JP6750778B2 - パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法 - Google Patents

パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6750778B2
JP6750778B2 JP2016070178A JP2016070178A JP6750778B2 JP 6750778 B2 JP6750778 B2 JP 6750778B2 JP 2016070178 A JP2016070178 A JP 2016070178A JP 2016070178 A JP2016070178 A JP 2016070178A JP 6750778 B2 JP6750778 B2 JP 6750778B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
paramylon
derivative
producing
carbon atoms
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016070178A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017179182A (ja
Inventor
芝上 基成
基成 芝上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2016070178A priority Critical patent/JP6750778B2/ja
Publication of JP2017179182A publication Critical patent/JP2017179182A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6750778B2 publication Critical patent/JP6750778B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Description

本発明は、パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法に関する。
パラミロンは、ユーグレナの細胞内に卵形のマイクロサイズの粒子として存在している多糖類であり、環境負荷の小さいバイオマス素材として注目を集めている。パラミロンは、β−1,3グルカンであり、グルコースがβ−1,3結合によって連結されていることにより、三重らせん構造を構築することができる。この構造によって、パラミロンは、セルロース、キチン、キトサン等のβ−1,4グルカンとは異なる独自の特性を示すことができる。本発明者は、これまでに、パラミロンに種々の化学修飾を施して、パラミロンのバイオマスとしての有用性を検討してきた。特許文献1には、β−1,3グルカンのグルコース残基6−位のヒドロキシル基がアシル基で置換されたナノファイバーが提案されている。
一方、セルロースの基本骨格中にカルボキシル基を導入して水溶性とする方法として、セルロースをアルカリ溶媒中に溶解させてアルカリセルロースとした後、クロロ酢酸と均一反応させてカルボキシメチル化させる方法がある(非特許文献1)。さらに、副生成物の生成を抑制する観点から、セルロースを上記と同様の方法でアルカリセルロースとした後、アルコール及びアルカリ水溶液の混合物中に分散させ、クロロ酢酸と不均一反応させてカルボキシメチル化させる方法もある(特許文献2)。
特開2014−37657号公報 米国特許第2,517,577号 Savage,A.B.,Young,A.E.,Maasberg and A.T.,Cellulose and Cellulose Derivatives(2ed.Vol.V),New York,Interscience Publishers Inc.,1954.p937−945
本発明者は、パラミロンとセルロースとが基本骨格が類似していることに着目し、上記したセルロースに対するカルボキシル基の導入方法をパラミロンにも適用することで、パラミロンの基本骨格中にカルボキシル基を導入して、バイオマスとしての適用可能範囲を拡大できるのではないかと考えた。しかし、パラミロンの場合、均一反応では置換基の導入率が小さくなってしまい商業的生産には不向きであった。また、パラミロン粒子を出発物質とする不均一反応では、反応自体が進まなかった。よって、パラミロンの基本骨格中にカルボキシル基を効率的に導入することは困難な状況にあった。
本発明は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子がカルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたパラミロン誘導体及びその製造方法を提供することを課題とする。また、パラミロン誘導体を用いたナノファイバー及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究を進め、不均一反応でのカルボキシル基の導入反応に先立って、パラミロンをアモルファス化する前処理を行うことで、パラミロンの基本骨格中に効率的にカルボキシル基又はヒドロキシル基を導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るパラミロン誘導体の製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程、及び、アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されており、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数が20以下の炭化水素化合物とを不均一反応させる反応工程を有する。
また、本発明に係るパラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数20以下のアルキル基で置換され、該アルキル基の置換度が、グルコースユニット1つあたり0.001以上1.0以下である。
また、本発明に係るナノファイバーの製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程、アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が20以下の飽和又は不飽和脂肪酸とを不均一反応させてパラミロン誘導体を得る反応工程、及び、パラミロン誘導体を水中で攪拌する製造工程、を有する。
また、本発明に係るナノファイバーは、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子がカルボキシル基を有する炭素数が20以下のアルキル基で置換され、該アルキル基の置換度が、グルコースユニット1つあたり0.001以上1.0以下である。
本発明によれば、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子がカルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたパラミロン誘導体及びその製造方法を提供することができる。また、パラミロン誘導体を用いたナノファイバー及びその製造方法を提供することができる。
前処理工程後のパラミロンのX線回折図である。(a)は、中和法による前処理工程後のX線回折図であり、(b)は、メタノールを用いた沈殿法による前処理工程後のX線回折図であり、(c)は、エタノールを用いた沈殿法による前処理工程後のX線回折図である。 パラミロンナノファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。(a)は、倍率が200倍であり、(b)は、倍率が5000倍である。 ゲル化したパラミロン誘導体の様子を示す写真である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。なお、「パラミロン誘導体」は、パラミロン誘導体及びその塩を含む。
[パラミロン誘導体の製造方法]
パラミロン誘導体の製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程と、アモルファス化されたパラミロンをカルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭化水素化合物と不均一反応させる反応工程とを有する。
(前処理工程)
前処理工程は、反応原料となるパラミロン(以下、「原料パラミロン」ともいう。)の前処理工程であって、パラミロンをアモルファス化する工程である。パラミロンは、光合成産物としてユーグレナが生産するβ−1,3−グルカンであり、通常は、球状、扁平球状又は円盤状の粒子として生産される。パラミロンは、高結晶状態にあるため、水やアルコールに溶解しないがアルカリ水溶液には可溶である。
原料パラミロンとしては、ユーグレナ細胞から抽出及び乾燥されたパラミロン粒子を用いることができる。また、原料パラミロンとして、ユーグレナ培養液をアルカリ処理で細胞膜を破砕して得られる粒子状の固体をそのまま(抽出及び乾燥せずに)用いることもできる。この場合、ユーグレナ細胞からパラミロンを抽出及び乾燥する工程が不要であるので、低エネルギーでユーグレナからパラミロン誘導体を製造でき、産業上非常に有用な方法とすることができる。例えば、ユーグレナ培養液100g〜200gに対して水酸化ナトリウムペレットを1g〜2g加えることで固体状の粗パラミロンが得られ、それ以外の細胞成分の大部分は水溶液に可溶化する。得られた固体状の粗パラミロンを水洗したものを原料パラミロンとして用いることもできる。
パラミロンは、後述する実施例に示すように、前処理せずに不均一反応でカルボキシル基の導入を試みると、反応自体が進まない。しかし、驚くべきことに、反応の前処理としてパラミロンをアモルファス化することで、カルボキシル基の導入反応が進むことがわかった。なお、「アモルファス化」とは、高結晶状態のパラミロンの結晶性を低くして、非晶質の状態にすることをいう。例えば、X線回折図において、パラミロン粒子に特徴的な回折角度(2θ)における鋭利なピークとは異なる、幅広なピークを有している場合、アモルファス化されているといえる。
前処理工程は、原料パラミロンをアルカリ溶液中に溶解した後、該溶液を、(1)酸で中和する工程(中和法)、又は、(2)貧溶媒で析出させる工程(沈殿法)を有する。
アルカリ溶液としては、アルカリ水溶液を挙げることができる。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、アンモニア水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等を挙げることができる。パラミロンが溶解しやすい点で、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム水溶液がさらに好ましい。アルカリ溶液の濃度は、特に限定されず、例えば、0.1mol/L以上3.0mol/L以下とすることができる。0.1mol/L以上の場合、パラミロンを容易に溶解することができる。3.0mol/L以下の場合、安全性を考慮した作業が可能となる。アルカリ溶液の使用量は、パラミロンが溶解可能な量であればよく、例えば、パラミロン500mgに対して、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を5mL以上20mL以下程度用いることができる。パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させる方法は、特に限定されず、例えば、室温で10分〜60分程度、機械的方法で攪拌する等により行うことができる。
