以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る配光制御システムにおいて用いられる車両用前照灯10の内部構造を示す概略断面図である。図1に示す車両用前照灯10は、車両の車幅方向の左右両端にそれぞれ配置される配光可変式前照灯であり、その構造は実質的に左右同等である。
車両用前照灯10は、車両前方方向に開口部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口部を覆う透明カバー14とで形成される灯室16を有する。灯室16には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット30が収納されている。灯具ユニット30の一部には、当該灯具ユニット30の揺動中心となるピボット機構18aを有するランプブラケット18が形成されている。ランプブラケット18はランプボディ12の内壁面に立設されたボディブラケット20とネジ等の締結部材によって接続されている。したがって、灯具ユニット30は、灯室16内の所定位置に固定されると共に、ピボット機構18aを中心として、例えば前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能となる。
また、灯具ユニット30の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)を構成するためのスイブルアクチュエータ22の回転軸22aが固定されている。スイブルアクチュエータ22は、車両側から提供される操舵量のデータや、ナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、前方車と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット30をピボット機構18aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット30の照射範囲が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視界を向上させる。スイブルアクチュエータ22は、例えばステッピングモータで構成することができる。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。
スイブルアクチュエータ22は、ユニットブラケット24に固定されている。ユニットブラケット24には、ランプボディ12の外部に配置されたレベリングアクチュエータ26が接続されている。レベリングアクチュエータ26は、例えばロッド26aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド26aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット30はピボット機構18aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド26aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット30はピボット機構18aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット30が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット30が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このようにレベリング調整をすることで、車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、車両用前照灯10による前方照射の到達距離を最適な距離に調整することができる。
なお、このレベリング調整は、車両走行中の車両姿勢に応じて実行することもできる。例えば、車両が走行中に加速する場合は後傾姿勢となり、逆に減速する場合は前傾姿勢となる。したがって、車両用前照灯10の照射方向も車両の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、車両姿勢に基づき灯具ユニット30のレベリング調整をリアルタイムで実行することで、走行中でも前方照射の到達距離を最適に調整できる。これを「オートレベリング」と称することもある。
灯室16の内壁面、例えば、灯具ユニット30の下方位置には、灯具ユニット30の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する灯具側制御部28が配置されている。この灯具側制御部28は、スイブルアクチュエータ22、レベリングアクチュエータ26等の制御も実行する。
灯具ユニット30は、エーミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ26のロッド26aとユニットブラケット24の接続部分に、エーミング調整時の揺動中心となるエーミングピボット機構を配置する。また、ボディブラケット20とランプブラケット18の接続部分に、車両前後方向に進退する一対のエーミング調整ネジを車幅方向に間隔をあけて配置する。例えば2本のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット30はエーミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸が下方に調整される。同様に2本のエーミング調整ネジを後方に引き戻せば、灯具ユニット30はエーミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸が上方に調整される。また、車幅方向左側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット30はエーミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸が調整される。また、車幅方向右側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット30はエーミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸が調整される。このエーミング調整は、車両出荷時や車検時、車両用前照灯10の交換時に行われる。そして、車両用前照灯10が設計上定められた規定の姿勢に調整され、この姿勢を基準に本実施形態の配光パターンの形成制御が行われる。
