その前端開口部からプランジャ14bが前後摺動可能に嵌合されている。プランジャ14bの前端にはトリガー部15が連結され、トリガー部15の前後動に伴ってプランジャ14bがシリンダ14aに対して前後動させられることにより、シリンダ14aの内圧が加圧および減圧される。
弾性部材51は、射出筒部13を左右方向に挟み込むように一対配置されている。各弾性部材51の上端部は、射出筒部13に固定され、各弾性部材51の下端部は、プランジャ14bに固定されている。
ノズル部材20は、噴出器本体11の前方側に配置されている。図2に示されるように、ノズル部材20は、射出筒部13に連結された連結筒部21を備えたノズル本体22と、連結筒部21の内側に前方付勢された状態で前後動可能に設けられた弁体23と、弁体23を前方付勢するコイルスプリング32と、噴出孔26aより前方に位置し、かつこの噴出孔26aを囲繞する筒状の造泡部33と、造泡部33を開放自在に閉塞する蓋体34と、を備えている。
ここで、図示の例では、射出筒部13において前側部分の外周面に、ノズル嵌合筒部19が水密に嵌合されており、連結筒部21はこのノズル嵌合筒部19を介して射出筒部13に連結されている。
ノズル嵌合筒部19は、前後方向と直交する面に沿って延びる基板19aと、この基板19aの後面に後方に向けて突設され射出筒部13に嵌合された第1嵌合筒19bと、基板19aの前面に前方に向けて突設され外周面に連結筒部21が嵌合された第2嵌合筒19cと、基板19aの前面において第2嵌合筒19cの内側に前方に向けて突設されたシリンダ筒19dと、基板19aの前面においてシリンダ筒19dの内側に前方に向けて突設されたガイド突起19eと、を備えている。
これらのうち、第2嵌合筒19c、シリンダ筒19dおよびガイド突起19eはそれぞれ同軸に配置されている。さらに、基板19aのうち、射出筒部13の前端開口部と対向する位置に液体流出孔19fが形成され、この液体流出孔19fを通して射出筒部13内とシリンダ筒19d内とが連通している。また、基板19aには、第2嵌合筒19cとシリンダ筒19dとの間の隙間と、このトリガー式泡噴出器10の外部と、を連通する外気出入孔19gが形成されている。
ノズル本体22は、連結筒部21の内側に配置されるとともに弁体23の前端部23eが着座させられる環状の弁座板24を有する弁座部25と、弁座板24から後方に突出して連結筒部21の径方向内方に配置された摺動筒部30と、弁座部25の前側に配置されたノズルチップ28と、ノズルチップ28をその径方向外方から囲繞するキャップ装着筒部31と、キャップ装着筒部31をその径方向の外側から覆う被覆壁部29と、を備えている。なお、弁座板24、ノズルチップ28、摺動筒部30、キャップ装着筒部31および被覆壁部29は同軸に配置されている。
弁座部25は、弁座板24から後方に向けて突設された弁座摺動筒35をさらに備えている。弁座摺動筒35は、摺動筒部30と同軸に配置されるとともに、摺動筒部30よりも小径に形成されている。弁座摺動筒35には、その後端に向けて開口する連通孔35aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。
摺動筒部30は、第2嵌合筒19c内に嵌合されている。これにより、第2嵌合筒19cが、連結筒部21の内周面と摺動筒部30の外周面との間に固定状態で嵌合されている。
キャップ装着筒部31には、前端に噴出孔26aが形成され後端が開放されたノズルキャップ26が嵌合されている。ノズルキャップ26は、キャップ装着筒部31にその径方向の内側から嵌合されている。
ノズルチップ28の外周部には、前後方向における全長にわたって延在するノズル連通溝27が形成されている。ノズル連通溝27は、噴出孔26aおよび弁座板24の内側に連通する。
図4に示されるように、被覆壁部29は、弁座板24から前方に向けて突出する筒状に形成されている。被覆壁部29の上下両端部には、後方に向けて窪む切り欠き部29a、29bが設けられている。被覆壁部29の上端部に設けられた上切り欠き部29aは、被覆壁部29の下端部に設けられた下切り欠き部29bよりも左右方向に大きい。
図2に示されるように、弁体23は、第2嵌合筒19cの内側に、ガイド突起19eおよび弁座板24と同軸に配置されている。弁体23の前端部23eは、弁座板24に対して弁座摺動筒35内を前後方向に摺動可能に設けられている。
弁体23は、前端が閉塞され後端が開放された筒状の弁本体23aと、この弁本体23aの外周面において長さ方向の中間部分に突設されたフランジ部23bと、このフランジ部23bの前面に前方に向けて突設されたシール筒部23cと、を備えている。
