以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る車両用灯具の概略縦断面図である。図2は、図1に示す灯具ユニット20の分解斜視図である。図3は、図1に示す発光モジュール34の正面図である。図1に示す車両用灯具10は、車両に用いられる前照灯として機能する。
車両用灯具10は、車体の前部の左右両端部にそれぞれ配置されている。車両用灯具10は、図1に示すように、前方が開口したランプボディ12と、ランプボディ12の開口した前方部に取り付けられた前面カバー14と、を備えている。ランプボディ12と前面カバー14とで灯具筐体16が構成され、灯具筐体16の内部に灯室18が形成される。
灯室18には、灯具ユニット20が配置されている。灯具ユニット20は、ハイビーム用の配光パターンを形成できるように構成されている。また、灯室18には、保持部材22が配置されている。光軸調整機構24は、保持部材22を左右方向および前後方向に傾動自在に移動できるように構成されている。保持部材22は、熱伝導性の高い金属材料によって形成され、前後方向を向くベース部26を有している。保持部材22は、ヒートシンクの一部として機能する。
ベース部26は、その上下両端部に被支持部28,28,28(図1では、2つの被支持部28,28のみを示す。)が設けられている。ベース部26の後面には、後方へ突出するように放熱フィン30が設けられている。また、放熱フィン30の後面には放熱ファン32が取り付けられている。
ベース部26の前面における中央部から上部にかけては、発光モジュール34が取り付けられている。
発光モジュール34は、図3に示すように、回路基板36と、複数の半導体発光素子38と、2つの給電コネクタ40a,40bと、を有している。
回路基板36は、図3に示すように、上側部36aと下側部36bとからなる。回路基板36の左右側部には、上側部36aと下側部36bとの間に2箇所ずつ切り欠き部36cが形成されている。
回路基板36には、上側部36aに給電コネクタ40a,40bが配置され、下側部36bに半導体発光素子38が複数配置されている。
半導体発光素子38は、光を出射する面状光源として機能し、発光面が車両前方を向く状態で左右方向に並んで設けられている。半導体発光素子38は、例えば、LED素子、LD(Laser Diode)素子、EL(Electro-Luminescence)素子等が好適である。本実施の形態では、横方向に22個、縦方向に1個の計22個のLEDアレイとなっている。また、本実施の形態に係る半導体発光素子38は、LEDチップの上に蛍光層が形成されており、白色光を出射するように構成されている。
図4は、半導体発光素子近傍の拡大図である。複数の半導体発光素子38は、その周囲をシリコンからなる枠体39aにより囲まれている。枠体39aは、その表面に蒸着法などにより金属膜が形成されており、反射面としても機能する。また、隣接する半導体発光素子38の間には、薄い仕切り枠39bが設けられている。
給電コネクタ40a,40bは、図3に示すように、上側部36aの上端に配置され、回路基板36上に形成されている給電回路42によって半導体発光素子38と接続されている。給電回路42は、各半導体発光素子38に対応した複数の配線パターンからなる。
給電コネクタ40a,40bには、灯室18に設けられている制御回路46に接続された配線コード48のコネクタ部が接続される。したがって、制御回路46から配線コード48、給電コネクタ40、給電回路42を介して各半導体発光素子38に電源が供給される。制御回路46は、発光モジュール34が備える複数の半導体発光素子38の点消灯をグループ毎に制御する。
次に、車両用灯具10の他の部材について説明する。下側リフレクタ50は、図1に示すように、発光モジュール34に搭載されている半導体発光素子38の下側に配置されており、上側リフレクタ52は、半導体発光素子38の上側に配置されている。下側リフレクタ50は、半導体発光素子38側に略上方を向く反射面50aを有する。反射面50aは、例えば、放物面となるように形成されている。また、上側リフレクタ52は、半導体発光素子38側に略下方を向く反射面52aを有する。反射面52aは、例えば、双曲面となるように形成されている。