図2は、灯具ユニット30を説明するための斜視図である。図1および図2に示すように、灯具ユニット30は、光源31と、光源搭載部32と、リフレクタ33と、回転シェード34を含むシェード機構35と、投影レンズ36と、投影レンズ36を指示するレンズホルダ37とを備える。なお、図2では投影レンズ36の図示を簡略化している。
光源31は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施の形態では、光源31をハロゲンランプで構成する例を示す。光源31は、光源搭載部32に搭載されている。リフレクタ33は、光源31から放射される光を反射する。そして、光源31からの光およびリフレクタ33で反射した光は、その一部が回転シェード34を経て投影レンズ36へと導かれる。
図3は、シェード機構35を説明するための斜視図である。図3は、図2に示す灯具ユニット30から投影レンズ36、レンズホルダ37、リフレクタ33などを取り外した状態を示す。図3に示すように、シェード機構35は、光源からの光の一部を遮光可能に形成された回転シェード34と、回転シェード34を支持するためのシェード支持部38と、回転軸41と、回転シェード34を回転駆動するアクチュエータとしてのシェードモータ39と、シェードモータ39の回転を回転シェード34に伝達するためのギア機構40と、回転シェード34の回転位置を検出するためのシェード位置センサ(図示せず)とを備える。シェードモータ39は、例えばステッピングモータであってよい。シェードモータ39の回転は、灯具側制御部28により制御される。
図4は、回転シェード34を説明するための斜視図である。回転シェード34は、回転軸41を中心に回転可能な略半円筒形状部材で構成される。回転シェード34は、回転位置に応じて光源31およびリフレクタ33からの光の遮り方が変わるように稜線形状が設計されている。
具体的には、回転シェード34は、図4において回転軸41を中心として反時計回り順に、ロービーム配光パターンを形成するための稜線形状34a(以下、「ロービーム形成部34a」とも呼ぶ)と、第1パッシング配光パターンを形成するための稜線形状34b(以下、「第1パッシング形成部34b」とも呼ぶ)と、ハイビーム配光パターンを形成するための稜線形状34c(以下、「ハイビーム形成部34c」とも呼ぶ)と、第2パッシング配光パターンを形成するための稜線形状34d(以下、「第2パッシング形成部34d」とも呼ぶ)と、第1片側ハイビーム配光パターンを形成するための稜線形状34e(以下、「第1片側ハイビーム形成部34e」とも呼ぶ)と、第2片側ハイビーム配光パターンを形成するための稜線形状(以下、「第2片側ハイビーム形成部」とも呼ぶ)とが形成されている。
回転シェード34は、シェードモータ39を用いて回転駆動することにより、投影レンズ36の後方焦点を含む後方焦点面FSの位置に上述の6種類の配光パターン形成部のいずれか1つを移動させることができる。そして、後方焦点面FS上に位置する回転シェード34の稜線形状に応じて光源31およびリフレクタ33からの光の遮り方が変わる。
回転シェード34を通過した光は、投影レンズ36に入射する。投影レンズ36は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面FS上に形成される光源像を反転像として車両用前照灯前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ36は、その光軸Ax上に光源31が位置するように配置される。
次に、図5および図6を用いて上述の6種類の配光パターンと、各配光パターンを形成するための回転シェード34の稜線形状とについて説明する。
図5の上段は、ロービーム配光パターンと、該ロービーム配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。ロービーム配光パターンLoは、その上端のV−V線(鉛直線)よりも右側に、H−H線(水平線)と平行に延びる対向車線側カットオフラインを、またV−V線よりも左側に、対向車線側カットオフラインよりも高い位置でH−H線と平行に延びる自車線側カットオフラインを、そして対向車線側カットオフラインと自車線側カットオフラインとの間に、両者をつなぐ斜めカットオフラインを有する。斜めカットオフラインは、対向車線側カットオフラインとV−V線との交点から左斜め上方へ45°の傾斜角で延びている。
回転シェード34のロービーム形成部34aは、対向車線側カットオフラインを形成するための対向車線側カットオフライン形成部51と、自車線側カットオフラインを形成するための自車線側カットオフライン形成部52と、斜めカットオフラインを形成するための斜めカットオフライン形成部53とを有する。対向車線側カットオフライン形成部51および自車線側カットオフライン形成部52は、回転シェード34の軸方向に延びる略平面形状の部位であり、斜めカットオフライン形成部53は、対向車線側カットオフライン形成部51と自車線側カットオフライン形成部52の間に位置する、傾斜面を有する突起状部位である。
図5の中段は、第1パッシング配光パターンP1と、該第1パッシング配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。本実施形態では、ロービーム配光パターン形成時の姿勢から、回転軸41を中心として回転シェード34を一方の回転方向(図5では時計回り)に60°回転することにより、第1パッシング配光パターン形成時の姿勢となる。
