以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)の2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図18〜図20において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。また、図18は、コンピュータシミュレーションにより作図されたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図である。この等光度曲線の説明図において、中央の等光度曲線は、高光度を示し、外側の等光度曲線は、低光度を示す。さらに、図9、図10において、レンズの断面のハッチングは、省略してある。この明細書、特許請求の範囲において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
(実施形態1の構成の説明)
図1〜図19は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる車両用前照灯の構成について説明する。図1中、符号1L、1Rは、この実施形態1にかかる車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプなど)である。前記車両用前照灯1L、1Rは、車両Cの前部の左右両端部に搭載されている。以下、車両Cの左側に搭載される左側の車両用前照灯1Lについて説明する。なお、車両Cの右側に搭載される右側の車両用前照灯1Rは、左側の車両用前照灯1Lとほぼ同様の構成をなすので、説明を省略する。
(ランプユニットの説明)
前記車両用前照灯1Lは、図2〜図7に示すように、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、半導体型光源2と、レンズ(固定光学部品)35と、光制御部材(可動光学部品)6と、駆動部材7と、ヒートシンク部材と兼用の取付部材(以下、「ヒートシンク部材」と称する)4と、を備えるものである。
前記半導体型光源2および前記レンズ35および前記光制御部材6および前記駆動部材7および前記ヒートシンク部材4は、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニット2、35、6、7、4は、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
(半導体型光源2の説明)
前記半導体型光源2は、図2、図4〜図8、図10、図11に示すように、この例では、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源2は、発光チップ(LEDチップ)20と、前記発光チップ20を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)と、前記パッケージを実装した基板21と、前記基板21に取り付けられていて前記発光チップ20に電源(バッテリー)からの電流を供給するコネクタ22と、から構成されている。前記基板21の左右両側は、スクリュー24により、前記ヒートシンク部材4に固定されている。この結果、前記半導体型光源2は、前記ヒートシンク部材4に固定されている。
前記発光チップ20は、図11に示すように、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ20の正面この例では長方形の正面が発光面25をなす。前記発光面25は、前記レンズ35の基準光軸(基準軸)Zの前側に向いている。前記発光チップ20の前記発光面25の中心Oは、前記レンズ35の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記レンズ35の基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
図11において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ20の前記発光面25の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、車両Cの内側、すなわち、この実施形態1において、右側が+方向であり、左側が−方向である。また、Y軸は、前記発光チップ20の前記発光面25の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態1において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光チップ20の前記発光面25の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸であって、この実施形態1において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
なお、図4〜図6(図7)に示すように、前記半導体型光源2にカバー部材8を固定しても良い。前記カバー部材8は、たとえば、光不透過性の部材から構成されている。このために、前記半導体型光源2の前記基板21の正面のうち前記発光チップ20の周囲は、前記カバー部材8により覆い隠されて、見栄えが向上される。また、前記カバー部材8には、前記半導体型光源2の前記発光チップ20の前記発光面25から放射される光が前記カバー部材8により遮蔽されずに前記レンズ35側に入射することができるように、窓部が設けられている。
(レンズ35の説明)
前記レンズ35は、図2〜図11に示すように、主レンズ部3と、前記主レンズ部3の一側(右側)に設けられている補助レンズ部5と、複数この例では3本の固定脚部36と、から構成されている。なお、図9、図10における二点鎖線は、前記主レンズ部3と前記補助レンズ部5との境界線を示す。前記固定脚部36は、スクリュー37により、前記ヒートシンク部材4に固定されている。この結果、前記レンズ35は、前記ヒートシンク部材4に固定されている。前記固定脚部36は、この例では、前記レンズ35と一体構造であるが、前記レンズ35と別体構造であっても良い。
(主レンズ部3の説明)
前記主レンズ部3は、図10に示すように、前記基準光軸Zおよび前記基準焦点Fを有する。前記主レンズ部3は、前記半導体型光源2から放射される光のうち、中央光L5および周辺光の一部L6を利用するものである。前記中央光L5は、前記半導体型光源2の半球放射範囲のX軸もしくはY軸から所定の角度(この例では、約40°)以上の範囲の光であって、前記主レンズ部3の中央部に入射する光である。また、前記周辺光は、前記半導体型光源2の半球放射範囲のX軸もしくはY軸から所定の角度(この例では、約40°)以下の範囲の光である。前記周辺光の一部L6は、前記周辺光のうち前記主レンズ部3の周辺部に入射する光である。前記主レンズ部3は、この例では、前記半導体型光源2からの光を透過させる透過タイプのレンズ部である。
前記主レンズ部3は、前記半導体型光源2からの光(前記中央光L5および前記周辺光の一部L6)を主配光パターン、この実施形態1においては、図18(A)、図19(A)に示す第1配光パターンのロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LP、および、図18(B)、図19(B)に示す第2配光パターンのハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)HP、として車両Cの前方に照射する。すなわち、前記主レンズ部3は、前記半導体型光源2からの直接入射した光(前記中央光L5および前記周辺光の一部L6)を前記ロービーム用配光パターンLPとして車両Cの前方に照射し、かつ、前記半導体型光源2から前記光制御部材6を透過した光(前記中央光L5)および前記半導体型光源2からの直接入射した光(前記周辺光の一部L6)を前記ハイビーム用配光パターンHPとして車両Cの前方に照射する。
