JP6752358B2 - 原子力施設の金属表面の除染方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原子力施設の作動中にて放射性の液体または気体に曝された金属表面を除染するための方法に関する。特に、本発明は、原子炉の一次回路における金属表面であって、クロムを含む放射性金属酸化物層で被われた金属表面を除染するための方法に関する。
原子炉の配管(piping)は、通常、ステンレス鋼または炭素鋼から成る。一次回路の内側に位置する蒸気発生器の管および主たる表面は、ニッケル合金を含み得る。原子炉が運転される際、金属イオンが、これら金属表面から金属イオンが放出され、クーラント(または冷却材、coolant)へと移送される。金属イオンの幾つかは、炉心を通る際に、活性化されてラジオアイソトープを形成する。金属イオンおよびラジオアイソトープの一部は、原子炉の運転の間にて炉水クリーンアップ・システム(RWCU)によって除去される。金属イオンおよびラジオアイソトープの別の部分は、炉冷却システムの内側の金属表面に沈殿し、その後、金属表面で成長する金属酸化物層へと組み込まれることになる。これらの酸化物層は、放射性核種の組み込みを通じ、放射性を帯びたものとなる。炉冷却システムに対する検査、メンテナンス、修理および解体作業を行うに先立って、放射性酸化物層の除去は、人の放射線曝露のレベルを減じるのにしばしば必要である。
要素またはシステムに使用される合金の種類に応じて、金属酸化物層は、二価および三価の鉄を含む混合鉄酸化物、ならびに、クロム(III)およびニッケル(II)スピネルを含む他の金属酸化物種を含んでいる。特に、蒸気発生器の管の金属表面に形成された酸化物沈着物は、高いCr(III)またはNi(II)含量を有し得、それは酸化物沈着物を非常に抵抗性のあるものにし、酸化物沈着物を金属表面から除去し難くする。
原子炉の冷却システムにおける金属表面から放射性腐食生成物を含んだ金属酸化物層を除去するための手法については多く記載がある。商業的に成功している手法は、HP CORD UVとして知られ、Cr(III)からCr(VI)へと変えるために過マンガン酸塩オキシダントの水溶液で金属酸化物層を処理する工程を含んでおり、シュウ酸などの有機酸の水溶液を用いる酸性条件下で金属酸化物層を溶解させることを含んで成る。有機酸は、先行するオキシデーション工程に起因する考えられる過剰な過マンガン酸塩オキシダントを減じるように付加的に作用し、オキシダント溶液中に溶解するCr(VI)を還元してCr(III)とするように作用する。付加的な又は代替的な還元剤は、過マンガン酸塩オキシダントを除去し、Cr(VI)からCr(III)の変換のために添加され得る。
引き続くクリーニング工程では、有機酸および腐食生成物(金属酸化物層に起因する、Fe(II)、Fe(III)、Ni(II)、Co(II)、Co(III)およびCr(III)などの金属イオンおよびラジオアイソトープ)を含有する除染溶液は、イオン交換樹脂に通され、除染溶液からラジオアイソトープおよび金属イオンの幾つか又は全てが除去される。除染溶液における有機酸は、UV照射にさらされ、光触媒的オキシデーションにより分解されて二酸化炭素および水を生じることになるので、除染処理によって生じる放射性廃棄物の量が最小限となる。
クリーニング工程に際しては、除染溶液から腐食生成物が除去される結果、イオン交換体樹脂の廃棄物が通常生じる。腐食生成物に応じて、カチオン交換樹脂および/またはアニオン交換樹脂が除染溶液の浄化に使用される。除染溶液にクロムが存在すると、溶液は、クロム・オキサレートCr(III)(C 3−などのアニオン性クロム錯体を当初含んでいることになる。光触媒的な分解固定が十分な時間で長くされると、除染溶液は、クロメート塩Cr(VI)O 2−などの無機クロム化合物を含み得る。しかしながらクロム・オキサレートは、極めて安定的なキレート錯体であり、しばしば、この手法のみを用いて産業スケールの化学的除染用途の制約に鑑みると、オキサレートの完全な分解を達成することは不可能である。除染溶液が光触媒的オキシデーションによってシュウ酸が消費されたら直ぐに(しかしながら、クロム・オキサレート錯体に結合したシュウ酸の量が完全に分解する前において)、アニオン交換樹脂でクリーニング工程の最後にてアニオン性クロム錯体は取られる。上述の1つに匹敵する除染方法で用いられるシュウ酸、他の有機酸およびクレート剤は、アニオン交換樹脂によって吸収させられ得、最終的な廃樹脂マトリックス中のキレート剤が相当量存在する結果となる。これは、技術的な理由または既存の規制に起因して幾つかの管轄区では望ましくない。
公開されている従来技術を更に分析すると、原子力設備の化学的な除染の間での無機非キレート状態のクロム除去のためのプロセスが提案されていることが分かる。これらのプロセスの多くは、酸化物層のクロムのオキシデーションのための酸化剤としてオゾンを用いている。
例えば、EP1 054 413 B1は、放射性材料を取り扱う施設の要素を化学的に除染するための方法に関している。高いオゾン濃度を有するオゾン・ガスは、電解的プロセスによって生じる。オゾン溶液は、オゾン・ガスをpH6以下の酸性溶液へと注入することによって調製される。50℃〜90℃の温度に加熱されたオゾン溶液は、汚染された対象物へと供給され、酸化溶解プロセスによってクロム酸化物フィルムを酸化して溶解させる。酸化溶解プロセスで使用されるオゾン溶液は、紫外線に照射させられ、オゾン溶液に含まれているオゾンを分解させ、そして、オゾン溶液に含まれるクロメート・イオンを除去すべくイオン交換樹脂に通される。引き続いて、シュウ酸溶液が、汚染された対象物へと供給され、還元的な溶解プロセスによって鉄酸化物フィルムを溶解させる。還元的な溶解プロセス後にシュウ酸溶液に残存するシュウ酸は、シュウ酸溶液へのオゾン注入および紫外線照射によって分解させられ、シュウ酸溶液に含まれるイオンは、イオン交換樹脂によって除去される。
EP1 220 233 B1は、汚染された要素に付着した酸化物フィルムを溶解させる化学的な除染方法に関している。かかる方法は、オゾンが溶解され、オキシデーション添加剤が加えられる除染溶液であって、汚染された要素の金属ベースの腐食を抑制する除染溶液を調製する工程、オキシデーションによって酸化物フィルムを除去すべく汚染された要素に除染溶液を適用する工程を含んでいる。かかる工程で形成されるクロメート・イオンは、アニオン交換樹脂に捕捉される。しかしながら、オキシデーション工程は、シュウ酸を用いる還元除染工程の後においてのみ実施される。
EP2 758 966 B1は、過マンガン酸および鉱酸を含み、回路を流れる水性酸化性除染溶液であって、2.5以下のpH値に設定される水性酸化性除染溶液によって、クロム、鉄、ニッケルおよび放射性核種を含んだ酸化物層を分解する方法に関している。除染溶液は、酸化物層から溶解した放射性物質を除去するためのカチオン交換材に繰り返して通された後、酸化性除染工程で形成されたクロメート・イオンを固定化させるためアニオン交換樹脂に通され、そして、鉱酸が再生成される。かかる方法は、ヘマタイト以外の金属酸化物沈着物を溶解させる有機酸を利用していない。
US4 287 002Aは、少なくとも幾らかの放射性の腐食生成物が、クーラントまたは減速材に曝されており、不溶性金属酸化物(クロム酸化物)を含む原子炉表面から除去および除染される方法に関している。酸不溶性金属酸化物を酸化してより溶解できる状態にすべくオゾン処理され、そして、酸化された溶解された金属酸化物が除去される一方で、他の表面酸化物は低濃度の除染試薬を用いて除去され、原子炉表面が除染される。かかる表面から溶解したクロム酸は、溶液をアニオン交換樹脂と接触させることによって循環水から除去され得る。