第1パッシング配光パターンP1は、自車両の周囲に存在する他車両や歩行者に対して注意を促すための配光パターンである。本実施形態において、第1パッシング配光パターンP1は、ハイビーム配光パターンHiと同じようにH−H線の上方および下方の照射領域を含むが、H−H線より上方の照射領域はハイビーム配光パターンHiより小さい。第1パッシング形成部34bは、このような第1パッシング配光パターンP1に対応した稜線形状を有するように形成される。
図5の下段は、ハイビーム配光パターンHiと、該ハイビーム配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。本実施形態では、ハイビーム配光パターン形成時の姿勢から、回転軸41を中心として回転シェード34を時計回りに30°回転することにより、ハイビーム配光パターン形成時の姿勢となる。
ハイビーム配光パターンHiは、前方の広範囲および遠方を照明する配光パターンであり、例えば、前方車両や歩行者へのグレアを配慮する必要のない場合に形成される。ハイビーム形成部34cは略平面状に形成されており、光源31およびリフレクタ33からの光を遮光せずに投影レンズ36に通すべく該平面はハイビーム配光パターン形成時において光軸Axから所定距離以上離間している。
図6の上段は、第2パッシング配光パターンP2と、該第2パッシング配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。本実施形態では、ハイビーム配光パターン形成時の姿勢から、回転軸41を中心として回転シェード34を時計回りに30°回転することにより、第2パッシング配光パターン形成時の姿勢となる。
第2パッシング配光パターンP2もまた、自車両の周囲に存在する他車両や歩行者に対して注意を促すための配光パターンである。第2パッシング配光パターンP2は、H−H線の上方および下方の照射領域を含むが、H−H線より上方の照射領域はハイビーム配光パターンHiより小さい。第2パッシング配光パターンP2は、図5に示す第1パッシング配光パターンP1と同じ形状であってもよいし、異なっていてもよい。第2パッシング形成部34dは、このような第2パッシング配光パターンP2に対応した稜線形状を有するように形成される。
図6の中段は、第1片側ハイビーム配光パターンHi1と、該第1片側ハイビーム配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。本実施形態では、第2パッシング配光パターン形成時の姿勢から、回転軸41を中心として回転シェード34を時計回りに60°回転することにより、第1片側ハイビーム配光パターン形成時の姿勢となる。
この第1片側ハイビーム配光パターンHi1は、左側通行時に対向車線側(V−V線より右側)をロービームとし、自車線側(V−V線より左側)のみハイビームで照射する配光パターンである。第1片側ハイビーム配光パターンHi1は、V−V線近傍に斜めカットオフラインを有する。第1片側ハイビーム配光パターンHi1は、ハイビーム配光パターンHiの一部に遮光領域を設けた変形ハイビーム配光パターンということができる。第1片側ハイビーム配光パターンHi1は、自車線に先行車や歩行者が存在せず、対向車線に対向車や歩行者が存在する場合に利用することが好ましく、対向車や歩行者にグレアを与えず、自車線側のみのハイビーム照射により運転者の視認性を高めることができる。
第1片側ハイビーム形成部34eは、対向車線側のロービームのカットオフラインを形成するための対向車線側カットオフライン形成部61と、自車線側のハイビームを形成するための自車線側ハイビーム形成部62と、斜めカットオフラインを形成するための斜めカットオフライン形成部63とを有する。
図6の下段は、第2片側ハイビーム配光パターンHi2と、該第2片側ハイビーム配光パターン形成時の回転シェード34の姿勢(断面図と斜視図)を示す。本実施形態では、第1片側ハイビーム配光パターン形成時の姿勢から、回転軸41を中心として回転シェード34を時計回りに90°回転することにより、第2片側ハイビーム配光パターン形成時の姿勢となる。
この第2片側ハイビーム配光パターンHi2は、左側通行時に自車線および対向車線をロービームとし、自車線の歩道側のみハイビームで照射する変形ハイビーム配光パターンである。第2片側ハイビーム配光パターンHi2は、自車線と歩道との境界付近に斜めカットオフラインを有する。第2片側ハイビーム配光パターンHi2もまた、ハイビーム配光パターンHiの一部に遮光領域を設けた変形ハイビーム配光パターンということができる。第2片側ハイビーム配光パターンHi2は、自車線および対向車線に車両が存在する場合に、自車線側の歩道の視認性を高める目的で使用される。
第2片側ハイビーム形成部34fは、自車線および対向車線のロービームのカットオフラインを形成するためのカットオフライン形成部64と、自車線の歩道側のハイビームを形成するための歩道用ハイビーム形成部65と、斜めカットオフラインを形成するための斜めカットオフライン形成部66とを有する。
なお、上記説明では第1片側ハイビーム形成部34eと第2片側ハイビーム形成部34fとを別々に説明したが、実際には第1片側ハイビーム形成部34eの斜めカットオフライン形成部63と第2片側ハイビーム形成部34fの斜めカットオフライン形成部66は連続的に形成されており、回転シェード34の回転に応じてハイビーム配光パターンにおける遮光領域の大きさを可変できる。言い換えると、回転シェード34は、回転シェード34の回転に応じて斜めカットオフライン形成部の位置が軸方向に移動するよう形成されており、その結果、片側ハイビーム配光パターンにおける斜めカットオフラインの位置を、V−V線近傍から自車線と歩道の境界部まで連続的に移動することができる。