前記主レンズ部3は、前記半導体型光源2からの光が前記主レンズ部3中に入射する入射面30と、前記主レンズ部3中に入射した光が出射する出射面31と、から構成されている。前記主レンズ部3の前記入射面30は、自由曲面あるいは複合2次曲面から構成されている。前記主レンズ部3の前記出射面31は、前記半導体型光源2と反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面あるいは複合2次曲面から構成されている。
(補助レンズ部5の説明)
前記補助レンズ部5は、図9〜図11に示すように、前記主レンズ部3の周辺この実施形態1においては車両Cの内側の辺すなわち右辺に設けられている。前記補助レンズ部5は、前記半導体型光源2から放射される光のうち、周辺光の他の一部L1を有効利用するものである。前記周辺光の他の一部L1は、前記周辺光のうち前記補助レンズ部5に入射する光である。前記補助レンズ部5は、この例では、前記半導体型光源2からの光(周辺光の他の一部)L1を全反射させる全反射タイプのレンズ部である。前記補助レンズ部5は、前記主レンズ部3と一体のものである。
前記補助レンズ部5は、前記半導体型光源2からの光L1を補助配光パターン、この実施形態1においては、図18(B)、図19(B)に示すスポット用配光パターンSP、として、車両Cの前方であって前記主レンズ部3から照射される前記ハイビーム用配光パターンHPのほぼ中央部に照射する。
前記補助レンズ部5は、前記半導体型光源2からの光L1が前記補助レンズ部5中に入射する入射面50と、前記入射面50から前記補助レンズ部5中に入射した光L2が反射する反射面51と、前記反射面51で反射した反射光L3が前記補助レンズ部5中から外部に出射する出射面52と、から構成されている。
前記補助レンズ部5の前記入射面50は、前記半導体型光源2からの光L1が前記補助レンズ部5中に屈折せずに入射するように法線ベクトルが決められている自由曲面から構成されている。すなわち、前記補助レンズ部5の前記入射面50は、前記半導体型光源2からの光L1の放射方向と前記補助レンズ部5の前記入射面50の法線N1方向とが一致する自由曲面から構成されている。
前記補助レンズ部5の前記反射面51は、前記入射面50から前記補助レンズ部5中に入射した光L2が図18(B)、図19(B)のスクリーン上の狙った角度方向に全反射するように法線ベクトルが決められている自由曲面から構成されている。すなわち、前記補助レンズ部5の前記反射面51は、前記入射面50から前記補助レンズ部5中に入射した光L2が図18(B)、図19(B)のスクリーン上の狙った角度方向に全反射するように法線N2が決められている自由曲面から構成されている。すなわち、前記反射面51の前記法線N2に対する前記入射光L2とのなす角度と、前記反射面51の前記法線N2に対する反射光L3とのなす角度とは、等しい。
前記補助レンズ部5の前記出射面52は、前記反射面51で全反射した反射光L3が前記補助レンズ部5中から外部に屈折せずに出射するように法線ベクトルが決められている自由曲面から構成されている。すなわち、前記補助レンズ部5の前記出射面52は、前記反射面51で全反射した反射光L3の反射方向と前記補助レンズ部5の前記出射面52の法線N3方向とが一致する自由曲面から構成されている。
(ヒートシンク部材4の説明)
前記ヒートシンク部材4は、前記半導体型光源2と、前記レンズ35と、前記光制御部6が取り付けられている前記駆動部材7と、が取り付けられている取付部材である。また、前記ヒートシンク部材4は、前記半導体型光源2で発生する熱を外部に放射させるものである。前記ヒートシンク部材4は、たとえば、熱伝導性なお導電性をも有するアルミダイカストや樹脂部材からなる。前記ヒートシンク部材4は、図2〜図7に示すように、垂直板部40と、前記垂直板部40の一面(後側の面、背面)に一体に設けた複数枚の垂直板形状のフィン部43と、から構成されている。
前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部40の他面(前側の面、正面)の固定面から複数枚の前記フィン部43の前側の一部にかけての部分には、逆凹形状の収納溝部が設けられている。前記収納溝部のうち、上側の水平の収納溝部は、第1収納部としての第1収納溝部41を構成する。また、前記収納溝部のうち、右側の垂直の収納溝部の下部は、第2収納部としての第2収納溝部42を構成する。前記収納溝部の代わりに収納凹部でも良い。すなわち、前記第1収納溝部41および前記第2収納溝部42の代わりに、第1収納凹部および第2収納凹部でも良い。第1収納部の前記第1収納溝部41および第2収納部の前記第2収納溝部42は、車両Cの正面から前記レンズ35を見て、前記レンズ35の透視範囲(レンズ35の投影範囲、レンズ35の範囲)内に設けられている。
前記垂直板部40の前側(他面)のうち前記収納溝部の内側には、前記半導体型光源2が前記スクリュー24により固定されている。また、前記垂直板部40の前側(他面)のうち前記収納溝部の外側には、前記レンズ35が前記スクリュー37により固定されている。すなわち、前記スクリュー24、37が前記垂直板部40の前側のスクリュー孔にねじ込まれることにより、前記半導体型光源2および前記レンズ35が取付部材の前記ヒートシンク部材4の前側に取り付けられている。
前記ヒートシンク部材4の複数枚の前記フィン部43の一部、すなわち、複数枚の前記フィン部43の後側の一部であって一側(右側)の内部には、内部収納部44が設けられている。複数枚の前記フィン部43の一側(右側)には、前記駆動部材7の他側(左側)の少なくとも一部を前記内部収納部44中に収納するための開口部45が設けられている。前記垂直板部40の一側(右側)および複数枚の前記フィン部43の前側の一部であって一側(右側)には、前記光制御部材6を前記第1収納溝部41および前記第2収納溝部42中に収納するための開口部46が設けられている。
(駆動部材7の説明)
前記駆動部材7は、図2、図3、図6、図7、図12〜図17に示すように、前記光制御部材6が第1位置と第2位置とに移動(回転、回動)切替可能に取り付けられていて、前記光制御部材6を前記第1位置と前記第2位置とに切り替えて位置させるものである。前記駆動部材7は、ソレノイド70と、連結ピン71と、スプリング72と、から構成されている。
前記ソレノイド70には、小孔を有する進退ロッド73が備えられている。前記ソレノイド70の一側(右側)には、舌形状の2個の固定片74と板形状の取付片76とがそれぞれ一体に設けられている。前記取付片76の一面(前記ソレノイド70側の面)には、回転軸77がX軸方向と平行もしくはほぼ平行にかつ一体に設けられている。前記回転軸77には、前記光制御部材6が前記スプリング72を介して前記第1位置と前記第2位置とに移動切替可能に取り付けられている。前記取付片76の一端には、ストッパ片78が一体に設けられている。
前記ソレノイド70は、前記ヒートシンク部材4の前記内部収納部44中に収納されている。前記固定片74は、前記ヒートシンク部材4にスクリュー75により固定されている。すなわち、前記スクリュー75が前記ヒートシンク部材4のスクリュー孔にねじ込まれることにより、前記駆動部材7が前記ヒートシンク部材4に固定されている。
前記連結ピン71の両端は、前記光制御部材6と前記進退ロッド73とにそれぞれ取り付けられている。前記スプリング72の両端は、回転側(可動側)の前記光制御部材6と固定側の前記カバー部材8とにそれぞれ取り付けられている。この結果、前記ソレノイド70の無通電時においては、図13、図15、図16に示すように、前記スプリング72のスプリング力により、前記進退ロッド73が前進位置に位置していて前記光制御部材6が前記第1位置に位置する。前記ソレノイド70の通電時においては、図14、図17に示すように、前記進退ロッド73が前記スプリング72のスプリング力に抗して後退して後退位置に位置していて前記光制御部材6が前記第2位置に位置する。
