JP2012127024A - 繊維状構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ナノメートルレベルでの制御が可能なナノファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液と、前記溶液とは別途に用意した液相とを流通下で接触させることにより、少なくともβ−1,3−グルカンの分子が絡合してなる繊維状構造体を製造する方法に係る。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な繊維状構造体の製造方法に関する。
近年においては、ナノレベルで配向が制御された機能性ナノ材料の開発が活発に展開されている。例えば、ナノメートル領域で形成される構造及びそれに基づく機能をマクロなレベルまで構築する、いわゆるボトムアップ手法に基づく材料開発は、次世代のナノ・バイオマテリアルの分野では不可欠な技術とされている。特に、分子及び高分子鎖がもつ独自の自己組織性を利用することにより、ナノメートルレベルの構造体をさらに階層的に集積させるための技術開発が不可欠となっている。
分子及び高分子の自己組織化によって形成される多くの構造体の中でも、高いアスペクト比を有するナノファイバーは、その広い汎用性から国内外を問わず、盛んに研究がなされてきている素材である。これまでに、適切な分子設計を基盤とした分子の自己組織性を利用したナノファバーの創製(非特許文献1)、あるいはよりマクロな領域でファイバーを紡糸することにより糸状に成形する技術等が独自に開発されるに至っている。こうしたナノファイバーの創製において、分子の自己組織性のみを利用したシステムは、分子構造に起因した多様なファイバー形成が可能であるだけでなく、簡便性も持ち合せているのが特徴である。
しかしながら、一般には分子の1次元成長には限界があり、ファイバーの長さがμm領域にとどまり、実際には糸としては利用できないという欠点がある。一方、エレクトロスピニング等のように外部的な力を利用してマクロなファイバーを紡糸する技術は、手にもつことができるファイバー(糸)を与える。このようなファイバーは、実用性が高い反面、ナノレベルでの構造又は機能の制御が不可能であることから、ナノマテリアルの範疇からは除外されるべきものである(非特許文献2)。
Andreas Greiner, Joachim H. Wenoreff, Angew.Chemie, 46 ,5670-5703 , 2007 D. Kiriiya, H. Ono, M. Ikeda, I. Hamachi, and S.Takeuchi, Proc.MEMS2010, 927, 2010
このように、ナノメートルレベルでの制御が可能なナノファイバーの製造技術の開発が切望されているものの、そのような技術は未だ確立されていないのが現状である。
従って、本発明の主な目的は、ナノメートルレベルでの制御が可能なナノファイバーの製造方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の製造プロセスを採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の繊維状構造体の製造方法に係る。
1. 3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液と、前記溶液とは別途に用意した液相とを流通下で接触させることにより、少なくともβ−1,3−グルカンの分子が絡合してなる繊維状構造体を製造する方法。
2. 1)前記溶液が、β−1,3−グルカンを極性有機溶媒に溶解した溶液であり、2)前記液相が、水を溶媒とする液相である、前記項1に記載の方法。
3. 1)前記溶液がアルカリ性であり、2)前記液相が酸性である、前記項1に記載の方法。
4. 液相に有機高分子成分(但し、β−1,3−グルカンを除く。)が溶解している、前記項1に記載の方法。
5. 前記溶液と前記液相との間に界面が形成されるように、流通下での接触を行う、前記項1に記載の方法。
6. 2つの支流が合流した後に1つの流路となる構成をもつ混合装置を用い、2つの支流にそれぞれ前記溶液及び液相を供給することにより、流通下での接触を行う、前記項1に記載の方法。