(1)中和法で用いる酸としては、特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸等の水溶液を用いることができる。好ましくは、塩酸又は酢酸である。例えば、0.3質量%〜40質量%、又は3質量%〜37質量%の塩酸水溶液を用いることができる。酸を添加する方法は、滴下でもよく一括添加(連続添加)してもよい。
(2)沈殿法で用いる貧溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−イソプロポキシエタノール、ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン等を挙げることができる。中でも、メタノール又はエタノールが好ましい。沈殿法は、例えば、アルカリパラミロン溶液に、室温で、貧溶媒を添加して行うことができる。また、貧溶媒中に、室温で、アルカリパラミロン溶液を添加して行うこともできる。
前処理工程は、得られるパラミロン誘導体の置換度(置換基の導入率)を高める点で、メタノールを用いた沈殿法によりパラミロンをアモルファス化する工程を有することが好ましい。また、分子量が大きいパラミロン誘導体を得る場合は、中和法によりパラミロンをアモルファス化する工程を有することが好ましい。
上記前処理工程によって、アモルファス化されたパラミロンがゲル状に析出する。反応後の溶液を、遠心分離又は吸引濾過により上澄み液を除去することで、アモルファス化されたパラミロンを得ることができる。このアモルファス化パラミロンを反応工程の出発物質とすることで、従来は不可能であった不均一反応によるパラミロンの置換反応が可能となる。
本実施形態では、前処理工程と反応工程との間に、アモルファス化されたパラミロンの洗浄工程等の他の工程を有していていもよい。洗浄工程としては、アモルファス化されたパラミロンをエタノールやメタノール等のアルコール又は水中で攪拌する等により行うことができる。
(反応工程)
反応工程は、前処理工程で得られたアモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されており、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数が20以下の炭化水素化合物とを不均一反応させる工程である。これにより、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたパラミロン誘導体を得ることができる。
例えば、式1に示すように、アモルファス化されたパラミロンをアルコールに懸濁したのちに高濃度水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロ酢酸と反応させることで、カルボキシメチルパラミロン(ナトリウム塩)を得ることができる。また、式2に示すように、アモルファス化されたパラミロンをアルコールに懸濁したのちに高濃度水酸化ナトリウム水溶液を加え、2−クロロエタノールと反応させることで、ヒドロキシエチルパラミロンを得ることができる。
「不均一反応」とは、ここでは、アモルファス化されたパラミロンを含む固体を、溶媒中に溶解させることなく分散させた状態で炭化水素化合物と反応させることをいう。これに対して、「均一反応」とは、粒子状のパラミロンを、溶媒(例えば、アルカリ溶液)に溶解させた状態で、同じ溶媒に溶解可能な炭化水素化合物と反応させることをいう。不均一反応では、パラミロンをアモルファス化する前処理をしなければ反応が進まないのに対して、均一反応では、パラミロンの前処理をしなくとも反応が進む。しかし、パラミロンをアモルファス化する前処理をした上で不均一反応させることで、均一反応させる場合よりも炭化水素化合物の利用効率を高くすることができ、商業生産に適した製法とすることができる。なお、炭化水素化合物の利用効率とは、添加した炭化水素化合物のうち、パラミロンに導入される炭化水素化合物の割合をいう。
炭化水素化合物は、直鎖状又は分岐状の炭化水素化合物及びその塩である。炭化水素化合物の炭素数は20以下であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下である。炭素数が20以下であるので、不均一反応でパラミロンのグルコースユニットのヒドロキシル基の水素原子と、効率的に置換される。また、炭化水素化合物は、炭素数が1以上、2以上又は3以上とすることができる。
炭化水素化合物は、カルボキシル基又はヒドロキシル基を少なくとも1つ有する。カルボキシル基及びヒドロキシル基の位置は、特に限定されず、炭素数に応じて、例えば、炭素鎖の1位、2位、3位、4位、又は5位等に1つ又は2つ以上有することができる。また、炭素化合物が分岐鎖を有する場合は、カルボキシル基又はヒドロキシル基を、主鎖上に有していてもよく、分岐鎖上に有していてもよい。
炭化水素化合物としては、例えば、炭素数が20以下、好ましくは炭素数が6以下、又は炭素数が3以上6以下の飽和若しくは不飽和脂肪酸;炭素数が20以下、好ましくは炭素数が6以下、又は炭素数が3以上6以下の直鎖状又は分岐状のアルコールを用いることができる。中でも、炭素数が6以下の飽和脂肪酸又は炭素数が6以下の一価アルコールが好ましい。
炭化水素化合物は、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されている。ハロゲン原子で置換される水素原子は、末端炭素に結合する水素原子であってもよく、末端以外の炭素に結合する水素原子であってもよい。なお、「末端炭素」とは、炭化水素化合物を構成する炭素鎖の端にある炭素原子のことであり、分岐状炭化水素の場合は、主鎖又は分岐鎖の端にある炭素原子のことである。また、炭素化合物が分岐鎖を有する場合は、ハロゲン原子で置換される水素原子は、主鎖上の炭素に結合する水素原子であってもよく、分岐鎖上の炭素に結合する水素原子であってもよい。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された炭素数が6以下の飽和脂肪酸としては、クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、2−クロロイソ酪酸、4−クロロ酪酸、2−クロロイソ吉草酸、5−クロロ吉草酸、6−クロロカプロン酸、7−クロロエナント酸、8−クロロカプリル酸;ブロモ酢酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモイソ酪酸、4−ブロモ酪酸、2−ブロモイソ吉草酸、5−ブロモ吉草酸、6−ブロモカプロン酸、7−ブロモエナント酸、8−ブロモカプリル酸;ヨード酢酸、3−ヨードプロピオン酸、2−ヨードイソ酪酸、4−ヨード酪酸、2−ヨードイソ吉草酸、5−ヨード吉草酸、6−ヨードカプロン酸、7−ヨードエナント酸、8−ヨードカプリル酸;等を挙げることができる。
炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された炭素数が6以下の一価アルコールとしては、3−クロロプロパノール、4−クロロブタノール、5−クロロペンタノール、6−クロロヘキサノール;3−ブロモプロパノール、4−ブロモブタノール、5−ブロモペンタノール、6−ブロモヘキサノール;3−ヨードプロパノール、4−ヨードブタノール、5−ヨードペンタノール、6−ヨードヘキサノール等を挙げることができる。なお、炭化水素化合物は、さらに置換基を有していてもよい。
炭化水素化合物の使用量は、アモルファス化されたパラミロンと炭化水素化合物とのモル比(アモルファス化されたパラミロン:炭化水素化合物)として、1:0.1以上、1:5以下であることが好ましく、1:0.1以上、1:3以下であることがより好ましい。モル比が上記範囲内の場合、原料の反応効率をより高めてパラミロン誘導体を製造することができる。
炭化水素化合物の使用量は、得られるパラミロン誘導体に求められる置換度(置換基の導入率)に応じて、上記範囲内で適宜変更することが好ましい。例えば、置換度が小さい(0.015〜0.07程度)パラミロン誘導体を得るためには、アモルファス化されたパラミロン:炭化水素化合物のモル比は、1:0.2〜1:0.5とすることができる。置換度が大きい(0.07〜0.78程度)パラミロン誘導体を得るためには、アモルファス化されたパラミロン:炭化水素化合物のモル比は、1:1以上1:3以下とすることができる。
不均一反応に用いる溶媒としては、通常、アルコール及びアルカリ溶液を含む不均一溶媒が用いられる。アルコールは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等を用いることができる。アルカリ溶液としては、上記した前処理で用いたものと同様のものを用いることができる。
アルコールの使用量は、特に限定されないが、溶媒が過度に多くなりすぎず扱いやすい範囲で効率的にパラミロンを分散させる点では、例えば、パラミロン500mgあたり5mL以上100mL以下、又は5mL以上50mL以下程度とすることができる。アルカリ溶液の使用量は、多すぎると得られるパラミロン誘導体の分子量が低下する場合がある。よって、例えば、30質量%〜60質量%の水酸化ナトリウムを用いる場合、0.1mL以上1.5mL以下程度とすることが好ましい。また、アルカリ溶液の濃度が高い方が不均一混合物中の水分量を少なくすることができる。その結果、カルボキシメチル基の置換度DScmに影響を与えずに分子量を大きくすることができる。
不均一反応の方法としては、アモルファス化されたパラミロンをアルコール中に分散させた後、アルカリ溶液を添加して不均一混合物とし、この不均一混合物に、炭化水素化合物を添加して反応させる方法が好ましい。反応温度は、60℃以上、80℃以下とすることができる。反応時間は、0.5時間以上、5時間以下とすることができる。反応温度及び反応時間がこの範囲である場合、より確実に不均一反応が進行する。不均一反応は、通常は常圧で行われる。その後、反応液を遠心分離又は吸引濾過等により上澄み液を除去する等して、パラミロン誘導体を得ることができる。
本実施形態では、反応工程の後に、さらに、パラミロン誘導体の洗浄工程、精製工程、及び凍結乾燥工程等の他の工程を有していてもよい。洗浄工程としては、得られた固体を、エタノールやメタノール等のアルコール又は水中で攪拌する工程等を挙げることができる。精製工程としては、得られた固体を、分画分子量が1万〜2万程度の透析膜を用いて水に対して透析する工程等を挙げることができる。
[パラミロン誘導体]
上記した実施形態の製造方法で得られるパラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数20以下、好ましくは炭素数10以下、より好ましくは6以下のアルキル基で置換されている。該アルキル基は、炭素数が1以上、2以上又は3以上とすることができる。より好ましくは、該アルキル基が、カルボキシル基を有し炭素数が6以下である。なお、パラミロン誘導体は、複数のグルコースユニットを有しているが、それらのうちの少なくとも1つのグルコースユニット中の少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、上記したアルキル基で置換されていればよい。
