JP6750778B2 - パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
パラミロン誘導体の製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程と、アモルファス化されたパラミロンをカルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭化水素化合物と不均一反応させる反応工程とを有する。
前処理工程は、反応原料となるパラミロン(以下、「原料パラミロン」ともいう。)の前処理工程であって、パラミロンをアモルファス化する工程である。パラミロンは、光合成産物としてユーグレナが生産するβ−1,3−グルカンであり、通常は、球状、扁平球状又は円盤状の粒子として生産される。パラミロンは、高結晶状態にあるため、水やアルコールに溶解しないがアルカリ水溶液には可溶である。
反応工程は、前処理工程で得られたアモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されており、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数が20以下の炭化水素化合物とを不均一反応させる工程である。これにより、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたパラミロン誘導体を得ることができる。
上記した実施形態の製造方法で得られるパラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数20以下、好ましくは炭素数10以下、より好ましくは6以下のアルキル基で置換されている。該アルキル基は、炭素数が1以上、2以上又は3以上とすることができる。より好ましくは、該アルキル基が、カルボキシル基を有し炭素数が6以下である。なお、パラミロン誘導体は、複数のグルコースユニットを有しているが、それらのうちの少なくとも1つのグルコースユニット中の少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、上記したアルキル基で置換されていればよい。
A=CNaOH×VNaOH
DScm=162.14×A/(m−58×A)
なお、CNaOHは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度(0.01mol/L)であり、VNaOHは、中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積(単位:mL)であり、mは、カルボキシメチルパラミロン(ナトリウム塩)の質量(単位:g)である。
ナノファイバーの製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程、アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素の少なくとも1つがハロゲンで置換された、炭素数が20以下の脂肪酸とを不均一反応させてパラミロン誘導体を得る反応工程、及び、パラミロン誘導体を水中で攪拌する製造工程、を有する。前処理工程は、上記のとおりであるから、ここでは記載を省略する。
反応工程は、炭素数が20以下の飽和又は不飽和脂肪酸を用いること以外は、上記と同じである。中でも、炭素数が10以下の飽和脂肪酸を用いることが好ましく、炭素数が6以下の飽和脂肪酸を用いることがより好ましい。反応工程で得られるパラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒロドキシル基の水素原子がカルボキシル基を1つ有する、炭素数が20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体である。
製造工程は、パラミロン誘導体を水中で攪拌してナノファイバーを得る工程である。水中で攪拌することで、パラミロン誘導体を構成する、数本の高分子鎖が凝集した束の全部又は一部がほぐれて、水中へ適度に分散したナノファイバーを形成する。水は、精製水、純水又は超純水等を用いることができる。水中のパラミロン誘導体の濃度は、特に限定されないが、例えば1mg/mL以上50mg/mL以下とすることができる。この範囲の濃度の場合、ナノファイバー間の相互作用が過剰に大きくなることを防ぎ、その結果、水に溶解しないまたは分散しないナノファイバーの数を抑制することができる。攪拌時間は、特に限定されなないが、パラミロン誘導体を水中に適度に分散させる点で、およそ1時間以上30時間以下とすることができる。製造工程は、通常は、常温、常圧で行うことができる。後述する実施例に記載するように、このナノファイバー水分散液を凍結乾燥させた後、得られた固体を走査電子顕微鏡で観察することで、ナノファイバーが形成されていることを確認することができる。
上記のように製造されるナノファイバーは、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基が、カルボキシル基を有する炭素数が20以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体からなる。パラミロン誘導体におけるアルキル基の置換度は、グルコースユニット1つあたり0.001以上、好ましくは、0.01以上であり、1.0以下、好ましくは0.8以下である。中でも、置換度が、0.07以上0.78以下であるナノファイバーは、水相でナノファイバー構造を維持することができる。また、置換度が0.015以上0.07以下であるナノファイバーは、水相及び固相でナノファイバー構造を維持することができる。
実施例1〜4では、前処理工程を中和法で行った。
(前処理工程:中和法)
原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した後、室温で攪拌しながら、1.0mol/Lの塩酸水溶液を10mL滴下して不透明なゲル状固体を得た。遠心分離機(コクサン社製、型番:H−19α)を用いて遠心分離し、上澄み液をデカンテーションして除去した。得られた固体を水35mLで1分間洗浄し、遠心分離して上澄み液を除去した。この精製工程を3回繰り返した後、得られた固体を30mLのエタノールで5分間、攪拌洗浄した。吸引濾過により溶媒を除去した後、湿った状態の固体を得た。
上記で得られた湿った固体5.11gを、2−プロパノール15mL中に分散した後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加して不均一混合液とした。この混合液を室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸588mg(6.22mol)を、30分間で3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離して上澄み液をデカンテーションして除去した。生成物を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、17時間)、凍結乾燥させて、実施例1のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、337mg;1.68mmol、収率54.2%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.41〜4.26(m),4.16〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3309,2914,1590,1427,1372,1317,1263,1204,1064,1041,884,562
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.41
前処理工程で用いる洗浄用アルコールとして、エタノールに替えて2−プロパノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸588mg(6.22mmol)から、実施例2のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、388mg;1.94mmol、収率62.9%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.41〜4.28(m),4.18〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3247,2878,1587,1419,1336,1318,1259,1178,1068,1036,887,532
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.40
前処理工程における洗浄時間を、5分に替えて45分を2回とした以外は、実施例2と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例3のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、408mg;1.90mmol、収率61.7%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.45〜4.26(m),4.23〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3274,2887,1588,1414,1338,1319,1261,1205,1060,1036,888,555.