(光制御部材6の説明)
前記光制御部材6は、前記駆動部材7に、前記第1位置と前記第2位置とに移動切替可能に取り付けられている。前記光制御部材6は、前記駆動部材7により前記第1位置と前記第2位置とに切り替わって位置する。前記第1位置は、図4、図6、図8(A)、図13、図15、図16に示す状態の位置である。前記第2位置は、図5、図7、図14、図17に示す状態の位置である。
前記光制御部材6は、光遮蔽部60と、光透過部61と、取付部62と、から構成されている。前記光遮蔽部60と前記取付部62とは、光不透過部材から構成されていて、一体構造をなす。前記光透過部61は、光透過部材から構成されていて、前記光遮蔽部60および前記取付部62と別体構造をなす。なお、前記光遮蔽部60と前記光透過部61と前記取付部62とを、光透過部材により一体に構成して、前記光遮蔽部60と前記取付部62とに光不透過塗料などを施したものであっても良い。また、前記光制御部材6は、透明樹脂材と不透明材を一体に構成しても良い。たとえば、前記光透過部61の透明樹脂材と前記光遮蔽部60および前記取付部62の不透明樹脂材とを一体成形し、あるいは、前記光遮蔽部60および前記取付部62の不透明の鋼板に前記光透過部61の透明樹脂材をアウトサート成形する。
(取付部62の説明)
前記取付部62は、中央部が開口したフレーム形状をなす。すなわち、前記取付部62は、中央の開口の周囲の前後(上下)の両端部と左右の両側部とから構成されている。前記取付部62の一側(右側)には、取付片64が一体に設けられている。前記取付片64は、コの字形状をなす。左右の前記取付片64には、円形の透孔63が設けられている。左の前記取付片64には、小孔を有する係止片65が一体に設けられている。
中央の前記取付片64には、第1ストッパ部67が設けられている。右の前記取付片64には、第2ストッパ部68が設けられている。図16に示すように、前記第1ストッパ部67が前記駆動部材7の前記ストッパ片78に当接すると、前記光制御部材6が前記第1位置に位置する。図17に示すように、前記第2ストッパ部68が前記駆動部材7の前記ストッパ片78に当接すると、前記光制御部材6が前記第2位置に位置する。
左右の前記取付片64の前記透孔63は、前記駆動部材7の前記回転軸77に、回転可能に嵌合している。前記回転軸77の先端部には、Eリング69が固定されている。この結果、前記光制御部材6は、前記取付部62および前記スプリング72を介して、前記駆動部材7の前記回転軸77に、前記回転軸77の中心軸(X軸と平行もしくはほぼ平行な軸)O1回りに前記第1位置と前記第2位置との間において回転可能に取り付けられている。前記第1位置と前記第2位置との間の回転角度は、90°以下が好ましい。この例では、約80°である。ここで、前記第1位置に位置するときにおいて、前記光制御部材6の大部分は、前記第1収納溝部41中に収納されていて、前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。
前記取付部62は、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときには、前記光透過部61と共に、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間以外の位置すなわち前記第1収納溝部41中に収納されている。前記取付部62は、前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときには、前記光透過部61と共に、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間に位置する。ここで、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときの前記取付部62の大部分は、前記光透過部61と共に、前記第1収納溝部41中に収納されていて、前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。
(光遮蔽部60の説明)
前記光遮蔽部60は、前記取付部62の一側(右側)に、前記取付片64と共に、上下方向(前後方向)に一体に設けられている。前記光遮蔽部60は、バー形状をなすシェードである。前記光遮蔽部60は、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときには、図6に示すように、前記半導体型光源2と前記補助レンズ部5との間に位置していて前記半導体型光源2から前記補助レンズ部5の前記入射面50に入射する光(周辺光の他の一部)L1を遮蔽する。
前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときの前記光遮蔽部60は、図4、図6、図8(A)に示すように、下記の領域(範囲)内に位置していて、かつ、下記の姿勢の状態にある。すなわち、前記領域は、前記補助レンズ部5の前記入射面50の遮光開始点53と前記半導体型光源2の前記発光面25の最遠点26とを結ぶ線分と、前記補助レンズ部5の前記入射面50の遮光終了点54と前記半導体型光源2の前記発光面25の最近点27とを結ぶ線分と、前記半導体型光源2の前記発光面25の前記最近点27を通る前記レンズ35の前記基準光軸Zに対して平行もしくはほぼ平行な線分(前記半導体型光源2の前記発光面25に対して垂直もしくはほぼ垂直な線分)28と、前記補助レンズ部5の前記入射面50と、により囲まれている領域である。前記姿勢は、前記半導体型光源2の前記発光面25に対して垂直もしくはほぼ垂直(前記レンズ35の前記基準光軸Zに対して平行もしくはほぼ平行)である。
前記光遮蔽部60は、前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときには、図5、図7に示すように、前記半導体型光源2と前記補助レンズ部5との間以外の位置すなわち前記第2収納溝部42中に収納されていて前記半導体型光源2からの光(周辺光の他の一部)L1を前記補助レンズ部5に入射させる。この結果、図18(B)、図19(B)に示すように、前記スポット用配光パターンSPが、車両Cの前方であって前記主レンズ部3から照射される前記ハイビーム用配光パターンHPのほぼ中央部に照射される。ここで、前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときの前記光遮蔽部60の大部分は、前記第2収納溝部42中に収納されていて、前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。
(光透過部61の説明)
前記光透過部61は、前記取付部62の前後および他側(左側)に固定されている板形状をなす。前記光透過部61は、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときには、図4、図6に示すように、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間以外の位置すなわち前記第1収納溝部41中に収納されていて前記半導体型光源2からの光(前記中央光L5および前記周辺光の一部L6)を直接前記主レンズ部3の中央部に入射させる。この結果、図18(A)、図19(A)に示すように、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCが車両Cの前方に照射される。ここで、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときの前記光透過部61の大部分は、前記第1収納溝部41中に収納されていて、前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。