弁本体23aの前端部(弁体23の前端部)23eは、前端から後方に向かうに従い漸次拡径している。弁本体23aの後端部(弁体23の後端部)は、シリンダ筒19dの内周面に水密状態で前後方向に摺動可能に嵌合されている。弁本体23aのうち、フランジ部23bに前側から連なる部分には、この弁本体23aの周方向に間隔をあけて複数の貫通孔23dが形成されている。
シール筒部23cは、前方に向かうに従い漸次拡径している。シール筒部23cは、弁座摺動筒35の外周面と摺動筒部30の内周面との間に配置され、摺動筒部30の内周面に水密状態で前後方向に摺動可能に嵌合されている。シール筒部23c内は、弁体23が弁座板24に着座したとき、および弁座板24から離間したときの別を問わず常に、前記連通孔35aおよび前記貫通孔23dを通して弁本体23a内と連通する。
コイルスプリング32は、弁本体23aの内側に配置されている。コイルスプリング32の内側には、ガイド突起19eが挿入されている。コイルスプリング32は、弁体23を前方に付勢して弁体23の前端部23eを弁座板24に着座させる。
造泡部33は、弁座板24よりも前方に位置している。造泡部33は、筒状に形成され、キャップ装着筒部31に径方向の外側から嵌合されている。造泡部33の外径は、被覆壁部29の内径よりも小さく、造泡部33の外周面と被覆壁部29の内周面との間には、環状空間Sが設けられている。環状空間Sは、被覆壁部29の前端開口部および切り欠き部29a、29bを通して外部に連通可能である。
造泡部33の内周面には、造泡部33の径方向の内側に突出する係止突起36が設けられている。係止突起36は、造泡部33の全周にわたって間隔をあけて複数配置されている。係止突起36は、造泡部33の周方向に同等の間隔をあけて4つ配置されている。係止突起36は、造泡部33の内周面において左右方向に対向する各部分に一対設けられ、さらに、造泡部33の内周面において上下方向に対向する各部分にも一対設けられている。係止突起36は、キャップ装着筒部31の前端開口縁に、前側から係止している。
造泡部33には、当該造泡部33をその径方向に貫く外気導入孔37が形成されている。外気導入孔37は、係止突起36の後端縁よりも前側に配置され、キャップ装着筒部31よりも前側に位置している。外気導入孔37は、造泡部33の全周にわたって間隔をあけて複数配置されている。外気導入孔37は、造泡部33の周方向に沿って係止突起36と交互に配置されている。外気導入孔37は、造泡部33の径方向の内側から外側に向けて、造泡部33の周方向に徐々に大きくなっている。
蓋体34は、ノズル本体22に、前方に向けて回動自在に連結されている。蓋体34は、造泡部33の前端開口部を閉塞し、本実施形態では、被覆壁部29の前端開口部も閉塞する。蓋体34は、被覆壁部29内に嵌合する本体部38と、本体部38から上方に突出し上切り欠き部29a内に配置された連結片39と、本体部38から下方に突出し下切り欠き部29b内に配置された操作片40と、を備えている。
連結片39は、被覆壁部29に、左右方向に延びる回動軸L回りに回動自在に連結されている。連結片39における左右方向の両端部は、被覆壁部29において上切り欠き部29aを間に挟んで左右方向に対向し合う両周端部に各別に連結されている。
操作片40は、被覆壁部29から下方に向けて突出している。操作片40は、下切り欠き部29bと左右方向に同等の大きさに形成され、下切り欠き部29b内に着脱自在に嵌合されている。
蓋体34には、後方に向けて突出するボス41が設けられている。ボス41は、蓋体34が造泡部33を閉塞した状態で、ノズルキャップ26(ノズル本体22)に当接して噴出孔26aを閉塞する。ボス41は、造泡部33と同軸に配置された柱状に形成されている。ボス41は、補強リブ42によって補強されている。補強リブ42は、造泡部33の周方向に間隔をあけて複数設けられている。補強リブ42は、蓋体34から後方に向けて突出し、ボス41の外周面に連結されている。
以上の構成において、液体を噴出するときには、まず、蓋体34を前方に向けて回動させて造泡部33を開放する。その後、トリガー部15を引き操作することにより後退移動(後方へ揺動)させ、弾性部材51を弾性変形させながらプランジャ14bをシリンダ14aに対して後退移動させると、シリンダ14a内が加圧されてシリンダ14a内の内容物が縦供給筒部12内を通して上昇しようとする。これにより、吸い上げ弁18が閉弁されパイプ17内と射出筒部13内との連通が遮断されるとともに、射出筒部13内が加圧され液体流出孔19fを通して弁体23における弁本体23aおよびシール筒部23cの各内部(連結筒部21の内側)に射出され、弁本体23aおよびシール筒部23cの各内部が所定値まで加圧される。