パラミロン誘導体において、アルキル基が置換したヒドロキシル基の位置は、特に限定されない。上記した本実施形態の製造方法によれば、パラミロンのグルコースユニットの6位、4位又は2位のいずれのヒドロキシル基に対しても、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基を導入することができる。よって、パラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの6位、4位及び/又は2位のヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数20以下のアルキル基で置換されている。
パラミロン誘導体は、アルキル基の置換度(置換基の導入率)が、グルコースユニット1つあたり0.001以上、好ましくは、0.01以上であり、1.0以下、好ましくは0.8以下である。
「置換度」とは、グルコースユニット1つあたりに置換したアルキル基の平均数である。置換度が、0.001以上であるので、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基の水素原子が、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたパラミロン誘導体とすることができ、水に可溶な(水溶性の)パラミロン誘導体とすることができる。置換度が、1.0以下であるので、分子鎖間の過度な相互作用を防ぐことができ、水に分散可能なパラミロン誘導体とすることができる。なお、置換度が0.001とは、グルコースユニット1000個につき1個の置換基が導入されていることを意味している。置換度は、上記した反応工程で用いるアモルファス化パラミロンと炭化水素化合物とのモル比を調整することで、所望の範囲とすることができる。
置換度は、ここでは、電気伝導度測定等を用いて、以下の式により算出して求めた値である。
A=CNaOH×VNaOH
DScm=162.14×A/(m−58×A)
なお、CNaOHは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度(0.01mol/L)であり、VNaOHは、中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積(単位:mL)であり、mは、カルボキシメチルパラミロン(ナトリウム塩)の質量(単位:g)である。
NaOHは、例えば、次のようにして測定することができる。まず、パラミロン誘導体を水中に溶解し、pH値が1.0〜3.5になるように酸で調整する。この溶液について、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH値が10.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量をVNaOHとする。
パラミロン誘導体の見かけ上の分子量は、重量平均分子量Mwが1.0×10Da〜60×10Da、数平均分子量が0.5×10Da〜50×10Daとすることができる。重量平均分子量及び数平均分子量は、多角度光散乱検出器を有するサイズ排除クロマトグラフィーで測定した値である。なお、「見かけ上の分子量」としたのは、後述する実施例で確認されたように、パラミロン誘導体は、1本鎖の高分子鎖で構成されているだけではなく、数本が自己集合した束からも構成されていると考えられたことに基づくものである。つまり、測定された重量平均分子量及び数平均分子量には、パラミロン誘導体の高分子鎖1本分の分子量だけでなく、複数が凝集した束の分子量も含まれていると考えられるためである。
[ナノファイバーの製造方法]
ナノファイバーの製造方法は、パラミロンをアモルファス化する前処理工程、アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素の少なくとも1つがハロゲンで置換された、炭素数が20以下の脂肪酸とを不均一反応させてパラミロン誘導体を得る反応工程、及び、パラミロン誘導体を水中で攪拌する製造工程、を有する。前処理工程は、上記のとおりであるから、ここでは記載を省略する。
(反応工程)
反応工程は、炭素数が20以下の飽和又は不飽和脂肪酸を用いること以外は、上記と同じである。中でも、炭素数が10以下の飽和脂肪酸を用いることが好ましく、炭素数が6以下の飽和脂肪酸を用いることがより好ましい。反応工程で得られるパラミロン誘導体は、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒロドキシル基の水素原子がカルボキシル基を1つ有する、炭素数が20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体である。
パラミロン誘導体におけるアルキル基の置換位置及びパラミロン誘導体の分子量については、上記と同じであるので、ここでは記載を省略する。アルキル基の置換度は、グルコースユニット1つあたり0.001以上1.0以下であり、好ましくは、0.01以上0.8以下である。また、置換度を0.07以上0.78以下とすることで、水相でナノファイバー構造を維持するナノファイバーとすることができる。置換度を0.015以上0.07以下とすることで、水相及び固相のいずれでもナノファイバー構造を維持するナノファイバーとすることができる。
パラミロン誘導体は、1本鎖のランダムコイルで構成されているだけでなく、数本の高分子鎖が凝集して束からも構成されているため、水中へ適度に分散することができ、水中でナノファイバーを形成する際に線径が大きいナノファイバーを得ることができる。
(製造工程)
製造工程は、パラミロン誘導体を水中で攪拌してナノファイバーを得る工程である。水中で攪拌することで、パラミロン誘導体を構成する、数本の高分子鎖が凝集した束の全部又は一部がほぐれて、水中へ適度に分散したナノファイバーを形成する。水は、精製水、純水又は超純水等を用いることができる。水中のパラミロン誘導体の濃度は、特に限定されないが、例えば1mg/mL以上50mg/mL以下とすることができる。この範囲の濃度の場合、ナノファイバー間の相互作用が過剰に大きくなることを防ぎ、その結果、水に溶解しないまたは分散しないナノファイバーの数を抑制することができる。攪拌時間は、特に限定されなないが、パラミロン誘導体を水中に適度に分散させる点で、およそ1時間以上30時間以下とすることができる。製造工程は、通常は、常温、常圧で行うことができる。後述する実施例に記載するように、このナノファイバー水分散液を凍結乾燥させた後、得られた固体を走査電子顕微鏡で観察することで、ナノファイバーが形成されていることを確認することができる。
本実施形態におけるナノファイバーの製造方法は、原料パラミロンを一旦アルカリ溶液に完全に溶解することから開始し、続いて溶解したパラミロンが自発的に集合し、その後ほぐれることによるので、いわゆる「ボトムアップ」方式でナノファイバーを製造することができる。これに対して、セルロースナノファイバーは、工業的には、原料セルロースを機械的な方法でナノ単位まで細かくする、いわゆる「トップダウン」方式で製造される場合が多い。よって、本実施形態のナノファイバーの製造方法は、エネルギー消費が少なく済む点で、公知のセルロースナノファイバーの製造方法よりも優れている。また、原料パラミロンは、ユーグレナからほぼ100%の純度で得られるため、セルロースの場合に必要となる準備段階での複雑な精製工程が不要である。
[ナノファイバー]
上記のように製造されるナノファイバーは、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒドロキシル基が、カルボキシル基を有する炭素数が20以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体からなる。パラミロン誘導体におけるアルキル基の置換度は、グルコースユニット1つあたり0.001以上、好ましくは、0.01以上であり、1.0以下、好ましくは0.8以下である。中でも、置換度が、0.07以上0.78以下であるナノファイバーは、水相でナノファイバー構造を維持することができる。また、置換度が0.015以上0.07以下であるナノファイバーは、水相及び固相でナノファイバー構造を維持することができる。
ナノファイバーの直径は、約50nm〜400nm程度であり、長さは、1μm〜10μmであり、アスペクト比(長さ/直径)は、100〜1000である。
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1〜4では、前処理工程を中和法で行った。
(前処理工程:中和法)
原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した後、室温で攪拌しながら、1.0mol/Lの塩酸水溶液を10mL滴下して不透明なゲル状固体を得た。遠心分離機(コクサン社製、型番:H−19α)を用いて遠心分離し、上澄み液をデカンテーションして除去した。得られた固体を水35mLで1分間洗浄し、遠心分離して上澄み液を除去した。この精製工程を3回繰り返した後、得られた固体を30mLのエタノールで5分間、攪拌洗浄した。吸引濾過により溶媒を除去した後、湿った状態の固体を得た。
(反応工程)
上記で得られた湿った固体5.11gを、2−プロパノール15mL中に分散した後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加して不均一混合液とした。この混合液を室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸588mg(6.22mol)を、30分間で3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離して上澄み液をデカンテーションして除去した。生成物を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、17時間)、凍結乾燥させて、実施例1のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、337mg;1.68mmol、収率54.2%)を得た。
このパラミロン誘導体について、H−NMR及びFT−IRで同定した。なお、H−NMRスペクトルは、BRUKER社製、核磁気共鳴装置AVANCE III HDで測定した。FT−IRスペクトルは、日本分光株式会社製ZnSeプリズム ATR Pro400−Sを備えた、日本分光株式会社製フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR−480STで測定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.41〜4.26(m),4.16〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3309,2914,1590,1427,1372,1317,1263,1204,1064,1041,884,562
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.41
[実施例2]