前記光透過部61は、前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときには、図5、図7に示すように、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間に位置していて前記半導体型光源2からの光(前記中央光L5)を透過させて前記主レンズ部3の中央部に入射させる。この結果、図18(B)、図19(B)に示すように、前記ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCが車両Cの前方に照射される。
前記光透過部61は、この例では、プリズム(特開2010−153181号公報に記載のプリズム部材を参照)から構成されている。前記光透過部61は、図18(A)、(B)、図19(A)、(B)に示すように、前記半導体型光源2から放射される光のうち、前記主レンズ部3の中央部に入射する前記中央光L5の光路を変更して、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCと、前記ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCと、を変形させるものである。すなわち、前記光透過部61は、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCの光の一部を、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCのカットオフラインCLから上方に山形形状にせり上げて、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCを前記ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCに変形させるものである。前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCおよび前記ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCは、中央に集中された光から形成されている。
(開口部66の説明)
前記光透過部61の一側(右側)と前記取付部62の一側(右側)との間には、開口部66が形成されている。前記開口部66は、前記光制御部材6が前記第1位置に位置するときには、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間以外の位置すなわち前記第1収納溝部41中に、前記光透過部61の大部分および前記取付部62の大部分と共に収納されている。
前記開口部66は、前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときには、図7に示すように、前記半導体型光源2と前記主レンズ部3との間に、前記光透過部61および前記取付部62と共に位置していて、前記半導体型光源2からの光(前記周辺光の一部L6および前記周辺光の他の一部L1)をそのまま通過させて、前記主レンズ部3の周辺部および前記補助レンズ部5に入射させる。この結果、図18(B)、図19(B)に示すように、前記主レンズ部3の周辺部および前記補助レンズ部5から出射した光は、前記ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPR、および、前記スポット用配光パターンSPとして、車両Cの前方に照射される。
前記光制御部材6が前記第2位置に位置するときには、図7、図18(B)、図19(B)に示すように、前記半導体型光源2からの前記周辺光の一部L6が前記光透過部61の他側(左側)をそのまま通過して前記主レンズ部3の周辺部に入射する。このために、前記ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRは、前記ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRに対して、変形せずにほぼ同等である。この結果、左側の前記開口部66により、前記ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRは、前記ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRとほぼ同等に維持することができる。
前記ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRおよび前記ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRは、左右両側方(路肩側)に拡散された光(側方拡散配光パターンの光)から形成されている。ここで、前記ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCおよび前記ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCと、前記ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRおよび前記ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRと、の境界は、図18に示すように、左右水平方向に約20°前後(約16°〜約24°)である。
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
通常時すなわちソレノイド70が無通電時においては、スプリング72のスプリング力により、進退ロッド73が前進位置に位置していて、かつ、第1ストッパ部67がストッパ片78に当接していて(図16参照)、光制御部材6が第1位置に確実に位置する。このとき、光遮蔽部60は、図6に示すように、半導体型光源2と補助レンズ部5との間に位置している。一方、光透過部61の大部分および取付部62の大部分は、図4に示すように、半導体型光源2と主レンズ部3との間以外の位置すなわち第1収納溝部41中に収納されている。
この通常時において、半導体型光源2の発光チップ20を点灯する。すると、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の中央光L5および周辺光の一部L6は、図6に示すように、直接、主レンズ部3の入射面30から主レンズ部3中に入射する。このとき、入射光は、入射面30において配光制御される。主レンズ部3中に入射した入射光は、主レンズ部3の出射面31から出射する。このとき、出射光は、出射面31において配光制御される。主レンズ部3からの出射光は、図18(A)、図19(A)に示すように、カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンLPとして、車両Cの前方に照射される。
ここで、主レンズ部3の中央部に入射した半導体型光源2の中央光L5は、ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRとして、車両Cの前方に照射される。主レンズ部3の周辺部に入射した半導体型光源2の周辺光の一部L6は、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCとして、車両Cの前方に照射される。
一方、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光L1であって、補助レンズ部5の入射面50に入射しようとする光(周辺光の他の一部)L1は、図6に示すように、半導体型光源2と補助レンズ部5の入射面50との間に位置する光遮蔽部60により遮蔽されている。この結果、通常時においては、図18(A)、図19(A)に示すように、カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンLPが車両Cの前方に照射される。