反射面50aおよび反射面52aは、各半導体発光素子38から出射された光を前方に向けて反射する。なお、本実施の形態では、下側リフレクタ50および上側リフレクタ52は、後述する反射部材として一体化されている。
回路基板36の下方には、可動シェード54を駆動するシェード駆動機構56が配置されている。シェード駆動機構56は、駆動モータ58と、ギヤ等の伝達機構59(図2参照)と、フラットケーブル60とを有している。
二段ギヤ59aは、駆動モータ58の出力軸の駆動ギヤ(不図示)と噛み合うとともに、二段ギヤ59bとも噛み合っている。駆動モータ58のコネクタ57は、フラットケーブル60によって制御回路46に接続されている。そして、制御回路46からフラットケーブル60を介して駆動モータ58に電力が供給される。
回路基板36の下方には、車幅方向に延びる支点軸61が回動自在に配置されている。支点軸61の一方の端部は、従動ギヤ59cに連結されている。また、支点軸61には、可動シェード54が固定されている。
可動シェード54は、車幅方向に延びる遮蔽面部54aと、遮蔽面部54aの左右両端側に支点軸61と直交するように設けられている被支持面部54b,54bと、を有する。
駆動モータ58が回転すると、出力軸の駆動ギヤ(不図示)と噛み合っている二段ギヤ59a、二段ギヤ59aの小歯車と噛み合っている二段ギヤ59b、および二段ギヤ59bの小歯車と噛み合っている従動ギヤ59cを介して支点軸61が回動され、可動シェード54が所定の方向に移動する。
具体的には、可動シェード54は、相対的に後方側の位置であり、下側リフレクタ50に入射される光を遮蔽する遮蔽位置(遮光位置)Cと、相対的に前方側の位置であり、下側リフレクタ50に対する遮蔽状態を解除する待避位置Oとの間で回動する。そして、可動シェード54の位置に応じて半導体発光素子38から出射され下側リフレクタ50に入射される光の入射状態が制御される。
つまり、可動シェード54が遮蔽位置Cにある場合には、遮蔽面部54aによって下側リフレクタ50の反射面50aが覆われた状態となる。一方、可動シェード54が待避位置Oにある場合には、半導体発光素子38から出射された、反射面50aに向かう光が遮蔽面部54aによって遮蔽されない状態となる。これにより、灯具ユニット20は、ハイビーム用配光パターンおよびその一部が遮光された部分ハイビーム用配光パターンを形成できる。
ベース部26の前面には、レンズホルダ62が取り付けられている。レンズホルダ62は、前後方向に貫通した円筒部62aと、円筒部62aの3箇所に形成されている足部62bと、足部62bの先端に形成されている固定部62cと、を有する。レンズホルダ62は、固定部62cを介してベース部26に取り付けられている。
レンズホルダ62の前端部には、投影レンズ64が取り付けられている。投影レンズ64は、略半球状に形成されており、凸部が前方に向くように配置されている。投影レンズ64は、後側焦点を含む焦点面上の像を反転して発光モジュール34から出射された光を車両前方に照射、投影するための光学部材としての機能を有する。また、投影レンズ64は、発光モジュール34とともにランプボディ12に収容されている。投影レンズ64の上方および下方には、エクステンションリフレクタ65a,65bが設けられている。
光軸調整機構24は、2つのエイミングスクリュー66,68を有している。エイミングスクリュー66は、灯室18の上部後方に配置されており、回転操作部66aと、回転操作部66aから前方へ向かって延びている軸部66bと、を有する。軸部66bの前方端部には、ねじ溝66cが形成されている。
エイミングスクリュー66は、回転操作部66aがランプボディ12の後端部に回転自在に支持され、ねじ溝66cが保持部材22の上部の被支持部28に螺合されている。回転操作部66aが操作され、被支持部28に連結されているエイミングスクリュー66が回転すると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部28を支点として保持部材22が傾動され、灯具ユニット20の光軸調整(エイミング調整)が行われる。なお、エイミングスクリュー68も同様の機能を有する。