前処理工程で用いる洗浄用アルコールとして、エタノールに替えて2−プロパノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸588mg(6.22mmol)から、実施例2のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、388mg;1.94mmol、収率62.9%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.41〜4.28(m),4.18〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3247,2878,1587,1419,1336,1318,1259,1178,1068,1036,887,532
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.40
[実施例3]
前処理工程における洗浄時間を、5分に替えて45分を2回とした以外は、実施例2と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例3のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、408mg;1.90mmol、収率61.7%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(D2O):δ4.45〜4.26(m),4.23〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3274,2887,1588,1414,1338,1319,1261,1205,1060,1036,888,555.
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.55
[実施例4]
前処理工程において、塩酸水溶液の添加方法を滴下に替えて一括添加とした以外は、実施例2と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例4のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、413mg;1.88mmol、収率60.7%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.45〜4.26(m),4.23〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3274,2887,1588,1414,1338,1319,1261,1205,1060,1036,888,555.
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.61
[実施例5]
実施例5〜16では、前処理工程を沈殿法で行った。実施例5〜8では、反応工程で用いるアルカリ溶液の濃度を35質量%とし、実施例9〜16では、52質量%とした。
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した。この溶液を、貧溶媒であるメタノール100mL中に添加した。遠心分離で上澄み液を除去し、白色固体を得た。
(反応工程)
得られた白色固体5.74gを2−プロパノール15mL中に分散した後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加して不均一混合液とした。この不均一混合液を、室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸586mg(6.21mmol)を、30分間かけて3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離して上澄み液を除去した。生成固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、25時間)、凍結乾燥させて、実施例5のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、408mg;1.73mmol、収率56.0%)を白色固体として得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.42〜4.27(m),4.18〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3262,2879,1588,1417,1337,1318,1259,1181,1060,1039,844,531
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.78
[実施例6]
実施例5と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸587mg(6.22mmol)から、実施例6のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、428mg;1.99mmol、収率64.4%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):4.41〜4.28(m),4.17〜3.30(m)
FT−IR(cm−1):3262,2914,1590,1416,1338,1317,1258,1181,1061,1036,889,538
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.56
[実施例7]
前処理工程で用いる貧溶媒として、メタノールに替えてエタノールを用いた以外は、実施例5と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸586mg(6.20mmol)から、実施例7のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、407mg;2.07mmol、収率67.2%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.42〜4.28(m),4.17〜3.35 (m)
FT−IR(cm−1):3291,2923,1599,1418,1371,1319,1257,1204,1152,1068,1041,890,690,661
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.36
[実施例8]
実施例7と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸592mg(6.26mmol)から、実施例8のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、465mg;2.39mmol、収率77.4%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.40〜4.28(m),4.18〜3.38(m)
FT−IR(cm−1):3317,2918,1599,1415,1371,1318,1255,1202,1152,1064,1042,887,692,661
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.34
[実施例9]
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子501mg(3.08mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10mL中に溶解した。この溶液を、貧溶媒であるメタノール100mL中に添加した。吸引濾過し、メタノール50mL中で1分間攪拌して洗浄する作業を3回繰り返し、沈殿固体を得た。
(反応工程)
この固体を2−プロパノール15mL中に分散した後、52質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.75mLを添加した。この不均一混合液を、室温で1.5時間攪拌した後、クロロ酢酸592mg(6.26mmol)を、30分間かけて3回に分けて添加した。70℃で3時間攪拌した後、遠心分離した。生成固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した。その後、水で透析し(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000、24時間)、凍結乾燥させて、実施例9のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、498mg;2.17mmol、収率70.2%)を白色固体として得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.40〜4.28(m),4.16〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3256,2898,1585,1416,1341,1318,1255,1183,1055,1032,844,546
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.71
[実施例10]
実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子501mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸585mg(6.19mmol)から、実施例10のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、423mg;2.08mmol、収率67.4%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.37〜4.28(m),4.15〜3.27(m)
FT−IR(cm−1):3340,2923,1590,1424,1371,1320,1249,1203,1064,1041,888,546
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.43
[実施例11]
実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸586mg(6.20mmol)から、実施例11のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、276mg;1.23mmol、収率39.8%)を得た。なお、他実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.40〜4.29(m),4.18〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3317,2919,1590,1420,1371,1320,1262,1204,1061,1040,889,538
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.66
[実施例12]
原料パラミロン及びクロロ酢酸の使用量を変更した以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.00g(18.50mmol)及びクロロ酢酸3.52g(37.25mmol)から、実施例12のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、2.00g;8.86mmol、収率47.9%)を得た。なお、他実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.41〜4.29(m),4.17〜3.28(m)