ここで、シール筒部23cの内径は弁本体23aの内径よりも大きくなっているので、弁本体23aおよびシール筒部23cの各内圧が所定値を超えると、これら23c、23aの受圧面積の差によって弁体23がコイルスプリング32の前方付勢力に抗して後退移動させられ、弁体23の前端部23eが弁座板24から離間する。これにより、射出筒部13の内部と噴出孔26aとが、液体流出孔19f、弁本体23aおよびシール筒部23cの各内部(連結筒部21の内側)、弁座板24の内側、ノズルチップ28のノズル連通溝27を通して連通し、液体が噴出孔26aから造泡部33内を通して噴出される。
このとき造泡部33内には、外気導入孔37を通して外気(空気)も導入され、液体が、造泡部33内で外気と混合されて発泡して泡状となり、造泡部33の前端開口部から噴出される。造泡部33が前後方向に短い場合、泡状の液体を広範囲に分散して噴出することが可能であり、造泡部33が前後方向に長い場合、泡状の液体を狭い範囲に集中して噴出することができる。なお、噴出孔26aから造泡部33内に噴出される液体は、霧状になっており、例えば、この霧状の液体が造泡部33内で造泡部33の内周面に衝突し、液体の流れが乱れることで外気と撹拌されて泡状になる。
その後、例えば、弾性部材51の弾性復元力に基づいてトリガー部15を前進移動(前方へ揺動)させ、プランジャ14bをシリンダ14aに対して前進移動させると、シリンダ14a内が減圧されて負圧化する。これにより、吸い上げ弁18が開弁されパイプ17内と射出筒部13内とが連通され、容器体内の液体がパイプ17を通してシリンダ14a内に流入する。このとき、弁本体23aおよびシール筒部23cの各内圧(連結筒部21の内側の内圧)が下がると、コイルスプリング32の前方付勢力により弁体23が前進移動させられる。すると、この弁体23の前端部23eが弁座板24に着座して、射出筒部13の内部と噴出孔26aとの連通が遮断される。
以上説明したように、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10によれば、液体を噴出孔26aから造泡部33内を通して噴出することで、液体を泡状にして噴出させることができる。
また、造泡部33の形態を変更することで、前述のように、泡状の液体が噴出される範囲を調整することができる。したがって、造泡部33をノズル本体22と別体に形成し、造泡部33の形態を限定して変更することで、ノズル本体22の形態や、ノズル本体22が連結される噴出器本体11の形態を変更することなく、泡状の液体が噴出される範囲を多様に調整することができる。
ここで、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10によれば、液体が泡状になるときには、液体が造泡部33内に射出されながら、外気が外気導入孔37から造泡部33内に導入されることで、液体が外気と混合されて発泡する。このとき、造泡部33内に噴出される液体は、連結筒部21の内側の内圧が所定値を超えたときに噴出孔26aから射出されており、噴出孔26aから高速に噴出される。したがって、液体が造泡部33内に射出されるときに、造泡部33の内圧を低減させて造泡部33内に外気を外気導入孔37から効果的に導入し、液体をきめ細かな泡状にすることができる。これにより、例えば、造泡部33を長く形成し、泡状の液体を狭い範囲に集中して噴出させる場合などには、液体が液状のまま対象物に噴出される場合に比べて、対象物に対する液体の付着力を高めることが可能になり、対象物に衝突した液体が周囲に飛散するのを抑制することができる。
本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10では、トリガー部15が引き操作されたときに、ノズル部材20(連結筒部21)の内部において液体の内圧を所定値にまで高め、当該所定値を超えたときに液体を噴出孔26aから射出させるようにしているので、所定値にまで圧力が高められた液体が噴出孔26aから射出されるまでの経路が短く、当該経路が液体の圧力に与える影響が小さくなる。これにより、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10では、トリガー部15を引き操作する速度や引き量(トリガーを引くストローク)に拘わらず、液体を噴出孔26aから所望の粒度で射出させることができる。