次に、灯具ユニット20を構成する各部品を詳述する。
(保持部材)
図2に示す保持部材の表面形状について説明する。図5は、保持部材の中央部を前方から見た正面図である。図5に示す搭載部70は、図3に示す回路基板36が搭載される領域である。搭載部70には、ベース部26から突出するように円筒状の4つのスクリュボス72a,72a,72b,72b(適宜、「スクリュボス72」と称することがある)が設けられている。
また、搭載部70の右側において、短手方向に隣接する2つのスクリュボス72aの間には、ベース部から突出するように設けられている一つの位置決めピン74aと、一つの穴76aとが設けられている。同様に、搭載部70の左側において、短手方向に隣接する2つのスクリュボス72bの間には、ベース部から突出するように設けられている一つの位置決めピン74bと、一つの穴76bとが設けられている。
(回路基板)
回路基板36は、図3に示すように、右側部36dおよび左側部36eにそれぞれ2箇所ずつ切り欠き部36cが形成されている。右側部36dに形成された2つの切り欠き部36cの間には、回路基板36を貫通する2つの丸穴78a,78bが形成されている。また、左側部36eに形成された2つの切り欠き部36cの間には、回路基板36を貫通する2つの長穴80a,80bが形成されている。
(反射部材)
図6は、本実施の形態に係る反射部材の正面図である。図7は、本実施の形態に係る反射部材の背面図である。図8は、本実施の形態に係る反射部材を正面方向から見た斜視図である。図9は、本実施の形態に係る反射部材を背面方向から見た斜視図である。
反射部材82は、ハイヒートポリカーボネート(PC−HT)などの熱可塑性樹脂を材料として射出成型により一体的に製造された部品である。また、反射部材82は、基体が透明な材料からなる。基体は、透過率が80%以上の材料が好ましい。
反射部材82は、下側リフレクタ50および上側リフレクタ52が設けられている中央反射部84と、中央反射部84の両端部から上方に延伸するように設けられている一対の固定部86a,86bと、を有する。
下側リフレクタ50は、反射面50aを含む少なくとも一部の表面にアルミニウム等の金属反射膜が形成されている。同様に、上側リフレクタ52は、反射面52aを含む少なくとも一部の表面にアルミニウム等の金属反射膜が形成されている。固定部86a,86bは、発光モジュール34を回路基板36に対して固定する際に、発光モジュール34の右側部36dおよび左側部36eを押さえつける。
固定部86aには、ベース部26の2つのスクリュボス72a,72aがそれぞれ嵌る2つの穴88aと、貫通した丸穴90aが形成されている。穴88aの正面側の周囲には、6つの凸部89aが略等間隔に形成されている。また、図9に示すように、固定部86aの背面側には、発光モジュール34の丸穴78aに嵌る位置決めピン92aが設けられている。
同様に、固定部86bには、ベース部26の2つのスクリュボス72b,72bがそれぞれ嵌る2つの穴88bと、貫通した長穴90bが形成されている。穴88bの正面側の周囲には、6つの凸部89bが略等間隔に形成されている。また、図9に示すように、固定部86bの背面側には、発光モジュール34の長穴80aに嵌る位置決めピン92bが設けられている。
(組立て方法)
次に、灯具ユニット20の組立て方法について主に図2を参照して説明する。
はじめに、保持部材22を用意し表面にグリスを塗布する。次に、発光モジュール34の回路基板36の4つの切り欠き部36cを、保持部材22の搭載部70に設けられている4つのスクリュボス72の位置に合わせて、発光モジュール34を保持部材22上に載置する。その際、ベース部26の位置決めピン74aは、回路基板36の丸穴78bに嵌る。また、ベース部26の位置決めピン74b(図2では不図示)は、回路基板36の長穴80bに嵌る。これにより、発光モジュール34は、保持部材22に対して位置決めされる。
次に、反射部材82の固定部86aの2つの穴88aおよび固定部86bの2つの穴88bを、保持部材22の搭載部70に設けられている4つのスクリュボス72a,72a,72b,72bの位置に合わせ、発光モジュール34を挟んだ状態で反射部材82を保持部材22上に載置する。その際、ベース部26の位置決めピン74aは、固定部86aの丸穴90aに嵌る。また、ベース部26の位置決めピン74b(図2では不図示)は、固定部86bの長穴90bに嵌る。