図7は、本発明の実施形態に係る車両用前照灯の配光制御システム100を説明するための機能ブロック図である。配光制御システム100は、上述した車両用前照灯10と、車両に搭載される車両側制御部102と、ライトスイッチ104と、カメラ106と、車速センサ108と、舵角センサ110と、ディマースイッチ112とを備える。車両用前照灯10は、光源31と、光源31を点灯するための点灯回路70と、シェードモータ39と、スイブルアクチュエータ22と、レベリングアクチュエータ26と、灯具側制御部28と、シェード位置センサ29とを備える。
カメラ106、車速センサ108、舵角センサ110、ディマースイッチ112およびライトスイッチ104は、CAN(Controller Area Network)通信を使用して車両側制御部102と情報を伝送する。カメラ106は、信号線SL1を介して車両側制御部102と接続されている。車速センサ108は、信号線SL2を介して車両側制御部102と接続されている。舵角センサ110は、信号線SL3を介して車両側制御部102と接続されている。ディマースイッチ112は、信号線SL4を介して車両側制御部102と接続されている。ライトスイッチ104は、信号線SL5を介して車両側制御部102と接続されている。車両側制御部102は、常時、カメラ106、車速センサ108、舵角センサ110、ディマースイッチ112およびライトスイッチ104の信号を監視している。
また、車両側制御部102は電源115の電圧を監視している。また、車両側制御部102は、信号線L1を介して灯具側制御部28と接続されている。車両側制御部102と灯具側制御部28は、信号線L1を介して、LIN(Local Interconnect. Network)通信を使用して情報を伝送する。なお、車両側制御部102からは、左右一対の車両用前照灯10へ信号線L1が接続されている。
配光制御システム100において、ライトスイッチ104がオンされると、リレー105がオン状態となってバッテリ114から車両用前照灯10の点灯回路70に電圧VLが与えられ、点灯回路70により光源31が点灯する。また、ライトスイッチ104がオンされると、リレー105を介してバッテリ114から灯具側制御部28にも電圧VLが与えられ、灯具側制御部28がリセットされる。点灯回路70は、信号線SL6を介して車両側制御部102と接続されている。信号線SL6は、光源31、点灯回路70の正常性を示す信号を車両側制御部102に送る。車両側制御部102は、該信号に基づいて、光源31、点灯回路70の異常を認識する。
また、車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると、イグニッション(IG)電源115から車両側制御部102に電圧VGが与えられ、車両側制御部102がリセットされる。また、イグニッションスイッチがオンされると、IG電源115は灯具側制御部28にも電圧VGを与える。従って、灯具側制御部28は、バッテリ114とIG電源115の両方から電力の供給を受けることができる。なお、IG電源115もバッテリ114から電力の供給を受けている。
車両側制御部102は、カメラ106、車速センサ108、舵角センサ110等から自車の走行状態を示す状態信号を受ける。灯具側制御部28は、車両側制御部102と通信可能に接続され、車両側制御部102からの配光指示信号を受けてシェードモータ39、スイブルアクチュエータ22およびレベリングアクチュエータ26を制御する。
配光制御システム100は、運転者によるディマースイッチ112の操作に応じて手動でロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンとを切り替え可能である。以下、このような手動で配光パターンを制御するモードを「手動モード」と呼ぶ。例えば運転者がロービーム配光パターンを選択した場合、車両側制御部102は灯具側制御部28にロービーム配光パターンを形成するよう指示を出す。指示を受けた灯具側制御部28は、ロービーム配光パターンが形成されるようシェードモータ39を制御する。
また、配光制御システム100は、ディマースイッチ112の操作によらず、車両の走行状態を各種センサで検出して、車両周囲状況に最適な配光パターンを形成可能である。以下、このように配光パターンを制御するモードを「自動モード」と称する。自動モードには、例えば、車両周囲の状況を各種センサで検出して、車両周囲状況に最適な配光パターンを形成する自動配光制御モード、いわゆるADBモードが含まれる。ADBモードは、例えば、ライトスイッチ104からADBモードの実行指示がなされた場合に実行される。
配光制御システム100は、手動モードおよび自動モードのいずれか一方の照射モードで動作するよう構成されている。
例えば、自車の前方に前走車が検出された場合、車両側制御部102は、前走車へのグレアを防止するべきであると判断して、例えばロービーム配光パターンが形成されるよう灯具側制御部28に指示を出す。また、前走車が存在しないことが検出できた場合、車両側制御部102は、運転者の視界を向上させるべきであると判断して、例えばハイビーム配光パターンが形成されるよう灯具側制御部28に指示を出す。
このように前走車を検出するために、車両側制御部102には例えばステレオカメラなどのカメラ106が接続されている。カメラ106で撮像された画像データは、車両側制御部102に送信され、車両側制御部102が信号処理をして画像解析を行い、撮像範囲内における前走車を検知する。そして、車両側制御部102は、取得した前走車の情報に基づいて最適な一つの配光パターンを選択し、その選択した配光パターンを形成するように灯具側制御部28に指示を出す。なお、前走車を検出する手段は適宜変更可能であり、カメラ106に代えて、例えばミリ波レーダや赤外線レーダなど他の検出手段を用いてもよい。また、それらを組み合わせてもよい。