ここで、光制御部材6が第1位置に位置するときにおいて、光遮蔽部60は、図8(A)に示すように、所定の領域内に位置していて、かつ、半導体型光源2の発光面25に対して垂直もしくはほぼ垂直(レンズ35の基準光軸Zに対して平行もしくはほぼ平行)である。所定の領域とは、前記の通り、補助レンズ部5の入射面50の遮光開始点53と半導体型光源2の発光面25の最遠点26とを結ぶ線分と、補助レンズ部5の入射面50の遮光終了点54と半導体型光源2の発光面25の最近点27とを結ぶ線分と、半導体型光源2の発光面25の最近点27を通るレンズ35の基準光軸Zに対して平行もしくはほぼ平行な線分28と、補助レンズ部5の入射面50と、により囲まれている領域である。この結果、光遮蔽部60は、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光L1であって、補助レンズ部5の入射面50に入射しようとする光(周辺光の他の一部)L1を、確実に遮蔽することができる。
それから、ソレノイド70に通電する。すると、進退ロッド73がスプリング72のスプリング力に抗して後退して後退位置に位置していて、かつ、第2ストッパ部68がストッパ片78に当接していて(図17参照)、光制御部材6が第1位置から第2位置に向かって回転して第2位置に確実に位置する。すなわち、今まで第1収納溝部41中に収納されていた光透過部61が、図5、図7に示すように、半導体型光源2と主レンズ部3との間に位置する。また、今まで半導体型光源2と補助レンズ部5との間に位置していた光遮蔽部60の大部分が、図5に示すように、第2収納溝部42中に収納される。
そして、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の中央光L5は、光透過部61を透過して、その透過光は、図7に示すように、主レンズ部3の入射面30の中央部から主レンズ部3中に入射する。このとき、入射光は、入射面30において配光制御される。主レンズ部3中に入射した入射光は、主レンズ部3の出射面31から出射する。このとき、出射光は、出射面31において配光制御される。主レンズ部3からの出射光は、図18(B)、図19(B)に示すように、ハイビーム用配光パターンHPのうち中央部分HPCとして、車両Cの前方に照射される。
ここで、光透過部61は、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCの光の一部を、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCのカットオフラインCLから上方に山形形状にせり上げて、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCからハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCに変形させる。この結果、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCが光透過部61により変形して、図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCとして、車両Cの前方に照射される。
このために、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCにおいては、車両Cから約5m前方の左側路肩のガードレールの上端の位置P1が含まれていない。これに対して、図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCにおいては、車両Cから約5m前方の左側路肩のガードレールの上端の位置P1が含まれている。この結果、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPと図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPとの切替の節度感が得られる。
一方、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光の一部L6は、図7に示すように、光透過部61の他側(左側)を通過して、主レンズ部3の入射面30の周辺部から主レンズ部3中に入射する。このとき、入射光は、入射面30において配光制御される。主レンズ部3中に入射した入射光は、主レンズ部3の出射面31から出射する。このとき、出射光は、出射面31において配光制御される。主レンズ部3からの出射光は、図18(B)、図19(B)に示すように、ハイビーム用配光パターンHPのうち左右両端部分HPL、HPRとして、車両Cの前方に照射される。
ここで、半導体型光源2からの周辺光の一部L6は、光透過部61の一側(左側)をそのまま通過して主レンズ部3の周辺部に入射する。このために、ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRは、主レンズ部3の周辺部に入射した半導体型光源2からの周辺光の一部L6により形成されるロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRに対して、変形せずにほぼ同等である。この結果、光透過部61の一側(左側)により、ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRは、ロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRとほぼ同等に維持することができる。すなわち、図19(C)に示すように、半導体型光源2からの光を全部ロービーム用配光パターンLPからハイビーム用配光パターンHP1に切り替えた場合のように、ハイビーム用配光パターンHP1の左右両端部分HPL、HPRにおいて、一部分P2が減光して光量が足りなくなるという場合がない。
また、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、今まで光遮蔽部60により遮蔽されていた半導体型光源2の周辺光の他の一部L1は、図7に示すように、取付部62の右側の開口部66を通過して、補助レンズ部5の入射面50から補助レンズ部5中に入射する。このとき、入射光L2は、入射面50において配光制御される。補助レンズ部5中に入射した入射光L2は、補助レンズ部5の反射面51で全反射する。このとき、反射光L3は、反射面51において配光制御される。全反射した反射光L3は、出射面52から出射する。このとき、出射光L4は、出射面52において配光制御される。補助レンズ部5からの出射光L4は、分光色を伴うことなく、図18(B)、図19(B)に示すように、ハイビーム用配光パターンHPのうちスポット用配光パターンSPとして、車両Cの前方であって主レンズ部3から照射されるハイビーム用配光パターンHPのほぼ中央部に照射される。
そして、ソレノイド70への通電を遮断する。すると、進退ロッド73がスプリング72のスプリング力により前進して前進位置に位置していて、かつ、第1ストッパ部67がストッパ片78に当接していて(図16参照)、光制御部材6が第2位置から第1位置に向かって回転して第1位置に確実に位置する。すなわち、今まで半導体型光源2と主レンズ部3との間に位置していた光透過部61が第1収納溝部41中に収納される。また、今まで第2収納溝部42中に収納されていた光遮蔽部60が半導体型光源2と補助レンズ部5との間に位置する。