加えて、固定部86aの裏面側に設けられている位置決めピン92a(図2では不図示)は、回路基板36の丸穴78aに挿入され、先端がベース部26に設けられている穴76aに嵌る。また、固定部86bの裏面側に設けられている位置決めピン92bは、回路基板36の長穴80aに挿入され、先端がベース部26に設けられている穴76bに嵌る。これにより、反射部材82は、発光モジュール34に対して位置決めされる。
次に、4つのタッピングスクリュ94を、反射部材82に形成されている4つの穴88a,88bを通して、保持部材22の4つのスクリュボス72a,72a,72b,72bに組み付ける。これにより、反射部材82および発光モジュール34は保持部材22に対して共締めされる。その際、反射部材82は、固定部86a,86bの裏面側の所定の一部が発光モジュール34の回路基板36の基準面に対して当接するように構成されている。これにより、反射部材82と発光モジュール34との位置決め精度が向上する。
また、タッピングスクリュ94は、穴88a(または穴88b)の正面側の周囲に形成されている凸部89a(または凸部89b)を鍔の部分で潰しながら、スクリュボス72a(またはスクリュボス72b)にねじ止めされる。つまり、凸部89a,89bは、潰し代として機能する。これにより、仮に発光モジュール34の回路基板36の厚みにバラツキが存在し、保持部材22に対して反射部材82の位置が最適位置からずれても、凸部89a,89bが潰れることによって、タッピングスクリュ94とスクリュボス72との相対位置の変動が吸収される。
上述のように、保持部材22に対する発光モジュール34の位置決め、固定に関して、保持部材22の表面と平行な面(灯具ユニットとしては鉛直面)内での発光モジュール34の位置決めは、保持部材22に形成されている位置決めピン74a,74bと、回路基板36に形成されている丸穴78bおよび長穴80bとで行われる。また、保持部材22の表面と垂直な方向(車両前後方向)における発光モジュール34の位置決め(固定)は、発光モジュール34が、反射部材82と保持部材22との間に挟まれた状態でタッピングスクリュ94によって共締めされることで行われる。
これにより、丸穴78bおよび長穴80bを精度良く形成すれば、発光モジュール34の回路基板36の外周の寸法に高い精度が必要なくなる。そのため、基板のサイズが大きくなっても、丸穴78bおよび長穴80bの形成は特段のコスト上昇を伴わないため、コストの上昇が抑制される。
また、保持部材22に対する発光モジュール34の固定を、特別な固定部材を用いずに、反射部材82自体で行っているため、部品点数を削減できる。また、特別な固定部材(例えばねじ)を用いて発光モジュール34を保持部材22に直接固定する場合と比較して、回路基板36にねじ止め固定のための領域が必要なく、回路基板36の小型化が可能となる。
また、タッピングスクリュ94はスクリュボス72に突き当てているため、クリープによるスクリュ緩みの影響が低減でき、位置精度の耐久信頼性を向上できる。
また、反射部材82は、所定の接地部が発光モジュール34の回路基板36の基準面に対して当接するように構成されているため、反射部材82と発光モジュール34との位置決めが直接行われる。その結果、反射部材82と発光モジュール34の半導体発光素子38との位置決め精度が向上する。
次に、給電コネクタ40a,40bにコードを取り付ける。その後、投影レンズ64が固定されているレンズホルダ62を保持部材22に固定する。ベース部26には、3つのスクリュボス96と、3つの位置決めピン98とが形成されている。それぞれの位置決めピン98は、対応するスクリュボス96の近傍に形成されている。
レンズホルダ62の3つの固定部62cには、タッピングスクリュ100のねじ部が通る大きさの穴62dと、保持部材22の位置決めピン98が嵌る丸穴62eが形成されている。穴62dの正面側の周囲には、6つの凸部62fが略等間隔に形成されている。