また、車両側制御部102は、車両に通常搭載されている車速センサ108、舵角センサ110などからの情報も取得可能であり、車両の走行状態や走行姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸の方向を変化させて配光パターンを変化させることができる。例えば車両側制御部102は、舵角センサ110からの情報に基づき車両が旋回していると判定した場合、旋回方向の視界を向上させるような配光パターンの形成を灯具側制御部28に指示する。この指示を受けた灯具側制御部28は、スイブルアクチュエータ22を制御して灯具ユニット30の光軸をこれから進行する方向に向ける。また、車両側制御部102は、車速センサ108からの情報に基づき車両姿勢が変化したと判定した場合、前方照射の到達距離が最適となる配光パターンの形成を灯具側制御部28に指示する。この指示を受けた灯具側制御部28は、車両姿勢の前傾、後傾に応じてレベリングアクチュエータ26を制御して、灯具ユニット30の光軸を車両上下方向について調整する。
上記の説明から理解されるように、配光制御システム100は、前方車両に非照射領域を適応させるよう配光を動的に制御する車両用灯具システムを構成する。配光制御システム100は、複数の配光パターンを形成可能な車両用灯具として機能する車両用前照灯10を備える。
ここで、複数の配光パターンは、第1照射領域を有する第1配光パターンと、第1照射領域より狭い第2照射領域を有する第2配光パターンと、を少なくとも含む。例えば、第1配光パターンがハイビーム配光パターンHiであるとすると、第2配光パターンは、ハイビーム配光パターンHiより狭い照射領域を有する任意の配光パターンであり、例えば、ロービーム配光パターンLo、第1片側ハイビーム配光パターンHi1、または、第2片側ハイビーム配光パターンHi2である。
また、複数の配光パターンは、各々が水平線上方に異なる非照射領域を有する一群の配光パターンを含む。例えば、この一群の配光パターンは、第1片側ハイビーム配光パターンHi1、第2片側ハイビーム配光パターンHi2、および、これら2つの片側ハイビーム配光パターンの斜めカットオフラインの中間に斜めカットオフラインを有する任意の片側ハイビーム配光パターンを含む。これらの片側ハイビーム配光パターンは、上述のように、第1片側ハイビーム形成部34eと第2片側ハイビーム形成部34fとの間で回転シェード34を任意の回転角度に姿勢を定めることにより、形成される。
また、配光制御システム100は、選択部116、設定部118および判別部120を備える。図示される実施形態においては、選択部116、設定部118および判別部120は、車両側制御部102に備えられている。しかし、他の実施形態においては、選択部116、設定部118および判別部120のうち少なくとも1つが灯具側制御部28に備えられていてもよい。
なお、車両側制御部102や灯具側制御部28等は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図7では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
選択部116は、車両用灯具が形成すべき配光パターンを複数の配光パターンから選択するよう構成されている。設定部118は、現配光パターンおよび新配光パターンに応じて、現配光パターンから新配光パターンへの切替所要時間を定める少なくとも1つの切替時間パラメータを設定するよう構成されている。
ここで、現配光パターンとは、選択部116による前回の選択の結果として車両用灯具が現在形成する配光パターンをいう。新配光パターンとは、選択部116が新たに選択する配光パターンをいう。
切替時間パラメータは、配光パターンの切替所要時間を延長する遅延時間を表す切替遅延時間パラメータ、および、現配光パターンから新配光パターンへの照射面積変化速度を表す切替速度パラメータの少なくとも一方を含む。
切替遅延時間パラメータを設定することにより、切替所要時間は所定の初期値から延長される。延長される時間がゼロであってもよく、その場合、切替所要時間は延長されず、初期値に従って配光パターンが切り替わる。なお初期値がゼロであってもよい。
切替速度パラメータは、回転シェード34の回転速度を表す回転速度パラメータであってもよい。回転速度パラメータは、シェードモータ39がステッピングモータである場合、ステッピングモータのパルスレート(単位時間あたりのパルス数)を表してもよい。切替速度パラメータは、現配光パターンおよび新配光パターンがそれぞれ片側ハイビーム配光パターンである場合、斜めカットオフラインの水平方向の移動速度を表してもよい。
設定部118は、照射領域拡大切替の場合には相対的に長い切替所要時間(例えば、第1の切替所要時間)を定めるよう切替時間パラメータを設定し、照射領域縮小切替の場合には相対的に短い切替所要時間(例えば、第1の切替所要時間より短い第2の切替所要時間)を定めるよう切替時間パラメータを設定してもよい。
ここで、照射領域拡大切替とは、新配光パターンが現配光パターンに比べて広い照射領域を有する場合の配光パターン切替をいう。言い換えれば、照射領域拡大切替とは、新配光パターンが現配光パターンに比べて狭い非照射領域を有する場合、例えば、ある片側ハイビーム配光パターンから他の片側ハイビーム配光パターンへと非照射領域が縮小される場合をいう。逆に、照射領域縮小切替とは、新配光パターンが現配光パターンに比べて狭い照射領域を有する場合の配光パターン切替をいう。言い換えれば、照射領域縮小切替とは、新配光パターンが現配光パターンに比べて広い非照射領域を有する場合、例えば、ある片側ハイビーム配光パターンから他の片側ハイビーム配光パターンへと非照射領域が拡大される場合をいう。
設定部118は、照射領域拡大切替の場合には第1遅延時間に相当する第1の値に切替遅延時間パラメータを設定し、照射領域縮小切替の場合には第1遅延時間より小さい第2遅延時間に相当する第2の値に切替遅延時間パラメータを設定してもよい。あるいは、設定部118は、照射領域縮小切替の場合に、遅延時間がないことに相当する第2の値に切替遅延時間パラメータを設定してもよい。