すなわち、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10は、容器体の内部に収容する液体を水とした場合において、トリガー部15を、そのフルストローク(前方側ストローク端から後方側のストローク端までの距離)の1/3のストロークで30spm(ストローク毎分)の速度で引き動作させたときに、噴出孔26aから射出される液体の粒度分布と、トリガー部15をフルストロークで90spmの速度で作動させたときに噴出孔26aから射出される液体の粒度分布との差が、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の何れの粒度分布においても40マイクロメートル未満となるように構成されている。
ここで、Dv(50)は、ノズル部材20から霧状に噴射された液体の粒子のうち50%の粒子が当該Dv(50)の数値以下の粒度を有することを示し、Dv(90)は、ノズル部材20から霧状に噴射された液体の粒子のうち90%の粒子が当該Dv(90)の数値以下の粒度を有することを示す。また、D[4,3]は、ノズル部材20から霧状に噴射された液体の粒子の粒度をそれぞれ4乗した値を、当該粒度をそれぞれ3乗した値で除した値である。
このように、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10によれば、トリガー部15を引く速度や引き量に拘わらず、ノズル部材20の噴出孔26aから所望の粒度で液体を霧状に噴出させることができるので、当該霧状の液体を造泡部33によって所望の泡質に泡状化させることができる。したがって、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10によれば、トリガー部15を引く速度や引き量に拘わらず、容器体の内部に収容された液体を良質な泡としてノズル部材20から外部に向けて噴出させることができる。
本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10では、上記した差が、Dv(50)の粒度分布において20マイクロメートル未満であるのが好ましく、Dv(90)の粒度分布において37マイクロメートル未満であるのが好ましく、D[4,3]の粒度分布において20マイクロメートル未満であるのが好ましい。これにより、トリガー部15を引き操作する速度や引き量に拘わらず、液体を確実に泡状化させてノズル部材20から噴出させることができる。
また、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10によれば、トリガー部15を引く速度や引き量に拘わらず、容器体内に収容された液体を良質な泡としてノズル部材20から外部に向けて噴出させることができるので、トリガー部15を引き操作する引き速度や引き量を調整して泡の飛距離を変えても、その飛距離に拘わらず所望の泡質で泡を噴出させることができる。例えば、ノズル部材から比較的近い距離にある対象物に向けて泡を噴出させるためにトリガー部15を比較的遅い速度かつ少ない引き量で引き操作した場合であっても、当該対象物に向けて所望の泡質の泡を噴出させることができる。反対に、ノズル部材から比較的遠い距離にある対象物に向けて泡を噴出させるためにトリガー部15を比較的早い速度かつフルストロークの引き量で引き操作した場合であっても、当該対象物に向けて所望の泡質の泡を噴出させることができる。
トリガー部15の引き操作に必要な仕事量の観点から見ると、本実施形態に係るトリガー式泡噴出器10では、当該仕事量の変化つまりトリガー部を操作する使用者の手にかかる負荷の変化に対し、ノズル部材20の噴出孔26aから射出される霧状の液体の粒度の変化を抑制することができる。したがって、トリガー部15を操作する使用者の手にかかる負荷の変化に拘わらず、ノズル部材20から所望の泡質の泡を噴出させることができる。
実施例のトリガー式泡噴出器と比較例のトリガー式泡噴出器とを用意し、それぞれのトリガー式泡噴出器について、液体を水とした場合におけるノズル部材の噴出孔から射出される霧状の液体の粒度分布、及び、液体を洗剤とした場合におけるノズル部材から噴射される泡の飛距離を測定する実験を行った。また、当該実験結果から、液体を水とした場合におけるノズル部材の噴出孔から射出される霧状の液体の粒度分布とトリガー部の操作に必要な仕事量とを算出し、その関係を評価した。