ここで、図18(A)に示すロービーム用配光パターンLPおよび図18(B)に示すハイビーム用配光パターンHPは、左側の車両用前照灯1Lにより得られる配光パターンを示す。右側の車両用前照灯1Rにより得られるロービーム用配光パターン(図示せず)およびハイビーム用配光パターン(図示せず)は、左側の車両用前照灯1Lにより得られる図18(A)に示すロービーム用配光パターンLPおよび図18(B)に示すハイビーム用配光パターンHPとほぼ左右対称である。すなわち、配光パターンの車両Cの外側の広がり方が左右対称であって、カットオフラインは変わらず、スポット部分は水平方向に平行移動する。そして、左側の車両用前照灯1Lにより得られる図18(A)に示すロービーム用配光パターンLPおよび図18(B)に示すハイビーム用配光パターンHPと右側の車両用前照灯1Rにより得られるロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンを重畳(合成)することにより、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPおよび図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPが形成される。
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、可動光学部品としての光制御部材6と駆動部材7とが1つのモジュール(サブアセンブリ、組立部品)として構成されているので、可動部品と駆動部材とがそれぞれ別個の部品として構成されている車両用前照灯と比較して、駆動部材7により光制御部材6を第1位置と第2位置とに高精度にかつ安定して切り替えることができる。この結果、第1配光パターンのロービーム用配光パターンLPと第2配光パターンのハイビーム用配光パターンHPとを高精度にかつ安定して切り替えることができる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、1つのモジュールとして構成されている光制御部材6および駆動部材7を取付部材のヒートシンク部材4に取り付けるものであるから、それぞれ別個の部品として構成されている可動部品と駆動部材とを取付部材に取り付ける車両用前照灯と比較して、光制御部材6および駆動部材7を取付部材のヒートシンク部材4に簡単に取り付けることができる。この結果、組立性の向上および製造コストの安価化を図ることができる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光制御部材6と駆動部材7とが1つのモジュールとして構成されているので、光制御部材6の作動確認(第1位置と第2位置との間の移動切替の確認)と駆動部材7の作動確認(光制御部材6を第1位置と第2位置とに切り替えて位置させる駆動の確認)とを、1つのモジュールとして容易に行うことができる。この結果、部品管理が容易となり、部品の安定した品質の向上を図ることができる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光制御部材6、駆動部材7をヒートシンク部材4の一側(右側)の開口部46、45を介して、ヒートシンク部材4の第1収納溝部41中および第2収納溝部42中、内部収納部44中にそれぞれ簡単に収納させることができる。これにより、光制御部材6、駆動部材7とヒートシンク部材4とをさらに簡単に取り付けることができる。
特に、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光制御部材6、駆動部材7をヒートシンク部材4の一側(右側、図6、図7中の実線矢印を参照)から収納するものであるから、ヒートシンク部材4の前側に半導体型光源2が取り付けられていて、かつ、ヒートシンク部材4に放熱用のフィン部43が設けられている場合、すなわち、光制御部材6、駆動部材7をヒートシンク部材4の前側(および後側)あるいは上側(および下側)から収納させるのが難しい場合には、最適である。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、主レンズ部3の一側(右側)に設けられている補助レンズ部5が全反射タイプのレンズ部である。このために、ヒートシンク部材4の一側(右側)に取り付けられている光制御部材6、駆動部材7を補助レンズ部5で覆うことにより、正面から見て、光制御部材6、駆動部材7およびスクリュー75などの取付箇所を補助レンズ部5で目隠しすることができる。すなわち、補助レンズ部5の裏側(図10中の破線の範囲参照)にある光制御部材6、駆動部材7およびスクリュー75などの取付箇所は、全反射タイプのレンズ部の補助レンズ部5により、目隠しされる。この結果、見栄えを向上させることができる。
(実施形態1の付随的効果の説明)
以下、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rの付随的効果について説明する。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、駆動部材7で光制御部材6を第1位置に位置させると、光遮蔽部60が半導体型光源2と補助レンズ部5との間に位置していて、半導体型光源2から補助レンズ部5に入射しようとする光L1が遮蔽される。一方、光透過部61が半導体型光源2と主レンズ部3との間以外の位置すなわち第1収納溝部41中に収納されていて、半導体型光源2からの光L5、L6が直接主レンズ部3に入射して主レンズ部3からロービーム用配光パターンLPとして車両Cの前方に照射される。また、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、駆動部材7で光制御部材6を第2位置に位置させると、光透過部61が半導体型光源2と主レンズ部3との間に位置していて、半導体型光源2からの光L5が光透過部61を透過して主レンズ部3に入射して主レンズ部3からハイビーム用配光パターンHP(ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPC)として車両Cの前方に照射される。一方、光遮蔽部60が半導体型光源2と補助レンズ部5との間以外の位置すなわち第2収納溝部42に収納されていて、半導体型光源2からの光L1が補助レンズ部5に入射して補助レンズ部5からスポット用配光パターンSPとして車両Cの前方であって主レンズ部3から照射されるハイビーム用配光パターンHPのほぼ中央部に照射される。このように、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、レンズ直射型のランプユニットにおいて、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとを確実に得ることができる。
その上、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとを切り替える板状の光遮蔽部60が車両Cの内側に配置されている。この結果、ロービーム用配光パターンLP照射時においても、半導体型光源2から放射される光であって、周辺光のうち車両C外側に放射される周辺光L6を、側方拡散配光パターンとして、ロービーム用配光パターンLPの側方(路肩側)すなわち左右両端部分LPL、LPRに広く照射することができる。これにより、側方拡散配光パターンを維持したままで、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとを切り替えることができる。
しかも、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、板状の光遮蔽部60が車両Cの内側に配置されているので、半導体型光源2から放射される光であって、周辺光のうち車両C内側に放射される周辺光L1、すなわち、側方拡散配光パターンとして利用されていない周辺光L1を、ハイビーム用配光パターンHPとして、特に、ハイビーム用配光パターンHPのほぼ中央部のスポット用配光パターンSPとして有効利用することができる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光透過部61により半導体型光源2からの光の一部L5の光路を変更させるものであるから、半導体型光源2から放射される光をハイビーム用配光パターンHPとして確実に有効利用することができる。