また、設定部118は、照射領域拡大切替の場合には第1照射面積変化速度に相当する第1の値に切替速度パラメータを設定し、照射領域縮小切替の場合には第1照射面積変化速度より大きい第2照射面積変化速度に相当する第2の値に切替速度パラメータを設定してもよい。より具体的には、設定部118は、照射領域拡大切替の場合には第1回転速度に相当する第1の値に回転速度パラメータを設定し、照射領域縮小切替の場合には第1回転速度より大きい第2回転速度に相当する第2の値に回転速度パラメータを設定してもよい。
また、判別部120は、カメラ106で撮像された画像データ、または車両側制御部102における画像データの解析結果に基づいて、前方車両が対向車であるか又は先行車であるかを表す前方車両種別データを生成する。判別部120は、例えば、前方車両を表す特徴点(例えば、前方車両のランプ)の色から、それが対向車又は先行車であるかを判別することができる。詳しくは後述するが、設定部118は、前方車両種別データを参照し、前方車両が対向車である場合と、前方車両が先行車である場合とで、切替時間パラメータを異なる値に設定してもよい。
設定部118は、前方車両が先行車である場合には相対的に長い切替所要時間を定めるよう切替時間パラメータを設定し、前方車両が対向車である場合には相対的に短い切替所要時間を定めるよう切替時間パラメータを設定してもよい。例えば、設定部118は、前方車両が先行車である場合には第1照射面積変化速度に相当する第1の値に切替速度パラメータを設定し、前方車両が対向車である場合には第1照射面積変化速度より速い第2照射面積変化速度に相当する第2の値に切替速度パラメータを設定してもよい。より具体的には、設定部118は、前方車両が先行車である場合には第1回転速度に相当する第1の値に回転速度パラメータを設定し、前方車両が対向車である場合には第1回転速度より大きい第2回転速度に相当する第2の値に回転速度パラメータを設定してもよい。
車両側制御部102は、新配光パターンを表す配光指示信号および切替時間パラメータを表す切替指示信号を生成し、これらを灯具側制御部28に送信する。灯具側制御部28は、受信した配光指示信号および切替指示信号に従って、現配光パターンから新配光パターンに切り替えるよう、シェードモータ39、スイブルアクチュエータ22およびレベリングアクチュエータ26を制御する。
図8は、本発明の実施形態に係る切替時間パラメータの一例を示す図である。図8には、切替遅延時間パラメータテーブル122を示す。切替遅延時間パラメータテーブル122は、現配光パターンと新配光パターンとの複数の組み合わせそれぞれに対応する切替遅延時間パラメータを定義する。切替遅延時間パラメータテーブル122は設定部118が有する。切替遅延時間パラメータテーブル122は、一対の灯具のうち一方(例えば左側の灯具)について使用するために予め作成されたものである。他方の灯具(例えば右側の灯具)について使用される切替遅延時間パラメータテーブルも同様に予め作成される。
図8には、理解の容易のため、行列形式で切替遅延時間パラメータテーブル122を示す。この行列の行が現配光パターンを表し、列が新配光パターンを表す。現配光パターンと新配光パターンとの個々の組み合わせに対応する切替遅延時間パラメータが、行列の各要素に表示されている。
切替遅延時間パラメータテーブル122は、三種類の切替遅延時間パラメータT0、T1、およびT2を有する。値T0は遅延時間がないことを表す。値T1はある遅延時間を表し、値T2は値T1の遅延時間より長い遅延時間を表す。これらの値は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。値T0はグレアの抑制を重視し、値T1、T2は配光の自然な切替を重視して、設定されてもよい。
なお、値T0が値T1の遅延時間より短い遅延時間を表していてもよい。また、切替遅延時間パラメータテーブル122は、二種類の切替遅延時間パラメータのみを有してもよいし、四種類以上の切替遅延時間パラメータを有してもよい。
設定部118は、現配光パターンと新配光パターンとの組み合わせに応じて、具体的には以下に説明するように、切替遅延時間パラメータを設定する。
図8に示されるように、新配光パターンがロービーム配光パターンLoである場合には(図8の第1列)、切替遅延時間パラメータは、現配光パターンによらず、値T0に設定される。現配光パターンがハイビーム配光パターンHiである場合には(図8の第2行)、切替遅延時間パラメータは、新配光パターンによらず、値T0に設定される。
上述のように、切替遅延時間パラメータの値T0は、遅延時間がないか又は遅延時間が最短であることを表す。よって、ハイビーム配光パターンHiからロービーム配光パターンLoへと最短時間で配光が切り替わる。また、片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2からロービーム配光パターンLoへと最短時間で配光が切り替わる。同様に、ハイビーム配光パターンHiから片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2へと最短時間で配光が切り替わる。このようにして、照射領域が縮小される場合には最速で配光パターンが切り替わるので、前方車両に対するグレアを防止し又は効果的に抑制することができる。
また、切替遅延時間パラメータは、現配光パターンが第1片側ハイビーム配光パターンHi1であり新配光パターンが第2片側ハイビーム配光パターンHi2である場合にも(図8の第3行第4列)、値T0に設定される。図6を参照して説明したように、第2片側ハイビーム配光パターンHi2は第1片側ハイビーム配光パターンHi1に比べて広い非照射領域を有する。したがって、上記と同様に、前方車両に対するグレアを防止し又は効果的に抑制することができる。
本実施形態では、片側ハイビーム配光パターンは照射領域を連続的に変化させられるので、図8の第3行第4列は便宜上、第1片側ハイビーム配光パターンHi1から第2片側ハイビーム配光パターンHi2に向かう配光変化を意味するものとする(図9の第3行第4列についても同様とする)。すなわち、新たな片側ハイビーム配光パターンが現在のそれより広い非照射領域を有する場合、切替遅延時間パラメータは、値T0に設定される。