FT−IR(cm−1):3309,2923,1590,1421,1387,1321,1296,1204,1064,1046,967,890,568
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.67
[実施例13]
原料パラミロン及びクロロ酢酸の使用量を変更した以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.00g(18.50mmol)及びクロロ酢酸3.51mg(37.14mmol)から、実施例13のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、2.32g;10.49mmol、収率56.7%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.39〜4.29(m),4.18〜3.29(m)
FT−IR(cm−1):3289,2918,1590,1420,1385,1320,1267,1206,1060,1054,937,888,552
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.62
[実施例14]
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:1にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸300mg(3.17mmol)から、実施例14のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、295mg;1.45mmol、収率46.9%)を得た。なお、他の実施例に比較して収率が低くなっているのは、透析工程において透析膜からの透析液の漏出による。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.44〜4.29(m),4.18〜3.37(m)
FT−IR(cm−1):3309,2906,1594,1418,1371,1320,1257,1204,1065,891
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.44
[実施例15]
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:0.5にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子502mg(3.09mmol)及びクロロ酢酸147mg(1.56mmol)から、実施例15のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、307mg;1.78mmol、収率57.5%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.48〜4.27(m),4.21〜4.1(m),4.05〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3343,2916,1591,1415,1371,1366,1259,1203,1153,1070,1037,887
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.11
[実施例16]
原料パラミロン及びクロロ酢酸のモル比を、1:2に替えて1:0.2にした以外は、実施例9と同様の方法で、原料パラミロン粒子500mg(3.08mmol)及びクロロ酢酸59mg(0.62mmol)から、実施例16のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、468mg;2.86mmol、収率92.8%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.16〜3.22(m)
FT−IR(cm−1):3326,2887,1625,1582,1405,1361,1310,1250,1178,1152,1071,1035,888
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.015
[実施例17]
実施例17,18では、反応工程で用いる炭化水素化合物として、ヒドロキシル基を有する炭化水素化合物を用いた。
(前処理工程:沈殿法)
原料パラミロン粒子(3.003g、18.52mmol)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(60.0mL)に分散し、撹拌した。1時間後、得られた均一溶液をメタノール(600mL)に滴下することにより白色沈殿物を得た。吸引ろ過で白色沈殿物を回収し、続いてメタノール(100mL)に分散して撹拌することで白色沈殿物を1分間撹拌後、遠心分離により上澄み液を除いた。このメタノールを用いた洗浄を3回行った。
(反応工程)
得られた固体を2−プロパノール(90mL)に分散し、続いて52質量%水酸化ナトリウム水溶液(4.5mL)を加え1.5時間撹拌した。その後、2−クロロエタノール(2.5mL、2.993g、37.16mmol)を10分の間隔を空けて、3回に分けて添加し、つづいて70℃で撹拌した。3時間後、遠心分離により上澄み液を除き、固体を得た。得られた固体をメタノール150mLに分散して5分撹拌後、遠心分離により上澄み液を除いた。このメタノールによる洗浄を3回行った。得られた固体を12時間風乾し、実施例17のパラミロン誘導体を得た(ヒドロキシエチルパラミロン、3.056g)。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にFT−IR法で同定した。
FT−IR(cm−1):3300,2876,1633,1428,1357,1308,1249,1171,1156,1065,1026,878,801,668
[実施例18]
前処理工程で用いる2−クロロエタノールの量を2.5mLから6.2mL(7.421g,92.17mmol)とした以外は、実施例17と同様の方法で、原料パラミロン粒子3.002g(18.51mmol)から実施例18の水に可溶のパラミロン誘導体(ヒドロキシエチルパラミロン、4.397g)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。
H−NMR(DO):δ3.97〜3.39(m)
FT−IR(cm−1):323,2890,1654,1449,1363,1312,1236,1152,1028,881
[実施例19](ユーグレナ培養液からのカルボキシメチルパラミロンの合成)
実施例19では、原料パラミロンとして、パラミロン粒子に替えて、ユーグレナ培養液をアルカリ処理して得た固体を用いた。
(前処理工程)
ユーグレナ細胞を約12g含む培養液約100gを200mLビーカーに入れ、水酸化ナトリウムペレット0.995gを加えて室温で1時間撹拌して懸濁液を得た。遠心分離により上澄み液を除き、黄色沈殿を得た。得られた黄色沈殿に水80mLを加えて1分間ボルテックスミキサーで攪拌し、続いて遠心分離により水を含んだ黄色固体(1.63g)を得た。この黄色固体を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mLに分散し、室温で23時間撹拌した。得られた不均一溶液をメタノール100mLに添加することにより白沈を生じさせた。吸引ろ過により溶媒を含んだゲル状の固体(3.66g)を得た。
(反応工程)
得られたゲル状固体全量を2−プロパノール9mLに分散し、続いて35質量%水酸化ナトリウム水溶液0.9mLを加えて室温で1.5h撹拌した。その後クロロ酢酸356mg(3.77mmol)を25分間にかけて3回に分けて加えた。続いて加熱(70℃)下で撹拌を行った。3時間後、デカンテーションにより上澄み液を除いて薄黄色固体を得た。この薄黄色固体をメタノール20mLに分散して室温で撹拌洗浄した(10分間、3回)。続いて得られた薄黄色固体に水30mLを加えて室温で撹拌した(終夜)。得られた均一溶液を、透析膜(VISCASE社製セルロース膜、分画分子量14,000)に入れ、水に対して透析を行った(5日間)。透析した溶液を凍結乾燥して白色固体(106mg)を得た。
得られた固体について実施例1と同様の方法でHNMR及びFT−IR測定を行い、カルボキシメチル基が導入されたことを確認した。
H−NMR(DO):δ4.39〜4.31(m),3.93〜3.34(m)
FT−IR(cm−1):3296,2886,1590,1416,1363,1315,1252,1180,1131,1037,889
[実施例20](ナノファイバーの製造)
実施例1のパラミロン誘導体10mgを、超純水1.0mL中に入れ、均一化するまで4時間〜24時間攪拌してナノファイバーを形成した。
このナノファイバーを走査電子顕微鏡で観察するため、得られた均一溶液を超純水で1/10に希薄して、1.0mg/mL溶液とした。希薄溶液を、液体窒素で素早く凍結し、減圧下で乾燥して、綿状の固体約10mgを得た。
[比較例1]
比較例1,2では、均一反応によりパラミロン誘導体を製造した。
原料パラミロン、クロロ酢酸及び水酸化ナトリウムのモル比は、1:2:5とした。この比率は、商業的に用いられている典型的な比率のひとつである。原料パラミロン497mg(3.07mmol)及び3.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5.0mLからなる溶液を、室温で1.5時間攪拌して均一溶液を得た。この均一溶液に、30分間で3回に分けてクロロ酢酸589mg(6.23mmol)を添加した。この溶液を70℃に加熱し、1.5時間攪拌した後、エタノール50mL中に注ぎ、薄茶色の沈殿物を得た。その後、吸引濾過で上澄み液を除去した後、湿った状態の固体を水20mL中に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた均一溶液をエタノール100mL中に滴下して、白色沈殿物を得た。この精製工程を3回行った。さらに、水で透析して精製後、凍結乾燥して参考例1のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、332mg;1.92mmol、収率62.8%)を白色固体として得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.40〜4.28(m),4.17〜4.07(m),3.98〜3.32(m)
FT−IR(cm−1):3326,2911,1585,1413,1362,1256,1200,1125,1066,1036,884
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.13
上記したカルボキシメチル基の置換度0.13からクロロ酢酸の利用効率を以下の式に基づいて算出した結果、4.0%であり、低い結果となった。よって、均一反応によるパラミロンのカルボキシメチル化は、反応効率が低く、パラミロン誘導体の商業生産には適していないといえる。
(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩のモル数1.92mmol×DScm0.13)/投入したクロロ酢酸のモル数