7. 前記混合装置における2つの支流がなす角度が0度を超え60度以下である、前記項6に記載の方法。
8. 前記項1〜7の方法によって得られる繊維状構造体。
本発明の製造方法によれば、3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液と、前記溶液とは別途に用意した液相とを流通下で接触させることにより、少なくともβ−1,3−グルカンの分子(分子鎖)が絡合してなる繊維状構造体を得ることができる。すなわち、流通下で前記溶液と前記液相とを供給し続けることによって、連続的に繊維状構造体を形成させることができる。その結果、ナノメートルレベルで構造を制御しつつ、これまでよりも長い(アスペクト比の大きな)繊維状構造体を提供することが可能となる。例えば、本発明の製造方法では、繊維径100 nm〜100μm、繊維長3〜30cmのような繊維状構造体も提供することが可能である。繊維径の最大値は、例えば用いるマイクロ流路でバイスの流路径等によって制御可能である。また、繊維長は、例えば流通する時間によって制御することができる。
また、液相に有機高分子成分を溶解させることによって、β−1,3−グルカン鎖(解離した後のランダムコイル鎖)と複合した繊維状構造体(複合体)を合成することも可能となる。特に、ランダムコイル鎖に有機高分子が内包した状態の繊維状構造体を得ることができる。これにより、種々の有機高分子と組み合わせることによって任意の機能を繊維状構造体に付与することができる。
このように、本発明の製造方法で得られる繊維状構造体は、例えば医療分野で利用される生体適合性の糸として利用できる。また、その糸を用いて不織布を作製したり、布状に編み込むことによって織布の形態に加工することによって、これらの不織布又は織布を生体材料に適用できるほか、電気・電子材料等への応用も期待される。
実施例1の実験方法の手順を示す模式図である。 実施例1で得られた混合溶液をUV照射下で観察した結果を示す図である。 混合溶液を乾燥して得られた乾燥物のAFM観察の結果を示す図である。 混合溶液を乾燥して得られた乾燥物のAFM観察の結果を示す図である。 混合溶液を乾燥して得られた乾燥物のAFM観察の結果を示す図である。 実施例2の実験方法の手順を示す模式図である。 実施例2で得られた繊維状複合体を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す図である。
本発明の製造方法は、3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液と、前記溶液とは別途に用意した液相とを流通下で接触させることにより、少なくともβ−1,3−グルカンの分子が絡合してなる繊維状構造体を製造することを特徴とする。
β−1,3−グルカンとしては、多糖の主鎖がβ1→3グルコシド結合に結合された多糖類であり、公知又は市販のものを使用することができる。β−1,3−グルカンは、その由来に限定されず、海藻由来、キノコ由来、細菌由来等のいずれも使用することができる。このようなβ−1,3−グルカンとしては、例えばカードラン、パーキマン、シゾフィラン、レンチナン、ラミナラン、グリホラン、スクレログルカン等を挙げることができる。
また、β−1,3−グルカンの具体的構造も限定されず、例えばグルコース(残基)を有しないカードラン、少量のグルコースを有するパーキマン等も用いることができる。側鎖にグルコース(残基)を有する場合、特にその割合によって水への溶解性が向上することが知られており、こうしたβ−1,3−グルカンも目的に応じて使用することができる。特にβ−1,3結合数に対するβ−1,6結合数の比率が30〜100%であるβ−1,3−1,6−D−グルカンは、疎水性材料に水溶性を付与し、紡糸できる点で有利である。
β−1,3−グルカンの分子量に関しては、ある程度の長さがあれば特に限定的ではなく、一般的に10000程度以上あれば良い。
