[1.小型電動車両の概要]
以下、本発明に係る小型電動車両について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の小型電動車両は、フレームを折り畳むことが可能であり、発進・加速・定速・減速走行が可能な自走制御を実行し、主に健常な高齢者を対象とする電動三輪車である。尚、以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれていることがあり、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
図1や図2に表すように、本実施形態の小型電動車両1は、フロントフレーム11、ハンドルシャフトホルダー13、及びリアフレーム15を備えている。フロントフレーム11の前端部には、ハンドルシャフトホルダー13が第1回動軸D1を軸心として回動可能に軸支されている。
ハンドルシャフトホルダー13の前端部には、ハンドルフレーム17が略水平方向に回動可能に取り付けられている。ハンドルフレーム17の上端部には、ハンドル19が固設されている。一方、ハンドルフレーム17の下端部には、車輪支持フレーム21が固着されている。車輪支持フレーム21には、前輪23が回動可能に支持されている。
フロントフレーム11の後端部には、シートポスト25が一体に連結されている。シートポスト25の上部は筒状になっており、シート支持フレーム27がシートポスト25の筒部に上下移動可能に挿着されている。シート支持フレーム27の上端部には、シート29が固設されている。
シートポスト25の下端部には、ロックハンドル31が第2回動軸D2を軸心として回動可能に軸支されている。ロックハンドル31内には、ロックレバー33が設けられている。
フロントフレーム11の後端部には、リアフレーム15が第3回動軸D3を軸心として回動可能に軸支されている。リアフレーム15の後端部には、前方向に対する左右の両側において、一対の後輪35が回動可能に支持されている。リアフレーム15の下面には、モーター駆動制御ユニット37が取り付けられている。
ハンドルシャフトホルダー13の後部下方には、第1リンクレバー39の前端部が第4回動軸D4を軸心として回動可能に軸支されている。第1リンクレバー39の後端部には、第2リンクレバー41の前端部が第5回動軸D5を軸心として回動可能に軸支されている。第2リンクレバー41の後端部は、リアフレーム15の前端部が第6回動軸D6を軸心として回動可能に軸支されている。
ハンドルシャフトホルダー13の後部には、誘導孔および位置決め溝43が設けられている。誘導孔および位置決め溝43には、位置決めピン45が係合している。位置決めピン45は、フロントフレーム11の前端部に設けられ、不図示のインナーケーブルでロックレバー33に接続されている。さらに、ハンドルシャフトホルダー13の後部には、前方向に対する左右の両側において、一対のフットレスト47が設けられている。
本実施形態の小型電動車両1では、図1に表すように、位置決めピン45が誘導孔および位置決め溝43の下側に設けられた切欠溝(以下、「下側切欠溝」という。)に嵌合されることにより、展開状態が保持(ロック)されている。
図1の展開状態から図2の折畳状態に切換える際は、ロックレバー33を掴んで、ロックレバー33を後方に引張する。これにより、位置決めピン45が、不図示のインナーケーブルを介して、誘導孔および位置決め溝43の下側切欠溝から離間して、フロントフレーム11がハンドルシャフトホルダー13に対して回動自在になる。
次に、ロックレバー33を掴んだ状態でロックハンドル31を、第2回動軸D2を回動中心にリアフレーム15から離間する上方に回動させる。ロックハンドル31が上方に回動すると、ロックハンドル31の爪部31A(図2参照)が第2回動軸D2から離れる。よって、第2回動軸D2に接続されているリアフレーム15は、第6回動軸D6を軸心とするフロントフレーム11に対する回動が可能になる。これにより、本実施形態の小型電動車両1は、折畳可能になる。
ロックレバー33を掴んだ状態でロックハンドル31とハンドルフレーム17、ハンドル19等とを近づけるようにすると、本実施形態の小型電動車両1の自重とも相まって、シートポスト25を介してフロントフレーム11の後端部がハンドルシャフトホルダー13に近づく方向に回動する。
この状態では、フロントフレーム11の位置決めピン45が、誘導孔および位置決め溝43の上側に設けられた切欠溝(以下、「上側切欠溝」という。)と下側切欠溝を繋ぐ誘導孔に位置している。従って、位置決めピン45はフロントフレーム11の回動に伴い、誘導孔および位置決め溝43の下側切欠溝の位置から上側切欠溝の位置へ誘導孔を通って移動する。さらに、フロントフレーム11の回動により、リアフレーム15、第1リンクレバー39、及び第2リンクレバー41も、それぞれに軸支された回動軸によりハンドルシャフトホルダー13に近づく方向に回動移動する。
さらに回動すると、フロントフレーム11の位置決めピン45が誘導孔および位置決め溝43の上側切欠溝側の端面に当接し、フロントフレーム11の回動が抑止される。フロントフレーム11の回動が抑止された状態で、ロックレバー33を放すと、フロントフレーム11の位置決めピン45が誘導孔および位置決め溝43の上側切欠溝に嵌合される。位置決めピン45は、不図示の引っ張りバネの付勢力によりこの位置に保持されているため、フロントフレーム11がこの折畳状態の位置でロックされる。フロントフレーム11の回動により、リアフレーム15、第1リンクレバー39、及び第2リンクレバー41も、それぞれに軸支された回動軸により、さらにハンドルシャフトホルダー13に近づく方向に回動するため、本実施形態の小型電動車両1は図2に表す折畳状態になる。
尚、本実施形態の小型電動車両1では、折畳状態から展開状態に切換える場合は、上記と逆に手順で操作する。
次に、前輪23が備えるブレーキ関係の構成について説明する。図3に表すように、前輪23の内側には、ブレーキディスク49が設けられている。車輪支持フレーム21には、ブレーキディスク49と共にディスクブレーキを構成するフロント用ブレーキキャリパー51が固定されている。
フロント用ブレーキキャリパー51には、右インナーケーブル53の一端部が取り付けられている。右インナーケーブル53は、フロント用ブレーキキャリパー51の駆動源である。また、右インナーケーブル53は、右アウターケーブル57の中を通っている。
次に、前方向に対する右側の後輪35が備えるブレーキ関係の構成について説明する。図4に表すように、後輪35の内側には、ブレーキディスク101が設けられている。リアフレーム15には、後輪35を回動可能に支持する後輪フレーム15Aが設けられている。後輪フレーム15Aには、後輪35を電動駆動させるためのモーター85が固定され、ブレーキディスク101と共にディスクブレーキを構成するリア用ブレーキキャリパー103が固定されている。
リア用ブレーキキャリパー103には、左インナーケーブル105の一端部が取り付けられている。左インナーケーブル105は、リア用ブレーキキャリパー103の駆動源である。また、左インナーケーブル105は、左アウターケーブル109の中を通っている。
尚、上述したブレーキ関係の構成は、前方向に対する右側の後輪35に代え、前方向に対する左側の後輪35に備えてもよい。