[比較例2]
原料パラミロン、クロロ酢酸及び水酸化ナトリウム水溶液のモル比を1:5:8に変更し、洗浄溶媒としてメタノールを用いた以外は、参考例1と同様の方法で、原料パラミロン1.50g(9.25mmol)、クロロ酢酸4.40g(46.6mmol)及び3.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液25mLを用いて、参考例2のパラミロン誘導体(カルボキシメチルパラミロンのナトリウム塩、1.56mg;9.24mmol、収率99.9%)を得た。
このパラミロン誘導体について、実施例1と同様にH−NMR及びFT−IR法で同定した。また、カルボキシメチル基の導入率(置換度;DScm)を、後述する方法で算出した。
H−NMR(DO):δ4.40〜4.28(m),4.17〜4.07(m),4.02〜3.38(m)
FT−IR(cm−1):3271,2892,1579,1402,1332,1321,1246,1175,1153,1063,1029,989,891
カルボキシメチル基の置換度DScm:0.074
上記したカルボキシメチル基の置換度0.074は、比較例1よりも小さく、炭化水素化合物の利用効率を算出すると1.5%であった。よって、この場合も、均一反応によるパラミロンのカルボキシメチル化は、反応効率が低く、パラミロン誘導体の商業生産には適していないといえる。
[比較例3]
原料パラミロンを前処理せずに、クロロ酢酸と不均一反応させた。原料パラミロン500mg(3.09mmol)及び2−プロパノール15mLを室温で30分間攪拌し、その後、35質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを添加した。1.5時間攪拌後、クロロ酢酸585mg(6.19mmol)を、30分間で3回に分けて添加した。この混合液を70℃に加熱し、3時間攪拌した。遠心分離して上澄みを除去した。得られた固体を、メタノール30mL中で10分間攪拌して洗浄した。この精製工程を3回繰り返し、白色固体を得た。この白色固体は、水に不溶であり、透析できなかった。白色固体を実施例1と同様にFT−IR法で同定した結果、原料のパラミロン粒子であることが確認された。つまり、前処理をしない場合は、パラミロン粒子は不均一反応が進行しなかった。
FT−IR(cm−1):3309,2923,1644,1424,1371,1309,1248,1199,1117,1091,1064,1031,997,889
[測定及び観察]
(カルボキシメチル基の置換度;DScm)
パラミロン誘導体中のグルコースユニット1つあたりに結合したカルボキシメチル基の平均数を、カルボキシメチル基の置換度DScmとして、以下の式によって算出した。
A=CNaOH×VNaOH
DScm=162.14×A/(m−58×A)
なお、CNaOHは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度(0.01mol/L)であり、VNaOHは、中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積(単位:mL)であり、mは、カルボキシメチルパラミロン(ナトリウム塩)の質量(単位:g)である。
NaOHは、以下のように測定した。まず、実施例及び比較例で得られたパラミロン誘導体100mg及び超純水100mL中からなる均一溶媒について、pH値が3.2になるようにHCl水溶液を添加して調整した。得られたパラミロン誘導体溶液に、0.01mol/LのNaOH水溶液を滴下してpHが10になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量をVNaOHとした。結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3に示すように、DScm値が小さい場合、分子量(Mw,Mn)が大きくなる傾向にある。
表1〜3に示すように、実施例1〜14のパラミロン誘導体のDScm値は、比較例1のパラミロン誘導体のDScm値よりも高い。例えば、実施例7のDScm値(0.36)に基づいて、クロロ酢酸の利用効率を比較例1と同様の方法で算出すると21%であり、比較例1のDScm値(0.13)に基づく利用効率4.0%よりも高い。この結果から、不均一反応は、均一反応よりもカルボキシメチル化の反応効率が高く、商業生産的に有利である。
実施例1及び2のDScm値に大きな違いはなく、中和法による前処理工程で用いる洗浄用アルコールの種類の違いは、この反応条件下ではカルボキシメチル化の増加に影響を与えない。また、実施例3及び4のDScm値は、実施例1及び2のDScm値よりも大きく、中和法による前処理工程では、洗浄時間が長い方が、カルボキシメチル化の増加に効果が高い。さらに、実施例3及び4は、DScm値及び分子量が類似しており、中和法による前処理工程における酸の滴下方法の違いは、カルボキシメチル化の効率性に大きな影響を与えない。
(分子量測定)
実施例及び比較例のパラミロン誘導体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、多角度光散乱検出器を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALLS)を用いて測定した。SEC-MALLS測定は、Wyatt Technology社製 多角度光散乱計DAWN HELEOS II(WH2-08)、及びゲルパーミエーションクロマトグラフィーカラムを備えた、昭和電工株式会社製 示差屈折率検出器RI−101(移動相:200mmol/L硝酸ナトリウム水溶液;1.0mL/min、40℃)を用いて行った。試料溶液は、パラミロン誘導体を、200mmol/L硝酸ナトリウム水溶液中に1.0mg/mLの濃度で添加後、4〜24時間、機械的に攪拌して調製し、0.45μmフィルターで精製したものを用いた。試料の注入量は、100μLとした。なお、比屈折率増分dn/dc値は、0.1378mL/gを用いた。結果を表1〜3に示す。また、この値を用いて算出したMw/Mn値についても、表1〜3に示す。
実施例9〜13のパラミロン誘導体は、DScm値は、実施例5,6と近い値であるのに対して、分子量Mw,Mnは、実施例5,6よりも大きい。つまり、不均一反応に用いる水酸化ナトリウム水溶液の濃度が高い方が、カルボキシメチル基の置換度DScmに影響を与えずに分子量を大きくすることができる。また、DScm値が類似する場合を比較すると、実施例1〜4のパラミロン誘導体の分子量Mwは、実施例5〜13のパラミロン誘導体の分子量よりも大きい。
(Mw/Mcalc値)
得られたパラミロン誘導体の構造が、高分子鎖が凝集した凝集構造であるか、高分子鎖が1本1本にほぐれたランダムコイル状になっているかを調べるための指標として、以下の式に基づいて、カルボキシメチル化の過程で解重合せず、かつ得られたカルボキシメチルパラミロンがランダムコイル状である場合の理論上の分子量であるMcalcを算出し、Mw/Mcalc値を得た。結果を表1〜3に示す。
Mcalc=(162.14×(1−DScm)+257.19×DScm)×1,825
なお、1,825は、天然パラミロン(Mw:2,959×10Da、Mn:2,158×10Da)のMwベースの重合度である。162.14は、置換されていないグルコースユニット1つあたりの分子量であり、257.19は、カルボキシメチル基を1つ有するグルコースユニット1つあたりの分子量である。
Mw/Mcalc値は、カルボキシメチル化の過程で解重合が起こらないとすると、「1.0」であり、パラミロン誘導体は、移動相中でランダムコイル構造になっている。また、ポリマーが繊維の凝集を形成し、顕著な解重合が起こらなかった場合、その値は、「1.0以上」である。解重合が発生し、パラミロン誘導体がランダムコイルとして存在するか、パラミロン誘導体が薄い凝集体を形成し、カルボキシメチル化の過程で顕著な解重合が発生した場合、その比率は「1.0未満」である。
実施例1,2のMw/Mcalc値は、「1.33」、「1.28」であり、実施例3,4のMw/Mcalc値は、いずれも1.0付近である。実施例1〜4は、反応工程がアルカリ環境下で行われたので、解重合が起こっていると考えられる。そのため、上記数値は、カルボキシメチル化が、高分子鎖が凝集した状態で行われていることを裏付けている。
実施例5,6,9〜13のMw/Mcalc値は、いずれも1.0よりも小さく、分子量は、天然パラミロンよりも小さい。この数値は、パラミロン誘導体の反応出発物質(アモルファス化パラミロン)が、ランダムコイル状であるか、あるいは繊維状の凝集体の両方の可能性を示唆している。
なお、比較例1のパラミロン誘導体(DScm:0.13)のMw/Mcalc値は、「0.65」であり、1.0よりも小さいので、このパラミロン誘導体は、カルボキシメチル化反応の間に解重合が発生し、パラミロン誘導体は移動相中でランダムコイル状に存在していると判断できる。反対に、比較例2のパラミロン誘導体(DScm:0.074)のMw/Mcalc値は、「2.84」であり、このパラミロン誘導体は、繊維状に凝集していると判断できた。この結果から、カルボキシメチル基の置換度DScmの値が低く疎水性が大きい場合は、パラミロン誘導体の高分子鎖が繊維状に凝集すると考えられる。
(X線回折)
前処理工程後のパラミロンの結晶状態を確認するため、実施例1(中和法による前処理;図1中(a)で示す。),実施例5(メタノールを用いた沈殿法による前処理;図1中(b)で示す。)及び実施例7(エタノールを用いた沈殿法による前処理;図1中(c)で示す。)における前処理工程で得られた湿った状態の固体を凍結乾燥して、株式会社リガク製 X線回折装置SmartLabを用いて以下の条件でX線回折を行った。結果を図1に示す。
X線源:CuKα線(λ=0.15418nm)
管電圧:40kV
管電流:30mA
走査速度:5°/min
2θ:5°〜35°
図1の(a)に示すように、中和法による前処理をして得られた固体(実施例1)は、20.0°付近におけるブロードピークの他に、31.8°に残存塩化ナトリウム由来のシャープなピークを示す。また、図1の(b)及び(c)に示すように、メタノール又はエタノールを用いた沈殿法による前処理をして得られた固体(実施例5,7)は、20.0°付近にブロードピークを示す。これに対して、前処理をしていない天然のパラミロン粒子は、6.8,11.9,13.9,16.6,19.3,20.5及び23.9℃にシャープなピークを示すことが知られている。よって、上記のようにX線回折でのブロードピークは、中和法又は沈殿法のいずれの前処理工程を用いた場合も、得られた固体は高結晶性が破壊されアモルファス状態になっていることを示している。
(顕微鏡観察)
実施例20で得られたナノファイバーを、導電性カーボンの両面テープを用いて顕微鏡金属ステージに固定し、加速電圧2kVの高真空下で日本電子株式会社製 走査型電子顕微鏡JSM−6060により観察した。結果を図2(a)及び(b)に示す。図2(a)に一辺が数マイクロメーターの顕微鏡写真を示す。観察を行った視野すべてにおいてナノファイバーの構築が確認された。また、図2(b)に示すように、このナノファイバーの直径は、約50nm〜400nmである。
(目視観察)
カルボキシメチル基の置換度DScmが最も小さい値であった実施例16のパラミロン誘導体を、超純水に3.0質量%の割合で溶解し、放置した。この溶液は、調製後すぐに粘性を有し、3日後にゲル化した(図3)。