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.55
前処理工程において、塩酸水溶液の添加方法を滴下に替えて一括添加とした以外は、実施例2と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例4のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、413mg;1.88mmol、収率60.7%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.45〜4.26(m),4.23〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3274,2887,1588,1414,1338,1319,1261,1205,1060,1036,888,555.
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.61
実施例5〜16では、前処理工程を沈殿法で行った。実施例5〜8では、反応工程で用いるアルカリ溶液の濃度を35質量%とし、実施例9〜16では、52質量%とした。
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した。この溶液を、貧溶媒であるメタノール100mL中に添加した。遠心分離で上澄み液を除去し、白色固体を得た。
得られた白色固体5.74gを2−プロパノール15mL中に分散した後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加して不均一混合液とした。この不均一混合液を、室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸586mg(6.21mmol)を、30分間かけて3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離して上澄み液を除去した。生成固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、25時間)、凍結乾燥させて、実施例5のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、408mg;1.73mmol、収率56.0%)を白色固体として得た。
1H−NMR(D2O):δ4.42〜4.27(m),4.18〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3262,2879,1588,1417,1337,1318,1259,1181,1060,1039,844,531
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.78
実施例5と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸587mg(6.22mmol)から、実施例6のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、428mg;1.99mmol、収率64.4%)を得た。
1H−NMR(D2O):4.41〜4.28(m),4.17〜3.30(m)
FT−IR(cm−1):3262,2914,1590,1416,1338,1317,1258,1181,1061,1036,889,538
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.56
前処理工程で用いる貧溶媒として、メタノールに替えてエタノールを用いた以外は、実施例5と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸586mg(6.20mmol)から、実施例7のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、407mg;2.07mmol、収率67.2%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.42〜4.28(m),4.17〜3.35 (m)
FT−IR(cm−1):3291,2923,1599,1418,1371,1319,1257,1204,1152,1068,1041,890,690,661
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.36
実施例7と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸592mg(6.26mmol)から、実施例8のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、465mg;2.39mmol、収率77.4%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.40〜4.28(m),4.18〜3.38(m)
FT−IR(cm−1):3317,2918,1599,1415,1371,1318,1255,1202,1152,1064,1042,887,692,661
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.34
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子501mg(3.08mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した。この溶液を、貧溶媒であるメタノール100mL中に添加した。吸引濾過し、メタノール50mL中で1分間攪拌して洗浄する作業を3回繰り返し、沈殿固体を得た。
この固体を2−プロパノール15mL中に分散した後、52質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.75mLを添加した。この不均一混合液を、室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸592mg(6.26mmol)を、30分間かけて3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離した。生成固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、24時間)、凍結乾燥させて、実施例9のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、498mg;2.17mmol、収率70.2%)を白色固体として得た。
1H−NMR(D2O):δ4.40〜4.28(m),4.16〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3256,2898,1585,1416,1341,1318,1255,1183,1055,1032,844,546
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.71