EP134 664 B1は、オゾンの溶液を用いて原子炉の冷却システムにおける沈着物のクロムを酸化するプロセスに関する。かかるオゾンの溶液は、0.01〜0.5%の水溶解性セリウム(IV)化合物へと添加、0.1〜0.5%の水溶解性芳香族化合物(芳香族環に少なくとも1つのケトン基を有する水溶解性芳香族化合物)へと添加、または、それら双方への添加から成る。原子炉の冷却システムを除染するプロセスは、クーラントに除染組成物を添加すること、冷却システムとカチオン交換樹脂との間でクーラントを循環させること、アニオン交換樹脂に通すことにより除染組成物を除去すること、温度を40〜100℃に調整すること、オゾンオキシデーションを添加すること、冷却システムを通るようにクーラントを循環させること、温度を少なくとも100℃に上げること、クーラントをアニオン交換樹脂または混合樹脂に通すこと、温度を60〜100℃に調整すること、除染組成物の添加およびその除去を繰り返すことを含んでいる。
水中でのオゾンの極めて限られた半減期に起因して、オゾンに基づくプロセスは、PWR(加圧水炉型)の原子力発電プラントの全システム除染(FSD)に対しての大規模なクロムリッチな酸化物層の除染等には非効率であることが分かっている。補助物質の使用(反応中間体としてのセリウム(IV)の使用)を通じてオゾンの制限を克服しようとするプロセスは、かかる補助的な薬剤に起因して生じる放射性廃棄物の量が相当に多くなってしまう問題がある。これらの薬剤は、硝酸塩または硫酸塩を含んでおり、放射性廃棄物において望ましくないか、および/または、原子力発電プラントの一次回路および補助システムに存在する多くの材料との適合性の懸念が増すことになる。さらに、このようなプロセスの大部分は、有機酸を用いた引き続く処理を伴い、そこでは、クロムがキレート化された状態で存在する。
しかしながら、オゾンに基づくプロセスの主たる不利益な点は、オゾン自体の使用である。オキシデーション工程におけるオゾンの使用は、コストを要し、付加的な別個の投与ステーションおよび設備を要する。なぜなら、オゾンは、現場で調製しなければならず、原子力設備でストック溶液として貯留できないからである。オゾンの更なる不利的な点は、毒性となるその性質であり、まさに毒性ガスに存する。それゆえ、原子力発電プラントの閉鎖された格納器でオゾンが使用されることは、安全的にリスクがあって、非所望な危険があるものとして分類される。このため、液体または非ガス性の代替物であって、関与する人へのガス毒性のリスクを劇的に減じる又は完全に排除する代替物がが非常に好ましい。
液体相として存在する他のオキシダントを用いる従来技術のプロセスは、ガス状オゾンの不利益点を避けるのに適している。しかしながら、かかるプロセスは、無機のキレート・フリーの段階でクロム除去を利用しており、大規模用途の廃棄物低減にとって最適化されていない。
EP2 923 360 B1は、原子力発電プラントのクーラント・システムの酸化物層を有する金属要素の表面に対して化学的除染を施す方法を開示している。かかる方法は、酸化物層が水性酸化溶液で処理される少なくとも1つのオキシデーション工程と、酸化物層が有機酸の水性溶液で処理される引き続く除染工程を含んでいる。有機酸は、金属イオン、特にニッケルイオンと錯体を難溶性析出物の形態で形成できる。除染工程を行うに先立って、カチオン交換樹脂を用いてNi(II)などの金属イオンが酸化溶液から除去される。
かかるプロセスは酸化剤として過マンガン酸塩を使用しているが、キレート・フリーな無機状態のクロムを除去することは考慮されていない。むしろ、オキシデーション処理に際して放出されたクロムが、有機酸処理に際して放出されたクロム(全てのケースでは、キレート錯体として存在するクロム)と同化される。
EP 090 512 A1は、水性流体が循環する配管系の内側面に沈着したクロム含有の腐食生成物を酸化する方法を開示している。かかる方法は、循環流体にフェルレート(VI)塩を加えて、希釈フェルレート溶液を形成し、pH7〜14の維持され、腐食生成物に含まれるクロム化合物と反応させ、クロメートを形成する工程を含んでいる。流体は、オキシデーション反応で形成された生成物および未反応のフェルレート(VI)を除去すべく、アニオン交換樹脂に通され、インシチュ(in situ)で再生される。流体の再生後では、CAN-DECON(商標)の除染プロセスが続いて行われる。
かかるプロセスでは、クロムが、無機の非キレート状態で除去される。しかしながら、かかるプロセスは、多量に使用されたオキシダントおよびフェルレート溶液のpHを維持するのに要した補助薬剤に起因して、過マンガン酸塩に基づくプロセスよりも相当多い量の放射性廃棄物を生じる。また、プロセスは、過マンガン酸塩に基づくプロセスよりも満足のいかない除染の結果であり、より腐食性を呈するものである。引き続いて行われるCAN-DECON溶液を用いた表面処理がオプションとして提案されているが、許容できる除染効果を達成するには、CAN-DECON溶液が必要である。CAN-DECON溶液の再度の使用は、キレート状態のクロムの生成をもたらす結果となる。
それゆえ、発明者らは、HP CORD UVプロセス、または過マンガン酸塩オキシデーション溶液に基づく同様のプロセスが、原子力設備の金属表面(例えば、原子炉の一次回路などの金属表面であって、クロムを含む放射性金属酸化物層で被われた金属表面)の除染のための改良されたプロセスの開発の出発点かつベンチマークを構成するものとなることについて鋭意検討した。従来技術を調べたところ、FSDスケールでの用途に最適化されあた無機のキレート・フリーな状態のクロムを除去するための単一プロセスは存在していないことが分かった。これにつき、従来技術のプロセスは、より腐食性のあるものか、あるいは、毒性ガスの使用でよりリスクがあるものかであり、または、より多くの廃棄物を生じる。これらの技術のいずれも、化学的な除染用途に対して、既知の過マンガン酸塩に基づくHP CORD UVプロセスよりも効果的でより速いものとなっておらず、どれも、キレート・フリーな状態のクロムの効率的な除去を保障できるものでない。
それゆえ、本発明の目的は、全システム除染スケールまでの用途に適した、原子力設備およびその要素のためのコスト効率の良い除染方法であって、放射性廃棄物の省化を可能とし、また、除染処理サイクルの時間の節約を可能とする除染方法を提供することである。
更なる目的として、本発明は、原子力発電プラントの一次冷却システムまたはその要素の化学的除染後にてキレート・フリー(chelate free)なイオン交換材廃棄をもたらす除染方法を提供することも目的とする。
このような目的は、請求項1に記載の除染方法によって達成することができる。本発明の有利で好都合な態様は、互いに独立に組み合わすことができる従属請求項で示されている。
1つの要旨では、原子力施設の作動中に放射性の液体または気体に曝された金属表面であって、クロムおよび放射性物質を含む金属酸化物層で被われた金属表面を除染するための方法であって、
a)クロムをCr(VI)化合物に変え、過マンガン酸塩オキシダント(または過マンガン酸塩の酸化剤、permanganate oxidant)を含んで成るものの付加的な鉱酸は含んでいない水性オキシデーション溶液(または酸化剤溶液、aqueous oxidation solution)にCr(VI)化合物を溶解させるため該水性オキシデーション溶液に金属酸化物層を接触させるオキシデーション工程(または酸化工程、oxidation step)、
b)Cr(VI)化合物を含むオキシデーション溶液は、アニオン交換材に直接的に通し、Cr(VI)化合物をアニオン交換材に固定化する第1洗浄工程、
c)第1洗浄工程の後に続く除染工程であって、オキシデーション工程に付された金属酸化物層を、該金属酸化物を溶解させるための有機酸の水性溶液と接触させ、それによって、有機酸、金属イオンおよび放射性物質を含む除染溶液を形成し、除染溶液は、金属イオンおよび放射性物質を固定化するためのカチオン交換材へと通す除染工程、