そして、3つのタッピングスクリュ100を、各固定部62cに形成されている穴62dを通して、保持部材22の3つのスクリュボス96に組み付ける。その際、各位置決めピン98が対応する固定部62cの丸穴62eに嵌る。これにより、レンズホルダ62は保持部材22に対して位置決めされ、固定される。
また、タッピングスクリュ100は、穴64dの正面側の周囲に形成されている凸部62fを鍔の部分で潰しながら、スクリュボス96にねじ止めされる。つまり、凸部62fは、潰し代として機能する。
以上の方法によって灯具ユニット20が組み立てられる。
次に、発光モジュール34と反射部材82との位置関係について更に詳述する。図10は、本実施の形態に係る反射部材近傍の概略縦断面図である。
発光モジュール34は、窒化アルミニウムからなる回路基板36上にサブマウント37
が積層されている。サブマウント37は、例えば、窒化アルミニウムからなる。半導体発光素子38は、サブマウント37に載置されているLEDチップ38aと、LEDチップ38aの上に積層されている蛍光層38bと、を有する。蛍光層38bは、LEDチップ38aから出射した光が入射されると、入射した光の少なくとも一部の光を、異なる波長の光に変換して前方に出射する。このような蛍光層38bとしては、例えば、蛍光体をセラミックとして板状に加工したものが挙げられる。また、蛍光層38bは、透明樹脂に蛍光体粉末を分散させたものであってもよい。
半導体発光素子38は、例えば、LEDチップ38aに青色を発するLED、蛍光層38bに青色光を黄色光に変換する蛍光体を採用することで、車両前方に向けて白色光を照射する光源として機能する。
反射部材82は、下側リフレクタ50の反射面50aおよび上側リフレクタ52の反射面52aにアルミニウムの反射膜が蒸着により形成されており、半導体発光素子38から出射した光の一部を車両前方に向けて反射する。
下側リフレクタ50の基体50bおよび上側リフレクタ52の基体52bは、透明な材料からなる。基体50b,52bは、透過率が80%以上の材料が好ましく、本実施の形態では、透過率が83%程度のハイヒートポリカーボネート(PC−HT−1800(クリア材))を用いている。これにより、基体50b,52bにおける光の吸収による発熱が抑制される。
基体50bおよび基体52bは、半導体発光素子38の発光部38cとの距離が5mm以下の領域を有している。そのため、半導体発光素子38が発する熱の影響を受けやすい。しかしながら、基体50b,52bが透明な材料からなっているため、仮に半導体発光素子38から出射した光の一部が基体50b,52bに入射しても、その光が吸収されにくく、発熱での溶損、変形が抑制される。なお、対照実験として、透明でないハイヒートポリカーボネート(グレー材)を用いたところ、基体部分が数秒で溶損した。
このように、反射部材82が透過率の高い基体を有することで、反射部材82を半導体発光素子38の発光部38cと近接させることができるため、省スペースな灯具ユニットが実現できる。
本実施の形態では、半導体発光素子38の発光部38cと、下側リフレクタ50および上側リフレクタ52の後端面50c,52cとの隙間dは、0.5〜1.0mm程度である。
また、半導体発光素子38から出射する光による発熱での反射部材82の溶損、変形が抑制されるため、出力の高い半導体発光素子38を採用できる。例えば、半導体発光素子38として出力10W以上の発光ダイオードを有してもよい。これにより、半導体発光素子38の数を少なくしても所望の明るさを実現できる。
また、前述の領域は、基体50b,52bの、反射膜が形成されていない後端面50c,52cの表面から入射した半導体発光素子38の光が到達する部分である。これにより、基体50b,52bの表面全体に反射膜を形成しなくても、発熱での溶損、変形が抑制される。なお、より好ましくは、下側リフレクタ50の後端面50cおよび正面50d、並びに、上側リフレクタ52の後端面52cおよび正面52dに金属反射膜を形成するとよい。これにより、半導体発光素子38から出射された光が基体50b,52bの内部に侵入しにくくなり、内部における光の吸収による発熱での基体の溶損、変形が抑制される