しかも、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、単一の半導体型光源2に対して、ロービーム用配光パターンLPを形成する手段が主レンズ部3であり、ハイビーム用配光パターンHPを形成する手段が光透過部61および主レンズ部3であり、ほぼ同一の手段からなるので、すなわち、光透過部61を除いて主レンズ部3からなるので、最適なロービーム用配光パターンLPと最適なハイビーム用配光パターンHPとの双方を容易に得ることができる。
その上、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、半導体型光源2からの光L5を光透過部61および主レンズ部3に透過させてハイビーム用配光パターンHP(ハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPC)を形成するものであるから、光源からの光を第1反射面および第2反射面に反射させて走行ビーム用配光パターンを形成する特許文献2の従来の車両用前照灯と比較して、光の減衰が小さく、その分、明るく効率が良いハイビーム用配光パターンHPが得られる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、半導体型光源2からの光L1が補助レンズ部5の入射面50から補助レンズ部5中に屈折せずに入射し、補助レンズ部5の入射面50から補助レンズ部5中に入射した光L2が補助レンズ部5の反射面51で狙った角度方向に全反射し、補助レンズ部5の反射面51で全反射した反射光L3が補助レンズ部5の出射面52から補助レンズ部5中から外部に屈折せずに出射する。この結果、補助レンズ部5の出射面52から補助レンズ部5中から外部に出射する光L4により形成されるスポット用配光パターンSPにおいては、分光色を伴うことがない。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5とが一体であるから、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5との相対位置精度が高精度となり、主レンズ部3により形成されるハイビーム用配光パターンHPと補助レンズ部5により形成されるスポット用配光パターンSPとの配光精度が向上され、一方、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5との配光設計が容易となる。しかも、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5とが一体となるので、部品点数が軽減され、組付性が向上され、その結果、製造コストを安価にすることができる。
特に、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光制御部材6が第1位置に位置するときにおいて、光遮蔽部60が、図8(A)に示すように、所定の領域内に位置していてかつ半導体型光源2の発光面25に対して垂直もしくはほぼ垂直である。このために、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光L1であって、補助レンズ部5の入射面50に入射しようとする光L1を、光遮蔽部60により遮蔽する際に伴うロービーム用配光パターンLPの光損失を小さくすることができる。
前記の光損失は、図8(A)に示すように、補助レンズ部5の入射面50の遮光開始点53と半導体型光源2の発光面25の最遠点26とを結ぶ線分と、この線分に接する光遮蔽部60の端(前端)と半導体型光源2の発光面25の最近点27とを結ぶ線分と、のなす角度θで表すことができる。この角度θ(すなわち、光損失)は、図8(B)に示す光遮蔽部601の角度θ1(すなわち、光損失)と比較して小さい。図8(B)に示す光遮蔽部601は、前記と同様の所定の領域内に位置していてかつ半導体型光源2の発光面25に対して平行もしくはほぼ平行(レンズ35の基準光軸Zに対して垂直もしくはほぼ垂直)である。
しかも、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光制御部材6が第1位置に位置するときにおいて、光遮蔽部60が、図8(A)に示すように、所定の領域内に位置するので、発光チップ20の発光面25から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光L1であって、補助レンズ部5の入射面50に入射しようとする光(周辺光の他の一部)L1を、光遮蔽部60により確実に遮蔽することができる。
また、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、光透過部61により、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCの光の一部を、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCのカットオフラインCLから上方に山形形状にせり上げて、ロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCからハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCに変形させる。この結果、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCが光透過部61により変形して、図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCとして、車両Cの前方に照射される。
このために、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPの中央部分LPCにおいては、車両Cから約5m前方の左側路肩のガードレールの上端の位置P1が含まれていない。これに対して、図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPの中央部分HPCにおいては、車両Cから約5m前方の左側路肩のガードレールの上端の位置P1が含まれている。この結果、図18(A)、図19(A)に示すロービーム用配光パターンLPと図18(B)、図19(B)に示すハイビーム用配光パターンHPとの切替の節度感が得られる。
しかも、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、左側の開口部66により、ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRがロービーム用配光パターンLPの左右両端部分LPL、LPRとほぼ同等に維持することができる。この結果、ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRにおいて、一部分が減光して光量が足りなくなるという場合がない。すなわち、図19(C)に示すように、半導体型光源2からの光を全部ロービーム用配光パターンLPからハイビーム用配光パターンHP1に切り替えると、ハイビーム用配光パターンHP1の左右両端部分HPL、HPRにおいて、一部分P2が減光して光量が足りなくなるという場合がある。これに対して、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、ハイビーム用配光パターンHPの左右両端部分HPL、HPRにおいて、一部分が減光して光量が足りなくなるという場合がない。