実施例のトリガー式泡噴出器は、本実施の形態に記載のトリガー式泡噴出器と同一の構成を有するものとした。比較例のトリガー式泡噴出器は、液体の蓄圧がノズル部材ではなく噴出器本体の側で行われる一般的な構成のトリガー式泡噴出器とした。実施例のトリガー部のフルストロークは17.8mmであり、比較例のトリガー部のフルストロークは19.5mmである。
ノズル部材の噴出孔から射出される霧状の液体の粒度分布の測定は、容器体に収容される液体つまりノズル部材の噴射孔から噴射する液体を水とし、トリガー部を、フルストロークの1/3を1ストロークとして、30spm(1分間に30ストローク)となる速度で作動させたとき、及び、トリガー部を、フルストロークを1ストロークとして、90spm(1分間に90ストローク)となる速度で作動させたときのそれぞれについて、噴出孔から噴出される霧状の液体のDv(50)、Dv(90)及びD[4,3]について粒度分布を測定した。
ここで、実施例においては、トリガー部のフルストロークが17.8mmであるので、30spmはフルストロークである17.8mmを2秒で移動する速度であり、90spmはフルストロークである17.8mmを2/3秒で移動する速度である。また、比較例においては、トリガー部のフルストロークが19.5mmであるので、30spmはフルストロークである19.5mmを2秒で移動する速度であり、90spmはフルストロークである19.5mmを2/3秒で移動する速度である。
上記の粒度分布の測定は、粒度分布測定装置を使用して行った。粒度分布測定装置による粒度の測定位置は、ノズル部材の噴出孔から前方に140mmの位置とした。なお、当該測定は、液体の粒度の測定を容易にするために、ノズル部材から液体を泡状化させる造泡部を取り外した状態で行い、また、実施例のN数は2、比較例のN数は1とした。
トリガー部を操作する際の仕事量は、トリガー部をフルストロークで引き操作したときに5mlの液体がノズル部材の噴出孔から射出されると仮定し、トリガー部の引き操作に必要な引き圧とストロークとを積算して算出した。ここで、トリガー部の引き操作に必要な引き圧は、トリガー部の回転軸から40mm離れた位置を水平方向に押したときの圧力とした。
液体の粒度分布、及び、泡の飛距離に関する測定結果は、表1、表2に示す通りである。また、液体の粒度分布とトリガー部の仕事量との関係は表3及び図5に示す通りである。
表1に示す粒度分布の測定結果から、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を30spmで1/3ストロークの引き速度及び引き量で作動させた場合、及び、トリガー部を90spmでフルストロークの引き速度及び引き量で作動させた場合の何れの場合においても、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の全てについて、ノズル部材の噴出孔から射出される液体の粒度が、比較例のトリガー式泡噴出器に比べて小さくなることが確認できる。したがって、このような特性を有する実施例のトリガー式泡噴出器によれば、その液体として洗剤等の泡状化を目的とした液体を用いた場合に、造泡部33で霧状の液体をより効果的に泡状化させて、ノズル部材から、比較例の場合よりも良質な泡を噴出させることが可能であることが解る。
また、表1に示すように、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部をフルストロークの1/3のストロークで30spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布と、トリガー部をフルストロークで90spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布との差が、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の何れの粒度分布においても40マイクロメートル未満であることが解る。さらに、当該差が、Dv(50)の粒度分布においては20マイクロメートル未満であり、Dv(90)の粒度分布においては37マイクロメートル未満であり、D[4,3]の粒度分布においては20マイクロメートル未満である。これらの測定結果から、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を引く速度や引き量に拘わらず、液体を所望の霧状で噴出孔から射出させて、ノズル部材から噴出される泡の泡質のばらつきを抑制することが可能であることが解る。