また、下側リフレクタ50および上側リフレクタ52は、半導体発光素子38に近接している端部50e,52eが半導体発光素子38から出射した光の一部を遮るように、半導体発光素子38よりも車両前方側に配置されている。換言すると、下側リフレクタ50および上側リフレクタ52は、灯具ユニットを正面から見た場合(矢印A方向から見た場合)に、半導体発光素子38の発光部38cの一部を遮るように配置されている。これにより、照射領域の輪郭を明りょうにすることができる。
(可動シェードの移動)
次に、可動シェード54の移動について説明する。図11は、本実施の形態に係る灯具ユニット20を正面側から見た斜視図である。図12は、図11に示す灯具ユニット20の要部を右側から見た右側面図である。図13は、図11に示す灯具ユニット20の要部を左側から見た左側面図である。なお、図11乃至図13では、保持部材22やレンズホルダ62、タッピングスクリュ94,100等の一部の部材の図示を省略している。
図10、図11に示す可動シェード54は、下側リフレクタ50に入射される光を遮蔽する遮蔽位置Cにある。可動シェード54は、支点軸61を介して伝達機構59の従動ギヤ59cに連結されている。伝達機構59は、駆動モータ58の出力軸に固定されている駆動ギヤ(不図示)と従動ギヤ59cとの間に、2つの二段ギヤ59a,59bが設けられている。伝達機構59は、駆動モータ58の出力軸の回転を減速して支点軸61に伝達し、可動シェード54を移動させる減速機構として機能する。
本実施の形態に係る駆動モータ58は、ステッピングモータである。また、可動シェード54は、図10に示すように、遮蔽位置Cにおいて半導体発光素子38から出射した光の少なくとも一部を遮光する。そしてシェード駆動機構56は、遮蔽位置Cと遮蔽位置から待避した待避位置Oとの間で、配光パターンの形状が段階的に変化するように可動シェード54を段階的に移動させることができる。
(配光制御)
次に、車両用灯具10による配光制御について説明する。車両本体には、撮像素子、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等を有するカメラ(不図示)が設けられており、車両用灯具10による照射可能領域がカメラによって定期的に撮影される。撮影された領域の画像データは画像処理され、照射可能領域に存在する対向車両や歩行者等の存在が検出される。
この情報に基づいて、制御回路46は、発光モジュール34が備える複数の半導体発光素子38の点消灯をグループ毎に制御したり、可動シェード54の移動を制御したりする。これにより、車両用灯具10は、車両前方の状況に応じた適切な配光パターンを形成できる。
各半導体発光素子38から出射された光は、前方へ向かうか又は反射部材82の反射面50a,52aで反射され、投影レンズ64の後側焦点を含む焦点面上に集光され、投影レンズ64および前面カバー14を透過して、ハイビームの照射光として前方へ照射される。このとき、同時に、上述のカメラによりハイビームの照射領域の撮影が行われる。
図14は、本実施の形態に係る配光パターンの一例を示す図である。ハイビーム用配光パターンPHは、図14に示すように、各半導体発光素子38から出射された光のうち、下側リフレクタ50の反射面50aで反射された光が投影レンズ64を通過することで形成されるパターンPH1と、各半導体発光素子38から出射された光のうち、上側リフレクタ52の反射面52aで反射された光および半導体発光素子38から前方へ直接出射した光が投影レンズ64を通過することで形成されるパターンPH2と、からなる。図14に示す領域Sは、一つの半導体発光素子38によって照射される領域に対応する。
パターンPH1は、ハイビーム用配光パターンPHの上部領域であり、前方に歩行者が存在している場合に歩行者の上半身が照射されるパターンである。パターンPH2は、ハイビーム用配光パターンPHの中央領域および下部領域である。
なお、図14には、本実施の形態に係る灯具ユニット20とは別の灯具ユニット(不図示)によって形成されたロービーム用配光パターンPL(図14に示す鎖線で囲まれた領域)も記載されている。
