JP6163631B2 - β−1,3−グルカンナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 三重らせん構造を有するβ-1,3-グルカンによって構成される複数の単繊維からなるナノファイバーを製造する方法であって、
一本鎖の形態のβ-1,3-グルカンを、アルカリを含有しないか若しくは0.2 M以下の濃度でアルカリを含有する、又はpHが5.0〜13.5の範囲である水性の会合液中で会合させて、前記ナノファイバーを形成させる会合工程;
を含む、前記方法。
(2) 前記β-1,3-グルカンが、β-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンである、前記(1)に記載の方法。
(3) 前記(1)又は(2)に記載の方法によって製造されるナノファイバー。
(4) 前記(3)に記載のナノファイバーからなるナノファイバー集合体。
<1. β-1,3-グルカンナノファイバー>
本発明は、三重らせん構造を有するβ-1,3-グルカンによって構成される複数の単繊維からなるナノファイバーを製造する方法に関する。本発明の方法によって製造されるβ-1,3-グルカンナノファイバーについて、詳細に説明する。
本明細書において、「β-1,3-グルカン」は、β-グルコースの1-位と別のβ-グルコースの3-位とがβ-1,3-グルコシド結合を形成している主鎖を基本骨格とする多糖を意味する。前記β-1,3-グルカンは、β-1,3-グルコシド結合によって連結された主鎖に、β-1,6-グルコシド結合によって形成される分岐鎖が結合していてもよい。この場合、β-1,3-グルカンを構成する3個のグルコース残基当たり、1個未満の分岐鎖が結合していることが好ましく、分岐鎖が結合していない、すなわちβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンであることがより好ましい。分岐鎖が3個のグルコース残基当たり1個未満であることにより、β-1,3-グルカンによって構成される三重らせん構造の直径が細くなる。それ故、結果として得られるナノファイバーの単繊維の繊維径を細くすることができる。
通常、β-1,3-グルカンは、中性の水中では3分子が会合して三重らせん構造を形成する。一方、アルカリ水溶液、又はN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)若しくはジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性有機溶媒中では、三重らせん構造を形成している会合分子が解離して、それぞれが1本鎖(以下「ランダムコイル構造」とも記載する)を形成する。ランダムコイル構造を有する一本鎖の形態のβ-1,3-グルカンを中性の水に溶解させると、再び三重らせん構造を形成する。このように、溶解される溶媒条件によって会合及び解離を繰り返す能力を、「自己組織化能」と称する。
本発明の方法によって製造されるβ-1,3-グルカンナノファイバーは、様々な形状を形成させることができる。それ故、本発明はまた、β-1,3-グルカンナノファイバーからなるナノファイバー集合体に関する。例えば、本発明の方法によって製造されるβ-1,3-グルカンナノファイバーを各種溶媒に浸漬することにより、膨潤ゲル形状とすることができる。また、前記膨潤ゲル(例えば水中で膨潤させたゲル)を凍結乾燥することにより、乾燥ゲル形状とすることができる。さらに、前記膨潤ゲル(例えば水中で膨潤させたゲル)を基板上にキャストし乾燥させることにより、フィルム形状とすることができる。
図2は、本発明のβ-1,3-グルカンナノファイバーを製造する方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図2に基づき、本発明の方法の好ましい実施形態について詳細に説明する。
前記で説明したように、β-1,3-グルカンは、通常、中性の水中では3分子が会合して三重らせん構造を形成している。それ故、本発明の方法は、下記で説明する会合工程の前に、β-1,3-グルカンを溶解液に溶解させる溶解工程(S1)を含んでもよい。本工程は、β-1,3-グルカンを含有する原料から一本鎖の形態のβ-1,3-グルカンを得ることを目的とする。
本発明の方法は、一本鎖の形態のβ-1,3-グルカンを水性の会合液中で会合させる会合工程(S2)を含むことが必要である。本工程は、一本鎖の形態のβ-1,3-グルカンを会合させて、三重らせん構造を有するβ-1,3-グルカンによって構成される複数の単繊維からなるナノファイバーを得ることを目的とする。