d)除染溶液に含まれる有機酸を分解する第2洗浄工程、ならびに
e)オプションとして工程a)〜工程d)を繰り返すこと
を含んで成る、方法が提供される。
本発明は、全システム除染(FSD:Full System Decontamination)までの工業スケールで適用できる安全で信頼性のある化学的な除染プロセスを提供する。かかる除染プロセスは、原子力発電プラントの補助システムを含む完全な一次クーラント回路の同時処理を含んでおり、また、生じる放射性廃棄物において除染薬剤に由来するキレート剤が存在せず、かつ、腐食性鉱酸も存在しない。さらに、除染処理の結果で生じる放射性廃棄物の量は、できるだけ少なく維持され、関連する高い処理コストが減じられることになる。
発明者らは、上記問題を解決する重要なファクターの1つが、クロムに対する化学状態、特にクロムが無機の非キレート状態(inorganic non-chelated state)でプロセス溶液から完全に除去できる状態を達成することに存すると考えた。1つの実行可能なオプションは、クロメートなどのCr(VI)化合物としてクロムを除去することである。
本発明の除染方法は、アニオン交換材によって補足され、そして、有機酸などのキレート剤の存在に起因して付加的な樹脂廃棄物を作ることになる第2洗浄工程において、相当量の有機アニオン性クロム錯体(organic anionic chromium complex)の存在を回避する。クロムは、オキシデーション工程の最後またはその間において既に除去されているので、クロム・オキサレート(chromium oxalate)などのクロム錯体の残留量のみが除染処理サイクルの最後の第2洗浄工程で存在する。かかる残留量の有機アニオン性クロム錯体は、記載されている光触媒的分解などの適当な技術を用いて相当に短い時間で分解されることになり得、あるいは、好ましくはオキシデーション工程から始まる次の処理サイクルへと移され得る。かかるオキシデーション工程では、キレート剤が非常に効果的かつ非常に短い時間で過マンガン酸オキシダントにより完全に分解される。同じプロセスの間で、キレート化されたCr(III)がCr(VI)化合物へと変えられ、次の洗浄工程でキレート・フリーな状態で溶液から除去されることになる。
双方の技術の組み合わせもまた採用することができ、そこでは、光触媒的分解などの技術を用いてある量の有機酸がまず還元され、クロム錯体の残留量分が引き続いて、過マンガン酸塩オキシダントを含んで成るオキシデーション溶液を加えることによって分解される。かかる組合せは、光触媒的分解の技術のみよりも早い処理となり、まるで過マンガン酸塩ベースのオキシデーション溶液のみの添加によってクロム・キレート錯体が分解されるように付加的に生じる廃棄物は少ない。したがって、除染処理サイクルの最後における有機アニオン性クロム錯体の潜在的な存在は、処理サイクルで生じる廃棄物に最小限の影響のみを与える。
本発明の方法は、使用済みのイオン交換材の廃棄物に有機酸またはキレート剤が存在しないことをもたらす。好適な態様では、これは、使用直後のイオン交換材およびキレート物質の注入が行われる前のイオン交換材(あるいは、イオン交換材が除染プロセスの後の段階で有機酸溶液に曝されることがないような他の手法、または適当なバルブ位置などの技術的な制約を通じたイオン交換材)をスライスすることで確かめられる。
さらに、オキシデーション工程の最後またはその間にクロメートまたはジクロメートなどのCr(VI)化合物の形態でクロムがプロセスから除去される場合、クロム錯体の除去と比べてアニオン交換材の消費が相当少なくなる。クロム(VI)化合物は、例えばクロム(III)トリオキサレートの場合などの三価の代わりに1クロム原子あたり一価なものとして、アニオン交換材によって補足される。実際の例でいえば、これは、同じ量のクロム量の除去につき、従来技術の除染プロセスに従った場合では300Lまでのアニオン交換材の消費となるのに対して、アニオン交換材の100Lのみの消費となることを意味している。
さらに、幾つかの国の規制条項は、放射性廃棄物のキレート剤の全量について制限しているので、商業的な従来技術プロセスは、最終的な洗浄工程の間でクロム錯体の分解(例えば、光触媒的なオキシデーションによる分解)を要する。かかる付加的な分解工程は、1処理サイクル当たりで時間(H)オーダーから日(day)オーダーの相当な時間を要する。これに対して、本発明のプロセスは、相当な時間節約になる。なぜなら、Cr(VI)化合物としてクロムの大部分が除去されることに起因して、かかる段階のクロム錯体の量は、キレート酸の注入前の場合と比べて少なくなるからであり、また、洗浄工程後に除染溶液中に存在するクロム残量は次の除染サイクルへと送られ得るからである。次のサイクルの最初においては、クロムは分(minute)のオーダー内で再び酸化され、Cr(VI)化合物を形成し、それは、次いで無機キレート・フリーな状態で補足される。
第2の要旨では、本発明では、放射性液体または気体にさらされた金属表面(クロムおよび放射性物質を含む金属酸化物層で被われた金属表面)の除染から生じた使用済みイオン交換材廃棄物の量を減じる方法が提供される。かかる除染は、複数の処理サイクルを含んで成り、その各処理サイクルは、
金属酸化物層のクロムをCr(IV)化合物へと変えるオキシデーション工程、
アニオン交換材をキレート化有機酸に接触させることなく相当量のCr(IV)化合物をアニオン交換材に固定化させる第1洗浄工程、
第1洗浄工程の後に続く除染工程であって、有機酸、および、金属酸化物層から溶解した金属イオンを含んで成る除染溶液を、金属イオンの固定化のためにカチオン交換樹脂に通すこと、
を含んでおり、
除染溶液に含まれるキレート化されたクロムが次の処理サイクルのオキシデーション工程へと送られる。
発明者らは、本発明の除染方法は、Cr(VI)化合物をキレート化有機酸と接触させる工程を含む除染方法と比べて、使用済イオン交換材廃棄物を20体積%よりも多い割合で減じることができ、好ましくは30体積%よりも多い割合で減じることができ、より好ましくは30体積%〜40体積%多い割合で減じることができる。
好ましくは、本発明の双方の要旨において、アニオン交換材は、無機アニオン交換材である。無機非キレート化状態のクロムの除去を通じて、および、有機酸が存在しないことを通じて、無機アニオン交換材の使用が可能となる。無機アニオン交換材の使用は、有機酸との非適合性に起因して、これまでのところ大規模な化学除染用途に対しては報告された例がない。
さらに、無機アニオン交換材の使用は、過マンガン酸塩からより低い酸化状態のマンガンへと還元してカチオン交換を介したプロセス溶液からの濾過または除去を行う必要がなく、イオン交換機構を通じてプロセス溶液からの過マンガン酸塩の除去を可能とする。無機アニオン交換材を用いて除染工程に先立って過マンガン酸塩を除去することは、カチオン交換を介するマンガン除去と比べて、30%より多い割合で付加的な廃棄物省化となる。かかる方法では、好ましくは40%より多い割合で付加的な廃棄物省化を達成することができ、さらに好ましくは60%より多い割合で付加的な廃棄物省化を達成することができる。さらに、有機酸の添加による過マンガン酸塩の低減に代えて、イオン交換材の残留の過マンガン酸塩の除去は、有機酸の分解に起因した気体状の二酸化炭素の排出を回避し得る。
好ましくは、Cr(VI)化合物は、過マンガン酸塩よりもアニオン交換材に対して高い親和性(affinity)を有する。より好ましくは、Cr(VI)化合物の好ましくは無機のアニオン交換材に対する親和性は、過マンガン酸塩の場合よりも5倍〜10倍高い。このCr(VI)化合物のより高い親和性は、クロムの結合のために利用できるアニオン交換材の量を制限することによって、除染プロセスの過程にて過マンガン酸塩からCr(VI)を分離することを可能とする。