車両用灯具10によりハイビームが照射されている場合に、上述の画像処理によってハイビームの照射領域に歩行者の存在が検出されないときは、可動シェード54は待避位置O(図10参照)にある。一方、ハイビームの照射領域に歩行者の存在が検出されたときは、可動シェード54は待避位置Oから遮蔽位置C(図10参照)に回動され、歩行者の存在が検出されている間は、遮蔽位置Cに可動シェード54が保持される。
可動シェード54の遮蔽面部54aが待避位置Oに位置している場合、反射面50aが遮蔽面部54aによって遮蔽されないため、パターンPH1およびパターンPH2によって構成されるハイビーム用配光パターンPHが形成される。一方、遮蔽面部54aが遮蔽位置Cに位置している場合、反射面50aが遮蔽面部54aによって遮蔽されるため、パターンPH1は形成されず、パターンPH2によって構成される部分ハイビーム用配光パターンPH’が形成される。
つまり、可動シェード54が待避位置Oから遮蔽位置Cに移動すると、ハイビーム用配光パターンPHの上端Y1は、部分ハイビーム用配光パターンPH’の上端Y2に変化する。したがって、ハイビームの照射領域に歩行者の存在が検出された場合、部分ハイビーム用配光パターンPH’が形成され、歩行者の上部側に光が照射されないため、歩行者が感じるグレアを低減できる。
上述のように、灯具ユニット20においては、下側リフレクタ50の反射面50aを遮蔽する遮蔽位置Cと、反射面50aに対する遮蔽状態を解除する待避位置Oとの間で移動される可動シェード54を設けることによって、下側リフレクタ50に入射される光の入射状態の制御が可能となる。したがって、下側リフレクタ50に入射される光の入射状態の制御を簡素な構成によって精度良く行える。
また、可動シェード54が回動されて待避位置Oと遮光位置Cとの間を移動するため、可動シェード54の車両前後方向における移動スペースが小さくて済み、車両用灯具10の小型化を図ることができる。
上述のように構成されているシェード駆動機構56は、ステッピングモータのように段階的に回転位置を変位させる装置を採用することで、簡単な回路構成で、可動シェード54の正確な位置決め制御を実現できる。一方、ステッピングモータのように段階的に回転するモータを採用すると、配光パターンの形状も段階的に変化することになる。
図15(a)〜図15(c)は、配光パターンの形状の変化を模式的に示した図である。
図15(a)に示すハイビーム用配光パターンPHは、前述のように可動シェード54が図10に示す待避位置Oに位置している状態で灯具ユニット20が形成する配光パターンである。この状態からシェード駆動機構56の駆動モータ58に駆動パルスが入力されると、駆動パルスの数に比例して駆動モータ58の出力軸がステップ状に回転し、可動シェード54が待避位置Oから遮蔽位置Cに向けて移動し、図15(b)に示す部分ハイビーム用配光パターンPH”が形成される。更に、駆動モータ58に駆動パルスが入力されると、最終的に可動シェード54が遮蔽位置Cまで移動し、図15(c)に示す部分ハイビーム用配光パターンPH’が形成される。
このように駆動モータ58に駆動パルスを入力し、ステップ状にモータを回転させると、可動シェード54が遮蔽位置Cと待避位置Oとの間を段階的に移動することになる。その結果、車両用灯具10による照射領域が段階的に変化するため、換言すれば、ハイビーム用配光パターンの形状が段階的に変化するため、それを見た運転者等が違和感を抱く場合がある。ここで、段階的とは、変化が一定ではなく、所定のタイミングでステップ状に変化する場合を含む。
そこで、このような違和感の発生を緩和すべく、発明者が鋭意検討した結果、駆動モータ58の一パルスあたりの回転量と、その際の回転スピードとを変化させると、配光パターンの形状の変化に対する観察者の違和感の抱き方が異なることを見いだした。
表1では、分解能と可動シェードの移動速度とを変化させたときの違和感の程度を示している。分解能は、駆動モータ58に1パルスを入力し可動シェード54が移動したことにより配光パターンの形状が変化した際、光軸とハイビーム用配光パターンの上縁部とのなす角の変化で示しされる。