実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例10のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、423mg;2.08mmol、収率67.4%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.37〜4.28(m),4.15〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3340,2923,1590,1424,1371,1320,1249,1203,1064,1041,888,546
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.43
実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸586mg(6.20mmol)から、実施例11のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、276mg;1.23mmol、収率39.8%)を得た。なお、他実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
1H−NMR(D2O):δ4.40〜4.29(m),4.18〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3317,2919,1590,1420,1371,1320,1262,1204,1061,1040,889,538
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.66
原料パラミロン及びクロロ酢酸の使用量を変更した以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.00g(18.50mmol)及びクロロ酢酸3.52g(37.25mmol)から、実施例12のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、2.00g;8.86mmol、収率47.9%)を得た。なお、他実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
1H−NMR(D2O):δ4.41〜4.29(m),4.17〜3.28(m)
FT−IR(cm−1):3309,2923,1590,1421,1387,1321,1296,1204,1064,1046,967,890,568
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.67
原料パラミロン及びクロロ酢酸の使用量を変更した以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.00g(18.50mmol)及びクロロ酢酸3.51mg(37.14mmol)から、実施例13のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、2.32g;10.49mmol、収率56.7%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.39〜4.29(m),4.18〜3.29(m)
FT−IR(cm−1):3289,2918,1590,1420,1385,1320,1267,1206,1060,1054,937,888,552
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.62
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:1にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸300mg(3.17mmol)から、実施例14のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、295mg;1.45mmol、収率46.9%)を得た。なお、他の実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
1H−NMR(D2O):δ4.44〜4.29(m),4.18〜3.37(m)
FT−IR(cm−1):3309,2906,1594,1418,1371,1320,1257,1204,1065,891
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.44
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:0.5にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子502mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸147mg(1.56mmol)から、実施例15のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、307mg;1.78mmol、収率57.5%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.48〜4.27(m),4.21〜4.1(m),4.05〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3343,2916,1591,1415,1371,1366,1259,1203,1153,1070,1037,887
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.11
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:0.2にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸59mg(0.62mmol)から、実施例16のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、468mg;2.86mmol、収率92.8%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.16〜3.22(m)
FT−IR(cm−1):3326,2887,1625,1582,1405,1361,1310,1250,1178,1152,1071,1035,888
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.015
実施例17,18では、反応工程で用いる炭化水素化合物として、ヒドロキシル基を有する炭化水素化合物を用いた。
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子(3.003g、18.52mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(60.0mL)に分散し、撹拌した。1時間後、得られた均一溶液をメタノール(600mL)に滴下することにより白色沈殿物を得た。吸引ろ過で白色沈殿物を回収し、続いてメタノール(100mL)に分散して撹拌することで白色沈殿物を1分間撹拌後、遠心分離により上澄み液を除いた。このメタノールを用いた洗浄を3回行った。