3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液は、β−1,3−グルカンの3重らせん構造を解離させる溶媒にβ−1,3−グルカンを溶解させることによって調製することができる。β−1,3−グルカンは天然では3重らせん構造を持つが、DMSO等の極性有機溶媒中では3重らせんが解離し、1本のランダムコイル鎖となるが、水の存在下では再び3重らせん構造を再構築するユニークな自己組織性を有している。そのような解離状態を維持した溶液としては、例えば1)β−1,3−グルカンを極性有機溶媒に溶解した溶液(第1溶液)、2)β−1,3−グルカンのアルカリ性溶液(特にアルカリ性水溶液)を好適に用いることができる(第2溶液)。以下、第1溶液及び第2溶液について説明する。
第1溶液における極性有機溶媒としては、特に限定されず、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。また、溶液の濃度は、形成される繊維状構造体の所望の構造等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は5 mg/mL以上、好ましくは10〜20mg/mL程度の範囲内とすれば良い。
第2溶液としては、アルカリ性であれば良く、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を用い、これにβ−1,3−グルカンを溶解した溶液を用いることができる。この場合の溶液のpHは、通常は7を超えるものであれば良く、特に12以上であることが好ましい。
他方、液相としては、β−1,3−グルカンの解離した1本ごとのランダムコイル鎖がもとの3重らせん構造を再構築する性質(自己組織性(多重らせん形成機能))を利用できるような組合せを採用すれば特に制限されない。例えば、第1溶液を用いる場合は、水を溶媒とする液相を用いることができ、特に水に用いることが好ましい。また、第2溶液の場合は、酸性の液相を用いることができる。酸性の液相としては、例えばa)塩酸、硝酸等の無機酸の水溶液ならびにb)ギ酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸の水溶液の1種又は2種以上を好適に用いることができる。この場合の液相のpHとしては、通常は7未満であれば良く、特に4以下であることが好ましい。
また、本発明の製造方法では、前記液相中に有機高分子成分(但し、β−1,3−グルカンを除く。)を溶解させることもできる。これによって、β−1,3−グルカンのランダムコイル鎖と有機高分子成分を含む繊維状構造体を得ることができる。より具体的には、例えばランダムコイル鎖に有機高分子成分を内包する繊維状複合体を形成することも可能である。有機高分子成分としては、液相中に溶解し得るものであれば限定されず、例えばポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリシラン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリ乳酸等を挙げることができる。液相中の有機高分子成分の濃度は、所望の繊維状複合体の特性等に応じて適宜変更することができるが、通常は1〜10mg/mL程度の範囲内であれば良い。
本発明の製造方法では、前記溶液と前記液相とを流通下で接触させる。すなわち、単に静止状態で両者を混合するのではなく、前記溶液及び前記液相の少なくとも一方を所定の流速で流通させながら両液を接触させる。この場合、本発明では、特に、前記溶液及び前記液相をともに流通させながら両液を接触させることが好ましい。このように、本発明では、両液を流通下で接触させることによって、両液の間に界面が形成されるように制御し、その界面(動的界面)を利用してβ−1,3−グルカン鎖の連続的な自己組織化を促進することができる結果、所望の繊維状構造体を形成することができる。
両液を流通させる場合の流速は、用いる溶液及び液相、得られる繊維状構造体の所望の物性等に応じて適宜調整することができる。一般的には流速1〜100μl/minの範囲内で適宜設定すれば良い。また、両液の流速は、互いに同じであっても異なっていても良い。