本実施の形態における測定では、車両用灯具10の前方(例えば25m)に仮想鉛直スクリーンを配置し、駆動モータ58に1パルスを入力させた場合に、図14や図15に示すハイビーム用配光パターンPHの上端Y1と光軸Axとの角度の変化を分解能としている。例えば、1パルスで18°回転するステッピングモータの場合、分解能を0.2°にするためには、大きな減速比が得られるように伝達機構59の各ギヤを選択すればよい。なお、具体的な減速比は、ステッピングモータの仕様や、可動シェード54の形状および配置、LEDの位置、等に基づいて適宜設定すればよい。
また、表1に示す移動速度とは、図10に示すように、可動シェード54が、待避位置Oから遮蔽位置Cへ移動するのにかかる時間として定義できる。つまり、移動速度が0.2sとは、可動シェード54が、待避位置Oから遮蔽位置Cへ0.2sで移動する速度ととらえることができる。
このように、分解能と移動速度とを変化させたときの配光パターンの形状変化を観察し、違和感を定性的にランク分けした。表1において、×は違和感をはっきり抱いた場合、△は違和感を少し抱いた場合、○は違和感をほとんど抱かなかった場合を示している。
表1に示すように、分解能が1.5°の場合、可動シェード54の移動速度が速くても違和感を解消することはできなかった。一方、分解能が0.2°の場合、可動シェード54の移動速度が遅くても違和感を解消することができた。このことから、分解能が小さいほど、違和感を抑制できることがわかった。
したがって、シェード駆動機構56は、可動シェード54を一段階移動させた際に、光軸Axと配光パターンの縁部とのなす角の変化が1°以下となるように構成するとよい。より好ましくは、0.5°以下となるように構成するとよい。一方、分解能を小さくしすぎると、移動速度を大きくしないと配光パターンの形状変化が遅くなる。つまり、モータの回転数を早める必要がある。そのため、分解能は0.01°以上が好ましく、より好ましくは0.03°以上であり、更により好ましくは0.1°あるいは0.2°以上であるとよい。なお、上述の説明は、配光パターンの形状変化が上下方向の場合であったが、左右方向であっても適用できる。
このような分解能の範囲となるシェード駆動機構56を採用することで、可動シェード54を段階的に移動させたときの配光パターンの形状の変化が運転者等に与える違和感を抑制できる。
なお、本実施の形態に係る車両用灯具10の構成の一部を列挙すると以下の通りとなる。
発光モジュール34は、発光面が車両前方を向くように配置された半導体発光素子38を有している。また、半導体発光素子38は、投影レンズ64の焦点近傍に配置されている。
また、反射部材82は、半導体発光素子38の下方に配置され、半導体発光素子38から出射した光の一部を投影レンズ64に向けて反射する下側リフレクタ50を有している。
また、可動シェード54は、遮蔽位置Cにおいて、半導体発光素子38から出射して下側リフレクタ50に向かう光の少なくとも一部を遮光する。
次に、本実施の形態に係る車両用灯具10を用いた更なる配光制御について説明する。
前述の表1に示すように、駆動モータ58へ入力するパルスの間隔(1パルスを入力してから次の1パルスを入力するまでの間隔)、つまり、可動シェードの移動速度によって、配光パターンの変化に対して感じる違和感は異なる。
例えば、前述の図15(a)〜図15(c)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHが形成されている状態から、上端Y1を徐々に下げる場合には、対向車や歩行者を考慮して素早く可動シェード54を移動させることが好ましい。したがって、このような環境においては、パルスの入力間隔を0.2〜0.5s程度に設定するとよい。
一方、部分ハイビーム用配光パターンPH’からハイビーム用配光パターンPHに戻す場合には、遮光する場合と比較して緊急性が低いため、パルスの入力間隔を0.5〜2.0s程度に設定してもよい。
また、走行中の自車両の前方の歩行者や他車両に注意を促すために、ハイビーム用配光パターンを短時間繰り返し照射する、いわゆるパッシングという操作の場合、短時間で配光パターンの形状を変化させる必要がある。そのため、このような場合には、駆動モータ58に入力するパルスの間隔を0.5s以下、好ましくは0.2s程度にするとよい。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。