Claims (8)

  1. パラミロンをアモルファス化する前処理工程、及び、
    アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されており、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する炭素数が20以下の炭化水素化合物とを不均一反応させる反応工程を有する、パラミロン誘導体の製造方法。
  2. 反応工程で用いる炭化水素化合物が、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が20以下の飽和若しくは不飽和脂肪酸又は炭素数が20以下の直鎖状若しくは分岐状アルコールである、請求項1に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
  3. 前処理工程が、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を中和する工程、又は、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を貧溶媒と接触させる工程を有する、請求項1又は2に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
  4. 反応工程で用いる炭化水素化合物が、炭素に結合する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が6以下の飽和脂肪酸又は炭素数が6以下の一価アルコールである、請求項1から3のいずれか一項に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
  5. 反応工程で用いるアモルファス化されたパラミロンと炭化水素化合物とのモル比が、1:0.1以上1:5以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のパラミロン誘導体の製造方法。
  6. パラミロンをアモルファス化する前処理工程、
    アモルファス化されたパラミロンと、炭素に結合する水素の少なくとも1つがハロゲン原子で置換された、炭素数が20以下の飽和又は不飽和脂肪酸とを不均一反応させてパラミロン誘導体を得る反応工程、及び、
    パラミロン誘導体を水中で攪拌する製造工程、を有するナノファイバーの製造方法。
  7. 前処理工程が、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を中和する工程、又は、パラミロンをアルカリ溶液中に溶解させた後、該溶液を貧溶媒と接触させる工程を有する、請求項に記載のナノファイバーの製造方法。
  8. 反応工程で得られるパラミロン誘導体が、パラミロンが有する少なくとも1つのグルコースユニットの少なくとも1つのヒロドキシル基の水素原子がカルボキシル基を有する炭素数が6以下のアルキル基で置換されたパラミロン誘導体であり、該アルキル基の置換度が、グルコースユニット1つあたり0.001以上1.0以下である、請求項又は記載のナノファイバーの製造方法。
JP2016070178A 2016-03-31 2016-03-31 パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法 Active JP6750778B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016070178A JP6750778B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016070178A JP6750778B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017179182A JP2017179182A (ja) 2017-10-05
JP6750778B2 true JP6750778B2 (ja) 2020-09-02