次に、ハンドル19について説明する。図5に表すように、ハンドル19は、自転車と同様のバータイプである。ハンドル19には、イグニッションスイッチ59、駆動スイッチ61、モーター作動LED63、速度設定スイッチ65、及び異常表示LED67が設けられている。イグニッションスイッチ59は、自走制御が実行される際に使用されるセレクト型のスイッチである。駆動スイッチ61は、自走制御が実行される際に使用されるモーメンタリ方式の押しボタン型のスイッチである。従って、駆動スイッチ61では、押下操作が続行された操作時にはオン状態が維持され、押下操作が解除された非操作時にはオフ状態が維持される。モーター作動LED63は、自走制御が実行される際に点灯・点滅・消灯のいずれかが行われる表示装置である。速度設定スイッチ65は、自走制御中の最高速度を低速・中速・高速のいずれかに切り替えることができるものである。本実施形態では、低速に切り替えられた際の最高速度は2km/hであり、中速に切り替えられた際の最高速度は4km/hであり、高速に切り替えられた際の最高速度は6km/hである。異常表示LED67は、自走制御が実行される際に異常が生じたときに点灯される表示装置である。自走制御については後述する。
さらに、ハンドル19には、図5視右側(前方向に対する右側)において右ブレーキレバー69が取り付けられ、図5視左側(前方向に対する左側)において左ブレーキレバー71が取り付けられている。
右ブレーキレバー69には、右アウターケーブル57の他端部が接続されており、さらに、右アウターケーブル57の中を通っている右インナーケーブル53(図3参照)の他端部が取り付けられている。
また、右ブレーキレバー69には、前輪ブレーキスイッチ55が設けられている。前輪ブレーキスイッチ55は、右インナーケーブル53のストロークを検出対象とし、右インナーケーブル53のストローク変位が第1所定距離以上の場合にオン動作する。
右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置に移動すると、右インナーケーブル53のストローク変位が第1所定距離に等しくなり、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作する。右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)に移動しても、右インナーケーブル53のストローク変位が第1所定距離より大きいので、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作する。
前輪ブレーキスイッチ55がオン動作中は、フロント用ブレーキキャリパー51(図3参照)が作動する。従って、前輪23(図3参照)にブレーキをかける際には、運転者は右ブレーキレバー69を深く握り込むことにより、右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置又は右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)に移動させる。
左ブレーキレバー71には、左アウターケーブル109の他端部が接続されており、さらに、左アウターケーブル109の中を通っている左インナーケーブル105(図4参照)の他端部が取り付けられている。
また、左ブレーキレバー71には、後輪ブレーキスイッチ73が設けられている。後輪ブレーキスイッチ73は、左インナーケーブル105のストロークを検出対象とし、左インナーケーブル105のストローク変位が第2所定距離以上の場合にオン動作する。
左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置に移動すると、左インナーケーブル105のストローク変位が第2所定距離に等しくなり、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作する。左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)に移動しても、左インナーケーブル105のストローク変位が第2所定距離より大きいので、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作する。
後輪ブレーキスイッチ73がオン動作中は、リア用ブレーキキャリパー103(図4参照)が作動する。従って、後輪35(図4参照)にブレーキをかける際には、運転者は左ブレーキレバー71を深く握り込むことにより、左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置又は左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)に移動させる。
次に、シート29について説明する。図6に表すように、シート支持フレーム27の上端部に設けられたシート29には、着座センサー77が内設されている。着座センサー77は、シート29に作用する圧力を検知し、所定値以上の圧力を検知中にオン動作する。本実施形態では、運転者がシート29に着座すると、シート29に所定値以上の圧力が作用することから、着座センサー77がオン動作する。
次に、モーター駆動制御ユニット37について説明する。図7に表すように、モーター駆動制御ユニット37は、CPU79、タイマー80、ROM81、及びRAM83を備えている。CPU79は、本実施形態の小型電動車両1全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU79には、タイマー80、ROM81、及びRAM83が接続されている。タイマー80は、本実施形態の小型電動車両1全体の制御を実行するための計時を行う計時装置である。尚、タイマー80に代えて、CPU79の内蔵タイマーを使用してもよいし、ソフトウエアを使用してもよい。ROM81には、各種のプログラム等が記憶されている。例えば、自走制御で使用されるプログラムや速度曲線(加速走行・定速走行・減速走行の各曲線)等は、ROM81に記憶されている。RAM83には、CPU79のデータ処理に必要なデータが一時的に記憶される。
また、CPU79には、前輪ブレーキスイッチ55、後輪ブレーキスイッチ73、イグニッションスイッチ59、駆動スイッチ61、速度設定スイッチ65、着座センサー77、加速度センサー107、ジャイロセンサー111、モーター回転数検出部86、モーター作動LED63、及び異常表示LED67が接続されている。加速度センサー107は、本実施形態の小型電動車両1の加速度を検知し、加速度を検知中にオン動作する装置であり、例えば、モーター駆動制御ユニット37内に取り付けられている。ジャイロセンサー111は、本実施形態の小型電動車両1の角度(姿勢)、つまり、水平方向に対する傾き角度(以下、「傾き角度」という。)を検出する計測装置であり、例えば、モーター駆動制御ユニット37内に取り付けられている。モーター回転数検出部86は、モーター85の回転数を検出する計測装置であり、例えば、モーター85に取り付けられている。モーター回転数検出部86の具体例としては、例えば、ホールセンサーやエンコーダ等がある。さらに、CPU79には、モーター85が接続されている。モーター85は、不図示のバッテリーを駆動源とし、前方向に対する右側の後輪35(図4参照)を電動駆動させる。尚、モーター85は、後輪35の両輪又は前輪23を電動駆動させるものであってもよい。
[2.自走制御]
以下、本実施形態の小型電動車両1で実行される自走制御について、図8及び図9を参照しつつ説明する。
先ず、小型電動車両1が停車中における自走制御の発進シーケンスについて説明する。図8に表すように、段階A1では、駆動スイッチ61がオン状態中において、下記(1)〜(5)のいずれかの状態が成立している。(1)運転者がシート29に着座していない等のため、着座センサー77がオフ動作になっている。(2)小型電動車両1が静止していない等のため、加速度センサー107がオン動作になっている。(3)小型電動車両1の傾斜が大きい等のため、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外にある。(4)運転者等によって右ブレーキレバー69を深く握り込む操作が行われたため、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作になっている。(5)運転者等によって左ブレーキレバー71を深く握り込む操作が行われたため、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作になっている。このような場合には、運転者が押下操作を続行して駆動スイッチ61のオン状態が維持されても、モーター85の駆動制御は行われないため、小型電動車両1の停車が保たれる。尚、上記(1)〜(5)の状態の一部又は全部が重複した場合でも、同様である。