両液を接触させるに際しては、上記のように流通下で接触させれば良く、その具体的な手段は限定されないが、例えば2つの支流が合流した後に1つの流路となる構成からなる混合装置を用い、2つの支流にそれぞれ前記溶液及び液相を供給することにより、流通下での接触を行うことが望ましい。例えば、図1に示すマイクロ化学チップを用い、各支流にβ−1,3−グルカンのDMSO溶液と水とをそれぞれ導入し、所定の流速で流せば良い。これにより、合流ポイントで効率的に前記動的界面を形成することができる。この場合、動的界面を効率的に形成するという見地より、2つの支流がなす角度が0度を超え60度以下、特に10度以上50度以下であることが好ましい。なお、このような化学チップ自体は公知又は市販のものを使用することができる。
また、より効率的に繊維状構造体を形成するために、上記支流の流路及び合流した流路は管状であることが好ましい。また、上記管状形状の直径は、得られる繊維状構造体の所望の直径、繊維状構造体の製造量等に応じて適宜調節することができる。例えば、直径50〜200μm程度の管状流路を採用することもできる。
両者を接触させることによって、少なくともβ−1,3−グルカン鎖が絡み合って形成された繊維状構造体を得ることができる。得られた繊維状構造体は両液の混合液の中に含まれているので、これを水等の適当な溶媒中に導入することよって安定した状態で保管することができる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、実施例で使用した試薬、器具等は以下の通りである。
(1)実験に使用した溶液等
・20 mg/ml β-1,3-グルカン/DMSO溶液;(Mw = 1,150,000)
・20 mg/ml β-1,3-グルカン/DMSO TX溶液;
(糖の還元末端にテキサスレッドを修飾 Mw=1,150,000)
なお、実施例のβ-1,3-グルカンとしては、いずれもシゾフィラン(SPG)を使用した。
・Texas Red hydrazide;(分子プローブ, invitrogen社)
・ホウ酸塩pH緩衝溶液;(pH=9.18、和光純薬工業株式会社)
・蒸留水;(高速液体クロマトグラフ用、ナカライテスク株式会社)
・ジメチルスルホキシド(DMSO);(高速液体クロマトグラフ用、ナカライテスク株式会社)
・ポリフェニレンビニレン(OPV);(Poly[5-metoxy-2-(3-sulfopropoxy)-1,4-phenylenvinylene],ALDRICH)
(2)実験に使用した器具・装置
・ガラス製マイクロ化学チップ;(シングルYタイプICC−SY15,マイクロ科学技研)
・250 μl シリンジ;(ハミルトン社)
・スライドガラス;(マツナミファインフロストFF-001, 松浪硝子工業株式会社)
・500μl 石英セル;(東ソー・クォーツ株式会社)
・共焦点レーザー顕微鏡;(D-ECLIPSE C1, Nikon)
・原子間力顕微鏡(AFM);(島津製作所)
実施例1
(1)20 mg/ml β-1,3-グルカン/DMSO Texas溶液の調製
20 mg/ml β-1,3-グルカン/ DMSO溶液にTexas Red hydrazideを適量加え、7日間以上攪拌してから、透析操作により未反応物を除いてから凍結乾燥した。以上の操作で得られたものを20 mg/mlになるように調整して“20 mg/ml β-1,3-グルカン/DMSO Texas”とした。
(2)動的界面でのβ-1,3-グルカン複合化と集積体の観察
図1に示すように、シリンジからキャピラリーを経てマイクロ化学チップへと流通させ、両液が合流した後、その混合溶液をキャピラリーを経て水で満たされた石英セルに導入した。
より具体的には、次の通りである。まず、20 mg/ml β-1,3-グルカン/DMSO Texas溶液とDMSOを用い、β-1,3-グルカン溶液を10 mg/mlに希釈調製した。20 mg/ml, 10 mg/mlのβ-1,3-グルカン溶液を、250μlシリンジからキャピラリーを経てマイクロ化学チップへと流した。この時、化学チップのもう一方からは蒸留水を導入し、化学チップ内でβ-1,3-グルカン溶液と合流させ、マイクロ化学チップ管内で層流を形成させた。また、β-1,3-グルカン溶液と蒸留水の流速は50μl/min及び10μl/minの2つについて検討した。化学チップから出たβ-1,3-グルカンと蒸留水の等混合溶液は、キャピラリーを経て水で満たされた石英セルに受けた。その後、直ちに石英セルにUVライト(254nm)を照射してデジタルカメラにて記録した。その結果を図2に示す。その後、溶液が均一になるのを確認してから、溶液をマイカ基板上にスポットして、真空下で乾燥させてからAFMにより観察した。その結果を図3〜図5に示す。