Family

ID=60008394

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016070178A Active JP6750778B2 (ja) 2016-03-31 2016-03-31 パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6750778B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023106276A1 (ja) * 2021-12-10 2023-06-15 国立研究開発法人産業技術総合研究所 網状構造体及びその製造方法、並びにβ-1,3グルカンビーズ及びその製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03167102A (ja) * 1989-11-24 1991-07-19 Harima Chem Inc 抗菌剤
JPH03204804A (ja) * 1989-12-28 1991-09-06 Mitsui Toatsu Chem Inc 皮膚化粧料
JP2004339113A (ja) * 2003-05-14 2004-12-02 Ichimaru Pharcos Co Ltd ストレスによる肌荒れ予防改善剤
JP2011184592A (ja) * 2010-03-09 2011-09-22 Euglena Co Ltd アモルファスパラミロン

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017179182A (ja) 2017-10-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN110770257B (zh) 化学修饰纤维素纤维及其制造方法
Leung et al. Characteristics and properties of carboxylated cellulose nanocrystals prepared from a novel one‐step procedure
JP6817972B2 (ja) 環状有機無水物を用いるポリα−1,3−グルカンエステルの調製
CN108034007B (zh) 一种双醛纤维素纳米晶须的制备方法
JP2018529013A (ja) 水溶性ポリマーの脱水方法
JPH0558002B2 (ja)
EP2552968A1 (en) New high viscosity carboxymethyl cellulose and method of preparation
JP6163631B2 (ja) β−1,3−グルカンナノファイバーの製造方法
US11149095B2 (en) Cellulose II nanocrystal particles and preparation method and use thereof
JP6750778B2 (ja) パラミロン誘導体及びその製造方法、並びにナノファイバー及びその製造方法
Shibakami et al. Synthesis of nanofiber-formable carboxymethylated Euglena-derived β-1, 3-glucan
JPH03146501A (ja) 高重合度セルロースエーテルの製造方法
JP2020139047A (ja) セルロースアセテートフィルム
Merlini et al. Effects of reaction conditions on the shape and crystalline structure of cellulose nanocrystals
JP2015506407A (ja) カルボキシメチルフルクタンのアルカリ金属塩の濃縮された水溶液を製造するための方法
JP2014037657A (ja) β−1,3−グルカンナノファイバー及びその製造方法
JP2007084680A (ja) 水易溶性高分子化合物及びその製造方法
JP4395573B2 (ja) 酸化キトサン化合物
JP2019006968A (ja) ナノファイバー
WO2011037065A1 (ja) 活性エステル化多糖およびその製造方法
CN110357977B (zh) 6-氨基-6-脱氧直链淀粉的制备方法
Taourirte et al. Preparation and characterization of α-chitin whiskers, chitosan nanoparticles and chitosan nanoscaffold from Parapenaeus longirostris
JP4254120B2 (ja) 酸化キトサンの製造方法
CA3040351A1 (en) Spherical cellulose nanoparticles and process for preparation thereof
CN1730495A (zh) 一种制备羟乙基纤维素的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190827

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191025

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200317

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200501

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20200619

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200721

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200729

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6750778

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250