これに対して、段階A2では、駆動スイッチ61がオフ状態中において、下記(6)〜(10)の全ての状態が成立している。(6)運転者がシート29に着座しているため、着座センサー77がオン動作になっている。(7)小型電動車両1が静止しているため、加速度センサー107がオフ動作になっている。(8)小型電動車両1の傾斜が小さい等のため、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲内にある。(9)運転者によって右ブレーキレバー69から指を離す操作等が行われたため、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作になっている。(10)運転者によって左ブレーキレバー71から指を離す操作等が行われたため、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作になっている。
このような場合において、運転者が押下操作を行うことにより駆動スイッチ61がオフ状態からオン状態に切り替えられると共に、運転者が押下操作を続行することにより駆動スイッチ61のオン状態が維持されると、モーター85の駆動制御が開始される。このモーター85の駆動制御により、後輪35(図4参照)が電動駆動されるので、小型電動車両1が発進し、小型電動車両1の自走速度が最高速度になるまで一律に加速する加速走行が行われる。そして、小型電動車両1の自走速度が最高速度に到達すると、小型電動車両1が最高速度で自走する定速走行が行われる。
本実施形態では、段階A2の発進時において、速度設定スイッチ65により最高速度が低速に設定されているので、小型電動車両1は、0km/hから2km/hまで一律に加速走行したのちに2km/hで定速走行する。
尚、図8には表されていないが、発進時において、速度設定スイッチ65により最高速度が中速に設定されている場合には、小型電動車両1は、0km/hから4km/hまで一律に加速走行したのちに4km/hで定速走行する。或いは、発進時において、速度設定スイッチ65により最高速度が高速に設定されている場合には、小型電動車両1は、0km/hから6km/hまで一律に加速走行したのちに6km/hで定速走行する。
また、段階A2では、2km/hで定速走行の自走時において、速度設定スイッチ65により最高速度が低速から中速に切り替えられると、小型電動車両1は、2km/hから4km/hまで一律に加速走行したのちに4km/hで定速走行する。その4km/hで定速走行の自走時において、速度設定スイッチ65により最高速度が中速から高速に切り替えられると、小型電動車両1は、4km/hから6km/hまで一律に加速走行したのちに6km/hで定速走行する。
尚、図8には表されていないが、2km/hの定速走行の自走時において、速度設定スイッチ65により最高速度が低速から高速に切り替えられると、小型電動車両1は、2km/hから6km/hまで一律に加速走行したのちに6km/hで定速走行する。
また、2km/hまでの加速走行時において、速度設定スイッチ65により最高速度が低速から中速に切り替えられると、小型電動車両1は、4km/hまで一律に加速走行したのちに4km/hで定速走行する。或いは、4km/hまでの加速走行時において、速度設定スイッチ65により最高速度が中速から高速に切り替えられると、小型電動車両1は、6km/hまで一律に加速走行したのち6km/hで定速走行する。
また、小型電動車両1の発進後においては、上記(7)の状態(加速度センサー107がオフ動作になっていること)を除き、上記(6)、(8)〜(10)の全ての状態が成立している場合には、駆動スイッチ61のオン状態が維持されている限り、小型電動車両1の加速走行又は定速走行が続行される。
次に、小型電動車両1が自走中における自走制御の走行シーケンスについて、図9を用いて説明する。図9では、説明の便宜上、小型電動車両1の最高速度は、速度設定スイッチ65により高速の6km/hに設定されている。尚、低速の2km/h又は中速の4km/hに設定されていても、同様な走行シーケンスが適合する。
図9に表すように、段階B1では、モーター85の駆動制御が行われており、小型電動車両1が最高速度(6km/h)で定速走行中である。このような場合において、運転者が駆動スイッチ61の押下操作を解除することにより、駆動スイッチ61がオン状態からオフ状態に切り替えられると共に、駆動スイッチ61のオフ状態が維持されると、モーター85の駆動制御により、小型電動車両1の減速走行が行われる。減速走行とは、小型電動車両1の自走速度が予め定められた最低速度(本実施形態では、速度設定スイッチ65で設定される低速の2km/hより遅い速度)になるまで一律に減速することである。尚、図9には表されていないが、小型電動車両1が加速走行中であっても、同様にして、減速走行が行われる。
段階B2では、小型電動車両1の自走速度が最低速度に到達すると、モーター85への電力供給が遮断されて、モーター85の駆動制御が止められる。このような場合には、モーター85が惰性で回転し続けるフリーラン状態になり、摩擦抵抗等によって、小型電動車両1の自走速度は遅くなっていく。
段階B3では、モーター85がフリーラン状態である場合において、運転者が押下操作を行うことにより駆動スイッチ61がオフ状態からオン状態に切り替えられると共に、運転者が押下操作を続行することにより駆動スイッチ61のオン状態が維持されると、モーター85の駆動制御が再開される。このモーター85の駆動制御により、後輪35(図4参照)が電動駆動されるので、小型電動車両1が再加速し、小型電動車両1の自走速度が最高速度(6km/h)になるまで一律に加速する加速走行が行われる。そして、小型電動車両1の自走速度が最高速度(6km/h)に到達すると、小型電動車両1が最高速度(6km/h)で自走する定速走行が行われる。
このような場合においても、運転者が駆動スイッチ61の押下操作を解除することにより、駆動スイッチ61がオン状態からオフ状態に切り替えられると共に、駆動スイッチ61のオフ状態が維持されると、上記段階B1と同様にして、小型電動車両1の減速走行が行われる。
尚、図9には表されていないが、駆動スイッチ61がオン状態中、つまり、小型電動車両1が加速走行中又は定速走行中においても、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外になれば、小型電動車両1の減速走行が行われる。但し、−10°以上から+10°以下の範囲は、一例であって、これに限るものでない。
段階B4では、小型電動車両1の自走速度が最低速度に到達する前において、運転者によって右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71を深く握り込む操作が行われることにより、前輪ブレーキスイッチ55又は後輪ブレーキスイッチ73がオン動作になると、モーター85への電力供給が遮断されて、モーター85の駆動制御が止められる。このような場合には、モーター85がフリーラン状態になる。