(3)考察
(3−1)図2の結果からも明らかなように、β-1,3-グルカン濃度を変化した場合、20mg/mlβ-1,3-グルカンでは糸状構造が確認できたが、10mg/mlβ-1,3-グルカンでは確認できなかった。また、流速を変化した場合、50μl/minでは20mg/mlβ-1,3-グルカンでは境界面が鮮明でない糸状構造が確認でき、10mg/mlβ-1,3-グルカンでは糸状構造は確認できなかった。β-1,3-グルカン濃度が濃いと糸状構造の形成がより強く働き、低濃度である場合は糸状構造の維持が難しくなることが確認できた。また、流速が遅いと糸状構造が形成されやすく、流速が遅いと糸状構造が形成されにくいことが確認できた。
以上の観察によると、β-1,3-グルカン濃度が高濃度になると化学チップ内で動的界面による相互作用がより強くなると思われる。化学チップ内では溶液は層流状態になっており、β-1,3-グルカン分子は単純拡散で溶液内を動いているので、β-1,3-グルカン濃度が高濃度になるほど動的界面に接触する確率が大きくなる。そのために、糸状構造がより強く形成されていると思われる。また、同様に流速に関しても、流速が遅い場合、化学チップ内においての滞留時間を延長するために、動的界面に接触する確率を高める。そのために流速が遅いほうが糸状構造の形成に有利であることがわかる。
(3−2)AFMによる観察によると10mg/ml β-1,3-グルカンを50μl/minでの流速でマイクロ化学チップに流した場合では、β-1,3-グルカン分子は塊状の構造をとっていることが確認された。β-1,3-グルカンの分子間で特に相互作用している様子は確認できなかった。次に、同濃度で流速を10μl/minにした場合では網目状の構造が確認できた。β-1,3-グルカンの分子によりネット状の構造を形成しており、200nm程度の目を形成していた。
次に、20mg/ml β-1,3-グルカンの場合、10μl/minの場合では、より複雑なネット状の構造を有しており、目は100μm程度であった。また、10mg/mlβ-1,3-グルカンのAFM画像と比較してより複雑な構造をとっていると思われる。また、20 mg/mlβ-1,3-グルカンを50μl/minで化学チップに流した場合でも、よりネット構造が複雑化する様子が認められた。
10mg/mlβ-1,3-グルカンでは10μl/minの流速になると、より複合化が進み、50μl/minの比較的早い流速ではβ-1,3-グルカン分子どうしの複合化はまったく観察できなかった。これも、流速の違いによりβ-1,3-グルカン分子が管内に対流する時間が長くなったため、化学チップ内の動的界面でのβ-1,3-グルカン分子の相互作用がより大きくなったためであると思われる。10mg/mlのサンプルを比較すると、β-1,3-グルカン分子の複合化が全く異なり、それぞれの流速の画像を比較すると、より遅い流速でマイクロ化学チップ内を流すことにより、より複合化が進むと思われる。次に20mg/mlの場合だと10μl/minと50μl/minの両方の流速において、β-1,3-グルカン分子どうしの絡み合いによってネット構造を形成している。20mg/mlのサンプルにおいては流速を速くしても、既に十分に動的界面でβ-1,3-グルカン分子どうしが相互作用してネット状の構造を形成するだけの量があるので、流速を変化してもAFMでのネット状の構造が観察できたと考えられる。
ブラックライト照射下で観察したファイバー状の構造とも併せて考えると、20mg/mlβ-1,3-グルカンはAFMで確認されたように微細なネット状態構造の集積によりファイバー状の構造が形成されていると考えられる。ファイバー状構造が形成されるにはマイクロ化学チップによる動的界面の影響が十分に必要である。
特に、動的界面でβ-1,3-グルカン分子どうしが相互作用できるように、流速や濃度を設定する必要があると思われる。また、10mg/mlβ-1,3-グルカンの10μl/minの流速ではAFM画像で網目状の構造が確認できたがファイバー上の構造は確認できなかった。これはネット状の構造がファイバー構造を形成するだけ十分に形成されなかったと考えられる。つまり、ファイバー状の形成にはマイクロ化学チップ内で網目状の構造が十分に構成されている必要があると考えられる。