一方、新配光パターンがハイビーム配光パターンHiである場合には(図8の第2列)、切替遅延時間パラメータは、現配光パターンによらず、値T1に設定される。現配光パターンがロービーム配光パターンLoである場合には(図8の第1行)、切替遅延時間パラメータは、新配光パターンによらず、値T1または値T2に設定される。
切替遅延時間パラメータの値T1および値T2は、上述のように、値T0に比べて遅延時間が長いことを表す。よって、ロービーム配光パターンLo(または片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2)からハイビーム配光パターンHiへと、設定された遅延時間をかけて、配光が切り替わる。同様に、ロービーム配光パターンLoから片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2へと、若干の時間をかけて配光が切り替わる。このように、照射領域が拡大される場合には、縮小される場合に比べてゆっくりと配光パターンが切り替わる。こうして、自車運転者にとって違和感のない自然な配光変化を実現することが可能となる。
照射領域が拡大される場合であるが例外的に、現配光パターンが第2片側ハイビーム配光パターンHi2であり新配光パターンが第1片側ハイビーム配光パターンHi1である場合には(図8の第4行第3列)、切替遅延時間パラメータは、値T0に設定される。図8の第4行第3列は便宜上、第2片側ハイビーム配光パターンHi2から第1片側ハイビーム配光パターンHi1に向かう配光変化を意味するものとする(図9の第4行第3列についても同様とする)。すなわち、新たな片側ハイビーム配光パターンが現在のそれより狭い非照射領域を有する場合、切替遅延時間パラメータは、値T0に設定される。このように、切替遅延時間パラメータテーブル122においては、現配光パターンと新配光パターンとの組み合わせによっては、照射領域の増減と遅延時間の大小とが厳密に関係づけられていなくてもよい。
図9は、本発明の実施形態に係る切替時間パラメータの他の例を示す図である。図9に行列形式で示される切替速度パラメータテーブル124は、現配光パターンと新配光パターンとの複数の組み合わせそれぞれに対応する切替速度パラメータを定義する。この行列の行が現配光パターンを表し、列が新配光パターンを表す。現配光パターンと新配光パターンとの個々の組み合わせに対応する切替速度パラメータが、行列の各要素に表示されている。ここで、切替速度パラメータは、回転シェード34の回転速度を表す回転速度パラメータである。切替速度パラメータテーブル124は設定部118が有する。図8に示す切替遅延時間パラメータテーブル122と同様に、切替速度パラメータテーブル124は、一対の灯具の両方に同様に使用可能である。
切替速度パラメータテーブル124は、三種類の回転速度パラメータV1、V2、およびV3を有する。値V1、V2、V3の順に、対応するシェード回転速度は遅くなる。これらの値は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。値V1はグレアの抑制を重視し、値V2、V3は配光の自然な切替を重視して、設定されてもよい。なお、切替速度パラメータテーブル124は、二種類の切替速度パラメータのみを有してもよいし、四種類以上の切替速度パラメータを有してもよい。
設定部118は、現配光パターンと新配光パターンとの組み合わせに応じて、具体的には以下に説明するように、回転速度パラメータを設定する。
図9に示されるように、新配光パターンがロービーム配光パターンLoである場合には(図9の第1列)、回転速度パラメータは、現配光パターンによらず、値V1に設定される。現配光パターンがハイビーム配光パターンHiである場合には(図9の第2行)、回転速度パラメータは、新配光パターンによらず、値V1に設定される。また、回転速度パラメータは、現配光パターンが第1片側ハイビーム配光パターンHi1であり新配光パターンが第2片側ハイビーム配光パターンHi2である場合にも(図9の第3行第4列)、値V1に設定される。
上述のように、回転速度パラメータの値V1は、回転シェード34の回転速度が最も速いことを表す。よって、ハイビーム配光パターンHiからロービーム配光パターンLoへと最短時間で配光が切り替わる。また、片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2からロービーム配光パターンLoへと最短時間で配光が切り替わる。同様に、ハイビーム配光パターンHiから片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2へと最短時間で配光が切り替わる。ある片側ハイビーム配光パターンから別の片側ハイビーム配光パターンへと非照射領域が拡大される場合にも、最短時間で配光が切り替わる。このようにして、照射領域が縮小される場合には最速で配光パターンが切り替わるので、前方車両に対するグレアを防止し又は効果的に抑制することができる。
一方、新配光パターンがハイビーム配光パターンHiである場合には(図9の第2列)、回転速度パラメータは、現配光パターンによらず、値V2または値V3に設定される。現配光パターンがロービーム配光パターンLoである場合には(図9の第1行)、回転速度パラメータは、新配光パターンによらず、値V2または値V3に設定される。回転速度パラメータは、現配光パターンが第2片側ハイビーム配光パターンHi2であり新配光パターンが第1片側ハイビーム配光パターンHi1である場合にも(図9の第4行第3列)、値V3に設定される。