同時に、フロント用ブレーキキャリパー51又はリア用ブレーキキャリパー103の作動が開始される。つまり、前輪ブレーキスイッチ55のオン動作中は、右ブレーキレバー69の握込操作によってフロント用ブレーキキャリパー51が作動するので、フロント用ブレーキキャリパー51による機械的制動を前輪23にかけることができる。又は、後輪ブレーキスイッチ73のオン動作中は、左ブレーキレバー71の握込操作によってリア用ブレーキキャリパー103が作動するので、リア用ブレーキキャリパー103による機械的制動を後輪35にかけることができる。
尚、図9の段階B4では、記載の便宜上、運転者によって右ブレーキレバー69及び左ブレーキレバー71を同時に深く握り込む操作が行われることにより、前輪ブレーキスイッチ55及び後輪ブレーキスイッチ73が同時にオン動作になる場合が記載されているが、操作(オン動作)が同時に行われる必要はない。
また、図9には表されていないが、駆動スイッチ61がオン状態中であっても、つまり、小型電動車両1が加速走行中又は定速走行中であっても、運転者によって右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71を深く握り込む操作が行われることにより、前輪ブレーキスイッチ55又は後輪ブレーキスイッチ73がオン動作になれば、モーター85の駆動制御が止められてモーター85がフリーラン状態になり、フロント用ブレーキキャリパー51又はリア用ブレーキキャリパー103の機械的制動が行われる。
段階B5では、フロント用ブレーキキャリパー51又はリア用ブレーキキャリパー103の機械的制動により、小型電動車両1の自走速度が0km/hに到達し、小型電動車両1が停止されると、加速度センサー107がオフ動作になる。また、運転者によって右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71から指を離す操作が行われることにより、前輪ブレーキスイッチ55又は後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作になる。さらに、運転者がシート29から離れることにより、着座センサー77がオフ動作になる。
尚、本実施形態の機械的制動は、上述したように、左右のアウターケーブル57,109によってフロント用ブレーキキャリパー51又はリア用ブレーキキャリパー103を作動させることで行われている。このようにして、フロント用ブレーキキャリパー51又はリア用ブレーキキャリパー103の作動は、ワイヤーによって行われているが、電気又は油圧等によって作動させてもよい。
尚、図9の段階B5でも、記載の便宜上、運転者によって右ブレーキレバー69及び左ブレーキレバー71から同時に指を離す操作が行われることにより、前輪ブレーキスイッチ55及び後輪ブレーキスイッチ73が同時にオフ動作になる場合が記載されているが、操作(オン動作)が同時に行われる必要はない。
また、図9には表されていないが、モーター85の駆動制御が止められることにより、モーター85がフリーラン状態になっている場合には、上記(1)の状態(着座センサー77がオフ動作になっていること)、上記(7)の状態(加速度センサー107がオフ動作になっていること)、上記(9)の状態(前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作になっていること)、又は上記(10)の状態(後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作になっていること)のいずれかが成立していれば、図8の段階A1に移行される。
以上より、運転者は、左右のブレーキレバー69,71から指を離す操作を行うと共に、駆動スイッチ61の押下操作を続行すれば、本実施形態の小型電動車両1を電動駆動によって発進・加速走行・定速走行させることができる。その後、運転者は、駆動スイッチ61の押下操作を解除すれば、本実施形態の小型電動車両1を電動駆動によって最低速度まで減速走行させることができる。さらに、電動駆動中の運転者は、駆動スイッチ61の押下操作が行われているか否かに関係なく、右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71を深く握り込む操作を行えば、電動駆動が止められ、本実施形態の小型電動車両1を機械的制動によって減速又は停車させることができる。尚、本実施形態の小型電動車両1が減速して自走速度が最低速度になるときも、電動駆動が止められる。
次に、本実施形態の小型電動車両1で実行される自走制御のプログラムについて、図10乃至図18に表すフローチャートを用いて説明する。自走制御のプログラムは、ROM81に記憶されており、CPU79により実行される。
図10に表すように、CPU79は、この自走制御のプログラムの実行を開始し、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを判別する(S101)。ここで、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S101:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S101)。又は、イグニッションスイッチ59がオン動作されている場合には(S101:YES)、CPU79は、電源供給をオンする(103)。
その後、CPU79は、CPU79自身の異常を確認する(S105)。そして、CPU79自身に異常がある場合には(S107:YES)、CPU79は、異常表示LED67を点灯させ(S109)、CPU79自身の異常を再び確認する(S105)。
又は、CPU79自身に異常がない場合には(S107:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを判別する(S111)。このとき、異常表示LED67が点灯していれば、CPU79は、異常表示LED67を消灯させる。
ここで、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S111:NO)、CPU79は、後述する図18に記載されたS701の処理を行う。又は、イグニッションスイッチ59がオン動作されている場合には(S111:YES)、CPU79は、着座センサー77がオン動作されているか否かを判別する(S113)。
ここで、着座センサー77がオフ動作されている場合には(S113:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、着座センサー77がオン動作されている場合には(S113:YES)、CPU79は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されているか否かを判別する(S115)。
ここで、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合には(S115:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されている場合には(S115:YES)、CPU79は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されているか否かを判別する(S117)。
ここで、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合には(S117:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されている場合には(S117:YES)、CPU79は、モーター回転信号がオフであるか否かを判別する(S119)。この判別は、モーター回転数検出部86の出力信号に基づいて行われる。