除染方法のかかる特徴は、存在する放射性クロム-51の高い含量に起因して、運転中の原子力発電プラントで特に関心がもたれることであり、あるいは、運転期間に関連する。相当に低い活性含量を有する過マンガン酸塩廃棄物フラクションから高い活性含量を有する廃棄物フラクションの放射性クロム化合物を分離できることは、サイトの適用可能な規制に応じ、廃棄物処理の点で相当な利点を供し得る。
オキシデーション工程に存在する全量のクロムに結合するのに要するアニオン交換材の量は、オキシデーション溶液で分析されるクロムの量に応じて決定することができる。アニオン交換材に最初に固定化される過マンガン酸塩は、イオン交換部に達するとCr(VI)化合物によって置き換えられる。クロム化合物に対するアニオン交換材の選択性は、オキシデーション・プロセスを継続させるのに十分に高いレベルに過マンガン酸塩濃度を維持しつつ、オキシデーション溶液からCr(VI)化合物を除去することを可能とする。
したがって、好適な態様では、オキシデーション工程と第1洗浄工程とが少なくとも部分的に同時に実施されるように、オキシデーション工程の間で既に第1洗浄工程を開始され得る。これは、付加的な時間節約を達成するのに供され得る。
好ましくは、Cr(VI)化合物および過マンガン酸塩オキシダントを含んだオキシデーション溶液をアニオン交換材、好ましくは無機アニオン交換材に通し、少なくともCr(VI)化合物をアニオン交換材料に固定化させる。より好ましくは、オキシデーション溶液は、オキシデーション溶液のCr(IV)濃度が実質的に一定のレベルで安定化する前にてアニオン交換材へと通される。
本発明の構成および操作法は、付加的な目的およびその利点とともに、特定の態様に関する以下の説明から最も良く理解されるであろう。なお、かかる特定の態様は、あくまでも例示の目的であり、本発明の範囲を制限することは意図していない。
好適な態様の詳細な説明
本発明の方法にしたがえば、ラジオアイソトープを含む金属酸化層が、原子力設備の金属表面(特に、原子炉の一次冷却システムに位置する金属表面)から効果的に除去される。一次冷却システム(または、一次冷却系、primary cooling system)は、炉の運転の間で一次クーラントと接触する全てのシステムおよび要素を含むものとして理解される。限定されるわけではないが、一次冷却システムは、原子炉、炉クーラント・ポンプ、配管、および蒸気発生機、ならびに、体積制御システム、減圧ステーション、および炉水クリーンアップシステム(reactor water clean-up system)などの補助システムを含む。
本発明の除染方法は、沸騰水型炉または加圧水型炉における一次冷却システムまたはその要素の除染に特に有用である。好ましくは、本発明の除染方法は、インコネル(商標)600、インコネル(Inconel(商標))690またはインコロイ(Incoloy(商標))800などのニッケル合金の金属表面、および/もしくは、高いクロム含量の材料の金属表面、または、クロム含有材料の大きな面を有する蒸気発生器配管を有して成る原子炉における一次冷却システムまたはその要素の除染に特に有用である。
発明者らは、本発明の方法が、重水炉(限定するわけではないが、CANDU(商標)原子炉または他の重水炉)のクーラントおよび/または減速材(モデレーター、moderator)の回路の除染にも用いることができると考えている。
除染処理は、炉サブシステムおよび要素に行うことができる。好ましくは、本発明の除染方法は、全システム除染として行われる。全システム除染の間、炉の運転中に一次クーラントと接触している炉冷却システムのあらゆる金属表面から、汚染された金属酸化物層が除去されることになる。典型的には、全システム除染は、一次クーラントの回路および蒸気発生器、ならびに、体積制御システム、減圧ステーション、および、ある程度汚染されている考えられる他のシステムの全てのパーツに関与する。
好適な態様では、除染方法は、外部の除染設備を用い、除染薬剤の注入、除染処理のモニタリング、利用可能なイオン交換速度(またはイオン交換割合もしくはイオン交換体割合、ion exchange rate)の増加、除染目標の達成に、より早くより経済的かつ安全な方法で適用することができる。外部除染機器のための複雑で高価な耐圧要素の使用の必要性を排除するために、プロセス温度は、大気圧で水の沸点未満に好ましくは維持される。
除染処理に用いられる薬剤は、クーラント回路の低圧部分に位置付けられた投与ステーション(dosing station)において原子炉の一次クーラント回路に注入することができる。好ましくは、外部除染設備が、除染薬剤の投与のために用いられる。
本発明の除染方法に用いられるイオン交換材および薬剤は、市販のものを利用でき、原子力発電プラント設備で在庫として置いておくことができる。
一般に、金属表面の活性を満足のいくように減じるべく、1またはそれよりも多い除染処理サイクルが行われる。表面活性の低減、および/または、表面活性減に対応する投与の低減は、「除染ファクター」と称される。除染ファクターは、除染処理前の具体的な表面活性を除染処理後の具体的な表面活性で除すこと(又は割ること)によって算出されるか、あるいは、除染処理前の投与速度(または投与割合、dose rate)を除染処理後の投与速度で除すること(又は割ること)によって算出される。
好ましくは、技術的に満足のいく除染処理の除染ファクターは、10よりも多い値である。
以下では、本発明の除染方法における種々の工程につき更に詳細に説明する。
オキシデーション工程
オキシデーション工程を実施するために、除染される一次クーラント回路またはサブシステム内の一次クーラントに過マンガン酸塩オキシダントの水性溶液が注入され、過マンガン酸塩オキシダントを含んで成る水性オキシデーション溶液をシステムを通るように循環させる。好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントが、冷却システムおよび/または減速システムの低圧セクションに注入される。好適な注入位置(injection position)の例としては、体積制御システム、炉水クリーンアップシステム、および/または残熱除去システムを挙げることができる。より好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントの溶液は、外部除染デバイスによって、一次冷却システムまたは減速システム内に導入することができる。
オキシデーション工程は、単なるプレ・オキシデーション工程(mere pre-oxidation step)として行われる。したがって、オキシデーション工程の間において、金属酸化物層は、除染される金属表面に実質的にとどまり、除染されるシステムから活性は除かれない。むしろ、過マンガン酸塩オキシダント酸は、有機酸にほとんど不活性な金属酸化物層のスピネル型の金属酸化物と反応することになる。かかる反応で、酸化物構造が壊れ、スピネル型の金属酸化物がより溶解できる酸化物へと変えられる。金属酸化物層のCr(III)は酸化されて、可溶性のCr(VI)化合物を形成し、かかるCr(VI)化合物は、過マンガン酸ベースのオキシデーション溶液に溶解される。オキシデーション溶液のpH値に応じて、Cr(VI)化合物は、クロム酸、ジクロム酸、および/またはそれらの塩を含んで成り得る。
好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントは、過マンガン酸、HMnO、およびアルカリ金属過マンガン酸塩、ならびに、オプションとしてアルカリ金属水酸化物との組合せから選択される。過マンガン酸は、生じる廃棄がより少なくなるのでアルカリ金属過マンガン酸塩よりも好ましい。しかしながら、金属酸化物層の性質に応じて、金属酸化物層の酸化のために、アルカリ・オキシデーション溶液を使用してもよい。アルカリ・オキシデーション溶液は、過マンガン酸ナトリウムまたは過マンガン酸カリウムなどのアルカリ金属過マンガン酸塩、ならびに、アルカリ金属水酸化物を含んでいてよい。引き続いて行われる除染処理サイクルのオキシデーション工程において、それは酸性のオキシデーション条件とアルカリのオキシデーション条件との間で変更することが有用となり得る。