さらに、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、図4に示すように、光制御部材6が第1位置に位置するとき、光透過部61の大部分および取付部62の大部分が第1収納溝部41中に収納されていてヒートシンク部材4の垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。一方、図5に示すように、光制御部材6が第2位置に位置するとき、光遮蔽部60の大部分が第2収納溝部42中に収納されていてヒートシンク部材4の垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。この結果、ランプユニット2、35、4、6、7、8をヒートシンク部材4の垂直板部40の他面(固定面)の範囲内に収めることができ、ランプユニット2、35、4、6、7、8を小型化することができる。
しかも、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、第1収納部の第1収納溝部41および第2収納部の第2収納溝部42が、車両Cの正面からレンズ35を見て、レンズ35の透視範囲(レンズ35の投影範囲、レンズ35の範囲)内に設けられている。この結果、第1収納溝部41中に収納されている光透過部61および取付部62、また、第2収納溝部42中に収納されている光遮蔽部60を、レンズ35その他の部材で覆い隠す必要がない。これにより、レンズ35ひいてはランプユニット2、35、4、6、7、8の正面視を小型化することができ、しかも、覆い隠すための部材を設ける必要がなく、その分、部品点数を軽減することができ、製造コストを安価にすることができる。
その上、この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、図4、図6に示すように、可動部材の光制御部材6の回転中心(中心軸O1)である取付部62の透孔63およびカバー部材8の軸がヒートシンク部材4の収納溝部の左右両側の垂直の収納溝部中に収納されていてヒートシンク部材4の垂直板部40の他面(固定面)よりも後側に位置している。この結果、光制御部材6の光透過部61および取付部62を、隙間が狭い第1収納溝部41中と、隙間が狭い半導体型光源2とレンズ35との間とに、回転させて位置させることができる。これにより、ランプユニット2、35、4、6、7、8の上下方向の寸法および前後方向の寸法を小さくすることができ、ランプユニット2、35、4、6、7、8を小型化することができる。
この実施形態1にかかる車両用前照灯1L、1Rは、カバー部材8を半導体型光源2と一体にヒートシンク部材4に固定し、かつ、そのカバー部材8に光制御部材6を回転可能に取り付けるものである。この結果、半導体型光源2と光制御部材6との間の相対位置のばらつきを小さくすることができる。これにより、ロービーム用配光パターンLPおよびハイビーム用配光パターンHPのばらつきを小さくすることができ、安全走行に貢献することができる。また、半導体型光源2と光制御部材6との寸法公差を緩和させることができ、製造効率が向上して、製造コストを安価にすることができる。
(実施形態2の構成の説明)
図20は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図19と同符号は、同一のものを示す。
前記の実施形態1の車両用前照灯1L、1Rは、光遮蔽部60と光透過部61とから構成されている光制御部材6を使用するものである。この実施形態2にかかる車両用前照灯は、光遮蔽部から構成されている光制御部材を使用するものである。
(実施形態2の作用の説明)
この実施形態2にかかる車両用前照灯は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。まず、光制御部材が第1位置に位置するときには、光遮蔽部が半導体型光源とレンズとの間に位置して、半導体型光源からの光の一部を遮蔽して残りの光をレンズに入射させてそのレンズからロービーム用配光パターンLPとして車両の前方に照射する。つぎに、光制御部材が第2位置に位置するときには、光遮蔽部が半導体型光源とレンズとの間以外の位置に位置して、半導体型光源からの光をそのままレンズに入射させてそのレンズからハイビーム用配光パターンHP2およびホットゾーンHZとして車両の前方に照射する。
(実施形態2の効果の説明)
この実施形態2にかかる車両用前照灯は、以上のごとき構成作用からなるので、前記の実施形態1の車両用前照灯1L、1Rの効果とほぼ同様の効果を達成することができる。特に、この実施形態2にかかる車両用前照灯は、光遮蔽部から構成されている光制御部材を使用するものであるから、構造が簡単であり、その分、製造コストを安価にすることができ、また、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHP2とを簡単に切り替えることができる。
(実施形態1、2以外の例の説明)
この実施形態1、2においては、車両Cが左側通行の場合の車両用前照灯1L、1Rについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両Cが右側通行の場合の車両用前照灯にも適用することができる。
また、この実施形態1、2においては、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5とが一体である。ところが、この発明においては、レンズ35の主レンズ部3と補助レンズ部5とが別体のものであっても良い。
さらに、この実施形態1、2においては、補助レンズ部5を主レンズ部3の右辺(左辺)に1個設けたものである。ところが、この発明においては、主レンズ部3の上辺、左辺(右辺)、下辺に、補助レンズ部を設けても良い。また、補助レンズ部を複数個設けても良い。補助レンズ部を複数個設けた場合においては、スポット用配光パターンSP以外に、手前側用配光パターン、左側用配光パターン、右側用配光パターン、オーバーヘッドサイン用配光パターンを形成して、スポット用配光パターンSPと組み合わせても良い。
さらにまた、この実施形態1、2においては、光制御部材6を第1位置と第2位置との間を回転させるものである。ところが、この発明においては、光制御部材6を第1位置と第2位置との間をスライドさせるものであっても良い。この場合においては、回転軸の代わりに、スライド手段を設ける。
さらにまた、この実施形態1、2においては、駆動部材7としてソレノイド70を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動部材7としてソレノイド70以外の部材、たとえば、モータなどを使用しても良い。この場合においては、モータと光制御部材6との間に駆動力伝達機構を設ける。
さらにまた、この実施形態1、2においては、レンズ35の補助レンズ部5が全反射タイプのレンズ部である。ところが、この発明においては、レンズ35の補助レンズ部が全反射タイプのレンズ部以外のレンズ部、たとえば、屈折タイプのレンズ部やフレネルタイプのレンズ部であっても良い。
さらにまた、この実施形態1、2においては、ヒートシンク部材4の垂直板部40の他面の固定面が平面である。ところが、この発明においては、ヒートシンク部材の垂直板部の他面の固定面のうち、半導体型光源が固定されている固定面とその他の固定面とが段違いであっても良い。
さらにまた、この実施形態1、2においては、ヒートシンク部材4の垂直板部40の他面、すなわち、レンズ35に対向する面のうち、半導体型光源2が固定されている面と、その他の面とがほぼ面一である。ところが、この発明においては、半導体型光源2が固定されている面と、その他の面とが段違いであっても良い。すなわち、半導体型光源2が固定されている面がその他の面に対してレンズ35側に凸形状をなしたりあるいは逆にレンズ35と反対側に凹形状をなしたりしても良い。
さらにまた、この実施形態1、2においては、光制御部材6、駆動部材7をヒートシンク部材4の一側(右側)の開口部46、45を介して、ヒートシンク部材4の第1収納溝部41中および第2収納溝部42中、内部収納部44中にそれぞれ簡単に収納させるものである。ところが、この発明においては、光制御部材6、駆動部材7をヒートシンク部材4の他側(左側)、あるいは、前側、後側、上側、下側からヒートシンク部材4中にそれぞれ簡単に収納させるものであっても良い。