ここで、モーター回転信号がオンである場合には(S119:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、モーター回転信号がオフである場合には(S119:YES)、CPU79は、加速度センサー107がオフ動作されているか否かを判別する(S121)。
ここで、加速度センサー107がオン動作されている場合には(S121:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、加速度センサー107がオフ動作されている場合には(S121:YES)、CPU79は、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲内にあるか否かを判別する(S123)。
ここで、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外にある場合には(S123:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲内にある場合には(S123:YES)、CPU79は、駆動スイッチ61がオン状態にあるか否かを判別する(S125)。
ここで、駆動スイッチ61がオフ状態にある場合には(S125:NO)、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、駆動スイッチ61がオン状態にある場合には(S125:YES)、CPU79は、図11に表すように、モーター加速処理を行う(S127)。
モーター加速処理では、CPU79は、ROM81に記憶の速度曲線(加速の曲線)に基づいて、モーター85の駆動制御を行うことにより、小型電動車両1の加速走行を行う。このとき、小型電動車両1が停車中であれば、小型電動車両1の発進が行われる。
その後、CPU79は、モーター作動LED63を点灯させ(S129)、検出処理を行う(S131)。
検出処理では、図12に表すように、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを判別する(S1001)。ここで、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S1001:NO)、CPU79は、後述する図18に記載されたS701の処理を行う。又は、イグニッションスイッチ59がオン動作されている場合には(S1001:YES)、CPU79は、着座センサー77がオン動作されているか否かを判別する(S1003)。
ここで、着座センサー77がオフ動作されている場合には(S1003:NO)、CPU79は、後述する図17に記載されたS601の処理を行う。又は、着座センサー77がオン動作されている場合には(S1003:YES)、CPU79は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されているか否かを判別する(S1005)。
ここで、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合には(S1005:NO)、CPU79は、後述する図16に記載されたS501の処理を行う。又は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されている場合には(S1005:YES)、CPU79は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されているか否かを判別する(S1007)。
ここで、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合には(S1007:NO)、CPU79は、後述する図16に記載されたS501の処理を行う。又は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されている場合には(S1007:YES)、CPU79は、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲内にあるか否かを判別する(S1009)。
ここで、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外にある場合には(S1009:NO)、CPU79は、図14に記載されたS401の処理を行う。又は、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲内にある場合には(S1009:YES)、CPU79は、駆動スイッチ61がオン状態にあるか否かを判別する(S1011)。
ここで、駆動スイッチ61がオフ状態にある場合には(S1011:NO)、CPU79は、図14に記載されたS401の処理を行う。又は、駆動スイッチ61がオン状態にある場合には(S1011:YES)、図11に表すように、CPU79は、モーター85の回転数を確認する(S133)。この確認は、モーター回転数検出部86の出力信号に基づいて行われる。
そして、CPU79は、モーター85の回転数が設定回転数未満であるか否かを判別する(S135)。設定回転数とは、速度設定スイッチ65により設定された速度に対応するモーター85の回転数であり、ROM81に記憶されている。本実施形態では、速度設定スイッチ65により低速(2km/h)に設定された場合には、モーター85の回転数は708rpmである。中速(4km/h)に設定された場合には、モーター85の回転数は1416rpmである。高速(6km/h)に設定された場合には、モーター85の回転数は2123rpmである。尚、これらの回転数は、モーター85の減速比と駆動輪(本実施形態では、後輪35)の径とにより決まるものであるから、これらの数値に限定されるものでない。
ここで、モーター85の回転数が設定回転数未満である場合には(S135:YES)、つまり、速度設定スイッチ65で設定された速度に比べて小型電動車両1の自走速度が遅い場合には、CPU79は、検出処理を再び行う(S131)。又は、モーター85の回転数が設定回転数以上である場合には(S135:YES)、つまり、速度設定スイッチ65で設定された速度に比べて小型電動車両1の自走速度が速い場合には、図13に表すように、CPU79は、モーター定速処理を行う(S201)。
モーター定速処理では、CPU79は、ROM81に記憶の速度曲線(定速の曲線)に基づいて、モーター85の駆動制御を行うことにより、速度設定スイッチ65で設定された速度を自走速度とした小型電動車両1の定速走行を行う。
その後、CPU79は、検出処理を行う(S203)。この検出処理(S203)は、上述した図12に記載の検出処理と同様である。従って、駆動スイッチ61がオン状態にある場合には(S1011:YES)、図13に表すように、CPU79は、モーター85の回転数を確認する(S205)。
そして、CPU79は、モーター85の回転数と設定回転数との差が設定回転数の−10%以上から+10%以下の範囲内にあるか否かを判別する。ここで、モーター85の回転数と設定回転数との差が設定回転数の−10%以上から+10%以下の範囲内にある場合には(S207:YES)、CPU79は、検出処理を再び行う(S203)。又は、モーター85の回転数と設定回転数との差が設定回転数の−10%以上から+10%以下の範囲外にある場合には(S207:NO)、図14に表すように、CPU79は、モーター再加速処理を行う(S301)。
モーター再加速処理では、CPU79は、ROM81に記憶の速度曲線(加速の曲線)に基づいて、モーター85の駆動制御を行うことにより、小型電動車両1の加速走行を行う。尚、図10乃至図18に表すフローチャートに従えば、小型電動車両1が停車中のときは、モーター再加速処理は行われない。
その後、CPU79は、モーター作動LED63を点灯させ(S303)、検出処理を行う(S305)。