更に好ましくは、過マンガン酸は、アルカリ金属過マンガン酸塩とカチオン交換樹脂との間のイオン交換反応からの要求に応じて調製される。過マンガン酸は、現場で調製され得るか、あるいは、1〜45g/Lの濃度、好ましくは30〜40g/Lの濃度を有する水性ストック溶液として供され得る。
本発明にしたがえば、硫酸、硝酸、塩酸またはリン酸などの付加的な鉱酸はオキシデーション溶液に加えられない。好ましくは、オキシデーション溶液のpHは2.5以上に維持され、それは唯一のオキシダントとして過マンガン酸を使用して達成され得る。2.5よりも高いpHでオキシデーション工程を実施することは、除染される金属表面の実質的な腐食を回避できる。さらに、オキシデーション溶液に付加的な鉱酸が存在しないことは、FSD操作で害となり得る金属酸化物層の高すぎる溶解速度(または解離速度、溶解割合もしくは解離割合、dissolution rate)を回避できる。
好ましくは、オキシデーション工程は、約20〜120℃の温度で実施され、より好ましくは80〜95℃の温度でオキシデーション工程が実施される。より高い温度では、オキシデーション工程はより速くなる。したがって、より高いオキシデーション温度が好ましい。さらに、大気圧下で過マンガン酸の水性溶液の沸点は95℃よりも高く、それは外部除染デバイスを用いて冷却システムを通るようにオキシデーション溶液を循環させ易くする。
しかしながら、大気圧よりも高い圧力では120℃までの温度にてオキシデーション工程を、外部除染デバイスを用いるか用いないかに拘わらず実施できる。
好ましくは、一次冷却システム内のオキシデーション溶液の過マンガン酸塩オキシダントの濃度は、オキシデーション工程で10〜800mg/kgの範囲、好ましくは50〜200mg/kgの範囲となるように維持される。オキシデーション溶液の過マンガン酸塩オキシダントの濃度が10mg/kgよりも低いと、オキシデーションの反応速度(または反応割合、reaction rate)が低くなりすぎ、幾つかの付加的な注入が必要になり得る。オキシデーション溶液の過マンガン酸塩オキシダントの濃度が800mg/kgを超えると、かなり過度なオキシダントがオキシデーション工程の最後に存在し得、不必要な量の廃棄物をもたらし得る。
好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントの量は、オキシデーション工程の最後でなるたけ少なくなるように制御される。なぜなら、過剰な過マンガン酸塩オキシダントの除去は、二次的な廃棄物(または副的な廃棄物)の量を増加させ得るからである。
好ましくは、オキシデーション溶液に残存する過マンガン酸塩オキシダントの量を制御することによって、そして、過マンガン酸塩ベースのオキシデーション溶液に溶解するCr(VI)の濃度をモニタリングすることによって、オキシデーション工程の進行をモニタリングする。オキシデーション反応が継続し、金属酸化物層のオキシデーションが不完全である限り、過マンガン酸塩オキシダントは消費され続け、多くの場合、Cr(VI)化合物の濃度が増す。
オキシデーション工程の間における冷却システムのオキシデーション溶液の滞留時間は、全システム除染などの大規模で複雑な用途において、複数の時間(H)を含んでおり、好ましくは30時間以上を含んでいる。金属酸化物層の厚さのできるだけ多くがオキシデーション工程で反応することになるように金属酸化物層のオキシデーションの実質的な完了が為されることが望ましい。
好ましくは、オキシデーション溶液にてCr(VI)濃度の更なる増加が測定されなくなると、オキシデーション工程を終了する。より好ましくは、オキシデーション溶液の過マンガン酸塩濃度が安定化したらオキシデーション工程を終了し、付加的には本質的に一定の濃度レベルでオキシデーション溶液の過マンガン酸塩濃度が安定化し、過マンガン酸塩オキシダントがもはや消費されなくなったら、オキシデーション工程を終了する。最も好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントが完全に消費されたらオキシデーション工程を終了する。
Cr(VI)および/またはマンガン酸塩のモニタリングに代えて、またはそれに加えて、オキシデーション溶液におけるラジオアイソトープCr-51の存在をγ線エネルギー分析(gamma spectroscopy)によってモニタリングすることも可能である。
第1洗浄工程
第1洗浄工程では、過マンガン酸塩オキシダントの除去の前または後において、Cr(VI)化合物を含む水性オキシデーション溶液がアニオン交換材に直接的に通される。これは、オキシデーション溶液に存在する少なくともクロメートまたはジクロメートのイオンを補足するためであり、オプションとしては、オキシデーション溶液に依然含まれている過剰な過マンガン酸塩のイオンを補足するためである。オキシデーション溶液をアニオン交換材に直接的に通すことは、第1洗浄工程またはオキシデーション工程の間でカチオン交換が行われないことを意味している。除染プロセスのかかる段階でカチオン交換材に通してオキシデーション溶液を処理することは必要でない。なぜなら、オキシデーション溶液において金属酸化物層から溶解した二価金属イオンまたは活性種の量はむしろ少ないからである。
本発明の除染方法で使用される適当なアニオン交換材は、オキシデーション溶液に存する過酷な酸化条件およびオプションとしての酸性条件に対して耐性があるものである。異なるプロセス工程の具体的な条件に対して最適化された異なるアニオン交換材またはアニオン交換材同士の組み合わせを用いることができる。本発明の除染方法に使用するのに適したアニオン交換材としては、市販のものを利用できる。例えば、LanxessのLevatite(商標)M800、三菱化学のDiaion SA 10AOH、または、PuroliteのNRW 8000を利用できる。アニオン交換材は、外部除染デバイスに含められ得、アニオン交換材が充填された膜またはイオン交換カラムとして構成され得る。別法にて又は付加的に、発明者らは、炉水クリーンアップシステムまたは原子力設備の他の適当な内部システムに存在するアニオン交換材の使用についても考慮している。
本発明の好適な態様では、異なる量のアニオン交換材の迅速な充填および排出(prompt charge and discharge)のために好ましくは構成された外部モジュール内にアニオン交換材が含まれている。より好ましくは、外部モジュールは、外部除染設備の一体的な部分(integral part)である。
第1洗浄工程は、Cr(VI)化合物および/またはオキシデーション溶液からの過マンガン酸塩オキシダントの除去をモニタリングすることで制御される。好ましくは、光度測定によって、参照電極に対するオキシデーション溶液のオキシデーション電位を測定することによって、および/または、機器分析技術(原子吸光分光(AAS)または誘導結合プラズマ(ICP)質量分析など)を介したクロムおよびマンガンの濃度を測定することによって、上記モニタリングが為されて第1洗浄工程が制御される。
アニオン交換材は、アニオン交換樹脂であってよい。好ましくは、アニオン交換材は、原子力設備の発電運転中に用いられるアニオン交換樹脂である。
好適な態様では、アニオン交換材は無機アニオン交換材である。無機アニオン交換材の使用は、過酷な酸化条件に耐性があり、長期の処理期間にわたって化学的に安定である点で利点を有する。