得られた固体を2−プロパノール(90mL)に分散し、続いて52質量%水酸化ナトリウム水溶液(4.5mL)を加え1.5時間撹拌した。その後、2−クロロエタノール(2.5mL、2.993g、37.16mmol)を10分の間隔を空けて、3回に分けて添加し、つづいて70℃で撹拌した。3時間後、遠心分離により上澄み液を除き、固体を得た。得られた固体をメタノール150mLに分散して5分撹拌後、遠心分離により上澄み液を除いた。このメタノールによる洗浄を3回行った。得られた固体を12時間風乾し、実施例17のパラミロン誘導体を得た(ヒドロキシエチルパラミロン、3.056g)。
FT−IR(cm−1):3300,2876,1633,1428,1357,1308,1249,1171,1156,1065,1026,878,801,668
前処理工程で用いる2−クロロエタノールの量を2.5mLから6.2mL(7.421g,92.17mmol)とした以外は、実施例17と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.002g(18.51mmol)から実施例18の水に可溶のパラミロン誘導体(ヒドロキシエチルパラミロン、4.397g)を得た。
1H−NMR(D2O):δ3.97〜3.39(m)
FT−IR(cm−1):323,2890,1654,1449,1363,1312,1236,1152,1028,881
実施例19では、原料パラミロンとして、パラミロン粒子に替えて、ユーグレナ培養液をアルカリ処理して得た固体を用いた。
ユーグレナ細胞を約12g含む培養液約100gを200mLビーカーに入れ、水酸化ナトリウムペレット0.995gを加えて室温で1時間撹拌して懸濁液を得た。遠心分離により上澄み液を除き、黄色沈殿を得た。得られた黄色沈殿に水80mLを加えて1分間ボルテックスミキサーで攪拌し、続いて遠心分離により水を含んだ黄色固体(1.63g)を得た。この黄色固体を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mLに分散し、室温で23時間撹拌した。得られた不均一溶液をメタノール100mLに添加することにより白沈を生じさせた。吸引ろ過により溶媒を含んだゲル状の固体(3.66g)を得た。
得られたゲル状固体全量を2−プロパノール9mLに分散し、続いて35質量%水酸化ナトリウム水溶液0.9mLを加えて室温で1.5h撹拌した。その後クロロ酢酸356mg(3.77mmol)を25分間にかけて3回に分けて加えた。続いて加熱(70℃)下で撹拌を行った。3時間後、デカンテーションにより上澄み液を除いて薄黄色固体を得た。この薄黄色固体をメタノール20mLに分散して室温で撹拌洗浄した(10分間、3回)。続いて得られた薄黄色固体に水30mLを加えて室温で撹拌した(終夜)。得られた均一溶液を、透析膜(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000)に入れ、水に対して透析を行った(5日間)。透析した溶液を凍結乾燥して白色固体(106mg)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.39〜4.31(m),3.93〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3296,2886,1590,1416,1363,1315,1252,1180,1131,1037,889
実施例1のパラミロン誘導体10mgを、超純水1.0mL中に入れ、均一化するまで4時間〜24時間攪拌してナノファイバーを形成した。
このナノファイバーを走査電子顕微鏡で観察するため、得られた均一溶液を超純水で1/10に希薄して、1.0mg/mL溶液とした。希薄溶液を、液体窒素で素早く凍結し、減圧下で乾燥して、綿状の固体約10mgを得た。
比較例1,2では、均一反応によりパラミロン誘導体を製造した。
原料パラミロン、クロロ酢酸及び水酸化ナトリウムのモル比は、1:2:5とした。この比率は、商業的に用いられている典型的な比率のひとつである。原料パラミロン497mg(3.07mmol)及び3.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5.0mLからなる溶液を、室温で1.5時間攪拌して均一溶液を得た。この均一溶液に、30分間で3回に分けてクロロ酢酸589mg(6.23mmol)を添加した。この溶液を70℃に加熱し、1.5時間攪拌した後、エタノール50mL中に注ぎ、薄茶色の沈殿物を得た。その後、吸引濾過で上澄み液を除去した後、湿った状態の固体を水20mL中に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた均一溶液をエタノール100mL中に滴下して、白色沈殿物を得た。この精製工程を3回行った。さらに、水で透析して精製後、凍結乾燥して参考例1のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、332mg;1.92mmol、収率62.8%)を白色固体として得た。
1H−NMR(D2O):δ4.40〜4.28(m),4.17〜4.07(m),3.98〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3326,2911,1585,1413,1362,1256,1200,1125,1066,1036,884
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.13
(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩のモル数1.92mmol×DScm0.13)/投入したクロロ酢酸のモル数
原料パラミロン、クロロ酢酸及び水酸化ナトリウム水溶液のモル比を1:5:8に変更し、洗浄溶媒としてメタノールを用いた以外は、参考例1と同様の方法で、原料パラミロン1.50g(9.25mmol)、クロロ酢酸4.40g(46.6mmol)及び3.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液25mLを用いて、参考例2のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、1.56mg;9.24mmol、収率99.9%)を得た。
1H−NMR(D2O):δ4.40〜4.28(m),4.17〜4.07(m),4.02〜3.38(m)
FT−IR(cm−1):3271,2892,1579,1402,1332,1321,1246,1175,1153,1063,1029,989,891
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.074
原料パラミロンを前処理せずに、クロロ酢酸と不均一反応させた。原料パラミロン500mg(3.09mmol)及び2−プロパノール15mLを室温で30分間攪拌し、その後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加した。1.5時間攪拌後、クロロ酢酸585mg(6.19mmol)を、30分間で3回に分けて添加した。この混合液を70℃に加熱し、3時間攪拌した。遠心分離して上澄みを除去した。得られた固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この精製工程を3回繰り返し、白色固体を得た。この白色固体は、水に不溶であり、透析できなかった。白色固体を実施例1と同様にFT−IR法で同定した結果、原料のパラミロン粒子であることが確認された。つまり、前処理をしない場合は、パラミロン粒子は不均一反応が進行しなかった。