この検出処理(S305)は、上述した図12に記載の検出処理と同様である。従って、駆動スイッチ61がオン状態にある場合には(S1011:YES)、図14に表すように、CPU79は、モーター85の回転数を確認する(S307)。
そして、CPU79は、モーター85の回転数が設定回転数未満であるか否かを判別する(S309)。ここで、モーター85の回転数が設定回転数未満である場合には(S309:YES)、つまり、速度設定スイッチ65で設定された速度に比べて小型電動車両1の自走速度が遅い場合には、CPU79は、検出処理を再び行う(S305)。又は、モーター85の回転数が設定回転数以上の場合には(S309:NO)、つまり、速度設定スイッチ65で設定された速度に比べて小型電動車両1の自走速度が速い場合には、図14に表すように、CPU79は、上述した図13に記載のモーター定速処理を行う(S201)。
次に、図15に記載のモーター減速処理(S401)が行われる場合について説明する。CPU79は、上述したように、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外にある場合(S1009:NO)、又は駆動スイッチ61がオフ状態にある場合には(S1011:NO)、図15に記載されたモーター減速処理を行う(S401)。
モーター減速処理では、CPU79は、ROM81に記憶の速度曲線(減速の曲線)に基づいて、例えば、モーター85の駆動制御を行うことにより、小型電動車両1の減速走行を行う。尚、小型電動車両1の減速走行時には、回生制動又は相間短絡等の電動制動が行われてもよい。
その後、CPU79は、モーター作動LED63を点滅させ(S403)、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを判別する(S405)。
ここで、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S405:NO)、CPU79は、後述する図18に記載されたS701の処理を行う。又は、イグニッションスイッチ59がオン動作されている場合には(S405:YES)、CPU79は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されているか否かを判別する(S407)。
ここで、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合には(S407:NO)、CPU79は、後述する図16に記載されたS501の処理を行う。又は、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されている場合には(S407:YES)、CPU79は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されているか否かを判別する(S409)。
ここで、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合には(S409:NO)、CPU79は、後述する図16に記載されたS501の処理を行う。又は、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されている場合には(S409:YES)、CPU79は、駆動スイッチ61がオフ状態にあるか否かを判別する(S411)。
ここで、駆動スイッチ61がオン状態にある場合には(S411:NO)、CPU79は、上述した図14に記載のモーター再加速処理を行う(S301)。又は、駆動スイッチ61がオフ状態にある場合には(S411:YES)、CPU79は、モーター85の回転数を確認する(S413)。
そして、CPU79は、モーター85の回転数が設定回転数以下であるか否かを判別する(S415)。尚、S415での設定回転数とは、これまで(S135,S207,S309)の設定回転数とは異なり、ROM81に予め記憶された最低速度(本実施形態では、速度設定スイッチ65で設定される低速の2km/hより遅い速度)に対応する、モーター85の回転数をいう。
ここで、モーター85の回転数が設定回転数より多い場合には(S415:NO)、つまり、最低速度に比べて小型電動車両1の自走速度が速い場合には、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S405)。又は、モーター85の回転数が設定回転数以下である場合には(S415:YES)、つまり、最低速度に比べて小型電動車両1の自走速度が遅い場合には、CPU79は、図16に表すように、モーター停止処理を行う(S501)。
モーター停止処理では、CPU79は、不図示のバッテリーの電力供給線からモーター85を切り離すことにより、モーター85をフリーラン状態にする。尚、CPU79は、上述したように、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合(S1005:NO)、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合(S1007:NO)、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合(S407:NO)、又は後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合には(S409:NO)にも、モーター停止処理を行う。
その後、CPU79は、モーター作動LED63を消灯させ(S503)、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを判別する(S505)。
ここで、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S505:NO)、CPU79は、後述する図18に記載されたS701の処理を行う。又は、イグニッションスイッチ59がオン動作されている場合には(S505:YES)、CPU79は、着座センサー77がオン動作されているか否かを判別する(S507)。
ここで、着座センサー77がオフ動作されている場合には(S507:NO)、CPU79は、上述した図10に記載のS111の処理、つまり、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、着座センサー77がオン動作されている場合には(S507:YES)、CPU79は、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されているか否かを判別する(S509)。
ここで、前輪ブレーキスイッチ55がオフ動作されている場合には(S509:NO)、CPU79は、上述した図10に記載のS111の処理、つまり、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、前輪ブレーキスイッチ55がオン動作されている場合には(S509:YES)、CPU79は、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されているか否かを判別する(S511)。
ここで、後輪ブレーキスイッチ73がオフ動作されている場合には(S511:NO)、CPU79は、上述した図10に記載のS111の処理、つまり、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、後輪ブレーキスイッチ73がオン動作されている場合には(S511:YES)、CPU79は、加速度センサー107がオン動作されているか否かを判別する(S513)。