より好ましくは、アニオン交換材は、過マンガン酸塩に対する親和性よりも高いCr(VI)化合物に対する親和性を有している。より好ましくは、アニオン交換材のCr(VI)化合物に対する親和性は、過マンガン酸塩に対する親和性よりも少なくとも5倍〜10倍高い。かかるCr(VI)化合物に対するより高い親和性は、第1洗浄工程の過程の間でCr(VI)化合物を過マンガン酸塩オキシダントから分離することを可能とする。
第1洗浄工程は、オキシデーション工程が終了すると開始され得る。つまり、オキシデーション溶液のCr(VI)濃度の更なる増加を測定できなくなったら、第1洗浄工程が開始され得る。
しかしながら、好適な態様では、第1洗浄工程は、オキシデーション工程の間で既に開示される。好ましくは、Cr(VI)化合物および過マンガン酸塩オキシダントを含む水性オキシデーション溶液はアニオン交換材に通され、好ましくはオキシデーション溶液のクロム濃度が安定化する前に通される。すなわち、オキシデーション溶液でクロム濃度が依然増加している間で、かかる水性オキシデーション溶液がアニオン交換材に通されることが好ましい。したがって、オキシデーション工程と第1洗浄工程とが少なくとも部分的に同時に行われる。これは、付加的な時間節約を達成するのに採用され得る。
より好ましくは、オキシデーション溶液におけるCr(VI)化合物の量は測定され、第1洗浄工程に用いられるアニオン交換材の量が、オキシデーション溶液で測定されたCr(VI)化合物の量に基づいて制御される。さらに好ましくは、アニオン交換材の量は、Cr(VI)化合物のみが実質的に固定化され、オキシデーション溶液の過マンガン酸塩オキシダントの少なくとも一部または実質的に全てを保持することになるように制御される。オキシデーションに含まれるCr(VI)化合物の全てを結合するのに必要とされるよりもわずかに少ないアニオン交換材の使用は、過マンガン酸塩オキシダントがオキシデーション溶液から除去されないことをもたらす。Cr(VI)化合物に対するアニオン交換材のより高い親和性に起因して、アニオン交換材に最初に捕捉された過マンガン酸塩は、アニオン交換材を通されるCr(VI)化合物に取って替わることになる。それゆえ、オキシデーション溶液の過マンガン酸塩オキシダントの濃度が金属酸化物層をさらに酸化させるのに十分に高く維持されている間、Cr(VI)化合物はオキシデーション溶液から選択的に除去される。最も好ましくは、オキシデーション溶液に含まれるCr(VI)化合物の約80〜95重量%、好ましくは85〜100重量%が固定化されるように、アニオン交換材の量が制御される。
過マンガン酸塩オキシダントは、アニオン交換材へのCr(VI)化合物の固定化後であって、分解工程の開始前に、オキシデーション溶液から好ましくは除去される。
さらなる好適な態様では、オキシデーション工程が終了し、過マンガン酸塩オキシダントがオキシデーション溶液から実質的に完全に除去されたら、第1洗浄工程が開始される。かかる態様では、Cr(VI)化合物を含むオキシデーション溶液が、過マンガン酸塩オキシダントの完全な除去後に、アニオン交換材へと通される。
好ましくは、過マンガン酸塩オキシダントの完全な除去は、Cr(VI)化合物のオキシデーション状態を変えることなく、過マンガン酸塩を化学量論的な量またはそれよりも少ない量の還元剤と反応させることで行われる。還元剤は、無機還元剤、あるいは、有機還元剤であってよい。
より好ましくは、還元剤は、過マンガン酸塩オキシダントと反応させられた際に金属カチオンを放出しない化合物である。さらに好ましくは、還元剤は、水素、過酸化水素、ヒドラジン、非キレート化モノカルボン酸(non-chelating monocarboxylic acid)、非キレート化ジカルボン酸(non-chelating dicarboxylic acid)、およびそれらの誘導体から成る群から選択される。
別の態様では、還元剤は、過マンガン酸塩と反応させられた際にそのオキシデーション状態を変える金属カチオンを含んで成り、より好ましくは、鉄(II)およびクロム(III)から成る群から選択されるカチオンを含んで成る。かかる態様は、付加的な廃棄物が生じるのであまり好ましくない。
過マンガン酸塩オキシダントの完全は除去は、電極または他の電気化学的な手段を用いる電気化学的な還元により行われ得る。
上述の還元剤および/または電気化学的還元は、アニオン交換材へのCr(VI)化合物の固定化後であって、分解工程の開始の前において、オキシダント溶液から過マンガン酸塩オキシダントを除去するのに用いてよい。しかしながら、好ましくは、Cr(VI)化合物を含むオキシデーション溶液は、引き続いて行われる除染工程に先立ってはいずれの有機酸とも接触させられない。
さらなる好適な態様では、Cr(VI)化合物および/または過マンガン酸塩オキシダントを除去するのに使用されるアニオン交換材は、決して有機酸溶液にさらされることがなく、第1洗浄工程でも、引き続いて行われる除染処理の工程でも、有機酸溶液にさらされることがない。
アニオン交換材が有機酸にさらされると、アニオン交換材からマンガンが洗い流されてしまうことになる。さらに、クロムは、アニオン交換材から洗い流されて、回避されることがないクロム・キレート錯体を付加的に形成してしまう。第1洗浄工程で用いられるアニオン交換材は、好ましくは、その使用後に直接的に捨てられる。あるいは、好ましくは、除染回路に位置付けられている適当なバルブによって、有機酸を含むプロセス溶液が、第1洗浄工程に用いられるアニオン交換材を介して流れることを防止され、その結果、アニオン交換材の容量が使い尽くされていない場合、後処理サイクルでアニオン交換材の使用を再開できる。
さらに、アニオン交換材が有機酸にさらされることが防止されると、無機アニオン交換材料の使用が容易および/または可能となる。かかる材料は、本発明の第1洗浄工程にとって好適であるものの、除染工程で用いられる有機酸との一般的な非適合性ゆえに化学的除染用途に用いられたとの報告はなされていない。
Cr(VI)化合物の除去が完了したら直ぐに、又は、Cr(VI)化合物の濃度が所定の目標値未満となったら直ぐに、除染工程が開始される。
除染工程
除染工程では、オキシデーション工程に付された金属酸化物層を有機酸の水性溶液と接触させる。有機酸は、除染試薬として作用し、金属酸化物および金属酸化物層に取り込まれている放射性物質と反応する。その結果、除染試薬、金属酸化物層から溶解した1またはそれよりも多い金属イオン、および放射性物質を含む除染溶液が形成される。
好ましくは、有機酸は、それに関連する廃棄物体積を最小限または完全に排除すべく後刻にてインシチュで処理することができる有機酸である。
さらに好適な態様では、除染工程で使用される有機酸は、ギ酸およびグリオキシル酸などのモノカルボン酸、シュウ酸などの脂肪族ジカルボン酸、モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸のアルカリ金属塩、ならびに、それらの混合物から選択される。
さらに好ましくは、有機酸は、炭素原子数2〜6の直鎖脂肪族ジカルボン酸から選択される脂肪族ジカルボン酸である。最も好ましくは、有機酸は、シュウ酸である。
除染工程は、除染溶液に溶解する金属イオンおよびラジオアイソトープを固定化させるべく、除染溶液をカチオン交換材に通すことを更に含んで成る。かかる工程の間では、除染溶液に溶解する全てのカチオン(オキシデーション工程で消費される過マンガン酸塩オキシダントの分解生成物から生じるMn(II)、ならびに、除染溶液に溶解されるラジオアイソトープを含むカチオン)が除染溶液から除去され、カチオン交換材に恒久的に捕捉される。
カチオン交換材は、発電運転の間で原子力発電プラントで用いられているタイプのカチオン交換樹脂であってよく、あるいは、他のいずれの適当なカチオン交換材であってもよい。好ましくは、除染工程で使用されるカチオン交換材は、原子炉の水クリーンアップシステムに存在するカチオン交換樹脂である。