10 mgのパラミロンを、1 mLの0.97 M水酸化ナトリウム水溶液中に溶解させて、10 mg/mLのパラミロンを含有する0.97 M水酸化ナトリウム水溶液を得た(溶解工程)。得られた水溶液を、0.049〜0.49 Mの水酸化ナトリウム及び0.5〜5 mg/mLのパラミロンを含有する水溶液となるようにMilli-Q水(ミリポア社製)で希釈した(会合工程)。得られた希釈液を、親水化処理した銅グリッド上に2μLずつ滴下した。前記グリッド上に残留した過剰の希釈液を、濾紙で除去した。次に、前記グリッド上に、2μLの0.3% 12-タングストリン酸溶液を染色剤として滴下した。30分後、過剰の希釈液を、濾紙で除去した。調製された試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEOL 1010;日本電子社製)を用いて、80 kVの加速電圧の条件で観察した。
20〜80 mgのパラミロンを、2.0 mLの1.0 M水酸化ナトリウム中に溶解させて、10〜40 mg/mLのパラミロンを含有する1.0 M水酸化ナトリウム水溶液を得た(溶解工程)。得られた水溶液に、0〜6.0 mLのMilli-Q水を加えることにより、0.25〜1.0 Mの水酸化ナトリウム及び10 mg/mLのパラミロンを含有する水溶液(希釈液)を調製した(会合工程)。
実施例2と同様の手順で、コンゴーレッド、水酸化ナトリウム及びパラミロンを含有する水溶液を調製した。円二色性分散計(J-820;日本分光製)を用いて、得られた水溶液の室温における円二色性(CD)スペクトルを、直ちに測定した。結果を図6に示す。
実施例2と同様の手順で、水酸化ナトリウム及びパラミロンを含有する水溶液を調製した。振動粘度計(SV-1A;A & D社製)を用いて、得られた水溶液の25.3±0.2℃における粘度を測定した。結果を図7に示す。
20 mgのパラミロンを、2.0 mLの1.0 M水酸化ナトリウム重水溶液(NaOH/D2O)中に溶解させて、10 mg/mLのパラミロン及び1.0 Mの水酸化ナトリウムを含有する水溶液を得た。前記水溶液を、試料1と記載する。20 mgのパラミロンを、0.54、0.50、0.46又は0.4 mLの1.0 M水酸化ナトリウム重水溶液(NaOH/D2O)中に溶解させた後、それぞれを1.46、1.50、1.54又は1.6 mLの重水(D2O)で希釈して、10 mg/mLのパラミロン及び0.27、0.25、0.23又は0.20 Mの水酸化ナトリウムを含有する水溶液を得た。前記水溶液を、それぞれ試料2、3、4又は5と記載する。得られた各試料中のパラミロンの13C-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定した。結果を図8に示す。
Claims (4)
- 三重らせん構造を有するβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンによって構成される複数の単繊維からなるナノファイバーを製造する方法であって、
一本鎖の形態のβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンを、0.03〜0.2 Mの範囲の濃度でアルカリを含有する水性の会合液中で会合させて、前記ナノファイバーを形成させる会合工程;
を含み、
ナノファイバーの平均繊維径が10〜30 nmの範囲である、前記方法。 - パラミロン粒子を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選択されるアルカリ水溶液を含む溶解液に溶解させて、一本鎖の形態のβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンを得る、溶解工程をさらに含み、
会合工程が、溶解工程で得られた一本鎖の形態のβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンを含む溶解液を水で希釈することによって実施される、請求項1に記載の方法。 - 三重らせん構造を有するβ-1,3-グルコシド結合のみからなるβ-1,3-グルカンによって構成される複数の単繊維からなり、平均繊維径が10〜30 nmの範囲であるナノファイバー。
- 請求項3に記載のナノファイバーからなるナノファイバー集合体。
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