ここで、加速度センサー107がオフ動作されている場合には(S513:NO)、CPU79は、上述した図10に記載のS111の処理、つまり、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S111)。又は、加速度センサー107がオン動作されている場合には(S121:YES)、CPU79は、この図16に記載のS505の処理、つまり、イグニッションスイッチ59がオン動作されているか否かを再び判別する(S505)。
次に、図17に記載のタイマー作動処理(S601)が行われる場合について説明する。CPU79は、上述したように、着座センサー77がオフ動作されている場合には(S1003:NO)、図17に記載されたタイマー作動処理を行う(S601)。
タイマー作動処理では、CPU79は、タイマー80を使用して計時を開始する。
その後、CPU79は、着座センサー77のオフ動作の継続時間がタイマー設定時間以上であるか否かを判別する(S603)。この判別では、上述したS601のタイマー80による計時結果が利用される。尚、タイマー設定時間は、ROM81に予め記憶されている。
ここで、着座センサー77のオフ動作の継続時間がタイマー設定時間未満である場合には(S603:YES)、CPU79は、運転者がシート29に着座しているとして、上述した図11に記載の検出処理(S131)を行う。又は、着座センサー77のオフ動作の継続時間がタイマー設定時間以上である場合には(S603:YES)、CPU79は、運転者がシート29から離れているとして、上述した図15のモーター減速処理(S401)を行う。
このようにして、着座センサー77がオフ動作した際の対応がなされることにより、小型電動車両1が加速走行中、定速走行中、又は再加速走行中における、着座センサー77のチャタリング対策が施されている。
次に、CPU79は、イグニッションスイッチ59がオフ動作されている場合には(S111:NO,S1001:NO,S405:NO,S505:NO)、上述したように、図18に記載のモーター停止処理を行う(S701)。モーター停止処理は、上述した図16に記載のモーター停止処理(S501)と同様である。
その後、CPU79は、モーター作動LED63等のLEDを消灯し(S703)、RAM83等のメモリーをリセットする(S705)。さらに、CPU79は、電源供給をオフし(S707)、CPU79自身を待機モードにして、この自走制御のプログラムの実行を終了する。
[3.−1 加速走行時と定速走行時のまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、自走の開始に当たり、運転者は、右ブレーキレバー69及び左ブレーキレバー71から指を離す操作等を行うと共に、駆動スイッチ61の押下操作を続行する。これにより、右ブレーキレバー69のストローク量が第1所定距離未満となり(S115:YES)、左ブレーキレバー71のストローク量が第2所定距離未満となり(S117:YES)、及び駆動スイッチ61がオン状態に維持される(S125:YES)。このような状況に応じて、モーター85の駆動制御が行われることにより(S127,S201)、本実施形態の小型電動車両1は、速度設定スイッチ65の設定速度まで加速走行を行ったのちに、速度設定スイッチ65の設定速度を自走速度とした定速走行を行う。
つまり、運転者は、駆動スイッチ61を押下操作するだけで、小型電動車両1の加速走行又は定速走行を行わせることができる。よって、本実施形態の小型電動車両1は、自走操作中の運転者に疲労感を与えることがない。また、駆動スイッチ61の押下操作及び左右のブレーキレバー69,71から指を離す操作等によって、運転者の意思に合わせた加速走行又は定速走行が行える。
本実施形態の小型電動車両1では、自走中の運転者が、右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71を深く握り込む操作を行う場合がある。このような場合には、右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置又は符号69Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)にあるときに、右ブレーキレバー69のストローク量が第1所定距離以上となる(S1005:NO,S407:NO)。或いは、左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置又は符号71Aに示された位置より図5視下側(ハンドル19側)にあるときに、左ブレーキレバー71のストローク量が第2所定距離以上となる(S1007:NO,S409:NO)。
このような状況に応じて、本実施形態の小型電動車両1では、右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71による機械的制動が行われる(S509:YES,S511:YES)。よって、駆動スイッチ61の押下操作が行われるか否かに関係なく、今まで慣れ親しんだ左右のブレーキレバー69,71の握込操作により、小型電動車両1を減速又は停車させることができるので、安全性が確保される。
以上より、本実施形態の小型電動車両1では、操作性及び安全性が向上する。
[3.−2 機械的制動時のまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、右ブレーキレバー69又は左ブレーキレバー71による機械的制動が行われる際には(S509:YES,S511:YES)、モーター85への電力供給が遮断されてモーター85がフリーラン状態になっているので(S501)、効率的な機械的制動が行われる。
[3.−3 減速走行時のまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、自走中の運転者が左右のブレーキレバー69,71から指を離す操作等を行っていると、右ブレーキレバー69のストローク量が第1所定距離未満となり(S1005:YES)、左ブレーキレバー71のストローク量が第2所定距離未満となる(S1007:YES)。このような場合において、運転者は、駆動スイッチ61の押下操作を解除して、駆動スイッチ61をオフ状態にすると(S1011:NO)、モーター85の駆動制御が行われることにより(S401)、最低速度まで減速走行する(S415:NO)。
つまり、運転者は、左右のブレーキレバー69,71を操作することなく、駆動スイッチ61の押下操作を解除するだけで、小型電動車両1の減速走行を行わせることができる。よって、本実施形態の小型電動車両1では、駆動スイッチ61の押下操作を解除することによって、急停止することなく、運転者の意思に合わせた減速走行が行える。
本実施形態の小型電動車両1では、モーター85は、最低速度まで減速することに応じて、電力供給が遮断されてフリーラン状態になる(S415:YES,S501)。よって、小型電動車両1の自走速度が最低速度未満である場合には、今まで慣れ親しんだ左右のブレーキレバー69,71の握込操作によって、急停止することなく、小型電動車両1を減速又は停車させることができる。
[3.−4 ジャイロセンサーのまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、ジャイロセンサー111で検出した傾斜角度が−10°以上から+10°以下の範囲外である場合には、発進時にあっては、モーター85の駆動が禁止され(S123:NO)、自走時にあっては、モーター85の駆動制御が行われることにより、最低速度まで減速走行する(S1009:NO,S401,S415:NO)。よって、発進時又は自走時の安定条件として、小型電動車両1の水平方向に対する傾き角度を利用することが可能である。