除染溶液に溶解する有機酸は、カチオン交換反応の間において水素イオンの放出によって再生される。それゆえ、有機酸は除染工程で消耗されず、金属酸化物層の溶解のために連続的に用いることができる。したがって、有機酸の準化学量論的な量を用いることができる。金属酸化物層で被われた金属表面の除染は、金属酸化物層の溶解(または溶解度)の減少によって制限されるのみであり、これは、オキシデーション工程で反応する金属酸化物層が除染工程の最後で完全に除去されるといった事実に起因する。それゆえ、残留する金属酸化物層の更なるオキシデーションは、金属酸化物層からの付加的な金属イオンを除染溶液に溶解させるのにしばしば必要とされる。
除染工程のおよびカチオン交換反応の進行は、選択されたラジオアイソトープおよび金属イオンの濃度を測定することでモニタリングできる。サンプルは、除染溶液から採取することができ、原子吸光分光(AAS)または誘導結合プラズマ(ICP)質量分析などの分光法によって分析できる。除染溶液に溶解するラジオアイソトープの量は、種々のγ線エネルギー分析法(高純度ゲルマニウム検出器、ヨウ化ナトリウム検出器など)によって、あるいは、存在するラジオアイソトープの性質に応じて他の適当な手法によって、測定できる。
除染溶液から除去され、カチオン交換材に固定化される金属イオンの量の実質的な増加が測定されなくなったら直ぐに、および/または、イオン交換材で固定化されるラジオアイソトープの活性の更なる増加を測定できなくなったら直ぐに、除染工程を終了させる。
第2(中間または最終の)洗浄工程
除染溶液にさらされた金属酸化物層を可溶化する更なるオキシデーション工程を開始するに先立って、除染溶液から有機酸を除去しなければならない。
例えば、システムをドレインに付してよく、有機酸が完全に除去されるまでシステムを付加的な水で洗い流がす処理を行ってよい。しかしながら、これは、多量の放射性液体廃棄物を生じるので、あまり望まれないオプションである。水は、キレートが生じないように後刻の段階で処理されなければならない。
有機酸は、イオン交換機構によって除去できるものの、有機酸は非所望なキレート含有廃棄物を生じることになる。
別のオプションでは、有機酸は、それを過マンガン酸または別の過マンガン酸塩または酸化化合物(oxidizing compound)と反応させることによって、除染溶液から除去することができる。過マンガン酸塩との反応により有機酸を分解するプロセスは、小さい体積を有する除染システムに好ましくは用いることができ、例えば、孤立した熱交換機などの除染に用いることができる。しかしながら、かかる反応は、金属酸化物層から生じる他の金属カチオンに匹敵する方法で、相当量の過マンガン酸または他の過マンガン酸塩化合物を必要とし、付加的な2次廃棄物(例えば、イオン交換を介して溶液から除去されなければならにマンガン・イオンの形態の2次廃棄物)を生じる。
それゆえ、除染方法の好適な態様は、除染溶液に存在する有機酸の低減のための別の方法(例えば、有機酸の光触媒的オキシデーションなど)を用いる分解工程を有して成る。
有機酸自体の光触媒的または他の手法によるオキシデーションは、付加的な放射性廃棄物を必ずしも生じるわけではない。なぜなら、有機物の分解は、水と二酸化炭素が形成される結果となるからである。それゆえ、適当な分解法を選択することは、かかる段階で不必要な2次的放射性廃棄物の形成を回避できる。
好適な態様では、有機酸は、除染プロセスに際して生じる放射性廃棄物の量に寄与しないオキシダントと反応させられる。好ましくは、有機酸は分解させられ、二酸化炭素および水を形成する。より好ましくは、有機酸は、それと過酸化水素などのオキシダントと反応させられることで分解される。最も好ましくは、同時に除染溶液をUV照射に付しながら有機酸と過酸化水素などのオキシダントと反応させて有機酸を分解させる。
過酸化水素の使用は、市販されており、原子力プラント設備でのストック溶液として貯留できる工業的薬剤であるので、有利である。酸素またはオゾンも有機酸の分解に用いることができるが、これらのオキシダントは付加的な設備を要し、他のリスクに関連するのであまり好ましくない(特にオゾンの場合)。好ましくは、反応速度を上げるために光触媒的なオキシデーションが用いられる。
好ましくは、有機酸の分解の間の除染溶液の温度は、20〜95℃に維持される。
UV光への露光エリアを最大限にすべく好ましくはUVリアクターが除染溶液に浸漬させられ、過酸化水素がUVリアクターの上流側で除染溶液に注入させられ、過酸化水素がUVリアクターに至る前に十分に除染溶液と混合される。
除染溶液への過酸化水素の注入は、UVリアクターの下流側で過酸化水素が測定されないように制御されることが好ましい。
好ましくは、UVリアクターの下流側で過酸化水素は連続的にモニタリングされ、それによって過酸化水素注入の速度(または割合、rate)が調整される。
本発明の適用を通じることで、分解工程の継続は従来技術と比べて減じることができる。これは、溶液中に存在するクロム錯体の量が相当に少ない量となる結果である。従来技術では、オキシデーション段階で放出されたクロム、および、除染工程における金属酸化物層の溶解に際して放出されるクロムの双方とも、共通的にかかる段階で存在する。本発明では、除染工程の間で金属酸化物層から放出されるクロム化合物のみが、有機酸の分解時にプロセス溶液に存在する。
好ましくは、有機酸の分解は、除染溶液が有機酸(キレート錯体にて結合した有機酸を含む)を完全に消耗したら終了する。あまり好ましくないものの、プロジェクト目的および局所的具体的な考慮事項に応じて、溶液中の遊離有機酸の濃度が50mg/kg未満に至るまで除染溶液が消耗されることも可能である。引き続いて行われる処理サイクルにおける過マンガン酸塩消費の増加に起因して遊離有機酸のより高い濃度もより好ましくないものの可能である。
有機酸の分解後の除染溶液に依然存在する有機酸およびクロム錯体の分解に起因するクロメート、例えばCr(III)オキサレート錯体が次のオキシデーション工程へと送られることが好ましい。かかるオキシデーション工程では、残存する量のキレート化有機酸は、それがもし存在するのであれば、過マンガン酸塩オキシダントの作用によって分解され、最終的には残存するCr(III)化合物が酸化されてCr(VI)化合物となる。したがって、第2洗浄工程の結果としてイオン交換材廃棄物へと送られる有機酸またはキレート剤はない。
最終的な洗浄工程では、金属酸化物層が金属表面から完全に除去される場合、および/または、所望の除染ファクターが達成される場合、一次クーラントの伝導性は、最終的な水品質基準が設備ごとに異なり得るが、10μS/cm(25℃)以下となるように制御され得る。好ましくは、最終的な洗浄工程は、70℃以下の温度で行われ、好ましくは60℃以下の温度で行われる。
第2洗浄工程は、除染工程の間において既に開始されてもよい。そして、除染溶液は、カチオン交換樹脂へと送られ、それと同時に有機酸が例えば光触媒的なオキシデーションによって分解される。
第2洗浄工程および/または除染工程における金属イオンおよびラジオアイソトープの除去は、リアクターの低圧部分のバイパス導管で行われてよく、最も好ましくは原子炉の水洗浄システムに存在するカチオン交換カラムを用いて行われる。外部のイオン交換モジュールを用いてもよく、それを、炉水洗浄システムのイオン交換カラムと別に単独で又はそれと並行で用いてよい。
オキシデーション工程、第1洗浄工程、除染工程、および、第2洗浄工程は、除染処理サイクルを構成することになる。これらの工程は、オプションとして、除染方法が2以上の除染処理サイクル、好ましくは2〜5つの処理サイクルを含んで成るように繰り返されてよい。かかる処理サイクル数では、加圧水型炉のサブシステムまたは要素の全システム除染および/または除染において、満足のいく除染ファクターを達成できることが見出されている。とはいうものの、除染処理サイクルの数は、上記の数に限定されておらず、炉設計、放射性汚染のレベル、および除染目的などに依存し得る。