回転速度パラメータの値V2および値V3は、上述のように、値V1に比べて遅い回転速度を表す。よって、ロービーム配光パターンLo(または片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2)からハイビーム配光パターンHiへと比較的低速で配光が切り替わる。同様に、ロービーム配光パターンLoから片側ハイビーム配光パターンHi1、Hi2へと比較的低速で配光が切り替わる。ある片側ハイビーム配光パターンから別の片側ハイビーム配光パターンへと非照射領域が縮小される場合にも、比較的低速で配光が切り替わる。このように、照射領域が拡大される場合には、縮小される場合に比べてゆっくりと配光パターンが切り替わる。こうして、自車運転者にとって違和感のない自然な配光変化を実現することが可能となる。
なお、切替速度パラメータテーブル124においては、現配光パターンと新配光パターンとの組み合わせによっては、照射領域の増減と遅延時間の大小とが厳密に関係づけられていなくてもよい。そのようなパラメータ設定も必要に応じて採用されうる。
切替速度パラメータテーブル124においてハイビーム配光パターンHiに関し、回転速度パラメータの値V2および値V3は、前方車両の種別に応じて使い分けられている。上述のように、値V2は、値V3に比べて速い回転速度を表す。回転速度パラメータは、前方車両が先行車である場合には値V3に設定され、前方車両が対向車である場合には値V2に設定される。このようにして、前方車両が対向車であれば配光パターンを比較的速く切り替える一方、前方車両が先行車であれば配光パターンを比較的ゆっくりと切り替えることができる。先行車と対向車の自車に対する動きの速さの違いに応じて配光パターンの切替速度を最適化することができる。
図10は、実施の形態に係る車両用灯具システムが実行する制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、ライトスイッチ104によりADBモードの実行指示がなされると開始され、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図10に示すように、車両側制御部102は、車両用灯具が形成可能である複数の配光パターンから、車両用灯具が形成すべき配光パターンを選択する(S10)。車両側制御部102は、カメラ106および各種センサ等の検出手段から得られる前方車両の検出結果および自車の走行状態に基づいて、適切な配光パターンを選択する。
車両側制御部102は、現配光パターンおよび新配光パターンに応じて、現配光パターンから新配光パターンへの切替所要時間を定める少なくとも1つの切替時間パラメータを設定する(S12)。車両側制御部102は、新配光パターンを表す配光指示信号および切替時間パラメータを表す切替指示信号を生成し、これらを灯具側制御部28に送信する。
灯具側制御部28は、受信した配光指示信号および切替指示信号に従って新配光パターンを形成する(S14)。灯具側制御部28は、シェードモータ39、スイブルアクチュエータ22およびレベリングアクチュエータ26等に制御信号を送信し、新配光パターンの形成を指示して、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施形態によると、現在選択されている配光パターンとその次に選択される新配光パターンとの組み合わせに応じて配光切替の所要時間を個別に最適に設定することができる。
図11(a)および(b)は、灯具ユニットの別の実施形態を説明するための図である。図11(a)は、灯具ユニット130を構成する一部の要素間の位置関係を示す垂直断面図である。図11(b)は、灯具ユニット130を構成する一部の要素間の位置関係を示す平面図である。
図11(a)および(b)に示す灯具ユニット130は、主に、光源として発光ダイオード(LED)を用いている点が図1に示す灯具ユニット30と異なる。灯具ユニット130は、LED131、ヒートシンク132、リフレクタ133、投影レンズ134、レンズホルダ135、シェード機構137を備える。シェード機構137は、回転シェード136、シェードモータ139、ギア機構140を備える。
LED131は、ヒートシンク132に対して固定されている。ヒートシンク132は、LED131から発する熱を発散させるのに適した材質および形状とされている。LED131から出射された光は、リフレクタ133によって反射され前方に向かう。その光の少なくとも一部は、リフレクタ133の前方に配置された投影レンズ134を通過する。
リフレクタ133は、車両の前後方向に延びる光軸A1を中心軸とする略楕円球面を基調とする反射面を有している。LED131は、反射面の鉛直断面を構成する楕円の第1焦点に配置されている。これにより、LED131から出射された光が当該楕円の第2焦点に収束するように構成されている。
投影レンズ134は樹脂製であり、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ134は、後方焦点Fがリフレクタ133の反射面の第2焦点に一致するように配置されており、後方焦点F上の像を車両前方に反転像として投影するように構成されている。投影レンズ134の周縁部はレンズホルダ135により保持され、ヒートシンク132に対して固定されている。
回転シェード136は、LED131から出射された光の一部を遮るように、投影レンズ134の後方に配置されている。回転シェード136は回転軸A2を有しており、当該回転軸A2が、投影レンズ134の後方焦点Fの下方を通るように配置されている。シェードモータ139およびギア機構140は、回転シェード136を回転軸A2周りに回転させる。シェードモータ139は、例えばステッピングモータであってよい。シェードモータ39の回転は、灯具側制御部28(図1,7参照)により制御される。回転シェード136は、回転位置に応じてリフレクタ133からの光の遮り方が変わるように稜線形状が設計されている。従って、回転シェード136の回転位置を変化させることで、車両前方に形成される配光パターンを変化させることができる。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。