[3.−5 駆動スイッチとブレーキレバーの位置関係のまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、駆動スイッチ61が右ブレーキレバー69に隣接して設けられている。運転者は、駆動スイッチ61を押下する操作を行う際は、図19(a)に表すように、親指で駆動スイッチ61を押下する。このような場合には、親指以外の4本の指は、例えば、ハンドル19に設けられたグリップ113を握っており、右ブレーキレバー69から離れている。一方、運転者は、右ブレーキレバー69を握り込む操作を行う際は、例えば、図19(b)に表すように、親指でグリップ113を握ると共に、親指以外の4本の指で右ブレーキレバー69を握り込む。
このようにして、本実施形態の小型電動車両1では、駆動スイッチ61が右ブレーキレバー69の周辺に設けられており、右ブレーキレバー69と駆動スイッチ61とを運転者の操作対象として容易に切り替えることができるので、操作性をより向上させることが可能である。また、駆動スイッチ61が右ブレーキレバー69に隣接して設けられているので、運転者は、自転車の操作に慣れていれば、右ブレーキレバー69を操作すると同時に、駆動スイッチ61を操作することは難しい。尚、図示はしないが、駆動スイッチ61が左ブレーキレバー71の周辺に設けられた場合でも、同様である。
[3.−6 着座判別のまとめ]
本実施形態の小型電動車両1では、着座センサー77がオン動作されているか否かによって、運転者がシート29から離れているか否かを判別し(S113)、運転者がシート29から離れている場合には(S113:NO)、自走制御プログラムを進行させることが禁止される。よって、シート29に運転者が着座していない状態でモーター85の駆動が実行されることを防止できる。
[4.その他]
本実施形態の小型電動車両1では、自走制御プログラムにおいて、モーター停止処理(S501)が行われると、モーター85は、例えば、インバータから電力供給が遮断される技術等によって、フリーラン状態(惰性回転)になる。つまり、モーター85による自走が終了すると、モーター85で駆動される後輪35が自由に回転できる状態になる。従って、本実施形態の小型電動車両1では、モーター85による自走が終了すると、前輪23及び一対の後輪35を自由に回転させることにより移動できるので、緊急時や折畳状態時等の移動が容易である。
ちなみに、本実施形態において、右ブレーキレバー69は、「ブレーキレバー」の一例である。右ブレーキレバー69が符号69Aに示された位置にあるときのレバー操作量は、「所定操作量」の一例である。左ブレーキレバー71は、「ブレーキレバー」の一例である。左ブレーキレバー71が符号71Aに示された位置にあるときのレバー操作量は、「所定操作量」の一例である。速度設定スイッチ65で低速に切り替えられたときの最高速度である2km/h、中速に切り替えられたときの最高速度である4km/h、又は高速に切り替えられたときの最高速度である6km/hは、「第1所定速度」の一例である。予め設定された最低速度(本実施形態では、速度設定スイッチ65で設定される低速の2km/hより遅い速度)は、「第2所定速度」の一例である。傾斜角度が−10°以上から+10°以下である範囲は、「所定範囲」の一例である。シート29は、「座席」の一例である。
[5.変更例]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態の小型電動車両1では、押しボタン型の駆動スイッチ61に代えて、図20に表すようなテープスイッチ115を使用してもよい。このような場合には、ハンドル19に設けられたグリップ113において、右ブレーキレバー69に対向するようにして、テープスイッチ115が設けられる。運転者は、テープスイッチ115をオン状態にする操作を行う際は、例えば、図20(a)に表すように、親指でグリップ113を握ると共に、親指以外の4本の指でグリップ113をテープスイッチ115を介して握り込む。これにより、運転者は、親指を立てることなく、テープスイッチ115を押下状態にすることが可能である。一方、運転者は、右ブレーキレバー69を握り込む操作を行う際は、例えば、図19(b)に表すように、親指でグリップ113を握ると共に、親指以外の4本の指で右ブレーキレバー69を握り込む。尚、図示はしないが、テープスイッチ115は、左ブレーキレバー71の周辺に設けられてもよい。
また、本実施形態の小型電動車両1では、モーメンタリ方式の押しボタン型の駆動スイッチ61に代えて、図21に表すような、同方式の押しボタン型の駆動スイッチ117を使用してもよい。このような場合には、ハンドル19に設けられたグリップ113において、地面に対向するように、つまり、図21の紙面の奥側に、駆動スイッチ117が設けられる。運転者は、駆動スイッチ117を押下する操作を行う際は、例えば、図21(a)に表すように、親指でグリップ113を握ると共に、親指以外の4本の指の先等で駆動スイッチ117を押下する。一方、運転者は、右ブレーキレバー69を握り込む操作を行う際は、例えば、図21(b)に表すように、親指でグリップ113を握ると共に、親指以外の4本の指で右ブレーキレバー69を握り込む。尚、図示はしないが、駆動スイッチ117は、左ブレーキレバー71の周辺に設けられてもよい。
また、本実施形態の小型電動車両1では、モーメンタリ方式の駆動スイッチ61に代えて、オルタネイト方式の駆動スイッチを使用してもよい。
また、本実施形態の小型電動車両1は、図22に表すように、着座センサー77とCPU79との間にディレイタイマー119を備えてもよい。ディレイタイマー119は、着座センサー77の出力信号について、運転者がシート29から離れていると判別される動作の継続時間が所定時間未満であることを示す信号を無効とする。よって、例えば、シート29に着座している運転者が腰を一瞬浮かしたり、小型電動車両1が振動すること等により、着座センサー77の出力信号にチャタリングが発生した場合において、着座センサー77の出力信号に基づく自走制御プログラムの進行不能を防止することができる(S113:NO)。これにより、操作性が向上する。ちなみに、ディレイタイマー119は、「誤検知防止部」の一例である。
また、本実施形態の小型電動車両1は、前方向の障害物を見つけ出すためのセンサーを備えてもよい。そのセンサーは、レザーセンサー、超音波センサー、又はカメラセンサー等であり、前方向を遮らない箇所に装着される。これにより、安全性が向上する。
また、本実施形態では、前輪ブレーキスイッチ55のみを使用して自走制御プログラムを実行させてもよいし、或いは、後輪ブレーキスイッチ73のみを使用して自走制御プログラムを実行させてもよい。
また、本実施形態では、左右のブレーキレバー69,71の手動操作による制動は、左右のアウターケーブル57,109等を介して行われるが、ブレーキフルードの油圧等を介して行われてもよい。また、フロント用ブレーキキャリパー51及びリア用ブレーキキャリパー103は、ドラムブレーキ等に置き換えられてもよい。
また、本実施形態では、左右のブレーキレバー69,71に代えて、ブレーキペダルを備えてもよい。
また、本実施形態の小型電動車両1は、速度を測定するための速度センサーを備えてもよい。その速度センサーで測定された速度は、自走制御プログラムの実行中において、モーター85の回転数に代えて使用される(S133,S135,S205,S207,S307,S309,S413,S415)。
また、本実施形態の小型電動車両1は、最低速度を切り替えるための設定スイッチをハンドル19等に備えてもよい。この設定スイッチによって、自走制御中の最低速度を低速・中速・高速のいずれかに切り替えるようにしてもよい。尚、最低速度は、0km/hとしてもよい。
また、本実施形態では、速度設定スイッチ65で高速に切り替えられた際の自走制御中の最高速度は、6km/hであるが、6km/hより速くてもよい。