(3−3)以上より、マイクロ化学チップ内の動的界面ではネット状の構造が形成されており、ネット状構造の集積によりファイバー状態構造が形成されていることがわかる。また、ネット状構造の形成には流速と濃度が関与しており、化学チップ内の動的界面で十分にβ-1,3-グルカン分子を相互作用させる必要があることがわかる。
実施例2
(1)図6に示すように、20mg/mlβ-1,3-グルカン溶液を250μl/minシリンジからキャピラリーを経てマイクロ化学チップへと流した。化学チップのもう一方からはOPV水溶液を導入し、化学チップ内でβ-1,3-グルカン溶液と合流させ、マイクロ化学チップ管内で層流を形成させた。また、β-1,3-グルカン溶液とOPV水溶液の流速は1μl/minについて検討した。化学チップからβ-1,3-グルカン溶液とOPV水溶液の等混合溶液は、キャピラリーを経てホウ酸緩衝溶液で満たされたミクロチューブに受けた。その後、直ちにパスツールピペットを用いてスライドガラス上に滴下して共焦点顕微鏡で観察した。その結果を図7に示す。
(2)考察
図7を観察すると、β-1,3-グルカンファイバーがOPVを内包することにより蛍光をもったことが確認された。実施例1で示されたようにβ-1,3-グルカンは化学チップ管内の動的界面においてネット状の構造を形成しており、β-1,3-グルカン分子内にOPVが集積され、さらにファイバー状の構造を形成することが確認できた。20mg/mlβ-1,3-グルカンファイバーのみでは蛍光を発することはできず、ファイバー内に内包された高分子による蛍光発色である。つまり、ファイバーに内包された分子の特性を付与できることが確認された。
これらの実施例の結果からも明らかなように、マイクロ化学チップを用いてβ-1,3-グルカンをファイバー状に集積することにより、動的界面で分子を紡糸することが可能である。また、ファイバーは動的界面で形成された網目状の構造を有していることが示され、またそこに他の分子を内包することによってファイバーに種々の機能を付与できることが期待される。
このように、本発明では、DMSOから水への溶媒変換に伴う、β−1,3−グルカン鎖の劇的な構造変化をマイクロ流路内に形成した層流界面において行うことにより、多糖鎖1本1本を連続的に自己組織化させ、糸状に順次成長させていくことが可能である。すなわち、マイクロチップ内で形成される層流(DMSO−水の界面)を利用した多糖ナノファイバーの自己組織化を行うことにより、高分子鎖をナノメートルレベルで紡糸し、最終的にはマクロな糸へと成長させることができる。そして、このような紡糸技術を利用することによって、本発明の製造方法は、異種の機能性高分子を取り込みながら糸へと成長させることも可能となることから、これまでにない新たな多糖ナノマテリアル開発への基盤技術となり得る。

Claims (7)

  1. 3重らせん構造が解離して生成したβ−1,3−グルカン鎖を含む溶液と、前記溶液とは別途に用意した液相とを流通下で接触させることにより、少なくともβ−1,3−グルカンの分子が絡合してなる繊維状構造体を製造する方法。
  2. 1)前記溶液が、β−1,3−グルカンを極性有機溶媒に溶解した溶液であり、2)前記液相が、水を溶媒とする液相である、請求項1に記載の方法。
  3. 1)前記溶液がアルカリ性であり、2)前記液相が酸性である、請求項1に記載の方法。
  4. 液相に有機高分子成分(但し、β−1,3−グルカンを除く。)が溶解している、請求項1に記載の方法。
  5. 前記溶液と前記液相との間に界面が形成されるように、流通下での接触を行う、請求項1に記載の方法。
  6. 2つの支流が合流した後に1つの流路となる構成をもつ混合装置を用い、2つの支流にそれぞれ前記溶液及び液相を供給することにより、流通下での接触を行う、請求項1に記載の方法。
  7. 前記混合装置における2つの支流がなす角度が0度を超え60度以下である、請求項6に記載の方法。
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