FT−IR(cm−1):3309,2923,1644,1424,1371,1309,1248,1199,1117,1091,1064,1031,997,889
(カルボキシメチル基の置換度;DScm)
パラミロン誘導体中のグルコースユニット1つあたりに結合したカルボキシメチル基の平均数を、カルボキシメチル基の置換度DScmとして、以下の式によって算出した。
A=CNaOH×VNaOH
DScm=162.14×A/(m−58×A)
なお、CNaOHは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度(0.01mol/L)であり、VNaOHは、中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積(単位:mL)であり、mは、カルボキシメチルパラミロン(ナトリウム塩)の質量(単位:g)である。
実施例及び比較例のパラミロン誘導体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、多角度光散乱検出器を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALLS)を用いて測定した。SEC-MALLS測定は、Wyatt Technology社製 多角度光散乱計DAWN HELEOS II(WH2-08)、及びゲルパーミエーションクロマトグラフィーカラムを備えた、昭和電工株式会社製 示差屈折率検出器RI−101(移動相:200mmol/L硝酸ナトリウム水溶液;1.0mL/min、40℃)を用いて行った。試料溶液は、パラミロン誘導体を、200mmol/L硝酸ナトリウム水溶液中に1.0mg/mLの濃度で添加後、4〜24時間、機械的に攪拌して調製し、0.45μmフィルターで精製したものを用いた。試料の注入量は、100μLとした。なお、比屈折率増分dn/dc値は、0.1378mL/gを用いた。結果を表1〜3に示す。また、この値を用いて算出したMw/Mn値についても、表1〜3に示す。
得られたパラミロン誘導体の構造が、高分子鎖が凝集した凝集構造であるか、高分子鎖が1本1本にほぐれたランダムコイル状になっているかを調べるための指標として、以下の式に基づいて、カルボキシメチル化の過程で解重合せず、かつ得られたカルボキシメチルパラミロンがランダムコイル状である場合の理論上の分子量であるMcalcを算出し、Mw/Mcalc値を得た。結果を表1〜3に示す。
なお、1,825は、天然パラミロン(Mw:2,959×105Da、Mn:2,158×105Da)のMwベースの重合度である。162.14は、置換されていないグルコースユニット1つあたりの分子量であり、257.19は、カルボキシメチル基を1つ有するグルコースユニット1つあたりの分子量である。
前処理工程後のパラミロンの結晶状態を確認するため、実施例1(中和法による前処理;図1中(a)で示す。),実施例5(メタノールを用いた沈殿法による前処理;図1中(b)で示す。)及び実施例7(エタノールを用いた沈殿法による前処理;図1中(c)で示す。)における前処理工程で得られた湿った状態の固体を凍結乾燥して、株式会社リガク製 X線回折装置SmartLabを用いて以下の条件でX線回折を行った。結果を図1に示す。
X線源:CuKα線(λ=0.15418nm)
管電圧:40kV
管電流:30mA
走査速度:5°/min
2θ:5°〜35°
実施例20で得られたナノファイバーを、導電性カーボンの両面テープを用いて顕微鏡金属ステージに固定し、加速電圧2kVの高真空下で日本電子株式会社製 走査型電子顕微鏡JSM−6060により観察した。結果を図2(a)及び(b)に示す。図2(a)に一辺が数マイクロメーターの顕微鏡写真を示す。観察を行った視野すべてにおいてナノファイバーの構築が確認された。また、図2(b)に示すように、このナノファイバーの直径は、約50nm〜400nmである。
カルボキシメチル基の置換度DScmが最も小さい値であった実施例16のパラミロン誘導体を、超純水に3.0質量%の割合で溶解し、放置した。この溶液は、調製後すぐに粘性を有し、3日後にゲル化した(図3)。
Claims (8)
- パラミロンをアモルファス化する前処理工程、及び、
アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されており、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数が20以下の炭化水素化合物とを不均一反応させる反応工程を有する、パラミロン誘導体の製造方法。 - 反応工程で用いる炭化水素化合物が、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が20以下の飽和若しくは不飽和脂肪酸又は炭素数が20以下の直鎖状若しくは分岐状アルコールである、請求項1に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
- 前処理工程が、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を中和する工程、又は、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を貧溶媒と接触させる工程を有する、請求項1又は2に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
- 反応工程で用いる炭化水素化合物が、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が6以下の飽和脂肪酸又は炭素数が6以下の一価アルコールである、請求項1から3のいずれか一項に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
- 反応工程で用いるアモルファス化されたパラミロンと炭化水素化合物とのモル比が、1:0.1以上1:5以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
- パラミロンをアモルファス化する前処理工程、
アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が20以下の飽和又は不飽和脂肪酸とを不均一反応させてパラミロン誘導体を得る反応工程、及び、
パラミロン誘導体を水中で攪拌する製造工程、を有するナノファイバーの製造方法。 - 前処理工程が、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を中和する工程、又は、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を貧溶媒と接触させる工程を有する、請求項6に記載のナノファイバーの製造方法。
- 反応工程で得られるパラミロン誘導体が、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒロドキシル基の水素原子がカルボキシル基を有する炭素数が6以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体であり、該アルキル基の置換度が、グルコースユニット1つあたり0.001以上1.0以下である、請求項6又は7記載のナノファイバーの製造方法。
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