本発明の除染方法は、原子炉の一次クーラント回路の除染に適用されることが好ましい。一次クーラント回路は、燃料束を含む炉心の冷却のため、および、高温のクーラントを蒸気発生器に移送させるのに供されている(なお、蒸気発生器では、一次クーラントからのエネルギーが、その蒸気発生器を通る二次クーラント回路へと伝えられることになる)。
360mのシステム体積を有する一次クーラント・システムの全システム汚染に対して、有機酸としてシュウ酸を用い、唯一のアニオン交換材として原子力発電プラントの運転の間で使用される常套的なアニオン交換樹脂を用い、除染処理サイクルが5サイクルとなる条件で計算を実施した。かかる計算からは、クロム、および、オキシデーション工程で残留クロム・オキサレートを酸化させるべく使用された付加的なマンガンを捕捉させるための樹脂消費は、本発明にしたがっていえば、約1560Lの常套的なアニオン交換樹脂、および、約1400Lの常套的なカチオン交換樹脂であり、トータルが約2960Lの常套的な廃棄物樹脂となることが示された。商業的な従来技術のプロセスを用いて同じシステムを除染処理すると、洗浄工程でクロム・オキサレートを補足するための常套的なアニオン交換樹脂は約4460Lの消費となる。したがって、廃棄物省化は、除染プロセスで用いられる常套的なイオン交換樹脂でトータル約1500Lに相当し、これは、約34体積%の廃棄物省化に相当する。さらに、使用済みのアニオン交換樹脂は、キレート剤が存在しないので、樹脂の処理は相当に簡易化され、それはかかる方法の適用を通じてのみ可能となる。
本発明は、表面の除染方法の態様として、本明細書で説明および図示しているものの、示される詳細によって限定的な意味に解されるものではなく、添付の特許請求の範囲から逸脱するものでない限り、種々の改善および構成の変更を加えてもよい。

Claims (16)

  1. 原子力施設の作動中に放射性の液体または気体に曝された金属表面であって、クロムおよび放射性物質を含む金属酸化物層で被われた金属表面を除染するための方法であって、
    a)クロムをCr(VI)化合物に変え、過マンガン酸塩オキシダントを含んで成るものの付加的な鉱酸は含んでいない水性オキシデーション溶液にCr(VI)化合物を溶解させる水性オキシデーションに対して金属酸化物層を接触させるオキシデーション工程、
    b)Cr(VI)化合物を含むオキシデーション溶液は、アニオン交換材に直接的に通し、Cr(VI)化合物をアニオン交換材に固定化する第1洗浄工程、
    c)第1洗浄工程の後に続く除染工程であって、オキシデーション工程に付された金属酸化物層を、該金属酸化物を溶解させるための有機酸の水性溶液と接触させ、それによって、有機酸、金属イオンおよび放射性物質を含む除染溶液を形成し、除染溶液を、金属イオンおよび放射性物質を固定化するためのカチオン交換材に通す除染工程、
    d)除染溶液に含まれる有機酸が分解される第2洗浄工程、ならびに
    e)オプションとして工程a)〜工程d)を繰り返すこと
    を含んで成る、方法。
  2. オキシデーション溶液に残存する過マンガン酸塩オキシダントの量の制御によって、および/または、オキシデーション溶液中に溶解するCr(VI)化合物の濃度のモニタリングによって、オキシデーション工程の進行をモニタリングする、請求項1に記載の方法。
  3. 異なる量のアニオン交換材が充填および排出されるように構成された外側モジュール内にアニオン交換材を含ませる、請求項1または2に記載の方法。
  4. オキシデーション溶液からCr(VI)化合物および/または過マンガン酸オキシダントが除去されることをモニタリングして第一洗浄工程を制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. アニオン交換材が、無機アニオン交換材である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. アニオン交換材が、過マンガン酸塩オキシダントに対する親和性よりも高いCr(VI)化合物に対する親和性を有しており、Cr(VI)化合物に対するアニオン交換材の親和性が過マンガン酸塩オキシダントに対する親和性よりも5倍〜10倍高い、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 過マンガン酸塩オキシダントをアニオン交換材に固定化することによって、好ましくはCr(VI)化合物の固定化後において、オキシデーション溶液から過マンガン酸塩オキシダントを除去する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 第1洗浄工程がオキシデーション工程の間において開始され、好ましくはCr(VI)化合物および過マンガン酸塩オキシダントを含む水性オキシデーション溶液が、Cr(VI)化合物の濃度がオキシデーション溶液で安定化する前にて、アニオン交換材へと通される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. オキシデーション溶液のCr(VI)化合物の量が決定され、第1洗浄工程で用いられるアニオン交換材の量がオキシデーション溶液で決められたCr(VI)化合物の量に基づいて制御される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. アニオン交換材の量は、Cr(VI)化合物のみを実質的に固定化するように制御され、オキシデーション溶液において過マンガン酸塩オキシダントの少なくとも一部または実質的に全てを保持する、請求項9に記載の方法。
  11. オキシデーション工程が終了すると第1洗浄工程を開始し、該第1洗浄工程に先立って過マンガン酸塩オキシダントをオキシデーション溶液から除去する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  12. 過マンガン酸塩オキシダントと、化学量論的または準化学量論的な量の還元剤とをCr(VI)化合物のオキシデーション状態を変えずに反応させ、過マンガン酸塩オキシダントをオキシデーション溶液から除去し、
    好ましくは還元剤は、過マンガン酸塩オキシダントと反応する際に金属カチオンを放出しない化合物であり、あるいは、好ましくは還元剤が、水素、過酸化水素、ヒドラジン、モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびそれらの誘導体から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 過マンガン酸塩オキシダントが、電気化学的な還元によってオキシデーション溶液から除去される、請求項11に記載の方法。
  14. Cr(VI)化合物を含むオキシデーション溶液は、除染工程に先立って有機酸とは接触させない、請求項1〜11および13のいずれかに記載の方法。
  15. Cr(VI)化合物および/または過マンガン酸塩オキシダントの固定化に用いるアニオン交換材は、有機酸溶液に曝されることがない、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 第二洗浄工程の有機酸の除染後の除染溶液は、クロム錯体の残留量を含み、該クロム錯体が引き続いて行われる除染サイクルのオキシデーション工程へと送られる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
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