これに対し、比較例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部をフルストロークの1/3のストロークで30spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布と、トリガー部をフルストロークで90spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布との差が、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の何れの粒度分布においても80マイクロメートル以上の大きな値となっている。したがって、比較例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を引く速度や引き量が変化すると、液体を所望の霧状で噴出孔から射出させることができない場合が生じ、その結果、ノズル部材から噴出される泡の泡質にばらつきが生じることになる。
また、表2に示すように、実施例のトリガー式泡噴出器では、比較例のトリガー式泡噴出器に比べて、トリガー部を30spmの速度で作動させたときにおける泡の飛距離がより大きな値となることが解る。この測定結果から、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を比較的遅い引き速度で操作した場合であっても、ノズル部材から所望の泡質で泡を噴射させることができていることが解る。これにより、泡質にばらつきを生じさせることなく、様々な飛距離で泡を噴出させることが可能であることが解る。
さらに、表3及び図5に示すように、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を操作する仕事量の変化に対し、ノズル部材の噴出孔から射出される霧状の液体の粒度の変化が小さいことが解る。このことから、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を操作する際に、その使用者の手に加わる負荷が相違しても、ノズル部材の噴射孔から噴射される液体の粒度のばらつきが抑制されることが解る。すなわち、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部が大きな力でストローク端にまで操作された場合(仕事量が大きい場合)や、小さい力でストロークの途中まで操作された場合(仕事量が小さい場合)など、使用者による様々な仕事量でのトリガー部の操作に対して、常に略一定の粒度で液体を霧状に噴出させることができることが解る。これにより、実施例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を操作する使用者の手にかかる負荷の変化に拘わらず、ノズル部材から所望の泡質の泡を噴出させることができることが解る。
これに対し、比較例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を操作する仕事量の変化に対する液体の粒度の変化が、実施例に対して大きくなっている。すなわち、比較例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部が大きな力でストローク端にまで操作された場合(仕事量が大きい場合)には小さな粒度で液体を射出させて所望の泡質の泡を噴出させることができるが、小さい力でストロークの途中まで操作された場合(仕事量が小さい場合)など仕事量が小さい場合では、射出される液体の粒度が大きくなることが解る。これにより、比較例のトリガー式泡噴出器では、トリガー部を操作する使用者の手にかかる負荷の変化に合わせて、ノズル部材から噴出される泡の泡質が大きなばらつきを生じることになることが解る。
本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明のトリガー式泡噴出器は、図1〜図4に示した構成のものに限らず、液体を水とした場合において、トリガー部をフルストロークの1/3のストロークで30spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布と、トリガー部をフルストロークで90spmの速度で作動させたときに噴出孔から射出される液体の粒度分布との差が、Dv(50)、Dv(90)及びD[4,3]の何れの粒度分布においても40マイクロメートル未満となる設定とされているものであれば、種々の構成のものを採用することができる。